特許第6432089号(P6432089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432089
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】ディスプレイ装置用基板
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20181126BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20181126BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20181126BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20181126BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20181126BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   B32B7/02 103
   G02F1/1333
   G02B5/28
   G02B1/14
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-512687(P2017-512687)
(86)(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公表番号】特表2017-529260(P2017-529260A)
(43)【公表日】2017年10月5日
(86)【国際出願番号】KR2015009276
(87)【国際公開番号】WO2016036152
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2017年9月12日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0118895
(32)【優先日】2014年9月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502411241
【氏名又は名称】コーニング精密素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】Corning Precision Materials Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】アン、 ジン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ミン ソク
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−277608(JP,A)
【文献】 特開2013−108118(JP,A)
【文献】 特開平11−077885(JP,A)
【文献】 特表2005−531814(JP,A)
【文献】 特開2000−167969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
G02B 1/00− 1/18,
5/20− 5/28
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材;
前記基材上に形成され、AlONからなるハードコート膜;
前記基材と前記ハードコート膜との間に形成され、第1屈折率を有するコーティング膜と第2屈折率を有するコーティング膜とが順次繰り返し積層されてなる多層膜;
を含み、
前記多層膜は、
前記基材上に形成され、前記第1屈折率を有する第1コーティング膜、
前記第1コーティング膜上に形成され、前記第2屈折率を有する第2コーティング膜、
前記第2コーティング膜上に形成され、前記第1屈折率を有する第3コーティング膜、及び
前記第3コーティング膜上に形成され、前記第2屈折率を有する第4コーティング膜を含み、
前記第1屈折率は2.0〜2.5で、前記第2屈折率は1.35〜1.6であり、
前記第1コーティング膜及び前記第3コーティング膜は、Nbから形成され、前記第2コーティング膜及び前記第4コーティング膜は、SiOまたはMgFから形成されることを特徴とするディスプレイ装置用基板。
【請求項2】
前記第1コーティング膜及び前記第3コーティング膜は、前記第2コーティング膜及び前記第4コーティング膜よりも相対的に薄い膜厚で形成されることを特徴とする請求項に記載のディスプレイ装置用基板。
【請求項3】
前記第1コーティング膜、前記第3コーティング膜、及び前記ハードコート膜のうち前記第1コーティング膜が相対的に最も薄い膜厚で形成され、前記ハードコート膜が相対的に最も厚い膜厚で形成されることを特徴とする請求項に記載のディスプレイ装置用基板。
【請求項4】
前記ハードコート膜は、前記多層膜の膜厚さよりも少なくとも10倍以上の厚い膜厚で形成されることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置用基板。
【請求項5】
前記ハードコート膜は、1,000〜3,000nmの膜厚で形成されることを特徴とする請求項に記載のディスプレイ装置用基板。
【請求項6】
前記ハードコート膜上に形成され、前記ハードコート膜よりも屈折率が相対的に低い物質からなる第5コーティング膜を更に含むことを特徴とする請求項に記載のディスプレイ装置用基板。
【請求項7】
前記第5コーティング膜は、前記第2コーティング膜及び前記第4コーティング膜をなす物質と同一の物質からなることを特徴とする請求項に記載のディスプレイ装置用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置用基板に係り、より詳しくは、優れた耐久性を有し、且つディスプレイ装置への適用の際にカラーシフト(color shift)の発生が最小化できるディスプレイ装置用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会が高度情報化していくにつれ、顕著に進歩したイメージディスプレイ(image display)関連部品や機器が普及されつつある。その中でも、画像を表示するディスプレイ装置は、テレビ装置用、パーソナルコンピュータのモニタ装置用等としてその普及が顕著になっている。これに伴い、表示装置に代表されていた陰極線管(cathode ray tube:CRT)は、液晶ディスプレイ装置(liquid crystal display:LCD)、プラズマディスプレイ装置(plasma display panel:PDP)、電界放出表示装置(field emission display:FED)、有機発光ディスプレイ装置(organic light emitting display:OLED)等のようなフラットパネルディスプレイ装置(flat panel display:FPD)に急速に代替されてきている。
【0003】
一方、近年に入り、スマートフォンの登場によって、モバイルディスプレイ装置を中心にタッチパネルの使用が急速に拡大されてきている。タッチパネルは、ディスプレイ装置の前面に配設され、ユーザがディスプレイ装置を見ながら指先またはスタイラス(stylus)等の入力装置でこれをタッチすれば信号が出力できるようにした装置である。このとき、この種のタッチパネルを介して直接的に圧力を受けるカバー基板は、その機能上、高い透光性を満たすと共に、数百万回の接触に耐えられる必要があることから高い機械的耐久性を必要とする。このため、より優れた耐久性や光学特性を同時に実現可能なカバー基板を作製するための努力が続いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2011−0135612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、優れた耐久性を有し、且つディスプレイ装置への適用の際にカラーシフト(color shift)の発生を最小化できるディスプレイ装置用基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明は、基材;前記基材上に形成され、AlONからなるハードコート膜;前記基材と前記ハードコート膜との間に形成され、第1屈折率を有するコーティング膜と第2屈折率を有するコーティング膜とが順次繰り返し積層されてなる多層膜を含むことを特徴とするディスプレイ装置用基板を提供する。
【0007】
ここで、前記第1屈折率を有するコーティング膜と前記第2屈折率を有するコーティング膜とは、少なくとも2回順次繰り返し積層されていてよい。
【0008】
このとき、前記第1屈折率は2.0〜2.5で、前記第2屈折率は1.35〜1.6であってよい。
【0009】
また、前記多層膜は、前記基材上に形成され、前記第1屈折率を有する第1コーティング膜、前記第1コーティング膜上に形成され、前記第1屈折率よりも屈折率が低い第2屈折率を有する第2コーティング膜、前記第2コーティング膜上に形成され、前記第1コーティング膜をなす物質と同一の物質からなる第3コーティング膜、及び前記第3コーティング膜上に形成され、前記第2コーティング膜をなす物質と同一の物質からなる第4コーティング膜を含んでいてよい。
【0010】
このとき、前記第1コーティング膜及び前記第3コーティング膜は、Nb、TiO、Ta、Ti、Ti、及びZrOを含む屈折率が2.0〜2.5の金属酸化物から選択されたいずれか一種の金属酸化物からなるものであってよい。
【0011】
また、前記第1コーティング膜及び前記第3コーティング膜は、前記第2コーティング膜及び前記第4コーティング膜よりも相対的に薄い膜厚で形成されていてよい。
【0012】
そして、前記第1コーティング膜、前記第3コーティング膜、及び前記ハードコート膜のうち前記第1コーティング膜が相対的に最も薄い膜厚で形成され、前記ハードコート膜が相対的に最も厚い膜厚で形成されていてよい。
【0013】
さらに、前記ハードコート膜は、前記多層膜の膜厚さよりも少なくとも10倍以上の厚い膜厚で形成されていてよい。
【0014】
このとき、前記ハードコート膜は、1,000〜3,000nmの膜厚で形成されていてよい。
【0015】
また、前記ハードコート膜上に形成され、前記ハードコート膜よりも屈折率が相対的に低い物質からなる第5コーティング膜を更に含んでいてよい。
【0016】
このとき、前記第5コーティング膜は、前記第2コーティング膜及び前記第4コーティング膜をなす物質と同一の物質からなるものであってよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、AlONからなるハードコート膜の下部に該ハードコート膜と屈折率が同等かそれよりも高屈折のコーティング膜及びそれよりも低屈折のコーティング膜が順次繰り返し積層されてなる多層膜構造を備えることにより、耐久性を向上することができ、且つディスプレイ装置への適用の際に、カラーシフトの発生を最小化できる。
【0018】
特に、本発明によれば、ディスプレイ装置に使用されるタッチパネルのカバー基板への適用の際、優れた耐久性により、数百万回の接触に耐えられ、且つ、カラーシフトの発生の最小化によって、要求される優れた光学的特性をも同時に満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板を概略的に示す断面模式図である。
図2】本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板の波長による透過率及び反射率の変化を示すグラフである。
図3】本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板の波長による透過率及び反射率の変化を示すグラフである。
図4】本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板の光学特性に対するシミュレーション結果を示す図である。
図5】本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板の光学特性に対するシミュレーション結果を示す図である。
図6】本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板の光学特性に対するシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板について詳しく説明する。
【0021】
なお、本発明を説明するにあたって、関連公知機能あるいは構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要に曖昧にし得ると判断された場合、その詳細な説明を省略することにする。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板100は、各種のディスプレイ装置のカバー基板やディスプレイ装置の前面に配設されるタッチパネルのカバー基板への適用が可能な基板である。この種のディスプレイ装置用基板100は、基材110、ハードコート膜120、及び多層膜130を含んでなる。
【0023】
基材110は、ハードコート膜120及び多層膜130を支持する役割をする。このような基材110は、ディスプレイ装置への適用のために、高透明性や耐熱性を有する物質からなることが好ましい。このとき、基材110の透明性に関しては、可視光線透過率が80%以上であることが好ましく、また、耐熱性に関しては、ガラス転移温度が50℃以上であることが好ましい。さらに、基材110は、無機化合物成形物と有機高分子成形物からなるものであってよい。このとき、無機化合物成形物としては、反強化ガラス、石英等が挙げられる。また、有機高分子成形物としては、ポリエチレンテレフタレート(polyetylene terephthalate、PET)、アクリル(acryl)、ポリカーボネート(polycabonate、PC)、ウレタンアクリレート(urethane acrylate)、ポリエステル(polyester)、エポキシアクリレート(epoxy acrylate)、臭素化アクリレート(brominate acrylate)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)等が挙げられる。
【0024】
ハードコート膜120は、基材110上に形成されるが、より詳しくは、基材110上に形成される多層膜130上に形成される。本発明の実施例において、このようなハードコート膜120はAlONからなる。ここで、AlONは硬く且つ透過率に優れる材料と評価される。しかし、角度による光学特性の変化が大きいため、言い換えれば、角度によるカラーシフトの発生によってディスプレイ装置のカバー基板材料への使用には不向きであると認識されてきた。これに対し、本発明の実施例では、AlONからなるハードコート膜120の下部に屈折率が異なるコーティング膜を積層してなる多層膜130を備えることにより、AlONによるカラーシフトの発生問題を解決したが、これについては後述することにする。
【0025】
一方、AlONからなるハードコート膜120は、ディスプレイ装置用基板100の表面強度を強化させる層であるため、多層膜130をなす複数のコーティング膜131〜134よりも相対的に厚い厚膜で形成される。このとき、ハードコート膜120をなすAlONは、屈折率が1.8〜2.3で、多層膜130をなす第1コーティング膜131と第3コーティング膜133とともに高屈折層としての役割をする。このようなハードコート膜120は、高屈折層をなす第1コーティング膜131及び第3コーティング膜133よりも厚い膜厚で形成されることに加え、多層膜130の全体の膜厚よりも少なくとも10倍以上の厚い膜厚で形成されてよい。本発明の実施例において、ハードコート膜160は、1,000〜3,000nmの膜厚、好ましくは、2,000nmの膜厚で形成されてよい。
【0026】
多層膜130は、基材110とハードコート膜120との間に形成される。また、多層膜130は、屈折率が異なる、すなわち、第1屈折率を有するコーティング膜と第2屈折率を有するコーティング膜とが順次繰り返し積層されてなる。このとき、第1屈折率を有するコーティング膜と第2屈折率を有するコーティング膜とは、少なくとも2回順次繰り返し積層されていてよい。本発明の実施例において、第1屈折率を有するコーティング膜は、高屈折層であって屈折率が2.0〜2.5であり、第2屈折率を有するコーティング膜は、低屈折層であって屈折率が1.35〜1.6である。
【0027】
本発明の実施例に係る多層膜130は、順に積層されている第1コーティング膜131、第2コーティング膜132、第3コーティング膜133、及び第4コーティング膜134を含んでなるものであってよいが、これは、一例に過ぎず、より多くのコーティング膜を積層してなるものであってもよい。
【0028】
一方、第1コーティング膜131は基材110上に形成される。本発明の実施例において、第1コーティング膜131は、第1屈折率を有する高屈折層をなす。すなわち、第1コーティング膜131は、第2コーティング膜132及び第4コーティング膜134よりも屈折率が相対的に高い物質からなるものであってよい。また、第1コーティング膜131は、第3コーティング膜133をなす物質と同一の物質からなるものであってよい。そして、第1コーティング膜131は、ハードコート膜120をなすAlONと同等またはそれ以上の屈折率を有する物質からなるものであってよい。このように、第1コーティング膜131が高屈折率を有する物質からなると、膜厚を減少させることができ、これにより、ディスプレイ装置用基板100の構造の単純化が可能になり、且つ、低屈折層をなす第2コーティング膜132との屈折率の差が大きくなることから、光学特性をも高い水準に満足させることができる。本発明の実施例において、高屈折層をなす第1コーティング膜131は、Nb、TiO、Ta、Ti、Ti、及びZrOを含む屈折率が2.0〜2.5の金属酸化物から選択されたいずれか一種の金属酸化物からなるものであってよい。
【0029】
一方、高屈折層をなす第1コーティング膜131、第3コーティング膜133、及びハードコート膜120のうち第1コーティング膜131は、相対的に最も薄い膜厚で形成されてよい。本発明の実施例において、第1コーティング膜131は、8nmの膜厚で形成されるが、これは一例に過ぎず、他の高屈折層の形成膜厚に応じて、第1コーティング膜131の形成膜厚は変化され得る。
【0030】
第2コーティング膜132は、第1コーティング膜131上に形成される。本発明の実施例において、第2コーティング膜132は、第2屈折率を有する低屈折層をなす。すなわち、第2コーティング膜132は、第1コーティング膜131及び第3コーティング膜133よりも屈折率が相対的に低い物質からなるものであってよい。これにより、第1コーティング膜131と第2コーティング膜132は、高屈折層と低屈折層の積層構造をなす。このとき、第2コーティング膜132は、第4コーティング膜134をなす物質と同一の物質からなるものであってよい。
【0031】
本発明の実施例では、高屈折層をなす第1コーティング膜131は屈折率が2.0〜2.5の金属酸化物からなり、低屈折層をなす第2コーティング膜132は屈折率がそれよりも低い、例えば、屈折率が1.35〜1.6のSiOやMgFからなるものであってよい。しかし、本発明の実施例において、第2コーティング膜132をなす物質をSiOやMgFのみに限定するものではない。
【0032】
一方、本発明の実施例において、第2コーティング膜132は、48nmの膜厚で形成されていてよいが、これは、一例に過ぎず、残りの他のコーティング膜の形成膜厚に応じて、第2コーティング膜132の形成膜厚は変化され得る。
【0033】
第3コーティング膜133は、第2コーティング膜132上に形成される。このような第3コーティング膜133は、第2コーティング膜132よりも屈折率が相対的に高い物質からなり、高屈折層をなす。すなわち、第3コーティング膜133は、第1コーティング膜131をなす第1屈折率を有する物質、例えば、Nb、TiO、Ta、Ti、Ti、及びZrOを含む屈折率が2.0〜2.5の金属酸化物から選択されたいずれか一種の金属酸化物からなるものであってよい。これにより、第1コーティング膜131、第2コーティング膜132、及び第3コーティング膜133は、高屈折層、低屈折層、及び高屈折層の積層構造をなす。
【0034】
一方、本発明の実施例において、高屈折層をなす第1コーティング膜131、第3コーティング膜133、及びハードコート膜120のうち、第3コーティング膜133は、第1コーティング膜131よりは厚い膜厚で形成され、ハードコート膜120よりは薄い膜厚で形成される。本発明の実施例では、第1コーティング膜131が8nmの膜厚で形成されるため、第3コーティング膜133は、これよりも厚い18nmの膜厚で形成されていてよい。
【0035】
第4コーティング膜134は、第3コーティング膜133上に形成される。本発明の実施例において、第4コーティング膜134は、第2コーティング膜132をなす物質と同一の物質からなり、第2屈折率を有する低屈折層をなす。すなわち、第4コーティング膜134は、第1コーティング膜131及び第3コーティング膜133よりも屈折率が相対的に低い物質からなる。本発明の実施例において、第2コーティング膜132が、SiOやMgFのように屈折率が1.35〜1.6の物質からなるため、第4コーティング膜134もまた、これと同一の物質からなるものであってよい。これにより、第1コーティング膜131、第2コーティング膜132、第3コーティング膜133、及び第4コーティング膜134は、高屈折層、低屈折層、高屈折層、及び高屈折層のように高屈折層と低屈折層とが順次繰り返し積層されてなる積層構造をなすようになり、このように、ディスプレイ装置から発せられた光が外部へ放出される経路に、屈折率差を有する、すなわち、高屈折層、低屈折層、高屈折層、及び高屈折層のように高屈折層と低屈折層とが順次繰り返し積層されてなる多層膜130が配設されると、ディスプレイ装置の光学特性はより一層向上することができる。
【0036】
さらに、本発明の実施例において、第4コーティング膜134は、48nmの膜厚で形成される第2コーティング膜132よりも薄い20nmの膜厚で形成されていてよい。
【0037】
一方、本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板100は、第5コーティング膜140を更に含んで形成されてよい。ここで、第5コーティング膜140は、ハードコート膜120上に形成され、ハードコート膜120よりも屈折率が相対的に低い物質からなるものであってよい。このとき、第5コーティング膜140は、第2コーティング膜132及び第4コーティング膜134をなす物質と同一の物質からなるものであってよい。すなわち、第5コーティング膜140は、SiOやMgFからなるものであってよい。本発明の実施例において、第5コーティング膜140は、13nmの膜厚で形成されていてよい。このような第5コーティング膜140は、ディスプレイ装置用基板100の保護層としての役割をするようになる。
【0038】
このように、本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板100は、基材110上に順次繰り返し積層された第1コーティング膜131、第2コーティング膜132、第3コーティング膜133、及び第4コーティング膜134からなる多層膜130、ハードコート膜120及び第5コーティング膜140を含んでなる。これにより、本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板100は、ディスプレイ装置から発せられる光の放出経路に沿って高屈折/低屈折/高屈折/低屈折/高屈折/低屈折の積層構造をなし、このような屈折率差によって優れた光学特性を実現することができる。
【0039】
ここで、ハードコート膜120とともに高屈折層をなす第1コーティング膜131及び第3コーティング膜133を、ハードコート膜120をなすAlONではない、それと屈折率が同等かまたはそれよりも屈折率が高い物質、例えば、Nbで形成した理由は、屈折率が高いほどコーティング膜の膜厚を減少させることができるため、多層膜130の構造を単純化させることができ、また低屈折層をなす第2コーティング膜132及び第4コーティング膜134との屈折率差をAlONよりも大きくすると、光学特性をより向上させることができるためである。また、第1コーティング膜131及び第3コーティング膜133をNbで形成した理由は、AlONを多層で形成する場合、形成工程が複雑になり、これに伴い、設備もまた複雑になるのに対し、NbはOの微調整だけで安定した成膜が可能になるためである。そして、第1コーティング膜131及び第3コーティング膜133をNbで形成した理由は、NbはAlONと同様に優れた耐環境性を有するためである。すなわち、本発明の実施例では、AlONと同等またはそれ以上の光学特性及び耐久性を有し、且つ、AlONよりも成膜が容易なNbまたはそれと均等な金属酸化物を、高屈折層をなす第1コーティング膜131及び第3コーティング膜133として選択したのである。
【0040】
一方、図2及び図3は、本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板の波長による透過率及び反射率の変化を示すグラフであり、図2及び図3のグラフに示されるように、本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板は、波長による透過率の変化が大きくないことが確認でき、且つ、多様な角度からの波長による反射率の変化も大きくないことが確認できる。
【0041】
また、図4乃至図6は、本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板の光学特性に関するシミュレーション結果を示す図であり、色a、bに対するシミュレーション結果を示している。シミュレーション結果をみると、本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板は、色a、bに対する透過率及び反射率の偏差が有効範囲内に入ることが明らかになった。
【0042】
前記の結果から分かるように、本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板は、高屈折層がAlONとNbからなることで、優れた耐久性を有し、且つ多様な角度からの透過率及び反射率の偏差も大きくないことから、ディスプレイ装置への適用の際にカラーシフトの発生を最小化できる。特に、本発明の実施例に係るディスプレイ装置用基板がタッチパネルのカバー基板へ適用されると、優れた耐久性によって、数百万回の接触に耐えられ、且つカラーシフトの発生を最小化できることによって、要求される優れた光学的特性をも同時に満足させることができる。
【0043】
一方、本発明の実施例では、高屈折層と低屈折層とが順次繰り返し積層されてなる6層構造を例示した。このとき、本発明の実施例において、積層構造の層数を制限する訳ではないが、層数の増加に伴い構造が複雑化し、工程能力が低下するという不具合が発生する。そして、何よりもディスプレイ装置用基板を8層や10層構造で形成しても、6層構造からなるディスプレイ装置用基板と同等または類似の光学的特性しか実現できないので、敢えて6層よりも多層でディスプレイ装置用基板を形成する理由がない。
【0044】
したがって、本発明の実施例のように、ディスプレイ装置用基板は、6層構造で形成されることが工程的、費用的側面、耐久性及び光学的側面で最も好ましいといえる。
【0045】
以上、本発明を限定された実施例や図面に基づいて説明してきたが、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であればこのような記載から種々の修正及び変形が可能である。
【0046】
よって、本発明の範囲は説明された実施例に限定されて決められてはならず、後述する特許請求の範囲及び特許請求の範囲と均等なもの等によって決められるべきである。
【符号の説明】
【0047】
100:ディスプレイ装置用基板
110:基材
120:ハードコート膜
130:多層膜
131:第1コーティング膜
132:第2コーティング膜
133:第3コーティング膜
134:第4コーティング膜
140:第5コーティング膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6