特許第6432496号(P6432496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432496
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 11/00 20060101AFI20181126BHJP
   G01S 13/86 20060101ALI20181126BHJP
   G01S 13/93 20060101ALI20181126BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20181126BHJP
   B60R 21/013 20060101ALI20181126BHJP
   B60R 21/017 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   G01V11/00
   G01S13/86
   G01S13/93 220
   G08G1/16 C
   B60R21/013
   B60R21/017
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-237667(P2015-237667)
(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公開番号】特開2017-102080(P2017-102080A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】松永 昇悟
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−84034(JP,A)
【文献】 特開2009−31053(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/009217(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−15/00
B60R 21/013
B60R 21/017
G01S 13/86
G01S 13/93
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向前方に探査波を送信し、物標により反射された反射波を受信するレーダ装置(21)からその反射波に基づく反射情報を取得し、その一方で前記車両の進行方向前方を撮像する撮像装置(22)から画像情報を取得する物体検出装置(100)であって、
前記レーダ装置から取得した前記反射情報により検出した物標であるレーダ検出物標の位置を検出するレーダ検出物標位置検出部(10)と、
前記撮像装置から取得した前記画像情報により検出した物標である画像検出物標の位置を検出する画像検出物標位置検出部(10)と、
前記レーダ検出物標と前記画像検出物標との位置関係が所定関係となった場合に、前記レーダ検出物標と前記画像検出物標とは同一物標であることを判定する同一物標判定部(10)と、
前記同一物標判定部により前記レーダ検出物標と前記画像検出物標とは同一物標であると判定され、且つ前記車両と前記同一物標との距離が所定距離よりも短くなったことを条件として、前記車両と前記同一物標との衝突を抑制する抑制制御を行う衝突抑制部(10)と、
前記レーダ検出物標と前記画像検出物標との距離が所定期間よりも長い期間、単調増加又は単調減少した場合に、衝突抑制部による前記抑制制御の実行を抑制する実行抑制部(10)と、
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記衝突抑制部は、前記同一物標判定部による前記レーダ検出物標と前記画像検出物標とは同一物標であるとの前記判定から判定用時間が経過するまでの間に、前記レーダ検出物標と前記画像検出物標との距離が誤差範囲外となった場合に前記抑制制御の実行を抑制することを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記車両は、前記車両の自動制動を実行する自動制動部(31)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記車両は、ドライバに前記物体の接近を報知する報知部を含み、
前記衝突抑制部は、前記自動制動部により前記車両に前記自動制動を実行させるよりも前に前記報知を実行させることを特徴とする請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記所定関係とは、前記レーダ検出物標と前記画像検出物標との距離が所定範囲内に収まることであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項6】
自車両の進行方向前方に探査波を送信し、物標により反射された反射波を受信するレーダ装置(21)からその反射波に基づく反射情報を取得し、その一方で自車両の進行方向前方を撮像する撮像装置(22)から画像情報を取得する物体検出装置(100)であって、
前記レーダ装置から取得した前記反射情報により検出した物標であるレーダ検出物標の位置を検出するレーダ検出物標位置検出部(10)と、
前記撮像装置から取得した前記画像情報により検出した物標である画像検出物標の位置を検出する画像検出物標位置検出部(10)と、
前記レーダ検出物標と前記画像検出物標との位置関係が所定関係となった場合に、前記レーダ検出物標と前記画像検出物標とは同一物標であることを判定する同一物標判定部(10)と、
前記レーダ検出物標と前記画像検出物標との距離が所定期間よりも長い期間、単調増加又は単調減少した場合に、前記同一物標判定部による前記同一物標の判定を取り消す判定取消部(10)と、
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項7】
前記判定取消部は、前記同一物標判定部による前記レーダ検出物標と前記画像検出物標とは同一物標であるとの前記判定から判定用時間が経過するまでの間に、前記レーダ検出物標と前記画像検出物標との距離が誤差範囲外となった場合に、前記同一物標判定部による前記同一物標の判定を取り消すことを特徴とする請求項6に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体を検出する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突回避システムでは、他の車両や歩行者等の物標を精度よく検出することが求められる。そこで、レーダ及びカメラを用いて物標を検出する構成が提案されている。具体的には、特許文献1に記載の構成において、ミリ波レーダ及びステレオカメラによりそれぞれ独立して物標が検出され、それら物標の位置関係が判断基準を満たしている場合に、それらの物標が同一物標であると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−292475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路の路面上に存在するマンホールなどの金属物の上を先行車両が通過する場面では、その金属物と先行車両との位置関係が判断基準を満たしたときに、誤って同一物標であると判定するおそれがある。この場合、誤検出した金属物と自車両との位置関係によっては、警報又は自動ブレーキの誤作動が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、レーダ装置により検出されたレーダ検出物標と撮像装置により検出された画像検出物標との位置関係が所定関係にあったとしても、それらの物標を同一物標として誤判定することを抑制可能な物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両の進行方向前方に探査波を送信し、物標により反射された反射波を受信するレーダ装置からその反射波に基づく反射情報を取得し、その一方で自車両の進行方向前方を撮像する撮像装置から画像情報を取得する物体検出装置であって、前記レーダ装置から取得した前記反射情報により検出した物標であるレーダ検出物標の位置を検出するレーダ検出物標位置検出部と、前記撮像装置から取得した前記画像情報により検出した物標である画像検出物標の位置を検出する画像検出物標位置検出部と、前記レーダ検出物標と前記画像検出物標との位置関係が所定関係となった場合に、前記レーダ検出物標と前記画像検出物標とは同一物標であることを判定する同一物標判定部と、前記同一物標判定部により前記レーダ検出物標と前記画像検出物標とは同一物標であると判定され、且つ前記自車両と前記同一物標との距離が所定距離よりも短くなったことを条件として、前記自車両と前記同一物標との衝突を抑制する抑制制御を行う衝突抑制部と、前記レーダ検出物標と前記画像検出物標との距離が所定期間よりも長い期間、単調増加又は単調減少した場合に、衝突抑制部による前記抑制制御の実行を抑制する実行抑制部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
例えば、路上に存在するマンホールなどの金属物の上を先行車両が通過する場合に、撮像装置が先行車両を検出し、レーダ装置が金属物を検出することがある。このとき、画像検出物標位置検出部が検出した先行車両の位置とレーダ検出物標位置検出部が検出したマンホールの位置とが所定関係となった場合に、従来の同一物標判定部では、それらの物標が同一の物標であると誤判定してしまうおそれがある。この場合に備え、本物体検出装置では、実行抑制部が備えられている。この実行抑制部により、同一物標判定部によりレーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であると判定されても、レーダ検出物標と画像検出物標との距離が所定期間よりも長い期間、単調増加又は単調減少した場合には、それぞれの物標の速度に明確な差異があり、二つの物標が同一物標ではないことが示唆される。この場合、同一物標判定部による同一物標判定は誤判定である可能性が高いとして、衝突抑制部による抑制制御の実行が抑制される。これにより、同一物標判定部による同一物標の判定が誤っている場合には、衝突抑制部による抑制制御の誤実行を抑制する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る物体検出装置の概略構成図である。
図2】レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標と誤判定する状況を示す図である。
図3】本実施形態に係る物体検出装置が実行する制御フローチャートである。
図4】同一物標判定が正しい場合の物標間距離の変動の一例(上図)と、誤っている場合の物標間距離の変動の一例(下図)とを示す図である。
図5】別例に係る物体検出装置が実行する制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1において、物体検出装置100は、検出ECU10、レーダ装置21、及び撮像装置22とから構成されている。
【0010】
レーダ装置21は、例えば、ミリ波帯の高周波信号を送信波とする公知のミリ波レーダであり、自車両の前端部に設けられ、所定の検知角に入る領域を物標を検知可能な検知範囲とし、検知範囲内の物標(レーダ検出物標と呼称)の位置を検出する。具体的には、所定周期で探査波を送信し、複数のアンテナにより反射波を受信する。この探査波の送信時刻と反射波の受信時刻とにより、レーダ検出物標との距離を算出する。また、レーダ検出物標に反射された反射波の、ドップラー効果により変化した周波数により、相対速度を算出する。加えて、複数のアンテナが受信した反射波の位相差により、レーダ検出物標の方位を算出する。なお、レーダ検出物標の位置及び方位が算出できれば、そのレーダ検出物標の、自車両に対する相対位置を特定することができる。よって、レーダ装置21は、物体検出部に該当する。レーダ装置21は、所定周期毎に、探査波の送信、反射波の受信、反射位置及び相対速度の算出を行い、算出した反射位置と相対速度とを検出ECU10に送信する。
【0011】
撮像装置22は、例えばCCDカメラ、CMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等で構成されている。この場合、撮像装置22は、自車両の車幅方向中央の所定高さに取り付けられることで、自車両前方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を俯瞰視点から撮像する。撮像装置22は、撮像した画像における、物標(画像検出物標と呼称)の存在を示す特徴点を抽出する。具体的には、撮像した画像の輝度情報に基づきエッジ点を抽出し、抽出したエッジ点に対してハフ変換を行う。ハフ変換では、例えば、エッジ点が複数個連続して並ぶ直線上の点や、直線どうしが直交する点が特徴点として抽出される。撮像装置22は、所定周期毎に、撮像及び特徴点の抽出を行い、特徴点の抽出結果を検出ECU10に送信する。なお、撮像装置22は、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。
【0012】
検出ECU10には、レーダ装置21と撮像装置22とが接続されている。検出ECU10は、CPU11、RAM12、ROM13、I/O等を備えたコンピュータである。この検出ECU10は、CPU11が、ROM13にインストールされているプログラムを実行することでこれら各機能を実現する。本実施形態において、ROM13にインストールされているプログラムは判定プログラムであり、レーダ検出物標の情報と画像検出物標の情報とに基づいて、それぞれの物標が同一の物標を示しているのか否かを判定する。
【0013】
具体的には、レーダ検出物標から得られる位置であるレーダ検出物標位置と、画像検出物標から得られる特徴点である画像検出物標位置とについて、近傍に位置するものを、同じ物標に基づくものであるとして対応付ける。レーダ検出物標位置の近傍に、画像検出物標位置が存在する場合(本実施形態においては、レーダ検出物標位置と画像検出物標位置との物標間距離が所定範囲内に収まる場合)、そのレーダ検出物標位置に実際に物標が存在する可能性が高い。この、レーダ装置21及び撮像装置22により物標の位置が精度よく取得できている状態を、フュージョン状態と称する。フュージョン状態であると判定された物標については、その位置に物標(以下、同一物標と呼称)が存在していると判定される。この検出ECU10は、レーダ検出物標位置検出部と、画像検出物標位置検出部と、同一物標判定部と、衝突抑制部と、実行抑制部とに該当する。
【0014】
自車両には、検出ECU10からの制御指令により駆動する安全装置として、ブレーキ装置31が備えられている。
【0015】
ブレーキ装置31は、自車両を制動する制動装置である。検出ECU10が、障害物に衝突する可能性が高まったと判定した場合には、その検出ECU10からの制御指令によりブレーキ装置31が作動する。具体的には、運転者によるブレーキ操作に対する制動力をより強くしたり(ブレーキアシスト機能)、運転者によりブレーキ操作が行われてなければ自動制動を行ったりする(自動ブレーキ機能)。したがって、ブレーキ装置31は、自動制動部に該当する。
【0016】
上記構成の物体検出装置100を備える自車両が走行中に、車両前方に存在する先行車両がマンホールなどの金属物の上を通過した場合、撮像装置22が先行車両を検出し、レーダ装置21が金属物を検出することがある。このとき、図2に記載されるように、先行車両が金属物を通過する前後で、先行車両の位置と金属物の位置とがごく近距離となる。この際、検出ECU10は、撮像装置22が検出した先行車両とレーダ装置21が検出した金属物との物標間距離が所定範囲内に収まることで、先行車両と金属物とを同一の物標であると誤判定するおそれがある。
【0017】
本実施形態では、この対策として、レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であると判定されても、それ以降もレーダ検出物標の位置と画像検出物標の位置とに大きな変化がないかを判定する。
【0018】
具体的には、同一物標であると判定されてから所定期間よりも長い期間、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が単調増加又は単調減少していないか否かを判定する。あるいは、同一物標であると判定されてから判定用時間が経過するまでの間に、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が、同一物標判定をする上で生じることが想定される誤差範囲を超えて大きくなったか否かを判定する。この誤差範囲は、レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であるか否かを判定する為に設けられた所定範囲よりも狭く設定される。これら二つの判定の内少なくとも一つの判定がレーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標ではない可能性を示す判定をした場合(同一物標であると判定されてから所定期間よりも長い期間、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が単調増加又は単調減少した場合、又は、同一物標であると判定されてから判定用時間が経過するまでの間に、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が誤差範囲を超えて大きくなった場合)に、検出ECU10はブレーキ装置31による自動制動の実行を指令しない。これにより、同一物標の判定に誤りが生じた場合に、ブレーキ装置31による自動制動を誤実行することを抑制することができる。
【0019】
本実施形態では、検出ECU10により後述する図3に記載の物体検出制御を実行する。図3に示す物体検出制御は、検出ECU10が電源オンしている期間中に検出ECU10によって所定周期で繰り返し実行される。
【0020】
まずステップS100にて、レーダ装置21及び撮像装置22に車両前方に存在する物標を検出させる。そして、ステップS110にて、レーダ装置21に検出させたレーダ検出物標と撮像装置22により検出させた画像検出物標とが同一物標であるか否かを検出ECU10が判定する。この同一物標判定は、上述の通り、レーダ検出物標位置と画像検出物標位置との物標間距離が所定範囲内に収まるか否かの判定に該当する。レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標でないと判定した場合には(S110:NO)、本制御を終了する。レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であると判定した場合には(S110:YES)、ステップS120に進む。
【0021】
ステップS120では、レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であると判定してから所定期間よりも長い期間、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が単調増加又は単調減少したか否かを判定する。レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であると判定してから所定期間よりも長い期間、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が単調増加又は単調減少した場合には(S120:YES)、本制御を終了する。例えば、図4下図に記載されるように、時間が経過するにつれ、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が負の方向に大きくなっている(単調減少)場合を想定する。この場合、それぞれの物標の速度に明確な差異があり、二つの物標が同一物標ではないことが示唆される。レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であると判定してから所定期間よりも長い期間、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が単調増加又は単調減少していない場合には(S120:NO)、ステップS130に進む。これは、例えば図4上図に記載されるように、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が多少の増減を繰り返しても、所定期間よりも長い期間、増加又は減少を継続しないのであれば、その増減は同一物標判定を行う上で生じると想定される誤差として認識されるためである。
【0022】
ステップS130では、レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であると判定してから判定用時間が経過するまでの間に、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が誤差範囲外となったか否かを判定する。レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であると判定してから判定用時間が経過するまでの間に、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が誤差範囲外となった場合には(S130:YES)、本制御を終了する。これは、物標間距離にフュージョン状態であると認められないほどに大きな差異が生じたことを意味する為である。レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であると判定してから判定用時間が経過するまでの間、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が誤差範囲内に収まっていた場合には(S130:NO)、ステップS140に進む。
【0023】
ステップS140では、自車両と同一物標との距離が第一所定距離よりも短くなったか否かを判定する。自車両と同一物標との距離が第一所定距離よりも長い場合には(S140:NO)、本制御を終了する。自車両と同一物標との距離が第一所定距離よりも短くなった場合には(S140:YES)、ステップS150に進み、ブレーキ装置31に自動制動を実行させ、本制御を終了する。
【0024】
自車両と同一物標との距離が第一所定距離よりも短い状態で、ステップS120又はステップS130において、レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標ではない可能性が高いと判定した(ステップS120又はステップS130のどちらか一方のステップでYESと判定した)場合には、ブレーキ装置31に自動制動の実行を指令することなく、本制御を終了する。また、ブレーキ装置31に自動制動を既に実行させている場合には、ブレーキ装置31による自動制動の実行を停止させる。
【0025】
上記構成により、本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0026】
・レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であると判定されても、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が所定期間よりも長い期間、単調増加又は単調減少した場合を想定する。この場合、自車両と同一物標との距離が第一所定距離よりも短くても、検出ECU10はブレーキ装置31による自動制動の実行を指令しない。これにより、同一物標の判定が誤っている場合には、ブレーキ装置31による自動制動の誤実行を抑制する事ができる。
【0027】
・同一物標判定から判定用時間が経過するまでの間に、レーダ検出物標と画像検出物標との物標間距離が誤差範囲を超えて大きくなった場合を想定する。この場合は、レーダ検出物標と画像検出物標とは同一物標ではない可能性が高いため、ブレーキ装置31による自動制動の実行を指令しない。これによっても、同一物標の判定が誤っている場合において、ブレーキ装置31による自動制動の誤実行を抑制する事ができる。
【0028】
上記実施形態を、以下のように変更して実行することもできる。
【0029】
上記実施形態では、レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標ではない可能性を示す判定をした場合に、検出ECU10はブレーキ装置31に自動制動の実行を指令しなかった。このことについて、ブレーキ装置31に自動制動の実行を指令しないことに限らず、例えば検出ECU10はブレーキ装置31に自動制動を実行する時期が遅れるように制御することとしてもよい。
【0030】
・上記実施形態では、自車両と同一物標との距離に応じて、物標との衝突を抑制するための手段(衝突抑制手段)を講じていた。具体的には、自車両と同一物標との距離が第一所定距離よりも短い場合に、検出ECU10がブレーキ装置31に自動制動を実行させていた。このことについて、衝突抑制手段はブレーキ装置31による自動制動制御だけに限らない。例えば、ブレーキ装置31の他に警報装置(報知部に該当)を設け、自車両前方に物体が接近していることをドライバに報知してもよい。この場合の物体検出制御の一例を説明する。
【0031】
図5は、図3のフローチャートの一部を変容したものである。すなわち、図3におけるステップS130と同一の処理であるステップS230と図3におけるステップS140と同一の処理であるステップS240との間にステップS232とステップS234とが追加される。ステップS232では、検出ECU10が自車両と同一物標との距離が第一所定距離よりも長く設定した第二所定距離よりも短いか否かを判定する。そして、自車両と同一物標との距離が第二所定距離よりも長いと判定した場合には(S232:NO)本制御を終了する。自車両と同一物標との距離が第二所定距離よりも短いと判定した場合には(S234:YES)、ステップS234に進み、ドライバに対して車両前方に存在する物標が自車両に接近していることを警告するための警報を警報装置に発令させる。そして、ステップS240に進む。
【0032】
それ以外のステップについて、図5の各ステップS200,210,220,及び250の処理は、それぞれ、図3の各ステップS100,110,120,及び150の処理と同一である。
【0033】
このように、ブレーキ装置32に自動制動を実行させる前に、警報装置により車両前方に物標が存在することをドライバに報知することで、ドライバに物標の存在を気づかせ、ドライバの意思による衝突回避動作を促すことが可能となる。ひいては、ブレーキ装置32による自動制動の実行頻度を少なくすることができる。
【0034】
・上記実施形態では、車両と同一物標との距離が第一所定距離よりも短くなった場合に、ブレーキ装置32による自動制動制御を実行させていた。このことについて、ブレーキ装置32による自動制動制御などの衝突抑制手段を本制御は必ずしも必要としない。この場合、レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標であると判定したにも関わらず、図3に記載のステップS120又はステップS130で、レーダ検出物標と画像検出物標とが同一物標ではない可能性が高いと判定した場合に、検出ECU10は同一物標判定を取り消す。これにより、画像物標とレーダ物標とが互いに異なるものであるにも関わらず、同一物標と誤判定する可能性を抑制する事ができる。なお、本別例における検出ECU10は、判定取消部に該当する。
【符号の説明】
【0035】
10…検出ECU、21…レーダ装置、22…撮像装置、100…物体検出装置。
図1
図2
図3
図4
図5