(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<1. 状態判定システム>
図1に示す状態判定システム1は、移動体としての四輪自動車に搭載されるシステムであり、その移動体の運転者の状態を判定するシステムである。また、ここで言う運転者の状態には、運転者が漫然と運転しているか否かを含む。さらに、「漫然と運転」とは、運転に対する集中力を欠いた状態であり、例えば、覚醒度が低い状態、疲労度が高い状態、ぼうっーとしている状態での運転である。
【0017】
状態判定システム1は、センサ群2と、計時装置7と、状態判定電子制御装置10と、報知装置20と、運転支援電子制御装置30と、ナビゲーション装置32とを備えている。なお、以下では、状態判定電子制御装置を状態判定ECUと称す。また、運転支援電子制御装置を運転支援ECUと称す。ここで言うECUとは、Electronic Control Unitの略である。
【0018】
センサ群2は、自車の挙動を検出する複数のセンサである。センサ群2には、ステア角センサ3と、車速センサ5とを含む。
ステア角センサ3は、自車が備えるステアリングの角度を計測する周知のセンサである。車速センサ5は、自車の各車輪の回転速度を計測する周知のセンサである。なお、本実施形態においては、車速センサ5にて計測した車輪の回転速度の平均値を自車の移動速度(即ち、車速)として計測すれば良い。
【0019】
計時装置7は、現在の時刻を計測する周知の装置である。
報知装置20は、状態判定ECU10からの制御信号に従って情報を報知する周知の装置である。この報知装置20には、例えば、情報を表示する表示装置、及び情報を音声にて出力する音声出力装置のうち、少なくとも一つを含む。本実施形態における表示装置には、例えば、ディスプレイ、警告灯を含む。
【0020】
また、運転支援ECU30は、自動車の走行安全性を向上させるように運転者を支援する運転支援機能を実現する電子制御装置である。ここで言う運転支援機能は、運転者による自車の運転を支援するように当該移動体の挙動を制御する機能である。この運転支援機能には、縦方向制御機能と、横方向制御機能とを含む。
【0021】
縦方向制御機能とは、移動体の全長方向に沿った移動体の動作を支援するように当該移動体の挙動を制御する機能である。この縦方向制御機能を実現する制御の具体例として、クルーズコントロールやアダプティブクルーズコントロールが考えられる。クルーズコントロールは、自車の車速を規定された目標速度に維持する周知の制御である。アダプティブクルーズコントロールは、先行車両と自車との車間距離を適切な間隔に維持する周知の制御である。
【0022】
また、横方向制御機能とは、移動体の幅方向に沿った移動体の動作を支援するように当該移動体の挙動を制御する機能である。この横方向制御機能を実現する制御の具体例として、レーンキーピングアシストが考えられる。レーンキーピングアシストは、自車が走行している走行路の車線形状を認識し、その走行路の車線から自車が逸脱しないようにステアリングを制御する周知の制御である。
【0023】
運転支援ECU30は、少なくともROM、RAM、CPUを備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。そして、運転支援ECU30には、図示しない車載制御装置や車載機器、周辺監視装置が接続されている。ここで言う車載制御装置には、少なくとも、ブレーキ制御装置と、エンジン制御装置と、ステアリング機構とを含む。ここで言う車載機器には、警報ブザー、モニター、クルーズコントロールスイッチ、目標車間設定スイッチ等を含む。
【0024】
すなわち、運転支援ECU30は、周辺監視装置からの物標情報や車線形状に基づいて、車載制御装置や車載機器を制御し運転支援機能を実現する。
さらに、本実施形態の運転支援ECU30は、状態判定ECU10に実行中信号を出力する。ここで言う実行中信号とは、運転支援機能を実現している場合には、運転支援機能を実現中である旨を表すと共に、その実現中の運転支援機能の内容を表す信号である。
【0025】
ナビゲーション装置32は、設定された目的地までの経路を案内する周知の装置である。このナビゲーション装置32は、位置検出器と、入力装置と、記憶装置と、ナビECUとを備えている。
【0026】
位置検出器は、自車の現在位置及び進行方向の方位の検出に必要な情報を検出する。入力装置は、情報の入力を受け付ける。
記憶装置は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置である。記憶装置には、道路の構造を表す地図データが格納されている。地図データには、ノードデータ、リンクデータ、コストデータ、地形データ、マークデータ、交差点データ、道路種別データ、施設データ等の各種データが含まれている。道路種別データは、道路の種別を表すデータである。
【0027】
ここで言う道路の種別とは、当該道路が漫然と運転されやすい相対的な度合いを示す指標である。例えば、漫然と運転されやすい相対的な度合いが高い道路として、高速道路が考えられる。ここで言う高速道路とは、自動車が高速度で走行する自動車の専用の道路である。
【0028】
また、漫然と運転されやすい相対的な度合いが低い道路として、一般道路が考えられる。ここで言う一般道路とは、自動車の他に、軽車両、歩行者などの交通のように供する、あらゆるものが通行する道路である。
【0029】
ナビECUは、ROM,RAM,CPUを備えた周知の電子制御装置である。このナビECUは、位置検出器で検出した情報に従って自車の現在位置(例えば、緯度,経度,高度)を特定する。そして、ナビECUは、特定した自車の現在位置に従って、設定された目的地までの経路を案内する。さらに、ナビECUは、自車の現在位置に対応する道路の種別を状態判定ECU10に出力する。
【0030】
なお、以下では、自車の現在位置に対応する道路、即ち、自車が現在存在する道路を、走行路と称す。
<2. 状態判定ECU>
状態判定ECU10は、少なくともROM12、RAM14、CPU16を備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。このうち、ROM12は、電源が切断されても記憶内容を保持する必要がある処理プログラムやデータを格納する。RAM14は、処理プログラムやデータを一時的に格納する。CPU16は、ROM12やRAM14に記憶された処理プログラムに従って各種処理を実行する。
【0031】
状態判定ECU10のROM12には、状態判定処理を状態判定ECU10が実行するための処理プログラムが格納されている。状態判定処理とは、センサ群2でのセンシング結果に基づく挙動情報を閾値領域の判定領域に照合した結果に従って、自車の運転者の状態、即ち、漫然と運転しているか否かを判定する処理である。
【0032】
また、状態判定ECU10のROM12には、閾値設定処理を状態判定ECU10が実行するための処理プログラムが格納されている。閾値設定処理とは、状態判定処理において挙動情報が照合される閾値領域の判定領域(以下、設定判定領域)を設定する処理である。
【0033】
さらに、状態判定ECU10のROM12には、状態判定処理にて用いる判定モデルが格納されている。
<3. 判定モデル>
判定モデルは、
図2に示すように、少なくとも一つの閾値領域80を有している。
【0034】
閾値領域80は、運転者が漫然と運転している状態での挙動情報の分布の範囲であり、実験などの結果に基づいて予め規定されている。本実施形態における閾値領域80は、横挙動情報と縦挙動情報との対応関係の分布の範囲を示すものである。
【0035】
この閾値領域80は、運転者に共通する特性の種類を表すクラスごとに、互いの閾値領域の少なくとも一部が非重複となるように規定されている。
なお、本実施形態においては、クラス数を3、即ち、判定モデルが、閾値領域を3つ有しているものとして説明する。
【0036】
さらに、閾値領域80のそれぞれは、少なくとも2段階の判定領域を有している。
この判定領域とは、漫然と運転されている度合いに応じて挙動情報が分布する領域のそれぞれである。本実施形態における判定領域は、それぞれ、横挙動情報と縦挙動情報との対応関係の分布の範囲を示すものである。
【0037】
ここで言う横挙動情報とは、車両の挙動を表す情報のうち、車両の幅方向の挙動を示す情報である。この横挙動情報の一例として、操舵角そのもの、操舵角の角速度、操舵角の角加速度、操舵角の躍度が考えられる。
【0038】
また、ここで言う縦挙動情報とは、車両の挙動を表す情報のうち、車両の全長方向の挙動を示す情報である。この縦挙動情報の一例として、自車の車速、自車の加速度、自車の躍度が考えられる。
【0039】
また、判定領域の段階は、第1レベル領域82から第Nレベル領域86まで用意されている。なお、ここで言うNは、2以上の整数であり、本実施形態においては、3である。
この第1レベル領域82とは、自車を定常走行させている期間に運転者が漫然と運転しているものと判定される可能性が最も低い領域である。この第1レベル領域82において挙動情報が分布する領域は、同一の閾値領域80に含まれる判定領域の中では最も狭い領域である。
【0040】
第2レベル領域84とは、自車を定常走行させている期間に運転者が漫然と運転しているものと判定される可能性が、第1レベル領域82よりも高い領域である。この第2レベル領域84において挙動情報が分布する領域は、第1レベル領域82における分布の領域を包含し、かつ、第1レベル領域82における分布の領域よりも広くなる。
【0041】
第Nレベル領域86とは、自車を定常走行させている期間に運転者が漫然と運転しているものと判定される可能性が最も高い領域である。この第Nレベル領域86において挙動情報が分布する領域は、第2レベル領域84における分布の領域を包含し、かつ、同一の閾値領域80に含まれる判定領域の中では最も広くなる。
<4. 状態判定処理>
次に、状態判定ECU10が実行する状態判定処理について説明する。
【0042】
この状態判定処理は、予め定められた起動指令が入力されると起動される。起動指令の入力とは、イグニッションスイッチがオンされることでも良い。
そして、状態判定処理が起動されると、状態判定ECU10は、
図3に示すように、まず、センサ群2でのセンシング結果を取得し、現在の時刻と対応付けて記憶する(S110)。続いて、状態判定ECU10は、S110で車速センサ5から取得した車輪の回転速度に基づいて自車が移動する速度である移動速度(即ち、車速)を算出する(S120)。
【0043】
状態判定処理では、状態判定ECU10は、S120で算出した移動速度が、予め規定された速度閾値以上であるか否かを判定する(S130)。このS130での判定の結果、移動速度が速度閾値未満であれば(S130:NO)、状態判定ECU10は、状態判定処理をS110へと戻す。一方、S130での判定の結果、移動速度が速度閾値以上であれば(S130:YES)、状態判定ECU10は、状態判定処理をS140へと移行させる。
【0044】
そのS140では、状態判定ECU10は、起動指令が入力されてからの経過時間、即ち、自車の運転が開始されてから経過した時間長である経過時間Tが、予め規定された時間長である規定時間以上であるか否かを判定する。なお、状態判定ECU10は、起動指令が入力された時刻から現在の時刻までの時間長を経過時間Tとして求めればよい。
【0045】
このS140での判定の結果、経過時間Tが規定時間未満であれば(S140:NO)、状態判定ECU10は、詳しくは後述するS190へと状態判定処理を移行させる。
一方、S140での判定の結果、経過時間Tが規定閾値以上であれば(S140:YES)、状態判定ECU10は、詳しくは後述する閾値設定処理で設定された設定判定領域を取得する(S150)。
【0046】
続いて、状態判定ECU10は、S110で取得し記憶されたセンシング結果に基づいて挙動情報を導出する(S160)。S160では、状態判定ECU10は、現時点から予め定められた所定時間前までの期間に記憶されたセンシング結果に基づいて、横挙動情報、縦挙動情報を導出する。S160で導出する横挙動情報は、操舵角の代表値、操舵角の角速度の代表値、操舵角の角加速度の代表値、操舵角の躍度の代表値などが考えられる。また、S160で導出する縦挙動情報は、自車の車速の代表値、自車の加速度の代表値、自車の躍度の代表値が考えられる。なお、代表値は、平均値であってもよいし、中央値であってもよいし、最頻値であってもよい。
【0047】
さらに、状態判定ECU10は、S160で導出した挙動情報(以下、現挙動情報)を取得する(S170)。そして、状態判定ECU10は、S170で取得した現挙動情報を、S150で取得した設定判定領域に照合する(S180)。
【0048】
このS180では、状態判定ECU10は、運転支援機能が作動中であれば、当該運転支援機能によって挙動が制御される移動体の方向に対応する横挙動情報と縦挙動情報とのいずれか一方が、設定判定領域に包含されているものとする。そして、状態判定ECU10は、横挙動情報と縦挙動情報とうち、設定判定領域に包含されているか否かが未確定である他方を設定判定領域に照合する。具体的には、状態判定ECU10は、縦方向制御機能が作動中であれば、縦挙動情報を設定判定領域に包含されているものとする。そして、横挙動情報を設定判定領域に照合した結果に基づいて、運転者が漫然と運転しているか否かを判定する。
【0049】
また、横方向制御機能が作動中であれば、状態判定ECU10は、横挙動情報を設定判定領域に包含されているものとする。そして、状態判定ECU10は、縦挙動情報を設定判定領域に照合した結果に基づいて、運転者が漫然と運転しているか否かを判定する。
【0050】
さらに、状態判定処理では、状態判定ECU10は、S180での照合の結果、現挙動情報が設定判定領域内であるか否かを判定する(S190)。このS190での判定の結果、現挙動情報が設定判定領域外であれば(S190:NO)、状態判定ECU10は、詳しくは後述するS230へと状態判定処理を移行させる。
【0051】
一方、S190での判定の結果、現挙動情報が設定判定領域内であれば(S190:YES)、状態判定ECU10は、状態判定処理をS200へと移行させる。
そのS200では、状態判定ECU10は、漫然運転であるものと判定して漫然運転フラグを立てる。漫然運転とは、自車が運転者によって漫然と運転されている状態である。
【0052】
続いて、状態判定ECU10は、漫然カウンタをインクリメントする(S210)。ここで言う漫然カウンタは、漫然運転であるものと判定された回数をカウントするカウンタである。なお、この漫然カウンタは、状態判定処理の起動時に初期化される。
【0053】
さらに、状態判定処理では、状態判定ECU10は、漫然運転である旨が報知されるように制御信号を報知装置20に出力する(S220)。制御信号が入力された報知装置20は、漫然運転である旨の警告を出力する。なお、報知装置20が報知する内容は、休息を取るように促す旨の提案であっても良いし、警告と提案とを組み合わせたものであっても良い。
【0054】
その後、状態判定ECU10は、状態判定処理をS110へと戻す。
一方、S190での判定の結果、現挙動情報が設定判定領域外である場合に移行するS230では、状態判定ECU10は、非漫然運転であるものと判定し、漫然フラグを倒す。非漫然運転とは、自車が運転者によって漫然と運転されていない状態である。
【0055】
その後、状態判定ECU10は、状態判定処理をS110へと戻す。
<5. 閾値設定処理>
次に、状態判定ECU10が実行する閾値設定処理について説明する。
【0056】
この閾値設定処理は、起動指令が入力されると起動される。
そして、閾値設定処理が起動されると、状態判定ECU10は、
図4に示すように、まず、第1レベル領域を設定判定領域として設定する(S310)。続いて、状態判定ECU10は、計時装置7にて計測した時刻に基づいて経過時間Tを算出し、その算出した経過時間Tを取得する(S320)。
【0057】
さらに、閾値設定処理では、状態判定ECU10は、ナビゲーション装置32からの、走行路の種別を取得する(S330)。続いて、状態判定ECU10は、S330で取得した走行路の種別が、漫然と運転しやすい道路の種別であれば、経過時間Tが早期に時間閾値T1に達するように対象を変更する(S340)。本実施形態における対象とは、経過時間Tである。具体的にS340では、状態判定ECU10は、漫然と運転しやすい道路の種別であるほど、大きな値のポイントを経過時間Tに加算し、経過時間Tを更新する。
【0058】
そして、閾値設定処理では、状態判定ECU10は、経過時間Tが時間閾値T1以上であるか否かを判定する(S350)。このS350での判定の結果、経過時間Tが時間閾値T1未満であれば(S350:NO)、状態判定ECU10は、閾値設定処理をS320へと戻す。
【0059】
一方、S350での判定の結果、経過時間Tが時間閾値T1以上であれば(S350:YES)、状態判定ECU10は、漫然時間が、予め規定された第1時間以下であるか否かを判定する(S360)。漫然時間とは、経過時間Tに対する漫然と運転されているものと判定された期間である。S360では、状態判定ECU10は、経過時間Tが時間閾値T1に達した時点で、当該経過時間Tの間に漫然と運転されているものと判定された期間を漫然時間として、規定閾値の一つである第1時間以下であるか否かを判定する。
【0060】
具体的には、状態判定ECU10は、S360へと移行した時点での漫然カウンタのカウント値が第1閾値以下であるか否かを判定する。第1閾値とは、第1時間に相当する判定の回数である。そして、状態判定ECU10は、漫然カウンタのカウント値が第1閾値以下であれば、漫然時間が第1閾値以下であるものと判定する。
【0061】
このS360での判定の結果、漫然時間が第1時間よりも大きければ(S360:NO)、状態判定ECU10は、設定判定領域が適切であるものとして、詳しくは後述するS380へと閾値設定処理を移行させる。一方、S360での判定の結果、漫然時間が第1時間以下であれば(S360:YES)、状態判定ECU10は、設定判定領域が不適切であるものとして、閾値設定処理をS370へと移行させる。
【0062】
そのS370では、状態判定ECU10は、状態判定処理において漫然と運転しているものと判定され易くなる判定領域へと設定判定領域を変更する。具体的に、本実施形態のS370では、状態判定ECU10は、設定判定領域を、第1レベル領域82から第2レベル領域84へと引き上げる。
【0063】
続くS380では、状態判定ECU10は、計時装置7にて計測した時刻に基づいて経過時間Tを算出し、その算出した経過時間Tを取得する。さらに、状態判定ECU10は、走行路の種別をナビゲーション装置32から取得する(S390)。
【0064】
続いて、状態判定ECU10は、S330で取得した走行路の種別が、漫然と運転しやすい道路の種別であれば、経過時間Tが早期に時間閾値T2に達するように対象を変更する(S400)。具体的にS400では、状態判定ECU10は、経過時間Tを対象とし、漫然と運転されやすい道路の種別であるほど、大きな値のポイントを経過時間Tに加算し、経過時間Tを更新する。
【0065】
そして、閾値設定処理では、状態判定ECU10は、経過時間Tが時間閾値T2以上であるか否かを判定する(S410)。なお、時間閾値T2は、時間閾値T1よりも長い時間長である。
【0066】
このS410での判定の結果、経過時間Tが時間閾値T2未満であれば(S410:NO)、状態判定ECU10は、閾値設定処理をS380へと戻す。
一方、S410での判定の結果、経過時間Tが時間閾値T2以上であれば(S410:YES)、状態判定ECU10は、漫然時間が第2時間以下であるか否かを判定する(S420)。このS420では、状態判定ECU10は、経過時間Tが時間閾値T2に達した時点で、当該経過時間Tの間に漫然と運転されているものと判定された期間を漫然時間として、規定閾値の一つである第2時間以下であるか否かを判定する。
【0067】
具体的には、状態判定ECU10は、S420へと移行した時点での漫然カウンタのカウント値が第2閾値以下であるか否かを判定する。第2閾値とは、第2時間に相当する判定の回数である。そして、状態判定ECU10は、漫然カウンタのカウント値が第2閾値以下であれば、漫然時間が第2時間以下であるものと判定する。
【0068】
このS420での判定の結果、漫然時間が第2閾値よりも大きければ(S420:NO)、状態判定ECU10は、設定判定領域が適切であるものとして、詳しくは後述するS440へと閾値設定処理を移行させる。
【0069】
一方、S420での判定の結果、漫然時間が第2閾値以下であれば(S420:YES)、状態判定ECU10は、設定判定領域が不適切であるものとして、閾値設定処理をS430へと移行させる。
【0070】
そのS430では、状態判定ECU10は、状態判定処理において漫然と運転しているものと判定され易くなる判定領域へと設定判定領域を変更する。具体的に、本実施形態のS430では、状態判定ECU10は、状態判定処理において漫然と運転しているものと判定しやすくなるように、設定判定領域を一段階引き上げる。
【0071】
なお、閾値設定処理においては、S380からS430までのステップを、N−2回繰り返してもよい。そして、繰り返した後、閾値設定処理をS440へと移行させてもよい。
【0072】
そのS440では、状態判定ECU10は、計時装置7にて計測した時刻に基づいて経過時間Tを算出し、その算出した経過時間Tを取得する。さらに、状態判定ECU10は、走行路の種別をナビゲーション装置32から取得する(S450)。
【0073】
続いて、状態判定ECU10は、S450で取得した走行路の種別が、漫然と運転しやすい道路の種別であれば、経過時間Tが早期に時間閾値T3に達するように対象を変更する(S460)。具体的にS460では、状態判定ECU10は、経過時間Tを対象とし、漫然と運転されやすい道路の種別であるほど、大きな値のポイントを経過時間Tに加算し、経過時間Tを更新する。
【0074】
そして、閾値設定処理では、状態判定ECU10は、経過時間Tが時間閾値TN以上であるか否かを判定する(S470)。なお、時間閾値TNとは、時間閾値T2よりも長い時間長である。
【0075】
このS470での判定の結果、経過時間Tが時間閾値TN未満であれば(S470:NO)、状態判定ECU10は、閾値設定処理をS440へと戻す。
一方、S470での判定の結果、経過時間Tが時間閾値TN以上であれば(S470:YES)、状態判定ECU10は、漫然時間が第N閾値以下であるか否かを判定する(S480)。このS480では、状態判定ECU10は、経過時間Tが時間閾値TNに達した時点で、当該経過時間Tの間に漫然と運転されているものと判定された期間を漫然時間として、規定閾値の一つである第N時間以下であるか否かを判定する。
【0076】
具体的には、状態判定ECU10は、S420へと移行した時点での漫然カウンタのカウント値が第N閾値以下であるか否かを判定する。第N閾値とは、第N時間に相当する判定の回数である。そして、状態判定ECU10は、漫然カウンタのカウント値が第N閾値以下であれば、漫然時間が第N時間以下であるものと判定する。
【0077】
このS480での判定の結果、漫然時間が第N閾値よりも大きければ(S480:NO)、状態判定ECU10は、閾値設定処理を終了する。
一方、S480での判定の結果、漫然時間が第N閾値以下であれば(S480:YES)、状態判定ECU10は、設定判定領域が不適切であるものとして、閾値設定処理をS490へと移行させる。
【0078】
そのS490では、状態判定ECU10は、状態判定処理において漫然と運転しているものと判定され易くなる判定領域へと設定判定領域を変更する。具体的に、本実施形態のS490では、状態判定ECU10は、状態判定処理において漫然と運転しているものと判定しやすくなるように、設定判定領域を一段階引き上げる。
【0079】
その後、状態判定ECU10は、閾値設定処理を終了する。
以上説明したように、閾値設定処理では、漫然時間が極端に短い場合、設定判定領域が、当該運転者に適合していないものと考えられる。このため、閾値設定処理においては、設定判定領域を、漫然と運転しているものと判定され易い判定領域へと変更する。
[6. 実施形態の効果]
(6.1) 閾値設定処理によれば、日々の体調の変化や体調の日内変動などによって運転者の体調状態などが変化したとしても、設定判定領域を、当該運転者の体調状態などに適合する適切なものとすることができる。また、閾値設定処理によれば、運転者間に個人差が存在していたとしても、設定判定領域を、運転者の各々に適合する最適なものとすることができる。
【0080】
(6.2) したがって、状態判定処理において、漫然と運転しているにもかかわらず、漫然運転でないものと誤判定することを低減できる。
換言すると、状態判定ECU10によれば、漫然運転であるか否かの判定精度を向上させることができる。
【0081】
(6.3) 一方、運転者の中には、安定した挙動で移動体を運転することができる人物も存在する。このような運転者が移動体を運転した場合、
図5(A)に示すように、経過時間Tに関わらず、縦挙動情報(例えば、車速)や横挙動情報(例えば、操舵角)のブレが小さくなる。
【0082】
そして、このような運転者が運転した場合、閾値設定処理では、設定判定領域が第1レベル領域に設定された段階から、漫然と運転されているか否かを精度良く判定できる。この場合、閾値設定処理では、設定判定領域を第1レベル領域に維持する。
【0083】
状態判定ECU10によれば、設定判定領域が第1レベル領域に維持されたとしても、
図5(B)に示すような運転者の主観評価における漫然運転の状況と、
図5(C)に示すような状態判定処理による漫然運転であるか否かの評価とを近似させることができる。これにより、状態判定ECU10によれば、運転者の違和感が小さい評価結果を提供できる。
【0084】
(6.4) ところで、上記実施形態における判定モデルでは、閾値領域80は、運転者に共通する特性を表すクラスごとに予め規定されており、互いの閾値領域80の少なくとも一部が非重複となるように規定されている。
【0085】
したがって、状態判定ECU10によれば、運転者が漫然と運転しているか否かの判定が、現挙動情報を運転者の特性に応じた閾値領域80に照合した結果で実施される。
これにより、状態判定ECU10によれば、運転者の個人差による誤判定を低減でき、漫然運転であるか否かの判定精度をより向上させることができる。
【0086】
(6.5) なお、漫然と運転されやすい道路を移動体が走行している場合、移動体の安全な運行を実現するためには、設定判定領域が適切であるか否かの判定を早期に実行することが好ましい。
【0087】
このため、閾値設定処理においては、走行路の種別が、漫然と運転しやすい道路の種別であれば、経過時間Tが早期に時間閾値となるように対象を補正している。
これにより、閾値設定処理においては、設定判定領域が適切であるか否かの判定を早期に実行することができ、設定判定領域の変更を早期に実現できる。
【0088】
(6.6) また、運転支援ECU30が搭載された四輪自動車において、運転支援機能が作動中である場合、自動車の幅方向及び自動車の全長方向のいずれか一方への挙動は、運転支援機能によって制御されている。このため、運転者の状態を判定するための指標として、運転支援機能によって制御されている方向の挙動に基づく情報を用いることは不適切である。
【0089】
これに対し、状態判定処理では、運転支援機能によって挙動が制御される自動車の方向に対応する横挙動情報と縦挙動情報とのいずれか一方が、設定判定領域に包含されているものとしている。そして、状態判定処理では、横挙動情報と縦挙動情報との他方を設定判定領域に照合した結果に基づいて、運転者が漫然と運転しているか否かを判定している。
【0090】
この結果、状態判定処理によれば、運転支援機能が作動中であっても、運転者が漫然と運転しているか否かを判定することができる。
[7. その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0091】
(7.1) S340,S400,S460にて状態判定ECU10が変更する対象は、経過時間Tに限るものではなく、時間閾値であってもよい。この場合、状態判定ECU10は、漫然と運転しやすい道路の種別であるほど、大きな値のポイントを時間閾値から減算し、時間閾値を更新すればよい。
【0092】
(7.2) 上記実施形態においては、判定モデルを互いの閾値領域の少なくとも一部が非重複となるように規定されているが、判定モデルは、
図6に示すように、閾値領域のそれぞれにおいて、挙動情報が分布する範囲が互いに非重複であってもよい。
【0093】
(7.3) 上記実施形態の閾値設定処理のS320,S380,S440においては、経過時間Tの起算時刻を、起動指令が入力された時刻としていたが、経過時間Tの起算時刻は、これに限るものではない。例えば、経過時間Tの起算時刻は、移動体の移動速度が、予め規定された速度閾値以上となったタイミングであってもよい。この場合、移動体の移動速度が、継続して、予め規定された速度閾値以上である期間を、経過時間Tとして求めて取得してもよい。
【0094】
(7.4) 上記実施形態においては、移動体として四輪自動車を想定していたが、移動体は、これに限るものではなく、二輪自動車であってもよいし、軽車両であってもよい。
【0095】
(7.5) 上記実施形態における状態判定ECU10が実行する機能の一部または全部は、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成されていてもよい。
(7.6) 上記実施形態においては、ROM12にプログラムが格納されていたが、プログラムを格納する記憶媒体は、これに限るものではなく、半導体メモリなどの非遷移的実体的記憶媒体に格納されていてもよい。
【0096】
(7.7)また、状態判定ECU10は非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行してもよい。このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実現される。
【0097】
(7.8)また、本発明は、前述した状態判定ECU10によって実現される状態判定装置の他、状態判定システム、運転者の状態を判定するためにコンピュータが実行するプログラム、運転者の状態を判定する方法等、種々の形態で実現することができる。
【0098】
(7.9)なお、上記実施形態の構成の一部を省略した態様も本発明の実施形態である。また、上記実施形態と変形例とを適宜組み合わせて構成される態様も本発明の実施形態である。また、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される発明の本質を逸脱しない限度において考え得るあらゆる態様も本発明の実施形態である。
【0099】
(7.10)「特許請求の範囲」及び「課題を解決するための手段」の欄に記載した括弧内の符号は、一つの態様として実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
[8. 対応関係の一例]
状態判定処理のS160〜S170を実行することで得られる機能が挙動取得部に相当する。S180を実行することで得られる機能が照合部に相当する。状態判定処理のS190,S200を実行することで得られる機能が判定部に相当する。
【0100】
閾値設定処理のS320〜S340,S380〜S400,S440〜S460を実行することで得られる機能が時間取得部に相当する。S350〜S370,S410〜S430,S470〜S490を実行することで得られる機能が変更部に相当する。
【0101】
また、閾値設定処理のS330,S390,S450を実行することで得られる機能が種別取得部に相当する。S340,S400,S460を実行することで得られる機能が対象変更部に相当する。