(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432989
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】らせん状のとがった刃および排出溝を有する面取りカッター
(51)【国際特許分類】
B23C 3/12 20060101AFI20181126BHJP
B23C 5/12 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
B23C3/12 C
B23C5/12 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-520084(P2015-520084)
(86)(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公表番号】特表2015-525141(P2015-525141A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】NL2013000037
(87)【国際公開番号】WO2014007608
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年6月30日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0073018
(32)【優先日】2012年7月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】61/956,999
(32)【優先日】2012年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518365123
【氏名又は名称】ベフェル トゥールス ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】ディーキルマン,トーマス,エム.
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャン ウー
【審査官】
久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−337716(JP,A)
【文献】
特開平09−192915(JP,A)
【文献】
特開平08−071831(JP,A)
【文献】
米国特許第05176476(US,A)
【文献】
特開2007−075944(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3111276(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/00 − 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面取りカッター(100)であって、
中心を通り形成された軸穴を有する本体(10)、該本体(10)の周表面上に所定の間隔で配置された複数のカッター刃(20)、および面取り加工において作り出された切屑を排出するために複数の該カッター刃の間に縦方向に形成された排出溝(30)を備える面取りカッター(100)において、該カッター刃(20)の各々は、5〜15度の範囲の半径方向第1逃げ角(a)をもつ半径方向第1刃(14)および16〜30度の範囲の半径方向第2逃げ角(b)をもつ半径方向第2刃(16)を有すること、キー溝(40)は該本体(10)の内側の一部分に形成されること、および該カッター刃(20)のねじれ角は5〜45度の範囲にあることを特徴とする、
上記面取りカッター(100)。
【請求項2】
該半径方向第1刃(14)の幅は0.6〜0.7mmであり、該半径方向第2刃(16)の幅は1.9〜2.0mmである、請求項1に記載の面取りカッター(100)。
【請求項3】
すくい角部分(25)が、該カッター刃(20)上に10〜20度の範囲の角度で形成されている、請求項1〜2のいずれか1項に記載の面取りカッター(100)。
【請求項4】
研磨された部分(12)が、該カッター刃(20)を破壊またはチャタリングから守るために、該半径方向第1刃(14)の1側面を1〜45度の間の角度で研磨することによって形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の面取りカッター(100)。
【請求項5】
該研磨された部分(12)の幅は0.05〜0.2mmの範囲にある、請求項4に記載の面取りカッター(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の工具類で金属を面取りするときにしばしば経験させられる振動及びチャタリングを無くしながら、金属加工物の端部をより一様に加工することができる、らせん形状の切削刃および排出溝を用いて金属の面取り端部を機械加工することができる面取りカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の面取り加工機は、駆動ユニットと動力伝達ユニットとを、ヘッドユニットに搭載された主軸を持つハンドルの機能を有する本体内に備え、該主軸は、該動力伝達ユニットからの動力によって回転させられる。面取りカッターは、主軸の自由端に搭載される。基盤すなわち案内盤は、主軸と動力伝達ユニットとの間に設置され、斜角の1の側において深さ案内として働く。カム軸受が、面取りカッターの先端に取り付けられ、斜角の反対側において深さ案内として働く。
【0003】
そのような構成を有する面取り加工機において、加工物の端部はカッターとの位置を調整され、本体内の駆動ユニットは電気式又は空気式モータによって駆動され、そして駆動力は動力伝達ユニットを通して主軸を回転させる。主軸の回転によって、自由端での面取り機の刃は回わされ、そして加工物を所定の形状に機械加工する。
【0004】
しかし、加工物の端部が機械加工されるとき、加工物とカッターとが相互に接触するようになるとき、主軸がチャタリング(びびり)を起して、不完全な端部を残し、そしてモータ伝達の内部部分がチャタリングによる衝撃によって損傷されうるという問題を、金属面取り加工機はしばしば抱えている。
【0005】
本発明において開示される面取りカッターは、中心を通って形成された軸穴を有する本体と、該本体の外周面上に該軸穴の回りで1〜40度のねじれ角を有して規則的な間隔で延在し且つ面取り側面である両側面を有する10枚のカッター刃と、面取り加工において作り出された切屑を排出するためにカッター刃間に縦方向に形成された排出溝と、および該カッター刃の表面から引っ込んだ切削溝とを備えている。そのようにして、面取り加工のときに、たとえ長い平面的な切屑が作られたとしても切屑を排出すること、および一様に端部を機械加工することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の面取り加工機械のカッターにおける問題点を取り除くために、本発明の一つの目的は、加工物に面取り加工がなされるときに、金属表面を一様な形状に加工し且つ一様な粗さに仕上げうる面取りカッターを提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、排出するときに炎を出さないで、面取り加工行程から作り出された切屑や破片を容易に排出しうる面取りカッターを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、カッター刃への損傷を防止し且つ面取り加工における負荷を減少しうる面取りカッターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するために、面取りカッターは、中心を通り形成された軸穴を有する本体;該本体の周表面上に所定の間隔で配置された複数のカッター刃、ここで、該刃の各々は、5〜15度の範囲の半径方向第1逃げ角をもつ半径方向第1刃および16〜30度の範囲の半径方向第2逃げ角をもつ半径方向第2刃を有する;面取り加工において作り出された切屑を排出するために複数の該カッター刃の間に縦方向に形成された排出溝;および該本体の内側の一部分に形成されたキー溝;を備えうる。
【0010】
すくい角部分は、本発明の複数の該カッター刃上に10〜20度の範囲の角度で形成されうる。
【0011】
本発明のらせん形状カッター刃は、20〜30度の範囲の芯テーパ角を有しうる。
【0012】
研磨された部分は、該カッター刃を破壊またはチャタリングから守るために、該半径方向第1刃の1の側を1〜45度の間の角度で研磨すること(honing)によって形成されうる。
<発明の効果>
【0013】
本発明におけるそのような面取りカッターにおいて、半径方向第1逃げ角および半径方向第2逃げ角が、夫々5〜15度の範囲および16〜30度の範囲にあるので、加工物の面取り加工において生成される負荷を軽減すること、および加工物と半径方向第1刃との間で十分な間隙が保障されることによって、機械的干渉およびチャタリングの防止が可能であるという利点がある。
【0014】
それに加えて、本発明におけるそのような面取りカッターにおいて、研磨された部分が半径方向第1刃の片側に形成されているので、カッター刃を破壊とチャタリングから守ることが可能であるという利点がある。さらに、面取りカッターの芯テーパ角が、20〜30度の範囲にあるので、面取りカッターの剛性および寿命時間を増加させることが可能であるという利点がある。
【0015】
本発明におけるそのような面取りカッターにおいて、すくい角部分が10〜20度の範囲の角度で形成されているので、特別な切削溝なしでも、加工物の面取り加工において作り出された切屑をスムーズに排出することが可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の1実施態様に従う面取りカッターを示す斜視図である。
【
図2】本発明の主要部であるカッター刃の半径方向の第1および第2の逃げ角の説明図である。
【
図3】本発明の主要部であるカッター刃の芯テーパ部の説明図である。
【
図4】本発明の主要部であるカッター刃のねじれ角を説明する側面図である。
【
図5】本発明の面取りカッターの使用の一例を示す説明図である。
【
図6】本発明の面取りカッターの別の実施態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これ以降、本発明の実施態様に沿い、面取りカッターが添付されている図面を参照して詳細に記載される。
図1は、本発明の1実施態様に従う面取りカッターを示す斜視図である。
図2は、本発明の主要部であるカッター刃の半径方向の第1および第2の逃げ角の説明図である。
図3は、本発明の主要部であるカッター刃の芯テーパ部の説明図である。
図4は、本発明の主要部であるカッター刃のねじれ角を説明する側面図である。
【0018】
本発明の1実施態様の形態における面取りカッター(100)は、
図1〜4に示されたように、本体(10)と、該本体(10)の周表面上に所定の間隔で配置された複数のカッター刃(20)と、面取り加工において作り出された切屑を排出するために複数のカッター刃(20)の間に縦方向に形成された排出溝(30)と、および該本体(10)の内側の一部分に形成されたキー溝(40)とを備えている。
【0019】
面取りカッター(100)の本体(10)は、
図1に示されたように、中心を通って形成された軸穴(5)および所定の間隔で配置された10枚のカッター刃(20)を有している。キー溝(40)は本体(10)の内部の一部分に形成される。図には示されていないが、キー溝(40)内にカッター固定キーを挿入し、そして面取りカッターをしっかり固定するために回転軸の中心に形成されたボルト孔にカッター固定ボルトを締め付けることによって、面取りカッターを電気式または空気式工具に簡単に搭載することが可能である。
【0020】
カッター刃(20)は、
図2に示されたように、本体(10)の周表面上に所定の間隔で配置され、その各々は、5〜15度の範囲の半径方向第1逃げ角(a)をもつ半径方向第1刃(14)および16〜30度の範囲の半径方向第2逃げ角(b)をもつ半径方向第2刃(16)を有している。半径方向第1刃(14)の幅は0.6〜0.7mmであり、半径方向第2刃(16)の幅は1.9〜2.0mmである。カッター刃のねじれ角(d)は、5〜45度の範囲にある。
【0021】
半径方向第1逃げ角(a)は、加工物の面取り加工において生み出される負荷を軽減するように最適角(5〜15度)に選択される。研磨された部分(12)は、カッター刃を破壊またはチャタリング(びびり)から守るために、半径方向第1刃(14)の1側面を1〜45度の間の角度で研磨することによって形成されている。研磨された部分(12)は0.05〜0.2mmの幅でありうるけれども、それらを0.1mm幅にすることが好ましい。
【0022】
半径方向第2逃げ角(b)は、面取り加工において加工物(60)と半径方向第1刃(14)との間の間隙を十分に保障することによって機械的干渉及びチャタリングを防止するように、最適角(16〜30度)に選択される。
【0023】
丸められた部分(22)は、0.1〜3.0の範囲の半径(r)を有し、カッター刃への損傷を防ぎ且つ労働者の安全を守るために、カッター刃(20)の端部に形成されている。
【0024】
図2に示されたように、すくい角部分は、加工物の加工時に生み出される切屑(図示されない)のスムーズな排出のために、10〜20度の間の適切な角度でカッター刃(20)上に形成されうる。カッター刃上に切削溝(図示されない)を特別に形成することなくてさえ、切屑がスムーズに排出される。換言すれば、切屑の排出は、従来技術においてはカッター刃上の所定の部分に切削溝を形成することによって引き起こされており、一方、本発明では加工物(60)の機械加工(面取り加工)において作り出された切屑が、カッター刃若しくは加工物(60)へと飛ばないでスムーズに排出されるように、すくい角部分(25)は適切な角度(これは10〜20度である)で形成される。
【0025】
カッター刃(20)は、
図3に示されたように、本発明においては20〜30度の範囲の芯テーパ角(c)を有している。芯テーパ角(c)は、カッター刃(20)の剛性および寿命時間を増加させるための重要な因子であり、好ましくは上述した角度の範囲内(20〜30度)に設定されうる。
【0026】
上述の実施態様は30度の面取り角度に基づいているけれども、面取り角度は、
図6および7に示されたように、本発明の別の実施態様においては37.5度および45度でありうる。ねじれ角、半径方向第1逃げ角(a)および半径方向第2逃げ角(b)を含む別の因子は、上述の実施態様のそれとほとんど同様であり、それ故に以下では詳細な記載はなされない。
【0027】
以下の記載は、上記の構成を有する本発明の面取りカッターを空気式若しくは電気式工具(50)にどのように搭載するか、および加工物をどのように面取りするか、を示している。
【0028】
本発明の実施態様に従う面取りカッター(100)は、
図5に示されたように、空気圧式若しくは電気式工具(50)の回転軸(図示されない)を本体(10)の中心の軸穴(5)に固定することによって搭載される。その際、本体(10)内側のキー溝(40)を回転シャフト上のキー溝と一致させて、該キー溝内にキーを挿入し、そして次に固定具(面取りカッターを空気式若しくは電気式工具(50)に固定する部品[キー溝、キー、及び固定具]、なぜなら面取りカッターがここで言及されているからである)で固定する。
【0029】
上述したような空気式若しくは電気式工具(50)に固定された面取りカッター(100)を用いて、面取りカッター(100)が加工物(60)と接触するように動かされ、次に電源スイッチ(70)が入れられるとき、駆動ユニット(図示されない)が作動し、そして面取りカッター(100)のカッター刃(20)を回転させる。
【0030】
カッター刃(20)が回転するとき、加工物(60)への面取り加工が始まる。
【0031】
カッター刃(20)の面取り面によって作り出された切屑(図示されない)は、加工物(60)を面取りする間に、排出溝(30)を通して排出される。さらに、カッター刃(20)は一般にコーティングされており、従って切屑は、カッター刃(20)の表面を損傷することなく容易に排出される。
【0032】
カッター刃(20)は半径方向第1刃(14)の1側面に研磨された部分(12)を有しているので、カッター刃(20)は破壊から守られ、且つ加工物(60)の表面粗さは、加工物(60)の面取り加工において改善されうる。さらに、微粒子が研磨された部分(12)において焼結され、従って面取り加工は、高速回転においてさえ非常に鋭い輪郭でカッター刃によって実施されることができ、かつカッター刃(20)の寿命時間がかなり延ばされ、且つ高品質面が達成されうる。
【0033】
半径方向第1刃(14)は、5〜15度の範囲の半径方向第1逃げ角(a)を有しているので、面取り加工において生成される負荷は減らされうる。さらに、半径方向第1刃(14)に接続された半径方向第2刃(16)の半径方向第2逃げ角(b)が16〜30度の範囲であるので、面取り加工の間、十分な間隙が加工物(60)と半径方向第1刃(14)との間で保障され、それによって機械的干渉およびチャタリングが防止されうる。
【0034】
<産業的利用>
本発明の面取りカッターは、面取り加工の様々なタイプ、例えばペンキを塗られた端部、溶接された端部、建築物の端部、鞍状部、皿穴、内側端部、直線状端部のために、および自動エッジ加工機において利用可能である。本発明の面取りカッターは、金属加工物の全てのタイプ、たとえば炭素およびステンレス鋼、アルミニウム、鉄、非鉄、およびほとんどの新金属による加工物に利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
12 研磨された部分
14 半径方向第1刃
16 半径方向第2刃
20 カッター刃
25 すくい角部分
30 排出溝
40 キー溝
50 空気式若しくは電気式工具
60 加工物
70 電源スイッチ
100 面取りカッター
a 半径方向第1逃げ角
b 半径方向第2逃げ角
c 芯テーパ角
d ねじれ角