(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6433038
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】ルーフドレインの再生方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
B29C 63/28 20060101AFI20181126BHJP
E04D 13/04 20060101ALI20181126BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
B29C63/28
E04D13/04 J
E03C1/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-12635(P2018-12635)
(22)【出願日】2018年1月29日
【審査請求日】2018年6月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518033060
【氏名又は名称】株式会社大勝テック
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】大谷 達裕
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−066718(JP,A)
【文献】
特表2001−525264(JP,A)
【文献】
米国特許第06619886(US,B1)
【文献】
特開昭63−067135(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00241719(EP,A1)
【文献】
登録実用新案第3174058(JP,U)
【文献】
特開2006−159757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00−63/48
F16L 55/00−55/48
E03C 1/12− 1/33
E03F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床部又は床部に立設される壁の下端部に埋設されたドレイン本体と、該ドレイン本体の排水口に接続する排水管とを具備するルーフドレインの再生方法であって、
両端が閉塞され、基端側にエアー供給口を有する膨張及び収縮可能な透明のバルーンの先端部を該バルーンの内方へ反転させる工程と、
上記バルーンの反転部内に、耐水性及び伸縮性を有する筒状の樹脂吸収心材を挿入すると共に、上記樹脂吸収心材の一端部を上記バルーンの外周部に折り返す工程と、
上記バルーンの反転部内に挿入された上記樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸させる工程と、
上記バルーンの先端側を上記排水管の開口端に近接して設置すると共に、上記バルーンの外周部に折り返された上記樹脂吸収心材を上記ドレイン本体の開口側に展着する工程と、
上記バルーン内に圧縮エアーを供給して上記バルーンの反転部を復元させつつ上記排水管内に進入させると共に、バルーンの膨張によって上記樹脂吸収心材を上記排水管の内壁及び上記ドレイン本体の排水口と上記排水管の接続部内に付着させる工程と、
上記樹脂吸収心材の硬化後、上記バルーンを収縮して回収する工程と、
を備えることを特徴とするルーフドレインの再生方法。
【請求項2】
請求項1に記載のルーフドレインの再生方法において、
上記ドレイン本体の開口側に展着された上記樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸させて、上記ドレイン本体の内面に上記樹脂塗料を塗布する仕上げ工程を更に備える、ことを特徴とするルーフドレインの再生方法。
【請求項3】
床部又は床部に立設される壁の下端部に埋設されたドレイン本体と、該ドレイン本体の排水口に接続する排水管とを具備するルーフドレインの再生装置であって、
両端が閉塞され、基端側に圧縮エアー供給源に接続するエアー供給口を有する膨張及び収縮可能な透明のバルーンと、
耐水性及び伸縮性を有する筒状の樹脂吸収心材と、
一端側に上記バルーンの先端部を該バルーンの内方へ反転させる略半球状の反転押圧部を有し、他端側に上記樹脂吸収心材を筒状に拡径しつつ上記バルーンの反転部内に挿入する円筒開口部を有する操作棒と、を具備し、
上記操作棒の反転押圧部によって上記バルーンの先端部を該バルーンの内方に反転させ、上記操作棒の円筒開口部によって上記樹脂吸収心材を上記バルーンの反転部内に挿入し、上記樹脂吸収心材に樹脂塗料が含浸されて上記バルーンの先端側が上記排水管の開口端に近接して設置されると共に、上記バルーンの外周部に折り返された上記樹脂吸収心材が上記ドレイン本体の開口側に展着された状態で、上記圧縮エアー供給源から供給される圧縮エアーによって上記バルーンの反転部を復元させつつ上記排水管内に進入させると共に、バルーンの膨張によって上記樹脂吸収心材を上記排水管の内壁及び上記ドレイン本体の排水口と上記排水管の接続部内に付着させる、
ことを特徴とするルーフドレインの再生装置。
【請求項4】
請求項3に記載のルーフドレインの再生装置において、
上記バルーンの外周を覆う分割又は周方向に開閉可能な略半円筒状の一対の透明なサポート半体からなるサポート体と、上記両サポート半体を固定する固定バンドとを更に具備し、
上記サポート体は、上記バルーンの反転部内に上記樹脂吸収心材が挿入され、上記樹脂吸収心材に樹脂塗料が含浸された際に、上記バルーンの外周を覆って上記固定バンドで固定された状態で、上記排水管の開口端に近接され、上記樹脂吸収心材が硬化後に上記バルーンが収縮した際に、上記バルーンから取り外し可能に形成されている、ことを特徴とするルーフドレインの再生装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のルーフドレインの再生装置において、
上記バルーンの基端側に圧力計の接続口を更に具備する、ことを特徴とするルーフドレインの再生装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のルーフドレインの再生装置において、
上記樹脂吸収心材はアラミド繊維の編物である、ことを特徴とするルーフドレインの再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ルーフドレインの再生方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物のベランダや屋上には、雨水を排水するルーフドレインが設置されている。
このルーフドレインには、床部に埋設されたドレイン本体と、該ドレイン本体の排水口に接続する排水管とからなる縦引きタイプと、床部に立設された壁の下端部に埋設されたドレイン本体と、該ドレイン本体の排水口に接続する横向きの排水管とからなる横引きタイプが使用されている。
【0003】
上記のように構成されるルーフドレインは、風雨に晒され、雨水に混じった土砂や塵等の堆積による腐食や老朽化によって排水機能が損なわれる。この排水機能の改善を図るために、排水管内の堆積・腐食した部分を洗浄や研磨によって除去した後に再生する必要がある。
【0004】
従来、この種のドレイン(トラップともいう)を備える排水設備の再生(補修)方法として、樹脂塗料を含浸した樹脂吸収心材を用いてルーフドレインの排水部を再生(補修,更生,ライニング等)する方法(装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の技術は、ライニングチューブの内部にライニング剤(樹脂塗料)を含浸した筒状のライニングクロス(樹脂吸収心材)を挿入してなるライニングクロスチューブをライニング反転器(以下に反転器という)の内部に挿入し、ライニングチューブの下端部を折り返して反転器の下端部の外周に締結すると共に、反転器の下端部を排水口の上端に設置した状態で、ライニングクロスの下端部を排水口の外周に被せ、反転器の内部に圧縮エアーを注入することによって、ライニングクロスチューブを反転しながら配管(排水管)の内部を進入させると共に、ライニングチューブの膨張によってライニングクロスを配管(排水管)の内壁に付着した後、ライニングクロスの硬化後に、ライニングチューブに接続したワイヤを上方に引き上げることによってライニングチューブを回収する方法(装置)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−66718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のものにおいては、予めライニング剤(樹脂塗料)を含浸したライニングクロス(樹脂吸収心材)を挿入してなるライニングクロスチューブを形成し、ライニングクロスチューブの端部にワイヤを接続して準備する必要がある。また、ライニングクロスチューブを反転器に挿入し、反転器の下端部を排水口の上端に設置した状態で、反転器の内部に圧縮エアーを注入することによって、ライニングクロスを排水管の内壁に付着してライナー層を形成した後、ワイヤを引き上げてライニングクロスチューブを回収するため、設備が大掛かりとなり、再生作業に手間を要する懸念がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の技術においては、横引きタイプのルーフドレインの場合、反転器を排水口に設置した状態で、ライニングクロスの下端部を排水口の外周に被せるのが容易でないなどの懸念がある。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、縦引きタイプと横引きタイプのルーフドレインのいずれにおいても容易に作業ができ、かつ、排水管とドレイン本体とを同一状態に再生可能にするルーフドレインの再生方法及びその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、この発明の再生方法は、床部又は床部に立設される壁の下端部に埋設されたドレイン本体と、該ドレイン本体の排水口に接続する排水管とを具備するルーフドレインの再生方法であって、 両端が閉塞され、基端側にエアー供給口を有する膨張及び収縮可能な透明のバルーンの先端部を該バルーンの内方へ反転させる工程と、 上記バルーンの反転部内に、耐水性及び伸縮性を有する筒状の樹脂吸収心材を挿入すると共に、上記樹脂吸収心材の一端部を上記バルーンの外周部に折り返す工程と、 上記バルーンの反転部内に挿入された上記樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸させる工程と、 上記バルーンの先端側を上記排水管の開口端に近接して設置すると共に、上記バルーンの外周部に折り返された上記樹脂吸収心材を上記ドレイン本体の開口側に展着する工程と、 上記バルーン内に圧縮エアーを供給して上記バルーンの反転部を復元させつつ上記排水管内に進入させると共に、バルーンの膨張によって上記樹脂吸収心材を上記排水管の内壁及び上記ドレイン本体の排水口と上記排水管の接続部内に付着させる工程と、 上記樹脂吸収心材の硬化後、上記バルーンを収縮して回収する工程と、を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
このように構成することにより、バルーンの先端部をバルーンの内方へ反転させて、バルーンの反転部内に、樹脂吸収心材を挿入すると共に、樹脂吸収心材の一端部をバルーンの外周部に折り返した状態で、上記反転部内に挿入された樹脂吸収心材に樹脂塗料を注入し、バルーンを押圧することで、外部から確認しつつ樹脂塗料を含浸させることができる。その後、バルーンの先端側を縦引き又は横引きのルーフドレインの排水管の開口端に近接させた状態に設置し、バルーンの外周部に折り返された樹脂吸収心材をドレイン本体の開口側に展着した状態で、バルーン内に圧縮エアーを供給することにより、バルーンの膨張によって樹脂吸収心材を排水管の内壁及びドレイン本体の排水口と排水管の接続部内に付着させ、樹脂吸収心材の硬化後、バルーンを収縮して回収することができる。
【0012】
この発明の再生方法において、上記ドレイン本体の開口側に展着された上記樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸させて、上記ドレイン本体の内面に上記樹脂塗料を塗布する仕上げ工程を更に備えるのが好ましい(請求項2)。
【0013】
このように構成することにより、排水管の内壁及びドレイン本体の排水口と排水管の接続部内に付着された樹脂吸収心材と一体の樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸させてドレイン本体の内面に樹脂塗料を塗布することができる。
【0014】
この発明の再生装置は、床部又は床部に立設される壁の下端部に埋設されたドレイン本体と、該ドレイン本体の排水口に接続する排水管とを具備するルーフドレインの再生装置であって、 両端が閉塞され、基端側に圧縮エアー供給源に接続するエアー供給口を有する膨張及び収縮可能な透明のバルーンと、 耐水性及び伸縮性を有する筒状の樹脂吸収心材と、 一端側に上記バルーンの先端部を該バルーンの内方へ反転させる略半球状の反転押圧部を有し、他端側に上記樹脂吸収心材を筒状に拡径しつつ上記バルーンの反転部内に挿入する円筒開口部を有する操作棒と、を具備し、 上記操作棒の反転押圧部によって上記バルーンの先端部を該バルーンの内方に反転させ、上記操作棒の円筒開口部によって上記樹脂吸収心材を上記バルーンの反転部内に挿入し、上記樹脂吸収心材に樹脂塗料が含浸されて上記バルーンの先端側が上記排水管の開口端に近接して設置されると共に、上記バルーンの外周部に折り返された上記樹脂吸収心材が上記ドレイン本体の開口側に展着された状態で、上記圧縮エアー供給源から供給される圧縮エアーによって上記バルーンの反転部を復元させつつ上記排水管内に進入させると共に、バルーンの膨張によって上記樹脂吸収心材を上記排水管の内壁及び上記ドレイン本体の排水口と上記排水管の接続部内に付着させる、ことを特徴とする(請求項3)。
【0015】
このように構成することにより、1つの操作棒によってバルーンの先端部をバルーンの内方へ反転させることができると共に、バルーンの反転部内に、樹脂吸収心材を挿入することができる。また、樹脂吸収心材の一端部をバルーンの外周部に折り返した状態で、上記反転部内に挿入された樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸させ、バルーンの先端側を排水管の開口端に近接し、バルーンの外周部に折り返された樹脂吸収心材をドレイン本体の開口側に展着した状態で、バルーン内に圧縮エアーを供給することにより、バルーンの膨張によって樹脂吸収心材を排水管の内壁及びドレイン本体の排水口と排水管の接続部内に付着させ、樹脂吸収心材の硬化後、バルーンを収縮して回収することができる。
また、バルーンは、膨張及び収縮可能な部材にて形成されているため、施工現場への搬送が容易な上、縦引きタイプと横引きタイプのルーフドレインのいずれにもおいても容易に使用することができる。
【0016】
この発明の再生装置において、上記バルーンの外周を覆う分割又は周方向に開閉可能な略半円筒状の一対の透明なサポート半体からなるサポート体と、上記両サポート半体を固定する固定バンドとを更に具備し、上記サポート体は、上記バルーンの反転部内に上記樹脂吸収心材が挿入され、上記樹脂吸収心材に樹脂塗料が含浸された際に、上記バルーンの外周を覆って上記固定バンドで固定された状態で、上記排水管の開口端に近接され、上記樹脂吸収心材が硬化後に上記バルーンが収縮した際に、上記バルーンから取り外し可能に形成されているのが好ましい(請求項4)。
【0017】
このように構成することにより、サポート体によってバルーン内への圧縮エアーの供給時のバルーンの圧力変形を抑制することができると共に、作業者のバルーンの保持を容易にすることができる。
【0018】
また、この発明の再生装置において、上記バルーンの基端側に圧力計の接続口を更に具備するのが好ましい(請求項5)。
【0019】
このように構成することにより、圧力計によってバルーン内への圧縮エアーの適正供給圧を確認することができ、作業の効率化を図ることができる。
【0020】
加えて、この発明の再生装置において、上記樹脂吸収心材はアラミド繊維の編物であるのが好ましい(請求項6)。
【0021】
このように構成することにより、樹脂吸収心材に耐水性及び伸縮性に加えて強度をもたせることができる上、樹脂塗料の含浸をし易くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
膨張及び収縮可能な透明のバルーンの先端部を反転させ、反転部内に挿入される筒状の樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸させると共に、バルーンの外周部に折り返された樹脂吸収心材をドレイン本体の開口側に展着した状態で、バルーン内に圧縮エアーを供給することにより、樹脂吸収心材を排水管の内壁及びドレイン本体の排水口と排水管の接続部内に付着させ、樹脂吸収心材の硬化後、バルーンを収縮して回収するので、縦引きタイプと横引きタイプのルーフドレインのいずれにおいても容易に再生することができる。また、ドレイン本体に展着された樹脂吸収心材に樹脂塗料を塗布することができるので、排水管とドレイン本体とを同一状態に再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明に係る再生方法の作業手順を示すフローチャートである。
【
図2】この発明におけるバルーン、コンプレッサ及び圧力計を示す概略側面図である。
【
図3】この発明における樹脂吸収心材を示す斜視図である。
【
図4】この発明におけるサポート体の使用状態を示す正面図(a)、側面図(b)、(b)のI部拡大図(c)及び(b)のII部拡大図(d)である。
【
図5】上記サポート体の開いた状態を示す側面図(a)及び別のサポート体の分割状態を示す側面図(b)である。
【
図6】この発明における操作棒を示す側面図(a)、操作棒の反転押圧部を示す斜視図(b)及び操作棒の円筒開口部を示す斜視図(c)である。
【
図7】上記バルーンの反転状態を示す概略側面図である。
【
図8】上記バルーンの反転部内に樹脂吸収心材を挿入する状態を示す概略側面図(a)及び樹脂吸収心材の挿入後の状態を示す概略側面図(b)である。
【
図9】上記樹脂吸収心材に樹脂塗料を注入する状態を示す概略側面図(a)、樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸させる状態を示す概略側面図(b)及び樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸させた状態を示す拡大断面図(c)である。
【
図10】上記バルーンを第1実施形態におけるルーフドレインの排水管の開口端に近接して設置する状態を示す断面図である。
【
図11】上記第1実施形態における排水管の内壁及びドレイン本体と排水管の接続部内に樹脂吸収心材を付着させる状態を示す断面図である。
【
図12】上記バルーンを回収する状態を示す断面図である。
【
図13】第1実施形態におけるドレイン本体内に樹脂塗料を塗布した状態を示す断面図である。
【
図14】上記バルーンを第2実施形態におけるルーフドレインの排水管の開口端に近接して設置する状態を示す断面図である。
【
図15】上記第2実施形態における排水管の内壁及びドレイン本体と排水管の接続部内に樹脂吸収心材を付着させる状態を示す断面図である。
【
図16】上記バルーンを回収する状態を示す断面図である。
【
図17】第2実施形態におけるドレイン本体内に樹脂塗料を塗布した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、この発明の実施形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る再生方法(装置)を、後述する、建物のベランダや屋上の床部1に埋設されたドレイン本体4と、該ドレイン本体4の排水口5に接続する排水管6とからなる縦引きタイプのルーフドレイン3と、床部1に立設された壁2の下端部に埋設されたドレイン本体4Aと、該ドレイン本体4Aの排水口5Aに接続する横向きの排水管6Aとからなる横引きタイプのルーフドレイン3Aに適用した場合について説明する。
【0025】
まず、この発明に係る再生装置について説明する。
再生装置は、両端が閉塞され、基端側に圧縮エアー供給源であるコンプレッサ40に接続するエアー供給口13と、圧力計50が接続可能な接続口14を有する膨張及び収縮可能な透明のバルーン10と、耐水性及び伸縮性を有する筒状の樹脂吸収心材11と、バルーン10の先端部を該バルーン10の内方へ反転させる反転押圧部32と、樹脂吸収心材11を筒状に拡径しつつバルーン10の反転押圧部32内に挿入する円筒開口部33を有する操作棒30と、バルーン10の外周を覆う分割又は周方向に開閉可能なサポート体20と、を具備する。
【0026】
上記バルーン10は、例えば、ポリウレタン,ポリエチレン,塩化ビニール製の膨張及び収縮可能な透明部材にて形成されており、
図2に示すように、先端部が凸円弧状に形成され、基端部にエアー供給口13と接続口14が設けられている。
なお、エアー供給口13にはエアーホース41を介してコンプレッサ40が接続され、接続口14に接続される接続ホース51に、バルーン10内の圧力を検出する圧力計50が設けられている。
このバルーン10は、エアーが供給された状態では、先端部が半球状に膨隆し、基端部が閉塞された円筒中空状に形成される。
【0027】
上記樹脂吸収心材11は、アラミド繊維を表と裏を同時に編んだ(ダブルニットと称する)筒状の編物にて形成されている(
図3参照)。アラミド繊維は、耐水性,強度,耐熱性に優れた材料であり、編物により、伸縮性をもたせることができると共に、例えば、エポキシ樹脂塗料からなる硬化性樹脂塗料(以下に樹脂塗料という)の含浸をし易くすることができる。
【0028】
上記サポート体20は、
図4及び
図5(a)に示すように、略半円筒状の一対の例えば塩化ビニール製の透明なサポート半体21,21からなり、両サポート半体21,21は、対向する一辺に貼着されるテープによるヒンジ部22によって周方向に開閉可能に形成されている。また、サポート体20は、両サポート半体21,21によってバルーン10の外周を覆った状態で、帯状の面ファスナーからなる固定バンド23によって固定される。
【0029】
なお、ヒンジ部22がテープの貼着によって形成される場合について説明したが、テープに代えて、両サポート半体21,21の一辺を繰り返し折り曲げ可能な連結片でヒンジ部を形成してもよい。
また、
図5(b)に示すように、両サポート半体21,21を分割可能に形成してもよい。
【0030】
上記のように形成されるサポート体20は、後述するように、バルーン10の反転部10a内に挿入された樹脂吸収心材11に樹脂塗料12が含浸された際に、バルーン10の外周を覆って固定バンド23で固定され、樹脂吸収心材11が硬化後にバルーン10が収縮した際に、バルーン10から取り外し可能に形成される。
【0031】
上記操作棒30は、
図6に示すように、例えば塩化ビニール製のパイプからなる棒本体31の一端に略半球状の頭部32aを有する反転押圧部32を設け、他端に円筒開口部33が設けられている。
このように形成される操作棒30は、
図7に示すように、反転押圧部32によってバルーン10の先端部を該バルーン10の内方へ反転させることができ、
図8(a)に示すように、円筒開口部33によって樹脂吸収心材11を筒状に拡径しつつバルーン10の反転押圧部32内に挿入することができる。
【0032】
次に、この発明に係るルーフドレインの再生方法について、
図1に示す作業手順(工程)のフローチャートと、
図7ないし
図17を参照して説明する。
【0033】
[第1実施形態]
第1実施形態は、
図10ないし
図13に示すように、床部1に埋設されたドレイン本体4の下端に設けられた排水口5に排水管6を垂直方向に接続してなる縦引きタイプのルーフドレイン3を再生する場合であり、施工現場において、以下の手順によって行う。
【0034】
<バルーン先端部の反転>
バルーン10の先端部を操作棒30の反転押圧部32でバルーン10の内方に押し込んで反転させる(ステップS−1;
図7参照)。
【0035】
<反転部内への樹脂吸収心材の挿入>
樹脂吸収心材11に操作棒30の円筒開口部33を挿入して、バルーン10の反転部10a内に樹脂吸収心材11を筒状に拡径しつつ挿入し、樹脂吸収心材11の外方側端部をバルーン10の外周部に折り返す(ステップS−2;
図8(a),(b)参照)。
【0036】
<樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸>
バルーン10の反転部10a内に挿入された樹脂吸収心材11に漏斗8を用いて樹脂塗料12を注入した後、バルーン10の外面にローラ9を押圧して樹脂塗料12を樹脂吸収心材11に均等に含浸させる(ステップS−3:
図9参照)。
この場合、バルーン10は透明性部材にて形成されているので、樹脂塗料12の含浸状体を外部から確認することができる。
【0037】
反転部10aの樹脂吸収心材11に樹脂塗料が含浸された状態において、バルーン10の外周部に折り返された樹脂吸収心材11には樹脂塗料12は含浸されない。
【0038】
なお、樹脂吸収心材11に樹脂塗料12が含浸された際に、サポート体20でバルーン10の外周を覆って固定バンド23で固定する。
【0039】
<バルーンのドレインへの設置>
バルーン先端側及びサポート体20の端部をルーフドレイン3の排水管6の開口端に近接した状態に設置し、バルーン10の外周部に折り返された樹脂塗料12が含浸されていない樹脂吸収心材11をドレイン本体4の開口側に展着する(ステップS−4;
図10参照)。
【0040】
<排水管内壁及び接続部の再生>
バルーン10内へ圧縮エアーを供給し、バルーン10の膨張によって樹脂吸収心材11を排水管6の内壁及び排水口5と排水管6の段状の接続部7内に付着する(ステップS−5;
図11参照)。
この場合、圧力計50によってバルーン10内の圧力を確認しながら圧縮エアーを供給する。
【0041】
バルーン10内に圧縮エアーを供給している際は、サポート体20によってバルーン10の圧力変形を抑制することができると共に、作業者のバルーン10の保持を容易にすることができる。
【0042】
<バルーンの回収>
樹脂吸収心材11の硬化後、バルーン10内のエアーを抜いてバルーン10を収縮すると共に、固定バンド23の締結を解いてサポート半体21,21を分離してバルーン10を回収する(ステップS−6;
図12参照)。
【0043】
<ドレイン本体の再生>
ドレイン本体4の開口側に展着された樹脂吸収心材11に樹脂塗料12を含浸させて、ドレイン本体4の内面に樹脂塗料12を塗布してドレイン本体4の内面を仕上げる(ステップS−7;
図13参照)。
【0044】
[第2実施形態]
第2実施形態は、
図14ないし
図17に示すように、床部1に立設された壁2の下端部に埋設されたドレイン本体4Aの下端に設けられた横向きの排水口5Aに排水管6Aを横向きに接続してなる横引きタイプのルーフドレイン3Aを再生する場合であり、施工現場において、以下の手順によって行う。
【0045】
第2実施形態においても、バルーン先端部の反転(ステップS−1)、反転部内への樹脂吸収心材の挿入(ステップS−2)、樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸(ステップS−3)は、第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0046】
<バルーンのドレインへの設置>
バルーン先端側及びサポート体20の端部をルーフドレイン3Aの排水管6Aの開口端に近接した状態に設置し、バルーン10の外周部に折り返された樹脂塗料12が含浸されていない樹脂吸収心材11をドレイン本体4Aの開口側に展着する(ステップS−4;
図14参照)。この場合、バルーン10は膨張及び収縮可能であって可撓性を有するので、屈曲させて排水管6Aの開口端に近接した状態に設置することができる。
【0047】
<排水管内壁及び接続部の再生>
バルーン10内へ圧縮エアーを供給し、バルーン10の膨張によって樹脂吸収心材11を排水管6Aの内壁及び排水口5Aと排水管6Aの段状の接続部7内に付着する(ステップS−5;
図15参照)。
この場合、圧力計50によってバルーン10内の圧力を確認しながら圧縮エアーを供給する。
【0048】
バルーン10内に圧縮エアーを供給している際は、サポート体20によってバルーン10の圧力変形を抑制することができると共に、作業者のバルーン10の保持を容易にすることができる。
【0049】
<バルーンの回収>
樹脂吸収心材11の硬化後、バルーン10内のエアーを抜いてバルーン10を収縮すると共に、固定バンドの締結を解いてサポート半体(図示せず)を分離してバルーン10を回収する(ステップS−6;
図16参照)。
【0050】
<ドレイン本体の再生>
ドレイン本体4Aの開口側に展着された樹脂吸収心材11に樹脂塗料12を含浸させて、ドレイン本体4Aの内面に樹脂塗料12を塗布してドレイン本体4Aの内面を仕上げる(ステップS−7;
図17参照)。
【0051】
なお、上記実施形態では、バルーン10の外周をサポート体20で覆った状態でバルーン10内に圧縮エアーを供給する場合について説明したが、バルーン10への供給圧が低い場合は、サポート体20を用いずに、直接バルーン10を保持して作業してもよい。
【0052】
上記実施形態によれば、膨張及び収縮可能な透明のバルーン10の先端部を反転させ、反転部10a内に挿入される樹脂吸収心材11に樹脂塗料を含浸させると共に、バルーン10の外周部に折り返された樹脂吸収心材11をドレイン本体4,4Aの開口側に展着した状態で、バルーン10内に圧縮エアーを供給することにより、樹脂吸収心材11を排水管6,6Aの内壁及びドレイン本体4,4Aの排水口5,5Aと排水管6,6Aの接続部7内に付着させ、樹脂吸収心材11の硬化後、バルーン10を収縮して回収するので、縦引きタイプと横引きタイプのルーフドレイン3,3Aのいずれにおいても容易に再生することができる。また、ドレイン本体4,4Aに展着された樹脂吸収心材11に樹脂塗料12を塗布するので、排水管6,6Aとドレイン本体4,4Aとを同一状態に再生することができる。
【0053】
また、上記実施形態によれば、1つの操作棒30によってバルーン10の先端部をバルーン10の内方へ反転させることができると共に、バルーン10の反転部10a内に、樹脂吸収心材11を挿入することができるので、現場での作業の効率が図れる。
【0054】
また、バルーン10は、膨張及び収縮可能な部材にて形成されているため、施工現場への搬送が容易であり、また、膨張によって樹脂吸収心材11を排水管6,6Aの内壁及びドレイン本体4,4Aの排水口5,5Aと排水管6,6Aの接続部7内に付着させ、樹脂吸収心材11の硬化後、収縮して回収することができるので、再度繰り返して使用することができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、ルーフドレイン3,3Aの再生に適用する場合について説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、ドレイン本体と、ドレイン本体の排水口に接続する排水管を備える構造の排水設備にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 床部
2 壁
3,3A ルーフドレイン
4,4A ドレイン本体
5,5A 排水口
6,6A 排水管
7 接続部
10 バルーン
10a 反転部
11 樹脂吸収心材
12 樹脂塗料
13 エアー供給口
14 接続口
20 サポート体
21 サポート半体
22 ヒンジ部
23 固定バンド
30 操作棒
31 棒本体
32 反転押圧部
33 円筒開口部
40 コンプレッサ(圧縮エアー供給源)
50 圧力計
【要約】
【課題】縦引きタイプと横引きタイプのルーフドレインのいずれにおいても容易に作業ができ、排水管とドレイン本体とを同一状態に再生可能にすること。
【解決手段】両端が閉塞され、膨張及び収縮可能な透明のバルーンの先端部を該バルーンの内方へ反転させ、バルーンの反転部内に、耐水性及び伸縮性を有する筒状の樹脂吸収心材を挿入すると共に、樹脂吸収心材の一端部をバルーンの外周部に折り返し、バルーンの反転部内に挿入された樹脂吸収心材に樹脂塗料を含浸させる。バルーンの先端側を排水管の開口端に近接して設置し、バルーンの外周部に折り返された樹脂吸収心材をドレイン本体の開口側に展着した状態で、バルーン内に圧縮エアーを供給してバルーンの反転部を排水管内に進入させると共に、バルーンの膨張によって樹脂吸収心材を排水管の内壁及びドレイン本体の排水口と排水管の接続部内に付着させ、樹脂吸収心材の硬化後、バルーンを収縮して回収する。
【選択図】
図1