特許第6432906号(P6432906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432906
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】回路遮断器の熱動引外し装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 69/01 20060101AFI20181126BHJP
   H01H 73/22 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   H01H69/01
   H01H73/22 B
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-89265(P2015-89265)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-207536(P2016-207536A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】和久 宏之
(72)【発明者】
【氏名】中田 光昭
(72)【発明者】
【氏名】洲崎 信彦
(72)【発明者】
【氏名】島田 達矢
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−013865(JP,U)
【文献】 実開昭58−087249(JP,U)
【文献】 実開昭52−100169(JP,U)
【文献】 特開平06−028960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00−69/01
H01H 71/00−83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉機構のトリップバーに接触することで前記開閉機構の開極動作を行う回路遮断器の熱動引外し装置であって、
一端が固定されており、前記回路遮断器の電流経路に流れる過電流に応じて加熱され、他端が前記トリップバーに向けて変位可能な湾曲部材を備え、
前記湾曲部材は、
前記過電流に応じて直接加熱される第1バイメタルと、
前記第1バイメタルの厚さ方向であって前記第1バイメタルの湾曲方向に設けられ、過電流通電時に前記第1バイメタルの湾曲を抑制する第2バイメタルと、を有し、
前記第1バイメタルと前記第2バイメタルとの間に、厚みが一定の絶縁材で構成された中間部材を設けた、
回路遮断器の熱動引外し装置。
【請求項2】
開閉機構のトリップバーに接触することで前記開閉機構の開極動作を行う回路遮断器の熱動引外し装置であって、
一端が固定されており、前記回路遮断器の電流経路に流れる過電流に応じて加熱され、他端が前記トリップバーに向けて変位可能な湾曲部材を備え、
前記湾曲部材は、
前記過電流に応じて直接加熱される第1バイメタルと、
前記第1バイメタルの厚さ方向であって前記第1バイメタルの湾曲方向とは反対の方向に設けられた第2バイメタルと、を有し、
同じ上昇温度において第2バイメタル単体での湾曲量は第1バイメタル単体での湾曲量よりも大きく、
前記第1バイメタルと前記第2バイメタルとの間に、厚みが一定の絶縁材で構成された中間部材を設けた、
回路遮断器の熱動引外し装置。
【請求項3】
前記第1バイメタルは、前記電流経路を構成し、自身に流れる電流により加熱される
請求項1または2に記載の回路遮断器の熱動引外し装置。
【請求項4】
前記電流経路に形成されたヒータをさらに有し、
前記第1バイメタルは、前記一端が前記ヒータに固定され、前記ヒータに流れる電流に
より発生した熱を受けて加熱される
請求項1または2に記載の回路遮断器の熱動引外し装置。
【請求項5】
前記第1バイメタルは、締結具により固定されている
請求項1から請求項までの何れか1項に記載の回路遮断器の熱動引外し装置。
【請求項6】
前記第1バイメタルは、ロウまたはハンダにより固定されている
請求項1から請求項までの何れか1項に記載の回路遮断器の熱動引外し装置。
【請求項7】
前記湾曲部材に、前記湾曲部材に伝わる熱を吸収する熱容量体を設けた
請求項1から請求項までの何れか1項に記載の回路遮断器の熱動引外し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、湾曲するバイメタルを用いて電流を遮断する回路遮断器の熱動引外し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源側端子と負荷側端子との間の電流経路に、例えば短絡電流等の過電流が流れた場合に、加熱されたバイメタルが撓み、このバイメタルの撓み変形が開閉機構に作用して接触子を開極させることにより、電流を遮断する回路遮断器の熱動引外し装置が一般に知られている。
【0003】
ここで、バイメタルを加熱する方法として、バイメタルに直接電流を流して加熱することで撓み変形させる直熱式、電流の流れにより発熱するヒータを備え、このヒータの発熱によりバイメタルを加熱して撓み変形させる傍熱式、および直熱式と傍熱式とを組み合わせた直傍熱式がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、特許文献1の図1に示されているように、直熱式の回路遮断器の熱動引外し装置では、バイメタルの上部が、可撓導体を介して、ねじ等で回路遮断器のケースに固定された負荷側端子と接続され、バイメタルの下部が、可動接触子側と接続されている。この装置において、電流遮断前は、負荷側端子、バイメタル、可動接触子に通電され、各部品がジュール熱により発熱し、温度上昇する。このとき、バイメタルは、温度上昇に伴い、バイメタルを構成する2枚以上の金属板の線膨張係数の違いにより湾曲する。
【0005】
また、特許文献1の図2に示されているように、傍熱式の回路遮断器の熱動引外し装置では、バイメタルの下部が、バイメタルと熱的に接続されるとともに、負荷側端子および電源側端子と電気的に接続されるヒータと接続されている。この装置において、電流遮断前は、ヒータがジュール熱により発熱し、温度上昇する。このとき、バイメタルは、ヒータから受ける熱により温度上昇し、湾曲する。
【0006】
ここで、例えば傍熱式の回路遮断器の熱動引外し装置において、バイメタルは、単一の部材で構成されているので、過電流通電時において、ヒータで発生した熱が、バイメタルの先端側へ伝わるまでに時間がかかる。これにより、熱動引外し動作に時間遅れが発生する恐れがある。
【0007】
そこで、過電流通電時において、熱動引外し動作に時間遅れが発生することを防ぐために、短尺なバイメタルとバイメタルの先端に取り付けられた延長板とを湾曲部材とした回路遮断器の熱動引外し装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2に記載の回路遮断器の熱動引外し装置は、電流経路に設けたヒータとトリップバーとの間に、ヒータに基端部が固定され、先端部がトリップバー側に延在するバイメタルと、このバイメタルの先端部に固定され、自由端がトリップバーの近傍に位置する延長板とを備え、電流経路に過電流が流れてヒータが発熱し、このヒータの発熱により加熱されたバイメタルの先端部が撓み変形し、このバイメタルの先端部の撓み変形とともに変位する延長板の自由端がトリップバーに接触するように構成されている。
【0009】
なお、回路遮断器の熱動引外し装置では、定格電流通電時には、回路内を流れる電流を遮断せず、かつ、例えば過電流通電時等、回路内を流れる電流が定格電流を超えたとき、流れる電流の電流値毎にあらかじめ定められた時間内で回路内を流れる電流を遮断することが要求される。また、湾曲部材は、定格電流通電時において、湾曲した湾曲部材がトリップバーと接触しない位置に配置する必要があるので、定格電流通電時の湾曲部材の湾曲量は、ほぼ変化しないことが要求される。
【0010】
ここで、特許文献2に記載の回路遮断器の熱動引外し装置によれば、湾曲部材を構成するバイメタルと延長板との長さを調整することにより、湾曲部材をバイメタルのみで構成した場合に実現することができなかった、電流値毎に回路の電流を遮断するまでの遮断時間を調整することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−19938号公報
【特許文献2】特開2010−218765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
回路遮断器の熱動引外し装置は、対象物の用途によって、過電流通電時に要求される遮断時間が異なる。そのため、バイメタルとトリップバーとの初期位置を決定する定格電流付近では、湾曲部材の湾曲量を同等にしつつ、過電流通電時における遮断時間を調整することが必要になる。
【0013】
しかしながら、バイメタルと延長板との長さを調整する特許文献2に記載の回路遮断器の熱動引外し装置では、定格電流通電時の湾曲部材の湾曲量および遮断時間を同等にしたまま、過電流通電時の遮断時間を調整することができないという問題がある。なお、このような問題は、傍熱式の回路遮断器の熱動引外し装置だけでなく、直熱式や直傍熱式の回路遮断器の熱動引外し装置についても同様に発生する。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、定格電流通電時の湾曲部材の湾曲量および遮断時間を同等にしたまま、対象物の用途によって、過電流通電時の遮断時間を所望の時間に調整することができる回路遮断器の熱動引外し装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る回路遮断器の熱動引外し装置は、開閉機構のトリップバーに接触することで前記開閉機構の開極動作を行う回路遮断器の熱動引外し装置であって、一端が固定されており、前記回路遮断器の電流経路に流れる過電流に応じて加熱され、他端が前記トリップバーに向けて変位可能な湾曲部材を備え、前記湾曲部材は、前記過電流に応じて直接加熱される第1バイメタルと、前記第1バイメタルの厚さ方向であって前記第1バイメタルの湾曲方向に設けられ、過電流通電時に前記第1バイメタルの湾曲を抑制する第2バイメタルと、を有し、前記第1バイメタルと前記第2バイメタルとの間に、厚みが一定の絶縁材で構成された中間部材を設けたものである。
また、開閉機構のトリップバーに接触することで前記開閉機構の開極動作を行う回路遮断器の熱動引外し装置であって、一端が固定されており、前記回路遮断器の電流経路に流れる過電流に応じて加熱され、他端が前記トリップバーに向けて変位可能な湾曲部材を備え、前記湾曲部材は、前記過電流に応じて直接加熱される第1バイメタルと、前記第1バイメタルの厚さ方向であって前記第1バイメタルの湾曲方向とは反対の方向に設けられた第2バイメタルと、を有し、同じ上昇温度において第2バイメタル単体での湾曲量は第1バイメタル単体での湾曲量よりも大きく、前記第1バイメタルと前記第2バイメタルとの間に、厚みが一定の絶縁材で構成された中間部材を設けたものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る回路遮断器の熱動引外し装置によれば、第1バイメタルから第2バイメタルへの分流を抑制するとともに、第1バイメタルから第2バイメタルに均等に熱を伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明に係る熱動引外し装置を備えた回路遮断器を示す断面図である。
図2】一般的な傍熱式の回路遮断器の熱動引外し装置を示す構成図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る回路遮断器の熱動引外し装置を示す構成図である。
図4】(a)〜(c)は、この発明の実施の形態1に係る回路遮断器の熱動引外し装置の変形例を示す構成図である。
図5】(a)〜(c)は、この発明の実施の形態1に係る回路遮断器の熱動引外し装置の変形例を示す構成図である。
図6】この発明の実施の形態1に係る回路遮断器の熱動引外し装置の変形例を示す構成図である。
図7】この発明の実施の形態2に係る回路遮断器の熱動引外し装置を示す構成図である。
図8】この発明の実施の形態3に係る回路遮断器の熱動引外し装置を示す構成図である。
図9】この発明の実施の形態4に係る回路遮断器の熱動引外し装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明に係る回路遮断器の熱動引外し装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0019】
なお、この発明は、バイメタルに直接通電する直熱式、バイメタルに直接通電せず、バイメタルの根元に取り付けられたヒータから熱をもらう傍熱式、および直熱式と傍熱式とを組み合わせた直傍熱式の何れの回路遮断器の熱動引外し装置についても適用することができる。
【0020】
まず、実施の形態の説明に先立って、図1図2を参照しながら、熱動引外し装置を備えた回路遮断器、並びに傍熱式および直熱式の回路遮断器の熱動引外し装置の一般的な構造について説明する。
【0021】
図1は、この発明に係る熱動引外し装置を備えた回路遮断器を示す断面図である。図1において、この回路遮断器は、固定子1と、固定子1と距離を置いて配置された可動子2と、可動子2を回動させることで電流を遮断する開閉機構3と、開閉機構3に設けられたトリップバー4と、開閉機構3を動作させる熱動引外し装置10とが、ケース5内に収容された構成を有している。
【0022】
固定子1には、固定接触子1aが設けられている。可動子2には、固定接触子1aと対向するように可動接触子2aが設けられている。可動接触子2aは、開閉機構3により可動子2が回動された場合に、固定接触子1aと接触する。可動接触子2aと固定接触子1aとが接触しているときは、回路に電流が流れている通電状態である。図1では、可動接触子2aが、固定接触子1aから離れた状態、すなわち電流が遮断された遮断状態を示している。
【0023】
また、開閉機構3は、ハンドル3aと可動アーム3bとを有している。なお、開閉機構3は、この発明の主要部ではないので、詳細な図示は省略しているが、例えばリンク機構とばねとが組み合わされた構成になっている。ハンドル3aを反時計回りに回動させると、可動アーム3bが回動し、これに伴って、可動接触子2aが固定接触子1aに接触し、通電状態になる。
【0024】
図2は、一般的な傍熱式の回路遮断器の熱動引外し装置を示す構成図である。図2において、この熱動引外し装置10は、線膨張係数の互いに異なる2枚の金属板を、金属板の厚さ方向に貼り合わせたバイメタル21の根元が、ヒータ24と呼ばれる電気抵抗の大きい部材に、リベット25等の締結具で取り付けられた構成を有している。なお、バイメタル21に代えて、線膨張係数の互いに異なる3枚以上の金属板を厚さ方向に貼り合わせたトリメタルを用いてもよい。以下、バイメタルまたはトリメタルをまとめてバイメタルと称する。
【0025】
ここで、バイメタル21には直接通電がなされず、バイメタル21の根元に取り付けられたヒータ24に過電流が流れることで、ヒータ24がジュール熱により発熱する。また、ヒータ24で発生した熱がバイメタル21に伝わることで、バイメタル21は温度上昇し、線膨張係数の小さい部材側に湾曲する。
【0026】
バイメタル21を構成する2枚の金属板のうち、高膨張側の金属板には、例えば銅にニッケルやクロム、亜鉛等を組み合わせた銅合金、または合金鋼等が用いられている。また、バイメタルを構成する2枚の金属板のうち、低膨張側の金属板には、高膨張側の金属板よりも線膨張係数が低くなる合金鋼等が用いられている。
【0027】
また、ヒータ24で発生する熱量は、電流の2乗とヒータ24の抵抗の1乗に従って大きくなる。すなわち、通電電流の増加により、電流値の2乗で発熱量が増加するとともに、ヒータ24自身の温度上昇に伴って電気抵抗が増加し、ヒータ24の上昇温度が増大する。
【0028】
ヒータ24の上昇温度の増大に伴って、バイメタル21に伝わる熱量も増大し、バイメタル21の上昇温度の増加に伴って、湾曲量も増大する。このとき、湾曲したバイメタル21が、トリップバー4を押すことで、開閉機構3が動作し、可動接触子2aが固定接触子1aから離れる。これにより、回路内の電流が遮断される。
【0029】
そのため、バイメタル21とトリップバー4との初期位置を調整することにより、電流値毎に電流の社団の有無と遮断するまでの時間の調整を行う。具体的には、電流の遮断を行ってはならない定格電流通電時は、バイメタル21の湾曲量が、トリップバー4とバイメタル21との初期距離よりも小さくなるように設計する必要がある。また、電流の遮断を行う必要がある過電流通電時は、バイメタル21の湾曲量が、トリップバー4とバイメタル21との初期距離よりも大きくなるように設計する必要がある。
【0030】
バイメタル21の湾曲量は、次式(1)により算出可能である。だたし、Dはバイメタルの湾曲量[mm]、Kは湾曲係数[1/K]、ΔTは上昇温度[K]、Lははりの長さ[mm]、tは厚さ[mm]である。
【0031】
【数1】
【0032】
上式(1)により、バイメタル21の湾曲量は、バイメタル21を構成するそれぞれの金属から決定される湾曲係数およびバイメタル21の上昇温度の1乗と、はりの長さの2乗とに比例し、厚さの1乗に反比例している。ここで、ヒータ24の許容温度は、材質等により決定されるので、ヒータ24の形状および抵抗を同じにすることで、ヒータ24の上昇温度を一定とした場合を想定することができる。これにより、バイメタル21の上昇温度は、バイメタル21の熱伝導率および熱容量(比熱・密度)と形状とから決定することができる。
【0033】
回路遮断器において、定格電流付近の通電時には、熱動引外し装置に要求される遮断時間が長いので、ヒータ24で発生した熱がバイメタル21に伝わるための時間が十分にある。そのため、バイメタル21の温度は、ヒータ24と接している根元と、自由端となっている先端とで、温度差がほとんど発生しない。
【0034】
一方、過電流通電時は、発熱量が増大する負荷側の設備を保護するために、電流を遮断するまでの時間が非常に短く設定されている。また、過電流通電時は、回路遮断器内部にも過電流が通電されるため、ヒータ24を含む回路遮断器の通電経路の構成部品が瞬時に温度上昇する。これに伴って、ヒータ24と接しているバイメタル21は、用いた材料の熱抵抗および熱抵抗に従って温度上昇する。
【0035】
しかしながら、バイメタル21が温度上昇するのには時間がかかるため、ヒータ24と接している根元と接していない先端とでは、上昇温度に差が生じ、過電流通電時は、バイメタル21の先端はほぼ温度上昇せず、ヒータ24と接している根元の温度上昇によりバイメタル21全体の湾曲量が決定される。
【0036】
また、バイメタル21の湾曲量は、はりの撓みと同様の考え方で検討することができ、バイメタル21の根元が湾曲することで、先端も根元の撓みに従い湾曲する。ここで、先端に行くにつれ、バイメタル21のたわみ角は増大し、合計の湾曲量が決定する。
【0037】
そのため、特許文献2に記載されたように、バイメタルの先端に延長板がある場合は、延長板がなく長さが短い場合に比べ、ともにバイメタルがあるところまでの湾曲量は同じであるが、バイメタル上部に取り付けられた延長板も、バイメタルの撓みにより曲がるため、合計の湾曲量を増加させることが可能となる。
【0038】
なお、バイメタルの先端に延長板を設けず、バイメタルのみで構成される構造とすることで、先端が延長板からなる場合に比べ、湾曲量は増大するが、バイメタルは、例えば金属製の延長板に比べ、コストが高い。また、バイメタルのみで構成した場合、定格電流付近から過電流付近まで、湾曲量および遮断時間が一意に決まるため、用途毎に異なる通電電流に対する遮断するまでの時間を調整することができない。
【0039】
次に、直熱式の回路遮断器の熱動引外し装置について説明する。直熱式の回路遮断器の熱動引外し装置は、電流の通電経路にバイメタルを設置することで、バイメタル自身がジュール熱により発熱し、温度上昇する方式である。
【0040】
この方式では、バイメタル自身に電気抵抗の大きい部材を用いることで、傍熱式のように他の部材から熱が伝わり温度上昇する必要がなくなり、過電流通電時に短時間での遮断が要求される条件においても、応答性よく、電流を遮断することが可能である。
【0041】
また、バイメタル上下に発熱量の高いヒータや熱抵抗の大きい部材等を設置し、バイメタルの温度上昇を変更してもよい。また、バイメタルの片側は湾曲するため、銅のより線等の柔軟性のある部材と接続されている。
【0042】
なお、以下の各実施の形態では、説明を簡略化するため、構造が簡単な直熱式について説明するが、これに限定されず、バイメタルが湾曲して電流を遮断するすべての回路遮断器の熱動引外し装置にこの発明を適用することが可能であり、傍熱式または直傍熱式についても同様である。
【0043】
実施の形態1.
図3は、この発明の実施の形態1に係る回路遮断器の熱動引外し装置を示す構成図である。図3において、この熱動引外し装置10は、第1バイメタル11と第2バイメタル12とが、中間部材13を介して接合されて湾曲部材が構成され、湾曲部材の根元が、ヒータ14にリベット15等で取り付けられている。また、第1バイメタル11の先端には、銅より線が接続されている。
【0044】
なお、第2バイメタル12は、第1バイメタル11の湾曲方向に設けられている。また、中間部材13は、第1バイメタル11と第2バイメタル12との分流を完全に抑制するため、および第1バイメタル11と第2バイメタル12との接触状況を均等にするため、厚みが一定で樹脂等からなる絶縁シートや絶縁膜等が好ましい。
【0045】
ここで、第1バイメタル11は、ジュール熱による発熱と、第1バイメタル11の上下に取り付けられた部品との熱のやり取り等により温度が上昇する。第2バイメタル12は、第1バイメタル11と一部で接続されているため、第1バイメタル11で発生した熱が熱伝導により第2バイメタル12に伝わり、温度上昇して湾曲する。
【0046】
続いて、通電電流毎にバイメタルの動作について説明する。まず、通電電流が定格電流付近では、第1バイメタル11から第2バイメタル12に熱が伝わるのに十分な時間があるため、第1バイメタル11および第2バイメタル12の上昇温度はほぼ同等となり、第1バイメタル11および第2バイメタル12は、ほぼ同じように湾曲するため、第1バイメタル11で湾曲する場合とほぼ同じ湾曲量を得ることが可能となる。
【0047】
一方、過電流通電時に電流を遮断する場合には、電流を遮断するまでの時間が短時間であり、他の部品との熱のやり取りよりも、部品単体のジュール熱による発熱の影響が大きくなる。そのため、第1バイメタル11は、ジュール熱による発熱で温度上昇し、湾曲する。第1バイメタル11のみで考えた場合、定格電流付近でも、過電流付近でも、バイメタル1枚の場合とほぼ同じ温度上昇となり、同じ湾曲量を得るように変位する。
【0048】
これに対して、第2バイメタル12の温度上昇は、上述したように、第1バイメタル11からの熱の伝わりが主であり、過電流通電時は遮断時間が短いため、第1バイメタル11からほぼ熱が伝わらず、ほとんど温度上昇しない。そのため、第2バイメタル12のみで考えた場合、湾曲量はほぼ零となる。
【0049】
そのため、過電流通電時は、第1バイメタル11は、バイメタル1枚の場合とほぼ同等に湾曲しようとするが、第1バイメタル11の湾曲方向にほぼ湾曲しない第2バイメタル2が設けられているため、第1バイメタル11の湾曲が抑制され、電流の遮断までの時間を遅らせることが可能となる。
【0050】
このように、湾曲部材を2枚のバイメタルで構成し、一方の第1バイメタル11を電流の通電経路にし、他方の第2バイメタル12を第1バイメタル11の湾曲方向に設けることで、定格電流付近の湾曲量をバイメタル1枚の場合と同等にしつつ、過電流通電時の遮断時間を遅らせることが可能となる。また、第1バイメタル11をリベット15でヒータ14に固定することにより、固定部で熱の伝わりを抑制し、過電流通電時の遮断時間をより遅くできる。
【0051】
次に、図4図6を参照しながら、第2バイメタル12の形状を変更した場合について説明する。図4(a)〜(c)、図5(a)〜(c)および図6は、この発明の実施の形態1に係る回路遮断器の熱動引外し装置の変形例を示す構成図である。
【0052】
ここでは、説明を簡単にするため、第1バイメタル11および第2バイメタル12の物性値を同等にした場合に、第2バイメタル12の取り付け位置および長さを変更した場合を考える。また、さらに説明を簡単にするため、第1バイメタル11の温度は均一とした場合を想定する。
【0053】
図4図6において、定格電流通電時は、第2バイメタル12の取り付け位置および長さによらず、第1バイメタル11および第2バイメタル12は、ほぼ同じ上昇温度となるため、上述したように、バイメタル1枚の場合と同等の湾曲量が得られる。
【0054】
なお、バイメタルは、根元側で湾曲した場合、その傾きで先端まで湾曲するため、先端側の湾曲量を抑制した場合よりも根元側の湾曲量を抑制した方が、湾曲量の抑制効果としては大きい。そのため、図4(a)〜(c)に示すように、第2バイメタル12の取り付け位置をできるだけ第1バイメタル11の下部、すなわち湾曲の開始地点付近にすることで、過電流通電時の第1バイメタル11の湾曲量を大きく減少させることが可能となる。
【0055】
また、図5(a)〜(c)に示すように、第2バイメタル12の長さを大きくすればするほど、第1バイメタル11の湾曲量を抑制できる範囲が増加するため、第1バイメタル11の湾曲量をより減少させることが可能となる。
【0056】
つまり、第2バイメタル12は、できるだけ大きくかつ根元に取り付けることで、より第1バイメタル11の湾曲量を抑制することが可能となる。そのため、対象物の用途毎に要求される遮断時間に合わせて、バイメタルの取り付け位置および長さを決定することで、必要な遮断時間を得ることが可能となる。
【0057】
また、図6に示すように、第2バイメタル12の数は1個に限定されず、対象物の用途毎に要求される遮断時間に合わせて、複数個の第2バイメタル12を取り付けてもよい。また、複数個の第2バイメタル12のそれぞれが、それぞれ異なる長さを有していてもよい。
【0058】
なお、第1バイメタル11と第2バイメタル12との間に設けられた中間部材13は、第1バイメタル11と第2バイメタル12が接触した際に分流等が発生しないように、絶縁材等から構成されている。また、中間部材13は、温度上昇に伴いバイメタルとともに湾曲するため、ゴムシート、樹脂またはFRP等の柔軟性を有する部材であることが望ましい。
【0059】
また、中間部材13が電気的に絶縁を取れる材質であることで、第1バイメタル11と第2バイメタル12が接触した際に分流等が発生しないようにしているが、中間部材13は、絶縁材でなくても可能である。また、中間部材13を挟まず、第1バイメタル11と第2バイメタル12とを直接接合してもよい。
【0060】
また、中間部材13のサイズや材質の変更により、熱容量を増加させることが可能となり、定格電流通電時の湾曲量を変化させることなく、過電流通電時に第1バイメタル11の温度上昇を抑制し、第1バイメタル11の湾曲量を減少させるとともに、第2バイメタル2への熱の伝わりを抑制することが可能となる。
【0061】
また、同一の上昇温度で湾曲量が互いに異なる第1バイメタル11および第2バイメタル12を用いてもよい。ここでは、第2バイメタル12に、上述したバイメタル1枚の場合と同等の材質および形状を用いることで、第2バイメタル12の湾曲量をバイメタル1枚の場合と同等にした場合に、第1バイメタル11の湾曲量が小さくなるように、湾曲係数が小さい部材を選択することを想定する。
【0062】
この構成によれば、定格電流通電時は、第2バイメタル12が第1バイメタル11から熱をもらって温度上昇し、第2バイメタル12は第1バイメタル11よりも湾曲量が大きく、また湾曲量が抑制されないため、第2バイメタル12のみの湾曲で電流を遮断することとなり、バイメタル1枚の場合と同等の湾曲量が得られる。
【0063】
一方、過電流通電時は、第2バイメタル12には、第1バイメタル11から熱がほとんど伝わらず温度上昇しないため、第1バイメタル11の湾曲によって、遮断時間が決定するが、第1バイメタル11の湾曲係数を小さい部材にすることで、第1バイメタル11の湾曲量が抑制され、遮断までの時間が増加する。
【0064】
また、第1バイメタル11に、上述したバイメタル1枚の場合と同等の材質および形状を用いることで、第1バイメタル11の湾曲量をバイメタル1枚の場合と同等にした場合に、第2バイメタル12の湾曲係数および厚みを、第1バイメタル11と同じ比率で増加させることで、定格電流通電時にバイメタル1枚の場合と同等の湾曲量となるようにしてもよい。
【0065】
このような構成とすることで、定格電流通電時はバイメタル1枚の場合と同様に湾曲するが、過電流通電時、第2バイメタル12が温度上昇せずに、第1バイメタル11の湾曲を抑制するため、厚みが大きい分抑制量が大きくなり、遮断までにかかる時間を延長することが可能となる。
【0066】
すなわち、定格電流通電時に第1バイメタル11と同じ湾曲量を得るように第2バイメタル12を設計することで、定格電流通電時、第1バイメタル11および第2バイメタル12は、バイメタル1枚の場合と同様に湾曲し、過電流通電時、第2バイメタル12が第1バイメタル11の湾曲を抑制する。その際、第2バイメタル12の厚みがバイメタル1枚の場合よりも厚いため、湾曲量の抑制効果が大きく、遮断時間を延長させることが可能となる。このとき、要求される遮断時間に合わせて、第2バイメタル12の湾曲係数をバイメタル1枚の場合よりも小さくし、厚みを減少させてもよい。
【0067】
以上のように、実施の形態1によれば、一端が固定されており、回路遮断器の電流経路に流れる過電流に応じて加熱され、他端がトリップバーに向けて変位可能な湾曲部材は、過電流に応じて直接加熱される第1バイメタルと、第1バイメタルの厚さ方向に設けられ、過電流通電時に第1バイメタルの湾曲を抑制する第2バイメタルと、を有している。
そのため、定格電流通電時の湾曲部材の湾曲量および遮断時間を同等にしたまま、対象物の用途によって、過電流通電時の遮断時間を所望の時間に調整することができる。
【0068】
具体的には、この発明の実施の形態1に係る回路遮断器の熱動引外し装置は、過電流通電時に電流を遮断するための主な湾曲を担う第1バイメタル11と、第1バイメタル11の湾曲を抑制する位置に配置された第2バイメタル12と、第1バイメタル11と根元で接続され、通電により温度上昇するヒータ14と、第1バイメタル11に押されることにより遮断器内部に備えられた電流の遮断機構を動作させるトリップバー4とから構成されるものである。
【0069】
また、主な湾曲を担う第1バイメタル11は、通電経路上に設置され、自身のジュール熱により発熱する。なお、第1バイメタルを通電経路外に設け、第1バイメタルの下部または上部に設けられたヒータに通電し、ヒータから熱をもらって第1バイメタルが温度上昇して湾曲してもよい。
【0070】
ここで、湾曲部材は、複数のバイメタルを備えており、それぞれのバイメタルは、物性値である湾曲係数や形状、すなわち長さおよび厚さ等を調整したバイメタルにより構成されている。また、第1バイメタル11と第2バイメタル12との固定位置を調整することも可能である。それらにより、定格電流付近の通電時の湾曲量および遮断時間をほぼ変化させることなく、過電流通電時の湾曲量および遮断時間を調整することができる。
【0071】
また、定格電流通電時には、第1バイメタル11および第2バイメタル12がともに温度上昇し、湾曲する。また、過電流通電時には、第1バイメタル11は温度上昇し湾曲するが、第2バイメタル12には熱が伝わらず、温度上昇が小さいためほぼ湾曲せず、第1バイメタル11の湾曲を第2バイメタル12が抑制することで、遮断時間を調整することができる。
【0072】
なお、特許文献2に記載の回路遮断器の熱動引外し装置では、バイメタルのみで湾曲部材が構成されている回路遮断器に対して、湾曲量の絶対値の減少量が非常に大きく、定格電流通電時には回路内を流れる電流を遮断せず、回路内を流れる電流が定格電流を超えたときに電流を遮断するために、バイメタルとトリップバーとの調整間隔が狭くなるため、調整が困難であるという問題がある。
【0073】
また、回路遮断器を構成する各部品の物性値のばらつきや、加工や製造誤差等により発生する遮断時間のばらつきが、バイメタルのみで湾曲部材が構成されている遮断器に比べて、影響を大きく受けるので、許容範囲が狭く、調整が非常に困難であるという問題がある。
【0074】
また、特許文献2に記載の回路遮断器の熱動引外し装置において、バイメタルのみで湾曲部材が構成されている回路遮断器と同等の湾曲量を得ようとした場合、バイメタルと延長板との長さを特許文献2に記載されたものよりも長くする必要がある。そのため、回路遮断器全体の形状に影響するとともに、構造に制約を与えるという問題がある。
【0075】
また、特許文献2に記載の回路遮断器の熱動引外し装置において、湾曲部材の湾曲量を、単一の部材で構成されたバイメタルの湾曲量と同等にするために、バイメタルが撓む温度を、従来よりも上昇させることにより、定格電流付近の通電時の湾曲量を増加させることも考えられる。
【0076】
しかしながら、バイメタルの温度を上昇させるためには、バイメタルを過熱する部材の電気抵抗を大きくし、かつ許容温度が高いものに変更する必要がある。そのため、回路遮断器の熱動引外し装置のコストアップにつながるともに、回路遮断器を使用する周囲環境にも注意を払う必要が生じるという問題がある。
【0077】
これに対して、この発明の実施の形態1に係る回路遮断器の熱動引外し装置によれば、第1バイメタル11の湾曲方向に、過電流通電時に第1バイメタルの湾曲を抑制する第2バイメタル12が設けられている。これにより、過電流通電時の湾曲量および遮断時間を調整することができるので、バイメタルとトリップバーとの調整を容易に行うことができる。また、湾曲部材全体の湾曲量を確保することができているので、ヒータの許容温度を高くする必要がなく、構造に制約を与えることもなく、コストの増加を防止することができる。
【0078】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、第1バイメタル11の湾曲方向に第2バイメタル12を設けると説明した。この実施の形態2では、第2バイメタル12を、第1バイメタル11の湾曲方向とは反対の方向に設けることにより、湾曲量を変化させる構成について説明する。
【0079】
図7は、この発明の実施の形態2に係る回路遮断器の熱動引外し装置を示す構成図である。図7において、通電されるバイメタルを、実施の形態1と同様に第1バイメタル11と呼び、通電されないバイメタルを第2バイメタル12と呼ぶ。第2バイメタル12は、第1バイメタル11の湾曲方向とは反対方向に設けられている。
【0080】
ここで、第1バイメタル11および第2バイメタル12の湾曲量は、上昇温度が同じ場合に、第2バイメタル12の方が大きくなるように設計する。ここでは、説明を簡単にするため、湾曲係数のみ変更したと仮定し、第2バイメタル12の湾曲係数が、第1バイメタル11の湾曲係数よりも大きいものとする。
【0081】
この構成によれば、上記実施の形態1と同様に、過電流通電時は、第2バイメタル12にほぼ熱が伝わらないため第2バイメタル12は湾曲せず、第1バイメタル11は、ジュール熱により発熱し、温度上昇に伴い湾曲するため、第1バイメタル11の湾曲のみで遮断時間が決定する。このとき、過電流通電時の遮断時間を遅らせるためには、第1バイメタル11に湾曲係数が小さい部材を用いればよい。
【0082】
また、定格電流通電時は、第1バイメタル11から第2バイメタル12に熱が伝わり、第1バイメタル11および第2バイメタル12の温度上昇がほぼ同等となり、湾曲係数の大きい第2バイメタル2が第1バイメタル11を押す。そのため、定格電流付近での湾曲量は、第1バイメタル11および第2バイメタル12の両方の湾曲により決定される。
【0083】
なお、定格電流付近の湾曲量をバイメタル1枚の場合と同等の湾曲量にするためには、第2バイメタル12に湾曲係数の大きな部材を用いることで、第2バイメタル12単体で想定した場合の湾曲量がバイメタル1枚の場合よりも大きくなり、第1バイメタル11単体で想定した場合の湾曲量がバイメタル1枚の場合よりも小さくなり、その結果、第2バイメタル12の湾曲を第1バイメタル11が抑制することになるので、バイメタル1枚の場合と同等の湾曲量を得ることが可能となる。
【0084】
また、この発明の実施の形態2に係る回路遮断器の熱動引外し装置の構成によれば、過電流通電時は、第1バイメタル11のみの湾曲で湾曲部材の湾曲量が決まるため、同じ時間で得られる湾曲量が減少し、バイメタル1枚の構造に比べて、大きく過電流通電時の遮断時間を延長させることが可能となる。
【0085】
実施の形態3.
図8は、この発明の実施の形態3に係る回路遮断器の熱動引外し装置を示す構成図である。図8において、第1バイメタル11をヒータ14に取り付ける際、または第2バイメタル12または中間部材13を第1バイメタル11に接合する際に、ロウまたはハンダ17が用いられている。この実施の形態3では、第1バイメタル11および第2バイメタル12の固定部のうち、少なくとも1つがロウ付けまたはハンダ付けとなっている。
【0086】
この構成によれば、図3に示した締結具、例えばリベット15が不要となる他、バイメタル同士を熱伝導率の高いロウまたはハンダ17で固定することにより、第1バイメタル11と第2バイメタル12との間の接触熱抵抗を抑制できるため、第1バイメタル11で発生した熱が第2バイメタル12に伝わる際の製品毎のばらつきを抑制することが可能となる。
【0087】
実施の形態4.
図9は、この発明の実施の形態4に係る回路遮断器の熱動引外し装置を示す構成図である。図9において、第1バイメタル11と第2バイメタル12との間の固定部、またはバイメタルの側面に、熱容量を有する熱容量体18が取り付けられている。
【0088】
この構成において、熱容量体18は、PET(ポリエチレンテレフタラート)やPP(ポリプロピレン)等の樹脂材料としてもよいが、CuやAl等の熱伝導率の高い金属からなる熱容量体18を用いることにより、熱抵抗を大きく変化させることなく、湾曲部材の熱容量を増加させることが可能となる。そのため、通電時間が長い定格電流通電時は、熱容量体18を用いない場合とほぼ同じ温度上昇となり、湾曲量や遮断までの時間がほぼ変化することがない。
【0089】
一方、過電流通電時は、特に根元付近に熱容量体18を用いることで、温度上昇を抑制することが可能となり、湾曲量や遮断までの時間を遅らせることが可能となる。また、遮断までの時間を大きく遅らせたい場合は、熱容量体18のサイズや材質を変更することで対応が可能となる。
【0090】
また、熱容量体18は、バイメタルの側面に取り付けても効果が得られるため、要求される過電流通電時の遮断時間に対して、配置位置や形状を変更してもよい。このとき、熱容量体18は、CuやAl等の熱伝導率の高い金属だけでなく、PETやPP等の樹脂材料を用いてもよい。
【0091】
この構成によれば、従来、ヒータ14を含んだ通電部全体を考慮し、材料や形状を変更することで設計していたものを、湾曲部材の適した位置に熱容量体18を配置することで、過電流通電時だけでなく、定格電流付近の通電時においても、遮断時間の調整が可能となる。
【0092】
また、図9では熱容量体18を第2バイメタル12に1つ配置する場合を示したが、要求される遮断時間や湾曲量により複数用いてもよく、また、第1バイメタル11に取り付けてもよい。熱容量体18の固定方法についても、リベット15による固定に限らず、ロウ付けやハンダ付けによる固定であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 固定子、1a 固定接触子、2 可動子、2a 可動接触子、3 開閉機構、3a ハンドル、3b 可動アーム、4 トリップバー、5 ケース、10 熱動引外し装置、11 第1バイメタル、12 第2バイメタル、13 中間部材、14 ヒータ、15 リベット、16 銅より線、17 ロウまたはハンダ、18 熱容量体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9