(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るガスタービンの各種実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
「第一実施形態」
本発明に係るガスタービンの第一実施形態について、
図1〜
図4を参照して説明する。
【0019】
本実施形態のガスタービンは、
図1に示すように、空気を圧縮する圧縮機10と、圧縮機10で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器20と、燃焼ガスにより駆動するタービン30と、圧縮機10から抽気した空気を冷却空気としてタービン30に送る抽気ライン80と、を備えている。
【0020】
圧縮機10は、
図1及び
図2に示すように、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ11と、圧縮機ロータ11を覆う圧縮機車室15と、複数の静翼列14と、を有する。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸方向Da、この軸方向Daの一方側を上流側、他方側を下流側とする。この上流側は、圧縮機10内の空気の流れの上流側でもり、タービン内の燃焼ガスの流れの上流側でもある。よって、この下流側は、圧縮機10内の空気の流れの下流側でもり、タービン30内の燃焼ガスの流れの下流側でもある。また、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。圧縮機ロータ11は、その軸線Arを中心として軸方向Daに延びるロータ軸12と、このロータ軸12に取り付けられている複数の動翼列13と、を有する。複数の動翼列13は、軸方向Daに並んでいる。各動翼列13は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列13の各下流側には、静翼列14が配置されている。各静翼列14は、圧縮機車室15の内側に設けられている。各静翼列14は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。ロータ軸12の径方向外周側と圧縮機車室15の径方向内周側との間であって、軸方向Daで静翼列14及び動翼列13が配置されている領域の環状の空間は、空気が流れつつ圧縮される空気圧縮流路19を成す。すなわち、この圧縮機10は、軸流多段圧縮機である。圧縮機車室15で、中間段に対応する位置には中圧抽気ポート16が形成されている。
【0021】
タービン30は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ31と、タービンロータ31を覆うタービン車室35と、複数の静翼列34と、を有する。燃焼器20は、このタービン車室35の上流側の部分に固定されている。タービンロータ31は、その軸線Arを中心として軸方向Daに延びるロータ軸32と、このロータ軸32に取り付けられている複数の動翼列33と、を有する。複数の動翼列33は、軸方向Daに並んでいる。各動翼列33は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列33の各上流側には、静翼列34が配置されている。各静翼列34は、タービン車室35の内側に設けられている。各静翼列34は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。ロータ軸32の外周側とタービン車室35の内周側との間であって、軸方向Daで静翼列34及び動翼列33が配置されている領域の環状の空間は、燃焼器20からの燃焼ガスGが流れる燃焼ガス流路39を成す。
【0022】
本実施形態のタービン30の段数は、4段である。このため、本実施形態のタービン30は、静翼列34として、第一段静翼列34a、第二段静翼列34b、第三段静翼列34c、第四段静翼列34dがある。また、本実施形態のタービン30は、動翼列33としては、第一段動翼列33a、第二段動翼列33b、第三段動翼列33c、第四段動翼列33dがある。
【0023】
燃焼器20は、タービン車室35の上流側の部分に固定されている。この燃焼器20は、高温高圧の燃焼ガスGをタービン30の燃焼ガス流路39内に送る燃焼筒(又は尾筒)21と、この燃焼筒21内に圧縮機10で圧縮された空気と共に燃料を噴射する燃料噴射器22と、を有する。
【0024】
圧縮機ロータ11とタービンロータ31とは、同一軸線Ar上に位置して互いに連結されてガスタービンロータ1を成す。また、圧縮機車室15とタービン車室35とは、互いに連結されてガスタービン車室5を成す。
【0025】
抽気ライン80は、中圧抽気管81と、この中圧抽気管81に設けられている冷却器86、空気調節弁87、空気調節器84と、を有する。中圧抽気管81は、圧縮機10の中圧抽気ポート16に接続されている中圧抽気本管82と、中圧抽気本管82に接続されている静翼用中圧抽気管83及び動翼用中圧抽気管85と、を有する。
【0026】
静翼用中圧抽気管83は、タービン車室35で、タービン30の中間段に対応する位置に接続されている。この静翼用中圧抽気管83には、ここを通る空気の圧力及び流量を調節するためのオリフィス等の空気調節器84が設けられている。なお、この空気調節器は、調節弁であってもよい。動翼用中圧抽気管85は、ロータ軸32に接続されている。この動翼用中圧抽気管85に、前述の冷却器86及び空気調節弁87が設けられている。冷却器86は、この動翼用中圧抽気管85を通る空気を冷却する。空気調節弁87は、この動翼用中圧抽気管85を通る空気の流量を調節する。なお、冷却器86は、中圧抽気本管82に設けられていてもよい。
【0027】
タービンロータ31のロータ軸32は、
図2に示すように、複数のロータディスク42を有する。複数のロータディスク42は、軸方向Daに並び、これらを軸方向Daに貫通するスピンドルボルト41により相互に連結されている。本実施形態のタービン30は、ロータディスク42として、第一ディスク42a、第二ディスク42b、第三ディスク42c、第四ディスク42dがある。複数のロータディスク42のそれぞれには、一の動翼列33が取り付けられている。すなわち、第一ディスク42aには第一段動翼列33aが取り付けられ、第二ディスク42bには第二段動翼列33bが取り付けられ、第三ディスク42cには第三段動翼列33cが取り付けられ、第四ディスク42dには第四段動翼列33dが取り付けられている。
【0028】
ロータ軸32は、軸受70で支持される小径部43と、小径部43の外径よりも大きな外径で外周に複数の動翼列33が取り付けられている大径部44と、を有する。小径部43は、大径部44の下流側に設けられている。軸受70は、その外周側が軸受カバー71で覆われている。この軸受カバー71の内周側であって、軸受70よりも上流側にはロータ軸32の小径部43との間をシールする上流側シール部材72aが設けられ、軸受70よりも下流側にはロータ軸32の小径部43との間をシールする下流側シール部材72bが設けられている。
【0029】
ロータ軸32の大径部44の下流側であって、小径部43の外周側には、軸線Arを中心として円筒状の内側ディフューザ77が配置され、この内側ディフューザ77の外周側には、軸線Arを中心として円筒状の外側ディフューザ78が配置されている。内側ディフューザ77及び外側ディフューザ78は、いずれも、タービン車室35に直接又は間接的に固定されている。内側ディフューザ77の外周側と外側ディフューザ78の内周側との間の環状の空間は、燃焼ガス流路39から流れ出た燃焼ガスが流れる燃焼ガス排気流路79を成す。
【0030】
ロータ軸32には、中圧抽気ポート16からの冷却空気が流入し、軸方向Daに延びる軸方向通路45と、軸方向通路45に接続され径方向外側に延びる強制渦通路46と、強制渦通路46を通過した冷却空気を第二段動翼列33b(第一動翼列)に導く第二段翼列通路47(第一翼列通路)と、強制渦通路46を通過した冷却空気を第三段動翼列33c(第二動翼列)に導く第三段翼列通路48(第二翼列通路)と、強制渦通路46を通過した冷却空気を第四段動翼列33d(第三動翼列)に導く第四段翼列通路49(第三翼列通路)と、が形成されている。軸方向通路45は、小径部43の下流端で開口し、大径部44の下流部の位置まで軸方向Daに延びている。この軸方向通路45は、軸線Arを中心とした円柱状の通路である。第二段翼列通路47、第三段翼列通路48、第四段翼列通路49、強制渦通路46は、いずれも、ロータ軸32の大径部44に形成されている。強制渦通路46は、大径部44中で最下流の第四段動翼列33dよりも下流側の位置に形成されている。第二段翼列通路47、第三段翼列通路48、第四段翼列通路49は、いずれも、強制渦通路46の径方向外側の端部に接続されている。
【0031】
なお、本願の明細書及び請求の範囲で「AとBとが接続されている。」とは、AからBへ、又はBからAへ空気が流れるように構成されている状態をいう。
【0032】
また、本願の明細書及び請求の範囲で「強制渦通路(Forced Vortex Passage)」とは、回転体に設けられた流体の通路であって、流体を回転体と同じ周速で旋回させながら径方向外側または内側に送る流路をいう。このような流路としては、
図4に示すような、ロータディスク等の回転体Rの径方向に直線状に設けられて、径方向で異なる位置相互を接続する孔Hが一般的である。しかし、強制渦通路はこれに限られるものではなく、孔が湾曲した形状であってもよいし、ディスクに取り付けられて径方向に延びる筒状部材や、遠心圧縮機のようにディスクから軸方向に突出した羽根部材で、強制渦通路を形成してもよい。
【0033】
ロータ軸32の大径部44中の通路について、より詳細に説明する。
第一ディスク42aと第二ディスク42bとの間には、第一キャビティ52aが形成され、第二ディスク42bと第三ディスク42cとの間には、第二キャビティ52bが形成され、第三ディスク42cと第四ディスク42dとの間には、第三キャビティ52cが形成され、第四ディスク42d中の下流側の部分には、第四キャビティ52dが形成されている。第一キャビティ52a、第二キャビティ52b、第三キャビティ52c及び第四キャビティ52dは、いずれも軸線Arを中心とした環状の空間である。第四キャビティ52dは、軸方向Daで強制渦通路46が形成されている位置に形成されており、この強制渦通路46の径方向外側の端部と接続されている。第四ディスク42dには、軸方向Daに延びて第四キャビティ52dと第三キャビティ52cとを連通させる第四ディスク通路53dと、第四キャビティ52dと第四段動翼列33dの取付位置とを連通させる第四段連通路57とが形成されている。第三ディスク42cには、軸方向Daに延びて、第二キャビティ52bと第三キャビティ52cとを連通させる第三ディスク通路53cと、第二キャビティ52bと第三段動翼列33cの取付位置とを連通させる第三段連通路56と、が形成されている。第二ディスク42bには、第二キャビティ52bと第二段動翼列33bの取付位置とを連通させる第二段連通路55が形成されている。
【0034】
第四段翼列通路49は、第四キャビティ52dと第四段連通路57とで形成されている。第三段翼列通路48は、第四キャビティ52dと第四ディスク通路53dと第三キャビティ52cと第三ディスク通路53cと第二キャビティ52bと第三段連通路56とで形成されている。第二段翼列通路47は、第四キャビティ52dと第四ディスク通路53dと第三キャビティ52cと第三ディスク通路53cと第二キャビティ52bと第二段連通路55とで形成されている。
【0035】
よって、第四キャビティ52dは、第四段翼列通路49、第三段翼列通路48、及び第二段翼列通路47の共通通路を形成する。また、第四ディスク通路53dと第三キャビティ52cと第三ディスク通路53cと第二キャビティ52bとは、第三段翼列通路48、及び第二段翼列通路47の共通通路を形成する。
【0036】
ロータ軸32の下流端には、ロータ軸32と軸方向Daで間隔をあけて対向する軸端フランジ74が配置されている。この軸端フランジ74は、軸受カバー71に固定されている。この軸端フランジ74には、動翼用中圧抽気管85の端部が固定されている。この軸端フランジ74には、動翼用中圧抽気管85の内部とロータ軸32に形成されている軸方向通路45とを連通させるための貫通孔が形成されている。
【0037】
次に、以上で説明したガスタービンの動作について説明する。
【0038】
圧縮機10は、外気を吸い込んでこれを圧縮して圧縮空気を生成する。圧縮機10が生成した圧縮空気の一部は、燃焼器20の燃料噴射器22を介して燃焼筒21内に噴出される。また、燃焼筒21内には、燃料噴射器22からの燃料が噴射される。この燃料は、燃焼筒21内の圧縮空気中で燃焼する。この燃焼の結果、燃焼ガスGが生成され、この燃焼ガスGが燃焼筒21からタービン30の燃焼ガス流路39内に流入する。この燃焼ガスGが燃焼ガス流路39を通ることで、タービンロータ31は回転する。
【0039】
燃焼ガス流路39内に配置されているタービン30の動翼は、高温の燃焼ガスに晒される。このため、本実施形態では、第二段動翼列33b、第三段動翼列33c、第四段動翼列33dを構成する動翼に、圧縮機10から抽気した空気を冷却空気として供給して、動翼を冷却する。さらに、本実施形態では、第三段静翼列34cを構成する静翼にも、冷却空気を供給して、静翼を冷却する。
【0040】
図3に、ガスタービンにおける例示的な温度及び圧力バランスを示す。圧縮機10の中圧抽気ポート16における空気の圧力は10ataである。また、燃焼ガス流路39中で第二段静翼列34bと第二段動翼列33bとの間の圧力を8ata、燃焼ガス流路39中で第三段静翼列34cと第三段動翼列33cとの間の圧力を6ata、燃焼ガス流路39中で第四段静翼列34dと第四段動翼列33dとの間の圧力を2ataとする。
【0041】
圧縮機10の中圧抽気ポート16から抽気された冷却空気は、抽気ライン80の中圧抽気本管82を流れ、その一部が静翼用中圧抽気管83に流れ込み、残りの一部が動翼用中圧抽気管85に流れ込む。静翼用中圧抽気管83に流れ込んだ冷却空気は、空気調節器84を通る過程で、その圧力が7ataになって、第三段静翼列34cを構成する複数の静翼に供給され、これら複数の静翼を冷却する。
【0042】
動翼用中圧抽気管85に流れ込んだ冷却空気は、冷却器86を通過する過程で冷却され、空気調節弁87により流量調節された後、ロータ軸32の軸方向通路45に流入する。軸方向通路45に流入する直前の冷却空気は、冷却器86や空気調節弁87を通過する過程等での圧力損失により、その圧力が8ata程度にまで低下している。また、軸方向通路45に流入する直前の冷却空気は、冷却器86により冷却された結果、その温度が低下している。
【0043】
軸方向通路45に流入した冷却空気は、この軸方向通路45から径方向外側に向かって延びる強制渦通路46を経て、第四キャビティ52d内に流入する。冷却空気は、径方向外側に向かって延びる強制渦通路46を通る過程で、軸線Arを中心として回転するロータ軸32から遠心力を受けて加圧される。この結果、第四キャビティ52d内に至った冷却空気の圧力は9ataになる。なお、第四キャビティ52d内の冷却空気は、加圧により温度が上昇する。
【0044】
第四キャビティ52d内の冷却空気の一部は、第四段翼列通路49の一部を成す第四段連通路57を経て、第四段動翼列33dを構成する複数の動翼中の冷却空気通路内に流入する。この冷却空気は、第四段連通路57を通る過程で、圧力及び流量が調節される。この結果、第四段連通路57から第四段動翼列33dの動翼中に流入する直前の冷却空気は、その圧力が3ataになる。この冷却空気は、第四段動翼列33dを構成する複数の動翼中の冷却空気通路を通って、動翼を冷却した後、燃焼ガス流路39中に排出される。
【0045】
第四キャビティ52d内の冷却空気の残りの一部は、第四ディスク通路53d、第三キャビティ52c、第三ディスク通路53cを経て、第二キャビティ52b内に流入する。第二キャビティ52b内の冷却空気の圧力は、第四キャビティ52d内の冷却空気の圧力とほぼ同じで9ataである。
【0046】
第二キャビティ52b内に流入した冷却空気の一部は、第三段翼列通路48の一部を成す第三段連通路56を経て、第三段動翼列33cを構成する複数の動翼中の冷却空気通路内に流入する。この冷却空気は、第三段連通路56を通る過程で、圧力及び流量が調節され、第三段連通路56から第三段動翼列33cの動翼中に流入する直前には、その圧力がほぼ7ataになる。この冷却空気は、第三段動翼列33cを構成する複数の動翼中の冷却空気通路を通って、動翼を冷却した後、燃焼ガス流路39中に排出される。
【0047】
第二キャビティ52b内に流入した冷却空気の残りの一部は、第二段翼列通路47の一部を成す第二段連通路55を経て、第二段動翼列33bを構成する複数の動翼中の冷却空気通路内に流入する。この冷却空気は、第二段連通路55を通る過程で、圧力及び流量が調節される。この結果、第二段連通路55から第二段動翼列33bの動翼中に流入する直前の冷却空気は、その圧力がほぼ9ataになる。この冷却空気は、第二段動翼列33bを構成する複数の動翼中の冷却空気通路を通って、動翼を冷却した後、燃焼ガス流路39中に排出される。
【0048】
第四キャビティ52dから第四段連通路57を経て第四段動翼列33dの動翼中に流入する冷却空気、第二キャビティ52bから第三段連通路56を経て第三段動翼列33cの動翼中に流入する冷却空気、第二キャビティ52bから第二段連通路55を経て第二段動翼列33bの動翼中に流入する冷却空気は、いずれも、各連通路57,56,55を通る過程で圧力損失する一方で、ロータ軸32からの遠心力を受けて加圧される。第四キャビティ52dから第四段連通路57を経て第四段動翼列33dの動翼中に流入する冷却空気は、第四段連通路57を通る過程で、遠心力による加圧効果よりも、連通路57を通過するときの圧力損失が高められるため、結果として減圧される。また、第二キャビティ52bから第三段連通路56を経て第三段動翼列33cの動翼中に流入する冷却空気も、遠心力による加圧効果よりも、連通路56を通過するときの圧力損失が高められるため、結果として減圧される。一方、第二キャビティ52bから第二段連通路55を経て第二段動翼列33bの動翼中に流入する冷却空気は、第二段連通路55を通る過程での圧力損失が抑えられる。
【0049】
以上のように、本実施形態では、圧縮機10から抽気した空気により、タービン30の動翼を冷却することができる。しかも、本実施形態では、圧縮機10から抽気した空気を回転するロータ軸32に流入させ、このロータ軸32中で冷却空気の強制渦を発生させることで、冷却空気の圧力を高めてから、各動翼列33に空気供給している。このため、本実施形態では、圧縮機10からは、低い圧力の空気を抽気することができる結果、圧縮機10の駆動力を抑えることができる。よって、本実施形態では、圧縮機10から抽気した空気によりタービン30の動翼を冷却しつつも、ガスタービンの効率の低下を抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態では、圧縮機10から抽気する空気の圧力を抑えるため、ロータ軸32中に径方向に延びる強制渦通路46を形成し、ここに圧縮機10から抽気した空気を流入させてこの空気を昇圧した後、各動翼列33の動翼に分配している。ところで、複数の動翼列33毎に、強制渦通路46を形成することも可能である。しかしながら、この場合、ロータ軸32中に、軸方向Daで互いに異なる位置に複数の強制渦通路46を形成することになり、結果として、軸方向Daのロータ軸32の長さが長くなり、タービンロータ31の振動特性が低下する。さらに、タービン30の段間距離も長くなり、タービン30の空力性能も低下する。
【0051】
一方、本実施形態では、前述したように、強制渦通路46で空気を昇圧した後、これを複数の動翼列33毎に分配しているので、軸方向Daのロータ軸32の伸長化が抑えられ、タービンロータ31の振動特性の悪化を抑えることができる。さらに、強制渦通路46は、最下流の第四段動翼列33dよりも下流側に形成され、複数の段間のいずれの箇所にも存在しないため、タービン30の段間距離の伸長化も抑えられ、タービン30の空力性能の低下も抑えることができる。
【0052】
また、強制渦通路46の径方向外側端部には、ここを流れる空気中に含まれているゴミ等の異物が溜まることが予想される。本実施形態では、この強制渦通路46が最下流の第四段動翼列33dよりも下流側の位置に形成されているため、ロータ軸32を複数のロータディスク42に分解しなくても、この強制渦通路46の径方向外側端部にアクセスすることができる。よって、本実施形態では、強制渦通路46の径方向外側端部にゴミ等の異物が溜まっても、これを容易に回収することができる。
【0053】
「第二実施形態」
本発明に係るガスタービンの第二実施形態について、
図5〜
図7を参照して説明する。
【0054】
第一実施形態のガスタービンでは、圧縮機10の中圧抽気ポート16から抽気した冷却空気を、タービン30のロータ軸32中で、第二段動翼列33b用の空気と第三段動翼列33c用の空気と第四段動翼列33d用の空気とに分けている。
【0055】
本実施形態のガスタービンでは、
図5及び
図7に示すように、圧縮機10の中圧抽気ポート16からの抽気した冷却空気を、タービン30のロータ軸32外で、まず、第二及び第三段動翼列33b,33c用の空気と第四段動翼列33d用の空気とに分け、ロータ軸32中で、第二及び第三段動翼列33b,33c用の空気を第二段動翼列33b用の空気と第三段動翼列33c用の空気とに分ける。
【0056】
このため、本実施形態では、ロータ軸32の下流端に接続されている動翼用中圧抽気管85には、動翼用中圧抽気管85を流れてきた冷却空気の一部を第四段動翼列33d用の空気として第四段動翼列33dに導く抽気分岐管88が接続されている。この抽気分岐管88は、ロータ軸32の大径部44の下流端に接続されている。
【0057】
本実施形態のロータ軸32には、第一実施形態のロータ軸32と同様、中圧抽気ポート16からの冷却空気が
動翼用中圧抽気管85を介して流入する軸方向通路45と、軸方向通路45に接続された強制渦通路46と、強制渦通路46を通過した冷却空気を第二段動翼列33b(第一動翼列)に導く第二段翼列通路47(第一翼列通路)と、強制渦通路46を通過した冷却空気を第三段動翼列33c(第二動翼列)に導く第三段翼列通路48(第二翼列通路)と、が形成されている。
【0058】
ロータ軸32の大径部44には、第一実施形態のロータ軸32の大径部44と同様、第一キャビティ52a、第二キャビティ52b、第三キャビティ52c、第四キャビティ52dが形成されている。第四キャビティ52dは、強制渦通路46の径方向外側の端部と接続されている。第四キャビティ52dと第三キャビティ52cとは、第四ディスク通路53dで接続され、第三キャビティ52cと第二キャビティ52bとは、第三ディスク通路53cで接続されている。第二キャビティ52bと第三段動翼列33cとは、第三段連通路56で接続され、第二キャビティ52bと第二段動翼列33bとは、第二段連通路55で接続されている。
【0059】
よって、本実施形態でも、第三段翼列通路48は、第四キャビティ52dと第四ディスク通路53dと第三キャビティ52cと第三ディスク通路53cと第二キャビティ52bと第三段連通路56とで形成されている。また、第二段翼列通路47は、第四キャビティ52dと第四ディスク通路53dと第三キャビティ52cと第三ディスク通路53cと第二キャビティ52bと第二段連通路55とで形成されている。
【0060】
本実施形態のロータ軸32の大径部44には、さらに、第四キャビティ52dの径方向外側の位置に、大径部44の下流側端から上流側に向って凹む第五キャビティ52eが形成されている。この第五キャビティ52eと第四段動翼列33dとは、第四段連通路57aで接続されている。よって、本実施形態において、予旋回ノズル67を通過した冷却空気を第四段動翼列33dに導く第四段翼列通路49a(第三翼列通路)は、第五キャビティ52eと第四段連通路57aとを有して形成されている。
【0061】
大径部44の下流側には、大径部44の下流端に対して軸方向Daに間隔をあけて対向し、軸線Arを中心として円板状の軸端板61が配置されている。軸端板61の径方向内側端は、軸受カバー71の上流端に固定されている。この軸端板61と大径部44との間には、大径部44の下流端に対して軸方向Daに間隔をあけて大径部端カバー62が配置されている。この大径部端カバー62の径方向内側の端は軸端板61に固定されている。また、この大径部端カバー62の径方向外側の端は内側ディフューザ77の上流端に固定されている。大径部端カバー62の径方向外側の部分には、大径部44の下流側の外周面と間隔をあけて対向するシール取付部63が形成されている。このシール取付部63には、大径部44と大径部端カバー62との間をシールするシール部材64が設けられている。
【0062】
大径部端カバー62と大径部44との間には、第五キャビティ52eと連通し、軸線Arを中心とした環状の空間である大径部端キャビティ65が形成されている。また、大径部端カバー62と軸端板61との間であって、径方向Drで第五キャビティ52eが形成されている領域には、軸線Arを中心とした環状の空間である空気受入空間66が形成されている。この空気受入空間66は、大径部端カバー62と軸端板61で囲まれた空間である。
【0063】
軸端板61には、抽気分岐管88の端部が固定されている。このため、動翼用中圧抽気管85を流れてきた冷却空気の一部は、抽気分岐管88を介して、軸端板61と大径部端カバー62とで形成されている空気受入空間66に流入する。大径部端カバー62で、大径部44の第五キャビティ52eと対向する位置には、空気受入空間66に流入した冷
却空気にロータ軸32の回転方向の速度成分を付与する予旋回ノズル67が設けられている。対径部端カバー62で、予旋回ノズル67が設けられている位置よりも径方向内側で、大径部44と径方向で対向している位置には、大径部44と大径部端カバー62との間をシールするシール部材64bが設けられている。
【0064】
予旋回ノズル67は、
図6に示すように、周方向Dcに並ぶ複数の旋回翼68を有する。この旋回翼68は、下流側から上流側に向うに連れて次第にロータ軸32の回転方向Rr側に傾いている。この予旋回ノズル67は、下流側の空気受入空間66内に流入した冷却空気の圧力の一部を、ロータ軸32の回転方向Rrへの運動エネルギーに変換して、冷却空気に回転方向Rrの速度成分を付与するノズルである。
【0065】
次に、以上で説明したガスタービンにおける冷却空気の流れについて説明する。
【0066】
圧縮機10の中圧抽気ポート16から抽気されて動翼用中圧抽気管85に流れ込んだ冷却空気は、第一実施形態と同様、冷却器86を通過する過程で冷却され、空気調節弁87により流量調節された後、その一部がロータ軸32の軸方向通路45に流入する。軸方向通路45に流入する直前の冷却空気は、
図7に示すように、その圧力が8ata程度にまで低下しており、その温度も低下している。
【0067】
軸方向通路45に流入した冷却空気は、第一実施形態と同様、この軸方向通路45から径方向外側に向かって延びる強制渦通路46を経て、第四キャビティ52d内に流入する。冷却空気は、径方向外側に向かって延びる強制渦通路46を通る過程で、軸線Arを中心として回転するロータ軸32から遠心力を受けて加圧される。この結果、第四キャビティ52d内に至った冷却空気の圧力は9ataになる。なお、第四キャビティ52d内の冷却空気は、加圧により温度が上昇する。
【0068】
第四キャビティ52d内の冷却空気は、第四ディスク通路53d、第三キャビティ52c、第三ディスク通路53cを経て、第二キャビティ52b内に流入する。第二キャビティ52b内の冷却空気の圧力は、第四キャビティ52d内の冷却空気の圧力とほぼ同じで9ataであり、この冷却空気の温度は、第四キャビティ52d内の冷却空気の温度とほぼ同じである。
【0069】
第二キャビティ52b内に流入した冷却空気の一部は、第一実施形態と同様、第三段翼列通路48の一部を成す第三段連通路56を経て、第三段動翼列33cを構成する複数の動翼中の冷却空気通路内に流入する。この冷却空気は、第三段連通路56を通る過程で、圧力及び流量が調節され、第三段連通路56から第三段動翼列33cの動翼中に流入する直前には、その圧力がほぼ7ataになる。この冷却空気は、第三段動翼列33cを構成する複数の動翼中の冷却空気通路を通って、動翼を冷却した後、燃焼ガス流路39中に排出される。
【0070】
第二キャビティ52b内に流入した冷却空気の残りの一部は、第一実施形態と同様、第二段翼列通路47の一部を成す第二段連通路55を経て、第二段動翼列33bを構成する複数の動翼中の冷却空気通路内に流入する。この冷却空気は、第二段連通路55を通る過程で、圧力及び流量が調節される。この結果、第二段連通路55から第二段動翼列33bの動翼中に流入する直前の冷却空気は、その圧力がほぼ9ataになる。この冷却空気は、第二段動翼列33bを構成する複数の動翼中の冷却空気通路を通って、動翼を冷却した後、燃焼ガス流路39中に排出される。
【0071】
動翼用中圧抽気管85を流れる冷却空気の一部は、抽気分岐管88に流れ込む。抽気分岐管88に流れ込んだ冷却空気は、その圧力が8ata程度である。
【0072】
冷却空気は、抽気分岐管88から空気受入空間66に流入した後、予旋回ノズル67を経て、大径部端キャビティ65内に流入する。冷却空気は、予旋回ノズル67を通過する過程で、圧力の一部がロータ軸32の回転方向Rrへの運動エネルギーに変換されて、回転方向Rrの速度成分が付与される。予旋回ノズル67を通過した後の冷却空気は、その圧力が5ata程度まで低下する。また、予旋回ノズル67を通過した後の冷却空気の軸線Arを基準にした周速度は、ロータ軸32中の第五キャビティ52eの位置における周速度とほぼ同じになる。すなわち、大径部端キャビティ65内の冷却空気は、ロータ軸32中の第五キャビティ52eとほぼ同じ周速度で、環状の大径部端キャビティ65内を旋回する。このため、大径部端キャビティ65内の冷却空気は、ロータ軸32中の第五キャビティ52e内に流入するにあたり、ロータ軸32の回転を妨げる抵抗にならない。
【0073】
第五キャビティ52e内に流入した冷却空気の圧力は、ほぼ5ataである。
【0074】
第五キャビティ52e内の冷却空気は、第四段翼列通路49aの一部を成す第四段連通路57aを経て、第四段動翼列33dを構成する複数の動翼中の冷却空気通路内に流入する。この冷却空気は、第四段連通路57aを通る過程で、圧力及び流量が調節される。この結果、第四段連通路57aから第四段動翼列33dの動翼中に流入する直前の冷却空気は、その圧力が3ataになる。この冷却空気は、第四段動翼列33dを構成する複数の動翼中の冷却空気通路を通って、動翼を冷却した後、燃焼ガス流路39中に排出される。
【0075】
以上のように、本実施形態でも、第一実施形態と同様、圧縮機10から抽気した空気により、タービン30の動翼を冷却することができる。さらに、本実施形態でも、圧縮機10の駆動力を抑えることができ、ガスタービンの効率の低下を抑えることができる。
【0076】
また、本実施形態でも、第一実施形態と同様に、最下流の動翼列33よりも下流側に形成した強制渦通路46で空気を昇圧した後、これを複数の動翼列33毎に分配しているので、タービンロータ31の振動特性の悪化及びタービン30の空力性能の低下を抑えることができる。
【0077】
また、第一実施形態では、第二段動翼列33
b及び第三段動翼列33cを冷却する冷却空気の全てを強制渦通路46に流入させ、ここでタービンロータ31の回転により生じる遠心力を利用して冷却空気を昇圧させている。一方、本実施形態では、第二段動翼列33b及び第三段動翼列33cを冷却する冷却空気のみを強制渦通路46に流入させて昇圧させ、第四段動翼列33dを冷却する冷却空気に関しては、強制渦通路46に流入させずに予旋回ノズル67を通過させることで旋回させ、タービンロータ31の回転抵抗を減らしている。よって、本実施形態では、第一実施形態よりもタービンロータ31の回転抵抗が小さくなり、ガスタービンの効率を高めることができる。
【0078】
また、本実施形態では、第四段動翼列33d用の冷却空気は、ロータ軸32外に設けられている抽気分岐管88内を通るので、この抽気分岐管88に空気調節弁や冷却器を設けることで、この第四段動翼列33d用の冷却空気の流量、圧力、温度を容易に調節することができる。
【0079】
「第三実施形態」
本発明に係るガスタービンの第三実施形態について、
図8〜
図10を参照して説明する。
【0080】
第一及び第二実施形態のガスタービンでは、いずれも、圧縮機10の中圧抽気ポート16からの抽気した冷却空気を第二、第三及び第四段動翼列33b,33c,33d用の冷却空気として利用している。
【0081】
本実施形態のガスタービンでは、
図8及び
図10に示すように、圧縮機10の中圧抽気ポート16(第一抽気ポート)からの抽気した冷却空気を第二及び第三段動翼列33b,33c用の冷却空気として利用し、圧縮機10の低圧抽気ポート17(第二抽気ポート)からの抽気した冷却空気を第四段動翼列33d用の冷却空気として利用する。
【0082】
本実施形態の圧縮機車室15の中間段に対応する位置には、中圧抽気ポート16と低圧抽気ポート17とが形成されている。低圧抽気ポート17は、中圧抽気ポート16が形成されている位置よりも上流側に形成されている。このため、低圧抽気ポート17から抽気される空気の圧力は、中圧抽気ポート16から抽気される空気の圧力よりも低く、例えば、6atmである。
【0083】
本実施形態の抽気ライン80bは、第一実施形態と同様、中圧抽気管81と、この中圧抽気管81に設けられている冷却器86、空気調節弁87、空気調節器84と、を有する。中圧抽気管81は、第一実施形態と同様に、圧縮機10の中圧抽気ポート16に接続されている中圧抽気本管82と、中圧抽気本管82に接続されている静翼用中圧抽気管83及び動翼用中圧抽気管85と、を有する。静翼用中圧抽気管83には、前述の空気調節器84が設けられ、動翼用中圧抽気管85には、前述の冷却器86及び空気調節弁87が設けられている。
【0084】
本実施形態の抽気ライン80bは、さらに、低圧抽気管91と、この低圧抽気管91に設けられている冷却器96、空気調節弁97、空気調節器94と、を有する。低圧抽気管91は、圧縮機10の低圧抽気ポート17に接続されている低圧抽気本管92と、低圧抽気本管92に接続されている静翼用低圧抽気管93及び動翼用低圧抽気管95と、を有する。
【0085】
静翼用低圧抽気管93は、タービン車室35で、タービン30の中間段に対応する位置に接続されている。より具体的には、タービン車室35で、静翼用中圧抽気管83が接続されている位置よりも下流側に接続されている。この静翼用低圧抽気管93には、ここを通る空気の圧力及び流量を調節するためのオリフィス等の空気調節器94が設けられている。動翼用低圧抽気管95は、ロータ軸32に接続されている。この動翼用低圧抽気管95に、前述の冷却器96及び空気調節弁97が設けられている。冷却器96は、この動翼用低圧抽気管95を通る空気を冷却する。空気調節弁97は、この動翼用低圧抽気管95を通る空気の流量を調節する。この動翼用低圧抽気管95の端部は、軸受カバー71に固定されている。
【0086】
本実施形態のロータ軸32には、第一及び第二実施形態と同様、中圧抽気ポート16からの冷却空気が流入し、軸方向Daに延びる第一軸方向通路45と、第一軸方向通路45に接続され径方向外側に延びる第一強制渦通路46と、第一強制渦通路46を通過した冷却空気を第二段動翼列33b(第一動翼列)に導く第二段翼列通路47(第一翼列通路)と、第一強制渦通路46を通過した冷却空気を第三段動翼列33c(第二動翼列)に導く第三段翼列通路48(第二翼列通路)と、が形成されている。さらに、本実施形態のロータ軸32には、低圧抽気ポート17からの冷却空気が流入し、軸方向Daに延びる第二軸方向通路45bと、第二軸方向通路45bに接続され径方向外側に延びる第二強制渦通路46bと、第二強制渦通路46bを通過した冷却空気を第四段動翼列33d(第三動翼列)に導く第四段翼列通路49b(第三翼列通路)と、が形成されている。
【0087】
ロータ軸32の大径部44には、第一及び第二実施形態のロータ軸32の大径部44と同様、第一キャビティ52a、第二
キャビティ52b、第三キャビティ52c、第四キャビティ52dが形成されている。第四キャビティ52dは、第一強制渦通路46の径方向外側の端部と接続されている。第四キャビティ52dと第三キャビティ52cとは、第四ディスク通路53dで接続され、第三キャビティ52cと第二キャビティ52bとは、第三ディスク通路53cで接続されている。第二キャビティ52bと第三段動翼列33cとは、第三段連通路56で接続され、第二キャビティ52bと第二段動翼列33bとは、第二段連通路55で接続されている。
【0088】
よって、本実施形態でも、第三段翼列通路48は、第四キャビティ52dと第四ディスク通路53dと第三キャビティ52cと第三ディスク通路53cと第二キャビティ52bと第三段連通路56とで形成されている。また、第二段翼列通路47は、第四キャビティ52dと第四ディスク通路53dと第三キャビティ52cと第三ディスク通路53cと第二キャビティ52bと第二段連通路55とで形成されている。
【0089】
第二軸方向通路45bは、
図8及び
図9に示すように、軸線Arを中心として軸方向Daに延びている第一軸方向通路45の径方向外側の位置に形成されている。第二軸方向通路45bの下流端には、この下流端から径方向外側に延び、小径部43の外周面で開口する低圧空気受入通路45cが形成されている。
【0090】
軸受カバー71中で、軸方向Daで低圧空気受入通路45cの開口と実質的に同じ位置には、外周側から内周側に向かって貫通する貫通孔が形成されている。動翼用低圧抽気管95の端部は、この貫通孔が形成されている位置に固定されている。軸受カバー71の内周側と小径部43の外周側との間であって、軸受カバー71の貫通孔を基準にして上流側及び下流側のそれぞれはシール部材72b,72cでシールされている。
【0091】
大径部44の下流側であって径方向外側は、大径部端カバー62bで覆われている。この大径部端カバー62bと大径部44との間には、軸線Arを中心として環状の第五キャビティ52fが形成されている。
【0092】
第二軸方向通路45bの上流端には、この上流端から径方向外側に延び、第五キャビティ52fに連通する第二強制渦通路46bが接続されている。この第二強制渦通路46bは、大径部44中で第一強制渦通路46よりも下流側の位置に形成されている。大径部44には、第五キャビティ52fと第四段動翼列33dの取付位置とを連通させる第四段連通路57bが形成されている。
【0093】
よって、本実施形態の第四段翼列通路49bは、第五キャビティ52fと第四段連通路57bとで形成されている。
【0094】
次に、以上で説明したガスタービンにおける冷却空気の流れについて説明する。
【0095】
圧縮機10の中圧抽気ポート16から抽気されて動翼用中圧抽気管85に流れ込んだ冷却空気は、第一及び第二実施形態と同様、冷却器86を通過する過程で冷却され、空気調節弁87により流量調節された後、ロータ軸32の第一軸方向通路45に流入する。第一軸方向通路45に流入する直前の冷却空気は、
図10に示すように、その圧力が8ata程度にまで低下しており、その温度も低下している。
【0096】
第一軸方向通路45に流入した冷却空気は、第一及び第二実施形態と同様、この第一軸方向通路45から径方向外側に向かって延びる第一強制渦通路46を経て、第四キャビティ52d内に流入する。冷却空気は、径方向外側に向かって延びる強制渦通路46を通る過程で、軸線Arを中心として回転するロータ軸32から遠心力を受けて加圧される。この結果、第四キャビティ52d内に至った冷却空気の圧力は9ataになる。なお、第四キャビティ52d内の冷却空気は、加圧により温度が上昇する。
【0097】
第四キャビティ52d内の冷却空気は、第四ディスク通路53d、第三キャビティ52c、第三ディスク通路53cを経て、第二キャビティ52b内に流入する。第二キャビティ52b内の冷却空気の圧力は、第四キャビティ52d内の冷却空気の圧力とほぼ同じで9ataであり、この冷却空気の温度は、第四キャビティ52d内の冷却空気の温度とほぼ同じである。
【0098】
第二キャビティ52b内に流入した冷却空気の一部は、第一及び第二実施形態と同様、第三段翼列通路48の一部を成す第三段連通路56を経て、第三段動翼列33cを構成する複数の動翼中の冷却空気通路内に流入する。この冷却空気は、第三段連通路56を通る過程で、圧力及び流量が調節される。この結果、第三段連通路56から第三段動翼列33cの動翼中に流入する直前の冷却空気は、その圧力がほぼ7ataになる。この冷却空気は、第三段動翼列33cを構成する複数の動翼中の冷却空気通路を通って、動翼を冷却した後、燃焼ガス流路39中に排出される。
【0099】
第二キャビティ52b内に流入した冷却空気の残りの一部は、第一実施形態と同様、第二段翼列通路47の一部を成す第二段連通路55を経て、第二段動翼列33bを構成する複数の動翼中の冷却空気通路内に流入する。この冷却空気は、第二段連通路55を通る過程で、圧力及び流量が調節される。この結果、第二段連通路55から第二段動翼列33bの動翼中に流入する直前の冷却空気は、その圧力がほぼ9ataになる。この冷却空気は、第二段動翼列33bを構成する複数の動翼中の冷却空気通路を通って、動翼を冷却した後、燃焼ガス流路39中に排出される。
【0100】
圧縮機10の低圧抽気ポート17から抽気された冷却空気は、抽気ライン80bの低圧抽気本管92を流れ、その一部が静翼用低圧抽気管93に流れ込み、残りの一部が動翼用低圧抽気管95に流れ込む。静翼用低圧抽気管93に流れ込んだ冷却空気は、空気調節器94を通る過程で、その圧力が4ataになって、第四段静翼列34dを構成する複数の静翼に供給され、これら複数の静翼を冷却する。
【0101】
動翼用低圧抽気管95に流れ込んだ冷却空気は、冷却器96を通過する過程で冷却され、空気調節弁97により流量調節された後、ロータ軸32の第二軸方向通路45bに流入する。第二軸方向通路45bに流入する直前の冷却空気は、冷却器96や空気調節弁97を通過する過程等での圧力損失により、その圧力が4ata程度にまで低下している。また、第二軸方向通路45bに流入する直前の冷却空気は、冷却器86により冷却される。
【0102】
第二軸方向通路45bに流入した冷却空気は、この第二軸方向通路45bから径方向外側に向かって延びる第二強制渦通路46bを経て、第五キャビティ52f内に流入する。冷却空気は、径方向外側に向かって延びる第二強制渦通路46bを通る過程で、軸線Arを中心として回転するロータ軸32から遠心力を受けて加圧される。この結果、第五キャビティ52f内に至った冷却空気の圧力は5ataになる。
【0103】
第五キャビティ52f内の冷却空気は、第四段翼列通路49bの一部を成す第四段連通路57bを経て、第四段動翼列33dを構成する複数の動翼中の冷却空気通路内に流入する。この冷却空気は、第四段連通路57bを通る過程で、圧力及び流量が調節される。また、この冷却空気は、燃焼ガス流路39に近づくに連れて、燃焼ガスの熱との熱交換量が増えて、その温度が徐々に高まる。この結果、第四段連通路57bから第四段動翼列33dの動翼中に流入する直前の冷却空気は、その圧力が3ataになる。この冷却空気は、第四段動翼列33dを構成する複数の動翼中の冷却空気通路を通って、動翼を冷却した後、燃焼ガス流路39中に排出される。
【0104】
以上のように、本実施形態でも、第一及び第二実施形態と同様、圧縮機10から抽気した空気により、タービン30の動翼を冷却することができる。さらに、本実施形態でも、圧縮機10での駆動力を抑えることができ、ガスタービンの効率の低下を抑えることができる。
【0105】
また、本実施形態では、第一及び第二強制渦通路46,46bを最下流の動翼列33よりも下流側に形成している上に、第一強制渦通路46で空気を昇圧した後、これを第二段動翼列33b及び第三段動翼列33cに分配している。このため、本実施形態でも、ロータ軸32の長さ及び段間距離の伸長化が抑えられ、ロータの振動特性の悪化及びタービン30の空力性能の低下を抑えることができる。
【0106】
本実施形態において、第四段動翼列33dには、第二段動翼列33bや第三段動翼列33cに供給する冷却空気の圧力よりも低い圧力の冷却空気でも供給することができる。しかも、本実施形態では、圧縮機10から抽気した空気を回転するロータ軸32に流入させ、このロータ軸32中で冷却空気の強制渦を発生させることで、冷却空気の圧力を高めてから、第四段動翼列33dに空気供給している。このため、本実施形態では、中圧抽気ポート16からの空気よりも低圧の空気を低圧抽気ポート17から冷却空気として抽気し、これを第四段動翼列33dの冷却空気として利用することができる。よって、本実施形態では、圧縮機10で第四段動翼列33dの冷却用の空気の圧縮比を小さくできる結果、圧縮機10の駆動力を抑えることができる。よって、本実施形態では、第一実施形態よりもガスタービンの効率を高めることができる。
【0107】
「第三実施形態の変形例」
第三実施形態の変形例について、
図11を参照して説明する。
【0108】
第三実施形態では、第一強制渦通路46の径方向外側の端部が第四キャビティ52dに接続されている。第四キャビティ52dは、第四ディスク通路53d、第三キャビティ52c及び第三ディスク通路53cを介して、第二キャビティ52bと接続されている。この第二キャビティ52bは、第二段連通路55を介して、第二段動翼列33bに接続されていると共に、第三段連通路56を介して、第三段動翼列33cに接続されている。
【0109】
本変形例では、スピンドルボルト41が挿通されるロータ軸32のボルト孔41cの断面形状を長円形状にし、スピンドルボルト41が挿通されたボルト孔41c中の隙間を冷却空気の通路53eとしている。この通路53eは、スピンドルボルト41と同様に、軸方向Daに延びている。この通路53eの下流端には、第一強制渦通路46の径方向外側端部が接続されている。また、この通路53eの上流端には、第二キャビティ52bが接続されている。この第二キャビティ52bは、以上の各実施形態と同様、第二段連通路55を介して、第二段動翼列33bに接続されていると共に、第三段連通路56を介して、第三段動翼列33cに接続されている。
【0110】
また、本変形例では、第二強制渦通路46bの径方向外側の端部に第四キャビティ52dが接続されている。この第四キャビティ52dは、第四段連通路57を介して、第四段動翼列33dと接続されている。
【0111】
以上のように、強制渦通路と各動翼列とを接続する通路は、タービンロータの構造に応じて、適宜形成してよい。
【0112】
「その他の変形例」
第一、第二及び第三実施形態の動翼用中圧抽気管85や、第三実施形態の動翼用低圧抽気管95には、空気調節弁87,97や冷却器86,
96を設けているが、これらは必須のものではない。よって、これらの抽気管における空気調節弁87,97や冷却器86,96を適宜省略してもよい。
【0113】
また、以上の実施形態では、複数の動翼列33への冷却空気が通る強制渦通路46を最下流の動翼列33よりも下流側に配置している。しかしながら、ロータ軸32の大径部44におけるいずれかの段間に強制渦通路46を形成してもよい。この場合においても、強制渦通路46の径方向外側の端で、この通路46を複数の動翼列33毎に分岐させることで、強制渦通路46の数を少なくでき、結果として、ロータ軸32の長さの伸長化、複数段の段間距離の伸張化を抑えることができる。但し、強制渦通路46は、全ての段間距離の伸張化を抑える観点から、以上の実施形態のように、最下流の動翼列33よりも下流側に形成することが好ましい。
【0114】
また、以上の実施形態では、いずれも、圧縮機車室15に抽気ポート16,17を形成し、圧縮機車室15外及びタービン車室35外に抽気ライン80を配置している。しかしながら、例えば、圧縮機ロータ11に抽気ポートを形成し、この抽気ポートに圧縮機ロータ11及びタービンロータ31内を軸方向Daに延びる軸方向通路を接続してもよい。