(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記標準の無効領域は、前記タッチセンサパネル面の少なくとも1つの辺縁部に標準の幅で設けられ、前記操作入力用オブジェクトと重複する無効領域部分では、前記標準の幅を所定比率で減縮することで、前記重複部分の一部を無効領域から除外する
ことを特徴とする請求項2に記載のタッチパネルの制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、
図1〜
図7を参照しながら、第1の実施形態を説明する。各図で同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0016】
(システム構成)
図1は、タッチパネルを有する携帯端末装置の一例を示すシステム構成図である。一般に携帯端末装置は
図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)1および図示しないOS(Operating System)の制御下に、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示パネル2、その表示パネル上に重ねられてタッチ操作を検出するタッチセンサパネル3、そのタッチセンサパネル3へのタッチ操作を検出し、タッチ操作の位置座標を算出して上位装置もしくは表示制御プログラム(図示せず)に出力するタッチ制御部4、各種データやプログラム(前記OSを含む)を格納するメモリ5、およびLAN(Local Area Network)や公衆無線回線と接続するための無線部6を有する。これらは全体として一種のコンピュータを構成し、表示パネル2とタッチセンサパネル3を合わせてタッチパネルと称する。
【0017】
タッチ制御部4では、タッチ検出部41が常にタッチセンサパネルを走査し、センサ面のどこかでタッチ操作が検出されると、その座標値を取得する。その座標値はタッチ座標出力部42により、無効領域設定部43が設定した無効領域に含まれるか否かがチェックされ、含まれている場合はそのタッチ操作を無効と判断して座標値の出力はせず、他方、含まれていない場合にはその座標値を上位装置もしくは表示制御プログラムに出力する。本実施例では上記無効領域設定部43の設定方法に特徴があり、表示されるオブジェクトの位置関係に応じて無効領域の一部を動的に変更することを特徴とする。
【0018】
(従来技術の問題点)
図2は従来技術での問題点を説明する図であり、一例としてインターネットを閲覧するブラウザ画面の例で説明する。図中、21はブラウザ画面であり、表示パネル2に全画面表示されているものとする。ブラウザ画面21には通常その上辺部にツールバー22があり、その中に1ないし複数の操作ボタン等のアイコン24が表示される。また、ツールバー22の上部にはブラウザ画面自体を操作するためのアイコン部23があり、最小化、最大化、終了、等の操作ボタンを含んでいる。これらアイコン、ボタン、チェックボックスなど、ユーザが電子機器を操作するために画面に表示される画像を入力操作用オブジェクトと称する。
【0019】
またタッチセンサパネル3の左右両縁部には無効領域31L(左側)、31R(右側)が設定されている。
【0020】
尚、上記ではブラウザ画面を例示したが、ブラウザ以外の任意のアプリケーション画面でも本願発明が同様に適用できることは言うまでもない。
【0021】
図2に示す如く、アイコン24のオブジェクトはその右側半分ほどが右側の無効領域31Rと重複している。そのため、アイコン24の右側半分にタッチ操作をしても無効であり、ユーザはアイコン24の左半分のどこかをタッチ操作しなければならない。携帯端末では画面自体が小さく、その上に表示されるオブジェクトも小さく、その更に半分にしか有効なタッチ操作ができないのでは操作性に支障を生じる。かといって、操作アイコンの表示位置を最初から無効領域を避けて設定するのでは、画面の有効利用ができないことになる。
【0022】
(第1の実施形態の動作)
図3は本願発明の第1の実施形態の動作を説明する図であり、
図2の右上部分の拡大図に対応している。図示のように、本実施形態ではアイコン24のオブジェクトを表示する際に、その表示領域が右側無効領域31Rと重複していることが検出されると、その重複部分の無効領域の幅を標準的な幅の30%に減縮する。これにより、殆どの場合にはアイコン24の略全ての表示領域が無効領域から除外され、アイコンが画面の周縁部以外にある場合と同様のタッチ操作性が得られる。尚、上記では左右両側とも標準の幅の30%に減縮したが、%値は任意であり、左右で%値を変えてもよい。また、電子機器の把持の仕方はユーザにより異なるので、この%値をユーザが変更できるようにしてもよい。
【0023】
図4は第1の実施形態におけるタッチ制御部4の無効領域設定部43の処理のフローである。この処理フローは、入力操作用オブジェクトが新たに表示された際、または既に表示されている入力操作用オブジェクトの表示位置が移動された際に起動される。
【0024】
起動されると、先ず標準の無効領域の幅を、後述の無効領域定義テーブルに設定する(S41)。
【0025】
次いで、オブジェクトの表示領域が標準の無効領域と重複するか否かをチェックする(S42)。ここで、もし当該オブジェクトの表示領域が標準の無効領域と重複していなければ(S42でNO)、S45の処理にとぶ。
【0026】
もし重複すると判断されると(S42でYES)、重複部分の無効領域の幅として標準値の30%となる値を算出し(S43)、その値に基づいて無効領域定義テーブルを更新し(S44)、S45の処理に移る。算出および更新の詳細は後述する。
【0027】
S45では、表示対象となっている全ての入力操作用オブジェクトについて、上記の処理が完了しているか否かをチェックし、完了していれば終了し、完了していなければ次のオブジェクトについてS42からの処理を繰り返す。
【0028】
尚、表示パネル2に表示されているオブジェクトについては、その表示位置、表示サイズ、表示形状、各種属性、その他関連情報が、メモリ5の所定領域に格納されており、当該所定領域から順次に各オブジェクトの表示位置と表示サイズの情報が読み出される。
【0029】
次に、
図5および
図6を参照して各判断処理を説明する。
【0030】
図5は、表示パネル2の座標系とタッチセンサパネル3の座標系が同一であると仮定し、それら座標系と無効領域やオブジェクトの表示領域との座標関係を示すものである。図中、横軸がX座標、縦軸がY座標を表し、左上を原点とする。
【0031】
尚、表示パネル2とタッチセンサパネル3のサイズや座標系が異なる場合もあり得るが、その場合にも本実施形態は適用可能である。
【0032】
図5の例では、画面の左側にY座標方向の全域にわたって、X座標方向にSmax1の幅の無効領域、および画面の右側にY座標方向の全域にわたって、X座標方向に(DW−Smax2)の幅の無効領域が設定されている。尚、(DW、DH)は画面右下角のXY座標である。
【0033】
また、3種類のオブジェクトA、B、Cが例示されており、オブジェクトAはその左上角O11の座標が(x11、y11)、右下角O12の座標が(x12、y12)、オブジェクトBはその左上角O21の座標が(x21、y21)、右下角O22の座標が(x22、y22)、オブジェクトCはその左上角O31の座標が(x31、y31)、右下角O32の座標が(x32、y32)であるとする。
【0034】
尚、ここでは説明を単純化するため、各オブジェクトの形状は矩形であり、また無効領域は画面の左右両縁部にのみ存在し、上下縁部には存在しないものと仮定するが、矩形以外の形状を有するオブジェクトや上下縁部に無効領域を有する場合にも本願発明を適用できることは言うまでもない。
【0035】
また標準の左右の無効領域の幅Smax1、(DW−Smax2)の値は同一でもよいし、左右で変えてもよい。またその値はユーザにより任意に設定できるようにしてもよい。
【0036】
図4の処理S42でオブジェクトと無効領域との重複をチェックするには、各オブジェクトの左端のX座標(xn1)と標準の左側無効領域の右端座標Smax1との比較、および各オブジェクトの右端のX座標(xn2)と標準の右側無効領域の左端座標Smax2との比較を行い、xn1<Smax1(
図5のオブジェクトBの場合)またはxn2>Smax2(
図5のオブジェクトCの場合)であれば重複ありと判断する。上記いずれでもない場合(
図5のオブジェクトAの場合)には重複なしと判断する。尚、上記(xn1)等のnは、複数のオブジェクトA、B、C、、、について一般化した表示を意味する。
【0037】
図4の処理S43では、重複ありと判定されたオブジェクト(例えば
図5のオブジェクトB)について、重複する無効領域のうち、外側(つまり、左側無効領域では左側、右側無効領域では右側)の30%を残して70%部分は無効領域から除外する。その結果、
図5のオブジェクトBおよびオブジェクトCのハッチング部分は無効領域から除外され、その部分でのタッチ操作も正しく検出されてその座標値が上位装置に出力され、従って操作性は確保される。
【0038】
図6は無効領域を設定するための無効領域定義テーブルの一例である。無効領域定義テーブル60は、タッチ制御部4にハードウェアのレジスタあるいはローカルなメモリとして設けてもよいし、メモリ5の所定アドレスに設けて随時参照するようにしてもよい。
【0039】
図6は
図4の処理S41で標準の無効領域を設定した状態を示しており、左側から第1カラム61にはY座標の範囲、第2カラム62にはX座標の範囲、第3カラム63には他の処理に用いるための属性情報等が格納される。
図6のテーブル60の1行目は
図5の左側標準無効領域を定義しており、2行目は
図5の右側標準無効領域を定義している。
【0040】
なお、
図1のタッチ座標出力部42の処理として、
図4の処理フローとは別に、タッチセンサパネル3の何処かでタッチ操作が検出された場合に、そのタッチ位置の座標を
図6のテーブルの値と比較してタッチ操作の有効/無効を判断するタッチ有効性判定処理(図示せず)が存在するが、それは従来と同様なので詳細は省略する。
【0041】
図7は
図4の処理S44で変更後の無効領域に更新された状態の無効領域定義テーブル60の一例を示しており、1行目と2行目は
図6と同じく、標準の無効領域を定義するものである。また3行目64は左側無効領域の上端からオブジェクトBの上端までの領域を定義しており、4行目65はオブジェクトBの左側の無効領域を定義しており、5行目66はオブジェクトBの下端から左側無効領域下端までの領域を定義しており、また6行目67は右側無効領域の上端からオブジェクトCの上端までの領域を定義しており、7行目68はオブジェクトCの右側の無効領域を定義しており、8行目69はオブジェクトCの下端から右側無効領域下端までの領域を定義している。
【0042】
尚、
図7の例で
図6の1〜2行目に示した標準の無効領域の定義を残してあるのは、前記タッチ有効性判定処理が、先ずタッチ操作を検出した座標が標準の無効領域に含まれるか否かを判定し、含まれる場合にのみ
図7の各行64〜69の座標範囲との比較を行うようにし、重複が無い場合の処理を高速化するためである。
【0043】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、オブジェクトが標準無効領域と少しでも重複した場合には、一律にその重複部分の無効領域のX座標範囲を標準の30%に減縮したが、第2の実施形態では、オブジェクトと無効領域との重複する面積が、オブジェクト自体の表示面積の30%になるように制御する。これにより、操作性を損なわない範囲で、無効領域の幅をできるだけ標準の幅に近い値に維持して、誤動作防止機能を確保できる。尚、ここでも上記30%の値はあくまでも例示であり、任意に選択してよいし、ユーザが変更できるようにしてもよい。
【0044】
図8は第2の実施形態を説明する図である。
図3の例とは異なり、標準の無効領域31Rと重複するオブジェクト22の表示面積のうち、オブジェクト22の右側30%のみが無効領域として残り、左側70%がタッチ操作可能な領域とされる。ユーザは通常、オブジェクト22の中心部を目指してタッチ操作をするため、片側30%程度が無効領域とされてもそれほど操作性を悪化させることはない。他方、残される無効領域の面積は、オブジェクト22の右端が表示画面の右端一杯である場合を除いて、
図3の例よりも増えるため、不用意なタッチによる誤動作を防止する効果を確保できる。
【0045】
図9は第2の実施形態におけるタッチ制御部4の無効領域設定処理のフローである。
図4の例と同様に、この処理フローは、入力操作用オブジェクトが新たに表示された際、または既に表示されている入力操作用オブジェクトの表示位置が移動された際に起動される。
【0046】
起動されると、先ず標準の無効領域の幅を、後述の無効領域定義テーブルに設定する(S91)。
【0047】
次いで、オブジェクトの表示領域が標準の無効領域と重複するか否かをチェックする(S92)。ここで、もし当該オブジェクトの表示領域が標準の無効領域と重複していなければ(S92でNO)、S96の処理にとぶ。
【0048】
もし重複すると判断されると(S92でYES)、重複部分がオブジェクト22の全表示面積の30%を超えているか否かをチェックし(S93)、超えていなければ(S93でNO)S96の処理にとぶ。
【0049】
もし重複部分がオブジェクト22の表示面積の30%を超えていると(S93でYES)、オブジェクト22の表示面積の30%に相当する重複部分の左側座標値を算出し(S94)、それに応じて無効領域を無効領域定義テーブル60に追加更新する(S95)。算出の詳細は後述する。
【0050】
S96では、表示対象となっている全ての入力操作用オブジェクトについて、上記の処理が完了しているか否かをチェックし、完了していれば終了し、完了していなければ次のオブジェクトについてS92からの処理を繰り返す。
【0051】
上記S91、S92の処理は、
図4のS41、S42と同様である。
【0052】
上記S93の処理は、
図5の例に基づいて説明すれば、オブジェクトBに関しては、(x22−x21)に対する(Smax1−x21)の比率が30%を超えるか否かを、またオブジェクトCに関しては、(x32−x31)に対する(x32−Smax2)の比率が30%を超えるか否かを判定すればよい。
【0053】
またS94の処理は、オブジェクトBに関しては、オブジェクトBの左端座標にオブジェクトBの左右方向長さの30%を加算して、無効領域の右端座標とすればよい。具体的にはx21に(x22−x21)×30%を加算すればよい。またオブジェクトCに関しては、オブジェクトCの右端座標からオブジェクトCの左右方向長さの30%を減算して、無効領域の左端座標とすればよい。具体的にはx32から(x32−x31)×30%を減算すればよい。
【0054】
図10は、
図9の処理を実行した後の無効領域定義テーブル60の状態を例示しており、各行の意味は
図7と同様である。
【0055】
(その他の変形例)
上記の実施例では無効領域を変更する場合の方法として、重複するオブジェクトによって複数の矩形領域に分断された各矩形の無効領域のX座標範囲、Y座標範囲を定義した無効領域定義テーブル60を設けたが、他の方法として、標準の無効領域のうち、無効領域から除外されて有効となる矩形領域を定義した有効領域テーブルを設けるようにしてもよい。またこれらいずれの場合においても、各矩形領域の定義は上記のようにX座標範囲、Y座標範囲で定義する代わりに、各矩形領域の左上角座標、右下角座標で定義してもよい。
【0056】
また、
図2のアイコン部23のように、複数の操作入力オブジェクトが組み合わさっていたり、選択するにつれて順次下位メニューが表示される階層化メニューのように、複数の子オブジェクトの組合せで構成されるオブジェクトも存在するが、そのような場合には個々の子オブジェクトについて
図4や
図9の処理を行う必要がある。
【0057】
また、オブジェクトの種類に応じて、上記第1の実施形態と第2の実施形態とを混用してもよい。その場合には、オブジェクトの属性情報の1つとして、どちらの実施形態の処理をするかを示すフラグを含ませ、先ずは第1の実施形態で各オブジェクトを処理する際に、当該フラグが第1の実施形態を示すオブジェクトについてのみ処理し、引き続き第2の実施形態で各オブジェクトを処理する際に、当該フラグが第2の実施形態を示すオブジェクトについてのみ処理するようにすればよい。
【0058】
また、
図1のシステム構成の説明では、検出されたタッチ操作の位置が無効領域か否かをタッチ制御部が判断し、無効領域でのタッチ操作でないと判定した場合にのみ上位装置に出力するものとして説明したが、無効領域定義テーブルの更新処理や無効領域か否かの判定処理を上位装置或いは上位プログラム(OSなど)にて行うようにしてもよい。