特許第6432924号(P6432924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432924
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】駆動制御装置および駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20181126BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20181126BHJP
   H02K 1/24 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   H02P27/06
   H02P27/08
   H02K1/24 B
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-509872(P2018-509872)
(86)(22)【出願日】2017年9月12日
(86)【国際出願番号】JP2017032847
(87)【国際公開番号】WO2018100835
(87)【国際公開日】20180607
【審査請求日】2018年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-231209(P2016-231209)
(32)【優先日】2016年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 大河
(72)【発明者】
【氏名】北村 達也
【審査官】 田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−135343(JP,A)
【文献】 特開2014−113050(JP,A)
【文献】 特開2014−193096(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/188995(WO,A1)
【文献】 特開2013−255389(JP,A)
【文献】 特開2013−093936(JP,A)
【文献】 特開2014−096905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00−25/03,25/04,25/10−27/18
H02K 1/24
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の出力電圧を出力する直流電圧源と、
スイッチング素子を有し、前記直流電圧源から前記出力電圧が入力され前記スイッチング素子をスイッチングすることによって駆動電圧を回転電機に印加して駆動電流を通電するインバータと、
前記直流電圧源の前記出力電圧を制御し、かつ前記回転電機のトルク指令値に基づいて第1の電流制限値以下の駆動電流で通電する第1の制御モード、および前記第1の電流制限値よりも大きい第2の電流制限値以下かつ前記第1の電流制限値よりも大きい駆動電流で通電する第2の制御モードで駆動電流を前記スイッチング素子に通電する制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、第1の制御モードのときの回転電機の前記トルク指令値が予め定められたトルク値を上回る場合に、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切替えて、前記回転電機の出力トルクが前記予め定められたトルク値を上回る制御を行い、
前記第2の制御モードのときの、予め定められた時間内における前記スイッチング素子をオンする時間は、前記第1の制御モードのときの、前記予め定められた時間内における前記スイッチング素子をオンする時間よりも長く、
前記第2の制御モードのときの前記スイッチング素子がスイッチングされる回数は、前記第1の制御モードのときのスイッチングされる回数よりも少なく、
前記第1の電流制限値および前記第2の電流制限値は、前記スイッチング素子がスイッチングされることにより発生する損失であるスイッチング損に応じて決定される値であり、
前記第2の電流制限値における前記スイッチング損は、前記第1の電流制限値における前記スイッチング損よりも小さく、
前記第1の制御モードのときの前記直流電圧源の前記出力電圧で前記第2の制御モードに切替えた後の駆動電流による前記スイッチング素子に発生する発熱量が前記スイッチング素子に発生する発熱量の制限値を超え、かつ前記第2の制御モードに切替えた後の前記トルク指令値が、前記予め定められたトルク値である第1のトルク値よりも大きく前記第2の電流制限値に対応する値である第2のトルク値よりも小さい場合には、前記制御部は、前記第2の制御モードのときの前記直流電圧源の前記出力電圧を、前記第1の制御モードのときの前記直流電圧源の前記出力電圧よりも小さくし、前記第2の制御モードのときの駆動電流を前記第2の電流制限値以下に抑える制御を行う駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、第2の制御モードのときの前記回転電機の前記トルク指令値が予め定められたトルク値を下回る場合に、前記第2の制御モードから前記第1の制御モードに切替えて、前記回転電機の出力トルクが前記予め定められたトルク値を下回る制御を行う請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記直流電圧源は、直流電圧が入力され前記出力電圧を出力するコンバータを有する請求項1または請求項2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記直流電圧源は、前記直流電圧よりも小さい前記出力電圧を出力する請求項に記載の駆動制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2の制御モードのとき、前記スイッチング素子が前記駆動電圧の電気角半周期に同期して前記駆動電圧の電気角半周期以内で予め定められた回数スイッチングされる同期パルス制御を行う請求項1から請求項のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2の制御モードのとき、前記駆動電圧を矩形波状に制御する矩形波制御を行う請求項に記載の駆動制御装置。
【請求項7】
前記予め定められたトルク値は、前記第1の制御モードのときの前記回転電機の前記出力トルクの最大値である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項8】
前記駆動電圧が印加される電機子コイルを有する固定子と、爪状界磁鉄心、および前記爪状界磁鉄心に装着された界磁巻線を有し前記固定子の内周に対向して回転自在に配置された回転子とを具備する前記回転電機とをさらに備え、
前記インバータは、前記界磁巻線に界磁電流を供給する界磁モジュールをさらに有し、 前記界磁モジュールは、前記第2の制御モードにおいて、前記第2の電流制限値に応じた前記界磁電流を前記界磁巻線に供給する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2の制御モードへ切替える際に、前記第1の制御モードのときの予め定められた時間内における前記スイッチング素子がスイッチングされる回数よりも少なく、前記第2の制御モードのときの前記予め定められた時間内における前記スイッチング素子がスイッチングされる回数よりも多い、第3の制御モードにて駆動する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項10】
スイッチング素子を有し、直流電圧源から出力された直流の出力電圧が入力され前記スイッチング素子をスイッチングすることにより駆動電圧を回転電機に印加して駆動電流を通電するインバータによって第1の電流制限値以下の駆動電流を前記回転電機に通電する第1の制御モードのときの前記回転電機のトルク指令値が、予め定められたトルク値を上回るかどうかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて前記第1の制御モードのときの回転電機の前記トルク指令値が前記予め定められたトルク値を上回ると判断された場合に、前記第1の電流制限値よりも大きい第2の電流制限値以下かつ前記第1の電流制限値よりも大きい駆動電流で通電する第2の制御モードに前記第1の制御モードから切替える切替ステップと、
前記第2の制御モードにおいて前記回転電機の出力トルクが前記予め定められたトルク値を上回る制御を行って駆動電流を前記スイッチング素子に通電するトルク制御ステップとをプロセッサが実行する駆動制御方法であって、
前記第2の制御モードのときの、予め定められた時間内における前記スイッチング素子をオンする時間は、前記第1の制御モードのときの、前記予め定められた時間内における前記スイッチング素子をオンする時間よりも長く、
前記第2の制御モードのときの前記スイッチング素子がスイッチングされる回数は、前記第1の制御モードのときのスイッチングされる回数よりも少なく、
前記第1の電流制限値および前記第2の電流制限値は、前記スイッチング素子がスイッチングされることにより発生する損失であるスイッチング損に応じて決定される値であり、前記第2の電流制限値における前記スイッチング損は、前記第1の電流制限値における前記スイッチング損よりも小さく、
前記第1の制御モードのときの前記直流電圧源の前記出力電圧で前記第2の制御モードに切替えた後の駆動電流による前記スイッチング素子に発生する発熱量が前記スイッチング素子に発生する発熱量の制限値を超え、かつ前記第2の制御モードに切替えた後の前記トルク指令値が、前記予め定められたトルク値である第1のトルク値よりも大きく前記第2の電流制限値に対応する値である第2のトルク値よりも小さい場合には、前記第2の制御モードのときの前記直流電圧源の出力電圧、前記第1の制御モードのときの前記直流電圧源の出力電圧よりも小さくし、前記第2の制御モードのときの駆動電流を前記第2の電流制限値以下に抑える駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は回転電機であるモータジェネレータを駆動する駆動制御装置および駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ母線電圧を低下させてモータを駆動する従来の制御装置は、直流電源に接続され直流電源の出力を昇圧してインバータに出力するコンバータと、コンバータの出力を交流に変換し回転電機に出力するインバータと、インバータおよびコンバータを制御する制御部からなる。制御装置は、スイッチング素子の温度を検出する温度検出部において、スイッチング素子の温度が所定の温度に達した場合、PWM制御から矩形波制御へ変更する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、インバータ母線電圧を低下させてモータを駆動する別の従来の制御装置は、バッテリに接続されたDC/DCコンバータと、インバータと、インバータを制御する制御部と、モータジェネレータ(インバータによって電圧を印加されて駆動されるモータと、外力によって軸が駆動されて発電するジェネレータとの両方の機能を備える回転電機)とを備えている。制御部は、正弦波PWM制御時の駆動周波数がLC共振回路の共振周波数領域の周波数に一致したときに、インバータの入力電圧を低下させ、インバータの制御方式を正弦波PWM制御方式から過変調制御方式または矩形波制御方式に切替える方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−232604号公報
【特許文献2】特開2013−90401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に示された制御装置では、インバータのスイッチング素子に過電流が流れるのを防止する効果を奏する。しかしながら、モータまたはモータジェネレータから出力されるトルクは、予め定められた制限値以下に留まるため、トルクを向上させて高出力化させることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、前述のような課題を解決するためになされたものであり、制御モードを切り替えてスイッチング素子がスイッチングされる回数を低下させたときの回転電機(モータジェネレータ)のトルクを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る駆動制御装置は、
直流の出力電圧を出力する直流電圧源と、
スイッチング素子を有し、直流電圧源から出力電圧が入力されスイッチング素子をスイッチングすることによって駆動電圧を回転電機に印加して駆動電流を通電するインバータと、
直流電圧源の出力電圧を制御し、かつ回転電機のトルク指令値に基づいて第1の電流制限値以下の駆動電流で通電する第1の制御モード、および第1の電流制限値よりも大きい第2の電流制限値以下かつ第1の電流制限値よりも大きい駆動電流で通電する第2の制御モードで駆動電流をスイッチング素子に通電する制御を行う制御部とを備え、
制御部は、第1の制御モードのときの回転電機のトルク指令値が予め定められたトルク値を上回る場合に、第1の制御モードから第2の制御モードに切替えて、回転電機の出力トルクが予め定められたトルク値を上回る制御を行い、
第2の制御モードのときの、予め定められた時間内におけるスイッチング素子をオンする時間は、第1の制御モードのときの、予め定められた時間内におけるスイッチング素子をオンする時間よりも長く、
第2の制御モードのときのスイッチング素子がスイッチングされる回数は、第1の制御モードのときのスイッチングされる回数よりも少なく、
第1の電流制限値および第2の電流制限値は、スイッチング素子がスイッチングされることにより発生する損失であるスイッチング損に応じて決定される値であり、
第2の電流制限値におけるスイッチング損は、第1の電流制限値におけるスイッチング損よりも小さく、
第1の制御モードのときの直流電圧源の出力電圧で第2の制御モードに切替えた後の駆動電流によるスイッチング素子に発生する発熱量がスイッチング素子に発生する発熱量の制限値を超え、かつ第2の制御モードに切替えた後のトルク指令値が、予め定められたトルク値である第1のトルク値よりも大きく第2の電流制限値に対応する値である第2のトルク値よりも小さい場合には、制御部は、第2の制御モードのときの直流電圧源の出力電圧を、第1の制御モードのときの直流電圧源の出力電圧よりも小さくし、第2の制御モードのときの駆動電流を第2の電流制限値以下に抑える制御を行うものである。
【0008】
また、この発明に係る駆動制御方法は、
スイッチング素子を有し、直流電圧源から出力された直流の出力電圧が入力されスイッチング素子をスイッチングすることにより駆動電圧を回転電機に印加して駆動電流を通電するインバータによって第1の電流制限値以下の駆動電流を回転電機に通電する第1の制御モードのときの回転電機のトルク指令値が、予め定められたトルク値を上回るかどうかを判定する判定ステップと、
判定ステップにおいて第1の制御モードのときの回転電機のトルク指令値が予め定められたトルク値を上回ると判断された場合に、第1の電流制限値よりも大きい第2の電流制限値以下かつ第1の電流制限値よりも大きい駆動電流で通電する第2の制御モードに第1の制御モードから切替える切替ステップと、
第2の制御モードにおいて回転電機の出力トルクが予め定められたトルク値を上回る制御を行って駆動電流をスイッチング素子に通電するトルク制御ステップとをプロセッサが実行する駆動制御方法であって、
第2の制御モードのときの、予め定められた時間内におけるスイッチング素子をオンする時間は、第1の制御モードのときの、予め定められた時間内におけるスイッチング素子をオンする時間よりも長く、
第2の制御モードのときのスイッチング素子がスイッチングされる回数は、第1の制御モードのときのスイッチングされる回数よりも少なく、
第1の制御モードのときの直流電圧源の出力電圧で第2の制御モードに切替えた後の駆動電流によるスイッチング素子に発生する発熱量がスイッチング素子に発生する発熱量の制限値を超え、かつ第2の制御モードに切替えた後のトルク指令値が、予め定められたトルク値である第1のトルク値よりも大きく第2の電流制限値に対応する値である第2のトルク値よりも小さい場合には、第2の制御モードのときの直流電圧源の出力電圧、第1の制御モードのときの直流電圧源の出力電圧よりも小さくし、第2の制御モードのときの駆動電流を第2の電流制限値以下に抑えるものである。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成された駆動制御装置および駆動制御方法において、スイッチング素子のスイッチングパルス回数を下げることによってスイッチング素子の電流制限値を増加させ、回転電機の固定子に通電可能な電流を増加させることが可能となるため、回転電機から出力されるトルクを増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態1における駆動制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】この発明の実施の形態1における駆動制御装置が制御モードを切り替えるときのフロー図である。
図3】この発明の実施の形態1における駆動制御装置が制御モードを切り替えるときのタイミングの図である。
図4】この発明の実施の形態1における駆動制御装置の高トルク化の効果を示すグラフである。
図5A】この発明の実施の形態1の変形例における駆動制御装置が制御モードを切り替える場合の第1の制御モードに関するパルス波形の図である。
図5B】この発明の実施の形態1の変形例における駆動制御装置が制御モードを切り替える場合の第3の制御モードに関するパルス波形の図である。
図5C】この発明の実施の形態1の変形例における駆動制御装置が制御モードを切り替える場合の第2の制御モードに関するパルス波形の図である。
図6】この発明の実施の形態1の変形例における駆動制御装置が制御モードを切り替える場合のフロー図である。
図7】この発明の実施の形態1の変形例における駆動制御装置が制御モードを切り替える場合のタイミングの図である。
図8】この発明の実施の形態2における駆動制御装置におけるモータジェネレータの固定子の外観を示す斜視図である。
図9】この発明の実施の形態2における駆動制御装置におけるモータジェネレータの回転子の外観を示す斜視図である。
図10】この発明の実施の形態2における駆動制御装置におけるモータジェネレータの回転子の分解斜視図である。
図11】この発明の実施の形態3における駆動制御装置が制御モードを切り替える場合のフロー図である。
図12】この発明の実施の形態3における駆動制御装置が制御モードを切り替える場合のタイミングの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照してこの発明の実施の形態に係る駆動制御装置について詳細を説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における駆動制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、駆動制御装置100は、直流電源1と、直流電源1に接続され直流電源1から直流電圧が入力され直流の出力電圧を出力するコンバータ2と、コンバータ2に接続され直流電力を交流電力へ変換するインバータ3と、インバータ3に接続されたモータジェネレータ4と、コンバータ2とインバータ3とを制御する制御部5と、を備える。
【0014】
直流電源1は、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオンバッテリによって構成されており、例えば48V等の直流電圧をコンバータ2に出力する。
コンバータ2は、直流電源1から出力される直流電力を入力とし、インバータ3へ直流電力を出力している。さらに、コンバータ2は、直流電源1の直流電圧を入力として降圧させる電力変換が可能であり、インバータ3へ出力電圧を出力するように動作する。コンバータ2から出力される出力電圧は、例えば12Vから48Vまでの範囲で変更することが可能であり、電圧変換方法としては、例えばPAM制御などがある。また、コンバータ2の出力側には、コンバータ2の出力電圧を検知し制御部5に出力電圧検出値として出力する電圧測定部6が設けられている。出力電圧検出値は、コンバータ2が出力する出力電圧と等価である。
なお、図1における直流電源1とコンバータ2とは、直流の出力電圧を出力する1つの直流電圧源10となっていてもよい。すなわち、直流電圧源10は、直流電源1と、直流電源1の直流電圧が入力され出力電圧を出力するコンバータ2とを有する。
【0015】
インバータ3は、内部にスイッチング素子7を有し、直流電圧源10から出力電圧が入力されスイッチング素子7をスイッチングすることによって駆動電圧をモータジェネレータ4に印加する。インバータ3は、スイッチング素子7がスイッチングされてスイッチング素子7に導通することによって、モータジェネレータ4内の固定子の各相の電機子コイル30に駆動電流を通電し、モータジェネレータ4の固定子の各相の電機子コイル30に通電する駆動電流を制御することが可能となっている。
インバータ3とモータジェネレータ4との間には、電流検出器9が設けられている。電流検出器9は、モータジェネレータ4およびスイッチング素子7に流れる駆動電流である電流検出値を検出し、制御部5へ出力する。
【0016】
制御部5には、コンバータ2の出力側に設けられた電圧測定部6で検知した出力電圧検出値と、電流検出器9が検出した電流検出値と、上位の制御装置8からモータジェネレータ4のトルクの指令値であるトルク指令値とが入力される。制御部5は、モータジェネレータ4のトルク指令値に基づいて出力電圧指令値を演算してコンバータ2に出力し、出力電圧検出値が出力電圧指令値に近づくように制御することによって、直流電圧源10のコンバータ2の出力電圧を制御する。さらに、制御部5は、モータジェネレータ4のトルク指令値に基づいてスイッチング指令を出力して、後述する第1の制御モードおよび第2の制御モードで駆動電流をスイッチング素子7に通電する制御を行う。また、制御部5は、上位の制御装置8に後述するトルク出力不可の信号を出力する。
【0017】
モータジェネレータ4は、駆動電圧が印加される電機子コイル30を有する固定子と、固定子の内周側に対向して回転自在に配置された回転子とを有する。モータジェネレータ4は、回転子に磁束を発生させた状態で、インバータ3によって固定子の電機子コイル30の線間(2相間)に駆動電圧が印加されて駆動電流が通電されることによってトルクを出力する。モータジェネレータ4は、例えば、U相、V相およびW相からなる3相の電機子コイル30を有する回転電機等である。
【0018】
次に、本実施の形態における動作を述べる。ここでは、切替え前の制御である第1の制御モードのときの制御をPWM(Pulse Width Modulation)制御とし、切替え後の制御である第2の制御モードのときの制御を矩形波制御とする場合について述べる。
【0019】
まず、制御部5は、上位の制御装置8からモータジェネレータ4のトルク指令値を受け取る。制御部5は、例えば、ある条件下の温度や回転数等の場合に、切替え前の制御であるPWM制御時に出力可能なトルクの最大値に相当する予め定められた第1のトルク値(以下、「第1の短時間最大トルク」という)をデータとして保持している。第1の短時間最大トルクは、後述する第1の電流制限値に対応する値である。制御部5は、上位の制御装置8から受け取ったトルク指令値と第1の短時間最大トルクとを比較して、トルク指令値が第1の短時間最大トルクよりも小さい場合には、モータジェネレータ4がトルク指令値に相当するトルクを出力可能と判断する。そして、制御部5は、トルク指令値に応じてインバータ3の動作指令であるスイッチング指令をインバータ3に送り、インバータ3内のスイッチング素子7をスイッチングさせる。
【0020】
例えば、制御部5は、トルク指令値に相当するトルクを出力するのに必要な駆動電流に相当する電流指令値を演算する。そして、制御部5は、電流検出器9が検出したモータジェネレータ4およびスイッチング素子7に流れる駆動電流である電流検出値と電流指令値との差分に基づいて、PI制御によりdq軸の電圧指令値を演算する。そして、制御部5は、dq軸の電圧指令値が3相の電圧指令値に変換された値に基づいて、例えば、搬送波と3相の電圧指令値に基づく変調波との比較によって生成したスイッチング指令をインバータ3に出力する。インバータ3は、スイッチング指令に基づいてスイッチング素子7をスイッチングすることによって、スイッチングパルスによるPWMが行われ、入力された直流の出力電圧を交流の駆動電圧に変換してモータジェネレータ4の電機子コイル30に印加する。
【0021】
上位の制御装置8から受け取ったトルク指令値がPWM制御時に出力可能な第1の短時間最大トルクよりも大きい場合には、制御部5は、第1の制御モードから第2の制御モードに切替えて、スイッチング素子7がスイッチングされる回数を少なくする制御における予め定められた第2のトルク値である第2の短時間最大トルクを参照する。第2の短時間最大トルクは、後述する第2の電流制限値に対応する値である。なお、第2のトルク値である第2の短時間最大トルクは、第1のトルク値である第1の短時間最大トルクよりも大きい。ここでいうスイッチング素子7がスイッチングされる回数を少なくする制御を、本実施の形態においては、例えば電気角半周期(180°)内に1個のスイッチング素子7のオンおよびオフを各1回のみ(電気角半周期未満の幅を有するスイッチングパルスのとき)、またはいずれかを1回のみ(電気角半周期と等しい幅を有するスイッチングパルスのとき)スイッチングさせる矩形波制御とする。したがって、電気角半周期におけるスイッチングパルスの数は1つとなる。
【0022】
すなわち、制御部5は、第2の制御モードのとき、インバータ3の駆動電圧を矩形波状に制御する矩形波制御を行う。また、第2の制御モードの矩形波制御のときのスイッチング素子7がスイッチングされる回数は、第1の制御モードのときのスイッチングされる回数よりも少ない。そして、第2の制御モードの矩形波制御のときの、予め定められた時間内におけるスイッチング素子7をオンする時間は、第1の制御モードのときの、予め定められた時間内におけるスイッチング素子7をオンする時間よりも長い。
【0023】
制御部5は、スイッチング素子7がスイッチングされる回数を少なくする制御において、第2の短時間最大トルクとトルク指令値との大小関係を判定する。スイッチング素子7がスイッチングされる回数を少なくした際の第2の短時間最大トルクがトルク指令値よりも大きいと判定された場合、制御部5は、コンバータ2へトルク指令値に相当するトルクを出力可能な出力電圧指令値を送り、トルク指令値に相当するトルクを出力可能な出力電圧を出力するようコンバータ2を動作させる。このとき、制御部5は、コンバータ2の出力電圧を直流電源1の出力である直流電圧に対し降下させると同時に、スイッチング素子7がスイッチングされる回数をトルク指令値のトルクを出力可能となる回数まで少なくする。
【0024】
すなわち、制御部5は、第1の制御モードのときのモータジェネレータ4のトルク指令値が予め定められた第1のトルク値である第1の短時間最大トルクを上回る場合に、第1の制御モードから第2の制御モードに切替えて、モータジェネレータ4の出力トルクが予め定められた第1のトルク値を上回る制御を行う。
【0025】
スイッチング素子7に通電可能な駆動電流の電流制限値は、スイッチング素子7がスイッチングされる回数に応じて変動する。これは、スイッチング素子7の電流制限値が、主にスイッチング素子7に発生する発熱量の制限値によって決定されるためである。
【0026】
また、スイッチング素子7に発生する発熱量は、主にスイッチング素子7における導通損およびスイッチング損に分類される。導通損は、スイッチング素子7を通電状態として、駆動電流をスイッチング素子7に通電させた際に発生する損失である。スイッチング損は、スイッチング素子7をスイッチングさせることにより発生する損失である。スイッチング損は、スイッチング素子7が単位時間当たりにスイッチングされる回数であるスイッチングの頻度に応じて変動する。一般的に、スイッチングの頻度が高くなるにつれて、スイッチング素子7におけるスイッチング損は増加する。また、スイッチング素子7に発生する発熱量の制限値は、周囲温度が一定であればおよそ一定となる。従って、周囲温度が変動しない条件下においては、スイッチング素子7に発生する発熱量における導通損およびスイッチング損の配分によって、スイッチング素子7に通電可能な駆動電流の電流制限値が変動する。
【0027】
切替え前の制御である第1の制御モードにおけるPWM制御時において、スイッチング素子7に通電する駆動電流が電流制限値と等しい条件でインバータ3を動作させている状態を仮定する。制御部5が、第1の制御モードの状態からコンバータ2の出力電圧を低下させ、第2の制御モードである矩形波制御へ切替える場合を考える。
【0028】
第2の制御モードの矩形波制御時における駆動電流が、第1の制御モードのPWM制御時の駆動電流と同じ値であると仮定する。駆動電流が同じであるため、スイッチング素子7に発生する導通損は一定である。一方、第2の制御モードの矩形波制御に切り替えた場合にはスイッチング素子7がスイッチングされる回数が低下するため、第1の制御モード時のスイッチング損に対して第2の制御モード時のスイッチング損は低下する。前述のように、スイッチング素子7から発生する損失には、導通損とスイッチング損が存在する。
従って、第2の制御モードにおけるスイッチング素子7に発生する損失は、第1の制御モードにおけるスイッチング素子7に発生する損失に対して低減される。
【0029】
しかしながら、第2の制御モードの矩形波制御の際のスイッチング素子7に発生する発熱量の制限値は、第1の制御モードのPWM制御時の発熱量の制限値と同じであるため、矩形波制御時にはスイッチング損が低下した分だけ更にスイッチング素子7に通電させることが可能である。従って、第1の制御モードから第2の制御モードに制御を切替えて駆動電流が電流制限値となる状態まで矩形波制御を継続する際には、第1の制御モードのPWM制御時の駆動電流よりも第2の制御モードの駆動電流を増加することが可能となる。
【0030】
よって、スイッチング素子7の電流制限値は、第1の制御モードにおいては、第1の電流制限値となり、第2の制御モードにおいては、第1の電流制限値よりも大きい第2の電流制限値となる。すなわち、制御部5は、モータジェネレータ4のトルク指令値に基づいて第1の電流制限値以下の駆動電流で通電する第1の制御モード、および第1の電流制限値よりも大きい第2の電流制限値以下かつ第1の電流制限値よりも大きい駆動電流で通電する第2の制御モードで駆動電流をスイッチング素子7に通電する制御を行う。
【0031】
また、コンバータ2の出力電圧を予め定めた値に固定したまま第2の制御モードの矩形波制御へ切替える場合、所定の周期に対するスイッチング素子7に通電される時間の比であるデューティ比が急激に大きくなる。一方、モータジェネレータ4の電機子コイル30のインピーダンス、およびスイッチング素子7のインピーダンスは一定のため、スイッチング素子7に通電される駆動電流が急増し、駆動電流が電流制限値を超過する可能性がある。従って、第2の制御モードの矩形波制御へ切替えて電流制限値以下でスイッチング素子7に駆動電流を通電させるために、制御部5は、コンバータ2の出力電圧を低下させるようにコンバータ2に出力電圧指令値を出力する必要がある。
【0032】
すなわち、第2の制御モードの矩形波制御に切り替えた後の駆動電流によるスイッチング素子7に発生する発熱量がスイッチング素子7に発生する発熱量の制限値を超え、かつ第2の制御モードの矩形波制御に切り替えた後のトルク指令値が第2の短時間最大トルクよりも小さい場合には、制御部5は、出力電圧を低下させる出力電圧指令値をコンバータ2に出力し、スイッチング素子7に通電される駆動電流を低減させて、第2の電流制限値以下に駆動電流を抑える。よって、第2の制御モードのときの直流電圧源10の出力電圧は、第1の制御モードのときの直流電圧源10の出力電圧よりも小さい。
【0033】
プロセッサ90は、記憶部91に記憶されたプログラムを実行することにより、上述の制御部5の処理を行う。
ここで、記憶部91は、回転電機4の電気回路定数や制御に必要なパラメータ、上記の処理を記述したプログラムなどが記憶されたメモリにより構成される。プロセッサ90は、マイコン(マイクロコンピュータ)やDSP(Digital Signal Processor)、FPGAなどのハードウェア回路に論理構成されたプロセッサにより構成される。また、複数のプロセッサ90および複数の記憶部91が連携して上記機能を実行してもよい。
【0034】
図2は、本実施の形態における駆動制御装置が制御モードを切り替えるときのフロー図である。図2において、まず、ステップS1において、駆動制御装置100は、上位の制御装置8からモータジェネレータ4のトルク指令値を受け取る。
【0035】
次に、判定ステップS11において、第1の制御モードのとき、制御部5は、トルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力可能か判定する。
具体的には、制御部5は、トルク指令値が第1の短時間最大トルク以下の場合には、トルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力可能と判定し、トルク指令値が第1の短時間最大トルクよりも大きい場合には、トルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力不可能と判定する。判定結果が第1の制御モードのときにトルク指令値に相当するトルクを出力可能である場合、ステップS2において、制御部5は、第1の制御モードのまま制御を切替えずにトルク指令値に相当するトルクを出力させる。
判定結果が第1の制御モードのときにトルク指令値に相当するトルクを出力不可能である場合、ステップS3に進み、コンバータ2の出力電圧指令値を低下させて判定を開始する。
【0036】
すなわち、判定ステップS11において、スイッチング素子7を有し、直流電圧源10から出力された直流の出力電圧が入力されスイッチング素子7をスイッチングすることにより駆動電圧をモータジェネレータ4に印加して駆動電流を通電するインバータ3によって第1の電流制限値以下の駆動電流をモータジェネレータ4に通電する第1の制御モードのときのモータジェネレータ4のトルク指令値が、予め定められた第1のトルク値である第1の短時間最大トルクを上回るかどうかを判定する。
【0037】
次に、ステップS12において、低下させた出力電圧指令値の条件下の第2の制御モードの制御における第2の短時間最大トルクを参照し、第2の短時間最大トルクとトルク指令値との大小関係からトルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力可能かを判定する。ステップS12において、トルク指令値が第2の短時間最大トルク以下でありトルク指令値に相当するトルクを出力可能と判定された場合、切替ステップS14において、第1の制御モードから第2の制御モードに制御を切替える。
【0038】
すなわち、判定ステップS11において第1の制御モードのときのモータジェネレータ4のトルク指令値が予め定められた第1のトルク値である第1の短時間最大トルクを上回ると判断された場合に、切替ステップS14において、第1の電流制限値よりも大きい第2の電流制限値以下かつ第1の電流制限値よりも大きい駆動電流で通電する第2の制御モードに第1の制御モードから切替える。
【0039】
次に、トルク制御ステップS4において、制御部5は、第2の制御モードの制御のとき、出力電圧を低下させる出力電圧指令値をコンバータ2に出力し、トルク指令値に相当するトルクを出力するスイッチング指令をインバータ3に出力して制御を終了させる。
【0040】
すなわち、トルク制御ステップS4において、第2の制御モードにおいてモータジェネレータ4の出力トルクが予め定められた第1のトルク値である第1の短時間最大トルクを上回る制御を行って駆動電流をスイッチング素子7に通電する。
【0041】
ステップS12において出力不可能と判定された場合、ステップS13において、出力電圧指令値がコンバータ2から出力可能な出力電圧の出力電圧下限値に対し大きいかを判定する。ステップS13において出力電圧指令値が出力電圧下限値よりも大きい場合、ステップS3に戻り、出力電圧指令値を更に低下させた条件にて判定する。ステップS13において出力電圧指令値が出力電圧下限値以下である場合、出力電圧指令値を更に低下させることは不可能であるため、トルク指令値に相当するトルクを出力することは不可能である。よって、その場合には、ステップS5において、制御部5は、上位の制御装置8にトルク出力不可の旨を伝達し、制御を終了させる。
【0042】
図3は、本実施の形態における駆動制御装置が制御モードを切り替えるタイミングの図である。図3において、横軸は、時刻を表し、縦軸は、トルク指令値、およびコンバータの出力電圧指令値を表す。図3において、切替え前の制御である第1の制御モードのPWM制御でインバータ3を駆動させている状態の時刻t1において、上位の制御装置8からトルクを更に増加させるトルク指令値を受取る。時刻t1で、制御部5は、コンバータ2からの出力電圧指令値を低下させるとともに制御を第2の制御モードの矩形波制御へ切替える。
【0043】
時刻t1からt2にかけて、トルク指令値は、単調に増加させるよう制御される。また、出力電圧指令値は、トルク指令値の増加に伴って低下させるよう制御される。また、第2の制御モードの矩形波制御でインバータ3を駆動させるとき、制御部5は、モータジェネレータ4から出力可能なトルクである第2の短時間最大トルクを上限とするトルクの範囲内においてインバータ3を駆動させる。
時刻t2において、コンバータ2の出力電圧は、制御部5から指示された出力電圧指令値となる。また、モータジェネレータ4のトルクは、上位の制御装置8から受け取ったトルク指令値となり制御の切替えが終了する。
時刻t2以降において、制御部5は、上位の制御装置8から受け取ったトルク指令値が変化するまでは、出力電圧指令値を一定に保つ制御を行う。
【0044】
ここで、本実施の形態における効果を述べる。
前述したように、コンバータ2の出力電圧を降下させた際、スイッチング素子7がスイッチングされる回数によってスイッチング素子7に通電可能な駆動電流の電流制限値が変動する。このとき、例えば、出力電圧を低下させてインバータ3の駆動電圧が矩形波となるようにスイッチング素子7をスイッチングさせても、第2の制御モードの駆動電流が第2の電流制限値以内となり、かつ第1の制御モードのPWM制御における駆動電流の第1の電流制限値よりも大きな駆動電流を通電させることが可能であれば、制御部5は、コンバータ2の出力電圧を低下させ、スイッチング素子7がスイッチングされる回数を少なくすることによって、モータジェネレータ4内の電機子コイル30に通電可能な駆動電流を増加させることができる。
【0045】
図4は、本実施の形態における駆動制御装置の高トルク化の効果を示すグラフである。
図4において、横軸は、第1の制御モードおよび第2の制御モードを表し、縦軸は、第1の制御モードの短時間最大トルクを基準とした場合の短時間最大トルクを表す。図4は、本実施の形態の例として、直流電源1の出力である直流電圧が48Vの条件下において、コンバータ2の出力電圧を第1の制御モードにおいて48V、第2の制御モードにおいて12Vとした際に、第1、第2の制御モードにおいてモータジェネレータ4から出力可能な予め定められたトルク値である短時間最大トルクを比較したグラフである。第2の制御モードにおける矩形波制御でモータジェネレータ4の電機子コイル30に通電可能な駆動電流が増加したことによって、モータジェネレータ4から出力可能な短時間最大トルクが増加することが分かる。
【0046】
ハイブリッド自動車や、エンジンとベルトとを介して動力を伝達可能なモータジェネレータを搭載した車両などに代表される、モータジェネレータによってエンジンの駆動力を補い車両を推進させる自動車がある。この自動車においては、燃費性能を向上させるため、例えば、車両が停止した状態等においてエンジンを一時停止させ、燃料消費量を抑制する場合がある。このような車両においては、再び車両を発進させるために、モータジェネレータによってエンジンを一時停止の状態から再始動する必要がある。エンジン再始動時には、エンジン内や動力伝達用のベルト等の部位で発生する摩擦に打ち勝つ動力が必要である。このため、モータには高トルク性能が要求される。
【0047】
前述のように、切替え前の制御である第1の制御モードにおけるモータジェネレータ4の第1の短時間最大トルクが、エンジン再始動時に必要なトルクよりも小さい場合には、当然エンジンは再始動されない。一方で、制御を切替えることによってモータジェネレータ4の第2の短時間最大トルクがエンジン再始動時に必要なトルクよりも大きくなると、モータジェネレータ4が第2の短時間最大トルクを発生するために、制御部5は、第2の制御モードに切替えてコンバータ2の出力電圧を低下させる制御を行う。そして、制御部5がトルク指令値に相当するスイッチング指令をインバータ3に出力することによって、エンジンの再始動が可能となる。従って、制御部5が第1の制御モードから第2の制御モードに切替えることによってモータジェネレータ4のトルクを向上させることができる。
更に大型のエンジンの再始動が可能となる、あるいは、更に小型のモータジェネレータにおいてもエンジンを再始動することが可能となる。よって、エンジンルームの小型化に寄与することができる。
【0048】
なお、上記ではスイッチング素子7の駆動電流が矩形波通電となるようスイッチングさせた条件を例として記載したが、他の例として、電気角半周期内にて複数個のスイッチングパルスを生成するように通電することも考えられる。この場合においても、出力電圧を変更する前のPWM制御に対しスイッチング損を低減することができる。従って、出力電圧を低下させてスイッチング回数を少なくした際にも、駆動電流の電流制限値を増加させることが可能となる。この結果、モータジェネレータ4から出力されるトルクが増加する。
【0049】
なお、第2の制御モードにおいて電気角半周期内にて複数個のスイッチングパルスを生成するように通電する方法としては、例えば、3パルス制御、5パルス制御等、駆動電圧の周波数に同期してスイッチングさせる場合や、切替え前の制御である第1の制御モードのPWM制御に対してキャリア周波数を低下させて制御する場合がある。すなわち、制御部5は、第2の制御モードのとき、スイッチング素子7が駆動電圧の電気角半周期に同期して駆動電圧の電気角半周期以内で予め定められた回数スイッチングされる同期パルス制御を行う。
【0050】
なお、本実施の形態では、制御を切替える際に、スイッチング素子7に通電可能な駆動電流の電流制限値に対応する短時間最大トルクに基づいて制御の切替えの可否を判定しているが、制御を切替えた後に、必ずしも駆動電流の電流制限値に対応する短時間最大トルクに基づく必要はない。例えば、インバータ3のスイッチング素子7の抵抗値、モータジェネレータ4の電機子コイル30の抵抗値、および直流電圧源10の直流の出力電圧検出値から導出される電流値と、スイッチング素子7に通電可能な駆動電流の電流制限値とを比較する。事前に電流値の方が駆動電流の電流制限値と比べて明らかに低いと分かっている場合には、制御の切替え時の第2の制御モードにおいて駆動電流の第2の電流制限値に対応する第2の短時間最大トルクとの大小関係を判定する必要はない。従って、制御を切替える際に、図2のステップS12において、駆動電流の第2の電流制限値に対応する第2の短時間最大トルクに基づいて、トルク指令値が第2の短時間最大トルク以下であるかを判定しなくてもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、コンバータ2は、直流電源1から出力される直流電圧を降下させる機能を有すると記載したが、コンバータ2は、さらに直流電源1から出力される直流電圧を昇圧させる機能を有しても良い。ただし、モータジェネレータ4から出力されるトルクを増加させる動作は、コンバータ2が直流電源1から直流電圧を降下させた出力電圧をインバータ3に出力した方が好ましい。すなわち、直流電圧源10のコンバータ2は、直流電圧よりも小さい出力電圧を出力する。
【0052】
また、本実施の形態では、直流電源1の例として鉛蓄電池やリチウムイオンバッテリと記載したが、必ずしもこの限りではなく、電気二重層コンデンサ等でも良い。さらに、コンバータ2の出力電圧の例として、12Vおよび48Vの2通りの電圧値を記載したが、これらの電圧値に限定されるものではない。
【0053】
さらに、本実施の形態では、モータジェネレータ4を用いて説明しているが、モータおよびジェネレータの両方の機能を有する必要はない。例えば、モータのみの機能を有するものであっても良い。また、U相、V相、W相からなる3相の回転電機と記載したが、必ずしもこの相数に限られるものではなく、5相、7相や、2重3相などの回転電機にも適用可能である。
【0054】
また、本実施の形態では、第1の制御モードのPWM制御時に出力可能な第1の短時間最大トルクよりもトルク指令値が高い場合に制御を切替える方法を記載したが、必ずしもトルク指令値との大小関係を判定する際の基準を、第1の制御モードのPWM制御時に出力可能な第1の短時間最大トルクとする必要はない。例えば、切替え前の第1の制御モードの制御状態における駆動電流の第1の電流制限値を、連続運転が可能なトルクを出力する際のモータジェネレータ4の電流値に設定して、この電流値を基準にトルク指令値に相当する駆動電流との大小関係を判定し、制御を切替えて駆動してもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、切替え前の制御である第1の制御モードをPWM制御の場合として説明したが、他の例として、例えば、第1の制御モードにおいて同期9パルス制御とし、第2の制御モードにおいて矩形波制御として、同期9パルス制御時において出力可能な最大トルクを第1の短時間最大トルクとし、トルク指令値との大小関係の判定基準に使用してもよい。同期9パルス制御は、電気角1周期に同期してスイッチングさせる方法である。このため、第1の制御モードにおいては、PWM制御のように電気角1周期に対して非同期に駆動させるような方法でなくてもよい。また、制御切替え後の第2の制御モードにおいては、スイッチング素子7をスイッチングさせる回数を、第1の制御モードにおけるスイッチングさせる回数よりも少なくする制御で駆動させる方法であればよい。
【0056】
また、本実施の形態では、図3の時刻t1からt2までの間において矩形波制御にて駆動する例を示したが、時刻t1からt2までの間における制御を必ずしも矩形波制御とする必要はない。例えば、第2の制御モードにおける制御は、同期9パルス制御や、切替え前の制御である第1の制御モードに対してキャリア周波数を低下させた制御であっても良い。
【0057】
また、本実施の形態では、切替え前の制御である第1の制御モードから切替え後の制御である第2の制御モードへ直接切替える場合として説明したが、必ずしも第1の制御モードから第2の制御モードへ直接切替える必要はない。
図5は、本実施の形態の変形例における駆動制御装置が制御モードを切り替える場合のパルス波形の図である。図5A図5Bおよび図5Cにおいて、横軸は、モータジェネレータ4の回転子の回転角度である電気角[deg]を表し、縦軸は、インバータ3の駆動電圧の最大値を1としたときのインバータ3の駆動電圧を表す。横軸の範囲は、電気角が0[deg]から360[deg]の電気角の1周期分である。同じ制御モードにおいては、インバータ3の駆動電圧は、電気角の1周期分を繰り返す波形となっている。図5Aおよび図5Bは、制御部5がPWM制御を行ったときの駆動電圧の波形であり、図5Cは、制御部5が矩形波制御を行ったときの駆動電圧の波形である。例えば、図5Aに示す第1の制御モードよりも電気角の1周期におけるスイッチング素子7をスイッチングさせる回数が少なく、図5Cに示す第2の制御モードよりも電気角の1周期におけるスイッチング素子7をスイッチングさせる回数が多い図5Bに示す第3の制御モードを経由して、第1の制御モードから第2の制御モードに切替えた制御であってもよい。なお、電気角の1周期は、予め定められた時間であればよい。この変形例の制御の動作について、以下に説明する。
【0058】
図6は、本実施の形態の変形例における駆動制御装置が制御モードを切り替える場合のフロー図である。図6において、駆動制御装置100の制御部5は、切替前の状態において、第1の値のトルク指令値、および第1の電圧値の出力電圧指令値を出力し、第1の制御モードで制御を行っている。
まず、ステップS101において、駆動制御装置100は、上位の制御装置8からモータジェネレータ4のトルク指令値を受け取る。受け取るトルク指令値の値は、第2の値となっている。
【0059】
次に、判定ステップS111において、切替前の第1の制御モードのとき、制御部5は、第2の値のトルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力可能か判定する。
具体的には、制御部5は、第2の値のトルク指令値が第1の短時間最大トルク以下の場合には、第2の値のトルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力可能と判定し、第2の値のトルク指令値が第1の短時間最大トルクよりも大きい場合には、第2の値のトルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力不可能と判定する。
判定結果が第1の制御モードのときに第2の値のトルク指令値に相当するトルクを出力可能である場合、ステップS102において、制御部5は、第1の制御モードのまま制御を切替えずに第2の値のトルク指令値に相当するトルクを出力させる。
判定結果が第1の制御モードのときに第2の値のトルク指令値に相当するトルクを出力不可能である場合、ステップS103に進み、コンバータ2の出力電圧指令値を第1の電圧値から第2の電圧値に低下させて判定を開始する。
【0060】
すなわち、判定ステップS111において、スイッチング素子7を有し、直流電圧源10から出力された直流の出力電圧が入力されスイッチング素子7をスイッチングすることにより駆動電圧をモータジェネレータ4に印加して駆動電流を通電するインバータ3によって、第1の電流制限値以下の駆動電流をモータジェネレータ4に通電する第1の制御モードのときのモータジェネレータ4のトルク指令値が、予め定められた第1のトルク値である第1の短時間最大トルクを上回るかどうかを判定する。
【0061】
次に、ステップS112において、第2の電圧値に低下させた出力電圧指令値の条件下の第2の制御モードの制御における第2の短時間最大トルクを参照し、第2の短時間最大トルクと第2の値のトルク指令値との大小関係から第2の値のトルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力可能かを判定する。ステップS112において、第2の値のトルク指令値が第2の短時間最大トルク以下であり第2の値のトルク指令値に相当するトルクを出力可能と判定された場合、第1切替ステップS104において、第1の制御モードから第3の制御モードに制御を切替える。
【0062】
すなわち、判定ステップS111において第1の制御モードのときのモータジェネレータ4のトルク指令値が予め定められた第1のトルク値の第1の短時間最大トルクを上回ると判断された場合に、第1切替ステップS104において、第1の電流制限値よりも大きい第2の電流制限値以下かつ第1の電流制限値よりも大きい第3の電流値となる駆動電流で通電する第3の制御モードに第1の制御モードから切替える。また、第3の電流値は、第1の制御モードのときの第1の電流値よりも大きい。
【0063】
そして、第1切替ステップS104において、制御部5は、第3の制御モードの制御のとき、出力電圧を第2の電圧値よりも大きく第1の電圧値よりも小さい第3の電圧値に低下させる出力電圧指令値をコンバータ2に出力し、第1の値よりも大きく第2の値よりも小さい第3の値のトルク指令値に相当するトルクを出力するスイッチング指令をインバータ3に出力する。
【0064】
次に、第2切替ステップS105において、第3の制御モードから第2の制御モードに制御を切替える。
【0065】
すなわち、第2切替ステップS105において、第1の電流制限値よりも大きい第2の電流制限値以下かつ第1の電流制限値よりも大きい第2の電流値となる駆動電流で通電する第2の制御モードに第3の制御モードから切替える。また、第2の電流値は、第3の電流値よりも大きい。
【0066】
次に、第2切替ステップS105において、制御部5は、第2の制御モードの制御のとき、出力電圧を第2の電圧値に低下させる出力電圧指令値をコンバータ2に出力し、第2の値のトルク指令値に相当するトルクを出力するスイッチング指令をインバータ3に出力して制御を終了させる。
【0067】
すなわち、第2切替ステップS105において、第2の制御モードにおいてモータジェネレータ4の出力トルクが予め定められた第1のトルク値の第1の短時間最大トルクを上回る制御を行って駆動電流をスイッチング素子7に通電する。
【0068】
ステップS112において第2の値のトルク指令値を出力不可能と判定された場合、ステップS113において、第2の電圧値の出力電圧指令値がコンバータ2から出力可能な出力電圧の出力電圧下限値に対し大きいかを判定する。ステップS113において第2の電圧値の出力電圧指令値が出力電圧下限値よりも大きい場合、ステップS103に戻り、出力電圧指令値を更に低下させた第2の電圧値の条件にて判定する。ステップS113において第2の電圧値の出力電圧指令値が出力電圧下限値以下である場合、出力電圧指令値を第2の電圧値から更に低下させることは不可能であるため、第2の値のトルク指令値に相当するトルクを出力することは不可能である。よって、その場合には、ステップS106において、制御部5は、上位の制御装置8にトルク出力不可の旨を伝達し、制御を終了させる。
【0069】
図7は、本実施の形態の変形例における駆動制御装置が制御モードを切り替える場合のタイミングの図である。図7において、横軸は、時刻を表し、縦軸は、トルク指令値、およびコンバータの出力電圧指令値を表す。図7において、切替え前の制御である第1の制御モードのPWM制御でインバータ3を駆動させている状態の時刻t1において、上位の制御装置8からトルクを第1の値から第2の値まで増加させるトルク指令値を受取る。時刻t1で、制御部5は、コンバータ2からの出力電圧指令値を第1の電圧値から第3の電圧値まで低下させるとともに制御を第3の制御モードのPWM制御へ切替える。
【0070】
時刻t1からt2にかけて、トルク指令値は、第1の値から第3の値まで単調に増加させるよう制御される。また、出力電圧指令値は、トルク指令値の増加に伴って第1の電圧値から第3の電圧値まで低下させるよう制御される。
時刻t2において、コンバータ2の出力電圧は、制御部5から指示された第3の電圧値の出力電圧指令値となる。また、モータジェネレータ4のトルクは、第3の値のトルク指令値となる。
時刻t2からt3にかけて、制御部5は、第3の電圧値の出力電圧指令値を一定に保つ制御を行う。
【0071】
時刻t3からt4にかけて、トルク指令値は、第3の値から第2の値まで単調に増加させるよう制御される。また、出力電圧指令値は、トルク指令値の増加に伴って第3の電圧値から第2の電圧値まで低下させるよう制御される。また、第2の制御モードの矩形波制御でインバータ3を駆動させるとき、制御部5は、モータジェネレータ4から出力可能なトルクである第2の短時間最大トルクを上限とするトルクの範囲内においてインバータ3を駆動させる。
時刻t4において、コンバータ2の出力電圧は、制御部5から指示された第2の電圧値の出力電圧指令値となる。また、モータジェネレータ4のトルクは、上位の制御装置8から受け取った第2の値のトルク指令値となり制御の切替えが終了する。
時刻t4以降は、制御部5は、上位の制御装置8から受け取った第2の値のトルク指令値が変化するまでは、第2の電圧値の出力電圧指令値を一定に保つ制御を行う。
【0072】
なお、本実施の形態では、図7の時刻t1からt2までの間においてPWM制御にて駆動する例を示したが、時刻t1からt2までの間における制御を必ずしもPWM制御とする必要はない。例えば、第3の制御モードにおける制御は、過変調のPWM制御や、同期9パルス制御や、切替え前の制御である第1の制御モードに対してキャリア周波数を低下させた制御であっても良く、第2の制御モードの制御の電気角の1周期におけるスイッチング素子7をスイッチングさせる回数が、第3の制御モードの制御の電気角の1周期におけるスイッチング素子7をスイッチングさせる回数よりも小さければよい。
【0073】
また、制御部5は、第1の制御モードから第2の制御モードに切替える際に、第3の制御モード、・・・、第nの制御モード(nは4以上の自然数)を順に介して切り替える制御を行ってもよい。
この場合、第nの制御モードの制御の電気角の1周期におけるスイッチング素子7をスイッチングさせる回数は、第2の制御モードの制御の電気角の1周期におけるスイッチング素子7をスイッチングさせる回数よりも大きく、第(n−1)の制御モードの制御の電気角の1周期におけるスイッチング素子7をスイッチングさせる回数よりも小さい。また、第nの制御モードにおける第nの値のトルク指令値は、第(n−1)の制御モードにおける第(n−1)の値のトルク指令値よりも大きく、第2の制御モードにおける第2の値のトルク指令値よりも小さい。また、第nの制御モードにおける出力電圧指令値は、第2の制御モードにおける第2の電圧値の出力電圧指令値よりも大きく、第(n−1)の制御モードにおける第(n−1)の電圧値の出力電圧指令値よりも小さい。
【0074】
実施の形態2.
本実施の形態では、モータジェネレータ4が界磁巻線を有するクローポール型回転電機の場合について記す。
図8は、本実施の形態における駆動制御装置におけるモータジェネレータの固定子の外観を示す斜視図である。図9は、本実施の形態における駆動制御装置におけるモータジェネレータの回転子の外観を示す斜視図である。図10は、本実施の形態における駆動制御装置におけるモータジェネレータの回転子の分解斜視図である。
【0075】
図8において、クローポール型回転機の固定子31は、インバータ3によって駆動電圧が印加される電機子コイル30と、円環状のコアバック33、およびコアバック33の内周から突出し周方向に等間隔で並ぶティース34を具備する固定子鉄心32とを有する。
電機子コイル30は、周方向に隣り合うティース34の間に形成されたスロット35に装着されている。
【0076】
図9および図10において、クローポール型回転機の回転子15は、界磁電流が流されて磁束を発生させる界磁コイル11と、界磁コイル11を覆うように設けられ磁性材料からなり磁束によって磁極が形成される第1爪状界磁鉄心12および第2爪状界磁鉄心13と、シャフト14とを備えている。第1および第2爪状界磁鉄心12、13は、シャフト14の外周に支持されている。すなわち、回転電機は、第1および第2爪状界磁鉄心12、13、および第1および第2爪状界磁鉄心12、13に装着された界磁コイル11である界磁巻線を有する。
【0077】
第1爪状界磁鉄心12は、外周面を円筒形状とし、シャフト挿通穴16が軸心位置を貫通して形成された第1ボス部17と、第1ボス部17の軸方向一端縁部から径方向外側に突出する厚肉リング状の第1継鉄部18と、それぞれ、第1継鉄部18の外周部から軸方向他端側に延び出て、周方向に等角ピッチで配列された8つの第1爪部19と、を有している。第1爪部19は、その最外径面形状を略台形形状とし、周方向幅が先端側に向かって徐々に狭くなり、かつ、径方向厚みが先端側に向かって徐々に薄くなる先細り形状に形成されている。さらに、第1谷部20が、第1継鉄部18の隣り合う第1爪部19間に位置する部位のそれぞれに、径方向内方に窪み、かつ軸方向に貫通するように形成されている。
【0078】
第2爪状界磁鉄心13は、外周面を円筒形状とし、シャフト挿通穴21が軸心位置を貫通して形成された第2ボス部22と、第2ボス部22の軸方向他端縁部から径方向外側に突出する厚肉リング状の第2継鉄部23と、それぞれ、第2継鉄部23の外周部から軸方向一端側に延び出て、周方向に等角ピッチで配列された8つの第2爪部24と、を有している。第2爪部24は、その最外径面形状を略台形形状とし、周方向幅が先端側に向かって徐々に狭くなり、かつ、径方向厚みが先端側に向かって徐々に薄くなる先細り形状に形成されている。さらに、第2谷部25が、第2継鉄部23の隣り合う第2爪部24間に位置する部位のそれぞれに、径方向内方に窪み、かつ軸方向に貫通するように形成されている。
【0079】
このように構成された第1および第2爪状界磁鉄心12、13は、図9に示されるように、第1および第2爪部19、24を交互に噛み合わせ、かつ、第1ボス部17の他端面と第2ボス部22の一端面とを突き合わせ、シャフト挿通穴16、21に圧入されたシャフト14に固着されて、回転子鉄心を構成する。このように構成された回転子鉄心は、外周面が略円筒面に形成され、第1および第2爪部19、24間のそれぞれの周方向間隔が等しくなるように、第1および第2爪状界磁鉄心12、13の周方向位置が調節されている。そして、界磁コイル11が、第1および第2ボス部17、22、第1および第2継鉄部18、23および第1および第2爪部19、24に囲まれた空間内に配設されている。
回転子15は、固定子31のティース34の内周に空隙を介して対向して配置され、図示しない軸受でシャフト14が回転自在に支持されている。
【0080】
また、界磁コイル11に、ブラシ(図示せず)を介してインバータ3内の界磁モジュール(図示せず)から界磁電流が供給可能となっている。すなわち、インバータ3は、界磁コイル11である界磁巻線に界磁電流を供給する界磁モジュールをさらに有している。界磁モジュールに通電可能な界磁電流には、界磁モジュールの電流制限値である第3の電流制限値(第2の制御モードの駆動電流の第2の電流制限値に相当)に応じた上限が定められている。なお、界磁モジュールを常時通電させた際に第3の電流制限値を超過する場合には、制御部5が、界磁モジュールをスイッチングさせるか、界磁モジュール内のレギュレータによって通電される界磁電流を絞ることによって、通電時の界磁電流を第3の電流制限値以下に収めることができる。
【0081】
次に、本実施の形態の動作について記す。コンバータ2の出力電圧を低下させる動作、およびモータジェネレータ4の電機子コイル30への通電については、実施の形態1に記載のとおりである。モータジェネレータ4の界磁コイル11には、インバータ3内の界磁モジュールを動作させて通電する。このとき、モータのトルク指令値により、界磁モジュールが第3の電流制限値に相当する界磁電流を界磁コイル11に通電するように動作指令された際、制御部5は、出力電圧検出値とブラシ部の電圧降下と界磁コイル11の抵抗値とから、界磁モジュールが常時通電した際の界磁電流が第3の電流制限値以下になるかを判定する。界磁モジュールが常時通電した際の界磁電流が第3の電流制限値以下になると判定された場合、制御部5は、界磁電流を常時通電した際の電流値における最大トルクをトルク指令値として補正し、界磁モジュールが界磁電流を常時通電するようにインバータ3に制御指令を送る。インバータ3内の界磁モジュールは、制御部5の指令を受けて、界磁電流を界磁コイル11に常時通電させる。すなわち、界磁モジュールは、第2の制御モードにおいて、第2の電流制限値に応じた界磁電流を界磁コイル11である界磁巻線に供給する。
【0082】
これらの構成によって、モータジェネレータ4内の界磁コイル11に界磁電流を供給し、界磁コイル11に通電された界磁電流によって、第1および第2爪状界磁鉄心12、13に磁極が生成される。磁極の生成および電機子コイル30への通電により、モータジェネレータ4にトルクが発生する。
【0083】
ここで、本実施の形態の効果について記す。制御部5が界磁モジュールを常時通電するように指令を出力すると、クローポール型回転機の回転子15は、界磁モジュールから出力される界磁電流によって励磁され磁極を形成する。一般的に、界磁電流が大きくなるにつれ、クローポール型回転機の回転子15の磁束が増加するため、クローポール型回転機の回転子15に発生する磁束は、出力電圧の条件下における最大値となる。そして、電機子コイル30には、実施の形態1に記載のとおり、スイッチング素子をスイッチングされる回数を少なくした際に流れる第2の電流制限値を通電することが可能となる。従って、界磁モジュールが通電する界磁電流の値は、出力電圧の条件下においてクローポール型回転電機を使用する際に通電可能な界磁電流の最大値となる。ゆえに、モータジェネレータ4がクローポール型回転電機である場合において、最大トルクを増加することが可能となり、実施の形態1に記載のように、より大型のエンジンの再始動に対応する、あるいはモータジェネレータ4の小型化が可能となる。
【0084】
実施の形態3.
実施の形態3では、第2の制御モードから第1の制御モードへ切替える場合について述べる。なお、構成については実施の形態1にて記したとおりである。
本実施の形態の動作について述べる。
【0085】
図11は、本実施の形態における駆動制御装置が制御モードを切り替えるときのフロー図である。図11において、制御部5は、切替前において、第2の値のトルク指令値、および第2の電圧値の出力電圧指令値を出力し、第2の制御モードで制御を行っている。
まず、ステップS201において、駆動制御装置100は、上位の制御装置8からモータジェネレータ4のトルク指令値を受け取る。受け取るトルク指令値の値は、第1の値となっている。ここで、第1の値は、第2の値より小さい。
【0086】
次に、判定ステップS211において、切替前の第2の制御モードのとき、制御部5は、第1の値のトルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力可能か判定する。
具体的には、制御部5は、第1の値のトルク指令値が第1の短時間最大トルク以上の場合には、第2の制御モードにおいて第1の値のトルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力可能と判定し、第1の値のトルク指令値が第1の短時間最大トルクよりも小さい場合には、第2の制御モードにおいて第1の値のトルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力不可能と判定する。
判定結果が第2の制御モードのときに第1の値のトルク指令値に相当するトルクを出力可能である場合、ステップS202において、制御部5は、第2の制御モードのまま制御を切替えずに第1の値のトルク指令値に相当するトルクを出力させる。
判定結果が第2の制御モードのときに第1の値のトルク指令値に相当するトルクを出力不可能である場合、ステップS203に進み、コンバータ2の出力電圧指令値を第2の電圧値から第1の電圧値に増加させて判定を開始する。
【0087】
すなわち、判定ステップS211において、スイッチング素子7を有し、直流電圧源10から出力された直流の出力電圧が入力されスイッチング素子7をスイッチングすることにより駆動電圧をモータジェネレータ4に印加して駆動電流を通電するインバータ3によって、第2の電流制限値以下の駆動電流をモータジェネレータ4に通電する第2の制御モードのときのモータジェネレータ4のトルク指令値が、予め定められた第1のトルク値である第1の短時間最大トルクを下回るかを判定する。
【0088】
次に、ステップS212において、第1の電圧値に増加させた出力電圧指令値の条件下の第1の制御モードの制御における第1の短時間最大トルクを参照し、第1の短時間最大トルクと第1の値のトルク指令値との大小関係から第1の値のトルク指令値に相当するトルクをモータジェネレータ4が出力可能かを判定する。ステップS212において、第1の値のトルク指令値が第1の短時間最大トルク以下であり第1の値のトルク指令値に相当するトルクを出力可能と判定された場合、切替ステップS214において、第2の制御モードから第1の制御モードに制御を切替える。
【0089】
すなわち、判定ステップS211において第2の制御モードのときのモータジェネレータ4のトルク指令値が予め定められた第1のトルク値の第1の短時間最大トルクを下回ると判断された場合に、切替ステップS214において、第1の電流制限値よりも小さい駆動電流で通電する第1の制御モードに第2の制御モードから切替える。
【0090】
そして、ステップS204において、制御部5は、第1の制御モードの制御のとき、出力電圧を第2の電圧値よりも大きい第1の電圧値に増加させる出力電圧指令値をコンバータ2に出力し、第2の値よりも小さい第1の値のトルク指令値に相当するトルクを出力するスイッチング指令をインバータ3に出力して制御を終了させる。
【0091】
ステップS212において第1の値のトルク指令値を出力不可能と判定された場合、ステップS213において、第1の電圧値の出力電圧指令値がコンバータ2から出力可能な出力電圧の出力電圧上限値に対し大きいかを判定する。ステップS213において第1の電圧値である出力電圧指令値が出力電圧上限値よりも小さい場合、ステップS203に戻り、出力電圧指令値を更に増加させた第1の電圧値の条件にて判定する。ステップS213において第1の電圧値である出力電圧指令値が出力電圧上限値以上である場合、出力電圧指令値を第1の電圧値から更に増加させることは不可能であるため、第1の値のトルク指令値に相当するトルクを出力することは不可能である。よって、その場合には、ステップS205において、制御部5は、上位の制御装置8にトルク出力不可の旨を伝達し、制御を終了させる。
【0092】
図12は、本実施の形態における駆動制御装置が制御モードを切り替える場合のタイミングの図である。図12において、横軸は、時刻を表し、縦軸は、トルク指令値、およびコンバータの出力電圧指令値を表す。図12において、切替え前の制御である第2の制御モードの矩形波制御でインバータ3を駆動させている状態の時刻t1において、上位の制御装置8からトルクを第2の値から第1の値まで低下させるトルク指令値を受取る。時刻t1で、制御部5は、コンバータ2からの出力電圧指令値を第2の電圧値から第1の電圧値に増加させるとともに、制御を第1の制御モードのPWM制御へ切替える。
【0093】
時刻t1からt2にかけて、トルク指令値は、第2の値から第1の値まで単調に減少させるよう制御される。また、出力電圧指令値は、トルク指令値の減少に伴って第2の電圧値から第1の電圧値まで増加させるよう制御される。
時刻t2において、コンバータ2の出力電圧は、制御部5から指示された第1の電圧値の出力電圧指令値となる。また、モータジェネレータ4のトルクは、第1の値のトルク指令値となる。
時刻t2以降は、制御部5は、第1の電圧値の出力電圧指令値を一定に保つ制御を行う。
【0094】
第1の制御モードについては、実施の形態1にて説明したように例えばPWM制御などが挙げられる。PWM制御などは通電角度を任意に変更することが出来るため、適切な通電角にて通電させることにより、モータジェネレータ4を高効率に駆動する、あるいは電磁加振力を小さく駆動する、などといった駆動が可能となる。従って第1の制御モードにてモータジェネレータ4を駆動させる場合に、予め第2の制御モードから切替えることにより、高効率、低騒音駆動が可能となる。
【0095】
なお、本実施の形態では第2の制御モードから第1の制御モードへ変更する場合について記載したが、必ずしも第2の制御モードから第1の制御モードへ直接変更する必要は無く、例えば、図5Bに示すような、第1の制御モードよりもスイッチング素子7をスイッチングさせる回数が少なく、第2の制御モードよりもスイッチング素子7をスイッチングさせる回数の多い第3の制御モードを介して変更しても良い。
また、制御部5は、第2の制御モードから第1の制御モードに切替える際に、第nの制御モード、・・・、第3の制御モード(nは4以上の自然数)を順に介して切り替える制御を行ってもよい。
【0096】
なお、実施の形態1から3では、コンバータ2は、第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える場合に、直流電源1から出力される直流電圧を降下させ、第2の制御モードから第1の制御モードに切り替える場合に、直流電源1から出力される直流電圧を増加させるとしたが、切替後の制御モードにおいてトルク指令値を出力可能であれば、直流電圧(出力電圧)の増減は、必ずしもこれらに限られない。
【符号の説明】
【0097】
1 直流電源、 2 コンバータ、 3 インバータ、 4 モータジェネレータ、 5 制御部、 6 電圧測定部、 7 スイッチング素子、 8 上位の制御装置、 9 電流検出器、 10 直流電圧源、 11 界磁コイル、 12 第1爪状界磁鉄心、 13 第2爪状界磁鉄心、 14 シャフト、 15 クローポール型回転機の回転子、16、21 シャフト挿通穴、 17 第1ボス部、 18 第1継鉄部、 19 第1爪部、 20 第1谷部、 22 第2ボス部、 23 第2継鉄部、 24 第2爪部、 25 第2谷部、 30 電機子コイル、 31 固定子、 32 固定子鉄心、 33 コアバック、 34 ティース、 35 スロット、 90 プロセッサ、 91 記憶部、 100 駆動制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12