(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発熱回路素子が搭載された方形の回路基板の少なくとも三辺を、金属製のベース部材と樹脂製又は金属製のカバー部材とによって密閉挟持して構成されている回路基板収納筐体であって、
前記発熱回路素子は、発熱素子とヒートシンクと接続端子の一部を封止樹脂で一体成形し、前記接続端子の一端は、前記回路基板の表面層に設けられた接続ランドに半田接続され、
前記ヒートシンクは、前記回路基板の前記表面層に設けられた表面伝熱層に半田接続されるとともに、前記回路基板の裏面層には裏面伝熱層が設けられ、前記表面伝熱層と前記裏面伝熱層とは複数のスルーホールの内周に設けられたメッキ層によって伝熱結合されており、
前記回路基板の前記裏面伝熱層には伝熱シートが密着配置されていて、
前記伝熱シートは、導電性伝熱シートを中間層とし、前記裏面伝熱層と当接する第1面には第1絶縁シートが接着され、前記第1面の反対面である第2面には、第2絶縁シートが接着されており、
前記回路基板は、前記ベース部材の外縁部に設けられた棚段部と、前記カバー部材の外縁部に設けられた挟持押圧部とによって構成された圧接挟持部との間で圧接挟持されているとともに、
前記伝熱シートは、前記回路基板の前記圧接挟持されている前記圧接挟持部まで延長されて、前記棚段部及び前記回路基板によって圧接されて、前記棚段部を介して前記ベース部材と前記ヒートシンクとの間の伝熱経路に配置されており、
前記ベース部材と前記カバー部材とは、その外周部に設けられた複数の締結部材によって一体化されて、締結当り面が相互に密着圧接され、
前記棚段部と前記挟持押圧部との最小間隙寸法G1は、前記回路基板と前記伝熱シートの合計厚さ寸法の最大厚さ寸法Tmax以上であるとともに、
前記カバー部材は樹脂成型材であって、前記挟持押圧部には複数の突起部が立設され、前記突起部の先端部と前記棚段部との最大間隙寸法G2は、前記回路基板と前記伝熱シートの合計厚さ寸法の最小厚さ寸法Tmin以下となっており、
前記締結部材によって前記締結当り面が密着圧接されたときには、前記突起部の先端部は押圧変形されて前記回路基板と前記伝熱シートが圧接挟持される、
回路基板収納筐体。
前記伝熱シートは、平面方向に対する熱伝導率が500W/m・K以上となる厚さ寸法を有するグラファイト材である前記導電性伝熱シートと、絶縁耐圧がDC60V以上の薄膜シートである前記第1及び第2絶縁シートとによって構成され、
前記第1絶縁シートは、その両面に接着材層が設けられていて、一方の面は前記導電性伝熱シートに接着されており、他方の面は剥離除去が行える保護シートを備え、この保護シートを除去して前記回路基板に接着取付けされ、
前記第2絶縁シートは、少なくとも一方の面に接着材層が設けられていて、この一方の面は前記導電性伝熱シートに接着されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の回路基板収納筐体。
【背景技術】
【0002】
回路基板に搭載された発熱部品の発生熱を金属製の収納筐体に伝熱し、この収納筐体によって熱放散を行うための伝熱部材には、伝熱グリス又は伝熱シート、或いはその両方を併用することが行われている。
なお、発熱体と筐体との間には、各部の寸法誤差と現品の寸法バラツキによる間隙空気層が発生し、伝熱グリスはこの空気間隙を埋めるものとして活用されていて、空気の熱伝導率0.024(W/m・K)に比べ、熱伝導性物質を充填した伝熱グリス(又は放熱グリス)での熱伝導率は例えば5〜15(W/m・K)に改善されている。
一方、伝熱部材に要求される主な特性は、高い伝熱性と絶縁性及び筐体との密着性を得るための柔軟性であるが、一般には熱伝導率が大きな材料は導電性のものであって、高い伝熱性と絶縁性とを同時に満たすことは困難である。
【0003】
例えば、導電性の金属材料である鉄・アルミ・銅の熱伝導率は75、230、350(W/m・K)であり、導電性の非金属材料である黒鉛の熱伝導率は1500(W/m・K)であるのに対し、絶縁性で熱伝導率が大きいセラミックスの熱伝導率は180〜260(W/m・K)とされている。
従って、熱伝導率が大きな黒鉛シートに絶縁シートを貼付けた複合伝熱材によって熱伝導性と絶縁性を確保するとともに、更には、伝熱相手面に対して柔軟接触するための弾性接触層を付加するエラストマ(elastomer)処理を行ったものも実用されていて、付加されたエラストマ層の熱伝導率は例えば1.6(W/m・K)となっている。
【0004】
下記の特許文献1「電子制御ユニット」の
図4によれば、カバー60とベース(ヒートシンク)40によって構成された筐体内には、発熱回路素子となるパワーMOSFET31を搭載した樹脂基板20が収納され、この発熱回路素子の発生熱は放熱シート51を介してベース40に伝熱されるよう構成されていて、この放熱シート51は、例えばシリコン等を含む熱抵抗の小さい絶縁シートであって、この絶縁放熱シート51とベース部材であるヒートシンク40との間に、例えばシリコンを基材としたゲル状の放熱グリスを塗布し、接合部の微細な隙間を埋めることで、熱伝導率を高めるようになっている。
従って、絶縁機能と伝熱機能とが分担され、柔軟性効果を主体とした伝熱構造となっている。
【0005】
また、下記の特許文献2「放熱シート及び放熱構造」の
図2によれば、筐体12に収納された基板14には発熱体13が搭載され、発熱体13の発生熱は、弾性層23とバリア層24と、高熱伝導性の黒鉛(グラファイト)シート22に伝熱され、ここから自由空間12aに放射熱放散されるようになっている。
ここで、弾性層23は絶縁性と柔軟性を有するシリコーンゴム等の熱可塑性エラストマであり、バリア層24は例えばポリエチレンテレフタレートなどの絶縁材となっている。従って、絶縁機能と伝熱機能と柔軟性機能を分担した熱放散構造となっている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
(1)構成の詳細な説明
先ず、この発明の実施の形態1による回路基板収納筐体100Aの全体構成図である
図1と、
図1のものの2A−2A線による断面図である
図2Aと、
図2Aにおける局部2Bの拡大断面図である
図2Bについて、その構成を順次説明する。
図1において、回路基板収納筐体100Aは、四方に取付足26a〜26dを有するアルミダイキャスト製のベース部材20Aと、発熱回路素子50を含む複数の回路部品が搭載された回路基板40と、三方の外周壁部に鍔状のフランジ37を有する樹脂製のカバー30部材Aとによって構成されていて、カバー部材30Aの残る一方の外周壁部は欠落し、回路基板40の一辺に設けられたコネクタハウジング90a・90bによって封鎖される開口部となっている。
なお、ベース部材20Aとカバー部材30Aは図示しない締結部材である固定ねじと、四方のねじ穴34a〜34dを用いて一体化されるようになっている。
また、発熱回路素子50の搭載面の裏側面に設けられた伝熱シート60Aと、フランジ37の内面に充填されている防水シール材70については
図2Aで後述する。
【0013】
図2Aにおいて、発熱回路素子50を含む複数の回路部品とコネクタハウジング90a・90b(
図1参照)が搭載された方形の回路基板40は、方形のベース部材20Aの4方の棚段部21に搭載されるようになっている。
この内の3方の棚段部21には、カバー部材30Aに設けられた3方の挟持押圧部31が対向し、図示しない締結ねじによって回路基板40が挟持されるようになっている。
そして、4方の棚段部21の外側には防水突起部22が設けられ、その内の3方の防水突起部22は、カバー部材30Aの外縁に設けられた防水嵌合部32と対向して防水シール材70が充填されるシール間隙を構成するようになっている。
残りの1辺における防水嵌合部32は回路基板40の1辺に搭載されたコネクタハウジング90a・90b(
図1参照)に設けられた図示しない防水嵌合部と嵌合し、回路基板40の1辺はコネクタハウジング90a・90bを介してベース部材20Aとカバー部材30A間に挟持されるようになっている。
なお、符号23はベース部材20Aの底面部を示し、符号33はカバー部材30Aの天蓋部を示している。
【0014】
図2Bにおいて、発熱回路素子50は、発熱素子51とヒートシンク52と複数の接続端子54とを封止樹脂53によって一体成形したものであり、封止樹脂53から露出した接続端子54の先端部は回路基板40の表面に設けられた銅箔パターンの一部である接続ランド44に半田つけされている。
また、回路基板40にはヒートシンク52と半田つけされる表面伝熱層45aと、この表面伝熱層45aに対して複数のスルーホール42に設けられたメッキ層を介して電気的・熱的に結合された裏面伝熱層45bとが設けられている。
なお、表面伝熱層45aにはヒートシンク52との半田接続部を除いて半田レジスト膜46が塗布されていて、これにより、スルーホール42に半田が流入しないようになっている。伝熱シート60Aは、中間層となる導電性伝熱シート62と、その両面に接着された第1絶縁シート61及び第2絶縁シート63とによって構成されている。
導電性伝熱シート62は、厚さ寸法が例えば0.1mmであって、平面方向の熱伝導率が大きな黒鉛(グラファイト)材で構成されている。
第1・第2絶縁シート61・63は、厚さ寸法が例えば5μmのポリエチレンテレフタレート材であって、柔軟性を有する絶縁材となっている。
【0015】
なお、第1絶縁シート61は両面接着シートとなっていて、中間層の反対面には保護シートが設けられており、この保護シートを剥がしてから回路基板40に接着するようになっている。
この実施形態においては、カバー部材30Aが樹脂成型材であって、金属製のものに比べて変形しやすく、ベース部材20Aとカバー部材30Aとを図示しない締結部材で締め付け固定したときの、締結当たり面の位置と、棚段部21と挟持押圧部31による回路基板40の押圧部との平面位置とが異なっていることによって、各部の寸法誤差があっても確実に回路基板40の挟持が可能となっている。
また、回路基板40は、厚さ寸法が例えば1.6mmのガラスエポキシ材であって、伝熱シート60Aが貼付されている位置では全体厚さが大きくなるが、これもカバー部材30Aの変形によって吸収されるようになっている。
【0016】
次に、
図1のものの第1の変形形態による回路基板収納筐体110Aの回路基板挟持部の断面図である
図3Aと、
図1のものの第2の変形形態による回路基板収納筐体110Bの回路基板挟持部の断面図である
図3Bについて、
図2Aのものとの相違点を中心にしてその構成を詳細に説明する。
図3Aにおいて、発熱回路素子50を含む複数の回路部品とコネクタハウジング90a・90b(
図1参照)が搭載された方形の回路基板40は、方形のベース部材20Bの4方の棚段部21に搭載されるようになっている。
この内の3方の棚段部21には、樹脂製のカバー部材30Bに設けられた3方の挟持押圧部31が対向し、挟持押圧部31には複数の突起部35が一体成形されている。
ベース部材20Bとカバー部材30Bとは、その外周部に設けられた図示しない複数の締結部材によって一体化されて、締結当り面が相互に密着圧接されるものであるが、棚段部21と挟持押圧部31との最小間隙寸法G1は、回路基板40と伝熱シート60Aの合計厚さ寸法の最大厚さ寸法Tmax以上であるとともに、突起部35の先端部と棚段部21との最大間隙寸法G2は、回路基板40と伝熱シート60Aの合計厚さ寸法の最小厚さ寸法Tmin以下となっていて、締結部材によって締結当り面が密着圧接されたときには、突起部35の先端部は押圧変形されて回路基板40と伝熱シート60Aが圧接挟持されるようになっている。
【0017】
図3Bにおいて、発熱回路素子50を含む複数の回路部品とコネクタハウジング90a・90b(
図1参照)が搭載された方形の回路基板40は、方形のベース部材20Bの4方の棚段部21に搭載されるようになっている。
この内の3方の棚段部21には、樹脂製のカバー部材30Bに設けられた3方の挟持押圧部31が対向し、挟持押圧部31には複数の突起部35が一体成形されていて、
図3Aの場合と同様に締結部材によって締結当り面が密着圧接されたときには、突起部35の先端部は押圧変形されて回路基板40と伝熱シート60Bとが圧接挟持されるようになっている。
なお、回路基板40の方形3辺を挟持する棚段部21と挟持押圧部31とのさらに外縁部には、防水シール材70が充填される3方のシール間隙が構成され、このシール間隙は例えば0.3mmの寸法であるのに対し、伝熱シート60Bの厚さ寸法は例えば0.12mmとなっている。
【0018】
また、回路基板40の残りの方形1辺にはコネクタハウジング90a・90bが搭載されて、防水シール材70は、ベース部材20Bの1辺とカバー部材30Bの1辺、及びコネクタハウジング90a・90bの外周面によって構成される環状シール間隙にも充填されて相互に連通し、棚段部21において、回路基板40を介して挟持押圧部31によって挟持圧接される伝熱シート60Bは、少なくとも一つのシール間隙に侵入する延長部60BBを備えている。
これにより、伝熱シート60Bとベース部材20Bとの接触面積が拡大し、伝熱特性が向上するようになっており、発熱回路素子50を回路基板40の角部に配置した場合には、伝熱シート60Bの延長部60BBは2辺のシール間隙部に延長されるようになっている。
【0019】
(2)実施の形態1の要点と特徴
以上の説明で明らかなとおり、この発明の実施の形態1及びその変形形態による回路基板収納筐体は、発熱回路素子50が搭載された方形の回路基板40の少なくとも三辺を、金属製のベース部材20A・20Bと樹脂製のカバー部材30A・30Bとによって密閉挟持して構成されている回路基板収納筐体100A・110A・110Bであって、
前記発熱回路素子50は、発熱素子51とヒートシンク52と接続端子54の一部を封止樹脂53で一体成形し、前記接続端子54の一端は、前記回路基板40の表面層に設けられた接続ランド44に半田接続され、
前記ヒートシンク52は、前記回路基板40の前記表面層に設けられた表面伝熱層45aに半田接続されるとともに、前記回路基板40の裏面層には裏面伝熱層45bが設けられ、前記表面伝熱層45aと前記裏面伝熱層45bとは複数のスルーホール42の内周に設けられたメッキ層によって伝熱結合されており、
前記回路基板40の前記裏面伝熱層45bには伝熱シート60A・60Bが密着配置されていて、前記伝熱シート60A・60Bは、導電性伝熱シート62を中間層とし、前記裏面伝熱層45bと当接する第1面には第1絶縁シート61が接着され、前記第1面の反対面である第2面には、第2絶縁シート63が接着されており、
前記回路基板40は、前記ベース部材20A・20Bの外縁部に設けられた棚段部21と、前記カバー部材30A・30Bの外縁部に設けられた挟持押圧部31とによって構成された圧接挟持部との間で圧接挟持されているとともに、
前記伝熱シート60A・60Bは、前記回路基板40の前記圧接挟持されている圧接挟持部まで延長されて、前記棚段部21及び前記回路基板40によって圧接されて、前記棚段部21を介して前記ベース部材20A・20Bと前記ヒートシンク52との間の伝熱経路に配置されている。
【0020】
前記伝熱シート60A・60Bは、平面方向に対する熱伝導率が500W/m・K以上となる厚さ寸法を有するグラファイト材である前記導電性伝熱シート62と、絶縁耐圧がDC60V以上の薄膜シートである前記第1及び第2絶縁シート61・63とによって構成され、
前記第1絶縁シート61は、その両面に接着材層が設けられていて、一方の面は前記導電性伝熱シート62に接着されており、他方の面は剥離除去が行える保護シートを備え、この保護シートを除去して前記回路基板40に接着取付けされ、
前記第2絶縁シート63は、少なくとも一方の面に接着材層が設けられていて、この一方の面は前記導電性伝熱シート62に接着されている。
以上のとおり、この発明の請求項
4に関連し、伝熱シートはグラファイト材である導電性伝熱シートの両面に第1及び第2絶縁シートが接着されて構成され、第1絶縁シートに設けられた保護シートを除去して回路基板に接着されるようになっている。
従って、伝熱シートの組立作業性が向上するとともに、回路基板と伝熱シート間に押圧力が作用していなくても、第1絶縁シートに設けられた接着材によって回路基板との密着性が向上し、この接触面での熱抵抗の発生を抑制することができる特徴がある。
これは、実施の形態2及びその変形形態についても同様である。
【0021】
前記発熱回路素子50は、前記回路基板40の方形角部に配置されていて、前記伝熱シート60A・60Bは、直交する2辺の前記棚段部21と前記挟持押圧部31に延長されている。
以上のとおり、この発明の請求項
5に関連し、発熱回路素子は方形回路基板の角部に接近配置され、伝熱シートは直交する2辺の棚段部と挟持押圧部によって回路基板を介してして圧接挟持されている。
従って、2辺の棚段部からカバー部材へ伝熱を行うことができるので、伝熱特性を更に改善することができる特徴がある。
これは、実施の形態2及びその変形形態についても同様である。
【0022】
前記ベース部材20Bと前記カバー部材30Bとは、その外周部に設けられた複数の締結部材によって一体化されて、締結当り面が相互に密着圧接され、
前記棚段部21と前記挟持押圧部31との最小間隙寸法G1は、前記回路基板40と前記伝熱シート60A・60Bの合計厚さ寸法の最大厚さ寸法Tmax以上であるとともに、
前記カバー部材30Bは樹脂成型材であって、前記挟持押圧部31には複数の突起部35が立設され、
前記突起部35の先端部と前記棚段部21との最大間隙寸法G2は、前記回路基板40と前記伝熱シート60A・60Bの合計厚さ寸法の最小厚さ寸法Tmin以下となっており、
前記締結部材によって前記締結当り面が密着圧接されたときには、前記突起部35の先端部は押圧変形されて前記回路基板40と前記伝熱シート60A・60Bが圧接挟持されるようになっている。
以上のとおり、この発明の請求項
1に関連し、回路基板と伝熱シートとは、樹脂製のカバー部材の挟持押圧部に設けられた突起部を介して棚段部との間で圧接挟持されるようになっている。
従って、各部の寸法バラツキがあっても、締結部材によってベース部材とカバー部材とを相互に締結固定した状態において、突起部の変形によって確実に回路基板と伝熱シートを棚段部に対して圧接挟持して、安定した伝熱特性を得ることができる特徴がある。
【0023】
前記回路基板40の方形3辺を挟持する前記棚段部21と前記挟持押圧部31とのさらに外縁部には、防水シール材70が充填される3方のシール間隙が構成され、
前記回路基板40の残りの方形1辺にはコネクタハウジング90a・90bが搭載されて、前記防水シール材70は、前記ベース部材20Bの1辺と前記カバー部材30Bの1辺、及び前記コネクタハウジング90a・90bの外周面によって構成される環状シール間隙にも充填されて相互に連通し、
前記棚段部21において、前記回路基板40を介して前記挟持押圧部31によって挟持圧接される前記伝熱シート60Bは、前記3方のシール間隙の一部領域に侵入する延長部60BBを備えている。
以上のとおり、この発明の請求項
3に関連し、伝熱シートの端部にはベース部材とカバー部材の3方の外縁部に設けられたシール間隙に侵入する延長部が設けられ、このシール間隙には防水シール材が充填されるようになっている。
従って、伝熱シートの延長部は防水シール材によってベース部材のシール間隙面に圧接されて、ベース部材に対する伝熱面積が拡大されるので、伝熱特性を大幅に向上することができる特徴がある。
これは、実施の形態2についても同様に構成することができるものである。
【0024】
実施の形態2.
(1)構成の詳細な説明
次に、この発明の実施の形態2による回路基板挟持部の断面図である
図4Aと、
図4Aのものの変形形態による回路基板挟持部の断面図である
図4Bについて、
図2Aのものとの相違点を中心にしてその構成を詳細に説明する。
なお、各図において同一符号は同一又は相当部分を示している。
そして、実施の形態1と実施の形態2との主な相違点は、実施の形態2におけるベース部材20C・20Dが伝熱台座部24を備え、発熱回路素子50の発生熱がベース部材20C・20Dの棚段部21に加えて、この伝熱台座部20C・20Dにも伝熱されるようになっていることである。
また、実施の形態2及びその変形形態におけるカバー部材30Cは金属製となっているが、これを実施の形態1及びその変形形態の場合と同様に樹脂製にすることも可能であり、逆に、実施の形態1及びその変形形態の場合のカバー部材30A・30Bを金属製にすることが可能である。
【0025】
図4Aにおいて、回路基板収納筐体200Aは、金属製のベース部材20Cと金属製のカバー部材30Cによって構成されていて、発熱回路素子50を含む複数の回路部品とコネクタハウジング90a・90b(
図1参照)が搭載された方形の回路基板40は、方形のベース部材20Cの4方の棚段部21に搭載されるようになっている。
この内の3方の棚段部21には、例えばアルミダイキャスト製又は板金製のカバー部材30Cに設けられた3方の挟持押圧部31が対向し、挟持押圧部31には複数の突起部36が一体成形されている。
ベース部材20Cとカバー部材30Cとは、その外周部に設けられた図示しない複数の締結部材によって一体化されて、締結当り面が相互に密着圧接されるものであるが、棚段部21と挟持押圧部31との最小間隙寸法G1は、回路基板40と伝熱シート60Cの合計厚さ寸法の最大厚さ寸法Tmax以上であるとともに、突起部36の先端部と棚段部21との最大間隙寸法G2は、回路基板40と伝熱シート60Cの合計厚さ寸法の最小厚さ寸法Tmin以下となっていて、締結部材によって締結当り面が密着圧接されたときには、回路基板40の局部が圧縮変形されて回路基板40と伝熱シート60Cが圧接挟持されるようになっている。
【0026】
一方、ベース部材20Cの底面部23には伝熱台座部24が一体成形されていて、この伝熱台座部24と伝熱シート60Cは例えば0.2mmの間隙をおいて対向し、この対向間隙には伝熱グリス80が塗布されている。
従って、この実施形態においては、発熱回路素子50の発生熱は、伝熱シート60Cを介してベース部材20Cの棚段部21及び伝熱台座部24に伝熱されるので、より大きな消費電力の発熱回路素子50に対し、その温度上昇を抑制することができるようになる。
なお、この実施形態においても、
図3Bの場合と同様に伝熱シートに延長部を設けて、シール間隙に侵入させるようにしておくことができる。
【0027】
図4Aのものの変形形態である
図4Bにおいて、回路基板収納筐体200Bは、金属製のベース部材20Dと金属製のカバー部材30Cによって構成されていて、ここで使用される伝熱シート60Dには高熱伝導性の樹脂材である弾性シート64が接着されており、この弾性シート64は例えば0.5mmの厚さ寸法を有している。
従って、伝熱シート60Dと弾性シート64の合計の厚さ寸法は0.62mmとなり、ベース部材20Dの棚段部21には0.4mmの深さ寸法の座繰り段差部25が設けられている。
これにより、締結部材によってベース部材20Dとカバー部材30Cを一体化固定したときには弾性シート64は圧縮変形し、その圧縮寸法は寸法差0.62−0.4=0.22mmに相当している。
【0028】
(2)実施の形態2の要点と特徴
以上の説明で明らかなとおり、この発明の実施の形態2及びその変形形態による回路基板収納筐体は、発熱回路素子50が搭載された方形の回路基板40の少なくとも三辺を、金属製のベース部材20C・20Dと金属製のカバー部材30Cとによって密閉挟持して構成されている回路基板収納筐体200A;200Bであって、
前記発熱回路素子50は、発熱素子51とヒートシンク52と接続端子54の一部を封止樹脂53で一体成形し、前記接続端子54の一端は、前記回路基板40の表面層に設けられた接続ランド44に半田接続され、
前記ヒートシンク52は、前記回路基板40の前記表面層に設けられた表面伝熱層45aに半田接続されるとともに、前記回路基板40の裏面層には裏面伝熱層45bが設けられ、前記表面伝熱層45aと前記裏面伝熱層45bとは複数のスルーホール42の内周に設けられたメッキ層によって伝熱結合されており、
前記回路基板40の前記裏面伝熱層45bには伝熱シート60C・60Dが密着配置されていて、前記伝熱シート60C・60Dは、導電性伝熱シート62を中間層とし、前記裏面伝熱層45bと当接する第1面には第1絶縁シート61が接着され、前記第1面の反対面である第2面には、第2絶縁シート63が接着されており、
前記回路基板40は、前記ベース部材20C・20Dの外縁部に設けられた棚段部21と、前記カバー部材30Cの外縁部に設けられた挟持押圧部31とによって構成された圧接挟持部との間で圧接挟持されているとともに、
前記伝熱シート60C・60Dは、前記回路基板40の前記圧接挟持されている圧接挟持部まで延長されて、前記棚段部21及び前記回路基板40によって圧接されて、前記棚段部21を介して前記ベース部材20C・20Dと前記ヒートシンク52との間の伝熱経路に配置されている。
【0029】
前記ベース部材20C・20Dと前記カバー部材30Cとは、その外周部に設けられた複数の締結部材によって一体化されて、締結当り面が相互に密着圧接され、
前記棚段部21と前記挟持押圧部31との最小間隙寸法G1は、前記回路基板40と前記伝熱シート60C・60Dの合計厚さ寸法の最大厚さ寸法Tmax以上であるとともに、
前記回路基板40はガラスエポキシを基材とするとともに、前記カバー部材30Cは金属製であって、前記挟持押圧部31には複数の突起部36が成形され、
前記突起部36の先端部と前記棚段部21との最大間隙寸法G2は、前記回路基板40と前記伝熱シート60C・60Dの合計厚さ寸法の最小厚さ寸法Tmin以下となっており、
前記締結部材によって前記締結当り面が密着圧接されたときには、前記回路基板40の局部が前記突起部36によって圧縮変形して、前記伝熱シート60C・60Dが圧接挟持されるようになっている。
以上のとおり、この発明の請求項
2に関連し、回路基板と伝熱シートとは、金属製のカバー部材の挟持押圧部に設けられた突起部を介して棚段部との間で圧接挟持されるようになっている。
従って、各部の寸法バラツキがあっても、締結部材によってベース部材とカバー部材とを相互に締結固定した状態において、回路基板の局部の圧縮変形によって確実に回路基板と伝熱シートを棚段部に対して圧接挟持して、安定した伝熱特性を得ることができる特徴がある。
【0030】
前記ベース部材20Cの底面部23には、この底面部23から突出した伝熱台座部24が一体成形されていて、
前記伝熱台座部24と前記伝熱シート60Cの前記第2絶縁シート63との間には、伝熱グリス80が塗布されている。
以上のとおり、この発明の請求項
6に関連し、ベース部材の底面部から突出した伝熱台座部と、伝熱シートの第2絶縁シートとの間には、伝熱グリスが塗布されている。
従って、発熱回路素子の発生熱は、伝熱シートを介してベース部材の棚段部と伝熱台座部に伝熱して熱放散が行われ、伝熱台座部の温度上昇が過大とならないように熱分散が行われることによって、伝熱グリスの涸化変質による伝熱特性の不安定化を抑制することができる特徴がある。
【0031】
前記ベース部材20Dの底面部23には、この底面部23から突出した伝熱台座部24が一体成形されているとともに、
前記伝熱シート60Dの前記第2絶縁シート63の外面には、熱伝導性の弾性シート64が接着されており、
前記棚段部21には、前記弾性シート64によって厚さ寸法が増大した前記伝熱シート60Dが入り込む座繰り段差部25が設けられていて、前記弾性シート64は、少なくとも0.1mm以上の圧縮変形を行う厚さ寸法を有しており、
前記伝熱シート60Dは、前記棚段部21において前記回路基板40を介して前記挟持押圧部31によって圧接挟持されるとともに、前記弾性シート42は前記座繰り段差部25と前記伝熱台座部24との間で圧縮変形されている。
以上のとおり、この発明の請求項
7に関連し、ベース部材の底面部から突出した伝熱台座部と回路基板との間には、厚さ寸法を大きくして圧縮変形を行うようにした伝熱シートが介在するようになっている。
従って、発熱回路素子の発生熱は、伝熱シートを介してベース部材の棚段部と伝熱台座部に伝熱して熱放散特性が向上し、伝熱グリスを使用しなくても伝熱シートの圧縮変形によって伝熱台座部に伝熱することが可能となって、組立作業性が向上する特徴がある。
【解決手段】金属製のベース部材20Aの棚段部21と、樹脂製のカバー部材30Aの挟持押圧部31とによって密閉挟持された回路基板40の表面には、発熱回路素子50が半田接続され、表面伝熱層と複数のスルーホールメッキと裏面伝熱層を介して伝熱シート60Aが接着され、高熱伝導性の黒鉛シートを中間層として両面に薄膜絶縁層を貼付した伝熱シート60Aは、回路基板40を介して棚段部21に圧接されてベース部材20Aに伝熱するとともに、伝熱シート60Aの裏面からベース部材20Aの底面部23にも熱放散が行われる。