特許第6432890号(P6432890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6432890監視装置、対象装置の監視方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432890
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】監視装置、対象装置の監視方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20181126BHJP
   F02C 7/00 20060101ALN20181126BHJP
   F01D 25/00 20060101ALN20181126BHJP
【FI】
   G05B23/02 302Z
   !F02C7/00 A
   !F01D25/00 W
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-110336(P2016-110336)
(22)【出願日】2016年6月1日
(65)【公開番号】特開2017-215863(P2017-215863A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2018年1月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】永野 一郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 邦明
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 真由美
(72)【発明者】
【氏名】熊野 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 克彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】山内 貴洋
【審査官】 影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−090382(JP,A)
【文献】 特開2016−006594(JP,A)
【文献】 特開2005−293169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象装置の計測値を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記計測値に基づいて対象装置に生じ得るM種類の事象それぞれの発生の尤度を算出することによりM個の尤度を得る尤度算出部と、
前記M種類の事象それぞれと、前記対象装置のN種類の異常の発生要因とを関連付けたテーブルを記憶するテーブル記憶部と、
前記M個の尤度を要素とする事象ベクトルと前記テーブルの値を要素とする行列とを用いた計算によって得られるN個の要素を有する要因ベクトルに基づいて前記発生要因を推定する推定部と
を備える監視装置。
【請求項2】
前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が確認された回数とを関連付けたものであって、
前記推定部は、前記発生要因毎に、前記尤度と前記回数との加重和を算出し、当該加重和に基づいて前記発生要因を推定する
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が確認されたか否かを示す値とを関連付けたものであって、
前記推定部は、前記尤度が所定の閾値以上の前記事象であって、かつ前記行列において 事象が発生したことを示す値を有する前記要素の数に基づいて、前記発生要因を推定する
請求項1に記載の監視装置。
【請求項4】
前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が生じる確率とを関連付けたものであって、
前記推定部は、前記発生要因毎に、前記尤度と前記確率との加重和を算出し、当該加重和に基づいて前記発生要因を推定する
請求項1に記載の監視装置。
【請求項5】
前記取得部が取得した前記計測値のSN比を算出するSN比算出部をさらに備え、
前記尤度算出部は、前記SN比算出部が算出した前記SN比に基づいて前記複数の事象それぞれの尤度を算出する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の監視装置。
【請求項6】
前記計測値に基づいてマハラノビス距離を算出する距離算出部をさらに備え、
前記尤度算出部は、前記マハラノビス距離が所定値以上である場合に、前記複数の事象それぞれの尤度を算出する
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の監視装置。
【請求項7】
前記計測値に基づく熱平衡計算により、前記計測値を補正した補正計測値を得る補正部をさらに備え、
前記計測値は、少なくとも前記対象装置に入力される入力流体の温度および流量、ならびに前記対象装置から出力される出力流体の温度および流量を含み、
前記距離算出部は前記補正計測値を諸元として前記マハラノビス距離を算出する
請求項6に記載の監視装置。
【請求項8】
監視装置が、対象装置の計測値を取得することと、
前記監視装置が、取得した計測値に基づいて対象装置に生じ得るM種類の事象それぞれの発生の尤度を算出することによりM個の尤度を得ることと、
前記監視装置が、前記M種類の事象それぞれと、前記対象装置のN種類の異常の発生要因とを関連付けたテーブルの値を要素とする行列と、前記M個の尤度を要素とする事象ベクトルと、を用いた計算によって得られるN個の要素を有する要因ベクトルに基づいて前記発生要因を推定することと
を含む対象装置の監視方法。
【請求項9】
前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が確認された回数とを関連付けたものであって、
前記監視装置は、前記発生要因毎に、前記尤度と前記回数との加重和を算出し、当該加重和に基づいて前記発生要因を推定する
請求項8に記載の対象装置の監視方法。
【請求項10】
前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が確認されたか否かを示す値とを関連付けたものであって、
前記監視装置は、前記尤度が所定の閾値以上の前記事象であって、かつ前記行列において事象が発生したことを示す値を有する前記要素の数に基づいて、前記発生要因を推定する
請求項8に記載の対象装置の監視方法。
【請求項11】
前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が生じる確率とを関連付けたものであって、
前記監視装置は、前記発生要因毎に、前記尤度と前記確率との加重和を算出し、当該加重和に基づいて前記発生要因を推定する
請求項8に記載の対象装置の監視方法。
【請求項12】
コンピュータに、
対象装置の計測値を取得することと、
得した前記計測値に基づいて対象装置に生じ得るM種類の事象それぞれの発生の尤度を算出することによりM個の尤度を得ることと、
前記M種類の事象それぞれと、前記対象装置のN種類の異常の発生要因とを関連付けたテーブルの値を要素とする行列と、前記M個の尤度を要素とする事象ベクトルと、を用いた計算によって得られるN個の要素を有する要因ベクトルに基づいて前記発生要因を推定することと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象装置を監視する監視装置、対象装置の監視方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントに異常が発生したときに、異常の発生要因を特定する方法としてFTA(Fault Tree Analysis)を用いる手法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−176315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、FTAに基づく異常の発生要因の推定は、監視員の経験に依存する部分が多いため、監視員ごとに推定の精度が異なる。またFTAに基づいて異常の発生要因を推定する技能を有する監視員の数には限りがあり、プラントに異常が発生したときに、発生要因の推定に時間がかかってしまう場合がある。
本発明の目的は、監視員の経験によらずに異常の発生要因を精度よく推定することができる監視装置、対象装置の監視方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、監視装置は、対象装置の計測値を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記計測値に基づいて対象装置に生じ得るM種類の事象それぞれの発生の尤度を算出することによりM個の尤度を得る尤度算出部と、前記M種類の事象それぞれと、前記対象装置のN種類の異常の発生要因とを関連付けたテーブルを記憶するテーブル記憶部と、前記M個の尤度を要素とする事象ベクトルと前記テーブルの値を要素とする行列とを用いた計算によって得られるN個の要素を有する要因ベクトルに基づいて前記発生要因を推定する推定部とを備える。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る監視装置は、前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が確認された回数とを関連付けたものであって、前記推定部は、前記発生要因毎に、前記尤度と前記回数との加重和を算出し、当該加重和に基づいて前記発生要因を推定するものであってよい。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様に係る監視装置は、前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が確認されたか否かを示す値とを関連付けたものであって、前記推定部は、前記尤度が所定の閾値以上の前記事象であって、かつ前記行列において事象が発生したことを示す値を有する前記要素の数に基づいて、前記発生要因を推定するものであってよい。
【0008】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様に係る監視装置は、前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が生じる確率とを関連付けたものであって、前記推定部は、前記発生要因毎に、前記尤度と前記確率との加重和を算出し、当該加重和に基づいて前記発生要因を推定するものであってよい。
【0009】
本発明の第5の態様によれば、第1から第4の何れかの態様に係る監視装置は、前記取得部が取得した前記計測値のSN比を算出するSN比算出部をさらに備え、前記尤度算出部は、前記SN比算出部が算出した前記SN比に基づいて前記複数の事象それぞれの尤度を算出するものであってよい。
【0010】
本発明の第6の態様によれば、第1から第5の何れかの態様に係る監視装置は、前記計測値に基づいてマハラノビス距離を算出する距離算出部をさらに備え、前記尤度算出部は、前記マハラノビス距離が所定値以上である場合に、前記複数の事象それぞれの尤度を算出するものであってよい。
【0011】
本発明の第7の態様によれば、第6の態様に係る監視装置は、前記計測値に基づく熱平衡計算により、前記計測値を補正した補正計測値を得る補正部をさらに備え、前記計測値は、少なくとも前記対象装置に入力される入力流体の温度および流量、ならびに前記対象装置から出力される出力流体の温度および流量を含み、前記距離算出部は前記補正計測値を諸元として前記マハラノビス距離を算出するものであってよい。
【0012】
本発明の第8の態様によれば、対象装置の監視方法は、監視装置が、対象装置の計測値を取得することと、前記監視装置が、取得した前記計測値に基づいて対象装置に生じ得るM種類の事象それぞれの発生の尤度を算出することによりM個の尤度を得ることと、前記監視装置が、前記M種類の事象それぞれと、前記対象装置のN種類の異常の発生要因とを関連付けたテーブルの値を要素とする行列と、前記M個の尤度を要素とする事象ベクトルと、を用いた計算によって得られるN個の要素を有する要因ベクトルに基づいて前記発生要因を推定することとを含む。
【0013】
本発明の第9の態様によれば、第8の態様に係る対象装置の監視方法は、前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が確認された回数とを関連付けたものであって、前記監視装置は、前記発生要因毎に、前記尤度と前記回数との加重和を算出し、当該加重和に基づいて前記発生要因を推定するものであってよい。
【0014】
本発明の第10の態様によれば、第8の態様に係る対象装置の監視方法は、前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が確認されたか否かを示す値とを関連付けたものであって、前記監視装置は、前記尤度が所定の閾値以上の前記事象であって、かつ前記行列において事象が発生したことを示す値を有する前記要素の数に基づいて、前記発生要因を推定するものであってよい。
【0015】
本発明の第11の態様によれば、第8の態様に係る対象装置の監視方法は、前記テーブルは、前記発生要因と、前記事象と、当該発生要因に係る異常が生じたときに当該事象が生じる確率とを関連付けたものであって、前記監視装置は、前記発生要因毎に、前記尤度と前記確率との加重和を算出し、当該加重和に基づいて前記発生要因を推定するものであってよい。
【0016】
本発明の第12の態様によれば、プログラムは、コンピュータに、対象装置の計測値を取得することと、取得した前記計測値に基づいて対象装置に生じ得るM種類の事象それぞれの発生の尤度を算出することによりM個の尤度を得ることと、前記M種類の事象それぞれと、前記対象装置のN種類の異常の発生要因とを関連付けたテーブルの値を要素とする行列と、前記M個の尤度を要素とする事象ベクトルと、を用いた計算によって得られるN個の要素を有する要因ベクトルに基づいて前記発生要因を推定することとを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、監視装置は、対象装置の計測値に基づいて当該対象装置に生じ得る複数の事象それぞれの発生の尤度を算出し、事象と異常の発生要因とを関連付けたテーブルを用いて対象装置に生じた異常の発生要因を推定する。これにより、監視装置は、監視員の経験によらずに異常の発生要因を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】対象装置の一例であるガスタービンの模式図である。
図2】第1の実施形態に係る監視装置の構成を示す概略ブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る監視装置の動作を示すフローチャートである。
図4】第2の実施形態に係る監視装置の構成を示す概略ブロック図である。
図5】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〈第1の実施形態〉
以下、図面を参照しながら第1の実施形態について詳しく説明する。
第1の実施形態に係る監視装置100は、ガスタービンTの異常の有無を監視し、異常の発生要因を特定する。ガスタービンTは対象装置の一例である。
【0020】
《対象装置》
図1は、対象装置の一例であるガスタービンの模式図である。
ガスタービンTは、圧縮機T1、燃焼器T2、タービンT3、ロータT5、抽気管T4、および発電機T6を備える。圧縮機T1、タービンT3、および発電機T6は、ロータT5に接合され、ロータT5の軸回りに回転する。圧縮機T1は、回転により空気取込口から空気を取り込み、取り込んだ空気を圧縮して圧縮空気を生成する。燃焼器T2は、圧縮機T1が生成した圧縮空気に燃料を噴射することにより、高温かつ高圧の燃焼ガスを発生させる。また燃焼器T2には、燃焼器T2の冷却のために冷却蒸気が吹き付けられる。タービンT3は、燃焼器T2が発生させた燃焼ガスの熱エネルギーをロータT5の回転エネルギーに変換して駆動力を発生させる。抽気管T4は、その一端が圧縮機T1に接続され、その他端がタービンT3に接続される。抽気管T4は、圧縮機T1が生成する圧縮空気の一部を抽気し、抽気した圧縮空気(冷却空気)をタービンT3に供給することで、タービンT3を冷却する。発電機T6は、ロータT5の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0021】
ガスタービンTには図示しない複数のセンサが取り付けられる。各センサが取得するセンサ値の例としては、大気圧、大気温度、大気の相対湿度、圧縮機T1の入口差圧、圧縮機T1の出口空気温度、圧縮機T1の出口空気圧力、燃料圧力、燃料温度、燃料発熱量、燃料組成、燃料流量、冷却蒸気圧力、冷却蒸気温度、冷却蒸気流量、冷却空気の温度、冷却空気の流量、排気温度、吸気圧力損失、排気圧力損失、発電機T6の発電効率、発電電力、発電電流、発電電圧、発電周波数が挙げられる。
【0022】
《構成》
監視装置100の構成について説明する。図2は、第1の実施形態に係る監視装置の構成を示す概略ブロック図である。
監視装置100は、取得部101、特性値算出部102、補正部103、単位空間記憶部104、距離算出部105、異常判定部106、SN比算出部107、尤度算出部108、テーブル記憶部109、推定部110、出力部111を備える。
取得部101は、ガスタービンTに設けられたセンサが取得したセンサ値、およびガスタービンTの制御信号の値(指令値)を取得する。なお、取得部101が取得するセンサ値には、上述の通り、少なくともガスタービンTに入力される空気および燃料(入力流体)の温度およびガスタービンTから出力される排気(出力流体)の温度を含む。センサ値は、ガスタービンTの計測値の一例である。
特性値算出部102は、取得部101が取得したセンサ値に基づいて、ガスタービンTの特性を示す特性値を算出する。特性値の例としては、熱効率、圧縮機効率、燃焼効率、タービン効率、圧縮機動力、タービン出力、ガスタービン空気流量、ガスタービン排気流量、圧縮機圧力比、タービンT3の入口燃焼ガス温度が挙げられる。例えば、特性値算出部102は、等エントロピ変化における圧縮機出口エンタルピと圧縮機入口エンタルピの差を、実際の圧縮機出口エンタルピと圧縮機入口エンタルピの差で除算することで、圧縮機効率(特性値)を算出する。エンタルピは、センサ値である温度および圧力を用いて算出される。特性値は、ガスタービンTの計測値の一例である。なお、特性値算出部102が算出する特性値には、上述の通り、少なくともガスタービンTに入力される空気の流量およびガスタービンTから出力される排気の流量を含む。
【0023】
補正部103は、取得部101が取得したセンサ値および特性値算出部102が算出した特性値をガスタービンTの熱平衡計算に基づいて補正することで、補正計測値を得る。具体的には、補正部103は、以下の手順で計測値を補正する。まず補正部103は、計測値をガスタービンTに係る熱平衡の式に代入し、当該式が成立するように各計測値の誤差を算出する。そして補正部103は、計測値ごとに算出した誤差の総和、または誤差の二乗の総和を求め、求められた総和が最小となる計測値ごとの誤差の組み合わせを選択することで、補正計測値を得る。
具体的には、ガスタービンT全体の熱平衡は、以下の式(1)により表される。圧縮機T1の熱平衡は、以下の式(2)により表される。燃焼器T2の熱平衡は、以下の式(3)により表される。タービンT3の熱平衡は、以下の式(4)により表される。以下の式(1)−式(4)において、左辺は入熱量を示し、右辺は出熱量を示す。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
【数3】
【0027】
【数4】
【0028】
変数G1は、吸気流量を示す。変数H1Cは、吸気エンタルピを示す。変数G2は、圧縮機T1の出口流量を示す。変数H2Cは、圧縮機T1の出口エンタルピを示す。変数Gfは、燃料流量を示す。変数LHVは、燃料発熱量を示す。変数Gstは、冷却蒸気流量を示す。変数Hst1は、燃焼器T2に供給される冷却蒸気のエンタルピを示す。変数Hst2は、燃焼器T2から排出される冷却蒸気のエンタルピを示す。変数Gcは、冷却空気量を示す。変数Hcは、冷却空気エンタルピを示す。変数G4は、タービンT3の入口流量を示す。変数H1Tは、タービンT3の入口エンタルピを示す。変数G8は、排気流量を示す。変数H2Tは、排気エンタルピを示す。変数μGENは、発電効率を示す。変数μBURNは、燃焼効率を示す。変数KWGENは、発電電力を示す。変数KWCは、圧縮機動力を示す。変数KWTは、タービン出力を示す。
【0029】
単位空間記憶部104は、ガスタービンTの始動期間(例えば、新品状態のガスタービンTの運転開始時点または定期点検の完了後のガスタービンTの運転開始時点のうち直近の時点から2週間の期間)の間に取得された、ガスタービンTの状態量(計測値、補正計測値および指令値)の組み合わせを、マハラノビス距離の単位空間として記憶する。
距離算出部105は、取得部101が取得したセンサ値および指令値、特性値算出部102が算出した特性値、ならびに補正部103が補正した補正計測値を諸元として、単位空間記憶部104が記憶する単位空間に基づいて、ガスタービンTの状態を示すマハラノビス距離を算出する。マハラノビス距離は、単位空間として表される基準の標本と新たに得られた標本との違いの大きさを表す尺度である。マハラノビス距離の算出方法については、後述する。
異常判定部106は、距離算出部105が算出したマハラノビス距離に基づいてガスタービンTに異常が生じているか否かを判定する。具体的には、異常判定部106は、マハラノビス距離が所定の閾値(例えば、3.5)以上である場合に、ガスタービンTに異常が生じていると判定する。閾値には、通常3以上の値が設定される。
【0030】
SN比算出部107は、異常判定部106がガスタービンTに異常が生じていると判定した場合に、取得部101が取得したセンサ値および指令値、特性値算出部102が算出した特性値、ならびに補正部103が補正した補正計測値に基づいて、タグチメソッドに係るSN比(Signal-Noise Ratio)を算出する。すなわち、尤度算出部108は、直交表分析による項目有無の望大SN比を求める。SN比が大きいほど、その状態量(計測値、指令値)の項目に異常がある可能性が高いと判断できる。
尤度算出部108は、SN比算出部107が算出したSN比に基づいて、ガスタービンTに発生し得る複数の事象(性能劣化)それぞれの発生の尤度を算出する。事象の例としては、ガスタービン出力の低下、ガスタービン効率の低下、圧縮機効率の低下、タービン効率の低下、圧縮機入口空気量の低下、排気温度の上昇、圧縮機圧縮比の低下、燃焼効率の低下、タービン入口ガス温度の上昇、排気ガス圧力の上昇などが挙げられる。例えば、尤度算出部108は、各事象について、当該事象の発生の有無がSN比の増減を支配的に関与する状態量との関係を記憶しておき、各事象に関連付けられた状態量それぞれのSN比の加重和を算出することで、各事象の発生の尤度を算出する。
【0031】
テーブル記憶部109は、事象と異常の発生要因との関係を表すテーブルを記憶する。具体的には、テーブル記憶部109は、各事象および各発生要因について、当該発生要因による異常が生じたときに、当該事象が確認された回数を記憶する。例えば、過去に排気ディフューザの損傷(発生要因)による異常が生じたときに、ブレードパス温度の偏差が大きくなっている状態(事象)が確認されたことが、9度あった場合、テーブル記憶部109は、「排気ディフューザの損傷」という発生要因と「ブレードパス温度の偏差が大きい状態」という事象とに関連付けて、「9」という回数を記憶する。テーブル記憶部109が記憶するテーブルは、例えば、ガスタービンTの運用時に保守員によって生成されたFTAのデータ(FT:Fault Tree)に基づいて生成することができる。
【0032】
推定部110は、尤度算出部108が算出した各事象の発生の尤度と、テーブル記憶部109が記憶するテーブルとに基づいて、ガスタービンTの異常の発生要因を推定する。具体的には、推定部110は、各事象の発生の尤度を要素とする1行M列のベクトルと、テーブルの値を要素とするM行N列の行列との乗算を行うことで、異常の発生要因の尤度を要素とするN行1列のベクトルを得る。Mは事象の数、Nは発生要因の数を示す。そして、推定部110は、得られたN行1列のベクトルのうち要素の値が大きい行に係る発生要因が、ガスタービンTの異常の発生要因であると推定することができる。つまり、推定部110は、異常の発生要因毎に、各事象の発生の尤度とその事象の発生回数との加重和を算出し、当該加重和に基づいて発生要因を推定する。
出力部111は、推定部110が推定した発生要因を尤度の順に出力する。出力の例としては、ディスプレイへの表示、外部へのデータの送信、シートへの印刷、音声出力などが挙げられる。
【0033】
《マハラノビス距離》
ここで、一般的なマハラノビス距離Dを計算するための計算式について説明する。
ガスタービンTの状態を表す複数の状態量(計測値、指令値)の項目の数をuとする。uは2以上の整数である。u項目の状態量をそれぞれX1〜Xuとする。監視装置100は、基準となるガスタービンTの運転状態(第1の実施形態では、新品状態のガスタービンTの運転開始時点または定期点検の完了後のガスタービンTの運転開始時点のうち直近の時点から2週間の運転状態)において、各項目の状態量X1〜Xuを、それぞれ合計v個(2以上)収集する。例えば、各項目の状態量を60個ずつ取得する場合、v=60となる。運転状態において収集された各項目のj個目の状態量X1〜Xuを、X1j〜Xujとする。jは1〜vまでのいずれかの値(整数)をとり、それぞれの状態量の個数がv個であることを意味する。つまり、監視装置100は、状態量X11〜Xuvを収集する。当該状態量X11〜Xuvは、単位空間記憶部104に記憶される。
【0034】
監視装置100は、状態量X11〜Xuvの項目毎の平均値Mi及び標準偏差σi(基準データのばらつき度合い)を、式(5)および式(6)により求める。iは項目数(状態量の数、整数)である。ここではiは、1〜uに設定され、状態量X1〜Xuに対応する値を示す。ここで、標準偏差とは、状態量とその平均値との差を2乗したものの期待値の正平方根とする。
【0035】
【数5】
【0036】
【数6】
【0037】
前述の平均値Mi及び標準偏差σiは、特徴を示す状態量である。監視装置100は、演算された平均値Mi及び標準偏差σiを用いて、状態量X11〜Xuvを、下記の数式(7)によって、基準化された状態量x11〜xuvに変換する。すなわち、異常監視装置10は、ガスタービンTの状態量Xijを、平均0、標準偏差1の確率変数xijに変換する。なお、下記の数式(7)において、jは1〜vまでのいずれかの値(整数)をとる。これは、項目毎の状態量の個数がv個であることを意味する。
【0038】
【数7】
【0039】
変量を平均0、分散1に標準化したデータで分析を行うため、監視装置100は、状態量X11〜Xuvの相関関係を特定する。すなわち、監視装置100は、変量の間の関連性を示す共分散行列(相関行列)R、及び共分散行列(相関行列)の逆行列R−1を、下記の数式(8)で定義付ける。なお、下記の数式(8)において、kは項目数(状態量の数)である。つまりkはuと等しい。また、i及びpは、各状態量での値を示し、ここでは1〜uの値をとる。
【0040】
【数8】
【0041】
監視装置100は、このような演算処理の後で、特徴を示す状態量であるマハラノビス距離Dを、下記の数式(9)に基づいて求める。なお、数式(9)において、jは1〜vまでのいずれかの値(整数)をとる。これは、項目毎の状態量の個数がv個であることを意味する。また、kは項目数(状態量の数)である。つまりkはuと等しい。また、a11〜akkは、上述した数式(8)に示す共分散行列Rの逆行列R−1の係数である。
【0042】
【数9】
【0043】
マハラノビス距離Dは基準データである。単位空間のマハラノビス距離Dの平均値は1となる。ガスタービンTの状態量が正常な状態では、マハラノビス距離Dは概ね3以下に収まる。しかし、ガスタービンTの状態量が異常な状態では、マハラノビス距離Dの値は概ね3より大きくなる。このように、マハラノビス距離Dは、ガスタービンTの状態量の異常の程度(単位空間からの離れ度合い)に応じて、値が大きくなるという性質を有する。
【0044】
《ガスタービンの監視方法》
監視装置100によるガスタービンの監視方法について説明する。図3は、第1の実施形態に係る監視装置の動作を示すフローチャートである。
監視装置100は、ガスタービンTの始動期間の間、ガスタービンTの状態量を収集して単位空間記憶部104に状態量の組み合わせを蓄積する。つまり、監視装置100は、取得部101が取得したガスタービンの指令値および補正部103が生成した補正計測値を、関連付けて単位空間記憶部104に記録する。監視装置100は、ガスタービンTの始動期間の経過後、所定の監視タイミング(例えば、1時間おきのタイミング)で、以下に示す監視動作を実行する。監視タイミングは、ガスタービンTの運転開始時点から所定の始動期間が経過した後の時点である始動後時点の一例である。
【0045】
監視装置100が監視を開始すると、取得部101は、ガスタービンTに設けられたセンサが取得したセンサ値、およびガスタービンTの指令値を取得する(ステップS1)。次に、特性値算出部102は、取得部101が取得したセンサ値に基づいて、ガスタービンTの特性を示す特性値を算出する(ステップS2)。次に、補正部103は、センサ値および特性値をガスタービンTの熱平衡計算に基づいて補正することで、補正計測値を得る(ステップS3)。
【0046】
次に、距離算出部105は、ステップS1で取得したセンサ値および指令値、ステップS2で算出した特性値、ならびにステップS3で得られた補正計測値を諸元として、単位空間記憶部104が記憶する単位空間に基づいて、マハラノビス距離を算出する(ステップS4)。次に、異常判定部106は、算出されたマハラノビス距離が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0047】
マハラノビス距離が閾値未満である場合(ステップS5:NO)、異常判定部106は、ガスタービンTに異常が生じていないと判定して監視処理を終了し、次回の監視タイミングを待機する。
他方、マハラノビス距離が閾値以上である場合(ステップS5:YES)、異常判定部106は、ガスタービンTに異常が生じていると判定する。
【0048】
異常判定部106がガスタービンTに異常が生じていると判定すると、SN比算出部107は、ステップS1で取得した指令値およびステップS3で得られた補正計測値のそれぞれについて、タグチメソッドに係るSN比を算出する(ステップS6)。尤度算出部108は、算出されたSN比に基づいてガスタービンTに発生し得る複数の事象それぞれの発生の尤度を算出する(ステップS7)。
【0049】
次に、推定部110は、尤度算出部108が算出した各事象の尤度を要素とするベクトルと、テーブル記憶部109が記憶するテーブルの値を要素とする行列との乗算を行うことで、異常の発生要因の尤度を要素とするベクトルを得る(ステップS8)。次に、推定部110は、各発生要因を、得られたベクトルが表す尤度の降順にソートする(ステップS9)。そして、出力部111は、推定部110が推定した発生要因を、ソートされた順に出力する(ステップS10)。例えば、出力部111は、最も尤度が高い発生要因をディスプレイに表示させ、利用者の操作により、次の発生要因の表示指令を受け付けた場合に、次に尤度が高い発生要因をディスプレイに表示させる。また例えば、出力部111は、発生要因のリストを、尤度の降順にシートに印刷する。
【0050】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、監視装置100は、ガスタービンTに生じ得る複数の事象それぞれの発生の尤度を算出し、事象と異常の発生要因との関係を示すテーブルと当該尤度とに基づいて、異常の発生要因を推定する。これにより、監視装置100は、観測された事象に基づいて容易に異常の発生要因を出力することができる。
また、第1の実施形態に係る監視装置100は、各事象の発生の尤度を要素とする1行M列のベクトルと、テーブルの値を要素とするM行N列の行列との乗算を行うことで、異常の発生要因の尤度を要素とするN行1列のベクトルを得る。これにより、監視装置100は、簡易な計算により、異常の発生要因ごとの尤度を容易に特定することができる。なお、他の実施形態ではこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る監視装置100は、各事象の発生の尤度を要素とする1行M列のベクトルと、テーブルの値を要素とするM行N列の行列の各行ベクトルとのコサイン類似度を算出することにより、異常の発生要因の尤度を要素とするN行1列のベクトルを得てもよい。なお、コサイン類似度は、ベクトルの内積(各事象の発生の尤度と当該事象の発生回数との加重和)を各ベクトルのノルムの積で除算した値である。例えば、他の実施形態に係る監視装置100は、行列計算によらず、異常の発生要因ごとに、各事象の発生の尤度と当該事象の発生回数との加重和を求めてもよい。
【0051】
また、第1の実施形態に係る監視装置100は、ガスタービンTに入力される空気および燃料の温度および流量、ならびにガスタービンTから出力される排気の温度および流量を含む計測値を、熱平衡計算により補正して、マハラノビス距離を算出する。これにより、監視装置100は、ガスタービンTに設けられるセンサの計測誤差を低減してマハラノビス距離を算出することができる。なお、他の実施形態では、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る監視装置100は、計測値を補正せずにマハラノビス距離を算出してもよい。また、他の実施形態に係る監視装置100はマハラノビス距離に基づく異常判定手法以外の手法に基づいてガスタービンTの異常の有無を判定してもよい。
【0052】
また、第1の実施形態によれば、監視装置100は、ガスタービンTの運転開始時点から所定の始動期間が経過した後の時点である始動後時点に取得された計測値を諸元とし、始動期間中に取得された計測値を単位空間として、マハラノビス距離を算出する。つまり、監視装置100は、監視対象であるガスタービンTそのものの正常な運転状態を単位空間としてマハラノビス距離を算出する。従来は、マハラノビス距離の単位空間として、始動期間を過ぎて劣化が生じているが異常が発生していない運転状態、および他のガスタービンTの運転状態をも含む単位空間に基づいてマハラノビス距離を算出していた。他方、第1の実施形態によれば、監視対象であるガスタービンTそのものの運転状態であって、劣化が生じる以前の運転状態のみを含む単位空間に基づいて、マハラノビス距離を算出する。これにより、監視装置100は、監視対象のガスタービンTについて精度よく異常の検知を行うことができる。
【0053】
また、第1の実施形態に係る始動期間は、新品状態の運転開始時点または定期点検の完了後の運転開始時点のうち直近の時点を始点とする期間である。つまり、定期点検のたびにマハラノビス距離の単位空間が更新される。これにより、ガスタービンTの定期点検後の正常な運転状態(初回は新品状態における運転状態)を基準として、ガスタービンTの異常の検知を行うことができる。新品状態、すなわち無劣化のガスタービンTの運転状態を単位空間とする場合、定期点検後のガスタービンTの運転状態は正常状態であっても、マハラノビス距離が相対的に大きくなる。これは、ガスタービンTの使用による劣化を定期点検によって完全に修復することが困難なためである。したがって、ガスタービンTの定期点検後の正常な運転状態を基準として、ガスタービンTの異常の検知を行うことで、精度よく運転状態を判定することができる。
【0054】
また、第1の実施形態によれば、監視装置100は、計測値、補正計測値、および指令値を諸元としてマハラノビス距離を算出する。これにより、ガスタービンTの劣化等により入熱量と出熱量の平衡が崩れる場合にも、適切にガスタービンTの状態を評価することができる。なお、他の実施形態の構成は、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る監視装置100は、計測値を諸元に含めずに、補正計測値を諸元としてマハラノビス距離を算出してもよい。また、他の実施形態に係る監視装置100は、指令値を諸元に含めずにマハラノビス距離を算出してもよい。
【0055】
〈第2の実施形態〉
以下、図面を参照しながら第2の実施形態について詳しく説明する。図4は、第2の実施形態に係る監視装置の構成を示す概略ブロック図である。
第2の実施形態に係る監視装置100は、第1の実施形態の構成に加えて、事象抽出部112を備え、第1の実施形態と推定部110の動作が異なる。事象抽出部112は、ガスタービンTに生じ得る複数の事象から、尤度算出部108が算出した尤度が所定の閾値以上であるものを抽出する。推定部110は、テーブル記憶部109が記憶するテーブルにおいて、事象抽出部112が抽出した事象のうち、発生回数が1以上のものの数を計数する。推定部110は、複数の発生要因のうち計数された発生回数の数が相対的に多いものが、ガスタービンTの異常の発生要因であると推定する。具体的には、推定部110は、発生回数の数の降順に各発生要因をソートして、出力部111に出力する。
上記構成を有することで、監視装置100は、第1の実施形態よりさらに簡易な構成で、観測された事象に基づいて容易に異常の発生要因を出力することができる。
【0056】
なお、第2の実施形態に係るテーブル記憶部109は、第1の実施形態と同様に、各事象および各発生要因について、当該発生要因による異常が生じたときに、当該事象が確認された回数を記憶するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るテーブル記憶部109は、各事象および各発生要因について、当該発生要因による異常が生じたときに、当該事象が確認されたことがあるか否かを示すブール値を関連付けて記憶してもよい。この場合、推定部110は、テーブル記憶部109が記憶するテーブルにおいて、事象抽出部112が抽出した事象のうち、ブール値がTrueを示すものの数を計数する。推定部110は、複数の発生要因のうち計数されたブール値の数が相対的に多いものが、ガスタービンTの異常の発生要因であると推定する。
【0057】
〈第3の実施形態〉
以下、図2を参照しながら第3の実施形態について詳しく説明する。
第3の実施形態に係る監視装置100は、第1の実施形態とテーブル記憶部109が記憶する情報が異なる。第3の実施形態に係るテーブル記憶部109は、各事象および各発生要因について、当該発生要因による異常が生じたときに当該事象が確認される確率を関連付けて記憶する。当該テーブルは、例えば、ガスタービンTの運用時に保守員によって生成されたFTAのデータ(FT)に基づいて生成することができる。FTは、トップ事象を最上位事象(ルート)とし、上位事象の要因となる下位事象をノードとする木構造である。各ノードには、当該ノードが示す下位事象によって当該ノードの直上のノードに係る上位事象が生じる確率が関連付けられる。当該FTのうち、各事象を示すノードに関連付けられた確率をテーブルに格納することで、テーブル記憶部109のテーブルを生成することができる。
【0058】
これにより、推定部110は、尤度算出部108が算出した各事象の発生の尤度と、その事象の発生確率との加重和を算出し、当該加重和に基づいて発生要因を推定する。具体的には、推定部110は、尤度と発生確率と加重和の降順に各発生要因をソートして、出力部111に出力する。つまり、推定部110は、事象の事前確率(テーブルに格納された確率)と、事象の観測結果(事象の発生の尤度)とに基づいてベイズ更新を行い、事後確率として発生要因の発生確率を求めるものである。
このように、本実施形態によれば、第1の実施形態または第2の実施形態と比較してさらに精度よく、観測された事象に基づいて容易に異常の発生要因を出力することができる。
【0059】
なお、第3の実施形態に係る監視装置100は、各事象および各発生要因について、FTに基づいて決定された確率を関連付けて記憶するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るテーブルに記憶される確率は、過去のガスタービンTの運用において算出された各事象の発生の尤度の和であってもよい。
【0060】
また、第3の実施形態に係る監視装置100は、各事象の発生の尤度と確率の加重和を発生要因の尤度として用いるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る監視装置100は、各事象の発生の尤度を要素とする1行M列のベクトルと、テーブルの値を要素とするM行N列の行列の各行ベクトルとのコサイン類似度を算出することにより、異常の発生要因の尤度を要素とするN行1列のベクトルを得てもよい。
【0061】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態に係る対象装置は、ガスタービンTであるが、他の実施形態では、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る対象装置は、蒸気タービン、エンジン、または熱的な収支がある他の装置であってもよい。
【0062】
また、上述した実施形態に係る監視装置100の尤度算出部108は、マハラノビス距離に係るSN比に基づいて各事象の発生の尤度を求めるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る尤度算出部108は、取得部101が取得した計測値を入力とするベイジアンネットワークを用いて各事象の発生の尤度を算出してもよい。
【0063】
図5は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
上述の監視装置100は、コンピュータ900を備える。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置902に確保する。
【0064】
なお、少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース904を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。
【0065】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
100 監視装置
101 取得部
102 特性値算出部
103 補正部
104 単位空間記憶部
105 距離算出部
106 異常判定部
107 SN比算出部
108 尤度算出部
109 テーブル記憶部
110 推定部
111 出力部
112 劣化推定部
T ガスタービン
図1
図2
図3
図4
図5