特許第6432471号(P6432471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6432471高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置及び高圧燃料ポンプの電磁弁の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432471
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置及び高圧燃料ポンプの電磁弁の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/36 20060101AFI20181126BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   F02M59/36 B
   F02M59/36 A
   F02M59/44 P
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-176362(P2015-176362)
(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公開番号】特開2017-53247(P2017-53247A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一雅
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕行
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−246852(JP,A)
【文献】 特開2001−182593(JP,A)
【文献】 特開2008−075452(JP,A)
【文献】 特開2011−038524(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0041809(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0263648(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04,
F02D 41/00−41/40,43/00−45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧燃料を吐出する高圧燃料ポンプ(30)の吐出量を調整する電磁弁を制御する制御装置(50)であって、
前記電磁弁(30C)は、
前記高圧燃料ポンプの燃料の吸入通路(30F)と加圧室(30B)とを、前記加圧室の内側から遮断及び連通させる吸入弁(62)と、
前記吸入弁とは別の部材で形成されたアーマチャ(61)と、
前記吸入弁を開く方向へ前記アーマチャを付勢する第1ばね(63)と、
ソレノイド(66)と前記ソレノイドに駆動電流を供給する駆動回路(67)とを含み、前記駆動電流に応じて、前記アーマチャに対して前記第1ばねの付勢力と逆向きに作用する電磁力を発生する電磁ソレノイド装置と、
前記第1ばねの付勢力と逆向きに移動させられる前記アーマチャと当接して、前記アーマチャの移動を規制するストッパ(64)と、
前記第1ばねの付勢力よりも小さい付勢力で、前記吸入弁を閉じる方向へ前記吸入弁を付勢する第2ばね(65)と、
を含み、
内燃機関(40)のアイドル状態において、前記電磁弁の作動音を低減する作動音低減制御を実施する低減部を備え、
前記低減部は、
前記駆動電流を、前記吸入弁が全開の状態において、前記アーマチャを前記ストッパの方向へ移動させることのできる第1電流に制御する第1電流部と、
前記第1電流の供給後、前記駆動電流を、前記第1電流よりも小さい第2電流に制御する第2電流部と、
前記第2電流の供給後、所定時間経過してから、前記駆動電流を前記第2電流よりも小さい第3電流に制御する第3電流部と、
前記吸入弁の閉弁作動が不足しているか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記閉弁作動が不足していると判定された場合に、前記1電流、前記第2電流及び前記第3電流のうち前記2電流のみを上昇させる電流制御部と、を備える、高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置。
【請求項2】
前記高圧燃料ポンプは、前記燃料を蓄圧保持する蓄圧容器(20)と、前記蓄圧容器内の実燃圧を検出する燃圧センサ(21)と、を備える燃料供給システムに適用され、
前記判定部は、前記燃圧センサにより検出された前記蓄圧容器内の前記実燃圧が,前記蓄圧容器内の目標燃圧よりも所定値以上低下した場合に、前記閉弁作動が不安定であると判定する請求項1に記載の高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置。
【請求項3】
前記高圧燃料ポンプは、前記燃料を蓄圧保持する蓄圧容器と、前記蓄圧容器内の実燃圧を検出する燃圧センサと、を備える燃料供給システムに適用され、
前記燃圧センサにより検出された前記蓄圧容器内の前記実燃圧を、前記蓄圧容器内の目標燃圧にフィードバック制御するフィードバック部を備え、
前記判定部は、前記低減部による作動音低減制御の実施後における前記フィードバック制御の積分項が、前記低減部による作動音低減制御の実施前における前記積分項よりも所定値以上の場合に、前記閉弁作動が不足していると判定する請求項1に記載の高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置。
【請求項4】
前記高圧燃料ポンプの使用環境と前記第2電流の補正値とが対応づけられた補正マップと、
前記低減部による前記作動音低減制御が実施される場合に、前記補正マップから前記補正値を算出し、算出した前記補正値を前記第2電流に加算して前記第2電流を補正する補正部と、を備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置。
【請求項5】
前記電流制御部は、前記低減部による前記作動音低減制御の実施中において、前記判定部により前記閉弁作動が不足していると判定された場合に、前記第2電流に所定の加算値を加算する請求項4に記載の高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置。
【請求項6】
前記判定部により前記閉弁作動が不足していると判定された場合に、前記加算値に基づいて、前記補正マップの前記補正値を更新する更新部を備える請求項5に記載の高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置。
【請求項7】
前記電流制御部は、前記低減部による前記作動音低減制御の実施中において、前記判定部により前記閉弁作動が不足していないと判定された場合に、前記第2電流から所定の減算値を減算し、
前記更新部は、所定回数、前記判定部により前記閉弁作動が不足していないと判定された場合に、前記減算値に基づいて、前記補正マップの前記補正値を更新する請求項6に記載の高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置。
【請求項8】
前記加算値は、前記減算値よりも大きい値である請求項7に記載の高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置。
【請求項9】
前記使用環境は、前記駆動回路の電源電圧、前記ソレノイドの通電電流、及び前記燃料の温度の少なくも1つである請求項4〜8のいずれか1項に記載の高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置。
【請求項10】
高圧燃料を吐出する高圧燃料ポンプの吐出量を調整する電磁弁を制御する制御方法であって、
前記電磁弁は、
前記高圧燃料ポンプの燃料の吸入通路と加圧室とを、前記加圧室の内側から遮断及び連通させる吸入弁と、
前記吸入弁とは別の部材で形成されたアーマチャと、
前記吸入弁を開く方向へ前記アーマチャを付勢する第1ばねと、
ソレノイドと前記ソレノイドに駆動電流を供給する駆動回路とを含み、前記駆動電流に応じて、前記アーマチャに対して前記第1ばねの付勢力と逆向きに作用する電磁力を発生する電磁ソレノイド装置と、
前記第1ばねの付勢力と逆向きに移動させられる前記アーマチャと当接して、前記アーマチャの移動を規制するストッパと、
前記第1ばねの付勢力よりも小さい付勢力で、前記吸入弁を閉じる方向へ前記吸入弁を付勢する第2ばねと、
を含み、
前記駆動電流を、前記吸入弁が全開の状態において、前記アーマチャを前記ストッパの方向へ移動させることのできる第1電流に制御するステップと、
前記第1電流の供給後、前記駆動電流を、前記第1電流よりも小さい第2電流に制御するステップと、
前記第2電流の供給後、所定時間経過してから、前記駆動電流を前記第2電流よりも小さい第3電流に制御する第3電流部と、
前記吸入弁の閉弁作動が不足しているか否かを判定するステップと、
前記閉弁作動が不足していると判定された場合に、前記1電流、前記第2電流及び前記第3電流のうち前記2電流のみを上昇させるステップと、を備える、高圧燃料ポンプの電磁弁の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧燃料ポンプの吐出量を調整する電磁弁の制御装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧燃料ポンプの吐出量を調整する電磁弁の閉弁作動時に、電磁弁に含まれるアーマチャとストッパとの衝突に伴う作動音を低減するため、電磁弁への通電電流を低下させて、閉弁位置到達時におけるアーマチャの移動速度を低減させる手法が提案されている。例えば、特許文献1に記載の方法は、アーマチャを操作する電磁操作装置の磁気コイル(ソレノイド)に通電する電流のデューティ比を、加圧室への燃料の流入出量を調整する量制御弁(吸入弁)をようやく閉鎖することのできるデューティ比にして、作動音を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5254461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなアーマチャの移動速度を低減させる手法では、ソレノイドの駆動回路の劣化等による電流の低下や燃料の動粘度の上昇等の影響を受けて、電磁弁に含まれる吸入弁の閉弁作動が不足するおそれがある。これに対して、ソレノイドに通電する電流を全体的に引き上げた場合は、ストッパに対するアーマチャの衝突速度を速くしてしまい、作動音を低減できないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑み、高圧燃料ポンプの電磁弁の閉弁作動時における作動音の低減と吸入弁の閉弁作動不足の抑制とを、両立可能な高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高圧燃料を吐出する高圧燃料ポンプの吐出量を調整する電磁弁を制御する制御装置であって、前記電磁弁は、前記高圧燃料ポンプの燃料の吸入通路と加圧室とを、前記加圧室の内側から遮断及び連通させる吸入弁と、前記吸入弁とは別の部材で形成されたアーマチャと、前記吸入弁を開く方向へ前記アーマチャを付勢する第1ばねと、ソレノイドと前記ソレノイドに駆動電流を供給する駆動回路とを含み、前記駆動電流に応じて、前記アーマチャに対して前記第1ばねの付勢力と逆向きに作用する電磁力を発生する電磁ソレノイド装置と、前記第1ばねの付勢力と逆向きに移動させられる前記アーマチャと当接して、前記アーマチャの移動を規制するストッパと、前記第1ばねの付勢力よりも小さい付勢力で、前記吸入弁を閉じる方向へ前記吸入弁を付勢する第2ばねと、を含み、内燃機関のアイドル状態において、前記電磁弁の作動音を低減する作動音低減制御を実施する低減部を備え、前記低減部は、前記駆動電流を、前記吸入弁が全開の状態において、前記アーマチャを前記ストッパの方向へ移動させることのできる第1電流に制御する第1電流部と、前記第1電流の供給後、前記駆動電流を、前記第1電流よりも小さい第2電流に制御する第2電流部と、前記第2電流の供給後、所定時間経過してから、前記駆動電流を前記第2電流よりも小さい第3電流に制御する第3電流部と、前記吸入弁の閉弁作動が不足しているか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記閉弁作動が不足していると判定された場合に、前記1電流、前記第2電流及び前記第3電流のうち前記2電流のみを上昇させる電流制御部と、を備える。
【0007】
本発明によれば、吸入弁は、高圧燃料ポンプの燃料の吸入通路と加圧室とを、加圧室の内側から遮断及び連通させる。吸入弁が閉弁状態となり、加圧室内の燃料が加圧されることで、高圧燃料ポンプから燃料が吐出される。吸入弁とは別の部材で形成されたアーマチャには、吸入弁を開く方向へ第1ばねの付勢力が作用するとともに、第1ばねの付勢力と逆向きにソレノイドの電磁力が作用する。また、吸入弁には、吸入弁を閉じる方向へ、第1ばねの付勢力よりも小さい第2ばねの付勢力が作用する。
【0008】
ソレノイドの駆動電流を、吸入弁が全開の状態において、アーマチャをストッパの方向へ移動させることができる第1電流、もしくは、第2電流にすることにより、アーマチャ及び吸入弁は、第1ばねの付勢力に抗して、ストッパの方向へ移動を開始する。第2電流は、第1電流の供給後に供給され第1電流よりも小さい電流に制御される。アーマチャは、第1電流と第2電流により、ストッパ方向に移動しているため、それまでよりも小さい電磁力で、アーマチャをストッパの方向へ移動させて、ストッパの位置で維持することができる。よって、第2電流の供給後、所定時間経過すると、駆動電流は第2電流よりも小さい第3電流に制御される。これにより、アーマチャとストッパの位置へ移動する速度が低減され、アーマチャとストッパとの衝突に伴う作動音が低減される。また吸入弁は、アーマチャよりもリフト量が小さいためアーマチャよりも早く閉弁し、加圧室内の燃料の圧力が上昇する。
【0009】
ここで、第1電流、もくしは、第2電流が不足しており、第2電流から第3電流に切り替える際に吸入弁が閉弁状態に近い状態まで移動していない場合には、吸入弁が閉弁しないことがある。そこで、吸入弁の閉弁作動が不足しているか否か判定され、閉弁作動が不足していると判定された場合には、第1電流、第2電流及び第3電流の全てが引き上げられず、第2電流のみが引き上げられる。これにより、吸入弁の閉弁作動が不足している場合でも、吸入弁を閉弁状態とすることができるとともに、第2電流のみを引き上げるため、アーマチャの移動速度を抑制して、作動音を低減することができる。したがって、高圧燃料ポンプの電磁弁の閉弁作動時における作動音の低減と吸入弁の閉弁作動不足の抑制とを、両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】燃料供給システムの構成を示す模式図。
図2】高圧燃料ポンプの動作態様を示す図。
図3】高圧燃料ポンプの電磁弁の構成を示す模式図。
図4】作動音低減制御時における(a)駆動電流、(b)アーマチャリフト量、(c)吸入弁リフト量、(d)作動音の振動を示すタイムチャート。
図5】通常の通電制御時における(a)駆動電流、(b)アーマチャリフト量、(c)吸入弁リフト量、(d)作動音の振動を示すタイムチャート。
図6】第1実施形態に係る作動音低減制御を実施する処理手順を示す図。
図7】第2実施形態に係る作動音低減制御を実施する処理手順を示す図。
図8】燃料温度に対する第2電流の補正値のマップを示す図。
図9】燃料温度及び電源電圧に対する第2電流の補正値のマップを示す図。
図10】第3実施形態に係る作動音低減制御を実施する処理手順を示す図。
図11】燃料温度に対する第2電流の補正値のマップを示す図。
図12】第4実施形態に係る作動音低減制御を実施する処理手順を示す図。
図13】第4実施形態に係る作動音低減制御を実施する処理手順を示す図。
図14】第5実施形態に係る作動音低減制御を実施する処理手順を示す図。
図15】第5実施形態に係る作動音低減制御を実施する処理手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、高圧燃料ポンプの電磁弁の制御装置を具現化した各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各実施形態に係る高圧燃料ポンプを適用する燃料供給システムは、4気筒のディーゼルエンジンを対象にしたコモンレール式の燃料供給システムを想定している。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本実施形態に係る燃料供給システムの構成について説明する。本実施形態に係る燃料供給システムは、燃料タンク33、フィードポンプ32、高圧燃料ポンプ30、コモンレール20、エンジン40の各気筒に搭載された燃料噴射弁10、各種センサ、及びECU50を備える。各種センサは、高圧燃料ポンプ30に設置された燃温センサ31、電流センサ35、及び電圧センサ36と、コモンレール20に設置された燃圧センサ21と、車速センサ等の各種の車両センサ類41である。
【0013】
フィードポンプ32は、燃料タンク33から燃料を吸入して高圧燃料ポンプ30に供給する。高圧燃料ポンプ30は、図2に示すように、電磁弁30C(詳細は後述する)、プランジャ30A、加圧室30B、逆止弁30D、偏心カム30E及び吸入通路30Fを備え、燃料を加圧室30B内で加圧してコモンレール20へ供給する。電磁弁30Cは、ECU50により制御されて作動する。プランジャ30Aは、エンジン40(内燃機関)のカムシャフト等により回転される偏心カム30Eに連動して、往復駆動される。逆止弁30Dは、加圧室30Bとコモンレール20とを連通又は遮断する弁である。また、燃温センサ31は、加圧室30B内の燃料の温度を検出する。
【0014】
図2に示すように、電磁弁30C(詳しくは、電磁弁30Cに含まれる吸入弁)を開いた状態で、プランジャ30Aが上死点(トップ)から下死点(ボトム)に向かって移動する際には、加圧室30Bの体積が膨張する。これに伴い、フィードポンプ32から送られてきた燃料が、吸入通路30Fを介して加圧室30Bに吸引される(吸入期間)。
【0015】
その後、プランジャ30Aが下死点から上死点に向かって移動する際に、電磁弁30Cを開いたままに保持していると、加圧室30Bに吸引された燃料は、電磁弁30C側から吸入通路30Fを介して燃料タンク33に逆流する(プレストローク期間)。
【0016】
そして、電磁弁30Cを閉弁させるように制御すると、電磁弁30Cの閉弁以降は、加圧室30B内の燃料の加圧が開始される。燃料の加圧に伴い、加圧室30B内の圧力がコモンレール20内の圧力を超えると、逆止弁30Dが開き、加圧室30B内の燃料が逆止弁30D側からコモンレール20へ供給される(燃料吐出期間)。
【0017】
したがって、電磁弁30Cの作動を制御することにより、高圧燃料ポンプ30からコモンレール20へ供給される燃料の量を制御することができる。すなわち、電磁弁30Cを早期に閉じればコモンレール20への燃料の吐出量を多くすることができ、逆に、電磁弁30Cを遅く閉じればコモンレール20への燃料の吐出量を少なくすることができる。
【0018】
コモンレール20は、高圧燃料ポンプ30から供給された燃料を蓄圧保持する。コモンレール20に設けられている減圧弁23は、開弁することによりコモンレール20内の燃料を、排出配管34を介して燃料タンク33に排出して、コモンレール20内の噴射圧力Pcを低下させる。また、コモンレール20には、コモンレール20内の噴射圧力Pc(実圧力)を検出する燃圧センサ21が設置されている。
【0019】
燃料噴射弁10は、互いにコモンレール20に並列に接続され、コモンレール20に蓄圧されている燃料を各気筒内に噴射供給する。燃料噴射弁10は、ノズルニードルに閉弁方向に圧力を加える制御室の燃料圧力を制御することにより、開弁期間を制御する公知の電磁駆動式又はピエゾ駆動式の弁である。燃料噴射弁10の開弁期間が長くなるほど、噴射される噴射量は多くなる。
【0020】
車両センサ類41は、アクセルの踏込量を検出するアクセルセンサ、車両の速度を検出する車速センサ、エンジン40のクランク軸のクランク角を検出するクランク角センサ等である。クランク角センサにより検出されたクランク角から、エンジン40の回転速度が算出される。
【0021】
次に、電磁弁30Cの構成について、図3を参照して説明する。電磁弁30Cは、周知の電磁弁と同様の構成であり、アーマチャ61、吸入弁62、ストッパ64、第1ばね63、第2ばね65、ソレノイド66、ソレノイド66を駆動する駆動回路67及びストッパ68を含む。
【0022】
吸入弁62は、高圧燃料ポンプ30の加圧室30Bと吸入通路30Fとを、加圧室30Bの内側から遮断及び連通させる弁である。アーマチャ61は、吸入弁62とは別の部材で形成された磁気アーマチャであり、電磁力の作用により運動する。
【0023】
第1ばね63は、アーマチャ61に当接するように配置されており、吸入弁62を開く方向へアーマチャ61を付勢する。すなわち、第1ばね63は、加圧室30Bへ近づく方向へのアーマチャ61の移動を付勢する。第2ばね65は、第1ばねの付勢力よりも小さい付勢力で、吸入弁62を閉じる方向へ吸入弁62を付勢する。すなわち、第2ばね65は、吸入弁62を加圧室30Bから引き出す方向へ吸入弁62を付勢する。加圧室30Bから引き出す方向への吸入弁62の移動は、吸入弁62が加圧室30Bの内壁(シリンダのヘッドの内壁)に当接することにより規制される。
【0024】
ソレノイド66及び駆動回路67は、電磁ソレノイド装置に含まれる。駆動回路67は、ソレノイド66に駆動電流を供給する。ソレノイド66は、磁性体の固定コアにコイルが巻回されて形成されている。ソレノイド66の固定コアとアーマチャ61の先端面との間に、磁気空隙を形成する。ソレノイド66に供給される駆動電流に応じて、磁気空隙に磁気吸引力が発生し、アーマチャ61に対して第1ばね63の付勢力と逆向きに作用する。すなわち、ソレノイド66は、アーマチャ61に対して加圧室30Bから遠ざかる方向に作用する電磁力を発生する。駆動回路67は、電源Ed、ソレノイド66の駆動電流を検出する電流センサ35、電源Edの電源電圧を検出する電圧センサ36、コンデンサCd、及びスイッチSW1〜SW3等を含む。後述するECU50は、スイッチSW1〜SW3等を適宜操作して、ソレノイド66に供給する駆動電流の大きさを変化させる。
【0025】
ストッパ64は、第1ばね63の付勢力と逆向きに移動するアーマチャ61と当接して、アーマチャ61の移動を規制する。すなわち、ストッパ64は、加圧室30Bから遠ざかる方向へのアーマチャ61の移動を規制する。ストッパ68は、開く方向に移動する吸入弁62と当接して、吸入弁62の移動を規制する。
【0026】
ECU50は、CPU、ROM、RAM、I/O及び記憶装置等を備えるマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPUがROMに記憶されている各種プログラムを実行することにより、フィードバック部及び後述する各種機能を実現する。
【0027】
フィードバック部は、エンジン40の運転状態に応じて、コモンレール20の目標燃圧Pctを設定し、燃圧センサ21により検出されたコモンレール20内の実燃圧を、目標燃圧Pctにフィードバック制御する。コモンレール20内の実燃圧は、燃料の噴射燃圧Pcとなる。詳しくは、フィードバック制御部は、目標燃圧Pctと噴射燃圧Pcとの差分に基づいてフィードバック積分項(F/B積分項)を算出し、目標燃圧PctとF/B積分項とから、吸入弁62の開閉タイミング等を算出する。
【0028】
ECU50は、算出された開閉タイミングに応じて吸入弁62の開閉を制御することにより、コモンレール20内の燃圧を目標燃圧Pctに制御する。そして、ECU50は、ソレノイド66の駆動電流を制御することで、吸入弁62の開閉を制御する。図5(a)に駆動電流、図5(b)にアーマチャ61のリフト量、図5(c)に吸入弁62のリフト量、図5(d)にアーマチャ61がストッパ64に当接した際に発生する音の振動の時間変化を示す。
【0029】
ECU50は、吸入弁62が全開の状態、すなわち吸入弁62がストッパ68に当接している状態で、ソレノイド66の駆動電流を、アーマチャ61をストッパ64の方向へ移動させることができる第1電流I1と第2電流I2(初期作動電流)に制御する。詳しくは、ECU50は、第1電流I1に到達後、第1電流I1よりも小さい第2電流I2に制御する。アーマチャ61及び吸入弁62は、第1電流I1もしくは第2電流により、係合した状態で、第1ばね63の付勢力に抗して、ストッパ64の方向へ移動を開始する。
【0030】
アーマチャ61及び吸入弁62は、第2電流I2により、さらにストッパ64の方向へ移動する。そして、吸入弁62が加圧室30Bの内壁に当接して停止すると、アーマチャ61と吸入弁62の係合が解除される。吸入弁62は、第2ばね65の付勢力により、加圧室30Bの内壁に当接した状態、すなわち、閉弁状態で維持される。そして、アーマチャ61はさらにストッパ64の方向へ移動して、時点t21で、アーマチャ61がストッパ64に衝突して運動を停止する。この衝突により、作動音が発生する。
【0031】
さらに、ECU50は第2電流I2の供給を継続する。これにより、アーマチャ61がストッパ64に当接した状態で保持される。そして、ECU50が第2電流I2の供給を停止すると、アーマチャ61がストッパ64から離れて、吸入弁62の方向へ移動を開始し、時点t22で、アーマチャ61が吸入弁62に衝突して作動音が発生する。そして、アーマチャ61と吸入弁62は再び係合して、ストッパ68の方向へ移動する。時点t23で、吸入弁62がストッパ68に衝突すると作動音が発生する。
【0032】
エンジン40の駆動時においては、時点t21〜t23で高圧燃料ポンプ30の作動音が発しても、エンジン40の駆動音に比べて小さいため、ユーザは高圧燃料ポンプ30の作動音をうるさく感じるおそれは低い。しかしながら、アイドル状態では、エンジン40の駆動音が発生していないため、ユーザは高圧燃料ポンプ30の作動音をうるさく感じることがある。特に、時点t1でアーマチャ61とストッパ64とが衝突して発生する作動音は、他の時点で発生する作動音よりも大きく、ユーザがうるさく感じるおそれが高い。そこで、ECU50は、アイドル状態において、作動音低減制御を実施する。作動音低減制御は、アーマチャ61とストッパ64とが衝突する際に発生する作動音を低減するようにした、ソレノイド66の通電制御である。なお、ECU50は、アイドル状態ではない通常の走行時においては、図5に示すような通常の通電制御を実施する。
【0033】
詳しくは、ECU50は、低減部の機能を実現する。低減部は、第1電流部、第2電流部、第3電流部、判定部及び電流制御部の機能を有する。図4に、図5に対応した作動音低減制御時のタイムチャートを示す。
【0034】
第1電流部は、ソレノイド66の駆動電流を、吸入弁62が全開の状態において、アーマチャ61をストッパ64の方向へ移動させることができる第1電流I1に制御する。第2電流部は、第1電流I1がソレノイド66に供給された後、駆動電流を第1電流I1よりも小さい第2電流I2に制御する。アーマチャ61及び吸入弁62は、第1電流I1もしくは第2電流I2により、係合した状態で、ストッパ64方向へ移動を開始する。第1電流I1は、作動音低減制御を実施しない通常の制御時における第1電流I1と同じである。
【0035】
アーマチャ61及び吸入弁62が係合してストッパ64方向へ移動すると、吸入弁62と加圧室30Bの内壁との隙間が小さくなり、吸入弁62が閉弁状態に近い状態となる。よって、吸入弁62が、ストッパ64方向へ所定量を超えて移動した後は、駆動電流を第2電流I2よりも小さくしても、吸入弁62は第2ばねの付勢力と慣性力により自閉する。所定量は、吸入弁62の開弁状態から閉弁状態までのリフト量を100%としたとき、80%程度のリフト量である。
【0036】
そこで、第3電流部は、第2電流I2がソレノイド66に供給された後、第2時間(所定時間)経過した時点t11において、駆動電流を第2電流I2よりも小さい第3電流I3に制御する。これに伴い、アーマチャ61のストッパ64方向への移動速度が低減される。そして、吸入弁62が閉弁状態になった後、アーマチャ61と吸入弁62との係合が解除され、時点t12において、アーマチャ61はストッパ64に衝突する。この時、通常の通電制御時よりも駆動電流が小さく制御されているため、通常時よりも作動音を低減することができる。その後、第3電流I3の供給が継続され、吸入弁62は閉弁状態で保持されるとともに、アーマチャ61はストッパ64に当接した状態で保持される。
【0037】
ただし、燃料の温度が低下して燃料の動粘度が上昇している場合や、駆動回路67の劣化等により指令電流よりもソレノイド66の実電流が小さくなっている場合には、図4(b),(c)に破線で示すように、吸入弁62の閉弁作動が不足し、閉弁しないことがある。すなわち、第2電流I2がソレノイド66に供給された後、第2時間経過した時点において、吸入弁62が、ストッパ64方向へ所定量を超えて移動しておらず、駆動電流を第3電流I3に低下させると、吸入弁62が自閉できないことがある。吸入弁62の閉弁作動が不足して、吸入弁62が閉弁状態にならないと、コモンレール20への燃料の圧送量が不十分となる。一方、第3電流I3を上昇させると、作動音が大きくなる。そのため、吸入弁62の閉弁作動が不足している場合には、第2電流I2を大きくして、第2電流から第3電流に切り替える時点における吸入弁62の移動量を大きくし、吸入弁62を閉弁状態にする必要がある。
【0038】
よって、判定部は、吸入弁62の閉弁作動が不足しているか否かを判定する。詳しくは、判定部は、燃圧センサ21により検出されたコモンレール20内の噴射燃圧Pcが、コモンレール20内の目標燃圧Pctよりも所定値より小さい場合に、吸入弁62の閉弁作動が不安定であると判定する。吸入弁62の閉弁作動が不足していると、高圧燃料ポンプ30からコモンレール20への燃料の圧送量が減少し、目標燃圧Pctと噴射燃圧Pcとの差分が減少せず、噴射燃圧Pcが目標燃圧Pctを大きく下回ることになる。よって、目標燃圧Pctと噴射燃圧Pcとの差分から、吸入弁62の閉弁作動が不足しているか否か判定できる。
【0039】
電流制御部は、判定部により閉弁作動が不足していると判定された場合に、第1電流I1、第2電流I2及び第3電流I3のうち第2電流I2のみを上昇させる。図4(a)に、上昇させる前の第2電流I2を破線で示し、上昇させた後の第2電流I2を実線で示す。第2電流I2を上昇させることにより、第2電流供給後、第2時間経過した時点において、吸入弁62はストッパ64方向へ所定量超えて移動しているようになり、駆動電流を第3電流I3に切り替えても、吸入弁62は自閉するようになる。このとき、第2電流I2のみを上昇させ、第3電流I3は上昇させないため、ストッパ64との衝突時におけるアーマチャ61の速度は通常の通電制御時よも小さく、作動音を低減することができる。なお、図4(b),(c)に実線と鎖線で示すように、第2電流I2から第3電流I3に切り替えるときに、吸入弁62が所定量を超えて移動していても、吸入弁62の位置に応じて、閉弁状態になるまでの時間が変わる。
【0040】
次に、本実施形態に係る作動音低減制御の処理手順について、図6のフローチャートを参照して説明する。本処理手順は、ECU50が所定間隔で繰り返し実行する。
【0041】
まず、低減制御カウンタCnvを0にセットする(S10)。続いて、作動音低減制御の実行条件が成立しているか否か判定する(S11)。作動音低減制御の実行条件とは、アイドル状態であり、且つアイドル安定状態であることである。具体的には、次の(1)〜(8)の条件である。
【0042】
(1)アクセルの踏込量が所定範囲内であること。(2)エンジン40の回転速度が所定範囲内であること。(3)コモンレール20の目標燃圧Pctが所定範囲内であること。(4)燃料噴射弁10の燃料噴射量が所定量以下であること。(5)車速が所定速度以下であること。(6)車両に搭載されたバッテリの電圧が所定範囲内であること。(7)高圧燃料ポンプ30、コモンレール20の減圧弁23、燃料噴射弁10、エンジン40の回転速度等のダイアグの異常を検出していないこと。(8)噴射燃圧Pcのフィードバック制御におけるF/B積分項の最大値と最小値との偏差が、所定範囲内の状態が所定時間成立していること。条件(1)〜(6)は、アイドル状態の条件であり、所定範囲や所定量、所定速度にはヒステリシスを持たせて設定する。条件(7)及び(8)は、アイドル安定状態の条件である。上記(1)〜(8)の全ての条件が成立した場合に、作動音低減制御の実行条件が成立したと判定する。
【0043】
作動音低減制御の実行条件が成立している場合は(S11:YES)、低減制御カウンタCnvが0以下か否か判定する(S12)。すなわち、作動音低減制御の実行条件が不成立から成立に変わった後、最初の処理か否かを判定する。低減制御カウンタCnvが0以下の場合は(S12:YES)、作動音低減制御用の電流パターンを記憶装置から読み取る(S13)。作動音低減制御用の電流パターンは、作動音低減制御用の第1電流I1、第2電流I2、第3電流I3等である。記憶装置には、通常の通電制御用の第1電流I1、第2電流I2、及び作動音低減制御用の第1電流I1、第2電流I2、第3電流I3等が記憶されている。
【0044】
作動音低減制御用の電流パターンを読み取ると、続いて読み取った作動音低減制御用の電流パターンで、ソレノイド66を通電する(S14)。一方、低減制御カウンタCnvが0よりも大きい場合(S12:NO)は、作動音低減制御の実行条件が不成立から成立に変わった後、最初の処理で読み取った作動音低減制御用の電流パターンで、ソレノイド66を通電する(S14)。続いて、低減制御カウンタCnvを1増加させる(S15)。
【0045】
続いて、燃圧センサ21で検出された噴射燃圧Pcを取得する(S16)。続いて、目標燃圧Pctから噴射燃圧Pcを差し引いた差分が、所定値よりも小さいか否か判定する(S17)。
【0046】
差分が所定値以上の場合は(S17:NO)、吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定して、すなわち、S13で読み取った第2電流I2で吸入弁62を閉弁状態にできていないと判定して、第2電流I2に所定の加算値Iadを加算したものを新たな第2電流I2とする。そして、S11の処理に戻る。これにより、次回の処理では、今回の第2電流I2よりも加算値Iadの分大きな値の第2電流I2で、ソレノイド66が通電されるため、吸入弁62が閉弁状態になる可能性が高くなる。
【0047】
一方、差分が所定値よりも小さい場合は(S17:YES)、吸入弁62の閉弁作動が不足していないと判定して、すなわち、S13で読み取った第2電流I2で吸入弁62を閉弁状態にできていると判定して、そのままS11の処理に戻る。
【0048】
そして、S11において、作動音低減制御の実行条件が成立している場合は(S11:YES)、作動音低減制御を再度実施し、作動音低減制御の実行条件が成立していない場合は(S11:NO)、低減制御カウンタCnvを0に設定して(S19)、本処理を終了する。
【0049】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0050】
(1)吸入弁62の閉弁作動が不足しているか否か判定され、閉弁作動が不足していると判定された場合には、第1電流I1、第2電流I2及び第3電流I3の全てが引き上げられず、第2電流I2のみが引き上げられる。これにより、吸入弁62の閉弁作動が不足している場合でも、吸入弁62を閉弁状態とすることができるとともに、第2電流I2のみを引き上げるため、アーマチャ61の移動速度を抑制して、作動音を低減することができる。したがって、高圧燃料ポンプ30の吸入弁62の閉弁作動時における作動音の低減と吸入弁62の閉弁作動不足の抑制とを、両立することができる。
【0051】
(2)吸入弁62の閉弁作動が不足すると、高圧燃料ポンプ30からコモンレール20への燃料の圧送量が減少し、コモンレール20の噴射燃圧Pcが目標燃圧Pctを大きく下回ることになる。よって、コモンレール20の目標燃圧Pctが、検出された噴射燃圧Pcよりも所定値を超えて高い場合には、吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定できる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るECU50について、第1実施形態に係るECU50と異なる点を説明する。第2実施形態では、判定部の判定方法が第1実施形態と異なる。第2実施形態に係る判定部は、作動音低減制御の実施後におけるF/B積分項が、作動音低減制御の実施直前におけるF/B積分項よりも所定値以上の場合に、吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定する。
【0053】
吸入弁62の閉弁作動が不足していると、目標燃圧Pctと噴射燃圧Pcとの差分が減少せず、F/B積分項が増大する。よって、作動音低減制御の実施後におけるF/B積分項と、作動音低減制御の実施直前におけるF/B積分項との差分から、吸入弁62の閉弁作動が不足しているか否か判定できる。
【0054】
次に、本実施形態に係る作動音低減制御の処理手順について、図7のフローチャートを参照して説明する。本処理手順は、ECU50が所定間隔で繰り返し実行する。
【0055】
まず、S20及びS21では、S10及びS11と同様の処理を行う。続いて、F/B積分項FBpを取得する(S22)。作動音低減制御の実行条件が不成立から成立に変わった後、最初の処理で取得したF/B積分項FBpは、作動音低減制御の実施直前のF/積分項である。
【0056】
続いて、低減制御カウンタCnvが0以下か否か判定する(S23)。低減制御カウンタCnvが0以下の場合は(S23:YES)、作動音低減制御用の電流パターンを記憶装置から読み取る(S24)。そして、S22で取得したF/B積分項FBpを、F/B積分項の初期値であるF/B積分項FBiとする(S25)。すなわち、作動音低減制御の実行直前のF/B積分項を、初期値であるF/B積分項FBiとする。続いて、作動音低減制御用の電流パターンで、ソレノイド66を通電する(S26)。低減制御カウンタCnvが0よりも大きい場合(S23:NO)は、作動音低減制御の実行条件が不成立から成立に変わった後、最初の処理で読み取った作動音低減制御用の電流パターンで、ソレノイド66を通電する(S26)。続いて、低減制御カウンタCnvを1増加させる(S27)。
【0057】
続いて、S22で取得したF/積分項FBpからF/B積分項FBiを差し引いた差分ΔFBを算出する(S28)。続いて、差分FBが所定値よりも小さいか否か判定する(S29)。続いて、差分ΔFBが所定値以上の場合は(S29:NO)、吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定して、第2電流I2に所定の加算値Iadを加算したものを新たな第2電流I2とする。そして、S21の処理に戻る。これにより、次回の処理では、新たな第2電流I2で、ソレノイド66が通電されるため、吸入弁62が閉弁状態になる可能性が高くなる。
【0058】
一方、差分ΔFBが所定値よりも小さい場合は(S29:YES)、吸入弁62の閉弁作動が不足していないと判定して、S21の処理に戻る。
【0059】
そして、S20において、作動音低減制御の実行条件が成立している場合は(S20:YES)、作動音低減制御を再度実施し、作動音低減制御の実行条件が成立していない場合は(S20:NO)、低減制御カウンタCnvを0に設定して(S31)、本処理を終了する。
【0060】
以上説明した第2実施形態によれば、上記効果(1)を奏するとともに、以下の効果を奏する。
【0061】
(3)吸入弁62の閉弁作動が不足すると、高圧燃料ポンプ30からコモンレール20への燃料の圧送量が減少する。そのため、コモンレール20の噴射燃圧Pcを目標燃圧Pctにフィードバック制御する際に、F/B積分項が増大する。よって、作動音低減制御実行後におけるF/B積分項が、作動音低減制御の実行直前におけるF/B積分項よりも、所定値を超えて大きい場合に、吸入弁の閉弁作動が不足していると判定できる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るECU50について、第1実施形態に係るECU50と異なる点について説明する。本実施形態に係るECU50は、補正マップと補正部とを備える。
【0063】
補正マップは、高圧燃料ポンプ30の使用環境と第2電流I2の補正値とが対応づけられたマップであり、記憶装置に記憶されている。高圧燃料ポンプ30の使用環境は、燃料温度、駆動回路67の電源電圧、ソレノイド66の通電電流の少なくとも1つである。作動音低減制御用の電流パターンは、基準となる使用環境における値が設定されている。しかしながら、使用環境が変わった場合は、基準となる使用環境における電流パターンよりも、現在の使用環境に適した電流パターンで通電する方が好ましい。例えば、燃料温度が高いほど、燃料の動粘度が高くなるため、基準となる使用環境よりも燃料温度が高くなった場合は、第2電流を大きくして、ソレノイド66が発生する電磁力を大きくする方がよい。そこで、基準となる使用環境において設定した第2電流I2を、使用環境に適した第2電流I2に補正できるように、使用環境に対応づけた補正値のマップを用意した。
【0064】
補正マップの例を、図8及び図9に示す。図8は、燃料温度と補正値とを対応づけた補正マップである。また、図9は、燃料温度及び電源電圧と補正値とを対応づけた補正マップである。補正マップはこれら以外にも、電源電圧と補正値とを対応づけた補正マップや、通電電流と補正値とを対応づけた補正マップ、燃料温度及び通電電流と補正値とを対応づけた補正マップ、電源電圧及び通電電流と補正値とを対応づけた補正マップ等でもよい。燃料温度は、燃温センサ31により検出される。通電電流は、電流センサ35により検出される。電源電圧は電圧センサ36により検出される。なお、補正値は、正の値に限らず負の値を取る場合もある。
【0065】
補正部は、低減部による作動音低減制御が実施される場合に、補正マップから高圧燃料ポンプ30の使用環境に応じた第2電流I2の補正値を算出する。そして、補正部は、算出した第2電流I2の補正値を、作動音低減制御用の電流パターンとして記憶されている第2電流I2に加算して、第2電流を使用環境に適した値に補正する。
【0066】
次に、本実施形態に係る作動音低減制御の処理手順について、図10のフローチャートを参照して説明する。本処理手順は、ECU50が所定間隔で繰り返し実行する。
【0067】
まず、S40及びS41では、S10及びS11と同様の処理を実施する。続いて、高圧燃料ポンプ30の使用環境を取得する(S42)。すなわち、燃温センサ31により検出された燃料温度、電流センサ35により検出された通電電流、及び電圧センサ36により検出された電源電圧の少なくとも1つを取得する。
【0068】
続いて、S43及びS44では、S12及びS13と同様の処理を実施する。S44で読み取った第2電流をI2aとする。続いて、補正マップから、S42で取得した使用環境に応じた第2電流I2aの補正値Icrを算出する(S45)。
【0069】
続いて、読み取った第2電流I2aに、算出した補正値Icr及び前回の処理で算出したアシスト量Iofを加算して、新たな第2電流I2を算出する(S46)。続いて、S44で読み取った第1電流I1、S46で算出した第2電流I2、及びS44で読み取った第3電流I3で、ソレノイド66を通電する(S47)。
【0070】
続いて、S48〜S50では、S15〜S17と同様の処理を実施する。そして、差分が所定値以上の場合は(S50:NO)、吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定して、アシスト量Iofに所定の加算値Iadを加算する(S51)。これにより、駆動回路67の劣化等により、ソレノイド66に実際に通電された第2電流I2が、S46で算出した第2電流I2よりも小さくなり、吸入弁62を閉弁状態にさせることができなかった場合でも、第2電流I2を増加させて、吸入弁62を閉弁状態にさせることができる。アシスト量Iofは、吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定される毎に、加算値Iadの分だけ増加する。その後、S41の処理に戻る。一方、差分が所定値よりも小さい場合は(S50:YES)、そのままS41の処理に戻る。
【0071】
そして、S41において、作動音低減制御の実行条件が成立している場合は(S41:YES)、作動音低減制御を再度実施し、作動音低減制御の実行条件が成立していない場合は(S41:NO)、低減制御カウンタCnvを0に設定して(S52)、本処理を終了する。以上で本処理を終了する。
【0072】
なお、吸入弁62の閉弁作動が不足しているか否かの判定は、第2実施形態のようにF/B積分項に基づいて判定してもよい。
【0073】
以上説明した第3実施形態によれば、上記効果(1)〜(3)を奏するとともに、以下の効果を奏する。
【0074】
(4)高圧燃料ポンプ30の使用環境に対応した第2電流I2の補正値Icrにより、第2電流I2が補正される。よって、作動音低減制御の実行時に、使用環境に適した第2電流I2が供給されるため、開弁作動が不足する事態を抑制することができる。ひいては、作動音低減制御の実行を開始してから、吸入弁62が閉弁状態になるまでの時間を抑制できる。
【0075】
(5)第2電流I2を使用環境に適した補正値Icrで補正しても、駆動回路67の劣化等により閉弁作動が不足した場合には、第2電流I2が加算値Iadの分だけ加算される。これにより、吸入弁62を確実に閉弁させることができる。
【0076】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係るECU50について、第3実施形態に係るECU50と異なる点について説明する。本実施形態に係るECU50は、更新部を備えるとともに、電流制御部の機能が一部異なる。
【0077】
電流制御部は、低減部による作動音低減制御の実施中において、吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定された場合に、読み取った第2電流I2aに、所定の加算値Iadを加算する。詳しくは、アシスト量Iofに加算値Iadを加算し、アシスト量Iofを読み取った第2電流I2aに加算する。
【0078】
また、電流制御部は、低減部による作動音低減制御の実施中において、吸入弁62の閉弁作動が不足していないと判定された場合に、読み取った第2電流I2aから所定の減算値Isub(正の値)を減算する。詳しくは、アシスト量Iofから減算値Isubを減算し、アシスト量Iofを読み取った第2電流I2aに加算する。減算値Isubの大きさは、加算値Iadの大きさよりも小さい値として、吸入弁62の閉弁作動が不足していない場合に、第2電流I2が微調整されるようにする。このようにすることにより、第2電流I2の大きさに余裕がある場合には、吸入弁62を閉弁状態にすることができる範囲内で、第2電流I2の大きさが低減され、作動音が好適に低減される。
【0079】
更新部は、補正マップの補正値を学習して更新する。図11に、補正マップの一例を示す。この補正マップでは、燃料温度の所定範囲ごとに、補正値が対応づけられているが、補正マップは、図8図9に示す補正マップ等でもよい。
【0080】
更新部は、吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定された場合に、加算値Iadに基づいて、補正マップの補正値を更新する。詳しくは、加算値Iadを加算したアシスト量Iofに所定の反映係数kを乗算した値を、補正マップの補正値Icrに加算し、加算した値を新たな補正値Icrとする。
【0081】
また、更新部は、第2電流I2aから減算値Isubを減算した後、所定回数、吸入弁62の閉弁作動が不足していないと判定された場合に、減算値Isubに基づいて、補正マップの補正値Icrを更新する。詳しくは、減算値Isubを減算したアシスト量Iofに所定の反映係数kを乗算した値を、補正マップの補正値Icrに加算し、加算した値を新たな補正値Icrとする。これにより、補正値Icrが、作動音を好適に低減できる値に更新される。本実施形態では、吸入弁62の閉弁作動が不足していない場合に、減算値Isubを反映させて補正値Icrを更新することを、補正値Icrの学習と称する。
【0082】
次に、本実施形態に係る作動音低減制御の処理手順について、図12及び13のフローチャートを参照して説明する。本処理手順は、ECU50が所定間隔で繰り返し実行する。
【0083】
まず、低減制御カウンタCnv,Cin,Ccl、及びアシスト量Iofを0にセットする。また、学習履歴Fcl、記憶要求Fcaをオフ(0)にセットする(S60)。
【0084】
続いて、S61〜S64では、S42〜S44と同様の処理を行う。本実施形態では、S62において、使用環境として燃料温度Tを取得する。続いて、取得した燃料温度Tを初期値Tinとする(S65)。続いて、S66〜S71では、S45〜S50と同様の処理を行う。
【0085】
そして、差分が所定値以上の場合は(S71:NO)、吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定して、アシスト量Iofに加算値Iadを加算する(S72)。
【0086】
続いて、学習履歴Fclがオフか否か判定する(S73)。学習履歴Fclがオフの場合は(S73:YES)、記憶要求Fcaをオン(1)にする(S74)。記憶要求Fcaは、補正マップの補正値Icrの上書き要求を表す。
【0087】
一方、学習履歴Fclがオンの場合は(S73:NO)、学習履歴Fclをオフにする。この学習履歴Fclは、S66で算出した補正値Icrについて、学習したか否かを表す。吸入弁62の閉弁作動が不足している場合、直ちに第2電流I2を増加させる必要があるため、この後の処理で、補正マップの補正値Icrを更新する。よって、この場合、S66で算出した補正値Icrの学習をしないので、学習履歴Fclをオフにする。
【0088】
続いて、S62で取得した燃料温度を初期値Tinとするとともに、カウンタCnvをカウンタCinとする(S76)。初期値Tinは、補正マップの補正値Icrを更新した時における燃料温度を表し、カウンタCinは、補正マップの補正値Icrを更新した時における低減制御の実行回数のカウント値を表す。
【0089】
続いて、記憶要求Fcaがオンか否か(1か否か)判定する(S85)。記憶要求Fcaがオフの場合は(S85:NO)、S61の処理に戻る。一方、記憶要求Fcaがオンの場合は(S85:YES)、S66で算出した補正値Icrに、アシスト量Iofに反映係数を乗算した値を加算して、補正値Imを算出する(S86)。
【0090】
続いて、S86で算出した補正値Imを、新たな補正値Icrとして、補正マップに上書きする(S87)。S71の処理で、吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定された場合には、補正値Icrは、加算値Iadを反映した値に上書きされる。
【0091】
続いて、記憶要求Fcaをオフにする(S88)。さらに、S62で取得した燃料温度を初期値Tinとするとともに、カウンタCnvをカウンタCinとする(S89)。
【0092】
また、S71の処理において、差分が所定値よりも小さい場合は(S71:YES)、吸入弁62の閉弁作動が不足していないと判定して、学習条件が成立しているか否か判定する(S77)。詳しくは、(a)Cnv−Cin≧所定値、又は(b)T−Tin≦所定値の少なくとも一方が成立している場合に、学習条件が成立していると判定する。ソレノイド66の通電が安定していない状態で、補正値Icrの学習を頻繁に行うことは好ましくない。そこで、本実施形態では、補正値Icrが更新された後、ソレノイド66の通電が安定した状態となった場合に、学習条件が成立したと判定する。条件(a)は、補正値Icrを更新してから、所定値以上の回数、作動音低減制御を実施した場合に、ソレノイド66の通電が安定した状態となったと判定する条件である。また、条件(b)は、補正値Icrが更新されてから、燃料温度の変化が所定値以内の場合に、ソレノイド66の通電が安定した状態となったと判定する条件である。
【0093】
学習条件が成立していない場合は(S77:NO)、S85の処理に進む。一方、学習条件が成立している場合は(S77:YES)、学習履歴Fclがオンか否か判定する(S78)。
【0094】
学習履歴がオフの場合は(S78:NO)、アシスト量から所定の減算値Isub(正の値)を減算する(S80)。これにより、補正値Icrが学習されるので、学習履歴Fclをオンにする(S81)。また、カウンタCnvをCclとする(S82)。カウンタCclは、補正値Icrが学習された時における低減制御の実行回数のカウント値を表す。続いて、S85の処理に進む。
【0095】
また、S78の処理において、学習履歴Fclがオンの場合は(S78:YES)、カウンタCnvからカウンタCclを差し引いた値が、所定値以上か否か判定する(S79)。すなわち、S80の処理を実施して、補正値Icrを学習してからの低減制御の実行回数が、所定値以上か否か判定する。差し引いた値が所定値よりも小さい場合は(S79:NO)、補正値Icrの学習を実施した後、ソレノイド66の通電がまだ安定していないと判定して、S85の処理に進む。
【0096】
一方、差し引いた値が所定値以下の場合は(S79:YES)、補正値Icrの学習を実施した後、ソレノイド66の通電が安定した状態になったと判定して、学習履歴Fclをオフにし(S83)、記憶要求Fcaをオンにする(S84)。続いて、S85の諸例に進む。この後、S87で、補正値Icrは、減算値Isubを反映した値に上書きされる。
【0097】
また、S61において、作動音低減制御の実行条件が成立していない場合には(S61:NO)、各カウンタを0にセットするとともに、学習履歴Fcl及び記憶要求Fcaをオフにセットする(S90)。以上で本処理を終了する。
【0098】
以上説明した第4実施形態によれば、上記(1)〜(5)の効果を奏するとともに、以下の効果を奏する。
【0099】
(6)吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定された場合には、加算値Iadに基づいて、直ちに補正マップの補正値Icrが更新されるため、閉弁作動が不足する事態を抑制して、作動音低減制御の実行を開始してから、吸入弁62が閉弁状態になるまでの時間を抑制できる。
【0100】
(7)吸入弁62の閉弁作動が不足していないと判定された場合には、減算値Isubに基づいて、補正マップの補正値Icrが学習されて更新される。これにより、吸入弁62の閉弁作動が不足していない場合には、吸入弁62を閉弁状態にすることができる範囲で、第2電流I2の大きさが低減され、作動音が好適に低減される。
【0101】
(8)加算値Iadを減算値Isubよりも大きな値とすることにより、第2電流I2を微調整できるとともに、吸入弁62の閉弁作動が不足な状態になった場合には、不足状態から速く脱出できる。
【0102】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係るECU50について、第4実施形態に係るECU50と異なる点について説明する。第5実施形態では、判定部の判定方法が第4実施形態と異なる。第5実施形態に係る判定部は、作動音低減制御の実施後におけるF/B積分項が、作動音低減制御の実施直前におけるF/B積分項よりも所定値を超えて大きい場合に、吸入弁62の閉弁作動が不足していると判定する。すなわち、第5実施形態は、第4実施形態に第2実施形態を適用して、第4実施形態における判定部を第2実施形態における判定部としたものである。
【0103】
次に、本実施形態に係る作動音低減制御の処理手順について、図14及び15のフローチャートを参照して説明する。本処理手順は、図12及び13のフローチャートと、図7のフローチャートとを組み合わせたものであるので、簡単に説明する。本処理手順は、ECU50が所定間隔で繰り返し実行する。
【0104】
まず、S110及びS120では、S60及びS61と同様の処理を行う。続いて、S130では、S22と同様の処理を行う。続いて、S140及びS150では、S63及びS64と同様の処理を行う。続いて、S160では、S25と同様の処理を行う。
【0105】
続いて、S170〜S200では、S66〜S69と同様の処理を行う。続いて、S210及びS220では、S28及びS29と同様の処理を行う。続いて、S230〜S410では、S72〜S90と同様の処理を行う。
【0106】
以上説明した第5実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果を奏する。
【0107】
(他の実施形態)
・各実施形態に係る高圧燃料ポンプを適用する燃料供給システムは、直噴ガソリンエンジンを対象にしたシステムであってもよい。直噴ガソリンエンジンの燃料供給システムでは、デリバリパイプがコモンレールに相当する蓄圧容器となる。
【符号の説明】
【0108】
30…高圧燃料ポンプ、30B…加圧室、30C…電磁弁、30F…吸入通路、40…エンジン、50…ECU、61…アーマチャ、62…吸入弁、63…第1ばね、64…ストッパ、65…第2ばね、66…ソレノイド、67…駆動回路。
図1
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図15