特許第6432869号(P6432869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432869
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】耐火れんがの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/043 20060101AFI20181126BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20181126BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   C04B35/043
   F27D1/00 N
   F27D1/16 R
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-254384(P2015-254384)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-114748(P2017-114748A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳
(72)【発明者】
【氏名】松永 久宏
(72)【発明者】
【氏名】日野 雄太
(72)【発明者】
【氏名】赤津 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽亮
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−037657(JP,A)
【文献】 特開昭64−033037(JP,A)
【文献】 特開2006−232646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
F27D 1/00,1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgO骨材、MgO微粉、炭素繊維以外の炭素材料からなる耐火原料およびバインダーを混練、成形、乾燥して耐火れんがを得る耐火れんがの製造方法において、
炭素繊維を、MgO骨材以外の耐火原料(MgO微粉、炭素繊維以外の炭素材料)およびバインダーとともに予め有機溶媒中に分散させた懸濁液であって、懸濁液中の固体分として、炭素繊維を1.8〜50.0mass%、鱗状黒鉛を5.4〜64.3mass%、および、電融マグネシアを28.6〜82.1mass%を混合させた懸濁液とし、この懸濁液を乾燥させて微粉の混合物とし、次にその微粉の混合物をMgO骨材とともに混練し、成形し、乾燥することを特徴とする耐火れんがの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火原料を混練、成形、乾燥して製造する耐火れんがの製造方法およびそれにより製造される耐火れんがに関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来の耐火れんがの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。図2に示す例おいて、耐火れんがは、一般に、酸化物や炭化物などの耐火原料(ここではMgO骨材、MgO微粉、炭素原料、金属(Al、Si))およびバインダー(ここではフェノール樹脂)と呼称されるつなぎ成分を同時にミキサーで混練し、プレス成形した後、乾燥することによって製造される。必要に応じて、上記工程にて製造された耐火れんがをさらに焼成する場合もある。そして、前記耐火原料は、骨材(5mm以下程度)と微粉(150μm以下程度)とで構成されており、混練してこれらの原料を均一に分散させることで、緻密な耐火れんがを製造することができる。ここで、耐火原料が不均一に分散すると、耐火れんがの耐熱衝撃性が著しく低下する。
【0003】
転炉や、電気炉、取鍋などに用いられる耐火れんがは、耐食性および耐熱衝撃性が要求される。そのため、これらの精錬炉などに使われている耐火れんがは、高融点のマグネシア、アルミナ等の塩基性材料およびスラグにぬれ難く熱伝導率が大きい炭素原料を用いるのが普通である。
【0004】
しかし、底吹き転炉の羽口れんがなど、加熱や冷却が繰り返される部位に用いられるものについては、熱衝撃によって亀裂が発生し進展することで、れんがの剥離損傷を招きやすいため、このことが炉寿命の決定要因となっている。これらの対策として、耐火れんがの耐熱衝撃性向上を目的として、炭素原料の一部として炭素繊維を添加する様々な試みがなされてきたが、未だ不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−12456号公報
【特許文献2】特開2007−55876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1は、マグネシア・カーボンれんがに炭素繊維を添加するに際し、炭素繊維の表面に有機樹脂を被覆する手段を提案している。しかし、この技術では、10mmよりも短い短繊維しか添加できず、炭素繊維添加量も最大で5mass%にとどまっていた。そのため、炭素繊維を添加しても、耐熱衝撃性を向上させた耐火れんがを得ることができなかった。また、この技術は、図2に示すとおり、耐火れんが製造時の混練に際し、耐火原料およびバインダーと炭素繊維とを同時に混合して成形する方法であった。
【0007】
また、特許文献2は、マグネシア・カーボンれんがにサイジングによりエポキシ樹脂をコートした炭素繊維を添加する手法を提案している。しかし、エポキシ樹脂は、高温で溶融するため、乾燥時や使用時にれんが内部に隙間ができるという問題点があった。また、耐熱衝撃性の評価は、30×30×120mmの試料を電気炉(Arガス中、1300℃)で5分間加熱した後、液体窒素中に投下して急冷し、その後に曲げ試験をして行っている。しかし、この方法は、実炉での耐火物における損傷形態を模しているとは言えず、効果には疑問が残っていた。さらに、炭素繊維の添加量が5mass%に留まっており、炭素繊維を添加しても、耐熱衝撃性に優れた耐火れんがを得ることができなかった。さらにまた、この方法は、図2に示すように、混練に際し、耐火原料およびバインダーと炭素繊維とを同時に混合し成形する方法であった。
【0008】
本発明は、従来の技術が抱えている前述した事情に鑑み提案するものであって、炭素繊維の分散性を向上させて耐熱衝撃性を向上させることができる耐火れんがの新規な製造方法および耐火れんがを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、従来技術の上記の問題点を解消した耐火れんがを得るべく、種々の検討を行った。その結果、原料を混練するにあたり、従来のように耐火原料、炭素繊維およびバインダーを一度に混練するのではなく、まず、骨材以外の耐火原料、炭素繊維およびバインダーを有機溶媒に分散させた懸濁液とし、次に、この懸濁液を乾燥させて微粉の混合物とし、その後、この微粉の混合物を骨材とともに混練することにより、耐火れんが中の炭素繊維の分散性が向上して耐熱衝撃性が向上した耐火れんがを得ることができることを見出して、本発明を提案するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、耐火原料およびバインダーを混練、成形、乾燥して耐火れんがを得る耐火れんがの製造方法において、炭素繊維を、骨材以外の耐火原料およびバインダーとともに予め有機溶媒中に分散させて懸濁液とし、この懸濁液を乾燥させて微粉の混合物とし、次にその微粉の混合物を骨材とともに混練し、成形し、乾燥することを特徴とする耐火れんがの製造方法にある。
【0011】
また、本発明は、上述した製造方法で製造された耐火れんがにおいて、耐火れんが中に加える炭素繊維の量が0.5〜14.0mass%であることを特徴とする耐火れんがである。
【0012】
なお、本発明に係る耐火れんがの製造方法においては、前記懸濁液中の固体分として、炭素繊維を1.8〜50.0mass%、鱗状黒鉛を5.4〜64.3mass%、および、電融マグネシアを28.6〜82.1mass%を混合すること、が好ましい解決手段となるものと考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、炭素繊維を、骨材以外の耐火原料およびバインダーとともに予め有機溶媒に分散させた懸濁液とし、この懸濁液を乾燥させて微粉の混合物とし、この微粉の混合物を骨材とともに混練することにより、耐火れんが中の炭素繊維の分散性を良好にすることができ、その結果、耐熱衝撃性の大きい耐火れんがを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の耐火れんがの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図2】従来の耐火れんがの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の耐火れんがの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。以下、図1に従って本発明の耐火れんがの製造方法を説明する。まず、炭素繊維を、骨材以外の耐火原料(ここでは、MgO微粉、その他の炭素原料)およびバインダーとともに、有機溶媒に分散させて懸濁液を調整する。例えば、これらの原料等を超音波洗浄機等によって撹拌することで均一に分散させた懸濁液を得る。次に、上記懸濁液を、例えばロータリーエバポレーター等を用いて減圧下で乾燥し、微粉の混合物とする。その後、得られた微粉の混合物を、MgO骨材とともに混練し、次いで成形した後、400℃以下の温度で熱処理して乾燥する。以上の工程により、耐火れんがに炭素繊維を均一に分散させることができる。その結果、耐熱衝撃性の良好な耐火れんがを得ることができる。
【0016】
なお、本発明に係る耐火れんがの製造方法において、上述した懸濁液中の固体分として、炭素繊維を1.8〜50.0mass%、鱗状黒鉛(炭素原料)を5.4〜64.3mass%、および、電融マグネシア(MgO微粉)を28.6〜82.1mass%を含有させることが好ましい。
【0017】
そして、製造された耐火れんがにおいては、耐火れんが中の炭素繊維が0.5〜14.0mass%含まれていることが好ましい。
【0018】
本発明で使用可能な炭素繊維は、強度や弾性率など特定の物性に優れた市販の製品を用いる。例えば、PAN系、等方性ピッチ系もしくは異方性ピッチ系のいずれの炭素繊維も耐火物より高強度かつ高弾性率を示すため、使用が可能である。従って、本発明においては、炭素繊維の種類は特に限定する必要はない。ただし、使用する炭素繊維は、例えば、長さが1〜300mmで直径が5〜18μmのサイズのものから、作製するれんがの形状を考慮して選択すればよい。炭素繊維の使用量は、0.5〜14.0mass%であることが好ましい。
【0019】
本発明でMgO骨材およびMgO微粉として使用するマグネシア材料は、電融マグネシア、焼結マグネシア、天然マグネシアなどの単独もしくは2種以上を組み合わせて使用できる。これらのマグネシア材料の塩基性耐火物としての使用量は、80〜95mass%であることが好ましい。
【0020】
本発明で使用する炭素繊維以外の炭素材料は、特に限定しないが、鱗状黒鉛、特殊黒鉛、土状黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、石油コークス、ピッチ等の材料が炭素繊維以外の炭素材料として使用できる。炭素材料の使用量は、5〜20mass%であることが好ましい。
【0021】
本発明で使用するバインダーは、特に限定しないが、フェノール樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)、ピッチ、エチルシリケート、アルミニウムアルコレート、けい酸ソーダ、乳酸アルミ、水硬性アルミ、アルミナセメント、アルミン酸ソーダ、シリカゾルおよびアルミナゾル等の材料がバインダーとして使用できる。バインダーの使用量は、練土の状況を見て適宜決定することができる。
【0022】
本発明で使用する有機溶媒としては、例えばエタノールなどの有機溶媒が好ましく、水などマグネシアと水和反応する物質を用いてはならない。
【0023】
本発明の製造方法で作製するれんがは、酸化防止剤として、アルミニウム、シリコン、マグネシウム等の金属やその合金あるいはBC等を必要に応じて適宜添加することができる。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の実施形態を実施例によって説明する。
本発明の製造方法で作製した耐火れんがおよび比較用の耐火れんがを用意した。以下、本発明の製造方法に従った本発明例として、表1に検討した試料の懸濁液の配合例1〜8(MgO−5mass%C微粉用)、表2に検討した試料の懸濁液の配合例9〜16(MgO−10mass%C微粉用)、表3に検討した試料の懸濁液の配合例17〜24(MgO−15mass%C微粉用)、表4に検討した試料の懸濁液の配合例25〜32、の電融マグネシア、鱗状黒鉛量、炭素繊維量およびフェノール樹脂量を一覧にして示すとともに、本発明の製造方法に従ったが炭素繊維を入れない比較例として、表5に比較例試料の懸濁液の配合例33〜36の電融マグネシア、鱗状黒鉛量、炭素繊維量およびフェノール樹脂量を一覧にして示す。
【0025】
ここで、本発明例において炭素繊維は、繊維長3mm、繊維径7μmのPAN系炭素繊維を用いた。表1〜5に示す懸濁液をロータリーエバポレーターを用いて乾燥して微粉の混合物を作製した。作製した微粉の混合物を、骨材およびバインダーに対し外配で2mass%添加し、混練、成形および乾燥することで、本発明例および比較例の耐火れんがを製造した。評価は、さらに1400℃で3時間の還元焼成を行った試料で実施した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】
評価は、炭素繊維の分散性に関しては、作製した試料のいずれかの部分を切断し、その断面の断面観察を実施し、炭素繊維が4本以上平行に存在した場合、不均一に分散していると判断した。また、実炉における耐火物の熱衝撃による破壊を考慮して、ASTM D 5045−99「プラスチック材料の平面ひずみ破壊靭性およびひずみエネルギー解放率」に準拠して、予亀裂を導入したSENB試験片の3点曲げ試験を実施し、破壊エネルギーを算出した。ここで、試験片は全長18mm×幅4mm×厚さ3mmの形状のものを用い、スパン長は16mmで、予亀裂長さは1.5mmとした。破壊エネルギーは、荷重-変位曲線の面積Uを断面積の2倍で除した値を用いた。また、圧縮試験片は、8mm×4mm×4mmの形状で4mm×4mmの断面に印加した。
【0032】
表6に、表1に配合例を示したMgO−5mass%C耐火れんがにおける実施例および比較例を示す。ここで、比較例2および比較例3は、通常の耐火れんが製造方法と同様に、炭素繊維を事前処理を経ずに配合し、混練、成形、乾燥および評価用に熱処理した耐火れんがである。なお、破壊エネルギーおよび圧縮強度は、それぞれのC含有量ごとに炭素繊維を含まない、表5に示す配合例33〜配合例36で作製した耐火れんがの物性値で規格化して指数標記で示す。例えば、表6のgO−5mass%C耐火れんがでは、表5の配合例33を用いて製造した耐火れんがである比較例1の破壊エネルギーおよび圧縮強度を100とした。そして、繊維分散状況として、破壊エネルギーおよび圧縮強度の指数のいずれもが100を超えたものを○として表し、いずれもが100未満であったものを×として表記した。
【0033】
【表6】
【0034】
以下、同様に、表7に表2に配合例を示したMgO−10mass%C耐火れんがにおける実施例および比較例を示し、表8に表3に配合例を示したMgO−mass15%C耐火れんがにおける実施例および比較例を示し、表9に表4に配合例を示したMgO−20mass%C耐火れんがにおける実施例および比較例を示す。
【0035】
【表7】
【0036】
【表8】
【0037】
【表9】
【0038】
表6〜表9の結果より、本発明に適合する製造方法に従って作製した耐火れんがは、炭素繊維がよく分散しており、破壊エネルギーが大きいことがわかった。また、バインダー添加量は、3.4〜7.6mass%の範囲では物性値の変化は見られなかった。一方、通常の製造方法で作製した耐火れんが(比較例)は、炭素繊維の分散が悪く、また破壊エネルギーも小さいことがわかった。このことから、本発明に係る製造方法によって耐火れんがを作製した場合、炭素繊維を均一分散させることができ、耐火れんがの耐熱衝撃性を大きく向上させることができる。これによって、耐火れんがの損耗を抑止できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の耐火れんがの製造方法によれば、耐火れんが中の炭素繊維の分散性を良好にすることができ、その結果、耐熱衝撃性が大きい耐火れんがを得ることができるため、これらを例えば転炉底吹き羽口に使用することで、炉寿命を向上させることができ、その工業的価値は大きい。
図1
図2