(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432051
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】単一指向性ダイナミックマイクロホン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20181126BHJP
H04R 9/08 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
H04R1/02 108
H04R9/08
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-251185(P2014-251185)
(22)【出願日】2014年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-115987(P2016-115987A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100177367
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 崇
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】
冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−057137(JP,A)
【文献】
特開2012−015695(JP,A)
【文献】
実開昭60−119183(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04R 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声によって振動する振動板、磁気ギャップに磁界を発生させている磁石、および、前記振動板に設けられていて前記磁気ギャップ内において電気信号を生成するボイスコイルを備えるマイクロホンユニットと、
前記振動板の背面側に空気室を形成する支持筐体と、
前記マイクロホンユニットを前記支持筐体に支持させる第1支持部材と、
前記第1支持部材の位置より前記空気室寄りの位置において前記マイクロホンユニットを前記支持筐体に支持させる第2支持部材と、
を有し、
前記第1支持部材は、前記マイクロホンユニットを前記振動板の背面側に設けられていて前記振動板の背面側からの音声を前記振動板に向かって通過させる孔の近傍において支持し、
前記第1支持部材の形状は、前記孔を含み音声の取込み通路の音響インピーダンスを定める、
単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項2】
前記第1支持部材と前記第2支持部材は、弾性を有する材料により形成されている、
請求項1記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項3】
前記第2支持部材は、第1支持部材の弾性率より低い弾性率を有する、
請求項2記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項4】
前記第1支持部材は、前記マイクロホンユニットの重心位置の付近で前記マイクロホンユニットを支持する、
請求項1乃至3のいずれかに記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項5】
前記第2支持部材は、前記空気室の内部において前記マイクロホンユニットを支持する、
請求項1乃至4のいずれかに記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項6】
前記第1支持部材は、ショックマウントである、
請求項1乃至5のいずれかに記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項7】
前記第2支持部材の素材は、通気性を有する素材である、
請求項1乃至6のいずれかに記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項8】
前記第1支持部材は、前記支持筐体とともに前記空気室の一部を形成する、
請求項1乃至7のいずれかに記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一指向性ダイナミックマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロホン装置のうち、例えばハンドヘルドワイヤレスマイクロホンでは、マイクロホンユニットに単一指向性のダイナミックマイクロホンユニットが多く用いられる。ダイナミックマイクロホンユニットの指向性は、無指向性成分は音響抵抗成分により、双指向性成分は音響質量成分により規定される。ダイナミックマイクロホンにおいて、無指向性成分を調整するためには、マイクロホンユニットの後部(振動板の背面側)に音響抵抗と空気室が必要である。マイクロホン装置を小型化するために後部空気室を小さくすると、中低周波数帯域での指向周波数応答が劣化してしまう。
【0003】
ハンドヘルドワイヤレスマイクロホンでは、音声信号を音響機器に送信するための送信部が必要である。このため、小型のハンドヘルドワイヤレスマイクロホンでは、送信部を一体的に設けたものが知られている。しかし、送信部を内蔵したハンドヘルドワイヤレスマイクロホンを小型化しようとすると、マイクロホンの性能(周波数特性や指向性など)を左右するマイクロホンユニットを収容する部分の寸法が制限される。
【0004】
また、マイクロホン装置では、マイクロホンユニットに加わった衝撃などを緩和するために、ケースに対してマイクロホンユニットを弾性支持させるショックマウントをケース内部に設けているものがある。マイクロホン装置では、ケースの側方から加速度が加わると、ショックマウントにより支持された箇所を中心にマイクロホンユニットが揺動することがある。また、マイクロホン装置の小型化によりケース内の長手方向の寸法を十分に確保することが難しい場合に、マイクロホンユニットが他の部品に接触してしまう。マイクロホンユニットが他の部品に接触してしまうと、振動板が振動して不快な衝撃音が発生してしまう。
【0005】
以上のように、マイクロホン装置では、装置を小型化する際に高い性能を得るのが難しい。
【0006】
なお、ショックマウントを介してマイクロホンユニットがケース内に装着されたマイクロホンにおいて、マイクロホンユニットの移動を阻止するストッパー手段を設ける技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に開示された技術であっても、マイクロホン装置を小型化する際に高い性能を得ることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−252675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、小型化した場合においても高い性能を得ることができる単一指向性ダイナミックマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
音声によって振動する振動板、磁気ギャップに磁界を発生させている磁石、および、前記振動板に設けられていて前記磁気ギャップ内において電気信号を生成するボイスコイルを備えるマイクロホンユニットと、
前記振動板の背面側に空気室を形成する支持筐体と、
前記マイクロホンユニットを前記支持筐体に支持させる第1支持部材と、
前記第1支持部材の位置より前記空気室寄りの位置において前記マイクロホンユニットを前記支持筐体に支持させる第2支持部材と、
を有
し、
前記第1支持部材は、前記マイクロホンユニットを前記振動板の背面側に設けられていて前記振動板の背面側からの音声を前記振動板に向かって通過させる孔の近傍において支持し、
前記第1支持部材の形状は、前記孔を含み音声の取込み通路の音響インピーダンスを定める、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型化した場合においても高い性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る単一指向性ダイナミックマイクロホンの実施の形態を示す断面図である。
【
図2】
図1のダイナミックマイクロホンのショックマウントの変形例を示す断面図である。
【
図3】
図1のダイナミックマイクロホンのマイクロホンユニット部分の拡大断面図である。
【
図4】
図1のダイナミックマイクロホンの音響等価回路図である。
【
図5】参考例のダイナミックマイクロホンを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る単一指向性ダイナミックマイクロホン、特にワイヤレスダイナミックマイクロホンの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示す本発明に係る実施の形態であるワイヤレス機能を内蔵したダイナミックマイクロホン1は、音声を電気信号に変換して出力するマイクロホンユニット2と、マイクロホンユニット2を包囲するネット3とを有する。ダイナミックマイクロホン1の指向特性は、指向特性の無指向性成分と双指向性成分の組み合わせのバランスにより規定される。ダイナミックマイクロホン1において、単一指向性を実現するためには、無指向性成分と双指向性成分それぞれの音響インピーダンスを最適化して設計する必要がある。ダイナミックマイクロホン1は、音響抵抗成分により指向特性の無指向性成分を得ている。また、ダイナミックマイクロホン1は、音響質量成分により指向特性の双指向性成分を得ている。ダイナミックマイクロホン1では、無指向性成分を得るためにマイクロホンユニット2の後部に空気室4を有する。以下の説明では、
図1においてマイクロホンユニット2が設けられている側を上、その反対側の空気室4が設けられている側を下とする。
【0015】
マイクロホンユニット2は、音声によって振動する振動板21と、振動板21の下側にあり磁界を発生させている磁気回路を有する。磁気回路は、皿状のヨーク25と、ヨーク25の上面に取り付けられた円板状のマグネット22と、マグネット22の上面に取り付けられた円板状のポールピース28とで構成されている。また、マイクロホンユニット2は、ボイスコイル23を備える。このボイスコイル23は振動板21の背面に固定されていて、マグネット22との間で電気信号を生成する。また、マイクロホンユニット2は、振動板21、マグネット22、ボイスコイル23、ヨーク25、ポールピース28などを収容するユニットケース24を備える。
【0016】
振動板21は、球面の一部を切り取った形のセンタードームと、断面が部分円弧形でセンタードームの周囲を取り囲むサブドームを備えている。サブドームの外周縁部がユニットケース24に固定されることで、振動板21はユニットケース24に取り付けられている。
【0017】
マグネット22とポールピース28は、ユニットケース24内においてヨーク25とともに永久磁石による磁気回路を構成している。ヨーク25は、ボイスコイル23の外部を覆うように上方に立ち上がった縁部を有している。ユニットケース24内には、マグネット22とポールピース28の外周面とヨーク25の内周面で囲まれた円筒状の磁気ギャップがある。この磁気ギャップ内には、振動板21に固定されたボイスコイル23が配置されている。
【0018】
ボイスコイル23は、センタードームとサブドームとの境界に沿って接着されている。振動板21は、音波を受けるとボイスコイル23とともに音波に対応して上下(垂直)方向に振動する。振動板21とともに振動するボイスコイル35は、磁気ギャップ内の磁束を横切ることによって発電し、音波に対応した音声信号を出力する。
【0019】
ユニットケース24は、前面側ユニットケース241と、背面側ユニットケース242と、トランス収容ケース243とにより構成されている。
【0020】
前面側ユニットケース241は、振動板21の前面側を覆う。前面側ユニットケース241には、外部からの音声を振動板21の前面側に向かって通過させる孔26が設けられている。この孔26の前面側には、振動板21と同時に動く空気の中心位置である前部音響端子がある。
【0021】
背面側ユニットケース242は、振動板21のサブドームの背面側を覆う。背面側ユニットケース242には、後方からの音声を振動板21の背面側に向かって通過させる孔27が設けられている。この孔27の付近には、振動板21と同時に動く空気の中心位置である後部音響端子がある。
【0022】
トランス収容ケース243には、音声信号の出力レベルを高くするための昇圧するトランス8が収容される。トランス収容ケース243は、背面側ユニットケース242の下方に設けられていて、振動板21のセンタードームの背面側を覆う。トランス収容ケース243には、背面側ユニットケース242と連結する壁状の連結部245と、振動板21の背面側からの音声を振動板21に通過させる孔246が設けられている。トランス収容ケース243の内側は、空気室4の一部を構成している。
【0023】
ダイナミックマイクロホン1では、上述の通り無指向性成分と双指向性成分の音響インピーダンスを最適化して設計することによって単一指向性を得ている。ダイナミックマイクロホン1は、
図1において振動板21の前面側が指向軸方向となる。
【0024】
ダイナミックマイクロホン1は、ショックマウント5を有する。このショックマウント5は、第2音響端子27の近傍にあるマイクロホンユニット2の重心位置付近において、マイクロホンユニット2を支持筐体7に支持させる。
【0025】
ショックマウント5は、第1支持部材に対応する。ショックマウント5は、各種エラストマーやゴム材料などの弾性を有する材料により形成されている。ショックマウント5は、第1接続部511と第2接続部521と壁面部531とを備える。ショックマウント5は振動雑音を低減するため、スチフネスが小さい必要がある。
【0026】
第1接続部511は、マイクロホンユニット2の重心位置付近に位置するユニットケース24の第1凹部244に接続されている。第2接続部521は、支持筐体7の上端側に設けられている第2凹部71に接続されている。壁面部531は、第1接続部511と第2接続部521とを繋ぐように構成されており、孔27に対して凸形状の壁面である。
【0027】
ダイナミックマイクロホン1では、外部からの衝撃力が加わるとマイクロホンユニット2およびマイクロホンユニット2からトランス収容ケース243に至る部分が一体となって振動する。この一体となって振動する部分の重心位置付近でショックマウント5がユニットケース24を支持している。外部からの衝撃を受けたときにショックマウント5による支持位置を中心とした回転モーメントが生じにくくなる。このため、ダイナミックマイクロホン1では、外部からの衝撃を受けたときにマイクロホンユニット2の動きが抑制され、マイクロホンユニット2がショックマウント5の支持部を中心に回転運動(首振り運動)しにくくなる。
【0028】
このように、ダイナミックマイクロホン1によれば、マイクロホンユニット1が他の部品に接触しなくなるため、接触による振動板21の不要な振動が抑制される。そのため、ダイナミックマイクロホン1によれば、マイクロホンユニット1の接触に起因する不快な衝撃音の発生が妨げられる。
【0029】
また、ダイナミックマイクロホン1では、ショックマウント5がマイクロホンユニット2の重心位置付近でユニットケース24を支持し、ショックマウント5が空気室4の隔壁の一部を構成している。このため、空気室4の容積を十分に確保して装置を小型化することができる。言い換えれば、マイクロホン装置の小型化に際し、空気室4の容積が犠牲にならない。
【0030】
ショックマウント5は、壁面部531の形状により孔27付近の音響質量(音響インピーダンスの質量成分)の一部を定めている。壁面部531の形状は、孔27の開口部に向かって突出した略円弧状の湾曲面である。このため、ショックマウント5の壁面部531の形状を変えることにより孔27から入る音声に対する音響インピーダンスを変えることができる。ショックマウント5の壁面部531の形状は、上述の形状に限定されない。例えば
図2に示すように、ショックマウント5Aの壁面部531Aの形状は、孔27に対して凹んだ略円弧状の湾曲面などであってもよい。
【0031】
ダイナミックマイクロホン1は、ガスケット6を有する。ガスケット6により、空気室4の内部においてショックマウント5による支持位置より指向軸方向の後方(
図1において空気室4寄り)の位置でマイクロホンユニット2は支持筐体7に支持される。
【0032】
ガスケット6は、第2支持部材に対応する。ガスケット6は、トランス収容ケース243の外壁面と支持筐体7の内壁面とに接することでマイクロホンユニット2を支持筐体7に支持させている。ガスケット6は、弾性と粘性を併せ持つ(粘弾性を持つ)低反発独立気泡スポンジや軟質ウレタンフォームなどにより形成されている。例えばガスケット6に軟質ウレタンフォームを用いた場合、軟質ウレタンフォームの弾性は低く抑えられ、粘性は上げられている。そのため、ガスケット6はヒステリシスロス率の大きい低反発弾性を有する。
【0033】
また、ガスケット6は、通気性を有する素材である。ダイナミックマイクロホン1では、ショックマウント5の壁面部531の内側の空間と空気室4とを区画する位置にガスケット6が介在している。ガスケット6は、通気性を有する素材であるため、ガスケット6が空気室4の容積を実質的に制限しない。このため、ダイナミックマイクロホン1では、隔壁72からショックマウント5までの部分についても空気室4として機能させることができる。
【0034】
また、ガスケット6は、ショックマウント5が音波によって振動し、その音波が空気室に伝播することも防止する。ショックマウント5は振動雑音を低減するために、スチフネスが小さくなるように薄く設計される。このようなショックマウント5は、音波により振動し、音波を空気室4に伝播させることがある。このショックマウント5を介して空気室に混入する音波は、ガスケット6によって吸収される。したがって、ガスケット6は、ショックマウント5を介して混入する音波が振動板22の後部側に伝播することを防止する。
【0035】
ダイナミックマイクロホン1では、粘弾性を持つガスケット6がユニットケース24を支持するため、衝撃や空気室4の圧力変動によるユニットケース24の動きが抑えられる。このため、ダイナミックマイクロホン1では、マイクロホンユニット1が他の部品に接触して、振動板21不要な振動をすることがない。したがって、このようなダイナミックマイクロホン1は不快な衝撃音の発生を防止できる。
【0036】
また、ガスケット6は、ショックマウント5の弾性率より低い弾性率、具体的にはショックマウント5のスチフネスの1/5程度のスチフネスを有する。つまり、ショックマウント5とガスケット6との間では、ショックマウント5のスチフネスが支配的となる。このため、ガスケット6は、外部からの衝撃を受けたときにショックマウント5のみでは収束しきれない衝撃を収束させる。
【0037】
支持筐体7は、話者の手がダイナミックマイクロホン1を保持するためのボディと連結されている。支持筐体7は、ショックマウント5の壁面部531と隔壁72とトランス収容ケース243とともに、空気室4を形成している。つまり、空気室4は、支持筐体7と壁面部531と隔壁72とトランス収容ケース243との内壁により画定された部分である。
【0038】
図3に示すように、ダイナミックマイクロホン1の例では、背面側ユニットケース242とトランス収容ケース243とにより形成された空気室4の一部を構成する空間に、音響抵抗材9が設けられている。音響抵抗材9は、振動板21の背面側の音響インピーダンスを調整可能にする。
図3において、音響抵抗材9は背面側ユニットケース242とトランス収容ケース243とにより形成された空間を埋めるように示しているが、孔246や振動板21の背面側付近に部分的に配置されていてもよい。
【0039】
図4は、ダイナミックマイクロホン1の音響等価回路図を示す。音響等価回路には、
図3と同様の符号が付されている。孔26からの音声信号P
1と、音響スチフネスm
1と音響抵抗r
2を持つ孔27を経た音声信号P
2により音響スチフネスm
0と音響質量s
0を持つ振動板21が振動する。このとき、空気室4に圧力変動が生じると、音響質量s
1に変化が生じて振動板21に振動が伝達し雑音が生じてしまう。ダイナミックマイクロホン1によれば、ガスケット6がショックマウント5の動きも抑制しているため、空気室4の圧力変動による振動雑音を抑制することができる。
【0040】
図5は、参考例として従来のダイナミックマイクロホン10を示す断面図である。参考例のダイナミックマイクロホン10では、トランス80の上下方向の寸法などが相違し、ダイナミックマイクロホン1と比較して支持筐体70により支持される部分が上下方向に大きい。また、参考例のダイナミックマイクロホン10では、同一の弾性率を有する材料により構成される第1ショックマウント51と第2ショックマウント52とによりマイクロホンユニット2を支持している。
【0041】
以上のような構成により、参考例のダイナミックマイクロホン10では、空気室40の容積を大きくすることができない。また、参考例のダイナミックマイクロホン10では、第1ショックマウント51と第2ショックマウント52とのスチフネスに相違がない。このため、参考例のダイナミックマイクロホン10では、外部からの衝撃や空気室4の圧力変動が生じたときにマイクロホンユニット2が回転してしまう、あるいは振動雑音が生じてしまう。
【0042】
一方、以上説明した本実施の形態に係るダイナミックマイクロホン1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0043】
ダイナミックマイクロホン1によれば、空気室の圧力変動や衝撃によってマイクロホンユニット2の位置ずれや振動雑音を抑えることができる。また、ダイナミックマイクロホン1によれば、空気室4の容積を確保することができるため、中低周波数帯域での良好な指向周波数応答を考慮した設計が可能になる。また、ダイナミックマイクロホン1によれば、マイクロホンユニット以外の部品(回路基板や電池など)が内蔵されても、重量バランスの不均衡による位置ずれ(回転運動)をショックマウント5とガスケット6が軽減する。そのため、位置ずれによる音響バランスの悪化や振動雑音などを防ぐことができる。
【0044】
このため、ダイナミックマイクロホン1によれば、小型化した場合においても高い性能を得ることができる。
【0045】
ダイナミックマイクロホン1によれば、ハンドヘルドワイヤレスマイクロホンのようにマイクロホンユニット以外の送信部など部品を搭載するマイクロホンであっても小型化した場合に高い性能を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ダイナミックマイクロホン
2 マイクロホンユニット
3 ネット
4 空気室
5 ショックマウント
6 ガスケット
7 支持筐体
8 トランス
9 音響抵抗材
21 振動板
22 マグネット
23 ボイスコイル
24 ユニットケース
25 ヨーク
26 孔
27 孔
28 ポールピース
71 第2凹部
72 隔壁
241 前面側ユニットケース
242 背面側ユニットケース
243 トランス収容ケース
244 第1凹部
245 連結部
246 孔
511 第1接続部
521 第2接続部
531 壁面部