特許第6432411号(P6432411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432411
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/36 20060101AFI20181126BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20181126BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   F01N3/36 B
   F01N3/20 E
   F02D45/00 360C
   F01N3/36 R
【請求項の数】2
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-62508(P2015-62508)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-180401(P2016-180401A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】中田 輝男
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆行
(72)【発明者】
【氏名】長岡 大治
(72)【発明者】
【氏名】遊座 裕之
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−94572(JP,A)
【文献】 特開2010−185433(JP,A)
【文献】 特開2005−188476(JP,A)
【文献】 特開2011−231709(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/013365(WO,A1)
【文献】 特開2010−265786(JP,A)
【文献】 特開2011−99398(JP,A)
【文献】 特開2008−202425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/36
F01N 3/20
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられて排気を浄化する触媒と、
前記内燃機関の始動時における前記触媒の初期温度、及び前記内燃機関の運転状態に応じて変化する前記触媒の発熱量に基づいて前記触媒の温度を推定する触媒温度推定手段と、
前記内燃機関の停止直前に前記触媒温度推定手段によって推定された前記触媒の温度を、停止前触媒温度として記憶する停止前触媒温度記憶部と、
前記内燃機関の停止直前に前記触媒へ流入する排気の温度を第1排気温度として記憶する第1排気温度記憶部と、
前記内燃機関の始動時に前記触媒へ流入する排気の温度を第2排気温度として取得する第2排気温度取得部と、
前記内燃機関の始動時に前記内燃機関へ吸入される空気の温度を吸入空気温度として取得する吸入空気温度取得部と、
前記停止前触媒温度、前記第1排気温度、前記第2排気温度、及び前記吸入空気温度に基づいて、前記触媒の初期温度を設定する触媒初期温度設定部と、を備える
排気浄化システム。
【請求項2】
前記触媒初期温度設定部は、
前記第2排気温度取得部で取得された前記第2排気温度が前記第1排気温度記憶部に記憶された前記第1排気温度よりも高い場合には、前記第1排気温度を前記触媒の初期温度に設定し、
前記吸入空気温度取得部で取得された前記吸入空気温度が前記第1排気温度よりも高い場合には、前記吸入空気温度を前記触媒の初期温度に設定し、
その他の場合には、前記停止前触媒温度記憶部に記憶された前記停止前触媒温度、前記第1排気温度、前記第2排気温度、及び前記吸入空気温度に基づいて演算された仮初期温度を前記触媒の初期温度に設定する
請求項1に記載の排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から排出される排気中の窒素化合物(以下、NOx)を還元浄化する触媒として、NOx吸蔵還元型触媒が知られている。NOx吸蔵還元型触媒は、排気がリーン雰囲気のときに排気中に含まれるNOxを吸蔵すると共に、排気がリッチ雰囲気のときに排気中に含まれる炭化水素で吸蔵していたNOxを還元浄化により無害化して放出する。このため、触媒のNOx吸蔵量が所定量に達した場合は、NOx吸蔵能力を回復させるべく、ポスト噴射や排気管噴射によって排気をリッチ状態にする所謂NOxパージを定期的に行う必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、NOx吸蔵還元型触媒には、排気中に含まれる硫黄酸化物(以下、SOx)も吸蔵される。SOx吸蔵量が増加すると、NOx吸蔵還元型触媒のNOx浄化能力を低下させる課題がある。このため、SOx吸蔵量が所定量に達した場合は、NOx吸蔵還元型触媒からSOxを離脱させてS被毒から回復させるべく、ポスト噴射や排気管噴射によって上流側の酸化触媒に未燃燃料を供給して排気温度をSOx離脱温度まで上昇させる所謂SOxパージを定期的に行う必要がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−202425号公報
【特許文献2】特開2009−47086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、この種の装置では、SOxパージ等の触媒再生処理を実施する際に、排気管噴射量やポスト噴射量を目標温度と触媒温度との偏差に基づいてフィードバック制御している。このため、触媒温度の推定精度を確保できなければ、排気管噴射やポスト噴射の制御性を悪化させ、触媒の過昇温や燃費の悪化等を招く課題がある。
【0006】
特に、内燃機関の始動時における推定初期温度が実際の温度と乖離がある状態では、実際の触媒温度と推定温度との誤差が十分小さくなるまでに時間が掛かるという課題が生じる。実際の触媒温度と推定温度との誤差を早期に小さくするためには、始動時の推定初期温度を適切に設定する必要がある。
【0007】
開示のシステムは、実際の触媒温度と推定温度との誤差を早期に小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示のシステムは、内燃機関の排気通路に設けられて排気を浄化する触媒と、前記内燃機関の始動時における前記触媒の初期温度、及び前記内燃機関の運転状態に応じて変化する前記触媒の発熱量に基づいて前記触媒の温度を推定する触媒温度推定手段と、前記内燃機関の停止直前に前記触媒温度推定手段によって推定された前記触媒の温度を、停止前触媒温度として記憶する停止前触媒温度記憶部と、前記内燃機関の停止直前に前記触媒へ流入する排気の温度を第1排気温度として記憶する第1排気温度記憶部と、前記内燃機関の始動時に前記触媒へ流入する排気の温度を第2排気温度として取得する第2排気温度取得部と、前記内燃機関の始動時に前記内燃機関へ吸入される空気の温度を吸入空気温度として取得する吸入空気温度取得部と、前記停止前触媒温度、前記第1排気温度、前記第2排気温度、及び前記吸入空気温度に基づいて、前記触媒の初期温度を設定する触媒初期温度設定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
開示のシステムによれば、内燃機関が始動された後、実際の触媒温度と推定温度との誤差を速やかに小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る排気浄化システムを示す全体構成図である。
図2】本実施形態に係るSOxパージ制御を説明するタイミングチャート図である。
図3】本実施形態に係るSOxパージリーン制御時のMAF目標値の設定処理を示すブロック図である。
図4】本実施形態に係るSOxパージリッチ制御時の目標噴射量の設定処理を示すブロック図である。
図5】本実施形態に係るSOxパージ制御の触媒温度調整制御を説明するタイミングチャート図である。
図6】本実施形態に係るNOxパージ制御を説明するタイミングチャート図である。
図7】本実施形態に係るNOxパージリーン制御時のMAF目標値の設定処理を示すブロック図である。
図8】本実施形態に係るNOxパージリッチ制御時の目標噴射量の設定処理を示すブロック図である。
図9】触媒温度初期値設定部の処理を設定するブロック図である。
図10】本実施形態に係る触媒温度推定処理を示すブロック図である。
図11】本実施形態に係るインジェクタの噴射量学習補正の処理を示すブロック図である。
図12】本実施形態に係る学習補正係数の演算処理を説明するフロー図である。
図13】本実施形態に係るMAF補正係数の設定処理を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る排気浄化システムを説明する。
【0012】
図1に示すように、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)10の各気筒には、図示しないコモンレールに畜圧された高圧燃料を各気筒内に直接噴射する筒内インジェクタ11がそれぞれ設けられている。これら各筒内インジェクタ11の燃料噴射量や燃料噴射タイミングは、電子制御ユニット(以下、ECUという)50から入力される指示信号に応じてコントロールされる。
【0013】
エンジン10の吸気マニホールド10Aには新気を導入する吸気通路12が接続され、排気マニホールド10Bには排気を外部に導出する排気通路13が接続されている。吸気通路12には、吸気上流側から順にエアクリーナ14、吸入空気量センサ(以下、MAFセンサという)40、吸気温度センサ48(本発明の吸入空気温度取得部)、可変容量型過給機20のコンプレッサ20A、インタークーラ15、吸気スロットルバルブ16等が設けられている。排気通路13には、排気上流側から順に可変容量型過給機20のタービン20B、排気後処理装置30等が設けられている。なお、図1中において、符号41はエンジン回転数センサ、符号42はアクセル開度センサ、符号46はブースト圧センサ、符号47は外気温度センサをそれぞれ示している。
【0014】
EGR装置21は、排気マニホールド10Bと吸気マニホールド10Aとを接続するEGR通路22と、EGRガスを冷却するEGRクーラ23と、EGR量を調整するEGRバルブ24とを備えている。
【0015】
排気後処理装置30は、ケース30A内に排気上流側から順に酸化触媒31、NOx吸蔵還元型触媒32、パティキュレートフィルタ(以下、単にフィルタという)33を配置して構成されている。また、酸化触媒31よりも上流側の排気通路13には、ECU50から入力される指示信号に応じて、排気通路13内に未燃燃料(主にHC)を噴射する排気インジェクタ34が設けられている。
【0016】
酸化触媒31は、例えば、ハニカム構造体等のセラミック製担体表面に酸化触媒成分を担持して形成されている。酸化触媒31は、排気インジェクタ34又は筒内インジェクタ11のポスト噴射によって未燃燃料が供給されると、これを酸化して排気温度を上昇させる。
【0017】
NOx吸蔵還元型触媒32は、例えば、ハニカム構造体等のセラミック製担体表面にアルカリ金属等を担持して形成されている。このNOx吸蔵還元型触媒32は、排気空燃比がリーン状態のときに排気中のNOxを吸蔵すると共に、排気空燃比がリッチ状態のときに排気中に含まれる還元剤(HC等)で吸蔵したNOxを還元浄化する。
【0018】
フィルタ33は、例えば、多孔質性の隔壁で区画された多数のセルを排気の流れ方向に沿って配置し、これらセルの上流側と下流側とを交互に目封止して形成されている。フィルタ33は、排気中のPMを隔壁の細孔や表面に捕集すると共に、PM堆積推定量が所定量に達すると、これを燃焼除去するいわゆるフィルタ強制再生が実行される。フィルタ強制再生は、排気管噴射又はポスト噴射によって上流側の酸化触媒31に未燃燃料を供給し、フィルタ33に流入する排気温度をPM燃焼温度まで昇温することで行われる。
【0019】
第1排気温度センサ43は、本発明の第2排気温度取得部であって、酸化触媒31よりも上流側に設けられており、酸化触媒31に流入する排気温度を検出する。第2排気温度センサ44は、NOx吸蔵還元型触媒32とフィルタ33との間に設けられており、フィルタ33に流入する排気温度を検出する。NOx/ラムダセンサ45は、フィルタ33よりも下流側に設けられており、NOx吸蔵還元型触媒32を通過した排気のNOx値及びラムダ値(以下、空気過剰率ともいう)を検出する。
【0020】
ECU50は、エンジン10等の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えて構成されている。これら各種制御を行うため、ECU50にはセンサ類40〜48のセンサ値が入力される。また、ECU50は、フィルタ再生制御部51と、SOxパージ制御部60と、NOxパージ制御部70と、触媒温度初期値設定部100と、触媒温度推定部80と、MAF追従制御部98と、噴射量学習補正部90と、MAF補正係数演算部95とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、一体のハードウェアであるECU50に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0021】
[フィルタ再生制御]
フィルタ再生制御部51は、車両の走行距離、あるいは図示しない差圧センサで検出されるフィルタ前後差圧からフィルタ33のPM堆積量を推定すると共に、このPM堆積推定量が所定の上限閾値を超えると強制再生フラグFDPFをオンにする(図2の時刻t参照)。強制再生フラグFDPFがオンにされると、排気インジェクタ34に排気管噴射を実行させる指示信号が送信されるか、あるいは、各筒内インジェクタ11にポスト噴射を実行させる指示信号が送信されて、排気温度をPM燃焼温度(例えば、約550℃)まで昇温させる。この強制再生フラグFDPFは、PM堆積推定量が燃焼除去を示す所定の下限閾値(判定閾値)まで低下するとオフにされる(図2の時刻t参照)。強制再生フラグFDPFをオフにする判定閾値は、例えば、フィルタ強制再生開始(FDPF=1)からの上限経過時間や上限累積噴射量を基準にしてもよい。
【0022】
[SOxパージ制御]
SOxパージ制御部60は、排気をリッチ状態にして排気温度を硫黄離脱温度(例えば、約600℃)まで上昇させて、NOx吸蔵還元型触媒32をSOx被毒から回復させる制御(以下、この制御をSOxパージ制御という)を実行する。
【0023】
図2は、本実施形態のSOxパージ制御のタイミングチャートを示している。図2に示すように、SOxパージ制御を開始するSOxパージフラグFSPは、強制再生フラグFDPFのオフと同時にオンにされる(図2の時刻t参照)。これにより、フィルタ33の強制再生によって排気温度を上昇させた状態からSOxパージ制御に効率よく移行することが可能となり、燃料消費量を効果的に低減することができる。
【0024】
本実施形態において、SOxパージ制御によるリッチ化は、空気系制御によって空気過剰率を定常運転時(例えば、約1.5)から理論空燃比相当値(約1.0)よりもリーン側の第1目標空気過剰率(例えば、約1.3)まで低下させるSOxパージリーン制御と、噴射系制御によって空気過剰率を第1目標空気過剰率からリッチ側の第2目標空気過剰率(例えば、約0.9)まで低下させるSOxパージリッチ制御とを併用することで実現される。以下、SOxパージリーン制御及び、SOxパージリッチ制御の詳細について説明する。
【0025】
[SOxパージリーン制御の空気系制御]
図3は、SOxパージリーン制御時のMAF目標値MAFSPL_Trgtの設定処理を示すブロック図である。第1目標空気過剰率設定マップ61は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Q(エンジン10の燃料噴射量)に基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したSOxパージリーン制御時の空気過剰率目標値λSPL_Trgt(第1目標空気過剰率)が予め実験等に基づいて設定されている。
【0026】
まず、第1目標空気過剰率設定マップ61から、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてSOxパージリーン制御時の空気過剰率目標値λSPL_Trgtが読み取られて、MAF目標値演算部62に入力される。さらに、MAF目標値演算部62では、以下の数式(1)に基づいてSOxパージリーン制御時のMAF目標値MAFSPL_Trgtが演算される。
【0027】
MAFSPL_Trgt=λSPL_Trgt×Qfnl_corrd×RoFuel×AFRsto/Maf_corr・・・(1)
数式(1)において、Qfnl_corrdは後述する学習補正された燃料噴射量(ポスト噴射を除く)、RoFuelは燃料比重、AFRstoは理論空燃比、Maf_corrは後述するMAF補正係数をそれぞれ示している。
【0028】
MAF目標値演算部62によって演算されたMAF目標値MAFSPL_Trgtは、SOxパージフラグFSPがオン(図2の時刻t参照)になるとランプ処理部63に入力される。ランプ処理部63は、各ランプ係数マップ63A,Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてランプ係数を読み取ると共に、このランプ係数を付加したMAF目標ランプ値MAFSPL_Trgt_Rampをバルブ制御部64に入力する。
【0029】
バルブ制御部64は、MAFセンサ40から入力される実MAF値MAFActがMAF目標ランプ値MAFSPL_Trgt_Rampとなるように、吸気スロットルバルブ16を閉側に絞ると共に、EGRバルブ24を開側に開くフィードバック制御を実行する。
【0030】
このように、本実施形態では、第1目標空気過剰率設定マップ61から読み取られる空気過剰率目標値λSPL_Trgtと、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量とに基づいてMAF目標値MAFSPL_Trgtを設定し、このMAF目標値MAFSPL_Trgtに基づいて空気系動作をフィードバック制御するようになっている。これにより、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けることなく、或いは、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けた場合も当該ラムダセンサのセンサ値を用いることなく、排気をSOxパージリーン制御に必要な所望の空気過剰率まで効果的に低下させることが可能になる。
【0031】
また、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量として学習補正後の燃料噴射量Qfnl_corrdを用いることで、MAF目標値MAFSPL_Trgtをフィードフォワード制御で設定することが可能となり、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化、個体差等の影響を効果的に排除することができる。
【0032】
また、MAF目標値MAFSPL_Trgtにエンジン10の運転状態に応じて設定されるランプ係数を付加することで、吸入空気量の急激な変化によるエンジン10の失火やトルク変動によるドライバビリティーの悪化等を効果的に防止することができる。
【0033】
[SOxパージリッチ制御の燃料噴射量設定]
図4は、SOxパージリッチ制御における排気管噴射又はポスト噴射の目標噴射量QSPR_Trgt(単位時間当たりの噴射量)の設定処理を示すブロック図である。第2目標空気過剰率設定マップ65は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したSOxパージリッチ制御時の空気過剰率目標値λSPR_Trgt(第2目標空気過剰率)が予め実験等に基づいて設定されている。
【0034】
まず、第2目標空気過剰率設定マップ65から、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてSOxパージリッチ制御時の空気過剰率目標値λSPR_Trgtが読み取られて、噴射量目標値演算部66に入力される。さらに、噴射量目標値演算部66では、以下の数式(2)に基づいてSOxパージリッチ制御時の目標噴射量QSPR_Trgtが演算される。
【0035】
SPR_Trgt=MAFSPL_Trgt×Maf_corr/(λSPR_Trgt×RoFuel×AFRsto)−Qfnl_corrd・・・(2)
数式(2)において、MAFSPL_TrgtはSOxパージリーン時のMAF目標値であって、前述のMAF目標値演算部62から入力される。また、Qfnl_corrdは後述する学習補正されたMAF追従制御適用前の燃料噴射量(ポスト噴射を除く)、RoFuelは燃料比重、AFRstoは理論空燃比、Maf_corrは後述するMAF補正係数をそれぞれ示している。
【0036】
噴射量目標値演算部66によって演算された目標噴射量QSPR_Trgtは、後述するSOxパージリッチフラグFSPRがオンになると、排気インジェクタ34又は、各筒内インジェクタ11に噴射指示信号として送信される。
【0037】
このように、本実施形態では、第2目標空気過剰率設定マップ65から読み取られる空気過剰率目標値λSPR_Trgtと、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量とに基づいて目標噴射量QSPR_Trgtを設定するようになっている。これにより、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けることなく、或いは、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けた場合も当該ラムダセンサのセンサ値を用いることなく、排気をSOxパージリッチ制御に必要な所望の空気過剰率まで効果的に低下させることが可能になる。
【0038】
また、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量として学習補正後の燃料噴射量Qfnl_corrdを用いることで、目標噴射量QSPR_Trgtをフィードフォワード制御で設定することが可能となり、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化等の影響を効果的に排除することができる。
【0039】
[SOxパージ制御の触媒温度調整制御]
SOxパージ制御中にNOx吸蔵還元型触媒32に流入する排気温度(以下、触媒温度ともいう)は、図2の時刻t〜tに示すように、排気管噴射又はポスト噴射を実行するSOxパージリッチフラグFSPRのオン・オフ(リッチ・リーン)を交互に切り替えることで制御される。SOxパージリッチフラグFSPRがオン(FSPR=1)にされると、排気管噴射又はポスト噴射によって触媒温度は上昇する(以下、この期間を噴射期間TF_INJという)。一方、SOxパージリッチフラグFSPRがオフにされると、排気管噴射又はポスト噴射の停止によって触媒温度は低下する(以下、この期間をインターバルTF_INTという)。
【0040】
本実施形態において、噴射期間TF_INJは、予め実験等により作成した噴射期間設定マップ(不図示)からエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに対応する値を読み取ることで設定される。この噴射時間設定マップには、予め実験等によって求めた排気の空気過剰率を第2目標空気過剰率まで確実に低下させるのに必要となる噴射期間が、エンジン10の運転状態に応じて設定されている。
【0041】
インターバルTF_INTは、触媒温度が最も高くなるSOxパージリッチフラグFSPRがオンからオフに切り替えられた際に、フィードバック制御によって設定される。具体的には、SOxパージリッチフラグFSPRがオフされた際の触媒目標温度と触媒推定温度との偏差ΔTに比例して入力信号を変化させる比例制御と、偏差ΔTの時間積分値に比例して入力信号を変化させる積分制御と、偏差ΔTの時間微分値に比例して入力信号を変化させる微分制御とで構成されるPID制御によって処理される。触媒目標温度は、NOx吸蔵還元型触媒32からSOxを離脱可能な温度で設定され、触媒推定温度は、詳細を後述する触媒温度推定部80で推定される。
【0042】
図5の時刻tに示すように、フィルタ強制再生の終了(FDPF=0)によってSOxパージフラグFSPがオンされると、SOxパージリッチフラグFSPRもオンにされ、さらに前回のSOxパージ制御時にフィードバック計算されたインターバルTF_INTも一旦リセットされる。すなわち、フィルタ強制再生直後の初回は、噴射期間設定マップで設定した噴射期間TF_INJ_1に応じて排気管噴射又はポスト噴射が実行される(図5の時刻t〜t参照)。このように、SOxパージリーン制御を行うことなくSOxパージリッチ制御からSOxパージ制御を開始するので、フィルタ強制再生で上昇した排気温度を低下させることなく、速やかにSOxパージ制御に移行され、燃料消費量を低減することができる。
【0043】
次いで、噴射期間TF_INJ_1の経過によってSOxパージリッチフラグFSPRがオフになると、PID制御によって設定されたインターバルTF_INT_1が経過するまで、SOxパージリッチフラグFSPRはオフとされる(図5の時刻t〜t参照)。さらに、インターバルTF_INT_1の経過によってSOxパージリッチフラグFSPRがオンにされると、再び噴射期間TF_INJ_2に応じた排気管噴射又はポスト噴射が実行される(図5の時刻t〜t参照)。その後、これらSOxパージリッチフラグFSPRのオン・オフの切り替えは、後述するSOxパージ制御の終了判定によってSOxパージフラグFSPがオフ(図5の時刻t参照)にされるまで繰り返し実行される。
【0044】
このように、本実施形態では、触媒温度を上昇させると共に空気過剰率を第2目標空気過剰率まで低下させる噴射期間TF_INJをエンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップから設定すると共に、触媒温度を降下させるインターバルTF_INTをPID制御によって処理するようになっている。これにより、SOxパージ制御中の触媒温度をパージに必要な所望の温度範囲に効果的に維持しつつ、空気過剰率を目標過剰率まで確実に低下させることが可能になる。
【0045】
[SOxパージ制御の終了判定]
SOxパージ制御は、(1)SOxパージフラグFSPのオンから排気管噴射又はポスト噴射の噴射量を累積し、この累積噴射量が所定の上限閾値量に達した場合、(2)SOxパージ制御の開始から計時した経過時間が所定の上限閾値時間に達した場合、(3)エンジン10の運転状態やNOx/ラムダセンサ45のセンサ値等を入力信号として含む所定のモデル式に基づいて演算されるNOx吸蔵還元型触媒32のSOx吸着量がSOx除去成功を示す所定の閾値まで低下した場合の何れかの条件が成立すると、SOxパージフラグFSPをオフにして終了される(図2の時刻t図5の時刻t参照)。
【0046】
このように、本実施形態では、SOxパージ制御の終了条件に累積噴射量及び、経過時間の上限を設けたことで、SOxパージが排気温度の低下等によって進捗しなかった場合に、燃料消費量が過剰になることを効果的に防止することができる。
【0047】
[NOxパージ制御]
NOxパージ制御部70は、排気をリッチ状態にしてNOx吸蔵還元型触媒32に吸蔵されているNOxを還元浄化により無害化して放出することで、NOx吸蔵還元型触媒32のNOx吸蔵能力を回復させる制御(以下、この制御をNOxパージ制御という)を実行する。
【0048】
NOxパージ制御を開始するNOxパージフラグFNPは、エンジン10の運転状態から単位時間当たりのNOx排出量を推定し、これを累積計算した推定累積値ΣNOxが所定の閾値を超えるとオンにされる(図6の時刻t参照)。あるいは、エンジン10の運転状態から推定される触媒上流側のNOx排出量と、NOx/ラムダセンサ45で検出される触媒下流側のNOx量とからNOx吸蔵還元型触媒32によるNOx浄化率を演算し、このNOx浄化率が所定の判定閾値よりも低くなった場合に、NOxパージフラグFNPはオンにされる。
【0049】
本実施形態において、NOxパージ制御によるリッチ化は、空気系制御によって空気過剰率を定常運転時(例えば、約1.5)から理論空燃比相当値(約1.0)よりもリーン側の第3目標空気過剰率(例えば、約1.3)まで低下させるNOxパージリーン制御と、噴射系制御によって空気過剰率を第3目標空気過剰率からリッチ側の第4目標空気過剰率(例えば、約0.9)まで低下させるNOxパージリッチ制御とを併用することで実現される。以下、NOxパージリーン制御及び、NOxパージリッチ制御の詳細について説明する。
【0050】
[NOxパージリーン制御のMAF目標値設定]
図7は、NOxパージリーン制御時のMAF目標値MAFNPL_Trgtの設定処理を示すブロック図である。第3目標空気過剰率設定マップ71は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したNOxパージリーン制御時の空気過剰率目標値λNPL_Trgt(第3目標空気過剰率)が予め実験等に基づいて設定されている。
【0051】
まず、第3目標空気過剰率設定マップ71から、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてNOxパージリーン制御時の空気過剰率目標値λNPL_Trgtが読み取られて、MAF目標値演算部72に入力される。さらに、MAF目標値演算部72では、以下の数式(3)に基づいてNOxパージリーン制御時のMAF目標値MAFNPL_Trgtが演算される。
【0052】
MAFNPL_Trgt=λNPL_Trgt×Qfnl_corrd×RoFuel×AFRsto/Maf_corr・・・(3)
数式(3)において、Qfnl_corrdは後述する学習補正された燃料噴射量(ポスト噴射を除く)、RoFuelは燃料比重、AFRstoは理論空燃比、Maf_corrは後述するMAF補正係数をそれぞれ示している。
【0053】
MAF目標値演算部72によって演算されたMAF目標値MAFNPL_Trgtは、NOxパージフラグFSPがオン(図6の時刻t参照)になるとランプ処理部73に入力される。ランプ処理部73は、各ランプ係数マップ73A,Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてランプ係数を読み取ると共に、このランプ係数を付加したMAF目標ランプ値MAFNPL_Trgt_Rampをバルブ制御部74に入力する。
【0054】
バルブ制御部74は、MAFセンサ40から入力される実MAF値MAFActがMAF目標ランプ値MAFNPL_Trgt_Rampとなるように、吸気スロットルバルブ16を閉側に絞ると共に、EGRバルブ24を開側に開くフィードバック制御を実行する。
【0055】
このように、本実施形態では、第3目標空気過剰率設定マップ71から読み取られる空気過剰率目標値λNPL_Trgtと、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量とに基づいてMAF目標値MAFNPL_Trgtを設定し、このMAF目標値MAFNPL_Trgtに基づいて空気系動作をフィードバック制御するようになっている。これにより、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けることなく、或いは、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けた場合も当該ラムダセンサのセンサ値を用いることなく、排気をNOxパージリーン制御に必要な所望の空気過剰率まで効果的に低下させることが可能になる。
【0056】
また、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量として学習補正後の燃料噴射量Qfnl_corrdを用いることで、MAF目標値MAFNPL_Trgtをフィードフォワード制御で設定することが可能となり、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化等の影響を効果的に排除することができる。
【0057】
また、MAF目標値MAFNPL_Trgtにエンジン10の運転状態に応じて設定されるランプ係数を付加することで、吸入空気量の急激な変化によるエンジン10の失火やトルク変動によるドライバビリティーの悪化等を効果的に防止することができる。
【0058】
[NOxパージリッチ制御の燃料噴射量設定]
図8は、NOxパージリッチ制御における排気管噴射又はポスト噴射の目標噴射量QNPR_Trgt(単位時間当たりの噴射量)の設定処理を示すブロック図である。第4目標空気過剰率設定マップ75は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したNOxパージリッチ制御時の空気過剰率目標値λNPR_Trgt(第4目標空気過剰率)が予め実験等に基づいて設定されている。
【0059】
まず、第4目標空気過剰率設定マップ75から、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてNOxパージリッチ制御時の空気過剰率目標値λNPR_Trgtが読み取られて噴射量目標値演算部76に入力される。さらに、噴射量目標値演算部76では、以下の数式(4)に基づいてNOxパージリッチ制御時の目標噴射量QNPR_Trgtが演算される。
【0060】
NPR_Trgt=MAFNPL_Trgt×Maf_corr/(λNPR_Trgt×RoFuel×AFRsto)−Qfnl_corrd・・・(4)
数式(4)において、MAFNPL_TrgtはNOxパージリーンMAF目標値であって、前述のMAF目標値演算部72から入力される。また、Qfnl_corrdは後述する学習補正されたMAF追従制御適用前の燃料噴射量(ポスト噴射を除く)、RoFuelは燃料比重、AFRstoは理論空燃比、Maf_corrは後述するMAF補正係数をそれぞれ示している。
【0061】
噴射量目標値演算部76によって演算される目標噴射量QNPR_Trgtは、NOxパージフラグFNPがオンになると、排気インジェクタ34又は各筒内インジェクタ11に噴射指示信号として送信される(図6の時刻t)。この噴射指示信号の送信は、後述するNOxパージ制御の終了判定によってNOxパージフラグFNPがオフ(図6の時刻t)にされるまで継続される。
【0062】
このように、本実施形態では、第4目標空気過剰率設定マップ75から読み取られる空気過剰率目標値λNPR_Trgtと、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量とに基づいて目標噴射量QNPR_Trgtを設定するようになっている。これにより、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けることなく、或いは、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けた場合も当該ラムダセンサのセンサ値を用いることなく、排気をNOxパージリッチ制御に必要な所望の空気過剰率まで効果的に低下させることが可能になる。
【0063】
また、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量として学習補正後の燃料噴射量Qfnl_corrdを用いることで、目標噴射量QNPR_Trgtをフィードフォワード制御で設定することが可能となり、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化等の影響を効果的に排除することができる。
【0064】
[NOxパージ制御の終了判定]
NOxパージ制御は、(1)NOxパージフラグFNPのオンから排気管噴射又はポスト噴射の噴射量を累積し、この累積噴射量が所定の上限閾値量に達した場合、(2)NOxパージ制御の開始から計時した経過時間が所定の上限閾値時間に達した場合、(3)エンジン10の運転状態やNOx/ラムダセンサ45のセンサ値等を入力信号として含む所定のモデル式に基づいて演算されるNOx吸蔵還元型触媒32のNOx吸蔵量がNOx除去成功を示す所定の閾値まで低下した場合の何れかの条件が成立すると、NOxパージフラグFNPをオフにして終了される(図6の時刻t参照)。
【0065】
このように、本実施形態では、NOxパージ制御の終了条件に累積噴射量及び、経過時間の上限を設けたことで、NOxパージが排気温度の低下等によって成功しなかった場合に燃料消費量が過剰になることを確実に防止することができる。
【0066】
[触媒温度初期値設定]
図9(A)は、触媒温度初期値設定部100による酸化触媒31の触媒温度初期値の設定処理を示すブロック図である。
【0067】
停止前排気温度記憶部101は、本発明の第1排気温度記憶部であり、エンジン10の停止直前に第1排気温度センサ43で検出された排気温度を記憶する。停止前酸化触媒温度記憶部102Aは、本発明の停止前触媒温度記憶部であり、エンジン10の停止直前に酸化触媒温度推定部87で推定された酸化触媒温度を記憶する。なお、酸化触媒温度推定部87での酸化触媒温度の推定については後述する。
【0068】
第1演算値取得部103Aは、本発明の触媒初期温度設定部であり、エンジン10の始動時に第1排気温度センサ43(本発明の第2排気温度取得部)で検出された排気温度Tと、同じくエンジン10の始動時に吸気温度センサ48(本発明の吸入空気温度取得部)で検出された吸気温度Tに基づき、これらの排気温度T及び吸気温度Tの組に対応する数式(5)の演算値A103Aを取得する。本実施形態において第1演算値取得部103Aは、排気温度T及び吸気温度Tの組み合わせと、演算値A103Aを対応付けたマップを備えている。
【0069】
103A=(T−TK1_DOC/K2・・・(5)
数式(5)において、K1_DOCは酸化触媒31の放熱係数、K2は第1排気温度センサ43の放熱係数である。放熱係数K1_DOC,K2は実測値に基づいて定められる。
【0070】
第2演算値取得部104Aは、本発明の触媒初期温度設定部であり、停止前排気温度記憶部101に記憶されたエンジン10の停止直前における排気温度T02と、エンジン10の始動時における吸気温度Tに基づき、これらの排気温度T02及び吸気温度Tの組に対応する数式(6)の演算値B104Aを取得する。本実施形態において第2演算値取得部104Aは、排気温度T02及び吸気温度Tの組み合わせと、計算値B104Aを対応付けたマップを備えている。
【0071】
104A=(T02−TK1_DOC/K2・・・(6)
【0072】
酸化触媒温度初期値演算部105Aは、本発明の触媒初期温度設定部であり、エンジン10の始動時における吸気温度Tと、第1演算値取得部103Aで取得された演算値A103Aと、第2演算値取得部104で取得された演算値B104Aと、触媒温度記憶部102Aに記憶されたエンジン10の停止直前における酸化触媒温度T01_DOCに基づいて数式(7)の演算を行い、酸化触媒温度の仮初期値T1_DOCを演算する。
【0073】
1_DOC=T+A103A/B104A・(T01_DOC−T)・・・(7)
【0074】
酸化触媒初期値選択部106Aは、本発明の触媒初期温度設定部であり、酸化触媒温度初期値演算部105Aで演算された仮初期値T1_DOCと、第1排気温度センサ43で検出された排気温度Tと、停止前排気温度記憶部101に記憶された排気温度T02と、吸気温度センサ48で検出された吸気温度Tに基づいて酸化触媒初期温度を選択する。
【0075】
具体的には、酸化触媒初期値選択部106Aは、(1)第1排気温度センサ43で検出された排気温度Tが停止前排気温度記憶部101に記憶された排気温度T02よりも高ければ、停止前触媒温度記憶部102Aに記憶された酸化触媒温度T01_DOCを酸化触媒31の温度初期値として選択し、(2)吸気温度センサ48で検出された吸気温度Tが停止前排気温度記憶部101に記憶された排気温度T02よりも高ければ、前述の(1)で酸化触媒温度T01_DOCが酸化触媒31の温度初期値に設定されていても、吸気温度Tを酸化触媒31の温度初期値として選択し、(3)前述の(1)及び(2)以外であれば、仮初期値T1_DOCを酸化触媒31の温度初期値として選択する。
【0076】
酸化触媒初期値選択部106Aで選択された温度初期値は、触媒温度推定部80(酸化触媒温度推定部87)で酸化触媒31の温度推定処理における初期値として使用される。
【0077】
このように、エンジン10の停止直前に第1排気温度センサ43で検出された排気温度T02、エンジン10の停止直前に酸化触媒温度推定部87で推定された酸化触媒温度T01_DOC、エンジン10の始動時に第1排気温度センサ43で検出された排気温度T、エンジン10の始動時に吸気温度センサ48で検出された吸気温度T、酸化触媒31の放熱係数K1_DOC、第1排気温度センサ43の放熱係数K2に基づいて酸化触媒温度の初期値を演算しているので、酸化触媒温度の初期値を高い精度で取得できる。
【0078】
図9(B)は、触媒温度初期値設定部100によるNOx吸蔵還元型触媒32の触媒温度初期値の設定処理を示すブロック図である。
【0079】
停止前排気温度記憶部101は、本発明の第1排気温度記憶部であり、エンジン10の停止直前に第1排気温度センサ43で検出された排気温度を記憶する。停止前NOx触媒温度記憶部102Bは、本発明の停止前触媒温度記憶部であり、エンジン10の停止直前にNOx触媒温度推定部88で推定されたNOx吸蔵還元型触媒32の温度(以下、NOx触媒温度という)を記憶する。なお、NOx触媒温度推定部88でのNOx触媒温度の推定については後述する。
【0080】
第1演算値取得部103Bは、本発明の触媒初期温度設定部であり、エンジン10の始動時に第1排気温度センサ43(本発明の第2排気温度取得部)で検出された排気温度Tと、同じくエンジン10の始動時に吸気温度センサ48(本発明の吸入空気温度取得部)で検出された吸気温度Tに基づき、これらの排気温度T及び吸気温度Tの組に対応する数式(8)の演算値A103Bを取得する。本実施形態において第1演算値取得部103Bは、排気温度T及び吸気温度Tの組み合わせと、演算値A103Bを対応付けたマップを備えている。
【0081】
103B=(T−TK1_NOx/K2・・・(8)
数式(8)において、K1_NOxはNOx吸蔵還元型触媒32の放熱係数、K2は第1排気温度センサ43の放熱係数である。放熱係数K1_NOx,K2は実測値に基づいて定められる。
【0082】
第2演算値取得部104Bは、本発明の触媒初期温度設定部であり、停止前排気温度記憶部101に記憶されたエンジン10の停止直前における排気温度T02と、エンジン10の始動時における吸気温度Tに基づき、これらの排気温度T02及び吸気温度Tの組に対応する数式(9)の演算値B104Bを取得する。本実施形態において第2演算値取得部104Bは、排気温度T02及び吸気温度Tの組み合わせと、計算値B104Bを対応付けたマップを備えている。
【0083】
104B=(T02−TK1_NOx/K2・・・(9)
【0084】
NOx触媒温度初期値演算部105Bは、本発明の触媒初期温度設定部であり、エンジン10の始動時における吸気温度Tと、第1演算値取得部103Bで取得された演算値A103Bと、第2演算値取得部104Bで取得された演算値B104Bと、触媒温度記憶部102Bに記憶されたエンジン10の停止直前におけるNOx触媒温度T01_NOxに基づいて数式(10)の演算を行い、NOx触媒温度の仮初期値T1_NOxを演算する。
【0085】
1_NOx=T+A103B/B104B・(T01_NOx−T)・・・(10)
【0086】
NOx触媒温度初期値選択部106Bは、本発明の触媒初期温度設定部であり、NOx触媒温度初期値演算部105Bで演算された仮初期値T1_NOxと、第1排気温度センサ43で検出された排気温度Tと、停止前排気温度記憶部101に記憶された排気温度T02と、吸気温度センサ48で検出された吸気温度Tに基づいてNOx触媒初期温度を選択する。
【0087】
具体的には、NOx触媒温度初期値選択部106Bは、(1)第1排気温度センサ43で検出された排気温度Tが停止前排気温度記憶部101に記憶された排気温度T02よりも高ければ、停止前触媒温度記憶部102Bに記憶されたNOx触媒温度T01_NOxをNOx吸蔵還元型触媒32の温度初期値として選択し、(2)吸気温度センサ48で検出された吸気温度Tが停止前排気温度記憶部101に記憶された排気温度T02よりも高ければ、前述の(1)でNOx触媒温度T01_NOxがNOx吸蔵還元型触媒32の温度初期値に設定されていても、吸気温度TをNOx吸蔵還元型触媒32の温度初期値として選択し、(3)前述の(1)及び(2)以外であれば、仮初期値T1_NOxをNOx吸蔵還元型触媒32の温度初期値として選択する。
【0088】
NOx触媒温度初期値選択部106Bで選択された温度初期値は、触媒温度推定部80(NOx触媒温度推定部88)でNOx吸蔵還元型触媒32の温度推定処理における初期値として使用される。
【0089】
このように、エンジン10の停止直前に第1排気温度センサ43で検出された排気温度T02、エンジン10の停止直前にNOx触媒温度推定部88で推定されたNOx触媒温度T01_NOx、エンジン10の始動時に第1排気温度センサ43で検出された排気温度T、エンジン10の始動時に吸気温度センサ48で検出された吸気温度T、NOx吸蔵還元型触媒32の放熱係数K1_NOx、第1排気温度センサ43の放熱係数K2に基づいてNOx触媒温度の初期値を演算しているので、NOx触媒温度の初期値を高い精度で取得できる。
【0090】
[触媒温度推定]
図10は、本発明の触媒温度推定手段である触媒温度推定部80による、酸化触媒温度及び、NOx触媒温度の推定処理を示すブロック図である。
【0091】
フィルタ強制再生時HCマップ81は、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、フィルタ強制再生制御を実施した際にエンジン10から排出されるHC量(以下、フィルタ再生時HC排出量という)が予め実験等により設定されている。強制再生フラグFDPFがオン(FDPF=1)の場合は、フィルタ強制再生時HCマップ81からエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたフィルタ再生時HC排出量に、エンジン10の運転状態に応じた所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部85,86に送信されるようになっている。
【0092】
フィルタ強制再生時COマップ82は、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、フィルタ強制再生制御を実施した際にエンジン10から排出されるCO量(以下、フィルタ再生時CO排出量という)が予め実験等により設定されている。強制再生フラグFDPFがオン(FDPF=1)の場合は、フィルタ強制再生時COマップ82からエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたフィルタ再生時CO排出量に、エンジン10の運転状態に応じた所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部85,86に送信されるようになっている。
【0093】
NOxパージ時HCマップ83Aは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、NOxパージを実施した際にエンジン10から排出されるHC量(以下、NOxパージ時HC排出量という)が予め実験等により設定されている。NOxパージフラグFNPがオン(FNP=1)の場合において、NOxパージ時HCマップ83Aからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたNOxパージ時HC排出量に、エンジン10の運転状態に応じた所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部85,86に送信されるようになっている。
【0094】
NOxパージ時COマップ83Bは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、NOxパージを実施した際にエンジン10から排出されるCO量(以下、NOxパージ時CO排出量という)が予め実験等により設定されている。NOxパージフラグFNPがオン(FNP=1)の場合において、NOxパージ時COマップ83Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたNOxパージ時CO排出量に、エンジン10の運転状態に応じた所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部85,86に送信されるようになっている。
【0095】
SOxパージ時HCマップ84Aは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、SOxパージ制御を実施した際にエンジン10から排出されるHC量(以下、SOxパージ時HC排出量という)が予め実験等により設定されている。SOxパージフラグFSPがオン(FSP=1)の場合において、SOxパージ時HCマップ84Aからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたSOxパージ時HC排出量に、エンジン10の運転状態に応じた所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部85,86に送信されるようになっている。
【0096】
SOxパージ時COマップ84Bは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、SOxパージ制御を実施した際にエンジン10から排出されるCO量(以下、SOxパージ時CO排出量という)が予め実験等により設定されている。SOxパージフラグFSPがオン(FSP=1)の場合に、SOxパージ時COマップ84Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたSOxパージ時CO排出量に、所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部85,86に送信されるようになっている。
【0097】
酸化触媒発熱量推定部85は、SOxパージフラグFSP、強制再生フラグFDPF等に応じて、各マップ81〜84Bから入力されるHC・CO排出量に基づいて、酸化触媒31内部でのHC・CO発熱量(以下、酸化触媒HC・CO発熱量という)を推定する。酸化触媒HC・CO発熱量は、例えば、各マップ81〜84Bから送信されるHC・CO排出量等を入力値として含むモデル式やマップに基づいて推定演算すればよい。
【0098】
NOx触媒発熱量推定部86は、SOxパージフラグFSP、強制再生フラグFDPF等に応じて、各マップ81〜84Bから入力されるHC・CO排出量に基づいて、NOx吸蔵還元型触媒32内部のHC・CO発熱量(以下、NOx触媒HC・CO発熱量という)を推定する。NOx触媒HC・CO発熱量は、例えば、各マップ81〜84Bから送信されるHC・CO排出量を入力値として含むモデル式やマップに基づいて推定演算すればよい。
【0099】
酸化触媒温度推定部87は、第1排気温度センサ43によって検出される酸化触媒入口温度、酸化触媒発熱量推定部85から入力される酸化触媒HC・CO発熱量、MAFセンサ40のセンサ値、外気温度センサ47又は吸気温度センサ48のセンサ値から推定される外気への放熱量、触媒温度初期値設定部100で設定された酸化触媒温度の初期値等を入力値として含むモデル式やマップに基づいて、酸化触媒31の触媒温度を推定演算する。推定演算された推定酸化触媒温度は、フィルタ再生制御部51、SOxパージ制御部60、NOxパージ制御部70にて参照される。
【0100】
酸化触媒温度推定部87は、酸化触媒温度の初期値として触媒温度初期値設定部100で設定された初期値を用いて推定演算を行っているので、エンジン10の始動時における酸化触媒31の実際の温度と推定値の乖離が抑制され、誤差を早期に小さくできる。これにより、SOxパージ制御やNOxパージ制御の実行時に、リッチ制御可能な温度でありながらリッチ制御しないことによるNOx浄化率の低下やリッチ制御の禁止温度でありながらリッチ制御することによる白煙発生などの不具合を抑制できる。
【0101】
なお、エンジン10が燃料噴射を停止させるモータリング時は、酸化触媒31内部におけるHC・COの発熱反応がなくなるか、あるいは、無視できるほど低下する。このため、モータリング時は、酸化触媒発熱量推定部87から入力される酸化触媒HC・CO発熱量を用いることなく、酸化触媒入口温度、MAFセンサ値、外気への放熱量に基づいて、酸化触媒温度を推定演算するように構成されている。
【0102】
NOx触媒温度推定部88は、酸化触媒温度推定部87から入力される酸化触媒温度(以下、NOx触媒入口温度ともいう)、NOx触媒発熱量推定部85から入力されるNOx触媒HC・CO発熱量、外気温度センサ47又は吸気温度センサ48のセンサ値から推定される外気への放熱量、触媒温度初期値設定部100で設定されたNOx触媒温度の初期値等を入力値として含むモデル式やマップに基づいて、NOx吸蔵還元型触媒32の触媒温度を推定演算する。推定演算された推定NOx触媒温度は、フィルタ再生制御部51、SOxパージ制御部60、NOxパージ制御部70にて参照される。
【0103】
NOx触媒温度推定部88は、NOx触媒温度の初期値として触媒温度初期値設定部100で設定された初期値を用いて推定演算を行っているので、エンジン10の始動時におけるNOx吸蔵還元型触媒32の実際の温度と推定値の乖離が抑制され、誤差を早期に小さくできる。これにより、SOxパージ制御やNOxパージ制御の実行時に、リッチ制御可能な温度でありながらリッチ制御しないことによるNOx浄化率の低下やリッチ制御の禁止温度でありながらリッチ制御することによる白煙発生などの不具合を抑制できる。
【0104】
なお、エンジン10が燃料噴射を停止させるモータリング時は、NOx吸蔵還元型触媒32内部におけるHC・COの発熱反応がなくなるか、あるいは、無視できるほど低下する。このため、これらモータリング時は、NOx触媒発熱量推定部86から入力されるNOx触媒HC・CO発熱量を用いることなく、NOx触媒入口温度、MAFセンサ値、外気への放熱量に基づいて、NOx触媒温度を推定演算するように構成されている。
【0105】
[MAF追従制御]
MAF追従制御部98は、(1)通常運転のリーン状態からSOxパージ制御又はNOxパージ制御によるリッチ状態への切り替え期間及び、(2)SOxパージ制御又はNOxパージ制御によるリッチ状態から通常運転のリーン状態への切り替え期間に、各筒内インジェクタ11の燃料噴射タイミング及び燃料噴射量をMAF変化に応じて補正する制御(MAF追従制御という)を実行する。
【0106】
[噴射量学習補正]
図11に示すように、噴射量学習補正部90は、学習補正係数演算部91と、噴射量補正部92とを有する。
【0107】
学習補正係数演算部91は、エンジン10のリーン運転時にNOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λActと、推定ラムダ値λEstとの誤差Δλに基づいて燃料噴射量の学習補正係数FCorrを演算する。排気がリーン状態のときは、排気中のHC濃度が非常に低いので、酸化触媒31でHCの酸化反応による排気ラムダ値の変化は無視できるほど小さい。このため、酸化触媒31を通過して下流側のNOx/ラムダセンサ45で検出される排気中の実ラムダ値λActと、エンジン10から排出された排気中の推定ラムダ値λEstとは一致すると考えられる。このため、これら実ラムダ値λActと推定ラムダ値λEstとに誤差Δλが生じた場合は、各筒内インジェクタ11に対する指示噴射量と実噴射量との差によるものと仮定することができる。以下、この誤差Δλを用いた学習補正係数演算部91による学習補正係数の演算処理を図12のフローに基づいて説明する。
【0108】
ステップS300では、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて、エンジン10がリーン運転状態にあるか否かが判定される。リーン運転状態にあれば、学習補正係数の演算を開始すべく、ステップS310に進む。
【0109】
ステップS310では、推定ラムダ値λEstからNOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λActを減算した誤差Δλに、学習値ゲインK及び補正感度係数Kを乗じることで、学習値FCorrAdptが演算される(FCorrAdpt=(λEst−λAct)×K×K)。推定ラムダ値λEstは、エンジン回転数Neやアクセル開度Qに応じたエンジン10の運転状態から推定演算される。また、補正感度係数Kは、図11に示す補正感度係数マップ91AからNOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λActを入力信号として読み取られる。
【0110】
ステップS320では、学習値FCorrAdptの絶対値|FCorrAdpt|が所定の補正限界値Aの範囲内にあるか否かが判定される。絶対値|FCorrAdpt|が補正限界値Aを超えている場合、本制御はリターンされて今回の学習を中止する。
【0111】
ステップS330では、学習禁止フラグFProがオフか否かが判定される。学習禁止フラグFProとしては、例えば、エンジン10の過渡運転時、SOxパージ制御時(FSP=1)、NOxパージ制御時(FNP=1)等が該当する。これらの条件が成立する状態では、実ラムダ値λActの変化によって誤差Δλが大きくなり、正確な学習を行えないためである。エンジン10が過渡運転状態にあるか否かは、例えば、NOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λActの時間変化量に基づいて、当該時間変化量が所定の閾値よりも大きい場合に過渡運転状態と判定すればよい。
【0112】
ステップS340では、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照される学習値マップ91B(図12参照)が、ステップS310で演算された学習値FCorrAdptに更新される。より詳しくは、この学習値マップ91B上には、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに応じて区画された複数の学習領域が設定されている。これら学習領域は、好ましくは、使用頻度が多い領域ほどその範囲が狭く設定され、使用頻度が少ない領域ほどその範囲が広く設定されている。これにより、使用頻度が多い領域では学習精度が向上され、使用頻度が少ない領域では未学習を効果的に防止することが可能になる。
【0113】
ステップS350では、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号として学習値マップ91Bから読み取った学習値に「1」を加算することで、学習補正係数FCorrが演算される(FCorr=1+FCorrAdpt)。この学習補正係数FCorrは、図11に示す噴射量補正部92に入力される。
【0114】
噴射量補正部92は、パイロット噴射QPilot、プレ噴射QPre、メイン噴射QMain、アフタ噴射QAfter、ポスト噴射QPostの各基本噴射量に学習補正係数FCorrを乗算することで、これら燃料噴射量の補正を実行する。
【0115】
このように、推定ラムダ値λEstと実ラムダ値λActとの誤差Δλに応じた学習値で各筒内インジェクタ11に燃料噴射量を補正することで、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化、個体差等のバラツキを効果的に排除することが可能になる。
【0116】
[MAF補正係数]
MAF補正係数演算部95は、SOxパージ制御時のMAF目標値MAFSPL_Trgtや目標噴射量QSPR_Trgtの設定に用いられるMAF補正係数Maf_corrを演算する。
【0117】
本実施形態において、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量は、NOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λActと推定ラムダ値λEstとの誤差Δλに基づいて補正される。しかしながら、ラムダは空気と燃料の比であるため、誤差Δλの要因が必ずしも各筒内インジェクタ11に対する指示噴射量と実噴射量との差の影響のみとは限らない。すなわち、ラムダの誤差Δλには、各筒内インジェクタ11のみならずMAFセンサ40の誤差も影響している可能性がある。
【0118】
図13は、MAF補正係数演算部95によるMAF補正係数Maf_corrの設定処理を示すブロック図である。補正係数設定マップ96は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したMAFセンサ40のセンサ特性を示すMAF補正係数Maf_corrが予め実験等に基づいて設定されている。
【0119】
MAF補正係数演算部95は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号として補正係数設定マップ96からMAF補正係数Maf_corrを読み取ると共に、このMAF補正係数Maf_corrをMAF目標値演算部62及び噴射量目標値演算部66に送信する。これにより、SOxパージ制御時のMAF目標値MAFSPL_Trgtや目標噴射量QSPR_Trgtの設定に、MAFセンサ40のセンサ特性を効果的に反映することが可能になる。
【0120】
[その他]
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0121】
10 エンジン
11 筒内インジェクタ
12 吸気通路
13 排気通路
16 吸気スロットルバルブ
24 EGRバルブ
31 酸化触媒
32 NOx吸蔵還元型触媒
33 フィルタ
34 排気インジェクタ
40 MAFセンサ
45 NOx/ラムダセンサ
50 ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13