【実施例1】
【0016】
始めに、実施例1のシート1の構成について、
図1〜
図10を用いて説明する。本実施例のシート1は、
図1に示すように、自動車の後部側座席(右席)として構成されている。上記シート1は、同列の図示しない左席との間に横幅の狭い中央席の領域1Bを一体的に備える、いわゆるベンチシートとして構成されている。上記シート1は、着座者の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えた構成となっている。
【0017】
上述したシートバック2には、その中央席の領域1Bに、同領域に人が座っていない時に前倒しして肘置きとして使用できる状態に切り換えることのできるアームレスト5が備え付けられている。上記アームレスト5は、その左右両側部が、シートバック2の中央席の領域1Bの左右両側部に対して、それぞれシート幅方向を向く支軸5Aによって回転可能に軸連結された状態とされている。これにより、上記アームレスト5は、上記支軸5Aを中心に、シートバック2の中央席の領域1Bに対して起倒回転による展開格納が行える状態に連結された状態とされている。
【0018】
具体的には、上記アームレスト5は、シートバック2の前側に略水平な角度まで倒し込まれた展開位置と、シートバック2の中央席の領域1Bの前面部に形成された凹部2A内に嵌め込まれる角度まで起こし上げられた格納位置と、の間で、起倒回転されるようになっている。上記アームレスト5の展開格納の各操作は、使用者がアームレスト5を手で掴んで前に引き出したり後ろに押し込んだりすることによって行われるようになっている。上記アームレスト5の展開位置と格納位置との間の起倒回転は、シートバック2が通常、後傾気味の背凭れ角度で使用される状態において、90度以上の角度範囲に亘って行われるようになっている。
【0019】
上記アームレスト5は、
図2に示すように、シートバック2の前側に展開されることにより、シートクッション3の後端部との間に設けられた後述する展開位置保持機構10によって、略水平な角度位置まで倒し込まれたところでその動きが止められるようになっている。上記展開位置保持機構10は、
図2〜
図3に示すように、シートバック2が背凭れとして使用される後傾した角度領域内で背凭れ角度が前後に調整されても、アームレスト5を常に、シートバック2から前側に略水平な角度まで倒し込んだところで展開方向の移動を規制した状態に保持するようになっている。すなわち、展開位置保持機構10は、シートバック2の背凭れ角度が調整される動きに合わせて、常に、アームレスト5の展開位置を略水平な角度位置に保持できるように動作する構成となっている。
【0020】
以下、上述した展開位置保持機構10の具体的な構成について、シート1の基本構成と併せて詳しく説明していく。先ず、シート1の基本構成について説明する。
図1に示すように、上述したシート1は、上述したシートバック2の下端部が、フロアF上に設けられたシートクッション3の後端部に対して、リクライナ4Aを介して背凭れ角度の調整が行える状態に連結された構成となっている。ここで、フロアFが本発明の「乗物本体」に相当する。
【0021】
具体的には、上述したシートバック2は、その骨格を成すバックフレーム2Bが、シートバック2の右席の領域1Aの骨格を形成する本体フレーム2B1と、シートバック2の中央席の領域1Bの骨格を形成するサブフレーム2B2と、に二分割されて構成されている。上記本体フレーム2B1とサブフレーム2B2とは、それぞれ、逆U字状に組まれた構成となっており、常時は、互いの隣接する側の肩口部間に設けられたロック装置2Cによって、互いが一体的に連結された状態とされている。
【0022】
上記バックフレーム2Bは、上述した本体フレーム2B1の左右両側のサイドフレームの下端部が、それぞれ、回転止め可能な回転軸装置として機能するリクライナ4Aを介して、シートクッション3の骨格を成すクッションフレーム3Bの後端部にヒンジ連結された状態とされている。また、バックフレーム2Bは、上述したサブフレーム2B2の左右両側のサイドフレームの下端部が、それぞれ、シート幅方向を向く軸ピン4Bを介してクッションフレーム3Bの後端部に回転可能にヒンジ連結された状態とされている。上記リクライナ4Aと軸ピン4Bとは、互いの回転中心となる軸線が同軸線上の位置に並ぶように配置された状態とされている。上記リクライナ4Aと軸ピン4Bとによるヒンジ連結により、本体フレーム2B1とサブフレーム2B2とは、それぞれ、互いに同軸まわりに一体的となって背凭れ角度を前後方向に変化させる形に回転することができるようになっている。
【0023】
上述した本体フレーム2B1とサブフレーム2B2とは、互いにロック装置2Cによって一体的に連結されていることにより、上述したリクライナ4Aがロックされて本体フレーム2B1の背凭れ角度が固定されることにより、サブフレーム2B2の背凭れ角度も併せて固定されるようになっている。しかし、上記サブフレーム2B2は、上述したロック装置2Cを解除して本体フレーム2B1との一体的な連結状態から切り離されることにより、本体フレーム2B1の背凭れ角度が固定された状態であっても、本体フレーム2B1を残して単独で軸ピン4Bを中心に
図4に示す前倒し位置まで前倒れすることができるようになっている。
【0024】
図1に示すように、上記構成のサブフレーム2B2に対し、上述したアームレスト5が、支軸5Aによって左右両側部がヒンジ連結されて設けられた状態とされている。具体的には、上記アームレスト5は、サブフレーム2B2の左右両側のサイドフレームの高さ方向の中間部から前下方向に略L字状に折れ曲がって延びる左右一対の支持ブラケット2Dの間に挟まれる形にセットされて、その左右両側の側部がそれぞれ支軸5Aによって各支持ブラケット2Dの先端部にヒンジ連結された状態とされている。
【0025】
上記連結により、アームレスト5は、支軸5Aを中心にサブフレーム2B2に対して起倒回転することができるようになっている。上記アームレスト5の後方側への起こし上げ回転は、アームレスト5がシートバック2の凹部2A内に嵌め込まれて係止される位置(格納位置)にて止められるようになっている。一方、上記アームレスト5の前方側への倒れ込み回転は、アームレスト5の左右両側部とクッションフレーム3Bの後端部に結合された延長ブラケット3Cとの間に設けられた左右一対の展開位置保持機構10のつかえ動作によって、アームレスト5が略水平な角度まで倒し込まれた位置(展開位置)にて止められるようになっている。
【0026】
次に、展開位置保持機構10の具体的な構成について説明する。なお、展開位置保持機構10は、左右一対で設けられた対称な構成となっているため、以下では、これらを代表して、
図1の紙面向かって右側に示された車両内側の構成について説明することとする。展開位置保持機構10は、
図2に示すように、延長ブラケット3Cとアームレスト5との間にアームレスト5の起倒回転に伴って屈伸運動するようにピン連結された屈伸リンク機構10Aによって構成されている。
【0027】
上記屈伸リンク機構10Aは、第1のピン11Aにより延長ブラケット3Cに回転可能にピン連結された第1のリンク11と、第2のピン12Aによりアームレスト5に回転可能にピン連結された第2のリンク12と、上記第1のリンク11と第2のリンク12とを互いに回転可能にピン連結する第3のピン13と、を有して構成されている。ここで、第1のリンク11及び第2のリンク12がそれぞれ本発明の「構成リンク」に相当し、第1のピン11Aが本発明の「第1の連結点」に相当し、第2のピン12Aが本発明の「第2の連結点」に相当する。
【0028】
詳しくは、上述した第1のリンク11は、高さ方向に長尺状に延びる1本の板状部材によって形成されており、その図示下端側となる一端がシート幅方向を向く第1のピン11Aにより延長ブラケット3Cの先端部に回転可能にピン連結された状態とされている。上記第1のピン11Aは、シートバック2の背凭れ角度の傾動中心である軸ピン4Bに対して後ろ下側に離れた位置に配置されている。
【0029】
第2のリンク12は、上述した第1のリンク11よりも短尺な前後方向に延びる1本の板状部材によって形成されており、その図示前端側となる一端がシート幅方向を向く第2のピン12Aによりアームレスト5の側部に回転可能にピン連結された状態とされている。上記第2のピン12Aは、アームレスト5の回転中心である支軸5Aから半径方向の外側に離間した位置に設けられている。詳しくは、上記第2のピン12Aは、
図2及び
図4に示すように、アームレスト5が上述した展開位置と格納位置との間の90度以上の角度範囲を起倒回転することに伴う首振り運動により、支軸5Aと高さ方向に並ぶ略真後ろの位置(
図2参照)と支軸5Aの前下側に降りた位置(
図4参照)との間の角度領域を移動する位置に配置されている。
【0030】
第3のピン13は、
図2に示すように、シート幅方向を向く軸として構成されており、上述した第1のリンク11の図示上端側となる他端と第2のリンク12の図示後端側となる他端とを互いに回転可能となる状態に連結している。
【0031】
ここで、上述したシートバック2の回転中心である軸ピン4Bは、シートバック2の下端部における前後方向の略中央位置に配置されている。また、アームレスト5の回転中心である支軸5Aは、上述したシートバック2の回転中心である軸ピン4Bよりも上側の位置に配置されている。上記支軸5Aは、
図4に示すように、アームレスト5に対しては、アームレスト5の格納状態における下端部で、かつ、前後方向の略中央位置に配置された状態とされている。
【0032】
上記構成の屈伸リンク機構10Aは、
図2及び
図4に示すように、アームレスト5が支軸5Aを中心に
図2に示す展開位置と
図4に示す格納位置との間で起倒回転する動きに伴って、上述した第1のリンク11と第2のリンク12との間の開き角度θを変化させる態様で屈伸運動するようになっている。詳しくは、上記屈伸リンク機構10Aは、上述したアームレスト5の展開位置(
図2参照)と格納位置(
図4参照)との間の起倒回転に伴って、第2のリンク12とアームレスト5との連結点である第2のピン12Aが、アームレスト5の回転中心である支軸5Aと第1のリンク11の回転中心である第1のピン11Aとを結ぶ線分Cを跨いで回転移動するようになっている。
【0033】
上記屈伸リンク機構10Aは、このような領域を回転するようになっていることにより、上記アームレスト5の起倒回転によって、第2のピン12Aが線分Cに向かって近づく回転の時には、第1のリンク11と第2のリンク12との間の開き角度θを狭めていくように屈曲運動するようになっている。また、屈伸リンク機構10Aは、上記アームレスト5の起倒回転によって第2のピン12Aが線分Cから遠ざかっていく回転の時には、第1のリンク11と第2のリンク12との間の開き角度θを広げていくように伸張運動するようになっている。
【0034】
そして、上記屈伸リンク機構10Aは、
図2に示すように、アームレスト5が展開位置まで倒される回転により、上述した第2のピン12Aが線分Cを上方側に大きく越えて、第1のリンク11と第2のリンク12との間の開き角度θを大きく広げた状態となり、第2のリンク12に形成されたストッパ片12Bが第1のリンク11に形成された角部11Bに当たって互いの開き回転が規制された状態となる。これにより、上記第1のリンク11と第2のリンク12とがそれ以上開き回転することのできない状態となり、アームレスト5が展開位置に倒し込まれた状態に保持される。
【0035】
上述した第2のリンク12に形成されたストッパ片12Bは、第2のリンク12の第3のピン13に近い他端側の側部から回転方向に延び出して軸方向に垂直に折り曲げられた形となって形成されている。また、第1のリンク11に形成された角部11Bは、第1のリンク11の第3のピン13に近い他端側の先端部からリンク長方向に延び出した形となって形成されている。上述した角部11Bのストッパ片12Bと当たる当接面11B1は、第1のリンク11のリンク長方向に立ち上がる立ち上がり面となって形成されている。詳しくは、上記角部11Bの当接面11B1は、第2のリンク12に形成されたストッパ片12Bの回転方向に面を向ける側面と面接触するように立ち上がった形状とされている。
【0036】
上記第1のリンク11と第2のリンク12とは、上述した角部11Bにストッパ片12Bが当たることで互いの開き回転が規制される構成として、互いのストッパ構造を構成する角部11Bとストッパ片12Bとが常に同じ面を面接触させて回転規制を行う構成となっている。これにより、第1のリンク11と第2のリンク12とが常に決まった開き角度で互いに精度良くかつ高強度に回転規制される構成とされている。
【0037】
上述した屈伸リンク機構10Aは、シートバック2の背凭れ角度が任意の角度位置に固定された状態では、展開操作されたアームレスト5を常に一定の展開位置に規制して保持することができるようになっている。しかし、上記屈伸リンク機構10Aは、
図3に示すように、シートバック2の背凭れ角度が後側に倒される調整により、アームレスト5の回転中心である支軸5Aがシートバック2と共にシートバック2の回転中心である軸ピン4Bのまわりに後傾するように押し動かされてしまい、アームレスト5の展開位置での保持状態が崩されてしまう。
【0038】
しかしながら、上記屈伸リンク機構10Aは、上記アームレスト5の支軸5Aがシートバック2の回転中心である軸ピン4Bのまわりに後傾する動きによって、アームレスト5との連結点である第2のピン12Aが後方側に押し動かされて開き角度θを狭めるように動かされるようになっている。これにより、上記屈伸リンク機構10Aは、上記のようにアームレスト5との連結点である第2のピン12Aが後方側に押し動かされて開き角度θが狭められても、上記角部11Bとストッパ片12Bとが当接する開き角度まで、開き角度θが狭められた分だけ開き回転することができる状態となる。
【0039】
したがって、上記シートバック2が後側に倒された位置で、屈伸リンク機構10Aを開き角度θが規制される位置まで広げるようにアームレスト5を展開方向に倒し込むことにより、アームレスト5をシートバック2が後側に倒される前の展開状態と略同じ略水平な角度位置まで倒すことができる。その理由は、上記屈伸リンク機構10Aの開き角度θが規制された状態において、屈伸リンク機構10Aの延長ブラケット3Cとの連結点である第1のピン11Aと、アームレスト5との連結点である第2のピン12Aと、シートバック2の回転中心である軸ピン4Bと、アームレスト5の回転中心である支軸5Aと、を仮想的に結んで形成される4節リンクが、平行リンクに近いリンク機構を構成するようになっているからである。
【0040】
詳しくは、上記屈伸リンク機構10Aの延長ブラケット3Cとの連結点である第1のピン11Aは、アームレスト5の展開により屈伸リンク機構10Aの開き角度θが規制された状態において、シートバック2の回転中心である軸ピン4Bに対して後側かつ僅かに低い位置に設定されている。また、屈伸リンク機構10Aのアームレスト5との連結点である第2のピン12Aは、上記アームレスト5の展開により屈伸リンク機構10Aの開き角度θが規制された状態において、アームレスト5の回転中心である支軸5Aと高さ方向に並ぶ真後ろの位置に設定されている。上記第1のピン11Aと軸ピン4Bとを結ぶ線分の長さは、第2のピン12Aと支軸5Aとを結ぶ線分の長さと略同じとなっており、第1のピン11Aと第2のピン12Aとを結ぶ線分の長さは、軸ピン4Bと支軸5Aとを結ぶ線分の長さよりも僅かに長い関係となっている。
【0041】
上記4節リンクがこのような平行リンクに近いリンク機構として構成されていることにより、シートバック2の背凭れ角度の調整によってアームレスト5の回転中心である支軸5Aや第2のピン12Aの位置が動かされても、支軸5Aと第2のピン12Aとを結ぶ線分のシートクッション3に対する傾きは常に略一定に保たれる。したがって、シートバック2の背凭れ角度がどの位置に調整されても、アームレスト5の展開位置を、常に略一定の略水平な角度位置に保持することができる。
【0042】
上記屈伸リンク機構10Aは、アームレスト5が
図4に示すように格納された状態では、第1のリンク11と第2のリンク12との間の開き角度θが規制角度よりも狭められた状態とされるようになっている。上記屈伸リンク機構10Aは、上記アームレスト5が格納された状態から、シートバック2が
図5に示すようにシートクッション3の上面部に畳み込まれる位置(前倒し位置)まで前倒しされることにより、第1のリンク11と第2のリンク12との間の開き角度θを広げていくように回転する。しかし、上記屈伸リンク機構10Aは、シートバック2が上記前倒し位置まで倒し込まれても、開き角度θが規制される状態までは広げられることなく、シートバック2の前倒し動作をつかえさせないようになっている。
【0043】
上記のようにシートバック2の背凭れ角度の調整範囲内では屈伸リンク機構10Aを開き角度θが規制される状態まで広げられるようにする一方で、シートバック2の前倒し時には屈伸リンク機構10Aを開き角度θが規制される状態までは広げられないようにするために、屈伸リンク機構10Aの第1のピン11Aの位置は、次のような位置に設定されている。先ず、
図6に示すように、シートバック2が任意の背凭れ角度位置にある状態で、アームレスト5が略水平な角度位置に展開された状態(状態S1)を考える。この状態S1において、アームレスト5上に支軸5Aと第2のピン12Aの位置を任意に定める。
【0044】
次に、この状態S1から、
図7に示すように、シートバック2をアームレスト5と一体に軸ピン4Bのまわりに後傾させる。しかし、このように後傾させると、アームレスト5がシートバック2の後傾により上向きに傾いた姿勢となってしまう。したがって、次に、
図8に示すように、アームレスト5を上記の状態から支軸5Aを中心に略水平な角度まで倒し込んだ状態に補正する(状態S2)。
【0045】
上記のようにシートバック2を後傾させた際に、第2のピン12Aを状態S1(
図6参照)から状態S2(
図8参照)のように移動させられるように、屈伸リンク機構10Aの第1のピン11A(
図2参照)の位置は設定されていなければならない。したがって、次に、
図9に示すように、上記状態S1における第2のピン12Aの位置と状態S2における第2のピン12Aの位置との垂直二等分線L1をとる。この垂直二等分線L1上の位置に、上述した屈伸リンク機構10Aの第1のピン11Aの位置が設定されることとなる。
【0046】
次に、
図10に示すように、上記状態S1における第2のピン12Aの位置と、上記状態S1からアームレスト5を格納状態にして(状態S3)シートバック2を前倒し位置まで倒し込んだ状態(状態S4)の第2のピン12Aの位置と、の垂直二等分線L2をとる。この垂直二等分線L2より下側の領域に屈伸リンク機構10Aの第1のピン11Aの位置を設定する。こうすることで、シートバック2が前倒し位置まで倒し込まれても、屈伸リンク機構10Aが開き角度θを規制される状態まで広げられることなくつかえない形に追従回転することができる。
【0047】
ここで、
図1及び
図4に示すように、上述したアームレスト5は、その格納状態において前面側となる表面部の左右両側の各縁部に、アームレスト5の格納時にアームレスト5を支える各支持ブラケット2D等の内部構造を前方側から見栄え良く覆うように左右両側へ庇状に張り出す被覆延長部5Bが形成された構成となっている。しかし、これらのような被覆延長部5Bがアームレスト5に形成されていることにより、
図1〜
図2に示すようにアームレスト5が展開状態に倒し込まれることによって、各被覆延長部5Bが各支持ブラケット2Dの下側に入り込む形で移動し、上述した各屈伸リンク機構10Aの設置領域に向かって侵入してきてしまう。
【0048】
しかしながら、上記各屈伸リンク機構10Aは、上述したように第1のリンク11と第2のリンク12との成す形が後方側に「>」形状に折れ曲がった退避形状となっているため、アームレスト5が展開されて各被覆延長部5Bが前方側から侵入してきても、各被覆延長部5Bと干渉することなく退避した形をとって、各被覆延長部5Bを受け入れることができるようになっている。
【0049】
以上をまとめると、本実施例のシート1は次のような構成となっている。すなわち、フロアF(乗物本体)に対して背凭れ角度を変えられる状態に連結されたシートバック2と、シートバック2に対してシート幅方向を向く支軸5Aのまわりに起倒回転による展開格納が行える状態に連結されたアームレスト5と、アームレスト5の展開位置をシートバック2の背凭れ角度が変えられてもフロアFに対する角度変化が抑えられるように保持する展開位置保持機構10と、を有するシート1である。
【0050】
上記展開位置保持機構10は、フロアFとアームレスト5との間にアームレスト5の起倒回転に伴って屈伸運動するようにピン連結された屈伸リンク機構10Aを有する。アームレスト5の展開により屈伸リンク機構10Aを構成する第1のリンク11と第2のリンク12とが互いの開き角度θを広げる(一方向に変化させる)形で回転し互いに当接することで、アームレスト5の展開位置が規制され、シートバック2が後傾しても屈伸リンク機構10Aの第1のリンク11と第2のリンク12とが互いの開き角度θを狭める(他方向に変化させる)形に回転することでアームレスト5が屈伸リンク機構10Aの第1のリンク11と第2のリンク12とを互いに当接させる位置まで展開可能となって後傾前の展開角度に近づけられるようになっている。
【0051】
このような構成となっていることにより、展開位置保持機構10を、アームレスト5とフロアFとの間に開き角度θが一定角度で規制される屈伸リンク機構10Aを連結する簡単な構成によって得ることができる。それにも拘らず、展開位置保持機構10を、展開状態のアームレスト5にかけられる使用荷重を屈伸リンク機構10Aの第1のリンク11と第2のリンク12とを常に一定の当接箇所で互いに当接させて受け止めることのできる構造強度の高い構成とすることができる。
【0052】
上記屈伸リンク機構10Aは、アームレスト5の後側に屈曲する形となっている。このような構成となっていることにより、屈伸リンク機構10Aを、シートバック2の前面から後側に退避させた領域で屈伸運動させることのできるコンパクトかつ簡素な構成とすることができる。
【0053】
また、
図10に示すように、屈伸リンク機構10AのフロアFにピン連結された第1のピン11A(第1の連結点)が、屈伸リンク機構10Aのアームレスト5にピン連結された第2のピン12A(第2の連結点)の展開位置(状態S1における第2のピン12Aの位置)と格納位置(状態S3における第2のピン12Aの位置)との垂直二等分線L3より低い位置に設定されている。このような構成となっていることにより、アームレスト5を展開位置と格納位置との間で回転させても、屈伸リンク機構10Aを開き角度θが規制される状態まで広げることなくつかえさせない形に回転させることができる。
【0054】
また、上記シートバック2は、直立姿勢より前傾する前倒し位置まで倒される構成とされている。屈伸リンク機構10Aの第1のピン11Aが、シートバック2の前倒し位置における第2のピン12Aの格納位置(状態S4の位置)とシートバック2の前倒し前の背凭れ角度位置における第2のピン12Aの展開位置(状態S1の位置)との垂直二等分線L2より低い位置に設定されている。このような構成となっていることにより、アームレスト5の格納状態では、シートバック2が前倒し位置まで倒されても、屈伸リンク機構10Aを開き角度θが規制される状態まで広げることなくつかえさせない形に回転させることができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「乗物用シート」は、自動車の後部側座席以外のシートにも適用することができるほか、鉄道等の自動車以外の車両に適用されるシートであってもよく、また、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。
【0056】
また、アームレストは、シートバックに対して埋め込まれる形に設けられるのではなく、シートバックの側部に片持ち状に連結されて設けられる構成であってもよい。また、展開位置保持機構は、アームレストの片側の側部のみに設けられるものであってもよい。また、アームレストは、シートバックに対して埋め込まれる形で設けられる場合において、シートバックに対して片側の側部でのみ回転可能にヒンジ連結されて、両側の側部において展開位置保持機構により乗物本体と連結された構成とされたものであってもよい。
【0057】
また、展開位置保持機構を構成する屈伸リンク機構は、アームレストの展開に伴って開き角度を狭めていき、開き角度が狭められる方向に規制される構成となっていてもよい。その場合には、屈伸リンク機構は、シートバックの後傾により開き角度を広げていく方向に回転していく構成となる。また、屈伸リンク機構は、アームレストの展開位置を水平以外の角度に展開させた状態に保持するようになっていてもよい。
【0058】
また、屈伸リンク機構の構成リンク同士を互いに当接させる構成は、上記実施例で示したような角部とストッパ片との当接構造に限らず、別部材を結合して当接させる構造を設定するなど、種々の当接構造を適用することができるものである。
【0059】
また、本発明の構成は、シートバックが直立姿勢より前傾する前倒し位置まで倒されないタイプの構成にも適用可能である。上記シートバックの前倒し位置は、シートクッションの上面に畳まれる位置に限らず、シートバックが前傾姿勢となる位置であってもよい。