特許第6432705号(P6432705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6432705-高強度めっき鋼板及びその製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432705
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】高強度めっき鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20181126BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20181126BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20181126BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   C22C38/00 301T
   C21D9/46 J
   C22C38/14
   C22C38/60
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-501377(P2018-501377)
(86)(22)【出願日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2017035100
(87)【国際公開番号】WO2018062342
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-193564(P2016-193564)
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158573
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】楊 霊玲
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 典晃
(72)【発明者】
【氏名】中垣内 達也
(72)【発明者】
【氏名】船川 義正
【審査官】 鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/072479(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/067625(WO,A1)
【文献】 特開2013−213232(JP,A)
【文献】 特開2010−275628(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/119751(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/047755(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/018739(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/015239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−38/60
C21D 8/00− 8/10
C21D 9/46− 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C:0.05〜0.15%、
Si:0.01〜1.80%、
Mn:1.8〜3.2%、
P:0.05%以下、
S:0.02%以下、
Al:0.01〜2.0%を含有し、
B:0.0001〜0.005%、
Ti:0.005〜0.04%、
Mo:0.03〜0.50%のうち1種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成と、
圧延直角方向の板厚断面の観察において、体積率で50%以上のマルテンサイト相を含有し、前記マルテンサイト相全体に占める焼戻しマルテンサイトの体積率が50%以上85%以下であり、且つ体積率で28%以上のフェライト相を含有し、該フェライト相の平均粒径が13μm以下、フェライト相全体におけるアスペクト比が2.0以下のフェライト粒の体積率が70%以上であるミクロ組織と、を有する鋼板と、該鋼板の表面に形成されためっき層と、を備え、
降伏強さ(YP)が550MPa以上である高強度めっき鋼板。
【請求項2】
前記成分組成は、さらに、質量%で、Crを1.0%以下含有する請求項1に記載の高強度めっき鋼板。
【請求項3】
前記成分組成は、さらに、質量%で、Cu、Ni、Sn、As、Sb、Ca、Mg、Pb、Co、Ta、W、REM、Zn、Nb、V、Cs、Hfのいずれか1種以上を合計で1%以下含有する請求項1または2に記載の高強度めっき鋼板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延後、平均冷却速度が10〜30℃/sの条件で冷却し、巻取温度が470〜700℃の条件で巻取る熱延工程と、
前記熱延工程で得られた熱延鋼板を冷間圧延する冷延工程と、
前記冷延工程で得られた冷延鋼板を、750〜900℃の焼鈍温度域まで加熱し、該焼鈍温度域で30〜200秒保持し、該保持において、半径200mm以上のロールで曲げ曲げ戻しを合計8回以上行い、前記保持後、平均冷却速度が10℃/s以上、冷却停止温度が400〜600℃の条件で冷却する焼鈍工程と、
前記焼鈍工程後、めっき処理し、該処理後10〜25℃/sの平均冷却速度で冷却するめっき工程と、を有することを特徴とする高強度めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車の部品用素材として用いられる高強度めっき鋼板およびその製造方法に関するものである。詳しくは、降伏強さが550MPa以上の高強度であり、且つ溶接性に優れる高強度めっき鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば自動車業界においては、地球環境の保全という観点から、炭酸ガス(CO)排出量を削減すべく、自動車の燃費を改善することが常に重要な課題となってきた。自動車の燃費向上には、自動車車体の軽量化を図ることが有効であるが、自動車車体の強度を維持しつつ車体の軽量化を図る必要がある。自動車部品用素材となる鋼板を高強度化し、構造を簡略化して部品点数を削減したり、素材を薄くしたりすることができれば、軽量化が達成できる。
【0003】
しかしながら、降伏強さが550MPa以上の高強度鋼板では、通常、高強度化のために必要な合金元素を多く含有するため、溶接部の靭性、特に抵抗スポット溶接ではナゲットと呼ばれる溶融凝固部周辺の熱影響部の靱性が不足し、自動車が衝突したときに溶接部が破断し、自動車全体の衝突強度が維持できないということが頻繁に起こる。現在までに様々な技術が提案されているが、この溶接部の継手の強度改善を直接目的としたものではない。
【0004】
例えば、特許文献1にはTSが980MPa以上であり、成形性及び耐衝撃性に優れた高強度溶融めっき鋼板及びその製造方法が開示されている。また、特許文献2には優れた加工性を有するTS:590MPa以上の高強度溶融めっき鋼板及びその製造方法が開示されている。また、特許文献3には780MPa以上であり、成形性に優れた高強度溶融めっき鋼板及びその製造方法が開示されている。また、特許文献4には優れた成形加工性および溶接性を有する高張力冷延鋼板およびその製造方法が開示されている。また、特許文献5にはTSが800MPa以上であり、耐水素脆化、溶接性、穴広げ性および延性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−225915号公報
【特許文献2】特開2009−209451号公報
【特許文献3】特開2010−209392号公報
【特許文献4】特開2006−219738号公報
【特許文献5】特開2004−332099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された高強度溶融めっき鋼板では、降伏強さ550MPa以上の高強度を得ることが難しくなるとともに熱影響部の靱性が低く、抵抗スポット溶接部の高速変形でのねじり強度は改善の余地がある。
【0007】
特許文献2に記載された高強度溶融めっき鋼板では、面積率で30%以上90%以下のフェライト相と3%以上30%以下のベイナイト相と5%以上40%以下のマルテンサイト相を有するため、降伏強さ550MPa以上の高強度を得ることが難しくなるとともに熱影響部の靱性が低く、抵抗スポット溶接部の高速変形でのねじり強度は改善の余地がある。
【0008】
特許文献3に記載された高強度溶融めっき鋼板では、降伏強さ550MPa以上の高強度を得ることが難しくなるとともに熱影響部の靱性が低く熱影響部の靱性が劣化するため、抵抗スポット溶接部の高速変形でのねじり強度は改善の余地がある。
【0009】
特許文献4に記載された高強度溶融めっき鋼板について、Ceq値0.25以下とすることで溶接性に優れた鋼板が得られるとされている。しかしながら、従来の静的な引張せん断、剥離強度には有効ではあるが、フェライト相に関する構成を考慮すると、靱性が十分とはいえず、抵抗スポット溶接部の高速変形でのねじり強度は改善の余地がある。
【0010】
特許文献5で提案されたミクロ組織では、ベイナイト、ベイ二ティックフェライトの一方又は双方を面積率で合計34〜97%であり、抵抗スポット溶接部の高速変形でのねじり強度について改善の余地がある。
【0011】
上述のように、従来の技術では、いずれも抵抗スポット溶接部の高速変形でのねじり強度に課題があり、実用上補強部材を用いて回避する場合がある等、軽量化効果は十分とはいえないのが現状である。
【0012】
本発明は、上記した従来技術が抱える問題を有利に解決するものであり、高速変形でのねじり強度が高い抵抗スポット溶接部を形成可能であり、降伏強さ550MPa以上の強度を有する高強度めっき鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。なお、本発明において「優れた溶接性」とは、高速変形でのねじり強度が高いことを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明者らは、抵抗スポット溶接部の高速変形でのねじり強度について鋭意検討した結果、熱影響部の靱性を高めるために溶接の熱影響を受ける前の組織を変化させて、下記に示す知見を得た。
【0014】
(1)高速変形でのねじり試験をした場合、熱影響部の亀裂はナゲットにおいて圧延方向に垂直な方向(板厚方向)に発生する。
【0015】
(2)この方向の亀裂は、圧延方向に直角方向で切ったときの板厚断面の組織を、圧延直角方向の板厚断面の観察において、体積率で50〜80%のマルテンサイト相を含有し、前記マルテンサイト相全体に占める焼戻しマルテンサイトの体積率が50%以上85%以下であり、且つフェライト相を含有し、該フェライト相の平均粒径が13μm以下、フェライト相全体におけるアスペクト比が2.0以下のフェライト粒の体積率が70%以上であるミクロ組織に制御することで抑制することができる。
【0016】
(3)熱影響部では、母相で板幅方向に展伸するフェライト粒が多数存在すると、板幅方向に展伸した粒の先端に応力集中するので、粒の先端が硬質のマルテンサイトなどと隣接すると、ボイドが発生しやすい。そして、ボイドが連結することで容易にナゲット周囲に亀裂が発生する。このようになると、高速変形でのねじり試験で、亀裂がナゲットにおいて圧延方向に垂直な方向(板厚方向)に発生して、強度が低下する。本発明のミクロ組織とすれば、焼戻しマルテンサイトが硬質のマルテンサイトと軟質のフェライトの硬度差を緩和するため、ボイドが発生しにくく、強度が上昇する。
【0017】
本発明は以上の知見に基づき完成されたものであり、より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0018】
[1]質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.01〜1.80%、Mn:1.8〜3.2%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.01〜2.0%を含有し、B:0.0001〜0.005%、Ti:0.005〜0.04%、Mo:0.03〜0.50%のうち1種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成と、圧延直角方向の板厚断面の観察において、体積率で50〜80%のマルテンサイト相を含有し、前記マルテンサイト相全体に占める焼戻しマルテンサイトの体積率が50%以上85%以下であり、且つフェライト相を含有し、該フェライト相の平均粒径が13μm以下、フェライト相全体におけるアスペクト比が2.0以下のフェライト粒の体積率が70%以上であるミクロ組織と、を有する鋼板と、該鋼板の表面に形成されためっき層と、を備え、降伏強さ(YP)が550MPa以上である高強度めっき鋼板。
【0019】
[2]前記成分組成は、さらに、質量%で、Crを1.0%以下含有する[1]に記載の高強度めっき鋼板。
【0020】
[3]前記成分組成は、さらに、質量%で、Cu、Ni、Sn、As、Sb、Ca、Mg、Pb、Co、Ta、W、REM、Zn、Nb、V、Cs、Hfのいずれか1種以上を合計で1%以下含有する[1]または[2]に記載の高強度めっき鋼板。
【0021】
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延後、平均冷却速度が10〜30℃/sの条件で冷却し、巻取温度が470〜700℃の条件で巻取る熱延工程と、前記熱延工程で得られた熱延鋼板を冷間圧延する冷延工程と、前記冷延工程で得られた冷延鋼板を、750〜900℃の焼鈍温度域まで加熱し、該焼鈍温度域で30〜200秒保持し、該保持において、半径200mm以上のロールで曲げ曲げ戻しを合計8回以上行い、前記保持後、平均冷却速度が10℃/s以上、冷却停止温度が400〜600℃の条件で冷却する焼鈍工程と、前記焼鈍工程後、めっき処理し、該処理後10〜25℃/sの平均冷却速度で冷却するめっき工程と、を有する高強度めっき鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の高強度めっき鋼板は、降伏強さ550MPa以上で、抵抗スポット溶接継手の高速ねじり強度に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】高速変形でのねじり試験の試験方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0025】
本発明の高強度めっき鋼板は、鋼板と、該鋼板の表面に形成されためっき層とを備える。
【0026】
本発明の高強度めっき鋼板の鋼板部分の成分組成は、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.01〜1.80%、Mn:1.8〜3.2%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.01〜2.0%を含有し、B:0.0001〜0.005%、Ti:0.005〜0.04%、Mo:0.03〜0.50%のうち1種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる。
【0027】
また、上記成分組成は、さらに、質量%で、Cr:1.0%以下含有してもよい。
【0028】
また、上記成分組成は、さらに、質量%で、Cu、Ni、Sn、As、Sb、Ca、Mg、Pb、Co、Ta、W、REM、Zn、Nb、V、Cs、Hfのいずれか1種以上を合計:1%以下含有してもよい。
【0029】
以下、上記成分組成の各成分について説明する。成分の含有量を表す「%」は「質量%」を意味する。
【0030】
C:0.05〜0.15%
Cはマルテンサイトを生成させて強度を上昇させるために必要な元素である。C含有量が0.05%未満では、マルテンサイトによる強度上昇効果が十分ではなく、降伏強さが550MPa以上にならない。一方、C含有量が0.15%を超えると熱影響部にセメンタイトが多量に生成して熱影響部でマルテンサイトとなった部分の靱性を低下させ、高速変形でのねじり試験で強度が低下する。したがって、C含有量は0.05〜0.15%とする。下限について好ましいC含有量は0.06%以上である。より好ましくは0.07%以上、さらに好ましくは0.08%以上である。上限について好ましいC含有量は0.14%以下とする。より好ましくは0.12%以下、さらに好ましくは0.10%以下である。
【0031】
Si:0.01〜1.80%
Siは固溶強化により鋼板の強度を高める作用を有する元素である。降伏強さを安定的に確保するために、Si含有量は0.01%以上とすることが必要とである。一方、Si含有量が1.80%を超えると、セメンタイトが微細にマルテンサイト中に析出して高速変形でのねじり強度が低下する。また、熱影響部の亀裂発生を抑える観点から、その上限を1.80%とする。下限について好ましいSi含有量は0.50%以上である。より好ましくは0.60%以上、さらに好ましくは0.90%以上である。上限について好ましいSi含有量は1.70%以下である。より好ましくは1.60%以下、さらに好ましくは1.55%以下である。
【0032】
Mn:1.8〜3.2%
Mnは固溶強化により鋼板の強度を高める作用を有する元素である。Mnは、フェライト変態やベイナイト変態などを抑えてマルテンサイトを生成させて素材の強度を上昇させる元素である。降伏強さを安定的に確保するため、Mn含有量は1.8%以上とする必要がある。一方、Mn含有量が多くなると、焼き戻しでセメンタイトが生成するとともに、熱影響部の靱性が低下し、高速変形でのねじり強度が低下する。このためMn含有量は3.2%以下とする。上限について好ましいMn含有量は2.8%以下である。
【0033】
P:0.05%以下
Pは粒界に偏析して靱性を低下させる。そのため、P含有量を0.05%以下とした。好ましくは0.03%以下であり、さらに好ましくは0.02%以下である。P含有量は少ないほど好ましいが、P含有量低減のためのコストを考慮すると、P含有量は0.0001%以上が好ましい。
【0034】
S:0.02%以下
Sは、Mnと結合して粗大なMnSを形成し、靱性を低下させる。このため、S含有量は低減することが好ましい。本発明においてS含有量は0.02%以下であればよい。好ましくは0.01%以下であり、さらに好ましくは0.002%以下である。S含有量は少ないほど好ましいが、S含有量低減のためのコストを考慮すると、S含有量は0.0001%以上が好ましい。
【0035】
Al:0.01〜2.0%
鋼中に酸化物が大量に存在すると靱性が低下することから脱酸は重要である。また、Alにはセメンタイトの析出を抑制する効果があり、その効果を得るために、0.01%以上含有する必要がある。一方、Al含有量が2.0%を超えると、酸化物や窒化物が凝集粗大化して靱性が低下するため、Al含有量は2.0%以下とする。下限について好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.04%以上、さらに好ましくは0.05%以上である。上限について好ましいAl含有量は0.10%以下である。より好ましくは0.08%以下、さらに好ましくは0.06%以下である。
【0036】
上記の通り、上記成分組成は、B:0.0001〜0.005%、Ti:0.005〜0.04%、Mo:0.03〜0.50%のうち1種以上を含有する。
【0037】
B:0.0001〜0.005%
Bは粒界を強化して靱性向上に必要な元素である。この効果を得るには、Bの含有量は0.0001%以上にする必要がある。一方、0.005%を超えると、BはFe23(CB)を形成して靱性を劣化させる。このため、B含有量は0.0001〜0.005%の範囲に限定する。下限について好ましいB含有量は0.0005%以上である。より好ましくは0.0010%以上、さらに好ましくは0.0015%以上である。上限について好ましくは0.004%以下、より好ましくは0.003%以下である。
【0038】
Ti:0.005〜0.04%
TiはNと結合し、窒化物を形成することにより、BNの形成を抑制し、Bの効果を引き出すとともに、TiNを形成させて結晶粒を微細化して靱性を向上させる。この効果を得るため、Tiの含有量は0.005%以上にする必要がある。一方、Ti含有量が0.04%を超えると、この効果が飽和するだけではなく、圧延負荷を高めるため、安定した鋼板製造が困難になる。このため、Ti含有量は0.005〜0.04%の範囲に限定する。下限について好ましいTi含有量は0.010%以上である。より好ましくは0.020%以上である。上限について好ましくは0.03%以下である。
【0039】
Mo:0.03〜0.50%
Moは本発明の効果をさらに向上させる元素である。Moがセメンタイトの形成や熱影響部の結晶粒の粗大化を防止して熱影響部の靱性を向上させる。Moの含有量は0.03%以上にする必要がある。一方、Mo含有量が0.50%を超えると、Mo炭化物が析出して靱性が逆に劣化してしまう。このため、Mo含有量は0.03〜0.50%の範囲に限定する。また、上記範囲でMoを含有すれば、溶接継手の液体金属脆性低下も抑制することができ、継手の強度を向上させることができる。下限について好ましいMo含有量は0.08%以上である。より好ましくは0.09%以上、さらに好ましくは0.10%以上である。上限について好ましくは0.40%以下、より好ましくは0.35%以下、さらに好ましくは0.30%以下である。
【0040】
上記の通り、本発明の成分組成は、任意成分として以下の成分を含んでもよい。
【0041】
Cr:1.0%以下
Crは焼き戻し脆化を抑制する効果を持つ元素である。そのため、添加することで本発明の効果はさらに増大する。この効果を得るためにはCr含有量は0.01%以上であることが好ましい。しかしながら、1.0%を超えての含有はCr炭化物の形成を招き熱影響部の靱性劣化を招く。そこで、Cr含有量は1.0%以下が好ましく、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下である。
【0042】
また、Cu、Ni、Sn、As、Sb、Ca、Mg、Pb、Co、Ta、W、REM、Zn、Nb、V、Cs、Hfのいずれか1種以上を合計で1%以下含有してもよい。好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.03%以下である。また、上記以外の成分はFeおよび不可避的不純物である。
【0043】
残部はFeおよび不可避的不純物とする。B含有量、Ti含有量及びMo含有量のいずれかが本発明範囲内にある場合であって、B:0.0001%未満、Ti:0.005%未満、Mo:0.03%未満の場合、これらは不可避的不純物として含まれるものとする。
【0044】
以上、成分組成について説明したが、本発明で期待した効果を得るには、成分組成を上記の範囲に調整するだけでは不十分であり、鋼組織(ミクロ組織)も制御することが重要である。その条件について以下説明する。なお、以下で説明する組織の構成は、圧延方向に対して直角方向に切った板厚断面を観察したときの組織である。また、体積率、平均粒径、アスペクト比は実施例に記載の方法で得られた値を採用する。
【0045】
マルテンサイト相の体積率:50〜80%
マルテンサイト相は、硬質相であり、変態組織強化によって鋼板の強度を増加させる作用を有している。また、降伏強さを550MPa以上にするには、マルテンサイト相の体積率は50%以上とする必要がある。好ましくは53%以上、より好ましくは56%以上である。一方、80%を超えると、マルテンサイトと他の組織界面で発生するボイドが局部的に集中するようになり、熱影響部の靱性が低下する。このため80%以下とする。好ましくは79%以下、より好ましくは75%以下、さらに好ましくは70%以下である。
【0046】
マルテンサイト相全体に占める焼戻しマルテンサイトの面積率:50%以上85%以下
焼戻しマルテンサイトは、焼入れままマルテンサイトより硬度が低いため、硬質の焼入れままマルテンサイトと軟質のフェライトの硬度差を緩和できる。これを上記体積率で含めば、高速変形でのねじり試験で、ボイドが発生しにくく、強度が上昇する。そのため、マルテンサイト中の焼戻しマルテンサイトの体積率を50%以上とする。好ましくは53%以上、より好ましくは56%以上である。また、マルテンサイト中の焼戻しマルテンサイトの体積率が多くなりすぎると、降伏強度が低くなる。このため、マルテンサイト中の焼戻しマルテンサイトの体積率は85%以下とする。好ましくは75%以下、より好ましくは65%以下である。
【0047】
本発明の鋼組織には、マルテンサイト相以外に、フェライト相が含まれる。フェライト相の体積率はマルテンサイト周辺にボイドの局部的に集中を抑え、熱影響部の靱性を向上させるため、30%以上が好ましい。より好ましくは32%以上、さらに好ましくは34%以上である。また、降伏強さを得られるため50%以下が好ましい。より好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下である。
【0048】
また、マルテンサイト相、フェライト相以外に、セメンタイト、パーライト、ベイナイト相、残留オーステナイト相等のその他の相を含んでもよい。その他の相は合計体積率で8%以下であればよい。
【0049】
フェライト相の平均粒径:13μm以下
フェライト相の平均粒径が13μm超になると、鋼板の強度が低下すると共に熱影響で時効した靱性の低いフェライトにより靱性が劣化する。また、熱影響部(HAZ部)の粒成長により溶接部の強度が低下する。したがって、フェライト相の平均粒径を13μm以下とする。下限について好ましい平均粒径は3μm以上である。より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上である。上限について好ましい平均粒径は12μm以下である。より好ましくは11μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0050】
ここで、上記フェライト相の平均粒径は、圧延方向に垂直な板厚断面(C断面)の板厚1/4の位置について、1体積%ナイタールによる腐食現出組織を走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍に拡大して、10視野分撮影し、ASTM E 112−10に準拠した切断法によって求める。
【0051】
フェライト相全体に占めるアスペクト比が2.0以下のフェライト粒の体積率:70%以上
フェライト粒のアスペクト比が2.0を超えるものが多い場合、板厚方向の粒成長は析出物でピン止めされているため、熱影響で扁平して靱性が低下する。なお、本発明で得られるフェライト粒のアスペクト比の下限は実質0.8である。本発明では、靭性を高めるために、フェライト相全体に占めるアスペクト比が2.0以下のフェライト粒の体積率を70%以上とする。
【0052】
フェライト粒のアスペクト比を測定する方法は、圧延方向に垂直な板厚断面(C断面)の板厚1/4の位置について、1体積%ナイタールによる腐食現出組織を走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍に拡大して、10視野分撮影し、幅方向(C方向)の長さと板厚方向の長さの比をアスペクト比とする。
【0053】
上記の成分組成、ミクロ組織を有する鋼板は、表面にめっき層を有する。めっき層としては、亜鉛めっき層が好ましく、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層であることがさらに好ましい。なお、亜鉛以外の金属のめっきでもよい。
【0054】
本発明の高強度めっき鋼板は、降伏強さが550MPa以上である。好ましくは600MPa以上である。降伏強さの上限は特に限定されないが、800MPa以下であることが多い。
【0055】
本発明の高強度めっき鋼板は、溶接性に優れる。具体的には、実施例に記載の方法で測定した亀裂の長さが50μm以下(亀裂が発生しない場合も含む)である。
【0056】
本発明の課題解決に必須ではないが、本発明の高強度めっき鋼板の引張強さは950MPa以上であることが好ましい。より好ましくは1000MPa以上である。引張強さの上限について、1200MPa以下になることが多い。
【0057】
本発明の課題解決に必須ではないが、本発明の高強度めっき鋼板の伸びは14.0%以上が好ましい。より好ましくは16.0%以上である。伸びの上限について、22.0%以下になることが多い。
【0058】
以下、本発明の高強度めっき鋼板の製造方法について説明する。本発明の高強度めっき鋼板の製造方法は、熱延工程、冷延工程、焼鈍工程、めっき工程を有する。以下、これらの各工程について説明する。
【0059】
熱延工程は、成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延後、平均冷却速度が10〜30℃/sの条件で冷却し、巻取温度が470〜700℃の条件で巻取る工程である。
【0060】
本発明において、鋼素材(鋼スラブ)の溶製方法は特に限定されず、転炉、電気炉等、公知の溶製方法を採用することができる。また、溶製後、偏析等の問題から連続鋳造法により鋼スラブとするのが好ましいが、造塊−分塊圧延法、薄スラブ連鋳法等、公知の鋳造方法でスラブとしてもよい。なお、鋳造後にスラブを熱間圧延するにあたり、加熱炉でスラブを再加熱した後に圧延してもよいし、所定温度以上の温度を保持している場合には、スラブを加熱することなく直送圧延してもよい。
【0061】
上記の得られた鋼素材に、粗圧延および仕上げ圧延からなる熱間圧延を施す。本発明においては、粗圧延前に鋼素材中の炭化物を溶解することが好ましい。スラブを加熱する場合は、炭化物を溶解させたり、圧延荷重の増大を防止したりするため、1100℃以上に加熱することが好ましい。また、スケールロスの増大を防止するため、スラブの加熱温度は1300℃以下とすることが好ましい。また、上述のとおり、粗圧延前の鋼素材が、所定温度以上の温度を保持しており、鋼素材中の炭化物が溶解している場合には、粗圧延前の鋼素材を加熱する工程は省略可能である。なお、粗圧延条件、仕上げ圧延条件については特に限定する必要はない。
【0062】
熱間圧延後の冷却の平均冷却速度:10〜30℃/s
熱間圧延後、巻取温度までの平均冷却速度が10℃/s未満であると、フェライト粒が成長せず、アスペクト比が2.0より大きくなりやすく、上記「フェライト相全体に占めるアスペクト比が2.0以下のフェライト粒の体積率」が低くなり、熱影響部の靱性が低下する。一方、30℃/sを超えると、フェライト粒が成長し過ぎで、強度が低下する。したがって、平均冷却速度が10〜30℃/sである。下限について好ましい上記平均冷却速度は15℃/s以上である。上限について好ましい上記平均冷却速度は25℃/s以下である。なお、冷却開始温度である仕上げ圧延終了温度は850〜980℃であることが熱延鋼板のフェライト粒径を均一に成長し、所望のアスペクト比を得られるためという理由で好ましい。
【0063】
巻取温度:470〜700℃
巻取温度が470℃を下回ると、ベイナイトなど低温変態相が生成し、熱影響部で軟化が生じる。一方、巻取温度が700℃を超えると、フェライト粒径が粗大となり、熱影響部の靱性が低下する。したがって、巻取温度は470〜700℃である。下限について好ましい巻取温度は500℃以上である。上限について好ましい巻取温度は600℃以下である。
【0064】
冷間圧延工程では、上記の熱間圧延工程で得られた熱延鋼板に冷間圧延を施す。冷間圧延の圧延率は特に限定されないが、通常30〜60%である。なお、酸洗後に冷間圧延してもよく、この場合、酸洗の条件は特に限定されない。
【0065】
上記冷間圧延工程で得られた冷延鋼板に対して、焼鈍工程を行う。焼鈍工程の具体的な条件は以下の通りである。
【0066】
焼鈍条件:750〜900℃の焼鈍温度域で30〜200秒保持
フェライト相の平均粒径が13μm以下、アスペクト比が2.0以下のフェライト粒が全体のフェライト相に占める体積率が70%以上であるミクロ組織とするには、冷間圧延後の鋼板を750〜900℃の焼鈍温度で30〜200秒保持して焼鈍する必要がある。焼鈍温度が750℃未満や保持時間が30秒未満の場合、回復の進行が遅くなり、所望のアスペクト比が得られない。一方、焼鈍温度が900℃を超えると、マルテンサイト分率が高くなり、熱影響部の靱性が低下する。また、焼鈍時間が200秒を超えると、鉄炭化物の多量の析出により延性の低下を招くことがある。したがって、焼鈍温度は750〜900℃、より好ましくは800〜900℃、保持時間は30〜200秒、より好ましく50〜150秒とする。なお、上記焼鈍温度域までの加熱条件は特に限定されない。
【0067】
上記保持において半径200mm以上のロールで曲げ曲げ戻し:合計8回以上
多くのフェライト粒のアスペクト比が2.0より大きくなり、上記「フェライト相全体に占めるアスペクト比が2.0以下のフェライト粒の体積率」が所望の範囲にならないと、靱性が劣化する。上記「フェライト相全体に占めるアスペクト比が2.0以下のフェライト粒の体積率」を所望の範囲とするためには、焼鈍中に粒成長させることが必要である。そのために、上記焼鈍温度域での保持において、半径200mm以上のロールで曲げ曲げ戻しを合計8回以上行うことが必要である。半径200mm未満のロールでは、曲げ歪み量が大きくなり、より鋼板が伸ばされる結果、フェライト粒のアスペクト比が2.0超となりやすいと考えられる。そこで、ロール径は200mm以上とした。また、8回未満ではフェライト粒のアスペクト比が2.0を超えやすいため、8回以上とした。好ましくは9回以上である。なお、曲げ歪み量が大量入ると、熱影響部の靱性が劣化するという理由で15回以下であることが好ましい。なお、曲げ曲げ戻しの合計が8回以上とは、曲げの回数と曲げ戻しの回数の合計が8回以上を意味する。
【0068】
焼鈍温度域での保持後の冷却の平均冷却速度:10℃/s以上
平均冷却速度が10℃/s未満になると、フェライト粒が粗大化し、強度及び熱影響部の靱性が低下する。このため、冷却条件は10℃/s以上である。冷却速度が速すぎると、所望のアスペクト比が得られないため、好ましくは、30℃/s以下とする。
【0069】
焼鈍温度域での保持後の冷却の冷却停止温度:400〜600℃
冷却停止温度を400℃未満とすると、所望のマルテンサイト相の体積分率が得られないため、強度が低下する。一方、冷却停止温度が600℃超になると、フェライト粒成長が進み、強度及び熱影響部の靱性が低下する。そこで、上記冷却停止温度を400〜600℃とする。
【0070】
上記焼鈍工程後に、下記のめっき処理を施すめっき工程を行う。めっき処理の種類は特に限定されず、電気めっき処理、溶融めっき処理のいずれでもよい。溶融めっき処理後に合金化処理を行ってもよい。好ましくは、溶融亜鉛めっき処理、溶融亜鉛めっき処理後に合金化処理を行う合金化溶融亜鉛めっき処理である。
【0071】
めっき処理後の平均冷却速度:10〜25℃/s
焼戻しマルテンサイトを生成させるため、めっき処理後の平均冷却速度を制御することが重要である。平均冷却速度が10℃/s未満とすると、焼戻しマルテンサイトが多量に生成し、降伏強度が得られなくなる。一方、平均冷却速度が25℃/sを超えると、焼戻しマルテンサイトが50%以下となり、熱影響部の靱性が劣化する。そこで、平均冷却速度を10〜25℃/sとする。
【実施例】
【0072】
表1に示す成分組成のスラブを表2に示す条件で、熱延工程、冷延工程、焼鈍工程、めっき工程を行い、高強度めっき鋼板を製造した。また、組織観察や特性評価の方法は次の通りである。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
(1)組織観察
得られた鋼板の圧延方向に垂直な方向に切った板厚断面を研磨して、1体積%ナイタールによる腐食現出させた。走査電子顕微鏡で1000倍に拡大して、表面から板厚1/4t部までの領域内を10視野分撮影した。tは鋼板の厚さ(板厚)である。上記撮影画像に基づき、各相の面積率を測定し、面積率を体積率とみなした。フェライト相は粒内に腐食痕や鉄系炭化物が観察されない形態を有する組織である。焼き入れままマルテンサイト相は粒内に炭化物が認められず、白いコントラストで観察された組織である。焼戻しマルテンサイト相は結晶粒内多数の微細な鉄系炭化物および腐食痕が認められる組織である。上記のマルテンサイト相面積率を体積率とした。なお、その他の相としてベイナイト、パーライト、残留オーステナイト相が確認された。
【0076】
フェライト相の平均粒径は、上記体積率の測定に用いたサンプルを使用し、走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍に拡大して、10視野分撮影し、ASTM E 112−10に準拠した切断法によって求めた。算出したフェライト相の平均粒径を表3に示した。
【0077】
フェライト粒のアスペクト比について、上記体積率の測定に用いたサンプルを使用し、1体積%ナイタールによる腐食現出組織を、走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍に拡大して、10視野分撮影し、幅方向(C方向)の長さと板厚方向の長さの比をアスペクト比とした。アスペクト比が2.0のフェライト粒の合計体積率を算出し、上記で求めたフェライト相の体積率を用いて、フェライト相全体におけるアスペクト比が2.0のフェライト粒の体積率を算出した。
【0078】
(2)引張特性
圧延方向と90°の方向を長手方向(引張方向)とするJIS Z 2201に記載の5号試験片を用い、JIS Z 2241に準拠した引張試験を5回行い、平均の降伏強さ(YP)、引張強さ(TS)、突合せ伸び(EL)を求めた。結果を表3に示す。
【0079】
(3)高速変形でのねじり試験
圧延方向と90°の方向を長手方向とした幅10mm、長さ80mm、板厚1.6mmの鋼板を図1(a)のように幅方向を2枚重ね合わせ、ナゲット径が7mmになるようにスポット溶接を行い、試験片を作製した。作製した試験片を図1(b)のように専用の金型に縦に固定して、押金具で成形荷重10kN、荷重速度100mm/minで試験力を加え、図1(c)のように170°になるように変形させた。その後、溶接部の割れ有無を確認するため、圧延方向の板厚断面を鏡面研磨し、ノーエッチングのままで光学顕微鏡で400倍に拡大して、亀裂を観察した(図1(d))。亀裂が発生しなかった場合を「◎」と判定し、亀裂が発生し、亀裂の長さが50μm以下の場合を「○」と判定し、亀裂の長さが50超え100μm未満の場合を「△」と判定し、亀裂の長さが100μm以上の場合を「×」と判定した。これらの結果を表3にまとめて示す。なお、本試験で「◎」または「○」の評価になることが、溶接性に優れる、高速変形でのねじり強度が高い、靭性に優れることを意味する。
【0080】
【表3】
図1