特許第6433060号(P6433060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧
特許6433060脂肪族または脂環式ジカルボキシアルデヒドおよびレゾルシノールの水性バインダー組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6433060
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】脂肪族または脂環式ジカルボキシアルデヒドおよびレゾルシノールの水性バインダー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/04 20060101AFI20181126BHJP
   C08G 14/02 20060101ALI20181126BHJP
   C08K 5/21 20060101ALI20181126BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20181126BHJP
   C08L 61/34 20060101ALI20181126BHJP
   C08L 61/12 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   C08G8/04
   C08G14/02
   C08K5/21
   C08K5/5415
   C08L61/34
   C08L61/12
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-227564(P2014-227564)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-101725(P2015-101725A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2017年10月23日
(31)【優先権主張番号】61/908,884
(32)【優先日】2013年11月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・シー・フィンチ
(72)【発明者】
【氏名】スディール・エム・ムリック
(72)【発明者】
【氏名】マネッシュ・エヌ・セカラン
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−056949(JP,A)
【文献】 特開2000−206683(JP,A)
【文献】 特表2002−508015(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/075398(WO,A1)
【文献】 特表2006−509889(JP,A)
【文献】 特開2007−031871(JP,A)
【文献】 特表2009−523858(JP,A)
【文献】 特開2009−197094(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102504292(CN,A)
【文献】 特開2013−053239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 4/00 − 16/06
C08L 61/00 − 61/34
C08G 59/00 − 59/72
C07C 1/00 − 409/44
A01N 1/00 − 65/48
A01P 1/00 − 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含む場合と含まない場合の水性または非水性系中に、(i)レゾルシノール(ii)シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、グルタルアルデヒド、またはこれらの混合物から選択される1種または複数種のジアルデヒド、(iii)任意成分として尿素、および(iv)無機塩基触媒を原料とするレゾルシノールジアルデヒド樹脂を含み、前記1種または複数種のジアルデヒドのアルデヒド等価基の数に対する前記レゾルシノールのヒドロキシル等価基の数の比率が、1:1〜4:1であり、レゾルシノールおよびジアルデヒドの前記水性混合物中に存在するヒドロキシ基に対する前記(iv)無機塩基触媒中のヒドロキシ基の当量比が、0より大:1〜0.275未満:1であり、前記(ii)の1種または複数種のジアルデヒドがシクロヘキサンジカルボキシアルデヒドであるとき、前記(iii)の尿素の量が、1モルのシクロヘキサンジカルボキシアルデヒド当たり0〜7.5モルである、実質的にホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー組成物。
【請求項2】
有機溶剤を含む場合と含まない場合の水性または非水性系中に、(i)レゾルシノール、(ii)シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドから選択される1種または複数種のジアルデヒド、(iii)任意成分として尿素、および(iv)任意成分として無機塩基触媒を原料とするレゾルシノールジアルデヒド樹脂を含み、レゾルシノールおよびジアルデヒドの前記水性混合物中に存在するヒドロキシ基に対する前記(iv)無機塩基触媒中のヒドロキシ基の当量比が、0:1〜0.275未満:1であり、前記(iii)の尿素の量が、1モルのシクロヘキサンジカルボキシアルデヒド当たり0〜7.5モルである、実質的にホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー組成物。
【請求項3】
前記ジアルデヒドが、シス−1,3シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,3シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、シス−1,4シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,4シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、またはこれらの内のいずれか2種以上の混合物から選択されるシクロヘキサンジアルデヒドであり、レゾルシノールの存在下の水に溶解される請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記1種または複数種のジアルデヒドのアルデヒド等価基の数に対する前記レゾルシノールのヒドロキシル等価基の数の比率が、1:1〜4:1範囲である請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
有機溶剤を含む場合と含まない場合の水性または非水性系中に、(i)レゾルシノール、(ii)シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、グルタルアルデヒド、またはこれらの混合物から選択される1種または複数種のジアルデヒド、(iii)尿素、および(iv)無機塩基触媒を原料とするレゾルシノールジアルデヒド樹脂を含み、レゾルシノールおよびジアルデヒドの前記水性混合物中に存在するヒドロキシ基に対する前記(iv)無機塩基触媒中のヒドロキシ基の当量比が、0より大:1〜0.275未満:1であり、前記(ii)の1種または複数種のジアルデヒドがシクロヘキサンジカルボキシアルデヒドであるとき、前記(iii)の尿素の量が、1モルのシクロヘキサンジカルボキシアルデヒド当たり0より大〜7.5モルである、実質的にホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー組成物。
【請求項6】
有機溶剤を含む場合と含まない場合の水性または非水性系中に、(i)レゾルシノール、(ii)シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、グルタルアルデヒド、またはこれらの混合物から選択される1種または複数種のジアルデヒド、(iii)任意成分として尿素、および(iv)任意成分として無機塩基触媒を原料とするレゾルシノールジアルデヒド樹脂を含む実質的にホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー組成物であって、前記組成物が、エポキシ官能性加水分解性シランをさらに含み、レゾルシノールおよびジアルデヒドの前記水性混合物中に存在するヒドロキシ基に対する前記(iv)無機塩基触媒中のヒドロキシ基の当量比が、0:1〜0.275未満:1であり、前記(ii)の1種または複数種のジアルデヒドがシクロヘキサンジカルボキシアルデヒドであるとき、前記(iii)の尿素の量が、1モルのシクロヘキサンジカルボキシアルデヒド当たり0〜7.5モルである、実質的にホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー組成物。
【請求項7】
前記エポキシ官能性加水分解性シランが、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記バインダー組成物が、水性バインダー組成物またはバインダー組成物粉末である請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
実質的にホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー組成物を作製する方法であって、(i)レゾルシノール(ii)シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、グルタルアルデヒド、またはこれらの混合物から選択される1種または複数種のジアルデヒド、および(iii)任意成分として尿素の水性混合物を(iv)無機塩基触媒の存在下で反応させ、レゾルシノールジアルデヒド樹脂を形成することを含み、前記1種または複数種のジアルデヒドのアルデヒド等価基の数に対する前記レゾルシノールのヒドロキシル等価基の数の比率が、1:1〜4:1の範囲であり、レゾルシノールおよびジアルデヒドの前記水性混合物中に存在するヒドロキシ基に対する前記(iv)無機塩基触媒中のヒドロキシ基の当量比が、0より大:1〜0.275未満:1であり、前記(ii)の1種または複数種のジアルデヒドがシクロヘキサンジカルボキシアルデヒドであるとき、前記(iii)の尿素の量が、1モルのシクロヘキサンジカルボキシアルデヒド当たり0〜7.5モルである、方法。
【請求項10】
前記水性混合物が、前記(iii)尿素を必須成分として含み、前記(ii)の1種または複数種のジアルデヒドがシクロヘキサンジカルボキシアルデヒドであるとき、前記(iii)の尿素の量が1モルのシクロヘキサンジカルボキシアルデヒド当たり0より大で、かつ7.5モル以下である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルシノールジアルデヒド樹脂を含む熱硬化性水性バインダー組成物、および、水性バインダー組成物の作製と使用方法、ならびにミネラルウール繊維断熱材およびマット、木質複合材および樹脂コートプロパント、などの熱硬化製品に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール性樹脂は、不織ガラス繊維、および/またはストーンウールマットおよび木質複合材(OSBおよびベニヤ板構造用パネル)用のバインダーとして広く使用されている。現状、尿素ホルムアルデヒド(UF)またはフェノールホルムアルデヒド(PF)と原価性能ベースで競争できるホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー樹脂は存在しない。しかし、ホルムアルデヒドの発癌性物質としての分類が世界的に増加し、この分類を裏付ける証拠が増えてきたために、バインダー使用者は、このようなUFおよびPF熱硬化性バインダー樹脂の既知の用途に対する代替品の探索を続けることになった。
【0003】
いくつかの用途に有用なバインダーが望ましい。例えば、ストーンウール繊維は、市販断熱材製品に広範囲に使用されている。極めて基本的な事項としては、ストーンウール繊維には、硬化し、塩基性pH条件下で機能できるバインダーが必要である。別の例のハイドロフラクプロセスでは、オイルおよびガス坑井の洗浄または生産中の破壊時の逆流を最小限にするか、または防止するために硬化性樹脂コート砂が使われる。
【0004】
近年、米国特許公開第2007/0155944A号(Shoostari et al.)は、フェノール類およびジアルデヒドなどの多価アルデヒド(multialdehyde)および多価ケトン(multiketone)の反応から作られる硬化性樹脂を含むことができる硬化ベンゾヒドロ−ベンゾフランバインダーであるガラス繊維バインダーを開示している。しかし、このような材料は、過剰ジアルデヒドの反応生成物を含み、これは、ストーンウールのバインダーとして機能することは期待できないであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、アルカリ環境下で使用可能で、硬化時に強い機械的性質を与える材料を含み、ホルムアルデヒドを実質的に不含の多用途向けバインダーを提供するという課題を解決するために注力してきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明による実質的にホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー組成物は、(i)レゾルシノール、および(ii)シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、グルタルアルデヒド、またはこれらの混合物から選択される1種または複数種のジアルデヒドを原料とするレゾルシノールジアルデヒド樹脂を含む。
【0007】
2.上記1の本発明の組成物のジアルデヒドは、シス−1,3シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,3シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、シス−1,4シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,4シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、またはこれらの内のいずれか2種以上の混合物から選択されるシクロヘキサンジカルボキシアルデヒドである。
【0008】
3.上記1または2の内のいずれかの本発明の組成物では、1種または複数種のジアルデヒドのアルデヒド等価基の数に対するレゾルシノールのヒドロキシル等価基の数の比率は、1:1〜4:1、または、より好ましくは、1:1〜3:1の範囲である。
【0009】
4.上記1、2、または3の内のいずれかの本発明の組成物は、(i)レゾルシノール、(ii)1種または複数種のジアルデヒドおよび(iii)尿素を原料とするレゾルシノールジアルデヒド樹脂を含む。
【0010】
5.上記1、2、3、または4の内のいずれかの本発明の組成物は、エポキシ官能性加水分解性シラン、例えば、アルコキシシラン、好ましくは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランをさらに含む。
【0011】
6.上記1、2、3、4、または5の内のいずれかの本発明の組成物では、バインダー組成物は、水性バインダー組成物またはバインダー組成物粉末である。
【0012】
7.本発明の別の態様では、実質的にホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー組成物を作製する方法は、(i)レゾルシノールおよび(ii)シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、グルタルアルデヒド、またはこれらの混合物から選択される1種または複数種のジアルデヒドの水性混合物を硬塩基触媒の存在下で反応させてレゾルシノールジアルデヒド樹脂を形成することを含み、1種または複数種のジアルデヒドのアルデヒド等価基の数に対するレゾルシノールのヒドロキシル等価基の数の比率は、1:1〜4:1、より好ましくは、1:1〜3:1の範囲である。
【0013】
8.上記7の本発明の方法では、混合物は、(iii)尿素をさらに含む。
【0014】
9.上記8の本発明の方法では、水性混合物を反応において、(ii)1種または複数種のジアルデヒドの合計モル数に対する(iii)尿素のモル比率は、ジアルデヒドがグルタルアルデヒドを含む場合には、0:1〜10:1の範囲であり、1種または複数種のジアルデヒドがシクロヘキサンジアルデヒドを含む場合には、0:1〜4:1の範囲である。
【0015】
10.さらに別の本発明の態様では、熱硬化性バインダー組成物の使用方法は、上記1、2、3、4、または5の実質的にホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー組成物で基材を処理し、続けて、このように処理した基材または混合物を、例えば、100〜400℃で加熱し、バインダーを硬化することを含む。
【0016】
適切な基材には、繊維、スライバー、チップ、粒子、フィルム、シート、およびこれらの組み合わせを含めてもよい。基材の適切な材料には、例えば、ガラス、ガラス繊維、ストーンウール繊維、複合材料および複合材料繊維、または有機および無機基材、砂、石材、木材、もしくは木質材料を含めてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される語句の「水性」は、水および実質的に水と水混和性溶剤からなる混合物を含む。
【0018】
本明細書で使用される語句の「合計固形物をベースに」は、バインダー中の全ての非揮発性成分(例えば、レゾルシノールジアルデヒド樹脂、シランなど)の合計重量と比較していずれかの特定の成分の重量を意味する。
【0019】
本明細書で使用される語句の「乳剤ポリマー」は、水または水性溶剤と組み合わされた場合に、水性乳剤の分散相を形成するポリマーを意味する。
【0020】
本明細書で使用される語句の「等価基の数」は、特定の組成物中のこのような基、例えば、ヒドロキシル基のモル数を意味する。従って、1モルのレゾルシノールは、2個のヒドロキシル等価基を持つ。
【0021】
本明細書で使用される用語の「硬塩基触媒」は、いずれかの無機の塩基、例えば、アルカリおよびアルカリ土類水酸化物、好ましくは、NaOHまたはKOHを意味する。
【0022】
本明細書で使用される語句の「実質的にホルムアルデヒド不含の」は、フェノールホルムアルデヒド樹脂などの添加されたホルムアルデヒドを含まない組成物を意味し、この組成物は、乾燥および/または硬化の結果として実質的にホルムアルデヒドを遊離しない。好ましくは、このようなバインダーまたはバインダーを含む材料は、バインダーの乾燥および/または硬化の結果として、100ppm未満のホルムアルデヒド、より好ましくは、50ppm未満、最も好ましくは、25ppm未満のホルムアルデヒドを遊離する。
【0023】
本明細書で使用される「wt%」または「wtパーセント」は、固形物をベースにした重量パーセントを意味する。
【0024】
本明細書で使用される語句の「合計バインダー固形物をベースに」は、バインダー中の全ての非揮発性成分の合計重量(例えば、樹脂、シラン、難燃剤、乳化共重合体、反応性防水剤、など)と比較して、いずれかの特定の成分の重量を意味する。
【0025】
文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、単数形の「a」、「an」、および「the」は、複数参照物を含む。特に断らなければ、本明細書で使われる技術的および科学的用語は、当業者により通常理解されているのと同じ意味を有する。
【0026】
特に指示がない限り、括弧を含むいずれの用語も、あたかも括弧が存在しないかのように、および括弧内に入っている用語がないかのように、さらにそれぞれの代替用語の組み合わせを、それぞれ、別の選択肢として、意味する。従って、用語の「(メタ)アクリラート」は、選択肢として、メタクリラート、またはアクリラート、またはこれらの混合物を包含する。
【0027】
同じ成分または性質を対象とする全ての範囲の両端点は、端点を含み、独立に結合可能である。従って、例えば、1:1〜4:1、または、好ましくは、1.2:1〜3:1、または、より好ましくは、1.5:1〜3:1の比率の開示範囲は、1:1〜4:1、1:1〜1.2:1、1:1〜3:1、好ましくは、1.2:1〜3:1、1.2:1〜4:1、より好ましくは、1.5:1〜3:1、1.5:1〜4:1、1:1〜1.5:1、1:1〜1.2:1、1.2:1〜1.5:1、および3:1〜4:1のいずれかおよび全てを意味する。
【0028】
特に指示がない限り、温度および圧力の条件は、室温および標準的圧力であり、「室温条件」とも呼ばれる。水性バインダー組成物は、室温条件以外の条件下で乾燥してもよい。
【0029】
本発明によれば、レゾルシノールジアルデヒドから作られる熱硬化バインダー樹脂は、複合材料産業で使われるホルムアルデヒドベースバインダーに対する実質的にホルムアルデヒド不含の代替物を与える。レゾルシノールジアルデヒド樹脂は、多用途向きで、安価であり、また、繊維複合材料、不織布およびプロパント用コーティングのためのバインダーを提供できる。上記で定義のように、樹脂は、実質的にホルムアルデヒド不含であるために、加えられたフェノールホルムアルデヒド樹脂をほとんど、または全く含まないということになる。尿素の追加により、この化学製品はフェノールホルムアルデヒド樹脂に対しさらにコスト競争力のある、例えば、不織ガラス繊維産業で使われるものになる。実際、合計樹脂固形物ベースで1wt%のシランを加えるだけで、硬化熱硬化樹脂は、高温湿潤(hot−wet)条件に暴露後、常態引張特性の90%の高い保持率を示す。
【0030】
実質的にホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー組成物中に、高温湿潤引張強度の保持を損なわない量の尿素を加えてもよい。意外にも、発明者らは、グルタルアルデヒドがジアルデヒドとして使用される場合、高温湿潤引張強度を損なうことなく、より多くの尿素を使ってレゾルシノールジアルデヒド樹脂を増量できることを発見した。
【0031】
本発明のグルタルアルデヒドを含む実質的にホルムアルデヒド不含のレゾルシノールジアルデヒド樹脂バインダー組成物では、組成物は、1モルのグルタルアルデヒド当たり0〜12モルの尿素、または、好ましくは、1モルのグルタルアルデヒド当たり0〜10モルの尿素、または、より好ましくは、1モルのグルタルアルデヒド当たり0〜6モルの尿素を含んでもよい。組成物が1モルのグルタルアルデヒド当たり10モル以上の尿素を含む場合、組成物は0.1〜1.5wt%の本発明のシランをさらに含む。
【0032】
本発明の実質的にホルムアルデヒド不含のレゾルシノールジアルデヒド樹脂バインダー組成物では、1モルのシクロヘキサンジカルボキシアルデヒド当たり0〜7.5モルの尿素を使用でき、または、好ましくは、1モルのシクロヘキサンジカルボキシアルデヒド当たり0〜5モルの尿素を使用できる。
【0033】
本発明のレゾルシノールジアルデヒド樹脂の作製に使用される1種または複数種のジアルデヒドは、3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒドを作るための1,3−ブタジエンおよびアクロレインの付加生成物を含んでもよい。例えば、米国特許第6,252,121号で開示されているように、この生成物は、一酸化炭素、水素、および金属−有機リン化合物リガンド錯体触媒の存在下でヒドロホルミル化され、1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物が生成される。
【0034】
本発明の実質的にホルムアルデヒド不含のレゾルシノールジアルデヒド樹脂の作製方法では、レゾルシノールおよびジアルデヒドの水性混合物中に存在するヒドロキシ基に対する塩基触媒中のヒドロキシ基の当量比は、0:1〜0.28:1であってもよく、0.28:1より小さい方が好ましい。使われる触媒の量は、バインダー組成物のゲル化時間に逆比例し、ゲル化時間後、組成物は使用に適さなくなる。ゲル化時間は、貯蔵または輸送のために遅らせることができる。少なくとも3日間のゲル化時間が許容可能であり、ゲル化が起こらないのが好ましい。
【0035】
本発明の実質的にホルムアルデヒド不含のレゾルシノールジアルデヒド樹脂の作製方法では、水性混合物の反応の温度は、0℃〜99℃、好ましくは、20℃〜80℃の範囲であってもよい。
【0036】
本発明の実質的にホルムアルデヒド不含のレゾルシノールジアルデヒド樹脂の作製方法では、レゾルシノールジアルデヒド樹脂生成物は、乾燥して非粘着性粉末または細かく粉砕された材料の形態にしてもよい。
【0037】
本発明のバインダー組成物では、1種または複数種の加水分解性エポキシシラン化合物を加えて湿潤時の機械的性質の保持を確実にする。このような化合物には、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含めてもよい。
【0038】
加水分解性エポキシシランの量は、合計樹脂組成固形物ベースで、0.1〜2.5wt%、または、好ましくは、0.3〜1.5wt%、または、より好ましくは、0.9wt%以上の範囲であってもよい。
【0039】
好ましくは、フレキシブルなバインダーにするために、熱硬化性バインダー組成物は、乳剤ポリマーをさらに含む。適切な乳剤ポリマーには、重合単位として、共重合モノマーの合計重量をベースに、30wt%まで、好ましくは、1〜20wt%、または、好ましくは、10〜18wt%の重合酸コモノマーを含むアクリル乳剤、乳剤ポリマー固形物の重量をベースに、30重量%を超えるC以上のアルキル基を含むエチレン性不飽和アクリルモノマー、およびアクリルまたはスチレンアクリル乳剤ポリマーを含む疎水性乳剤ポリマーを含めてもよい。乳剤ポリマーの作製に使われる適切な酸コモノマーには、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、a,b−メチレングルタル酸、モノアルキルマレアート、およびモノアルキルフマラート;エチレン性不飽和無水物、例えば、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、アクリル酸無水物、およびメタクリル酸無水物;ならびにこれらの塩を含めてもよい。(メタ)アクリル酸が好ましいカルボキシ酸コモノマーである。
【0040】
乳剤ポリマーは、合計バインダー組成固形物ベースで、1wt%以上の量、または、5wt%以上の量、または、30wt%の量まで、または10wt%の量まで組成物中に存在してもよい。
【0041】
本発明の実質的にホルムアルデヒド不含のバインダー組成物は、限定されないが、ポリアクリル酸などの重合ポリ酸水溶液ポリマー;流動支援のための界面活性剤(シリコーン、脂肪酸);殺生物剤;例えば、トリアゾールおよびリン酸塩化合物、シュウ酸スズ、チオウレア、オキザラート、クロマート、およびpH調整剤などの腐食防止剤または金属表面用不動態化剤;潤滑剤;例えば、ミネラルオイルなどの脱塵油;ジメチコン、シリコンポリマー(ポリシロキサン)油およびエトキシ化非イオン性物質などの消泡剤;ならびにブロミド難燃剤(デカブロモジフェニルオキシド/アンチモントリオキシド)のような難燃剤などの当技術分野で既知の他の添加物をさらに含んでもよい。このような添加物のいずれも、ホルムアルデヒド不含であるか、またはバインダー形成、適用もしくは硬化中にホルムアルデヒドを含まないか、もしくは生成しないのが好ましい。
【0042】
本発明の実質的にホルムアルデヒド不含の熱硬化性バインダー組成物は、バインダー組成物の合計重量をベースに、25〜100wt%、好ましくは、40〜95wt%以上、または、好ましくは、90wt%以下の合計固形物を含んでもよい。少なくとも部分的に水和していたとしても、粉末は100%固形物を含む。
【0043】
本発明の実質的にホルムアルデヒド不含のレゾルシノールジアルデヒド樹脂の作製方法で、レゾルシノールジアルデヒド樹脂の溶融物は、100wt%固形物で使用できる。
【0044】
本発明は、実質的にホルムアルデヒド不含のバインダーの使用方法を提供し、この方法は、バインダー組成物を基材に適用すること、および硬化することを含む。水性バインダー組成物であるから、硬化には乾燥が含まれる。硬化性組成物の硬化では、持続期間、および加熱温度が、乾燥速度、処理または取扱いの容易さ、および処理基材の特性の発現に影響を与えるであろう。適切な熱処理温度は、150℃以上で、400℃までの範囲であってもよい。好ましい処理は、基材に依存する。セルロース繊維などの熱的に敏感な基材は、硬化を行うのに必要な時間の間、130〜175℃で処理でき、一方、熱的な敏感さがより少ない複合材料は、150〜200℃で処理でき、さらに、鉱物繊維などの耐熱性の基材は、220〜300℃で処理できる。砂または他のプロパントは、120〜220℃で処理できる。
【0045】
水を含まない本発明のレゾルシノールジアルデヒド樹脂の溶融物は、25℃以上の温度で、400℃の温度まで使用できる。
【0046】
本発明の実質的にホルムアルデヒド不含のバインダー組成物をプロパントのコートに使う方法では、方法は、プロパント基材を予備加熱すること、予備加熱されたプロパント基材を作製すること、および60秒〜10分、または、好ましくは、5分以下の時間、攪拌しながらバインダー組成物をプロパント基材に適用すること、を含む。シランは、処理中に加えてもよく、または樹脂を加える前に樹脂中に存在させてもよい。
【0047】
好ましくは、実質的にホルムアルデヒド不含のバインダー組成物を予備加熱プロパント基材にコートするための使用方法は、バインダー組成物を攪拌しながらプロパント基材に添加する2つ以上の段階を含み、第一段階では、シランをバインダー組成物中に加え、第1段階に続く第2またはその後の段階では、バインダー組成物にシランを加えない。第1段階は、15秒〜2分を要してもよい。
【0048】
本発明のバインダー組成物は、基材、例えば、エアまたはエアレススプレー、静電スプレー、流動床装置、パディング、含浸、ロールコーティング、カーテンコーティング、ビーターディポジッション、凝固または浸漬と圧搾塗布などのいずれかの適切な手段により繊維ウエブに適用し、支持ワイヤまたはスクリーン上に生成した飽和湿潤ウエブを1個または複数個の真空ボックス上を通して完全にバインダーを除去し、生成物または処理基材中の所望のバインダー含量を得ることができる。
【0049】
バインダーの適用に際しては、基材に対するバインダー付与レベルは、最終基材の、3wt%以上、または10wt%以上、または60wtパーセントまで、好ましくは、硬化前の処理乾燥基材の合計重量をベースにして、12wt%以上、または、最も好ましくは、15〜25wt%の範囲であってもよい。
【0050】
バインダー適用のための適切な基材には、例えば、鉱物繊維、例えば、ガラスおよび鉱物繊維、スラグまたはストーンウール、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、ならびにこれらから作られた織物および不織布;砂および砕石などの細粉砕無機材料、ならびに、無垢材、木材粒子、繊維、チップ、パルプおよび削片、紙および段ボールを含む木材などの熱感受性基材が挙げられる。
【0051】
本発明のバインダーは、好ましくは、不織ウエブの処理に使用できる。「不織ウエブ」は、機械的な手段、例えば、ニードルパンチング、スパンボンディング、スパンレースウエブ、メルトブローウエブ、エアレイド(乾式)プロセスにより引き起こされる絡み合わせによるか、および湿式プロセスによるか、および/または、例えば、高分子バインダーでの処理などの化学手段によるか、またはこれらの組み合わせにより、天然、および/または合成繊維から作られたいずれかの物品またはシート様形式物を意味し、繊維は、ランダムまたは半ランダムに整列されている(すなわち、故意には整列されていない)。
【0052】
本発明のバインダーのためのいくつかの適切な使用には、例えば、非構造複合材料および屋内家具用の積層体の作製、整形および成形;ならびに濾材などの紙、板紙および段ボールのウエットエンド形成およびドライエンド処理またはコーティング;ならびに織物と不織布、例えば、ガラス繊維およびストーンウール断熱材詰綿、ポリエステルおよびスパンボンデッド屋根こけら板、下敷とスクリム、および空気およびオイルフィルターなどの瀘材の作成と処理が含まれる。
【0053】
別の態様では、本発明は、本発明の実質的にホルムアルデヒド不含のバインダー組成物をそれに適用して得られた硬化バインダーを含む処理基材、例えば、繊維マットを含む。好ましくは、繊維マットの密度は、5〜220(kg/m)である。
【0054】
実施例
次の実施例は、本発明をさらによく説明するのに役立つが、本発明を実施例に限定する意図はない。
【0055】
バインダー調製:マグネチックスターラを備えた250mlのビーカーに、所望の量のレゾルシノール(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を脱イオン水に溶解した。組成物が尿素を含む場合は、この時点で所望の量の尿素を攪拌下で加える。反応の吸熱特性のために溶液を冷却する場合が多いので、十分な時間(約10〜15分)をかけて溶液を室温まで暖める。表1に示されるレゾルシノールの重量をベースに、約10wt%(レゾルシノールOHに対する塩基の当量比=0.07:1)の50%水酸化ナトリウム水溶液(Sigma Aldrich)を、所望の量の3−(グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(Sigma Aldrich)と共に攪拌を加えながら添加した。混合の5〜10分後、下表1に示すジアルデヒドの量を攪拌しながら添加した。
【0056】
ガラスマイクロファイバー濾紙の処理および引張試験:上記バインダー組成物調製方法で記載のように成分を混合することにより下表1に示すバインダーを調製して、30wt%の固形物の水溶液を得た。
【表1】
【0057】
試験方法:以下の試験方法を使用して本発明のバインダー組成物を評価した。
【0058】
引張試験:120グラムの30wt%バインダー組成物水溶液を満たした水槽を介してフィルターシートを吸引することにより、20.3cmx25.4cmのシート形状のバインダー含浸マイクロファイバーフィルター(Whatman International Inc.,Maidstone,England,GF/A,catalog No.1820866)を調製した。2枚の段ボールシートの間に含浸シートを挟んで過剰バインダーを吸収し、Birch Bros.のPadderを使って、68.9476kPa/速度:5m/分で、2枚の段ボールシート間を加圧した。得られた試料を、排気されているか、またはデボラティライザーを備えたMathis Oven中、90℃で90秒乾燥した。その後、乾燥シートを、試料乾燥に使ったものと同じタイプのMathisオーブン中、210℃で180秒間硬化した。硬化後、重量を測定し、バインダー付加量(add on)(濾紙重量のパーセンテージとしての硬化バインダー重量)を計算した。「付加量」は、硬化後、フィルターシートに保持されているバインダー固形物のwt%(フィルターシート重量をベースにした)である。
【0059】
硬化シートから、2.54cm(1インチ)(機械方向に垂直方向)×10.16cm(4インチ)(機械方向)の試験片を切り出し、Thwing−Albert Intelect 500引張試験機を使い、機械方向の引張強度の試験を行った。引張試験固定具の間隔を5.08cm(2インチ)とし、引張速度を2.54cm(1インチ)/分とした。「そのまま」(常態引張(Dry Tensile))または80℃の水中10分浸漬直後(10分高温湿潤引張(Hot Wet Tensile))に、試験片を試験した。引っ張っている間に測定されるピークの応力として引張強度を記録し、ニュートンで表した。報告データは10個の試験片の平均値であり、下表2、3、および4に示す。
【0060】
許容可能な常態引張強度は、25N超である。好ましい常態引張強度は、45N超である。許容可能な湿潤引張強度は、3N超、または、好ましくは、6N超である。許容可能な引張強度保持率(湿潤/常態)は、10%超、または3N以上の絶対値である。好ましい引張強度保持率(湿潤/常態)は、30%超である。
【0061】
硬化後重量を測定して、バインダー付加量(濾紙重量のパーセンテージとしての硬化バインダー重量)を計算した。「付加量」は、硬化後フィルターシートに残っているバインダー固形物のwt%(フィルターシート重量をベースにして)である。
【0062】
下表中で使用した略号:Glut:グルタルアルデヒド、Phthal:フタル酸ジアルデヒド;CHDA:シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド。
【表2】
【表3】
【表4】
【0063】
上表2、3および4に示すように、尿素の量が本発明の限度を超えない限り、および/または尿素の有害な影響に対抗するためのシランの量が不十分でない限り、本発明の実質的にホルムアルデヒド不含のバインダー組成物は全て、湿潤時に、少なくとも10wt%のそれらの常態引張強度を保持するか、または許容可能な高温湿潤強度を与える。1モルのジアルデヒド当たり4モルの尿素を含む実施例17のレゾルシノールジアルデヒド樹脂は、本発明の組成物の特性の下限値よりわずかに低い特性を示す。
【0064】
実施例1〜36の全てのバインダー組成物で、レゾルシノールの量をベースにして、触媒の量は、約5wt%のNaOH(またはヒドロキシ基に対する塩基触媒中のヒドロキシ基の当量比で、実施例3のように、0.069:1)に維持された。「ゲル化時間」は、室温で全成分添加後にハードゲル形成までに要する時間と定義される。許容可能ゲル化時間は、作られた後で直接使われるバインダー組成物に対しては30分以上、および、出荷されるバインダー組成物に対しては2週間以上である。下表5は、塩基の量とゲル化時間との間の関係を示す。有機溶剤の添加によりゲル化時間を増やすことができる。
【表5】
【0065】
上表5に示すように、レゾルシノールの合計固形物重量をベースにして、20wt%(またはヒドロキシ基に対する塩基触媒中のヒドロキシ基の当量比で0.275:1)未満の塩基が望ましく、10wt%(またはヒドロキシ基に対する塩基触媒中のヒドロキシ基の当量比で0.138:1)未満の塩基が好ましい。