特許第6432797号(P6432797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6432797プレハブ倉庫及び類似の建物のための振動減衰装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432797
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】プレハブ倉庫及び類似の建物のための振動減衰装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20181126BHJP
   E04B 1/36 20060101ALI20181126BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20181126BHJP
   F16F 15/073 20060101ALI20181126BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20181126BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   E04H9/02 301
   E04B1/36 N
   E04B1/58 506P
   F16F15/073
   F16F15/02 Z
   F16F7/12
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-504799(P2016-504799)
(86)(22)【出願日】2014年3月21日
(65)【公表番号】特表2016-519231(P2016-519231A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】IB2014060041
(87)【国際公開番号】WO2014147598
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】TV2013A000038
(32)【優先日】2013年3月21日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515266131
【氏名又は名称】ポセイドン ジーティー エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100118315
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 博道
(72)【発明者】
【氏名】グラモラ、 ジャンフランコ
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−019017(JP,A)
【文献】 特開2012−082668(JP,A)
【文献】 特開2006−063771(JP,A)
【文献】 特開2000−265707(JP,A)
【文献】 特開2007−016390(JP,A)
【文献】 米国特許第06009674(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/36
E04B 1/58
E04H 9/02
F16F 7/12
F16F 15/02
F16F 15/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の垂直な荷重支持柱(101)と、前記荷重支持柱(101)の側面上に当接して垂直位置に配置された、少なくとも1つのプラグパネル(105)、又は前記荷重支持柱(101)に当接する少なくとも1つの水平梁(103)と、前記水平梁(103)を横切る方向に延在し、前記水平梁(103)に当接する軸方向端部(104a)を有する少なくとも1つの水平なカバー桁(104)と、を備えるプレハブ倉庫(100)及び類似の建物構造に対する振動減衰装置(1)であって、
前記振動減衰装置(1)は、
直線的な細長い溝またはスリット(3)が形成された、平坦な側面肩部(2a)を備える剛体のブラケット(2)であって、前記ブラケットは、前記水平梁(103)または前記荷重支持柱(101)の本体上で、前記カバー桁(104)または前記プラグパネル(105)の隣りに固定的にアンカー止めされる構造となっていて、前記側面肩部(2a)が前記カバー桁(104)の側面に対向するかまたは前記プラグパネル(105)の表面に対向し、前記細長い溝またはスリット(3)が前記カバー桁(104)の長手軸(L)または前記プラグパネル(105)の長手軸(F)に対して局所的に平行となるように配置されている、剛体のブラケット(2)と、
前記側面肩部(2a)上にある前記細長い溝またはスリット(3)と摺動可能に係合し、かつ前記カバー桁(104)の本体または前記プラグパネル(105)の本体に固定的にアンカー止めされる構造となっている、可動スライダ(4)と、
前記可動スライダ(4)を前記ブラケット(2)に固定的に接続し、かつ前記可動スライダ(4)が前記ブラケット(2)の前記細長い溝またはスリット(3)に沿って少しでも変位すると弾塑性的に変形するような構造を持った、弾塑性挙動をする変形可能接続部材(6)と、
を備えることを特徴とする、振動減衰装置(1)。
【請求項2】
前記剛体のブラケット(2)はL字型であって、互いに直交する第1の平坦部分(2b)と第2の平坦部分(2a)とを備え、
前記第1の平坦部分(2b)は前記水平梁(103)の本体または前記荷重支持柱(101)の本体に当接して配置された後に固定的にアンカー止めされる構造となっており、
前記第2の平坦部分(2a)は、前記カバー桁(104)の側面または前記プラグパネル(105)の表面に面して接触して配置される構造となっていて、前記ブラケット(2)の本体内に、前記第1の平坦部分(2b)の支持面の据付面とは局所的に平行または垂直である基準軸(R)に対して平行な細長い溝またはスリット(3)を備えて、前記ブラケットの側面肩部(2a)を形成することを特徴とする、請求項1に記載の振動減衰装置(1)。
【請求項3】
前記剛体のブラケット(2)は適切な厚さの金属のプレート(7)で形成され、前記金属のプレート(7)がL字型に折り曲げられて、局所的に相互に直交する前記第1と第2の平坦部分(2b、2a)を持ち、前記プレート(7)の第2の平坦部分(2a)は、前記プレート(7)の前記第1の平坦部分(2b)の据付面に対して局所的に平行又は直交の状態で、前記プレート(7)の本体内に延在する直線状の貫通スロット穴(9)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の振動減衰装置(1)。
【請求項4】
前記ブラケット(2)の第1の平坦部分(2b)は、貫通アンカーねじ(5)、または鉄筋コンクリート基礎ボルトなどによって、前記水平梁(103)の本体上、または前記荷重支持柱(101)の本体上に固定的にアンカー止めされる構造であることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の振動減衰装置(1)。
【請求項5】
前記可動スライダ(4)は、前記カバー桁(104)の側面内または前記プラグパネル(105)の面上に差し込まれ又は固定されて、前記カバー桁(104)の本体または前記プラグパネル(105)の本体に動かないように固定される、アンカーピン(10)のヘッドを備えることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の振動減衰装置(1)。
【請求項6】
前記変形可能接続部材(6)は、少なくとも1つの金属材料のU字型接続部材(11)を備え、前記U字型接続部材(11)は、前記可動スライダ(4)の本体と一体になった第1の端部と、前記ブラケット(2)の本体と一体になった第2の端部とを有し、前記可動スライダ(4)が少しでも変位すると、前記ブラケット(2)の前記細長いスリットまたは溝(3)に沿って弾塑性的に変形可能であることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の振動減衰装置(1)。
【請求項7】
前記変形可能接続部材(6)は、前記可動スライダ(4)の両側に配置された少なくとも2つのU字型接続部材(11)を備え、各U字型接続部材(11)は前記可動スライダ(4)の本体と一体になった第1の端部と、前記ブラケット(2)の本体と一体になった第2の端部とを有し、前記可動スライダ(4)が少しでも変位すると、前記ブラケット(2)の前記スリットまたは細長い溝(3)に沿って弾塑性的に変形可能であることを特徴とする、請求項6に記載の振動減衰装置(1)。
【請求項8】
前記変形可能接続部材(6)は、前記可動スライダ(4)の両側に配置され、前記細長い溝またはスリット(3)の基準軸(R)に沿って互いに整列され、前記可動スライダ(4)が前記ブラケット(2)の細長い溝またはスリット(3)に沿って少しでも変位すると個別または交互に弾塑性的に展伸または曲がる、少なくとも2つのU字型接続部材(11)を備えることを特徴とする、請求項7に記載の振動減衰装置(1)。
【請求項9】
前記変形可能接続部材(6)は、
前記可動スライダ(4)に直接嵌る構造となっている中央ブッシュ(12)と、
プレート(7)の第2の平坦部(2a)上に、直線状の貫通スロット穴(9)の基準軸(R)に沿う前記直線状の貫通スロット穴(9)の両側に動かないように固定された、2つの側部アンカープレート(13)と、
前記中央ブッシュ(12)の両側に配置され、それぞれが前記中央ブッシュ(12)の本体を各側部アンカープレート(13)に強固に接続するような構造となった、少なくとも2つの金属材料のU字型接続部材(11)と、
を備えることを特徴とする、請求項6、請求項7、または請求項8に記載の振動減衰装置(1)。
【請求項10】
前記U字型接続部材(11)はそれぞれ、前記可動スライダ(4)の本体に堅固に接続された第1の端部と、前記ブラケット(2)の本体へ堅固に接続された第2の端部とを有する、C字型またはU字型の曲がった金属棒(11)により形成されていることを特徴とする、請求項6〜請求項9のいずれか一項に記載の振動減衰装置(1)。
【請求項11】
一連の垂直な柱(101)と、
前記柱(101)に当接して配置された少なくとも1つの水平梁(103)と、
前記水平梁(103)に対して横方向に延在し、かつ前記水平梁(103)に当接する軸方向端部(104a)を有する少なくとも1つの水平カバー桁(104)と、
を備える建物(100)であって、
前記建物(100)は、前記水平カバー桁(104)の前記軸方向端部(104a)が、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の振動減衰装置(1)の少なくとも1つによって前記水平梁(103)に接続されていることを特徴とする、建物。
【請求項12】
前記水平カバー桁(104)の前記軸方向端部(104a)は、前記軸方向端部(104a)の両端に配置された2つの、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の振動減衰装置(1)によって前記水平梁(103)に接続されていることを特徴とする、請求項11に記載の建物。
【請求項13】
前記柱(101)の側面に当接して、垂直位置に配置された、少なくとも1つのプラグパネル(105)をさらに備え、かつ前記プラグパネル(105)は少なくとも1つの、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の振動減衰装置(1)によって前記柱(101)に接続されていることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレハブ倉庫及び類似の建物のための振動減衰装置に関する。
【0002】
より詳細には、本発明はプレハブの鉄筋コンクリート倉庫のための振動減衰器に関する。以下の開示は一般性を失うことなく上記振動減衰器について明示的に説明する。
【背景技術】
【0003】
周知のように倉庫は特に大きく、広い空間を有するプレハブの建物であり、通常は工業用または航空機処理用の機械類を収納するように設計されている。あるいは様々な種類の材料、商品、車両の一時保管に利用される。そして、通常は鉄筋コンクリート製の、一連の垂直柱上に水平位置に配置された大きな平屋根を備えていることが多い。
【0004】
プレハブの鉄筋コンクリート製の倉庫の場合、通常L字型または逆T字型の断面をした一連の鉄筋コンクリートの長い水平梁、これは柱の上端に接して互いに横並びに平行に配置されている、と、一連の水平の鉄筋コンクリートカバー桁、これは両端が水平梁上に配置されるよう2つの隣接する水平梁にまたがって互いにある間隔を置いて配置されている、とによって、水平屋根が形成されている。
【0005】
水平梁とカバー桁の一方を単純に他方の上に載置するという特定のモジュール構造であるために、水平屋根はプレハブ鉄筋コンクリートの水平梁とカバー桁を利用して組み立てることができる。
【0006】
上記のモジュール構造は、倉庫の建設コストを大幅に抑制可能ではあるが、波動型の地震に対する抵抗はあまり大きくない。この種の地震に遭遇すると、屋根のカバー桁が実際に前後に変位して、及び/又は水平梁上を水平面内に回転して、桁の一端が水平梁の端部を乗り越え/通過して地面に落下するに至り、倉庫内に居る人にあらゆるリスクが及ぶ傾向がある。
【0007】
この欠点を未然に防止するために、プレハブ鉄筋コンクリート倉庫の製造業者のあるものは、この2つの部材間の関連する運動をすべて防止するような構造となった金属ブラケットにより、カバー桁の両端を様々な水平梁にアンカー止めして動かないようにすることにした。
【0008】
カバー桁と水平梁との間を固定接続すると、明らかに倉庫上部ははるかに剛直で重くなる。その結果、この構造の地震に応答する動的挙動が大幅に変更され、このことが問題点を含むことになる。実際に地震時には、屋根が剛直で重いほど鉄筋コンクリート柱は予想を超えた大きな機械的応力にさらされ、それによって建物が倒壊する危険性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、倉庫の全体構造を過度に強化することなしに、波動型の地震が発生した際にプレハブ鉄筋コンクリート倉庫の屋根のカバー桁の落下を阻止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的に従って、本発明によれば、請求項1、及び、必須ではないが好ましくはその任意の従属請求項に規定されるような、プレハブ倉庫及び類似の建物のための振動減衰装置が提供される。
【0011】
本発明によれば、請求項11、及び、必須ではないが好ましくはその任意の従属請求項に規定するような建物もまた提供される。
【0012】
次に本発明を添付の非制限的な実施形態を示す図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の教示により実現される一連の振動減衰装置を備えたプレハブ鉄筋コンクリート倉庫の屋根の一部を、わかりやすくするために一部を断面で、また一部を省略して表した斜視図である。
図2図1の倉庫の詳細を、わかりやすくするために一部を断面で、また一部を省略して表した拡大図である。
図3】本発明の教示により実現される振動減衰装置の拡大斜視図である。
図4図1とは異なる実施形態の振動減衰装置を備えるプレハブ鉄筋コンクリート倉庫の表面の一部を、わかりやすくするために一部を断面で、また一部を省略して表した、代替的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1、2、3において符号1は、プレハブ鉄筋コンクリート倉庫100または類似の建物構造のカバー桁の軸方向端部に取り付けるための特別構造となっている振動減衰装置の全体を表す。
【0015】
より詳細には、プレハブ倉庫100は、地面から実質的に垂直方向に立ち上がり、必須ではないが好ましくは鉄筋コンクリートで造られた、一連の荷重支持柱101(図1では2つの柱が示されている)と、地面から所定の高さの実質的に水平な位置に、様々な柱101の頂部に当接して配置されている、大きくて実質的に平坦な屋根102とから、基本的に成り立っている。
【0016】
次に、水平屋根102は、一連の長く直線的な水平梁103と、一連の直線的なカバー桁104と、から成り立っている。水平梁103は、実質的に水平に位置し、相互に横並びで離間し、相互に平行で対を成して整列し、また、荷重支持柱101の上端に当接して配置され、地面から所定の高さで2つ以上の隣接する荷重支持柱101に跨って延在する。カバー桁104は、実質的に水平に位置し、相互に横並びとなって離間し、位置的に実質的に平行で相互に整列し水平梁103に対して実質的に直交し、2つの隣接する水平梁103を跨いで配置され、カバー桁の2つの軸方向端部104aのそれぞれが各水平梁103に当接して配置される。
【0017】
図1と2を参照すると、特に図示した実施例において水平梁103は好ましくはプレハブ鉄筋コンクリート製の直線的断面をしたバーであって、必須ではないが好ましくはL字型及び/又は逆T字型断面をしている。これは側方に出っ張った翼部または横桟103aを備え、これがカバー桁104の軸方向端部104aを支持/担持できるような構造となっている。
【0018】
同様に、カバー桁104は好ましくは、プレハブ鉄筋コンクリート製の直線断面のバーとなっており、必須ではないが好ましくはI字型またはダブルT字型断面をしている。これは2つの軸方向端部104aが、2つの別々の水平梁103の翼部または横桟103a上に置かれるような構造となっている。
【0019】
図1〜3を参照すると、振動減衰装置1は、好ましくは金属材料でできた剛体のブラケット2を備えている。これは実質的に平坦な側面肩部2aを持ち、そこには実質的に直線的であって好ましくは貫通する細長い溝またはスリット3も形成されている。これは水平梁103、またはより好ましくは水平梁103の突き出た翼103a上に動かないようにアンカー止めされるような構造となっており、このブラケットの側面肩部2aをカバー桁104の側面に直接対向させて軽く触れさせるようにする。このとき細長い溝またはスリット3の基準軸Rがカバー桁104の長手軸Lに対して位置的にほぼ平行である。振動減衰装置1はさらに、ブラケット2の細長い溝またはスリット3に摺動可能に係合し、カバー桁104の本体に動かないようにアンカー止めされるような構造となった、可動スライダ4も備えている。
【0020】
より詳細には、ブラケット2は実質的にL字型となっており、互いに実質的に直交する上部分2aと下部分2bとを備えている。下部分2bは、水平梁103、またはより好ましくは水平梁103の突き出た翼103aの上に当接して配置され、好ましくは適切な数の貫通アンカーねじ5または他の種類の鉄筋コンクリート基礎ボルトによって水平梁103の本体上に動かないようにアンカー止めされる構造となっている。上部分2aは、カバー桁104の側面に対向して軽く触れるように配置される構造となっていて、実質的に直線的で、好ましくは貫通する細長い溝またはスリット3を備えている。これはブラケット2の本体内で、下部分2bの支持面の据付面に対して位置的にほぼ平行である基準軸Rに平行になっている。
【0021】
L字型ブラケット2の上部分2aは、こうしてブラケットの側面肩部2aを形成している。
【0022】
ブラケット2は、カバー桁104の軸方向端部104aに隣接する、水平梁103の側翼103a上に動かないようにアンカー止めされるようになっている。この時、下部分2bはカバー桁104の側面近くで水平梁103上に当接し、上部分2aはカバー桁104の側面に軽く接して、細長い溝またはスリット3が、水平で、カバー桁104の長手軸Lに実質的に平行に配置される。
【0023】
可動スライダ4はカバー桁104の側面上に直接動かないようにアンカー止めされて、カバー桁104と一体化するようになっている。
【0024】
さらに、振動減衰装置1はまた、可動スライダ4をブラケット2に固定的に接続し、かつ可動スライダ4がブラケット2の細長い溝またはスリット3に沿って少しでも変位すると弾塑性的に変形するような構造を持った、弾塑性挙動をする変形可能接続部材6も備えている。
【0025】
変形可能部材6が弾塑性的変形をすることによって、水平梁103上をブラケット2の細長い溝またはスリット3に平行に動くカバー桁104の運動エネルギが散逸されることは明らかである。
【0026】
図1、2、及び3に示された実施例においては、具体的にブラケット2は好ましくは適切な厚さを有する実質的に矩形の金属プレート7で形成され、これがL字型に折り曲げられて局部的に互いにほぼ直交する2つの平坦部分となっている。
【0027】
金属プレート7の第1の平坦部分は具体的には、水平梁103、より好ましくは水平梁103の突き出た翼103a、に当接して配置されるような構造となっており、かつ好ましくは、貫通アンカーねじ5によって貫通係合できる大きさの、一連の貫通穴8を備えている。金属プレート7の第2の平坦部分は長い直線的な貫通スロット穴9を備え、貫通スロット穴9は金属プレート2の第1の平坦部分の据付面に位置的に平行を保ったまま、金属プレート2の本体内に延在している。
【0028】
金属プレート7の第1の平坦部分はブラケット2の下部分2bを形成し、金属プレート7の第2の平坦部分はブラケット2の側面肩部2aを形成する。そして、直線的な貫通スロット穴9は側面肩部2aの細長い溝またはスリット3である。
【0029】
可動スライダ4はほかに、好ましくはアンカーピン10のヘッドとなっていて、これはカバー桁104の側面に動かないように差し込まれるか、及び/又は固定されるようになっていて、カバー桁104の本体に動かないように一体化されている。
【0030】
特に図3を参照すると、弾塑性的挙動をする変形可能接続部材6はほかに、少なくとも1つの金属材料のU字型接続部材11を備えている。これは、可動スライダ4の本体と一体になった第1の端部と、ブラケット2の本体と一体になった第2の端部とを有し、可動スライダ4がブラケット2の長手スリットまたは溝3に沿って少しでも変位すると、弾塑性的に変形可能なようになっている。
【0031】
具体的に図に示した実施形態においては、弾塑性的挙動をする変形可能接続部材6は、少なくとも2つの金属材料でできたU字型接続部材11を備えている。これは可動スライダ4の両側に配置され、好ましくは細長い溝またはスリット3の基準軸Rに沿って互いに整列している。そしていずれも、可動スライダ4の本体に固定接続された第1の端部と、ブラケット2の本体に固定接続された第2の端部とを有し、可動スライダ4がブラケット2の細長い溝またはスリット3に沿って少しでも変位すると、弾塑性的に、個別的かつ交互に展伸または曲がるようになっている。
【0032】
好ましくは各U字型の接続部材11はまた、実質的にC字型またはU字型に曲がった金属バー11となっており、これが可動スライダ4の本体に固定接続される第1の端部とブラケット2の本体に固定接続される第2の端部とを持っていて、可動スライダ4がブラケット2の細長い溝またはスリット3に沿って少しでも変位すると、弾塑性的に展伸または曲がるようになっている。
【0033】
特に図2、3に示す実施例では、変形可能接続部材6は好ましくは、可動スライダ4に、すなわちアンカーピン10のヘッドに、直接嵌るような構造となっている中央ブッシュ12と、金属プレート2の上部の平坦部分2a上に、直線的な貫通スロット穴の基準軸Rに沿って直線的貫通スロット穴9の両側に、好ましくは直線的貫通スロット穴9の2つの端部に接して動かないように固定された、2つの側部アンカープレート13と、それぞれが中央ブッシュ12の両側に配置され、中央ブッシュ12の本体を各側部アンカープレート13に強固に接続するような構造となった、少なくとも2つのU字型金属接続部材11と、を備えている。
【0034】
より詳細には図に示す実施例において、変形可能接続部材6は、中央ブッシュ12の両側に配置された2対のU字型金属接続部材11を備え、その部材の各1対は中央ブッシュ12本体を各アンカープレート13に固定的に接続するような構造となっている。
【0035】
つまり、U字型部材のそれぞれの対の両方のU字型金属接続部材11は、中央ブッシュ12の本体に連結された第1の端部と、直近で対向する側部アンカープレート13に連結された第2の端部を有し、可動スライダ4がブラケット2の細長い溝またはスリット3に沿って少しでも変位すると、U字型金属接続部材11のそれぞれの対の2つのU字型部材11が展伸または曲がるようになっている。
【0036】
必須ではないが好ましくは、U字型部材11はまた、異なる形状及び/又は断面であるかまたは異なる金属材料で実現されていて、振動減衰装置1のエネルギを散逸させる能力が調節可能なようになっていてもよい。
【0037】
プレハブ倉庫100に振動減衰装置1を取り付けることで、プレハブ倉庫100の水平屋根102を形成するすべて、または一部のカバー桁104の2つの軸方向端部104aのそれぞれの両側に、2つの振動減衰装置1が配置されて、カバー桁104が常に関連する水平梁103と実質的に直交するようにし、その一方でいかなる場合にもカバー桁104がその長手軸Lに平行に自由に前後方向に変位できるようにすることができる。
【0038】
波動型地震が生じた場合、各振動減衰装置1により、それが連結されているカバー桁104の、その長手軸Lに平行な前後方向への変位が可能となる。ただし、カバー桁104が変位するためには、振動減衰装置1がない場合に要するエネルギに比べてはるかに大きなエネルギを必要とする。
【0039】
その結果、プレハブ倉庫100の屋根102は非常に多量の地震エネルギを吸収/散逸させることが可能である。ただし、動的挙動は従来のプレハブ倉庫の屋根の挙動とむしろ同じに維持される。
【0040】
実際に計算機シミュレーションでは、一般的なプレハブ鉄筋コンクリート倉庫の屋根に振動減衰装置1を設置することで、屋根を支える柱の構造的な完全性にリスクに与えることなしに、屋根の崩壊リスクが顕著に低減可能であることが強調された。
【0041】
適切な数の振動減衰装置1が装備されたプレハブ鉄筋コンクリート倉庫100の地震応力への耐力は従って従来型のプレハブ鉄筋コンクリート倉庫に比べて著しく高い。
【0042】
振動減衰装置1の使用に係わる利点は大きい。
【0043】
適切な数の振動減衰装置1を一般的なプレハブ鉄筋コンクリート倉庫に設置することにより、屋根の崩壊の危険性が著しく低減され、それと同時に振動型の地震に対する建物の耐震性を向上させることができる。
【0044】
さらに、振動減衰装置1は製造コストが特に低く、したがって、プレハブ鉄筋コンクリート倉庫の耐震性の向上を安価に行うことができる。
【0045】
本発明の範囲から乖離することなし、振動減衰装置1に変更及び変形を施すことができることは明らかである。
【0046】
例えば図4に示すように、プレハブ倉庫100は、プレハブ倉庫100の外壁または壁面を形成するために、垂直柱101の側面に当接させて垂直位置に1つずつ隣り合わせに配置された、一連のプラグパネル105を備えていてもよい。そしてまた、波動型の地震が発生した場合に、プラグパネル105の水平変位の振幅を減少させるために、振動減衰装置1がプラグパネル105を関連する柱101に接続させるような構造となっていてもよい。
【0047】
より詳細には剛体ブラケット2は、柱101の本体上に固定的にアンカー止めされるような構造であって、ブラケットの側面肩部2aをプラグパネル105の表面に直接対向させて軽く触れさせるように配置し、細長い溝またはスリット3の基準軸Rを水平、かつ、プラグパネル105の水平長手軸Fに局所的にほぼ平行であるように配置する。
【0048】
可動スライダ4は、柱101の上に置かれて柱を覆うプラグパネル105の面上に直接固定的にアンカー止めされるようになっていて、プラグパネル105と一体を成している。
【0049】
より詳細にはこの実施形態において、ブラケット2の下部分2bは柱101の側面に当接して配置される構造となっていて、好ましくは適切な本数の貫通アンカーねじ5または他のタイプの鉄筋コンクリート基礎ボルトによって、柱101の本体上に固定的にアンカー止めされるようになっている。
【0050】
ブラケット2の上部分2a、すなわち側面肩部2aは、プラグパネル105の側面に対向して軽く触れるように配置される構造となっていて、実質的に直線的で、好ましくは貫通する細長い溝またはスリット3を備えている。これはブラケット2の本体内で、下部分2bの支持面の据付面に対して位置的にほぼ垂直である基準軸Rに平行になっている。
【0051】
すなわち、この実施形態においては、ブラケット2は好ましくは適切な厚さを有する金属プレート7であって、L字型に折り曲げられて、局所的に互いにほぼ直交する2つの平坦部分を持っている。金属プレート7の第1の平坦部分は、具体的には柱101の本体上に当接して配置されるような構造となっており、好ましくは一連の貫通穴(図示せず)を備えて、これはちょうど同数の貫通アンカーねじ5または他のタイプのコンクリート基礎ボルトによって貫通して係合される寸法となっている。金属プレート7の第2の平坦部分は代わりに、長い直線的な貫通スロット穴9を備え、これが金属プレート2の本体内に延在して、金属プレート7の第1の平坦部分の据付面に位置的にほぼ垂直となっている。
図1
図2
図3
図4