特許第6432695号(P6432695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6432695ヒータ装置、およびヒータ装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432695
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】ヒータ装置、およびヒータ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20181126BHJP
   H01H 13/708 20060101ALN20181126BHJP
【FI】
   H05B3/00 365A
   !H01H13/708 101
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-554977(P2017-554977)
(86)(22)【出願日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】JP2016082796
(87)【国際公開番号】WO2017098842
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2017年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-240494(P2015-240494)
(32)【優先日】2015年12月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 公威
(72)【発明者】
【氏名】加古 英章
(72)【発明者】
【氏名】生出 裕康
(72)【発明者】
【氏名】関 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏司
(72)【発明者】
【氏名】多田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 正晃
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−146844(JP,A)
【文献】 特表2003−533311(JP,A)
【文献】 特開平10−097818(JP,A)
【文献】 特開平02−234379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 1/00− 3/00
H01H 13/00−13/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱するシート状の発熱部(11)と、前記発熱部が一面側に設けられた第1絶縁層(12)と、前記発熱部の前記第1絶縁層側と反対面側に形成された第1電極(31、31a、31b)と、を有する第1シート部材(10)と、
前記第1絶縁層の前記一面と対向配置された第2絶縁層(21)と、前記第2絶縁層の前記第1電極と対向する位置に形成された第2電極(32)と、を有する第2シート部材(20)と、を備えたヒータ装置であって、
前記第1シート部材における前記第1電極が形成された部分および前記第2シート部材における前記第2電極が形成された部分の少なくとも一方は、前記第1シート部材および前記第2シート部材の対向する面に対して反対面側に向かって凸となるドーム状をなすドーム部(10a、20a)として構成されているヒータ装置。
【請求項2】
前記ドーム部は、前記第1シート部材における前記第1電極が形成された部分および前記第2シート部材における前記第2電極が形成された部分の両方に構成されている請求項1に記載のヒータ装置。
【請求項3】
前記第1電極と前記第2電極が導通状態であるか否かに基づいて前記第1シート部材への物体の接触または非接触を検知する接触検知部(53)を備えた請求項1または2に記載のヒータ装置。
【請求項4】
前記第1シート部材に形成された前記第1電極および前記第2シート部材に形成された前記第2電極は、4ミリメートル以上の隙間がないよう前記発熱部の全体にわたって配置されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載のヒータ装置。
【請求項5】
前記第1シート部材および前記第2シート部材は、対向するよう配置された前記第1電極および前記第2電極が形成された部分の周囲の領域で互いに固着されている請求項1ないし4のいずれか1つに記載のヒータ装置。
【請求項6】
前記第1シート部材における前記第1電極が形成された部分は、前記ドーム部として構成されており、
前記第1電極は、前記第1絶縁層より線膨張係数の大きな導電性ペーストを用いて形成されている請求項1ないし5のいずれか1つに記載のヒータ装置。
【請求項7】
前記第2シート部材における前記第2電極が形成された部分は、前記ドーム部として構成されており、
前記第2電極は、前記第2絶縁層より線膨張係数の大きな導電性ペーストを用いて形成されている請求項1ないし6のいずれか1つに記載のヒータ装置。
【請求項8】
通電により発熱するシート状の発熱部(11)と、前記発熱部が一面側に設けられた第1絶縁層(12)と、前記発熱部の前記第1絶縁層側と反対面側に形成された複数の第1電極(31、31a、31b)と、を有する第1シート部材(10)と、
前記第1絶縁層の前記一面と対向配置された第2絶縁層(21)と、前記第2絶縁層の前記第1絶縁層に形成された前記複数の第1電極と対向する位置に形成された複数の第2電極(32)と、を有する第2シート部材(20)と、を備えたヒータ装置であって、
前記第1シート部材における前記複数の第1電極が形成された部分および前記第2シート部材における前記複数の第2電極が形成された部分の少なくとも一方は、前記第1シート部材および前記第2シート部材の対向する面に対して反対面側に向かって凸となるドーム状をなす複数のドーム部(10a、20a)として構成されており、
前記複数のドーム部のうち隣り合う一対のドーム部間の最短距離は、前記一対のドーム部の最大径のいずれよりも、小さいヒータ装置。
【請求項9】
通電により発熱するシート状の発熱部(11)と、前記発熱部が一面側に設けられた第1絶縁層(12)と、前記発熱部の前記第1絶縁層側と反対面側に形成された第1電極(31、31a、31b)と、を有する第1シート部材(10)と、前記第1絶縁層の前記一面と対向配置された第2絶縁層(21)と、前記第2絶縁層の前記第1絶縁層に形成された前記第1電極と対向する位置に形成された第2電極(32)と、を有する第2シート部材(20)と、を備え、前記第1シート部材における前記第1電極が形成された部分および前記第2シート部材における前記第2電極が形成された部分の少なくとも一方は、前記第1シート部材および前記第2シート部材の対向する面に対して反対面側に向かって凸となるドーム状をなすドーム部(10a、20a)として構成されているヒータ装置の製造方法であって、
前記第1絶縁層よりも線膨張係数の大きい導電性ペーストを前記第1絶縁層に塗布すること、および、前記第2絶縁層よりも線膨張係数の大きい導電性ペーストを前記第2絶縁層に塗布することの少なくとも一方を行い、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層の少なくとも一方に塗布された前記導電性ペーストを高温下で乾燥および硬化させることで、前記第1絶縁層における前記第1電極が形成された部分および前記第2絶縁層における前記第2電極が形成された部分の少なくとも一方に、前記ドーム部(10a、20a)を構成するヒータ装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層の少なくとも一方に塗布された前記導電性ペーストを、前記導電性ペーストのガラス転移点温度以上または前記導電性ペーストの軟化温度以上で乾燥および硬化させる請求項9に記載のヒータ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2015年12月9日に出願された日本特許出願番号2015−240494号に基づくもので、ここにその記載内容が参照により組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、通電により発熱する発熱部の熱によって輻射熱を放射するヒータ装置、およびヒータ装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、基板部に埋設された電極と複数の発熱部を有する輻射ヒータ装置が、例えば、特許文献1に記載されている。このヒータ装置では、電極と発熱部が基板の内部において電気的に接続され、かつ、それぞれ膜状に形成されている。このヒータ装置では、電極と発熱部とが膜状に形成されているので、物体が発熱部に接触すると発熱部の温度が迅速に低下して安全性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−189251号公報
【発明の概要】
【0005】
上記特許文献1に記載された装置は、物体が発熱部に接触すると発熱部の温度が迅速に低下するようになっているものの、物体が発熱部に接触し続けていると、発熱部の温度は徐々に上昇し、ユーザに熱的な不快感を与えてしまうといった問題がある。そこで、物体を検知するスイッチを備え、このスイッチにより物体が検知されたときに発熱部への通電量を低下させるといったことが考えられる。
【0006】
このような物体の接触を検知するものとして、例えば、特開2006−202732号公報(以下、特許文献2とういう)に記載されたスイッチがある。このスイッチは、第1シートである絶縁層と、この第1シートの一面に形成された固定接点と、第1シートの一面に対向する第2シートである絶縁層とを備えている。さらにこのスイッチは、可撓性可動接点を有する。可撓性可動接点は、第2シートの一面に形成され、空間を介して固定接点に離接可能に対向する。さらにこのスイッチは、可撓性可動接点上であって、その押圧部を除く位置に設けられた絶縁体を備えている。
【0007】
しかし、上記特許文献2に記載されたスイッチを上記特許文献1に記載されたヒータ装置に密着させた場合、ヒータ装置の熱により第1シート(すなわち絶縁層)が熱劣化する。すると、第1シートが弛んで第1シートが第2シートの上の垂れ落ちてしまう場合がある。この場合、物体が接触していないにも関わらず、固定接点と可動接点が接触して物体が接触していると誤検知してしまうことが考えられる。
【0008】
このため、第1、第2シートの厚さを厚くして耐熱性を向上したり、第1シートと第2シートの間隔を維持するためのスペーサの厚さを厚くして固定接点(すなわち固定電極)と可動接点(すなわち可動電極)の距離を長くしたりする等の対策が必要となる。
【0009】
しかし、第1、第2シートおよびスペーサの厚さを厚くすると、第1、第2シートおよびスペーサの熱容量が大きくなり、ヒータ作動時に第1、第2シートおよびスペーサに蓄熱される熱量が多くなる。
【0010】
本発明者らは、このように第1、第2シートおよびスペーサに蓄熱される熱量が多くなると、例えば、人体の指が発熱部に触れた瞬間に指への熱の移動が多くなり、本来の触れた部分の温度が迅速に低下して安全性が確保されるという効果が損なわれるといった問題を見出した。
【0011】
本開示は、熱容量の増加を抑えながら電極間の空間を確保できるヒータ装置を提供すること、およびそのヒータ装置の製造方法を提供することを、目的とする。
【0012】
本開示の1つの観点によれば、ヒータ装置は、通電により発熱するシート状の発熱部(11)と、発熱部が一面側に設けられた第1絶縁層と、発熱部の第1絶縁層側と反対面側に形成された第1電極と、を有する第1シート部材と、第1絶縁層の一面と対向配置された第2絶縁層と、第2絶縁層の第1電極と対向する位置に形成された第2電極と、を有する第2シート部材と、を備えている。そして、第1シート部材における第1電極が形成された部分および第2シート部材における第2電極が形成された部分の少なくとも一方は、第1シート部材および第2シート部材の対向する面に対して反対面側に向かって凸となるドーム状をなすドーム部として構成されている。
【0013】
このような構成によれば、第1シート部材における第1電極が形成された部分および第2シート部材における第2電極が形成された部分の少なくとも一方は、第1シート部材および第2シート部材の対向する面に対して反対面側に向かって凸となるドーム状をなすドーム部として構成されている。そして、このような形状により第1電極と第2電極の間隔を確保する力が生じる。したがって、熱容量を増加させることなく電極間の空間を確保することができる。
【0014】
また、別の観点によればヒータ装置の製造方法は、第1絶縁層よりも線膨張係数の大きい導電性ペーストを第1絶縁層に塗布すること、および、第2絶縁層よりも線膨張係数の大きい導電性ペーストを第2絶縁層に塗布することの少なくとも一方を行い、第1絶縁層および第2絶縁層の少なくとも一方に塗布された導電性ペーストを高温下で乾燥および硬化させることで、第1絶縁層における第1電極が形成された部分および第2絶縁層における第2電極が形成された部分の少なくとも一方に、ドーム部を構成する。
【0015】
このような製造方法により、本開示のヒータ装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係るヒータ装置の正面図である。
図2図1中のII−II線に沿った断面図である。
図3】第1実施形態に係るヒータ装置の第1接点電極および第2接点電極の配置を示した図である。
図4】第1実施形態に係るヒータ装置の接触検知部の作動について説明するための図である。
図5】第2接点電極の成形方法について説明するための図である。
図6】第2実施形態に係るヒータ装置の断面図である。
図7】第3実施形態に係るヒータ装置の断面図である。
図8】第4実施形態に係るヒータ装置の断面図である。
図9】第4実施形態に係るヒータ装置の接触検知部の作動について説明するための図である。
図10】第4実施形態に係るヒータ装置の第1接点電極および第2接点電極の配置を示した図である。
図11】第5実施形態に係るヒータ装置の断面図である。
図12】第6実施形態に係るヒータ装置の正面図である。
図13】変形例に係るヒータ装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るヒータ装置の構成について図1図5を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係るヒータ装置1の正面図である。なお、図1は、第1絶縁層12を省略して示してある。図2は、図1中のII−II線に沿った断面図である。
【0019】
本実施形態のヒータ装置1は、道路走行車両の室内に設置される。ヒータ装置1は、室内のための暖房装置の一部を構成している。ヒータ装置1は、道路走行車両に搭載された電池、発電機などの電源から給電されて発熱する電気的なヒータである。ヒータ装置1は、薄いシート状に形成されている。ヒータ装置1は、その表面と垂直な方向に位置づけられた加熱対象物を暖めるために、主としてその表面と垂直な方向へ向けて輻射熱を放射する。
【0020】
ヒータ装置1は、第1シート部材10および第2シート部材20を一体化して構成されている。ヒータ装置1の厚さtは、40〜80ミクロン程度となっている。
【0021】
第1シート部材10は、発熱部11、第1絶縁層12および第1接点電極31と、を有している。発熱部11は、第1絶縁層12の一面側に形成されている。発熱部11は、通電により発熱する。第1絶縁層12は、優れた電気絶縁性を有し、かつ、高温に耐える樹脂材料によって作られている。第1絶縁層12は、フィルム状をなしている。第1接点電極31は、発熱部11の第1絶縁層12側と反対面側に形成されている。
【0022】
第2シート部材20は、第2絶縁層21および第2接点電極32を有している。第2絶縁層21は、優れた電気絶縁性を有し、かつ、高温に耐える樹脂材料によって作られている。第2絶縁層21は、フィルム状をなしている。第2接点電極32は、第2絶縁層21の第1絶縁層12に形成された第1接点電極31と対向する位置に形成されている。つまり、第2接点電極32は、第2絶縁層21の第1接点電極31側の面に形成されている。
【0023】
発熱部11は、上記特許文献1に記載されたヒータ装置と同様の構成となっている。すなわち、発熱部11は、軸Xと軸Yによって規定されるX−Y平面に沿って広がっている。発熱部11は、ほぼ四角形の薄い面状に形成されている。軸X、軸Yは、互いに直交すると共に、軸Zにも直交する。軸Zは、第1シート部材10と第2シート部材の積層方向に平行であると共に、ヒータ装置1の表面に垂直である。また、軸Xは、ヒータ装置1および発熱部11の長手方向に平行である。また、軸Yは、ヒータ装置1および発熱部11の短手方向に平行である。
【0024】
発熱部11は、第1絶縁層12の一面側に形成された電極と、複数の発熱体(いずれも図示せず)とを有している。発熱部11の電極は、固有抵抗が低い材料によって形成され、発熱体は、輻射熱を生じるように発熱するために固有抵抗が高い材料によって形成されている。
【0025】
発熱部11の電極と発熱体とは、電気的に接続されている。複数の発熱体は、一対の発熱部11の電極の間に並列的に配置されている。発熱部11の電極と発熱体とは、膜状に形成されており、熱的な容量が抑制されている。この結果、通電に応答して発熱体の温度は迅速に上昇する。また、物体が接触すると発熱体の温度は迅速に低下する。
【0026】
第1接点電極31および第2接点電極32は、発熱部11に対する物体の接触を検知する接触検知部を構成している。図1に示したように、第1接点電極31および第2接点電極32の各々は、それぞれ円形状を成している。図2に示したように、第1接点電極31および第2接点電極32は、空間層33を挟んで対向配置されている。第1接点電極31および第2接点電極32は、発熱部11のほぼ全域を覆う領域に配置されている。
【0027】
第1シート部材10における第1接点電極31が形成された部分は、第1シート部材10および第2シート部材20の対向する面に対して反対面側に向かって凸となるドーム状をなすドーム部10aとして構成されている。この「対向する面」は、第1シート部材10と第2シート部材20に挟まれた仮想的な面である。この「対向する面」は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。別の観点では、第1シート部材10における第1接点電極31が形成された部分は、第2シート部材20側とは反対側に向かって凸となるドーム状をなすドーム部10aとして構成されている。
【0028】
さらに、第2シート部材20における第2接点電極32が形成された部分も、第1シート部材10および第2シート部材20の対向する面に対して反対面側に向かって凸となるドーム状をなすドーム部20aとして構成されている。別の観点では、第2シート部材20における第2接点電極32が形成された部分は、第1シート部材10側とは反対側に向かって凸となるドーム状をなすドーム部20aとして構成されている。
【0029】
ドーム部10a、20aがドーム状を成すとは、ドーム部10a、20aが、その外縁部からその頂点10z、20zに向かうにつれて、徐々に上記対向する面から遠ざかるように、凸となることをいう。ドーム部10a、20aの外縁部は、ドーム部10a、20aのうち最も上記対向する面に近い位置にある。ドーム部10a、20aの外縁部は、円形である。
【0030】
また、第1接点電極31と第2接点電極32は、それぞれ電極中央部が相互に距離を保つよう第1接点電極31と第2接点電極32の対向する面に対して反対面側に向かって凸となる凸形状をなしている。
【0031】
第1シート部材10および第2シート部材20は、対向するよう配置された第1接点電極31および第2接点電極32が形成された部分の周囲の領域で互いに熱圧着により固着されている。第1シート部材10のうちこのように第2シート部材20に固着された領域は、上記ドーム部10aの外縁部に隣り合う固着部10xである。第2シート部材20のうちこのように第1シート部材10に固着された領域は、上記ドーム部20aの外縁部に隣り合う固着部20xである。
【0032】
図3は、第1接点電極31および第2接点電極32の配置を示した図である。(a)は、発熱部11に形成された第1接点電極31の配置を示した図であり、(b)は、第2絶縁層21に形成された第2接点電極32の配置を示した図である。
【0033】
図3の(a)に示すように、発熱部11には、複数の第1接点電極31が格子状かつマトリクス状に配置されている。また、各第1接点電極31は、中間電極34を介して互いに接続されている。また、各第1接点電極31は、中間電極34を介して電源端子に接続されるようになっている。
【0034】
したがって、第1シート部材10には、複数のドーム部10aが格子状かつマトリクスに配置されている。複数のドーム部10aのうち、隣り合うどの一対のドーム部10aをとっても、ある関係が成立する。その関係とは、当該一対のドーム部10a間の最短距離は、当該一対のドーム部10aの最大径のいずれよりも、小さい、ということである。ここで、あるドーム部10aの最大径とは、当該ドーム部10aの外縁部のうち1点から他の1点までの直線距離のうち、最も長い距離をいう。ドーム部10aの外縁部が円形ならば、ドーム部10aの最大径は直径である。このようになっていることで、複数のドーム部10aを密に配置することができる。
【0035】
なお、上記の関係は、複数のドーム部10aのうち隣り合うどの一対をとっても成立するのではなく、複数のドーム部10aから隣り合う一対のドーム部10aとして選べるすべての組み合わせのうち、一部の組み合わせについて、成立するようになっていてもよい。この場合においても、当該一部の組み合わせを構成する複数のドーム部10aについては、密に配置することができるという効果が実現する。
【0036】
また、図3の(b)に示すように、第2絶縁層21には、複数の第2接点電極32が格子状に配置されている。各第1接点電極31と各第2接点電極32を対向させて第2絶縁層21を第1絶縁層12に重ね合わせたときに、各第2接点電極32と各第1接点電極31とが重なる位置に配置されている。また、各第2接点電極32は、中間電極35を介して互いに接続されている。また、各第2接点電極32は、中間電極35を介して接地端子に接続されるようになっている。
【0037】
したがって、第2シート部材20には、複数のドーム部20aが格子状に配置されている。複数のドーム部20aのうち、隣り合うどの一対のドーム部20aをとっても、ある関係が成立する。その関係とは、当該一対のドーム部20a間の最短距離は、当該一対のドーム部20aの最大径のいずれよりも、小さい、ということである。ここで、あるドーム部20aの最大径とは、当該ドーム部20aの外縁部のうち1点から他の1点までの直線距離のうち、最も長い距離をいう。ドーム部20aの外縁部が円形ならば、ドーム部20aの最大径は直径である。このようになっていることで、複数のドーム部20aを密に配置することができる。
【0038】
なお、上記の関係は、複数のドーム部20aのうち隣り合うどの一対をとっても成立するのではなく、複数のドーム部20aから隣り合う一対のドーム部20aとして選べるすべての組み合わせのうち、一部の組み合わせについて、成立するようになっていてもよい。この場合においても、当該一部の組み合わせを構成する複数のドーム部20aについては、密に配置することができるという効果が実現する。
【0039】
ここで、複数の第1接点電極31の配置について更に詳しく説明する。複数の第1接点電極31のマトリクス状の配置における各行において、その行内におけるすべての第1接点電極31の列方向の位置の組み合わせと、その行と隣り合う行内におけるすべての第1接点電極31の列方向の位置の組み合わせは、異なっている。より具体的には、各行において、その行内におけるすべての第1接点電極31の列方向の位置の組み合わせと、その行と隣り合う行内におけるすべての第1接点電極31の列方向の位置の組み合わせは、第1所定長さだけずれている。この第1所定長さは、列方向に隣り合う2つの第1接点電極31の中心間の距離である。
【0040】
なお、複数の第1接点電極31のマトリクス状の配置における行方向は軸Yの方向に一致し、列方向は軸Xの方向に一致する。
【0041】
また、第1接点電極31の列方向の一端部における位置は、行毎に列方向に交互にずれている。また、第1接点電極31の列方向の他端部における位置は、行毎に列方向に、かつ、第1接点電極31の列方向の一端部とは逆に、交互にずれている。この結果、同じ行に属する第1接点電極31全体の列方向の長さは、行毎に交互に増減している。そして、同じ行に属する第1接点電極31の数も、行毎に交互に増減している。
【0042】
各列において、その列内におけるすべての第1接点電極31の行方向の位置の組み合わせと、その列と隣り合う列内におけるすべての第1接点電極31の行方向の位置の組み合わせは、異なっている。より具体的には、各列において、その列内におけるすべての第1接点電極31の行方向の位置の組み合わせと、その列と隣り合う列内におけるすべての第1接点電極31の行方向の位置の組み合わせは、第2所定長さだけずれている。この第2所定長さは、行方向に隣り合う2つの第1接点電極31の中心間の距離であり、上述の第1所定長さよりも長い。
【0043】
また、各行において、その行におけるすべての第1接点電極31の行方向の存在位置の範囲と、その行と隣り合う行内におけるすべての第1接点電極31の行方向の存在位置の範囲とが、部分的に重なる。
【0044】
また、各列において、その列におけるすべての第1接点電極31の列方向の存在位置の範囲と、その列と隣り合う列内におけるすべての第1接点電極31の列方向の存在位置の範囲とが、部分的に重なる。
【0045】
またこの例では、端部にある第1接点電極31以外の第1接点電極31は、6つの第1接点電極31のみに一番近くで囲まれる。
【0046】
またこの例では、端部にある第1接点電極31以外の第1接点電極31には、その第1接点電極31の中心からの距離が基準距離以下となる他の第1接点電極31が、6個だけある。ここで、基準距離とは、第1接点電極31の最大径と同じ長さの距離である。
【0047】
またこの例では、各第1接点電極31と、その第1接点電極31に最も近い他の第1接点電極とは、列方向に並ぶ。またこの例では、各第1接点電極31と、その第1接点電極31に最も近い他の第1接点電極とは、列方向に60°の角度で交差する方向に並ぶ。
【0048】
なお、このような第1接点電極31の配置状の特徴は、ドーム部10a、第2接点電極32、ドーム部10bについても同じことが言える。
【0049】
図4は、接触検知部53の作動について説明するための図である。なお、ここでは、発熱部11と第1接点電極31の間が絶縁されているものとして説明する。第1接点電極31および第2接点電極32は、電源50および抵抗51と直列に接続される。接触検知部53は、抵抗51の端子間電圧が所定電圧以上の場合にヒータ装置1への物体の接触があることを示す信号を出力する。また、接触検知部53は、抵抗51の端子間電圧が所定電圧未満の場合にヒータ装置1への物体の接触がないことを示す信号を出力する。接触検知部53より出力された信号は、不図示の制御部に入力される。
【0050】
図4の(a)に示すように、発熱部11に対する物体の接触がなく、第1接点電極31と第2接点電極32の間が開放となっている場合、第1接点電極31と第2接点電極32は非導通となり抵抗51に電流は流れない。このとき、抵抗51の端子間電圧は所定電圧未満となる。したがって、接触検知部53は、ヒータ装置1への物体の接触がないことを示す信号を制御部へ出力する。
【0051】
また、図4の(b)に示すように、発熱部11に物体が接触して、第1接点電極31と第2接点電極32の間が短絡した場合、第1接点電極31と第2接点電極32は導通状態となり抵抗51に電流Iが流れる。このとき、抵抗51の端子間電圧は所定電圧以上となる。したがって、接触検知部53は、ヒータ装置1への物体の接触があることを示す信号を制御部へ出力する。
【0052】
なお、本実施形態の第1接点電極31は、発熱部11の一面側に形成されているため、第1接点電極31と第2接点電極32の間が短絡した場合、電源50から第1接点電極31、第2接点電極32および抵抗51を通って接地端子へ電流が流れることになる。
【0053】
次に、第2接点電極32の成形方法について図5を参照して説明する。ここでは、接点電極ペースト100を第2絶縁層21に印刷して1つの第2接点電極32を成形する例を示す。以下の成型方法は、作業者が種々の装置を用いて全体を行ってもよいし、自動成形装置が全体を自動的に行ってもよい。また、以下の成型方法は、作業者が種々の装置を用いて一部を行うと共に自動成形装置が残りの部分を自動的に行ってもよい。
【0054】
まず、この成型方法を行う主体は、図5の(a)に示すように、第2絶縁層21を用意し、常温(例えば、25℃)で、印刷により第2絶縁層21の一面側に接点電極ペースト100を形成する。ここで、接点電極ペースト100は、第2絶縁層21よりも線膨張係数が大きいものを選定しておく。
【0055】
次に上記主体は、図5の(b)に示すように、接点電極ペースト100が形成された第2絶縁層21を高温下において、接点電極ペースト100を乾燥させる。具体的には、接点電極ペースト100を、この接点電極ペースト100のガラス転移点温度以上で接点電極ペースト100を乾燥させる。これにより、接点電極ペースト100が硬化して接点電極ペースト100が第2絶縁層21に定着する。
【0056】
このとき、接点電極ペースト100は、第2絶縁層21よりも線膨張係数が大きくなっているので、接点電極ペースト100の方が第2絶縁層21よりもX−Y平面方向に大きく伸びる。すなわち、接点電極ペースト100の方が第2絶縁層21よりもX−Y平面方向に大きく伸びた状態で接点電極ペースト100が硬化して接点電極32が第2絶縁層21に接着される。
【0057】
次に、上記主体が接点電極32が形成された第2絶縁層21を冷却して常温に戻す。すると、図5の(c)に示すように、接点電極32および第2絶縁層21が元の大きさに戻ろうとする。このとき、接点電極32の方が第2絶縁層21よりも線膨張係数が大きくなっているので、接点電極32の方が第2絶縁層21よりも大きく戻ろうとする。すなわち、接点電極32の方が第2絶縁層21よりも大きく収縮するため、周長差が発生する。その結果、接点電極32が内面側に配置されたドーム形状が形成される。
【0058】
なお、接点電極ペースト100を第2絶縁層21に一定間隔おきに印刷することで、図2に示したような連続したドーム形状を形成することができる。
【0059】
以上、第2接点電極32の成形方法について説明した。なお、第1接点電極31を第1絶縁層12に成形する際にも同様に行うことができる。ただし、第1接点電極31と第1絶縁層12の間には発熱部11が設けられている。しかし、第1絶縁層12の周囲温度を変化させたとき、発熱部11は、第1絶縁層12と同様に伸縮する。
【0060】
つまり、第1接点電極31と第1絶縁層12の間に発熱部11が設けられていても、接点電極ペーストの線膨張係数を第1絶縁層12よりも大きくしておく。これにより、接点電極ペーストの方が第1絶縁層12および発熱部11よりも温度変化に応じて大きく伸縮するため、第2接点電極32を成形する場合と同様のドーム形状を成形することができる。
【0061】
第1、第2接点電極31、32は、4ミリメートル以上の隙間がないよう発熱部11の全体にわたって配置されている。具体的には、第1、第2接点電極31、32は、4〜5ミリメートル間隔で配置されている。例えば、第1、第2接点電極31、32の中心点は、4〜5ミリメートル間隔で配置されている。すなわち、このようなドーム部10a、20aが4〜5ミリメートル間隔で配置されている。このようにドーム部10a、20aを4〜5ミリメートル間隔で配置することで、子供の指が接触した場合でも、確実に接触を検知することが可能となっている。
【0062】
上記したように第1シート部材10にドーム部10aを形成するとともに第2シート部材20にドーム部20aを形成する。その後、対向するよう配置された第1接点電極31および第2接点電極32が形成された部分の周囲の領域で、第1シート部材10および第2シート部材20を互いに固着させるとヒータ装置が完成する。
【0063】
上記した構成によれば、第1シート部材10における第1接点電極31が形成された部分および第2シート部材20における第2接点電極32が形成された部分は、それぞれ、ドーム部10a、20aとして構成されている。ドーム部10a、20aは、第1シート部材10および第2シート部材20の対向する面に対して反対面側に向かって凸となる中空のドーム状をなす。そして、このような形状により第1電極と第2電極の間隔を確保する力が生じる。したがって、熱容量を増加させることなく電極間の空間を確保することができる。
【0064】
また、ドーム部10a、20aは、第1シート部材10における第1接点電極31が形成された部分および第2シート部材20における第2接点電極32が形成された部分の両方に構成されている。したがって、ドーム部が、第1シート部材10と第2シート部材20にいずれか一方に構成されている場合と比較して、第1接点電極31と第2接点電極32の距離を長くすることができる。
【0065】
また、接触検知部53は、第1接点電極31と第2接点電極32が導通状態であるか否かに基づいて第1シート部材10への物体の接触または非接触を検知する。したがって、第1シート部材10への物体の接触または非接触を容易に検知することができる。
【0066】
また、第1シート部材10に形成された第1接点電極31および第2シート部材20に形成された第2接点電極32は、4ミリメートル以上の隙間がないよう発熱部11の全体にわたって配置されている。したがって、例えば、子供の指が接触した場合でも、確実に接触を検知することが可能となっている。
【0067】
また、第1シート部材10および第2シート部材20は、対向するよう配置された第1接点電極31および第2接点電極32が形成された部分の周囲の領域である固着部10x、20xで、互いに固着されている。このように、対向するよう配置された第1接点電極31および第2接点電極32が形成された部分の周囲の領域で、第1シート部材10および第2シート部材20を固着することができる。
【0068】
また、第1シート部材10における第1接点電極31が形成された部分は、ドーム部10aとして構成されており、第1接点電極31は、第1絶縁層12より線膨張係数の大きな導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0069】
また、第2シート部材20における第2接点電極32が形成された部分は、ドーム部20aとして構成されており、第2接点電極32は、第2絶縁層21より線膨張係数の大きな導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0070】
また、上記主体は、第1絶縁層12よりも線膨張係数の大きい導電性ペーストを第1絶縁層12に印刷するとともに第2絶縁層21よりも線膨張係数の大きい導電性ペーストを第2絶縁層21に印刷する。その後、上記主体は、第1絶縁層12および第2絶縁層21に印刷された導電性ペーストを高温下で乾燥および硬化させることで、第1絶縁層12における第1接点電極31が形成された部分および第2絶縁層21における第2接点電極32が形成された部分に、ドーム部10a、20aを構成する。
【0071】
このような製造方法により、本ヒータ装置1を製造することができる。また、第1シート部材10あるいは第2シート部材20に接点を形成する行程とドーム部10a、20aを加工する行程を別々に実施することなく、電極が形成された部分にドーム部を構成することができる。
【0072】
なお、第1絶縁層12および第2絶縁層21に印刷された導電性ペーストを高温下で乾燥および硬化させる際には、第1絶縁層12および第2絶縁層21に印刷された導電性ペーストを、導電性ペーストのガラス転移点温度以上で乾燥および硬化させるのが好ましい。
【0073】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るヒータ装置1の構成について図6を用いて説明する。図6は、本実施形態のヒータ装置の断面図である。上記第1実施形態のヒータ装置1では、第1シート部材10における第1接点電極31が形成された部分および第2シート部材20における第2接点電極32が形成された部分の両方が、ドーム部10a、20aとして構成されている。これに対し、本実施形態のヒータ装置1では、第2シート部材20における第2接点電極32が形成された部分は、ドーム部20aとして構成されているが、第1シート部材10における第1接点電極31が形成された部分は、平坦となっている。
【0074】
ここでは、第2絶縁層21側が中空のドーム状を成して、第1絶縁層12側は平坦となるよう構成されているが、第1絶縁層12側が中空のドーム状を成して、第2絶縁層21側が平坦となるよう構成してもよい。
【0075】
本実施形態では、上記第1実施形態と共通の構成から奏される効果と同様の効果を上記第1実施形態と同様に得ることができる。すなわち、第1シート部材10と第2シート部材20の一方にのみドーム形状を形成する構成としても、上記第1実施形態のヒータ装置と同様の効果を得ることができる。
【0076】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るヒータ装置1の構成について図7を用いて説明する。図7は、本実施形態のヒータ装置1の断面図である。上記各実施形態では、第1シート部材10と第2シート部材20の間を、熱圧着により固着させるようにした。
【0077】
これに対し、本実施形態のヒータ装置1は、第1シート部材10の固着部10xと第2シート部材20の固着部20xの間を、接着剤60により接着している。第1シート部材10および第2シート部材20の間を、接着剤60により接着することにより、第1接点電極31と第2接点電極32の距離を長くすることが可能である。
【0078】
本実施形態では、上記第1実施形態と共通の構成から奏される効果と同様の効果を上記第1実施形態と同様に得ることができる。
【0079】
なお、第1シート部材10の固着部10xと第2シート部材20の固着部20xの間を固着する方法としては、上記した熱圧着、接着剤60による接着の他に、例えば、熱用着により固着することもできる。
【0080】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るヒータ装置1の構成について図8図10を用いて説明する。図8は、本実施形態のヒータ装置1の断面図である。図9は、本実施形態のヒータ装置1の接触検知部の作動について説明するための図である。図10は、本実施形態に係るヒータ装置1の第1接点電極および第2接点電極の配置を示した図である。
【0081】
上記第1実施形態のヒータ装置1では、第1接点電極31が円形状をなしている。これに対し、本実施形態のヒータ装置1では、図10の(a)、(b)に示すように、第1接点電極が、第1接点電極31aおよび第1接点電極31bに、二分割されている。具体的には、第1接点電極31aおよび第1接点電極31bが、それぞれ半円形状となっている。第1接点電極31aは、+側の極性を有し、第1接点電極31bは、−側の極性を有している。
【0082】
図10の(a)に示すように、各第1接点電極31aは、中間電極34aを介して互いに接続されている。各第1接点電極31aは、中間電極34aを介して電源端子に接続されるようになっている。
【0083】
また、各第1接点電極31bは、中間電極34bを介して互いに接続されている。各第1接点電極31bは、中間電極34bを介して接地端子に接続されるようになっている。
【0084】
本実施形態のヒータ装置1は、電源端子に接続される中間電極34aおよび接地端子に接続される中間電極34bが、第1シート部材10側に形成されている。
【0085】
図10の(b)に示すように、本実施形態のヒータ装置1の各第2接点電極32は、電気的に分離されている。各第2接点電極32は、第1接点電極32aと第1接点電極32bとの間を導通させる導電体として設けられている。
【0086】
図9は、接触検知部53の作動について説明するための図である。第1接点電極31a、31bは、第2接点電極32と対向するよう配置されている。図9の(a)のように第1接点電極31aと第2接点電極32の間および第1接点電極31bと第2接点電極32の間がそれぞれ開放となっている場合、第1接点電極31aと第2接点電極32の間および第1接点電極31bと第2接点電極32の間は非導通となる。このとき、抵抗51に電流は流れない。このとき、抵抗51の端子間電圧は所定電圧未満となる。したがって、接触検知部53は、ヒータ装置1への物体の接触がないことを示す信号を制御部へ出力する。
【0087】
また、図9の(b)に示すように、発熱部11に物体が接触して、第1接点電極31aと第2接点電極32の間が短絡するとともに、第1接点電極31bと第2接点電極32の間が短絡した場合、第1接点電極31aと第1接点電極31bは、第2接点電極32を介して導通状態となり抵抗51に電流Iが流れる。このとき、抵抗51の端子間電圧は所定電圧以上となる。したがって、接触検知部53は、ヒータ装置1への物体の接触があることを示す信号を制御部へ出力する。
【0088】
本実施形態では、上記第1実施形態と共通の構成から奏される効果と同様の効果を上記第1実施形態と同様に得ることができる。
【0089】
上記した構成によれば、第1接点電極32aおよび第1接点電極32bが、それぞれ第1シート部材10側に配置されるとともに、電源端子に接続される中間電極34aおよび接地端子に接続される中間電極34bが第1シート部材10側に配置されている。したがって、電源端子に接続される中間電極34aおよび接地端子に接続される中間電極34bを片側のシート部材に形成することができる。これにより、電源端子および接地端子に接続される外部配線の構造を簡素化することが可能である。
【0090】
(第5実施形態)
第5実施形態に係るヒータ装置1の構成について図11を用いて説明する。図11は、本実施形態のヒータ装置1の断面図である。上記第1実施形態のヒータ装置1は、第1シート部材10における発熱部11の一面側に第1接点電極31が形成されている。これに対し、本実施形態のヒータ装置1は、発熱部11と第1接点電極31の間に、絶縁層13が配置されている。
【0091】
このように、発熱部11と第1接点電極31の間に絶縁層13を配置して、発熱部11と第1接点電極31の間を絶縁することもできる。
【0092】
本実施形態では、上記第1実施形態と共通の構成から奏される効果と同様の効果を上記第1実施形態と同様に得ることができる。
【0093】
(第6実施形態)
第6実施形態に係るヒータ装置1の構成について図12を用いて説明する。図12は、本実施形態のヒータ装置1の正面図である。上記第1実施形態のヒータ装置1は、第1接点電極31および第2接点電極32が、それぞれ発熱部11のほぼ全域を覆う領域に配置されている。これに対し、本実施形態のヒータ装置1は、面状に広がる発熱部11に対し、第1接点電極31および第2接点電極32が、中央の一部の領域に配置されている。
【0094】
つまり、第1接点電極31および第2接点電極32が配置された領域では、物体の接触を検知し、第1接点電極31および第2接点電極32が配置されていない領域では、物体の接触を検知しないよう構成されている。
【0095】
本実施形態では、上記第1実施形態と共通の構成から奏される効果と同様の効果を上記第1実施形態と同様に得ることができる。
【0096】
また、面状に広がる発熱部11に対し、第1接点電極31および第2接点電極32を一部の領域に配置することもできる。
【0097】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、接点電極ペースト100を印刷により塗布したが、例えば、接点電極ペースト100を手作業により塗布してもよい。
【0098】
(2)上記各実施形態では、接点電極ペースト100を、この接点電極ペースト100のガラス転移点温度以上で接点電極ペースト100を乾燥させるようにした。なお、接点電極ペースト100がガラス転移点を有していない場合には、接点電極ペースト100を、この接点電極ペースト100の軟化温度以上で乾燥させるようにしてもよい。また、発熱部11の発熱温度がガラス転移点温度または軟化温度以上になると、ドーム状のドーム部10a、20aが変形する可能正がある。このため、本ヒータ装置は、発熱部11の発熱温度を、接点電極ペースト100のガラス転移点温度未満または軟化温度未満とするよう構成されている。
【0099】
(3)上記第1実施形態では、絶縁層よりも線膨張係数の大きな接点電極ペースト100を絶縁層に印刷し、絶縁層に印刷された接点電極ペースト100を高温下で乾燥および硬化させた後、絶縁層を冷却して常温に戻すことにより、ドーム部10a、20aを構成した。これに対し、成形型を用いて接点電極を形成した絶縁層にドーム部10a、20aを構成するようにしてもよい。また、凸型の接点電極をフィルム状の絶縁層に配置することで、絶縁層にドーム部10a、20aを構成するようにしてもよい。
【0100】
(4)上記各実施形態では、本ヒータ装置1を車両に搭載する例を示したが、車両に搭載するものに限定されるものではない。
【0101】
(5)上記各実施形態において、ドーム部10a、20aの外縁部は、円形である。しかし、ドーム部10a、20aの外縁部は、円形に限らず、多角形であってもよい。
【0102】
(6)上記各実施形態において、複数の第1接点電極31の配置は、図13に示すようになっていてもよい。図13の例では、複数の第1接点電極31がマトリクス状に配置されている点は、上記各実施形態と同じである。
【0103】
しかし、図13の例では、どの2つの行をとっても、一方の行内におけるすべての第1接点電極31の列方向の位置の組み合わせと、他方の行内におけるすべての第1接点電極31の列方向の位置の組み合わせは、同じである。したがって、各行において、その行内におけるすべての第1接点電極31の列方向の位置の組み合わせと、その行と隣り合う行内におけるすべての第1接点電極31の列方向の位置の組み合わせは、同じである。
【0104】
またこの例では、どの2つの列をとっても、一方の列内におけるすべての第1接点電極31の行方向の位置の組み合わせと、他方の列内におけるすべての第1接点電極31の行方向の位置の組み合わせは、同じである。したがって、各列において、その列内におけるすべての第1接点電極31の行方向の位置の組み合わせと、その列と隣り合う行内におけるすべての第1接点電極31の行方向の位置の組み合わせは、同じである。
【0105】
またこの例では、各行において、その行におけるすべての第1接点電極31の行方向の存在位置の範囲と、その行と隣り合う行内におけるすべての第1接点電極31の行方向の存在位置の範囲とは、部分的にも重ならない。
【0106】
またこの例では、各列において、その列におけるすべての第1接点電極31の列方向の存在位置の範囲と、その列と隣り合う列内におけるすべての第1接点電極31の列方向の存在位置の範囲とは、部分的にも重ならない。
【0107】
またこの例では、端部にある第1接点電極31以外の第1接点電極31は、4つの第1接点電極31のみに一番近くで囲まれる。
【0108】
またこの例では、端部にある第1接点電極31以外の第1接点電極31には、その第1接点電極31の中心からの距離が基準距離以下となる他の第1接点電極31が、4個だけある。ここで、基準距離とは、第1接点電極31の最大径と同じ長さの距離である。
【0109】
またこの例では、各第1接点電極31と、その第1接点電極31に最も近い他の第1接点電極とは、列方向に並ぶ。またこの例では、各第1接点電極31と、その第1接点電極31に最も近い他の第1接点電極とは、行方向に並ぶ。
【0110】
また、第1接点電極31の列方向の両端部における位置は、どの行でも同じである。この結果、同じ行に属する第1接点電極31全体の列方向の長さは、どの行でも同じである。そして、同じ行に属する第1接点電極31の数も、どの行でも同じである。
【0111】
なお、このような第1接点電極31の配置状の特徴は、ドーム部10a、第2接点電極32、ドーム部10bについても同じことが言える。
【0112】
なお、本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【0113】
(まとめ)
上記実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、本ヒータ装置は、第1シート部材における第1電極が形成された部分および第2シート部材における第2電極が形成された部分の少なくとも一方は、第1シート部材および第2シート部材の対向する面に対して反対面側に向かって凸となるドーム状をなすドーム部として構成されている。そして、このような形状により第1電極と第2電極の間隔を確保する力が生じる。したがって、熱容量を増加させることなく電極間の空間を確保することができる。
【0114】
第2の観点によれば、ドーム部は、第1シート部材における第1電極が形成された部分および第2シート部材における第2電極が形成された部分の両方に構成されている。これにより、ドーム部が、第1シート部材と第2シート部材にいずれか一方に構成されている場合と比較して、第1電極と第2電極の距離を長くすることができる。
【0115】
第3の観点によれば、第1電極と第2電極が導通状態であるか否かに基づいて第1シート部材への物体の接触または非接触を検知する接触検知部を備えている。これにより、第1シート部材への物体の接触または非接触を容易に検知することができる。
【0116】
第4の観点によれば、第1シート部材に形成された第1電極および第2シート部材に形成された第2電極は、4ミリメートル以上の隙間がないよう発熱部11の全体にわたって配置されている。これにより、子供の指が接触した場合でも、確実に接触を検知することが可能である。
【0117】
第5の観点によれば、第1シート部材および第2シート部材は、対向するよう配置された第1電極および第2電極が形成された部分の周囲の領域で互いに固着されている。このように、対向するよう配置された第1電極および第2電極が形成された部分の周囲の領域で、第1シート部材および第2シート部材を固着することができる。
【0118】
第6の観点によれば、第1シート部材における第1電極が形成された部分は、ドーム部として構成されており、第1電極は、第1絶縁層より線膨張係数の大きな導電性ペーストを用いて形成されている。このように、第1電極は、第1絶縁層より線膨張係数の大きな導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0119】
第7の観点によれば、第2シート部材における第2電極が形成された部分は、ドーム部として構成されており、第2電極は、第2絶縁層より線膨張係数の大きな導電性ペーストを用いて形成されている。このように、第2電極は、第2絶縁層より線膨張係数の大きな導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0120】
第8の観点によれば、ヒータ装置は、第1シート部材(10)と第2シート部材(20)徒を備える。第1シート部材は、通電により発熱するシート状の発熱部と、前記発熱部が一面側に設けられた第1絶縁層と、前記発熱部の前記第1絶縁層側と反対面側に形成された複数の第1電極と、を有する。第2シート部材は、前記第1絶縁層の前記一面と対向配置された第2絶縁層(21)と、前記第2絶縁層の前記第1絶縁層に形成された前記複数の第1電極と対向する位置に形成された複数の第2電極(32)と、を有する。前記第1シート部材における前記複数の第1電極が形成された部分および前記第2シート部材における前記複数の第2電極が形成された部分の少なくとも一方は、前記第1シート部材および前記第2シート部材の対向する面に対して反対面側に向かって凸となるドーム状をなす複数のドーム部(10a、20a)として構成されている。前記複数のドーム部のうち隣り合う一対のドーム部間の最短距離は、前記一対のドーム部の最大径のいずれよりも、小さい。
【0121】
第9の観点によれば、ヒータ装置の製造方法であって、第1絶縁層よりも線膨張係数の大きい導電性ペーストを第1絶縁層に塗布すること、および、第2絶縁層よりも線膨張係数の大きい導電性ペーストを第2絶縁層に塗布することの少なくとも一方を行う。その後、第1絶縁層および第2絶縁層の少なくとも一方に塗布された導電性ペーストを高温下で乾燥および硬化させることで、第1絶縁層における第1電極が形成された部分および第2絶縁層における第2電極が形成された部分の少なくとも一方に、ドーム部を構成する。
【0122】
このような製造方法により、本開示にかかるヒータ装置を製造することができる。また、第1シート部材あるいは第2シート部材に接点を形成する行程とドーム部を加工する行程を別々に実施することなく、電極が形成された部分にドーム部を構成することができる。
【0123】
第10の観点によれば、第1絶縁層および第2絶縁層の少なくとも一方に塗布された導電性ペーストを、導電性ペーストのガラス転移点温度以上または導電性ペーストの軟化温度以上で乾燥および硬化させるのが好ましい。
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