特許第6432412号(P6432412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432412
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】スイッチング素子の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/08 20060101AFI20181126BHJP
   G01R 19/165 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   H03K17/08 C
   G01R19/165 L
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-62521(P2015-62521)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-181881(P2016-181881A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入江 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌弘
【審査官】 白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−227520(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/048845(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/004891(WO,A1)
【文献】 特開2006−158067(JP,A)
【文献】 特開平11−299218(JP,A)
【文献】 米国特許第05646520(US,A)
【文献】 特開2009−212704(JP,A)
【文献】 特開平11−259052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/08
G01R 19/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用スイッチング素子(2X),及び非電位基準側導通端子が前記駆動用スイッチング素子と共通に接続され、前記駆動用スイッチング素子に流れる電流を所定の分流比で流す電流検出用スイッチング素子(6)に駆動信号を出力する駆動回路(9)と、
一端が前記電流検出用スイッチング素子の電位基準側導通端子に接続される電流検出用抵抗(18)と、
基準グランドと入力電源の負側端子である回路グランドとの間に接続されるコンデンサ(10)を有し、正側端子が入力電源に接続され、電圧出力端子が前記基準グランドに接続されることで、前記回路グランドに接続されている自身の負側端子に負電圧を出力する第1電源回路(17)と、
非反転入力端子が前記電流検出用スイッチング素子の電位基準側導通端子に接続され、反転入力端子が前記基準グランドを介して前記駆動用スイッチング素子の電位基準側導通端子に接続されるオペアンプ(23)と、
入力電源に正側端子が接続され、負側端子が前記回路グランドに接続されて電源を生成する第2電源回路(20)と、
この第2電源回路の電源出力端子と前記回路グランドとの間に接続され、且つ共通接続点が前記電流検出用抵抗の他端に接続されて、前記オペアンプの出力信号のレベル変化に応じて導通状態が相反的に制御される電源側スイッチング素子(21)及びグランド側スイッチング素子(22)の直列回路と、
前記共通接続点の電圧に基づいて、前記電流検出用抵抗に流れる電流を検出する電流検出回路(19)と、
前記電流検出用スイッチング素子の電位基準側導通端子の電圧と閾値電圧とを比較して、前者が後者を上回ると過電流を検出する過電流検出回路(34)とを備えることを特徴とするスイッチング素子の駆動装置。
【請求項2】
前記過電流検出回路を第1過電流検出回路(34)として、
前記電源側スイッチング素子及びグランド側スイッチング素子の共通接続点に接続される前記電流検出用抵抗の一端の電圧と閾値電圧とを比較して、前者が後者を上回ると過電流を検出する第2過電流検出回路(42)を備えることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項3】
前記電流検出用抵抗及び前記電流検出回路の共通接続点と、前記基準グランドとの間に配置される常閉型のスイッチ回路(52)を備え、
前記オペアンプは、外部より入力される、電流検出タイミングを示す検出信号がイネーブルになる期間のみ動作するように構成され、
前記スイッチ回路は、前記検出信号がイネーブルになる期間にオフされることを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項4】
前記電流検出用抵抗及び前記電流検出回路の共通接続点と、前記スイッチ回路との間に電圧調整用の抵抗素子(62)を直列に接続したことを特徴とする請求項3記載のスイッチング素子の駆動装置。
【請求項5】
前記過電流検出回路における閾値電圧を、前記スイッチ回路がオフされるタイミングで変更する閾値変更手段(72)を備えたことを特徴とする請求項4記載のスイッチング素子の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動用スイッチング素子と、この駆動用スイッチング素子に流れる電流を所定の分流比で流す電流検出用スイッチング素子とを駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパワーMOSFETを駆動する装置には、パワーMOSFETに流れるドレイン電流を検出するため、そのドレイン電流を小さい電流比で流す電流検出用のMOSFET(センスMOSFET)を併せて形成しておき、そのセンスMOSFETのドレイン電流を検出する回路を備えるものがある。この場合、センスMOSFETのソースに接続した抵抗素子の端子電圧を検出する。ところが、このような構成を採用するとセンスMOSFETのソース電位が上昇し、パワーMOSFETとセンスMOSFETとでゲート−ソース間電圧が異なる状態となり、電流検出精度が低下するという問題がある。
【0003】
この問題に対処するため、例えば特許文献1には、パワーMOSFET及びセンスMOSFETのソースを、それぞれオペアンプの入力端子に接続することで仮想接地して、電流検出精度を向上させる構成が開示されている。それに加えて、パワーMOSFETに過電流が流れた場合も仮想接地を維持した状態で、シャント抵抗の端子電圧に基づいて過電流検出を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−299218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、過電流が流れている(短絡時も含む)時にオペアンプが仮想接地を維持するためには、オペアンプの電流能力を高める必要がある。すると、回路面積を増加させざるを得ず、小型化が困難になる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、オペアンプの回路面積を増加させることなく過電流の検出を行うことができるスイッチング素子の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のスイッチング素子の駆動装置によれば、電流検出用抵抗の一端を、電流検出用スイッチング素子の電位基準側導通端子に接続する。また、第1電源回路は、基準グランドと入力電源の負側端子である回路グランドとの間に接続されるコンデンサを有し、正側端子を入力電源に接続し、電圧出力端子を基準グランドに接続することで負側端子に負電圧を出力する。また、オペアンプの非反転入力端子を電流検出用スイッチング素子の電位基準側導通端子に接続し、反転入力端子を基準グランドを介して駆動用スイッチング素子の電位基準側導通端子に接続する。
【0008】
更に、第2電源回路は、その負側端子を入力電源の負側端子である回路グランドに接続することで電源を生成する。そして、電源側及びグランド側スイッチング素子の直列回路を第2電源回路の電源出力端子に接続し、且つ前記直列回路の共通接続点を電流検出用抵抗の他端に接続して、電源側及びグランド側スイッチング素子の導通状態を、前記オペアンプの出力信号のレベル変化に応じて相反的に制御する。電流検出回路は、前記共通接続点の電圧に基づいて電流検出用抵抗に流れる電流を検出する。
【0009】
ここで、電源側及びグランド側スイッチング素子がオンした際に流れる電流を正極性,オフした際にダイオードを介して流れる電流(還流電流)を負極性と定義する。上記のように構成すれば、正電流は、負荷→電流検出用スイッチング素子→電流検出用抵抗→グランド側スイッチング素子→回路グランド→第1電源回路→基準グランドの経路で流れる。一方、負電流は、基準グランド→第1電源回路→回路グランド→第2電源回路→電源側スイッチング素子→電流検出用抵抗→電流検出用スイッチング素子のダイオードの経路で流れる。したがって、駆動用スイッチング素子と電流検出用スイッチング素子との電位基準側導通端子をオペアンプにより仮想接地した状態で、正負両極性の電流を高精度に検出できる。
【0010】
そして、正電流と負電流とが第2電源回路を互いに逆方向に流れて経由するので、正負の電流により第1電源回路内部の容量成分を各極性で充電する電荷の収支はゼロになり、第1電源回路が回路グランドに出力している負電圧を変動させることがない。したがって、電流の検出動作に伴い第1電源回路が電力を余分に消費することが無くなる。
【0011】
加えて、過電流検出回路は、電流検出用スイッチング素子の電位基準側導通端子の電圧と閾値電圧とを比較して、前者が後者を上回ると過電流を検出する。これにより、オペアンプが仮想接地状態を維持するために必要となる電流能力は、正常な動作状態に対応した電流の範囲をカバーすれば良くなる。したがって、過電流検出を行うためにオペアンプのサイズを増大させる必要が無く、駆動装置を小型に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態であり、インバータ回路の下アーム側FETを駆動する駆動装置の構成と、センスFETを介して流れる正電流の経路とを示す図
図2】同構成と、センスFETの寄生ダイオードを介して流れる負電流の経路とを示す図
図3】ゲート電圧波形,並びにFET及びセンスFETを介して流れる電流波形を示す図
図4】過電流検出の状態を示すタイミングチャート
図5】第2実施形態であり、インバータ回路の下アーム側FETを駆動する駆動装置の構成と、センスFETを介して流れる正電流の経路とを示す図
図6】過電流検出の状態を示すタイミングチャート
図7】第3実施形態であり、インバータ回路の下アーム側FETを駆動する駆動装置の構成と、センスFETを介して流れる正電流の経路とを示す図
図8】過電流検出の状態を示すタイミングチャート
図9】第4実施形態であり、インバータ回路の下アーム側FETを駆動する駆動装置の構成と、センスFETを介して流れる正電流の経路とを示す図
図10】過電流検出の状態を示すタイミングチャート
図11】第5実施形態であり、インバータ回路の下アーム側FETを駆動する駆動装置の構成と、センスFETを介して流れる正電流の経路とを示す図
図12】過電流検出の状態を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、インバータ回路1は、6個のNチャネルMOSFET2(U,V,W/X,Y,Z)を3相ブリッジ接続して構成されている。インバータ回路1の正側電源線3(+),負側電源線3(−)には、高圧直流電源であるバッテリ4の正側端子,負側端子がそれぞれ接続されている。
【0014】
インバータ回路1の各相出力端子は、スター結線されている3相モータの固定子巻線5U,5V,5Wの一端にそれぞれ接続されている。図中では、U相アームのグランド側に配置されているFET2Xのみについて示しているが、FET2X(駆動用スイッチング素子)のドレイン(非電位基準側導通端子)には、電流検出用のNチャネルMOSFET6(電流検出用スイッチング素子)のドレインが接続されている(以下では、センスFET6と称する)。センスFET6は、FET2Xに流れるドレイン電流を小さな電流比(例えば100:1など)で自身のドレイン電流として流すように形成されている。
【0015】
駆動装置7の電源端子+B,−Bには、低圧直流電源であるバッテリ8の正側端子,負側端子がそれぞれ接続されている。駆動装置7は、FET2X及びセンスFET6のゲート(導通制御端子)にゲート信号を出力する駆動回路9を内蔵している。駆動装置7の端子PGNDはグランド(基準グランド)及びインバータ回路1の負側電源線3(−)に接続されている。また、駆動装置7の端子ICGNDは電源端子−B(回路グランド)に接続されていると共に、コンデンサ10を介して端子PGNDに接続されている。
【0016】
電源端子+Bと端子ICGNDとの間には、PチャネルMOSFET11及びNチャネルMOSFET12の直列回路が接続されており、FET11,12のゲートには、駆動信号がそれぞれゲートドライバ13,14を介して与えられる。これらが駆動回路9を構成している。駆動装置7の信号入力端子INには、外部より制御指令が入力され、その制御指令は制御信号出力部31に与えられる。制御信号出力部31は、制御指令に応じて駆動制御信号を駆動信号生成部32に出力し、駆動信号生成部32は、駆動制御信号に応じてゲート信号(駆動信号)を生成し、ゲートドライバ13,14に入力する。そして、FET11及び12の共通接続点は、端子G及びゲート抵抗15を介してFET2X及びセンスFET6のゲートに接続されている。
【0017】
電源端子+Bと端子ICGNDとの間には定電圧レギュレータ16が接続されており、定電圧レギュレータ16の電源出力端子は端子PGNDに接続されている。外付けのコンデンサ10と定電圧レギュレータ16とが第1電源回路17を構成している。
【0018】
センスFET6のソース(電位基準側導通端子)は、端子SE及び電流検出抵抗18を介してA/Dコンバータ19(電流検出回路)の入力端子に接続されている。電源端子+B,−B間には降圧型レギュレータで構成される第2電源回路20が接続されており、第2電源回路20の電源出力端子と電源端子−Bとの間には、PチャネルMOSFET21(電源側スイッチング素子)及びNチャネルMOSFET22(グランド側スイッチング素子)の直列回路が接続されている。FET21及び22の共通接続点は、A/Dコンバータ19の入力端子に接続されている。
【0019】
オペアンプ23の非反転入力端子は端子SEに接続されており、反転入力端子は端子PGNDに接続されている。そして、オペアンプ23の出力端子はFET21及び22のゲートに接続されている。これにより、FET2X及びセンスFET6のソースは仮想接地状態となっている。また、オペアンプ23には、制御信号出力部31が上記制御指令に応じて、オペアンプ23の動作を制御するための制御信号が入力されている(第3実施形態参照)。
【0020】
コンパレータ34(過電流検出回路)の非反転入力端子は端子SEに接続されており、コンパレータ34の反転入力端子には、端子PGNDを電位基準とする閾値電圧VTHが与えられている。そして、コンパレータ34の出力端子は、駆動信号生成部32の制御端子に接続されている。
【0021】
次に、本実施形態の作用について説明する。図1に示すように、インバータ回路1のFET2V,2Xがオンすることで、バッテリ4からの電流が、インバータ回路1では図中に実線で示すようにV相(+)→U相(−)に流れる。この時、センスFET6もオンしているので、電流は図中に破線で示すように、固定子巻線5UよりセンスFET6を介して端子SEより電流検出抵抗18の方向に流れる(正極性)。図3に示すように、FET2X及びセンスFET6がPWM制御により正弦波通電されている場合に、波形の正半波期間に流れる電流である。
【0022】
そして、オペアンプ23は、端子SEの電位を端子PGNDの電位に等しくするように出力端子の電圧を上昇させる。これによりFET22側がオンする。したがって正電流は、
センスFET6→端子SE→電流検出抵抗18→FET22
→コンデンサ10→負側電源線3(−)
の経路で流れる。よって、A/Dコンバータ19は、端子SEの仮想接地電位(0V)を基準とする電流検出抵抗18による電圧降下量を、正電流の値としてA/D変換できる。
【0023】
一方、インバータ回路1のFET2U,2Yがオンした後(U相(+)→V相(−))図2に示すようにFET2Uがオフすると、インバータ回路1では還流電流が固定子巻線5U及び5V→FET2Y→FET2Xの寄生ダイオード2XDの経路で流れる。この時、センスFET6もオフしており、電流は、負側電源線3(−)からコンデンサ10を介して端子ICGNDの方向に流れる(負極性)。図3に示すように、波形の負半波期間に流れる電流である。この時FET2X及び6のゲート電位は負電位になり、FET2Xの閾値電圧が低い場合でもターンオフを確実に行うことができる。
【0024】
この時オペアンプ23は、同じく端子SEの電位を端子PGNDの電位に等しくするように出力端子の電圧を低下させる。これによりFET21側がオンする。したがって負電流は、
コンデンサ10→端子ICGND→バッテリ8→レギュレータ20
→FET21→電流検出抵抗18→センスFET6の寄生ダイオード6D
の経路で流れる。よって、A/Dコンバータ19は、端子SEの仮想接地電位を基準とする電流検出抵抗18による電圧上昇量を負電流の値としてA/D変換できる。尚、A/Dコンバータ19がA/D変換した電流のデータは、図示しない上位の制御装置に対して、例えばシリアル通信などにより送信される。
【0025】
図4に示すように、センス電流が増大して過電流状態に至る場合、オペアンプ23の電流能力が仮想接地状態を維持できる間は、端子SEの電位は変化しない。オペアンプ23が仮想接地状態を維持できなくなると、端子SEの電位はFET22のオン抵抗値に比例する傾きで上昇する。そして、端子SEの電位が閾値電圧VTHを超えると、コンパレータ34の出力信号はローレベルからハイレベルに変化して、過電流が検出される。すると、駆動信号生成部32は、ゲート信号の出力を停止する。
【0026】
以上のように本実施形態によれば、駆動装置7において、電流検出用抵抗18の一端をセンスFET6のソースに接続し、第1電源回路17の正側端子をバッテリ8に接続し、電圧出力端子を端子PGNDに接続することで負側端子に負電圧を出力する。また、オペアンプ23の非反転入力端子をセンスFET6のソースに接続し、反転入力端子を端子PGNDに接続する。第2電源回路20は、負側端子を端子ICGNDに接続することで電源を生成する。
【0027】
FET21及び22の直列回路を第2電源回路20に並列に接続し、且つ前記直列回路の共通接続点を電流検出用抵抗18の他端に接続して、FET21及び22の導通状態をオペアンプ23の出力信号のレベル変化に応じて相反的に制御する。そして、A/Dコンバータ19は、前記共通接続点の電圧に基づいて電流検出用抵抗18に流れる電流を検出する。したがって、FET2XとセンスFET6とのソースをオペアンプ23により仮想接地した状態で、正負両極性の電流を高精度に検出できる。
【0028】
また、第1電源回路17を、入力電源に並列に接続される定電圧レギュレータ16と、端子PGND,ICGND間に接続されるコンデンサ10とで構成したので、正負の電流によりコンデンサ10を交互に各極性で充電する電荷の収支はゼロになり、第1電源回路17が端子ICGNDに出力している負電圧を変動させることがない。したがって、電流の検出動作に伴い第1電源回路17が電力を余分に消費することが無くなる。尚、FET2Xをターンオン,ターンオフさせる際にゲートを充放電する電流によって、コンデンサ10を充放電する電荷の収支もゼロになることは勿論である。
【0029】
加えて、コンパレータ34は、端子SEの電圧と閾値電圧VTHとを比較して、前者が後者を上回ると過電流を検出する。これにより、オペアンプが23仮想接地状態を維持するために必要となる電流能力は、正常な動作状態に対応した電流の範囲をカバーすれば良くなる。したがって、過電流検出を行うためにオペアンプ23のサイズを増大させる必要が無く、駆動装置7を小型に構成できる。
【0030】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図5に示すように、第2実施形態の駆動装置41は、もう1つのコンパレータ42(第2過電流検出回路)を備えている。コンパレータ42の反転入力端子はA/Dコンバータ19の入力端子に接続されており、非反転入力端子には、回路グランドICGNDを電位基準とする閾値電圧VTH2が与えられている。そして、コンパレータ42の出力端子は、駆動信号生成部43が備えるもう1つの制御信号端子に接続されている。すなわち、コンパレータ42は、電流検出抵抗18の端子電圧を閾値電圧VTH2と比較して過電流検出を行う。
【0031】
次に、第2実施形態の作用について説明する。図6に示すように、実際のオペアンプ23の設計においては、通常動作における最大電流値に対してマージンを加えるため、オペアンプ23が仮想接地状態を維持できなくなる電流値に達するまで、すなわちコンパレータ34(第1過電流検出回路)により過電流が検出されるまで遅延が発生する。そこで、第2実施形態ではコンパレータ42により、電流検出抵抗18の端子電圧変化に基づいて別途過電流検出を行う。すると、駆動信号生成部43は、コンパレータ34による場合と同様にゲート信号の出力を停止する。これにより、通常動作の最大電流以上で、且つコンパレータ34が端子SEの電圧により過電流を検出可能となるまでの不感帯をなくすことができる。
【0032】
尚、第2実施形態の構成においても、例えば短絡の発生により高速でかつアンプ能力限界以上の極めて過大なセンス電流が流れた場合は、オペアンプ23は仮想接地できず、端子SEの電圧は上昇するため、コンパレータ42により過電流は検出されず、コンパレータ34により過電流が検出されることになる。
【0033】
以上のように第2実施形態によれば、オペアンプ34とは別個に、電流検出用抵抗18の端子電圧と閾値電圧VTH2とを比較して、前者が後者を上回ると過電流を検出するコンパレータ42を備えたので、これにより、コンパレータ34における過電流検出の不感帯をカバーできる。
【0034】
(第3実施形態)
図7に示すように、第3実施形態の駆動装置51は、第1実施形態の駆動装置7をベースとし、A/Dコンバータ19の入力端子と端子PGNDとの間に常閉型のスイッチ回路52(SW1)を備えている。制御信号出力部31に替わる制御信号出力部53には、外部より端子IDTを介して電流検出タイミングを示す検出信号が入力されている。そして、制御信号出力部53は、検出信号がイネーブルになると、スイッチ回路52をオフするように制御信号を出力する。また、オペアンプ23は、検出信号がディスエーブルであれば、制御信号出力部53が出力する制御信号によって動作を停止しており、同信号がイネーブルになる期間のみ動作する。
【0035】
次に、第3実施形態の作用について説明する。図8に示すように、オペアンプ23の作用による仮想接地状態での過電流検出を行わない期間aでは、オペアンプ23が動作を停止しているので、端子SEは仮想接地状態にならない。また、スイッチ回路52はオンしているので、センス電流が一定であれば、A/Dコンバータ19の入力端子は、基準グランドPGNDを電位基準としてスイッチ回路52のオン抵抗値と電流検出抵抗18の直列抵抗値とに応じた所定の電圧になる。
【0036】
そして、検出信号がイネーブルになることでスイッチ回路52がオフされる期間bでは、オペアンプ23が仮想接地動作するので、端子SEの電位は基準グランドPGNDの電位に等しくなる。この期間b内にセンス電流が増大して過電流が発生すれば、第1実施形態と同様にコンパレータ34により過電流が検出される。尚、図7には、期間a,bのそれぞれにおいて流れるセンス電流の経路を示している。
【0037】
以上のように第3実施形態によれば、A/Dコンバータ19の入力端子と端子PGNDとの間に常閉型のスイッチ回路52を備え、オペアンプ23を、電流検出タイミングを示す検出信号がイネーブルになる期間bのみ動作するように構成し、スイッチ回路52を期間bにオフするようにした。したがって、仮想接地状態による過電流検出を行わない期間aでは、オペアンプ23による不要な電力消費を抑制できるので、駆動装置51の消費電力を低減できる。
【0038】
(第4実施形態)
図9に示すように、第4実施形態の駆動装置61は、第3実施形態の駆動装置51において、電流検出抵抗18とスイッチ回路52との間に、電圧調整用の抵抗素子62を接続した構成である。次に、第4実施形態の作用について説明する。図10に示すように、第3実施形態と同様に期間aではスイッチ回路52がオンしているので、端子SEの電位は、基準グランドPGNDを電位基準とする抵抗素子62及び電流検出抵抗18の直列抵抗値に応じた電圧となる。そして、過電流検出を行う期間bではスイッチ回路52がオフしてオペアンプ23が動作するので、第3実施形態の場合と同様になる。
【0039】
以上のように第4実施形態によれば、電流検出抵抗18とスイッチ回路52との間に抵抗素子62を直列に接続したので、期間a,bで過電流検出に対する電圧感度を変更することができる。
【0040】
(第5実施形態)
図11に示すように、第5実施形態の駆動装置71は、第4実施形態の駆動装置61において、コンパレータ34に閾値電圧を付与するための電源として、可変電源72(閾値変更手段)を用いている。そして、可変電源72の出力電圧を、スイッチ回路52のオフ制御を行う信号によって制御する。図12に示すように、期間aにおける閾値電圧をVTHONとすると、期間bにおける閾値電圧をVTHOFF(<VTHON)とするように変化させる。
【0041】
以上のように第5実施形態によれば、可変電源72によりコンパレータ34に閾値電圧を付与するようにして、期間aに付与している閾値電圧VTHONを、スイッチ回路52をオフするタイミングで閾値電圧をVTHOFFに変更するようにした。したがって、スイッチ回路52に抵抗素子62を直列に接続することで、過電流検出の電圧感度を変更するのに併せて、コンパレータ34に付与する閾値電圧を変更できるので、双方により過電流検出感度を調整できる。
【0042】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
スイッチング素子はMOSFETに限ることはない。例えば駆動用スイッチング素子については、電圧駆動型のスイッチング素子であれば良い。したがって、寄生ダイオードを有する素子に限らず、還流電流を通電させるためのダイオードは素子に外付けされていても良い。
【符号の説明】
【0043】
図面中、2XはNチャネルMOSFET(駆動用スイッチング素子)、6はNチャネルMOSFET(電流検出用スイッチング素子)、9は駆動回路、10はコンデンサ、17は第1電源回路、18は電流検出抵抗、19はA/Dコンバータ(電流検出回路)、20は第2電源回路(定電圧レギュレータ)、21はPチャネルMOSFET(電源側スイッチング素子)、22はNチャネルMOSFET(グランド側スイッチング素子)、23はオペアンプ、34はコンパレータ(過電流検出回路)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12