(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432403
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】転炉の操業方法
(51)【国際特許分類】
C21C 5/28 20060101AFI20181126BHJP
C21C 1/02 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
C21C5/28 A
C21C1/02 110
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-53965(P2015-53965)
(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-172906(P2016-172906A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(72)【発明者】
【氏名】浅見 千裕
(72)【発明者】
【氏名】木下 聡
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4421313(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 1/00− 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2基の転炉を用いて溶銑を精錬処理する転炉の操業方法であって、
前記2基の転炉は、それぞれ、1回の溶銑の装入で精錬処理を行う溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理と、精錬処理の1回目の処理の後、溶銑を前記転炉から一旦排出し、その後前記溶銑を前記転炉に戻して2回目の処理を行う溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理とを併用して溶銑予備処理を行うことを特徴とする、転炉の操業方法。
【請求項2】
前記2基の転炉は、それぞれ、前記溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理の前および後に、前記溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理の前記1回目の処理と前記2回目の処理とを行うことを特徴とする、請求項1に記載の転炉の操業方法。
【請求項3】
前記1回目の処理は脱りん処理であり、前記2回目の処理は脱炭処理であり、前記溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理の前および後に前記溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理を行う際、前記脱炭処理に続いて前記脱りん処理を行うことを特徴とする、請求項2に記載の転炉の操業方法。
【請求項4】
前記1回目の処理は脱りん処理であり、前記2回目の処理は脱炭処理であり、前記溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理の前および後に前記溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理を行う際、前記脱炭処理を複数チャージ連続して行った後、前記脱りん処理を複数チャージ連続して行うことを特徴とする、請求項2に記載の転炉の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑の脱P、脱C等の精錬処理を行う転炉の操業方法に関するものであり、殊に、2基の転炉を用いて溶銑を精錬処理する場合の転炉の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉で生産される溶銑は、主な不純物としてCやP、Sなどを含んでいる。そのため、転炉中で溶銑に酸素を吹き込み、CやP、Sなどの不純物をスラグとして取り除く転炉溶銑予備処理が行われている。
【0003】
転炉溶銑予備処理には、溶銑を転炉へ1回装入して脱りん(脱P)および脱炭(脱C)処理を連続して行う溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理方法、例えばMURC(Multi-Refining Converter)法と呼ばれる方法と、脱Pを行った後に一旦溶銑を転炉から取り出し、脱Cを行う際に再び溶銑を転炉に装入する溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理、例えばLD−ORP(LD converter - Optimized Refining Process)法と呼ばれる方法などがある。
【0004】
溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理方法は、脱Pおよび脱Cの両方を短時間で行えるという利点があるが、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理方法と比較すると、脱P効果がやや少なく、例えばPの含有量が0.02%未満の極低P鋼を製造する際には、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理方法を行う必要がある。つまり、製造する鋼種構成に応じて、溶銑1回装入型または溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理方法の比率が決められる。
【0005】
3基の転炉を用いて、溶銑1回装入型および溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理方法を併用して操業する場合の操業方法として、例えば特許文献1に、3つの転炉がいずれも脱C用の転炉、脱Pと脱C兼用の転炉、脱P用の転炉の順で使用され、その後修理されて、再び、同様の順で使用および修理される方法が開示されている。この方法では、3つの転炉のいずれか1つが溶銑2回装入型の脱C用転炉として使用されているときは、他の1つは溶銑2回装入型の脱P用転炉として使用され、残りの1つは脱Cと脱P兼用の溶銑1回装入型の転炉として使用される。
【0006】
また、例えば特許文献2には、2基の転炉で効率よく操業する操業方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−113029号公報
【特許文献2】特開2002−363630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
溶銑1回装入型と溶銑2回装入型との稼働比率を1:2とし、特許文献1の方法に基づいて、3基の転炉2a、2b、2cの脱Pまたは/および脱Cの1チャージ毎の操業スケジュールを示した例を
図7に示す。
図7の横方向は時間の長さを示し、操業時間が図の右方向に進行している。溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理方法としてのMURC法による脱Pおよび脱Cの1サイクルは約35分であり、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理方法としてのLD−ORP法による脱P、脱Cは、それぞれ約25分を要する。なお、
図7では、溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理を「脱P,脱C」と記載し、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理を「脱P」または「脱C」と記載した。3基の転炉を操業する場合、例えば第1の転炉2aを溶銑2回装入型の脱P用の転炉、第2の転炉2bを溶銑2回装入型の脱C用の転炉、第3の転炉2cを溶銑1回装入型の脱Pおよび脱C兼用の転炉とし、第1の転炉2aで脱Pした後の溶銑を順次第2の転炉2bに装入して脱Cを行うことにより、効率よく操業することができる。
図7には、溶銑1回装入型1チャージ、溶銑2回装入型各2チャージを1サイクルとした操業スケジュールを2サイクル表示しており、この方法によれば1チャージ当たり16.7分で操業できる。
【0009】
ところが、この3基の転炉2a、2b、2cのうち、1基をメンテナンス等で停止し、2基で操業する場合、脱C用の転炉と脱P用の転炉とを分けて、溶銑1回装入型と溶銑2回装入型との稼働比率を1:2とするには、例えば
図8、
図9に示すように、いずれかの転炉の空き時間が長くなり、生産性が低くなる。
図8は、
図7の第1の転炉2aと第3の転炉2cとで行っていた処理を第1の転炉2aのみで行う場合、すなわち、第1の転炉2aを、溶銑2回装入型の脱P用と溶銑1回装入型の脱Pおよび脱C用との兼用とし、第2の転炉2bを、溶銑2回装入型の脱C用とした操業スケジュールである。この場合、第1の転炉2aが休みなく稼働するのに対して、第2の転炉2bの空き時間が長く、1チャージ当たり28.3分を要する。また、
図9は、
図7の第2の転炉2bと第3の転炉2cとで行っていた処理を第2の転炉2bのみで行う場合、すなわち、第1の転炉2aを溶銑2回装入型の脱P用とし、第2の転炉2bを溶銑1回装入型の脱Pおよび脱C用と溶銑2回装入型の脱C用との兼用とした操業スケジュールである。この場合、第2の転炉2bが休みなく稼働するのに対して、第1の転炉2aの空き時間が長く、1チャージ当たり28.3分を要する。なお、
図8、
図9も、
図7と同様、溶銑1回装入型1チャージ、溶銑2回装入型各2チャージを1サイクルとした操業スケジュールを2サイクル表示している。
【0010】
また、特許文献2では、溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理方法を行うことには言及されていない。
【0011】
本発明の目的は、2基の転炉を用いて溶銑を精錬処理する際、2基を効率良く稼動できる転炉の操業方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するため、本発明は、2基の転炉を用いて溶銑を精錬処理する転炉の操業方法であって、前記2基の転炉は、それぞれ、1回の溶銑の装入で精錬処理を行う溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理と、精錬処理の1回目の処理の後、溶銑を前記転炉から一旦排出し、その後前記溶銑を前記転炉に戻して2回目の処理を行う溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理とを併用して溶銑予備処理を行うことを特徴とする、転炉の操業方法を提供する。
【0013】
前記溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理の前および後に、前記溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理の前記1回目の処理と前記2回目の処理とを行うことが好ましい。その場合、前記1回目の処理は脱りん処理であり、前記2回目の処理は脱炭処理であり、前記溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理の前および後に前記溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理を行う際、前記脱炭処理に続いて前記脱りん処理を行ってもよく、あるいは、前記脱炭処理を複数チャージ連続して行った後、前記脱りん処理を複数チャージ連続して行ってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2基の転炉を効率よく稼働させて生産性向上を図り、生産コストの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる転炉精錬設備の説明図である。
【
図2】転炉の構造を説明するための縦断面図である。
【
図4】LD−ORP法の説明図であり、(a)は溶湯の排出、(b)はスラグの排出を示す。
【
図5】本発明の第一の実施の形態にかかる操業スケジュールの説明図である。
【
図6】本発明の第二の実施の形態にかかる操業スケジュールの説明図である。
【
図7】3基の転炉による従来例の操業スケジュールの説明図である。
【
図8】2基の転炉による従来例の操業スケジュールの説明図である。
【
図9】2基の転炉による従来の異なる例の操業スケジュールの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態にかかる転炉精錬設備1の説明図である。また、
図2は、この転炉精錬設備1に備えられた2基の転炉2a、2bの構造を示す縦断面図である。
【0018】
図1に示すように、転炉精錬設備1には、2基の転炉2a、2bが並べて配置されている。これら2基の転炉2a、2bはいずれも同様の構成を有し、
図2に示すように、鋼製の転炉容器3の内面に、煉瓦などからなる耐火物ライニング4を貼り付けた構造を有している。以下、代表して転炉2aについて説明する。
【0019】
転炉2aの上端は開口部5となっており、この開口部5を通じて転炉2a内に溶銑やスクラップ、スラグ原料などが入れられ、また、この開口部5を通じて転炉2a内からスラグが排出される。転炉2aの側面には、開口部5よりも転炉容器3の底部に近い下方に位置する出鋼口6が形成されている。この出鋼口6を通じて、転炉2a内から溶湯(溶銑または精錬された溶鋼)が排出される。他の転炉2b、2cも同様の構成を有しており、転炉精錬設備1では、各転炉2a、2bに対して、溶銑やスクラップ、スラグ原料などが適宜選択的に入れられるようになっている。
【0020】
本発明においては、2基の転炉2a、2bは、いずれも、溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理方法と溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理方法とを併用して行う。
【0021】
溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理方法とは、1回の溶銑の装入で、精錬処理における脱りん(脱P)と脱炭(脱C)の両方の処理を行ういわゆる同一炉精錬法であり、この同一炉精錬法としては、MURC(Multi-Refining Converter)法と呼ばれている方法がある。これは、転炉2a内で先ず脱Pした後、
図3に示すように、出鋼口6を上にした状態で転炉2aを傾けて開口部5からスラグ10のみを捨て(中間排滓)、転炉2a内に残した脱P済みの溶銑11を更に脱C処理する方法である。MURC法は、比較的短時間で脱Pおよび脱Cの両方を行えるうえ、スラグの発生量を抑制でき、高品質な鋼を溶製できるといった利点がある。
【0022】
また、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理方法とは、転炉2a内で先ず脱Pした後、
図4(a)に示すように、出鋼口6を下に向けて転炉2aを傾けることにより、転炉2a内の溶銑11を出鋼口6から出湯して一旦取鍋12に移し、次に、
図4(b)に示すように、転炉2aを逆方向、すなわち出鋼口6を上に向けて転炉2aを傾けることにより転炉2a内に残っていたスラグ10を完全に排出し、その後、取鍋12に移した溶銑11を空の転炉2a内に戻して脱C処理する方法である。このような精錬法は、LD−ORP(LD converter - Optimized Refining Process)法と呼ばれている。一般に、脱Pを行う際には、転炉2aに入れられた溶銑の温度は、例えば1300〜1400℃程度に保たれ、脱C処理を行う際には、転炉2aに入れられた溶銑の温度は、1600℃以上に上昇する。この溶銑2回装入型の溶銑予備処理方法は、溶銑1回装入型の溶銑予備処理方法に比べて、脱Pおよび脱Cを行う合計時間が長くかかるものの、P等の不純物を極めて少なくすることができ、より高品質な低P鋼を溶製できるといった利点がある。
【0023】
以下、本発明の実施形態として、溶銑1回装入型のMURC法と溶銑2回装入型のLD−ORP法との操業比率を1:2とした場合の転炉の操業方法について説明する。
【0024】
図5は、本発明に係る第一の実施形態を示す転炉の操業方法の例であり、2基の転炉2a、2bを備えた転炉精錬設備1における操業スケジュールの一例を示している。
図5の横方向は時間の長さを示し、操業時間が図の右方向に進行している。図中の上段から順に、第1の転炉2a、第2の転炉2bの状態であり、各転炉2a、2bにおける操業状態を同時進行的に示している。
図5に示されているのは操業スケジュールの一部であり、同様のパターンで連続して操業が行われる。また、前述の
図7〜
図9と同様、溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理を「脱P,脱C」と記載し、溶銑2回装入型の1回目の転炉溶銑予備処理である脱りん処理を「脱P」、2回目の処理である脱炭処理を「脱C」と記載した。
【0025】
図5に示す第一の実施形態では、第1の転炉2aおよび第2の転炉2bは、溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理方法の前および後に、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理の1回目の処理である脱P処理と、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理の2回目の処理である脱C処理とを交互に2チャージずつ行う。この溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理は、先に脱C処理を行った後に脱P処理、脱C処理、脱P処理の順で行う。すなわち、MURC法による脱Pおよび脱C処理を1チャージ行った後、脱C処理を1チャージ、脱P処理を1チャージ、脱C処理を1チャージ、脱P処理を1チャージ行い、その後、MURC法を1チャージ・・・と繰り返す。なお、本実施形態においては、溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理方法としてのMURC法による溶銑の装入から脱P、中間排滓、脱C、出鋼、排滓までの1サイクルに要する時間は、約35分である。また、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理方法としてのLD−ORP法による脱P(溶銑の装入、脱P、出湯、排滓)、脱C(溶銑の再装入、脱C、出鋼、排滓)のそれぞれの1サイクルに要する時間は、それぞれ約25分である。
【0026】
転炉2a、2bの精錬処理の相対的なタイミングは、例えば
図5に示すように、第1の転炉2aによる脱Pおよび脱C処理の開始時間から65分後に、第2の転炉2bによる脱Pおよび脱C処理が行われるようにする。また、図中の矢印は、処理後の溶銑の移動を示す。例えば、
図5において第1の転炉2aで脱P処理された溶銑は、第2の転炉2bに装入され、第2の転炉2bで脱C処理が行われる。第2の転炉2bで脱P処理された溶銑は、第1の転炉2aに装入され、第1の転炉2aで脱C処理が行われる。
図5は、それぞれの転炉2a、2bにおいて、溶銑1回装入型1チャージ、溶銑2回装入型各2チャージを操業した操業スケジュールを表示しており、以下同様の操業を繰り返して行う。この操業方法によれば、溶銑1回装入型の脱Pおよび脱C処理が2チャージ、溶銑2回装入型の脱Pおよび脱C処理が各4チャージ、合計6チャージの脱P処理と脱C処理の両方の溶銑予備処理を135分間で行うことができ、1チャージ当たり約22.5分となる。
【0027】
本実施形態では、溶銑2回装入型の脱P終了後の溶銑は、互いに異なる転炉で脱C処理が行われ、しかも脱P終了から脱C開始までに10分以上の時間を確保できる。したがって、転炉2a、2bを稼働している間に、脱P後の溶銑を収容した取鍋の移動および吊り等を行うことができるので、転炉2a、2bの非稼働時間を省略し、極めて効率よく稼働することができる。
【0028】
また、本実施形態では、各転炉2a、2bにおいて、脱C処理後に脱P処理を行うことにより、脱C処理で発生したスラグを、次の工程である脱P処理に利用することができる。したがって、脱P処理に用いる脱りん剤の添加を削減でき、コストを下げることができる。
【0029】
図6は、本発明に係る第二の実施形態を示す転炉の操業方法の例である。
図6の表示方法は
図5と同様である。
【0030】
図6に示す第二の実施形態では、第1の転炉2aおよび第2の転炉2bは、溶銑1回装入型の脱Pおよび脱C処理を行った後、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理の2回目の処理である脱C処理を2チャージ連続して行い、その後、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理の1回目の処理である脱P処理を2チャージ連続して行い、続いて脱Pおよび脱C処理・・・を繰り返す。
【0031】
本実施形態での転炉2a、2bの精錬処理の相対的なタイミングは、例えば
図6に示すように、第1の転炉2aによる脱Pおよび脱C処理の開始時間から60分後に、第2の転炉2bによる脱Pおよび脱C処理が行われるようにする。また、図中の矢印は、処理後の溶銑の移動を示す。例えば、
図6において第1の転炉2aで2チャージ連続して行う脱P処理の1チャージ目で脱P処理された溶銑は、第2の転炉2bに装入され、第2の転炉2bで脱C処理が行われる。第1の転炉2aで連続して行う脱P処理の2チャージ目で脱P処理された溶銑は、第1の転炉2aで脱Pおよび脱C処理を行っている間、取鍋12で保管され、脱Pおよび脱C処理終了後、第1の転炉2aに戻されて、脱C処理が行われる。同様に、第2の転炉2bで2チャージ連続して行う脱P処理の1チャージ目で脱P処理された溶銑は、第1の転炉2aに装入され、第1の転炉2aで脱C処理が行われる。第2の転炉2bで連続して行う脱P処理の2チャージ目で脱P処理された溶銑は、第2の転炉2bで脱Pおよび脱C処理を行っている間、取鍋12で保管され、脱Pおよび脱C処理終了後、第2の転炉2bに戻されて、脱C処理が行われる。
図6は、それぞれの転炉2a、2bにおいて、溶銑1回装入型1チャージ、溶銑2回装入型各2チャージを操業した操業スケジュールを表示しており、以下同様の操業を繰り返して行う。この操業方法によれば、溶銑1回装入型の脱Pおよび脱C処理が2チャージ、溶銑2回装入型の脱Pおよび脱C処理が各4チャージ、合計6チャージの脱P処理と脱C処理の両方の溶銑予備処理を135分間で行うことができ、1チャージ当たり約22.5分となる。
【0032】
本実施形態では、溶銑2回装入型の脱P終了後の溶銑は、脱C開始までに10分以上の時間を確保して互いに異なる転炉で脱C処理が行われるか、あるいは、溶銑1回装入型の脱Pおよび脱C処理を挟んだ後に同じ転炉で脱C処理が行われる。したがって、転炉2a、2bを稼働している間に、脱P後の溶銑を収容した取鍋の移動や吊り等を行うことができるので、転炉2a、2bの非稼働時間を省略し、極めて効率よく稼働することができる。
【0033】
また、本実施形態では、各転炉2a、2bで、脱C処理を2チャージ連続して行うことで、2チャージ目の脱C処理時には、転炉2a、2b内に残留するPが極めて少ない状態で精錬される。したがって、2チャージ目に脱C処理を行ったものは、高品質な極低P鋼とすることができる。さらに、本実施形態においては、2チャージ目の脱C処理の直後に行う脱P処理では、脱C処理で発生したスラグを、次の工程である脱P処理に利用することができる。したがって、脱P処理に用いる脱りん剤の添加を削減でき、コストを低減することもできる。
【0034】
以上のように、
図8、
図9に示す前述の従来例に比べて、
図5、
図6に示す本発明の第一および第二の実施形態によれば、いずれも1チャージ当たり約22.5分と時間が短縮され、従来の2基の転炉の操業方法よりも効率良く稼動できる。
【0035】
本発明は、2基の転炉2a、2bのいずれについても、溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理と溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理とを併用して行うことで、2基の転炉を効率的に稼働させて、生産性を向上させることができる。また、生産コスト削減のためにスラグをリサイクル使用する場合、あるいは、高品質な極低P鋼を製造する場合、という需要に応じて、操業パターンを上記第一の実施形態または第二の実施形態のように設定することで、フレキシブルに対応することができる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0037】
例えば、上記実施形態では、溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理方法としてのMURC法の1サイクルに要する時間は約35分であり、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理方法としてのLD−ORP法による1サイクルに要する時間は脱P、脱Cそれぞれ約25分として、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理方法の脱P処理終了から脱C処理開始までの時間が最短となるような操業スケジュールの例を示したが、それぞれの1サイクル当たりに要する時間等に応じて、2基の転炉の操業タイミングを決めればよい。また、その場合、溶銑1回装入型の転炉溶銑予備処理の前後に行われる、溶銑2回装入型の転炉溶銑予備処理の1回目の処理と2回目の処理とは、上記実施形態のように2チャージずつには限らず、3以上の複数チャージ行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、溶銑の転炉精錬に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 転炉精錬設備
2a,2b 転炉
3 転炉容器
4 耐火物ライニング
5 開口部
6 出鋼口
10 スラグ
11 溶銑
12 取鍋