(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6433052
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】ガス測定装置用素子
(51)【国際特許分類】
G01N 25/18 20060101AFI20181126BHJP
G01N 25/20 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
G01N25/18 K
G01N25/20 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-182811(P2014-182811)
(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公開番号】特開2016-57130(P2016-57130A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087974
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】笹原 和弘
【審査官】
萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−207939(JP,A)
【文献】
特開2010−145295(JP,A)
【文献】
特表2002−535649(JP,A)
【文献】
特表2007−529347(JP,A)
【文献】
特開昭60−168988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00〜25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジュール熱発生源にガス感応部が造り付けられた検出素子本体部を導電性ステーに導電関係を維持するように固定するとともに、前記検出素子本体部を耐熱性弾性多孔質板により挟んだ検出素子と、ジュール熱発生源に補償部が造り付けられた補償素子本体部を導電性ステーに導電関係を維持するように固定するとともに、前記補償素子本体部を耐熱性弾性多孔質板により挟んだ補償素子とを備えるとともに、前記耐熱性弾性多孔質板は、前記ガス感応部、及び前記補償部に対応する領域に窓を有する枠体により一体に固定されているガス測定装置用素子。
【請求項2】
前記枠体は、前記導電性ステーを挟持している請求項1に記載のガス測定装置用素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュール熱発生源にガス感応部を設けて構成されたガス検出用素子、及びガス感応部を悲感応部としてこれと対で使用される補償素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュール熱発生源にガス感応部を設けて構成されたガスセンサーは、その熱放散量が表面積、形状のばらつきにより結果としてガス濃度の測定誤差が生じるという問題を抱えている。
【0003】
すなわち、通常、ガス測定装置は、ガスに感応するガス感応部を備えた検出素子と、この検出素子とほぼ同形状でガスには感応しない補償部を備えた補償素子とを差動接続して補償素子により環境温度の変化を相殺しつつガスの濃度に比例してガス感応部を発熱させて信号を出力するように構成されている。
【0004】
検出素子のガス感応部と補償素子の補償部とを同一材料、同一形状に製作することが不可能なため、環境の気圧や温度によりそれぞれの放熱量が異なり、2つの素子間に温度差が生じてガスの有無に関係なく出力が変動するドリフトが生じるという問題がある。
【0005】
なお、ガスセンサ素子が収容されているケースの空間にセラミックス繊維を充填して外気温の変化による温度変動を極力防止することは特許文献1に見られるように既に周知であるが、このものは検出素子と補償素子との間に生じる熱バランスの崩れを補正することを目的とするものではない。
また、素子を収容したケースの空間に繊維を充填する関係上、素子を破損しないように細心の注意を払って作業する必要があり、手間がかかるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−201331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは外部環境、つまり温度、気圧の変動により検出素子と補償素子との2素子間に生じる熱バランスの崩れによるドリフトを防止でき、かつ組立作業を簡素化できるガス測定装置用素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような問題を解決するために本発明は、ジュール熱発生源にガス感応部が造り付けられた検出素子本体部を導電性ステーに導電関係を維持するように固定するとともに、前記検出素子本体部を耐熱性弾性多孔質板により挟んだ検出素子
と、ジュール熱発生源に補償部が造り付けられた補償素子本体部を導電性ステーに導電関係を維持するように固定するとともに、前記補償素子本体部を耐熱性弾性多孔質板により挟んだ補償素子とを備えるとともに、前記耐熱性弾性多孔質板
は、前記ガス感応部、及び前記補償部に対応する領域に窓を有する枠体により一体に固定されている。
【発明の効果】
【0009】
検出素子、補償素子は、その本体部を挟み込む耐熱性弾性多孔質板状体により熱の放散が抑制され、かつ素子本体部単独の場合よりも熱容量が大きくなり、熱的特性の変動を抑えることが可能となる。
また2枚の耐熱性弾性多孔質板で挟むという充填作業よりも簡単な工程で組み立てることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜
図3は、それぞれ本発明の一実施例を示すものである。
なお、形状的には検出素子も補償素子も同一であるので、補償素子の部材には検出素子の部材の符号にダッシュ(’)を付して同一の図を用いて説明する。
この実施例においては、検出素子1は白金線をコイル状に整形したジュール熱発生源にガス感応部が造り付けられた検出素子本体部2を基台3に植設した2本の導電性ステー4,4に導電関係を維持するように固定するとともに、検出素子本体部2を耐熱性弾性多孔質板5,5により挟んで構成されている。
【0012】
また補償素子1’は、検出素子1と同様なジュール熱発生源に検出素子のガス感応部と形状的、熱的(比熱、熱容量、放熱面積)に同等の補償部が造り付けられた補償素子本体部2’を基台3’に植設した2本の導電性ステー4’、4’に導電関係を維持するように固定するとともに、補償素子本体部2’を耐熱性弾性多孔質板5’,5’により挟んで構成されている。
【0013】
これら各素子1,1’は、上述したように検出素子1にあっては検出素子本体部2、補償素子1’にあっては補償素子本体部2’を包むように耐熱性弾性多孔質体、たとえば硼珪酸ガラスの綿の圧縮体からなる同一サイズの2枚の耐熱性弾性多孔質板5,5、5’,5’で両側から挟まれ通気窓6,6,6’、6’を備えた枠体7,7、7’,7’で固定されている。なお、いうまでもなく耐熱性弾性多孔質板5,5’は硼珪酸ガラスの綿から構成されているので、熱不良導体で高い保温性を備えている。
【0014】
この枠体7,7、7’,7’は、耐熱性弾性多孔質板5,5、5’,5’の周囲を取り囲むように構成され、かつ相対向接触する領域に図示しない固定構造、たとえば嵌合可能な凹凸やスナップフィット構造が形成されている。これにより検出素子本体部2、補償素子本体部2’を挟んだ耐熱性弾性多孔質板5,5、5’,5’を枠体7,7、7’,7’で簡単に固着することができる。また枠体7,7、7’,7’は2本の導電性ステー4,4、4’、4’を挟み込んでこれに支持されていて、素子本体部2、2’に無用な荷重が作用するのが防止されている。
【0015】
この実施例において検出素子1と補償素子1’とを差動接続して差分を出力するように構成されたガス測定装置を作動させると、それぞれの素子1、1’のジュール熱発生源が発熱し検出素子本体部2や補償素子本体部2’を加熱する。この検出素子本体部2や補償素子本体部2’の熱は、これらに密着する耐熱性弾性多孔質板5,5、5’,5’を加熱昇温させる一方、耐熱性弾性多孔質板5,5、5’,5’は所定温度にまで昇温加熱された後は素子本体部2,2’の熱放散を可及的に抑制する。
【0016】
また各素子本体部2、2’は、耐熱性弾性多孔質板5,5、5’,5’と一体化されているため、各素子本体部2、2’単独の場合に比較して実質的熱容量が増加するので気圧の変動や環境温度の変動による素子の放熱量、つまり素子の温度変化が小さくなり、検出信号のドリフトが抑制される。
【0017】
一方、被検ガスは、各素子本体部2、2’の枠体7,7、7’,7’の通気窓6,6,6’、6’、耐熱性弾性多孔質板5,5、5’,5’を構成する繊維の間を通過して素子本体部に到達し、検出素子1の素子本体部2だけがガスの種類や濃度に応じて発熱反応する。これにより検出素子1と補償素子1’との温度のバランスが崩れてガス検出信号が出力する。
【0018】
なお、上述の実施例においては素子それぞれ個別にケースに収容する場合について説明したが、
図4に示したように検出素子1と補償素子1’とをその向きが交差し、また上下関係になるように同一のケースに収容しても同一の効果を奏することは明らかである。
【符号の説明】
【0019】
1 検出素子 1’ 補償素子 2 検出素子本体部 2’ 補償素子本体部’
3、3’ 基台 4,4、4’、4’ 導電性ステー 5,5、5’,5’ 耐熱性弾性多孔質板 6,6,6’、6’ 通気窓 7,7、7’,7’ 枠体