(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フライバックコンバータからなる単位コンバータ(10)であって、入力端子(Ti11〜Ti51,Ti12〜Ti52)が互いに直列に接続されているとともに、出力端子(To11〜To51,To12〜To52)が互いに並列に接続されている複数の単位コンバータと、
前記単位コンバータのそれぞれを、臨界電流モードで作動させる制御回路(50)と、
前記単位コンバータの前記出力端子間の出力電圧を検出する電圧検出手段(30)と、
前記出力電圧のパルス幅である出力時間を検出する時間検出手段(11)と、を備え、
前記制御回路は、前記単位コンバータに含まれるスイッチング素子のオン時間、前記電圧検出手段により検出された前記出力電圧、及び前記時間検出手段により検出された前記出力時間に基づいて、前記単位コンバータの入力端子間の入力電圧を算出することを特徴とする電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、電力変換装置を具現化した実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態に係る電力変換装置の構成を示す。本実施形態に係る電力変換装置100は、4個の単位コンバータ10(#1)〜(#4)、出力電圧検出部30、及び制御回路50を備える。
【0011】
単位コンバータ10(#1)は、入力端子Ti11,Ti12及び出力端子To11,To12を備え、単位コンバータ10(#2)は、入力端子Ti21,Ti22及び出力端子To21,To22を備える。単位コンバータ10(#3)は、入力端子Ti31,Ti32及び出力端子To31,To32を備え、単位コンバータ10(#4)は、入力端子Ti41,Ti42及び出力端子To41,To42を備える。そして、単位コンバータ10(#1)〜(#4)は、入力端子が互いに直列に接続されているとともに、出力端子が互いに並列に接続されている。詳しくは、入力端子Ti12と入力端子Ti21、入力端子Ti22と入力端子Ti31、入力端子Ti32と入力端子Ti41が接続されている。また、出力端子To11,To21,To31及びTo41が接続されており、出力端子To12,To22,To32及びTo42が接続されている。さらに、各単位コンバータ10の出力端子間には、出力電圧検出部30が接続されている。
【0012】
出力電圧検出部30(電圧検出手段)は、各単位コンバータ10の出力電圧Voutを検出する電圧センサである。各単位コンバータ10の出力端子は互いに並列に接続されているため、各単位コンバータ10の出力電圧は等しい値となる。
【0013】
単位コンバータ10(#1)〜(#4)の各入力端子間には、それぞれ入力コンデンサC1〜C4が接続される。そして、最上位の入力端子である入力端子Ti11、及び最下位の入力端子である入力端子Ti42が、電力変換装置100の入力端子となり、入力端子Ti11と入力端子Ti42との間に、直流電源20が接続される。
【0014】
よって、4個の単位コンバータ10の入力端子を直列に多段接続することにより、電力変換装置100に入力された直流電源20の電圧は分圧され、分圧電圧が各単位コンバータに入力される。そのため、各単位コンバータ10は、電力変換装置100を1個のコンバータで構成した場合のコンバータと比較して、低耐圧の素子を利用することができる。低耐圧の素子はオン抵抗が小さく高速駆動できるため、単位コンバータ10を高効率化することができる。
【0015】
そして、4個の単位コンバータ10の出力端子を並列に接続することにより、各単位コンバータ10の出力電流の合成出力が、電力変換装置100から出力される。すなわち、各単位コンバータ10を高効率化したまま、電力変換装置100の出力電流を増加させることができる。したがって、電力変換装置100は、各単位コンバータ10を高効率化しつつ、入力電圧の大電圧化及び出力電流の大電流化を実現することができる。
【0016】
ただし、各単位コンバータ10の入力電圧が不均衡であると、各単位コンバータ10の負荷分担に差が生じる。その結果、負荷が比較的大きい単位コンバータ10に含まれる素子には、耐圧よりも大きな電圧がかかり、素子が故障するおそれがある。これに対して、各単位コンバータ10の入力電圧の不均衡を考慮して、各単位コンバータ10に含まれる素子の耐圧を大きくすると、コストが増加するとともに効率が低下する。
【0017】
そのため、各単位コンバータ10の入力電圧が電圧平衡を取るようにすることが望まれる。しかしながら、各単位コンバータ10を、入力電圧が自動的に電圧平衡を取るような構成とすると、電力変換装置が大型化するおそれがある。また、各単位コンバータ10の入力電圧を監視し、入力電圧が電圧平衡を取るように、各単位コンバータ10の動作を調整することも考えられる。しかしながら、各単位コンバータ10の入力電圧を電圧センサで検出する場合、各電圧センサの電位が異なるため、各電圧センサを絶縁回路とする必要があり、電力変換装置が大型化するおそれがある。
【0018】
そこで、本実施形態に係る電力変換装置100は、単位コンバータ10としてフライバックコンバータを採用して、臨界電流モードで動作させることにした。フライバックコンバータを臨界電流モードで動作させることにより、出力状態を検出して、入力電圧を算出することができる。以下、単位コンバータ10の構成及び動作について説明する。
【0019】
各単位コンバータ10は、NMOSトランジスタであるスイッチング素子SW、トランスTr、ダイオードD、平滑コンデンサCо及び時間検出部11を備えた、同じ構成のフライバックコンバータである。トランスTrの1次側コイルの第1端は、各単位コンバータ10の入力端子の一方に接続されており、1次側コイルの第2端は、スイッチング素子SWのドレイン端子に接続されている。そして、スイッチング素子SWのソース端子は、各単位コンバータ10の入力端子の他方に接続されている。また、トランスTrの2次側コイルの第1端は、ダイオードDのアノードに接続されており、2次側コイルの第2端は、出力端子に接続されている。ダイオードDのカソードは時間検出部11を介して出力端子の一方に接続されている。また、平滑コンデンサCоが、ダイオードDのカソードと出力端子の他方との間に接続されている。
【0020】
単位コンバータ10は、スイッチング素子SWをオン状態にすると、トランスTrの1次側コイルに1次電流が流れ、トランスTrにエネルギが蓄積される。このとき、ダイオードDの向きが逆なので、トランスTrの2次側コイルには電流が流れない。そして、スイッチング素子SWをオフ状態にすると、トランスTrに蓄積されたエネルギが放出されて、ダイオードDを通じて1次電流が出力される。
【0021】
時間検出部11(時間検出手段)は、出力電圧Voutのパルス幅である出力時間Toutを検出する。出力電圧Voutは、スイッチング素子SWのオン操作ごとに、パルス(矩形波)として出力される。
図2に示すように、出力電圧Voutのパルス幅は、スイッチング素子SWのオン操作ごとに2次電流が流れる時間と等しい。そこで、時間検出部11は、例えば電流センサから構成されており、2次電流及び2次電流が流れる時間を検出する。なお、各単位コンバータ10の出力側に電流センサを設けた場合、各電流センサは同電位であるため、各単位コンバータ10の入力側に電圧センサを設ける場合よりも、電力変換装置100を簡易且つ小型な構成にすることができる。
【0022】
制御回路50は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、4個の単位コンバータ10を制御する。詳しくは、制御回路50は、各単位コンバータ10のスイッチング素子SWのオンオフを制御して、各単位コンバータ10を臨界電流モードで作動させる。
【0023】
図2に、各単位コンバータ10を代表して、単位コンバータ10(#1)の動作態様を示す。スイッチング素子SWがオフ状態からオン状態に切り替えると、1次電流が流れてトランスTrにエネルギが蓄積される。そして、スイッチング素子SWをオフ状態からオン状態に切り替えると、1次電流の流れが止まるとともに、トランスTrに蓄積されたエネルギが放出されて、2次電流及び出力電圧Voutが出力される。そして、2次電流が零になった時点で、スイッチング素子SWが再びオフ状態からオン状態に切り替えられる。
【0024】
したがって、単位コンバータ10を臨界電流モードで作動させることにより、トランスTrに溜められたエネルギが2次側から出力され、トランスTrに溜められたエネルギが零に戻された後、再度トランスTrにエネルギが溜められることが繰り返される。よって、単位コンバータ10の入力エネルギと出力エネルギとは1対1で対応するため、出力側の検出値に基づいて、入力電圧Vinを算出することができる。
【0025】
具体的には、トランスTrの1次側コイルの巻数をN1、2次側コイルの巻数をN2、巻数比をN=N2/N1、1次側コイルのインダクタンスをLin、2次側コイルのインダクタンスをLоutとする。また、1次電流の実効値をIp1、2次電流の実効値をIp2、単位コンバータ10の入力電圧をVinとする。1次側コイルのインダクタンスLin、及び2次側コイルのインダクタンスLоutは、予め測定されている値である。また、スイッチング素子SWのオン時間Tiは、直流電源20の電圧に応じて、設定される値である。
【0026】
この場合、Ip1=(Tin/Lin)×Vin=N×Ip2、Ip2=(Tout/Lоut)×Voutとなる。よって、入力電圧Vinは、Vin=N×(Tout/Lоut)×(Lin/Tin)×Voutとなる。
【0027】
したがって、制御回路50は、スイッチング素子SWのオン時間Tin、出力電圧検出部30により検出された出力電圧Vout、及び時間検出部11により検出された出力時間Toutに基づいて、入力電圧Vinを算出する。さらに、制御回路50は、時間検出部11により検出された2次電流の実効値Ip2及び巻線比Nから、入力電流である1次電流の実効値Ip1を算出する。すなわち、制御回路50は、入力電圧Vin及び入力電流を含む動作状態を算出し、入力電圧Vin、出力電圧Vout、入力電流及び出力電流を監視する。
【0028】
そして、制御回路50は、各単位コンバータ10の入力電圧Vinをそれぞれ算出し、各単位コンバータ10の入力電圧Vinにばらつきがある場合には、ばらつきを解消するように、各単位コンバータ10のスイッチング素子SWのオン時間Tinを調整する。すなわち、各単位コンバータ10の回路特性にばらつきがある場合でも、ばらつきに応じてオン時間Tinを個別に設定することにより、入力電圧Vinをバランスさせることができる。
【0029】
このように、各単位コンバータ10の入力電圧Vinをバランスさせることにより、各単位コンバータ10に含まれるスイッチング素子SW等の素子の耐圧を、電力変換装置100の入力電圧である直流電源20の電圧、及び単位コンバータ10の個数に応じた耐圧にできる。すなわち、各単位コンバータ10に含まれる素子の耐圧を、入力電圧Vinのばらつきを考慮した耐圧にしなくてもよい。
【0030】
ここで、各単位コンバータ10を臨界電流モードで制御する場合、連続モードで作動させる場合よりも、各単位コンバータ10の2次電流である出力電流のリップルが大きくなる。電力変換装置100の出力電流は、各単位コンバータ10の出力電流を合成したものとなるため、各単位コンバータ10の出力電流のリップルが重畳すると、電力変換装置100の出力電流のリップルは増大するおそれがある。
【0031】
よって、制御回路50は、
図3に示すように、各単位コンバータ10のそれぞれを、均等な位相差をつけて順次作動させる。例えば、スイッチング素子SWを、#1から#4まで、順番にオフからオンに切替え、#4をオンにした後は、#1に戻って同じことを繰り返す。このとき、一つ前のスイッチング素子SWをオフからオンに切り替えたタイミングから、今回のスイッチング素子SWをオフからオンに切り替えるタイミングまでの期間を、常に同じ期間にする。
【0032】
このように、各単位コンバータ10のそれぞれを均等な位相差をつけて順次作動させることにより、
図3(n)に示すように、各単位コンバータ10の出力電流は、互いに流れ始めるタイミングがずれる。その結果、
図3(o)に示すように、電力変換装置100の出力電流は、各単位コンバータ10の出力電流のリップルが均等に分配されたものとなり、電力変換装置100の出力電流のリップルが抑制される。なお、
図3において、スイッチング素子SW(#1)〜(#4)のオン時間Tin(#1)〜(#4)は、単位コンバータ10(#1)〜(#4)の特性のばらつきに応じて、異なる値に設定されている。
【0033】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0034】
・簡易な構成のフライバックコンバータである単位コンバータ10が多段接続され、単位コンバータ10のそれぞれは、臨界電流モードで作動される。そのため、電力変換装置100の小型且つ高効率化を実現することができる。
【0035】
・フライバックコンバータである単位コンバータ10と臨界電流モードとを組み合わせることにより、単位コンバータ10の入力エネルギと出力エネルギとが1対1で対応する。そのため、スイッチング素子SWのオン時間Tin、出力電圧Vout、及び出力時間Toutから、単位コンバータ10の入力電圧Vinを算出することができる。これにより、複数の単位コンバータ10の入力電圧Vinにばらつきがあれば、バランスを取るように調整することができる。また、入力側の電圧センサが不要であるため、電力変換装置100を小型化することができる。
【0036】
・単位コンバータ10の入力電圧Vinに加えて、入力電流の実効値Ip2も算出することができる。よって、単位コンバータ10の入力側に、電圧センサ及び電流センサを設けることなく、単位コンバータ10の動作状態を取得し、監視することができる。
【0037】
・複数の単位コンバータ10のそれぞれを、均等な位相差をつけて順次作動させることにより、電力変換装置100の出力電流は、各単位コンバータ10の出力電流のリップルが均等に分配されたものとなる。そのため、電力変換装置100の出力電流のリップルを抑制することができる。
【0038】
・電力変換装置100の入力される直流電源20の電圧は、複数の単位コンバータ10で分割して分担される。また、各単位コンバータ10の入力電圧Vinを算出して、入力電圧Vinのバランスを取ることができる。よって、単位コンバータ10に含まれるスイッチング素子SW等の素子は、入力電圧Vinのばらつきを考慮せず、直流電源20の電圧と単位コンバータ10の個数に応じた耐圧の素子を採用できる。
【0039】
(他の実施形態)
・電力変換装置100に含まれる単位コンバータ10の個数は4個に限らない。電力変換装置100に要求される入力電圧、及び出力電流に応じた個数を多段接続して用いればよい。例えば、入力電圧300V、出力電圧12V、出力電流75Aの電力変換装置100が要求される場合、
図4に示すように、入力電圧100V、出力電圧12V、出力電流25Aの規格の単位コンバータ10を3段接続して使用すればよい。また、入力電圧500V、出力電圧12V、出力電流125Aの電力変換装置100が要求される場合、
図5に示すように、上記単位コンバータ10を5段接続して使用すればよい。
【0040】
・制御回路50は、電力変換装置100に含まれる全ての単位コンバータ10を作動させなくてもよい。制御回路50は、電力変換装置100の入力電圧に応じて、作動させる単位コンバータ10の個数を変更させるようにしてもよい。例えば、
図5に示すように、5段の単位コンバータ10が接続されている場合に、電力変換装置100の入力電圧に応じて、作動させる単位コンバータ10の個数を3個や4個等に変更してもよい。具体的には、作動させない単位コンバータ10のスイッチング素子SWをオン状態にしたままにして、作動させない単位コンバータ10の入力端子間をショートさせる。
【0041】
あるいは、
図5に破線で示すように、多段接続されている単位コンバータ10のうちの1つの単位コンバータを除いて、入力端子間にスイッチング素子SWa〜SWdを接続する。そして、スイッチング素子SWa〜SWdのうち、作動させない単位コンバータ10の入力端子間に接続されているものをオン状態にして、作動させない単位コンバータ10の入力端子間をショートさせる。このように、電力変換装置100の入力電圧に応じて、作動させる単位コンバータ10の個数を変更させることにより、複数の電力変換装置100の入力電圧、すなわち複数の異なる電圧の直流電源20に対応することができる。
【0042】
・時間検出部11は、電流センサに限らず、各単位コンバータ10において、出力電流が流れる時間を検出できるものであればよく、出力電流は検出できなくてもよい。出力電流が検出できない場合でも、出力電圧Vout及び出力時間Toutから算出することができる。
【0043】
・スイッチング素子SWは、NMOSトランジスタに限らず、他のトランジスタでもよい。