(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着剤を付与した後、前記強化基材を予備成形する前に、前記接着剤が付与された前記強化基材を積層して積層体を形成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る複合材料400の製造装置100および製造方法の全体の流れを説明するための図である。
図2および
図3は、本発明の実施形態に係るプリフォーム500を成形する予備成形装置200を説明するための図である。
図4は、本発明の実施形態に係るプリフォーム500を用いて複合材料400を成形する成形装置300の概略図である。
図5は、強化基材510における接着剤520の含有密度分布を示す図である。
図6は、切断部240によって切断される強化基材510の切断線L付近の接着剤520の付与幅Wを説明するための図である。
図7は、本発明の実施形態に係るプリフォーム500の成形方法を示すフローチャートである。
図8は、本発明の実施形態に係る複合材料400の成形方法を示すフローチャートである。
図9は、本発明の実施形態に係る複合材料400を使用した自動車部品701〜703および車体700を示す斜視図である。なお、
図2および
図3(A)中の矢印は、搬送部210による強化基材510の搬送方向(下流工程へ向かう方向)を示している。また、
図3(B)中の矢印は、強化基材510を予備成形する際の成形方向を示している。
【0014】
以下、各図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0015】
(プリフォーム)
本実施形態に係るプリフォーム500は、強化基材510に接着剤520を含浸させて形成される。
【0016】
強化基材510は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維等によって形成することができる。本実施形態では、強化基材510として炭素繊維を使用した例を説明する。炭素繊維510は、熱膨張係数が小さく、寸法安定性に優れ、高温下においても機械的特性の低下が少ないという特徴があるため、自動車の車体700等の複合材料400の強化基材として好適に使用することができる。炭素繊維510は、例えば、繊維が一方向に引き揃えられたUD(一方向)材や繊維が一方向に引き揃えられた複数のシートをそれぞれ異なる方向に重ねて補助繊維で一体化したいわゆるNCF(ノンクリンプファブリック)材等のシート状の炭素繊維510を使用することができる。積層構成は、成形品である複合材料400に求められる材料特性によるが、一般的に複数の配向角度を備えるように積層する。本実施形態では、繊維配向が±45°方向のNCF材、90°方向のUD材、0°方向のUD材の3種類を積層する積層構成とする。
【0017】
接着剤520は、炭素繊維510に付与されて、炭素繊維510同士を接着する。これにより、炭素繊維510をシート状の形態に安定して維持させることができ、炭素繊維510の配置のばらつきを抑制することができる。また、炭素繊維510の積層体510b(
図3(B)を参照)を所望の形状に賦形した際に、その形態を保持する役割を果たす。
【0018】
接着剤520を構成する材料は、材質は特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ナイロン樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱可塑性樹脂、また、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。本実施形態では、後述する複合材料400に使用する樹脂と同じ熱硬化性樹脂であり、溶融粘度が低いため流動性が高く、耐熱性、耐湿性に優れる低分子量エポキシ樹脂を使用する。
【0019】
炭素繊維510は、
図5(A)に示すように、接着剤520を付与する第1の領域511と、第1の領域511よりも接着剤520の含有密度が低くなるように接着剤520を付与した第2の領域512とを備える。なお、本明細書中において「接着剤520の含有密度が低い」とは、接着剤520を付与しない場合、つまり含有密度が0(ゼロ)の場合も含む。
【0020】
また、予備成形する際に、第1の領域511における曲率は第2の領域512よりも大きくなるように成形する。接着剤520の含有密度が低い第2の領域512は、第1の領域511に比べて炭素繊維510間にかかる接着力が弱いため、変形が比較的容易である。よって、プリフォーム500の成形時に、特に曲率の大きい部分に生じるしわやよれの発生を抑制することができる。
【0021】
(複合材料)
本実施形態に係る複合材料400は、炭素繊維510が予め所定の形状に予備成形されたプリフォーム500に樹脂600を含浸させて硬化させることによって製造される。
【0022】
複合材料400は、炭素繊維510と樹脂600が組み合わせられることにより、樹脂600単体で構成される成形品に比べて高い強度および剛性を備えたものとなる。また、
図9に示すような自動車の車体700(
図9(B)を参照)に使用されるフロントサイドメンバー701やピラー702等の骨格部品、ルーフ703等の外板部品に複合材料400を適用することによって、鉄鋼材料からなる部品を組み付けて構成した車体と比べて、車体700の軽量化を図ることができる。
【0023】
本実施形態に係る複合材料400は、プリフォーム500に樹脂600を含浸させることによって形成される。また、本実施形態では、剛性向上のために複合材料400の内部に、
図3(B)に示すようなコア材530が挿入されている。
【0024】
樹脂600は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂、フェノール樹脂等が用いられる。本実施形態においては、機械的特性、寸法安定性に優れたエポキシ樹脂を用いる。エポキシ樹脂は2液タイプが主流であり、主剤および硬化剤を混合して使用する。主剤はビスフェノールA型のエポキシ樹脂、硬化剤はアミン系のものが一般的に用いられるが、特にこれに限定されるものではなく、所望の材料特性に合わせて適宜選択できる。また、樹脂600には、複合材料400を成形した後の脱型を容易に行い得るように、内部離型剤を含ませている。内部離型剤の種類は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0025】
コア材530は、炭素繊維510に被覆された状態で、炭素繊維510に樹脂600を含浸させることによって複合材料400の内部に形成される。コア材530を構成する材料は、特に限定されないが、軽量化の観点から発泡体(フォームコア)が好ましく用いられる。例えばポリウレタン、塩化ビニル、ポリオレフィン、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂(PMI(ポリメタクリルイミド)、PEI(ポリエーテルイミド))などからなる発泡体が適宜使用される。
【0026】
(製造装置)
図1〜4を参照して、複合材料400の製造装置100について説明する。本実施形態に係る複合材料400の製造装置100は、大きく分けて、
図1の上段および中段に示すプリフォーム500を成形する予備成形装置200と、
図1の下段に示すプリフォーム500を用いて複合材料400を成形する成形装置300と、から構成される。また、複合材料400の製造装置100は、製造装置100全体の動作を制御する制御部110を有する。
【0027】
まず、プリフォーム500を成形する予備成形装置200について説明する。
【0028】
予備成形装置200は、概説すると、
図1の上段に示すように、炭素繊維510を連続的に搬送する搬送部210と、炭素繊維510に接着剤520を付与する付与部220と、接着剤520が付与された炭素繊維510を加熱するヒータ230と、炭素繊維510を切断する切断部240と、炭素繊維510を予備成形する予備成形型260と、を有する。
【0029】
搬送部210は、
図1の上段に示すように、炭素繊維510が巻回されてなる基材ロール510aから供給された炭素繊維510を連続的に下流工程である付与部220、ヒータ230および切断部240へ搬送する。搬送部210は、ベルトコンベアによって構成されている。付与部220、ヒータ230、および切断部240は、ベルトコンベアの搬送経路に合わせて設けられ、連続して作業が行えるように構成されている。
【0030】
付与部220は、
図2(A)に示すように、搬送部210の平面方向に移動可能に構成され、搬送部210の上流から搬送された炭素繊維510に接着剤520を付与する。接着剤520の付与量は、使用する接着剤520の種類、物性によるが、例えば、10〜100g/m
3とすることができる。付与部220は、例えば、粉末状(固形)の接着剤520を使用してスクリーン印刷方式、液状の接着剤520を使用してインクジェット方式、接着剤520を不織布に加工して炭素繊維510の上に積層する方式等によって構成することができる。本実施形態においては、量産性が高く、付与精度の高いインクジェット方式を使用する。インクジェット方式は、接着剤520を微滴化し、炭素繊維510に対して直接に吹き付ける方式であり、付与する部位によって接着剤520の付与量を調整することができる。
【0031】
付与部220は、炭素繊維510上に接着剤520の含有密度が比較的高い部分である第1の領域511と、第1の領域511よりも接着剤520の含有密度が比較的低い部分である第2の領域512と、を形成するように接着剤520を付与する。本実施形態においては、
図5(A)に示すように、第1の領域511中において、接着剤520の含有密度の高い部分(
図5(A)中の色の濃い部分)と低い部分(
図5(A)中の色の薄い部分)を有する含有密度分布が存在する。同様に、第2の領域512中においても含有密度分布が存在する。このように、含有密度分布が3以上の段階をもって形成される場合は、後述する切断部240によって切断する切断線L周りを、接着剤520の含有密度が最も高い部分に設定することが好ましい。また、
図5(B)に示すように、予備成形型260によって成形する立体形状の曲率が大きい部分(破線で囲まれた部分)を、接着剤520の含有密度が比較的低い部分である第2の領域512となるように接着剤520を付与する。
【0032】
ヒータ230は、
図2(B)に示すように、付与部220によって接着剤520を付与した炭素繊維510を加熱する。加熱温度は、使用する接着剤520の溶融温度によるが、例えば、70℃〜150℃とする。これによって、接着剤520を軟化または溶融させ、炭素繊維510に含浸させることができる。接着剤520を含浸させた結果、炭素繊維510の単位面積あたりの接着剤520の含有量、すなわち、含有密度が定まる。ヒータ230は、特に限定されないが、瞬間的かつ均等に炭素繊維510を加熱可能なものから構成されていることが好ましく、例えば、連続炉または高周波コイル、遠赤外線ヒータ、熱風器などの加熱ヒータを使用することができる。
【0033】
切断部240は、
図3(A)に示すように、接着剤520が含浸された炭素繊維510を予め決められた切断線Lに沿って切断する。切断部240は、例えば、超音波カット、レーザーカット、丸鋸カット、プレスカット、はさみカットなど様々な切断機構を使用することができる。本実施形態においては、比較的短時間によって正確に切断することができる超音波カットを使用する。また、上述したように切断線L周りは、第1の領域511の中で接着剤520の含有密度が比較的高い部分に設定してある。これにより、切断時や切断後に次工程に搬送する際に切断面のほつれを大幅に低減することができる。切断面にほつれが生じると、複合材料400の成形後に端部を除去するため、プリフォーム500を予め大きく形成しておく必要がある。切断面のほつれを抑制することによって、複合材料400の端部を除去する後加工を削減でき、さらに炭素繊維510の歩留りを向上させることができる。
【0034】
予備成形型260は、炭素繊維510を定められた立体形状に予備成形する。
図1の中段に示すように、プリフォーム500の対象となる炭素繊維510が配置される下型261と、下型261に対して接近離反移動自在な上型262と、を有している。上型262の下型261に対向する面には、炭素繊維510のプリフォーム500の形状に合致する形状に応じた成形面が形成されている。炭素繊維510を下型261に配置した状態で上型262を下型261に接近移動させて、炭素繊維510に対して加圧力を付与することによって、炭素繊維510をプリフォーム500に成形することが可能となっている。
【0035】
本実施形態のように、コア材530を挿入して閉断面を形成する複合材料400の場合、
図5(B)に示すような曲率の大きい角部を有することが多い。当該角部を予備成形する際に、内側の炭素繊維510と外側の炭素繊維510とで変形量が大きく異なる。したがって、曲率の少ない平面部に比べて炭素繊維510の層間のずれが大きいにも拘らず、層間が接着剤520によって接着されていると接着剤520の接着力によって炭素繊維510同士が拘束されているため変形が制限されてしてしまう。炭素繊維510の変形が制限されている状態で予備成形を行うと、成形後のプリフォーム500の曲率の大きい部分にしわやよれが生じてしまう。
【0036】
上述したように、本実施形態では予備成形する立体形状の曲率が大きく、成形時の変形量が大きい部分を、接着剤520の含有密度が比較的低い部分である第2の領域512としている。これにより、炭素繊維510の層間において接着剤520による接着力が比較的弱いため、第2の領域512において容易に変形可能となる。よって、曲率の大きい部分において、プリフォーム500のしわやよれの発生を抑制することができる。これにより、プリフォーム500の形状の自由度が高まり、複合材料400の形状選択の幅を広げることができる。
【0037】
次に、プリフォーム500を用いて複合材料400を成形する成形装置300について説明する。
【0038】
図4を参照して、本実施形態に係る成形装置300は、概説すると、プリフォーム500が配置されるキャビティ350を形成する開閉自在な成形型310と、成形型310に型締圧力を負荷するプレス部320と、キャビティ350内に溶融した樹脂600を注入する樹脂注入部330と、成形型310の温度を調整する成形型温度調整部340と、を有する。
【0039】
成形型310は、開閉可能な一対の上型311(雄型)と、下型312(雌型)と、を有する。上型311と下型312の間に、密閉自在なキャビティ350を形成する。プリフォーム500は、キャビティ350内に配置する。
【0040】
成形型310は、キャビティ350内に樹脂600を注入する注入口313をさらに有する。注入口313は、キャビティ350および樹脂注入部330に連通する。樹脂600は、プリフォーム500の表面から内部に含浸する。なお、下型312に、キャビティ350内を真空引きして空気を吸引する吸引口を設けてもよい。また、キャビティ350内を密閉状態にするために、上型311と下型312の合わせ面にシール部材等を設けてもよい。
【0041】
プレス部320は、例えば、油圧等の流体圧を用いたシリンダー321を備え、油圧等を制御することによって型締圧力を調整自在なプレス機により構成することができる。
【0042】
樹脂注入部330は、主剤タンク331から供給される主剤と、硬化剤タンク332から供給される硬化剤とを循環させつつ、成形型310へ供給可能な公知の循環式のポンプ機構により構成することができる。樹脂注入部330は、注入口313に連通してキャビティ350内に樹脂600を注入する。
【0043】
成形型温度調整部340は、成形型310を樹脂600の硬化温度まで加熱して、キャビティ350内に注入された樹脂600を硬化させる。成形型温度調整部340には、加熱を行うための装置として、例えば、成形型310を直接的に加熱する電気ヒータや、油などの熱媒体を循環させることによって温度調整を行う温度調整機構等を備えさせることができる。
【0044】
制御部110は、製造装置100全体の動作を制御する。具体的には、
図4を参照して、制御部110は、記憶部111と、演算部112と、各種データや制御指令の送受信を行う入出力部113と、を有する。入出力部113は、付与部220、ヒータ230、切断部240、予備成形型260、プレス部320、樹脂注入部330、成形型温度調整部340、に電気的に接続している。
【0045】
記憶部111は、ROMやRAMから構成し、接着剤520の付与量の分布および付与形状等のデータを記憶する。演算部112は、CPUを主体に構成され、入出力部113を介して搬送部210による炭素繊維510の送り速度等のデータを受信する。演算部112は、記憶部111から読み出したデータおよび入出力部113から受信したデータに基づいて、接着剤520の付与のタイミングや付与量、成形型温度調整部340による成形型310の加熱温度等を算出する。算出したデータに基づく制御信号は、入出力部113を介して付与部220、ヒータ230、切断部240、予備成形型260、プレス部320、樹脂注入部330、成形型温度調整部340へ送信する。このようにして、制御部110は、接着剤520の付与量および付与位置、予備成形型260の作動、成形型310の型締圧力、樹脂600の注入量、成形型310の温度等を制御する。
【0046】
(製造方法)
次に、実施形態に係る複合材料400の製造方法を説明する。
【0047】
複合材料400の製造方法は、
図7に示すプリフォーム500を成形する工程および
図8に示すプリフォーム500を用いて複合材料400を成形する工程の大きく分けて2つの工程から構成される。
【0048】
まず、プリフォーム500を成形する工程について説明する。
【0049】
プリフォーム500を成形する工程は、
図7に示すように、炭素繊維510素材を供給する供給工程(ステップS11)と、炭素繊維510に接着剤520を付与する付与工程(ステップS12)と、炭素繊維510を加熱する加熱工程(ステップS13)と、炭素繊維510を切断する切断工程(ステップS14)と、積層体510bを形成する積層工程(ステップS15)と、積層体510bを搬送する搬送工程(ステップS16)と、炭素繊維510を予備成形してプリフォーム500を形成する予備成形工程(ステップS17)と、成形したプリフォーム500を予備成形型260から脱型する工程(ステップS18)と、を有する。
【0051】
まず、ステップS11として、
図1の上段に示すように、炭素繊維510が巻回されてなる基材ロール510aから炭素繊維510を引き出し、連続的に炭素繊維510を搬送部210に供給する。
【0052】
次に、ステップS12として、
図2(A)に示すように、搬送部210によって連続的に送り出される炭素繊維510に対して、付与部220によって接着剤520を付与する。この際、予め定めた含有密度分布に応じて、付与する量を調整する。すなわち、
図5(A)に示すように、接着剤520の含有密度が比較的高い部分である第1の領域511と、第1の領域511よりも接着剤520の含有密度が低い部分である第2の領域512と、を形成するように接着剤520を付与する。
【0053】
具体的には、第1の領域511は、
図5(A)に示すように、切断工程において切断する切断線L周り、および予備成形工程において成形時の変形量が比較的小さい部分に設定される。特に切断線L周りは、第1の領域511の中でも接着剤520の含有密度が比較的高くなるように接着剤520を付与する。
図6に示すように、切断線L周りは、切断線Lに対して所定の付与幅Wを設けて帯状に接着剤520を付与する。接着剤520の付与幅Wは、予め定められた切断線Lの公差によるが、例えば、1〜20mmとすることができる。これにより、切断による切断面のほつれを大幅に低減することができ、切断する部位が切断線Lからずれても接着剤520の含有密度が高いため、ほつれを抑制することができる。また、第2の領域512は、予備成形工程において成形時の変形が比較的大きく、成形後の曲率が大きい部分に設定される。
【0054】
次に、ステップS13として、
図2(B)に示すように、炭素繊維510をヒータ230によって加熱し、付与した接着剤520を軟化または溶融させ、炭素繊維510の層間に接着剤520を含浸させる。
【0055】
次に、ステップS14として、
図3(A)に示すように、接着剤520が溶融した状態で炭素繊維510を切断線Lに沿って切断する。切断線Lは、成形品である複合材料400の展開形状を予め設定し、当該展開形状に応じて決定する。
【0056】
次に、ステップS15として、
図1の中段の積層工程に示すように、搬送ロボット250によって切断した炭素繊維510を所定枚数積層する。本実施形態においては、積層配向の異なる炭素繊維510を積層して、所定の積層構成とする。具体的には、繊維配向が±45°方向のNCF材、90°方向のUD材、0°方向のUD材の3種類を用いる。このため、供給工程、付与工程、加熱工程、および切断工程はそれぞれ異なる製造ラインのレーンにおいて行い、各配向角度別に切断された炭素繊維510を、所定の配向順序によって積層し積層体510bを形成する。
【0057】
次に、ステップS16として、
図3(B)に示すように、積層体510bを予備成形型260の下型261まで搬送して配置する。このとき、接着剤520によって炭素繊維510の層間が接着されているので搬送時の炭素繊維510のばらつきを抑制することができる。搬送中の温度は、例えば、50〜70℃まで炭素繊維510の温度が低下するように管理することが好ましい。このように管理することによって、炭素繊維510を予備成形型260まで搬送したときに、接着剤520を半硬化状態または硬化状態とすることができる。これにより、予備成形時に接着剤520を短時間によって硬化させることができるため、予備成形にかかる時間を短縮することができる。
【0058】
次に、ステップS17として、
図3(B)に示すように、予備成形型260の下型261に配置された炭素繊維510の積層体510bを予備成形してプリフォーム500を成形する。この際、炭素繊維510によって被覆されるようにコア材530を配置する。上型262は、
図1の中段の予備成形工程に示すように、複数の分割された型によって構成してもよいし、分割されていない1つの型からなる上型を使用してもよい。予備成形型260は、例えば、20〜40℃に冷却しておくことが好ましい。これにより、型閉じと同時に接着剤520の冷却が行われ、接着剤520が硬化して予備成形が完了する。
【0059】
次に、ステップS18として、予備成形型260を開いて、プリフォーム500を脱型すると、プリフォーム500の成形が完了する。
図5(B)に示すように、成形されたプリフォーム500の形状において、曲率の少ない平面部は、接着剤520の含有密度が比較的高い部分である第1の領域511であり、曲率が大きい部分(破線で囲まれた部分)は、接着剤520の含有密度が比較的低い部分である第2の領域512である。
【0060】
次に、プリフォーム500を用いて複合材料400を成形する工程について説明する。
【0061】
複合材料400を成形する工程は、
図8に示すように、プリフォーム500を成形型310のキャビティ350に配置する工程(ステップS21)と、キャビティ350内に樹脂600を注入する工程(ステップS22)と、樹脂600を硬化させる工程(ステップS23)と、成形した複合材料400を成形型310から脱型する工程(ステップS24)と、を有する。
【0063】
まず、ステップS21として、プリフォーム500を成形型310のキャビティ350に配置する(
図4を参照)。
【0064】
次に、ステップS22として、キャビティ350内に樹脂600を注入する。成形型310は、樹脂600(例えば、エポキシ樹脂)の硬化温度以上(例えば、100℃〜160℃程度)に予熱しておく。
【0065】
次に、ステップS23として、炭素繊維510に含浸した樹脂600を硬化させる。
【0066】
次に、ステップS24として、樹脂600が硬化した後、成形型310を開いて、炭素繊維510、樹脂600およびコア材530が一体化された複合材料400を脱型すると、成形が完了する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る複合材料400の製造方法および製造装置100によれば、炭素繊維510の第1の領域511よりも第2の領域512の接着剤520の含有密度が低くなるように接着剤520を付与し、第1の領域511よりも第2の領域512の曲率が大きい立体形状に炭素繊維510を予備成形する。
【0068】
このように構成した複合材料400の製造方法および製造装置100によれば、曲率の大きい部分が接着剤520の含有密度が比較的低い第2の領域512に設定されているため、炭素繊維510の層間において接着剤520による接着力が比較的弱い。このため、炭素繊維510が第2の領域512において容易に変形可能となる。曲率の大きい部分において、プリフォーム500のしわやよれの発生を抑制することができるため、プリフォーム500の形状の自由度を高めることができる。これにより、接着剤520によって強化繊維の配置のばらつきを抑制しつつ、複合材料400の形状選択の幅を広げることができる。
【0069】
また、予備成形する前に、接着剤520が付与された炭素繊維510を加熱する。これにより、接着剤520を炭素繊維510に含浸させることができる。
【0070】
また、接着剤520が付与された炭素繊維510を切断線Lに沿って切断する。さらに、第1の領域511は、当該切断線Lを含む。これにより、切断する部位における接着剤520の含浸密度が比較的高いため、切断する際に炭素繊維510のほつれを抑制することができる。
【0071】
また、付与工程と予備成形工程との間に、接着剤520が付与された炭素繊維510を積層して積層体510bを形成する積層工程をさらに有する。これにより、接着剤520によって炭素繊維510を接着した状態で予備成形工程へ搬送することができるので炭素繊維510の配置のばらつきを抑制することができる。
【0072】
また、接着剤520は、熱によって軟化する材料によって形成される。これにより、熱を加えることによって炭素繊維510に容易に含浸させることができる。
【0073】
本実施形態に係るプリフォーム500によれば、炭素繊維510は、第1の領域511と、第1の領域511よりも接着剤520の含有密度が低い第2の領域512とを備え、第1の領域511における曲率は第2の領域512よりも大きい。これにより、曲率の大きい部分において、プリフォーム500のしわやよれの発生を抑制することができるため、プリフォーム500の形状の自由度を高めることができる。
【0074】
本実施形態に係る複合材料400によれば、炭素繊維510は、第1の領域511と、第1の領域511よりも接着剤520の含有密度が低い第2の領域512とを備え、第1の領域511における曲率は第2の領域512よりも大きい。これにより、曲率の大きい部分において、プリフォーム500のしわやよれの発生を抑制することができるため、プリフォーム500の形状の自由度を高めることができる。このため、複合材料400の形状選択の幅を広げることができる。
【0075】
以上、実施形態を通じて複合材料の製造方法、製造装置、および複合材料を説明したが、本発明は実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0076】
例えば、加熱工程は、切断工程の前に行うとしたが、切断工程または積層工程の後に行ってもよい。
【0077】
また、強化基材は複数積層して積層体を形成するとしたが、1枚の強化基材によって複合材料を形成してもよい。