(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る硬貨処理装置を図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る硬貨処理装置は、機外から投入されたバラ硬貨を設定金種の硬貨であるか否か識別しつつ設定金種の硬貨を計数し、さらに設定金種の硬貨とそれ以外の硬貨とを分類する硬貨処理装置である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る硬貨処理装置1は、外部からバラ硬貨が投入される硬貨投入繰出部10を有している。
【0013】
硬貨投入繰出部10は、水平に配置された回転円盤12と、この回転円盤12の外縁部から鉛直に立ち上がる、一部が切り欠かれた略円筒状の筒状壁13と、回転円盤12との間に硬貨一枚分の隙間をもって筒状壁13の切欠部分に設けられた分別環14とを有している。回転円盤12は、
図2に示す回転円盤モータ15により駆動されて回転する。
【0014】
硬貨投入繰出部10には、機外からバラ硬貨が投入される。この状態で回転円盤12が
図1における反時計回りに回転すると、その遠心力によって硬貨が筒状壁13の内周面に沿って運ばれる。さらに硬貨は、回転円盤12と分別環14との隙間を介して一枚ずつ分離されて硬貨投入繰出部10から外に順次繰出される。
【0015】
硬貨投入繰出部10の硬貨繰出位置には、硬貨投入繰出部10から繰り出された硬貨を一列状に案内する搬送路20と、搬送路20上の硬貨を搬送するフィードユニット21とを有する搬送部22が設けられている。
【0016】
搬送路20は、回転円盤12の接線方向に沿って配置された搬送路部23と、この搬送路部23の回転円盤12とは反対側から直交方向に延出する搬送路部24とを有している。搬送路部23には、搬送中の硬貨の金種を識別しつつ計数する識別部27が設けられている。
【0017】
搬送路部24には、硬貨を落下可能であり落下した硬貨を機外に取出可能に案内するリジェクト口28と、識別部27で識別不能と識別された硬貨をリジェクト口28に落下させるリジェクト部29とが設けられている。リジェクト部29はリジェクトソレノイド30によって駆動される。リジェクト口28から落下した硬貨は、リジェクト箱31に収容され、リジェクト口28から落下しなかった硬貨は、搬送路部24の端末位置からリジェクト箱31とは別の受入箱32に収容される。
【0018】
フィードユニット21は、搬送ベルト35とこれを駆動する
図2に示すフィードモータ36とを有しており、搬送ベルト35が、硬貨投入繰出部10から繰り出された硬貨を上側から搬送路20に押し付けて搬送する。この搬送中、硬貨は、設定された金種の硬貨か否かが識別部27で識別され、設定された金種の硬貨については識別部27で計数が行われることになる。設定された金種以外であると識別部27で識別された硬貨は、リジェクト部29によってリジェクト口28からリジェクト箱31に落下させられることになり、設定された金種であると識別部27で識別された硬貨は、搬送路部24の端末位置から受入箱32に落下させられることになる。
【0019】
搬送路部23において硬貨搬送方向に対して直交する水平方向を通路幅方向とすると、搬送路部23は、上面の搬送面40が水平に配置されて回転円盤12の接線方向に直線状に延びる通路部41と、通路部41の通路幅方向一方側に設けられて通路部41と同方向に延びるガイド壁45と、通路部41の通路幅方向他方側に設けられて通路部41と同方向に延びるガイド壁46,47,48とを有している。
【0020】
一方のガイド壁45は通路部41に対して位置固定であり、他方のガイド壁46〜48のうち硬貨搬送方向両側のガイド壁46,48も通路部41に対して位置固定となっている。ガイド壁46〜48のうち硬貨搬送方向中間のガイド壁47は、通路部41に対し通路幅方向に移動可能となっている。ガイド壁45のガイド壁46,47,48側の壁面45aと、ガイド壁46,47,48のガイド壁45側の壁面46a,47a,48aとが平行をなして対向しており、これら壁面45a,46a,47a,48aは、搬送面40に対し垂直に立ち上がっており、硬貨搬送方向に沿っている。
【0021】
通路部41は、硬貨投入繰出部10から繰り出された硬貨の下面を搬送面40で支持してその移動を案内することになり、ガイド壁45およびガイド壁46,47,48はその際に硬貨が一列状に並ぶように硬貨の外周面を壁面45aおよび壁面46a,47a,48aで案内する。
【0022】
ガイド壁47は、硬貨搬送方向および上下方向の位置はそのままで、硬貨搬送方向に対し直交する水平方向つまり通路幅方向に移動可能となっており、壁面47aが壁面45aと平行をなす状態のまま、壁面45aに対し近接および離間するように往復移動する。ガイド壁47は、ガイド壁駆動部51によって通路幅方向に移動し金種に応じた位置に停止させられる。つまり、ガイド壁駆動部51は、ガイド壁47を移動させる
図2に示すガイド壁モータ52とガイド壁47の位置を検出するエンコーダ等の位置検出センサ53とを有している。
【0023】
図3に示すように、ガイド壁47には、壁面47aの位置に、位置センサ55が検出方向をガイド壁45側に向けて一体に設けられており、この位置センサ55が硬貨搬送方向の位置が合う硬貨Cの外周面における対向部分の通路幅方向の位置を検出する。この位置センサ55は、例えば光学反射型のセンサであり、硬貨搬送方向の位置が合って対向する硬貨Cの外周面との距離を検出する。
【0024】
ガイド壁47には、壁面47aよりも上側の位置に、ガイド壁45側に突出する突出部56が設けられており、この突出部56には、位置センサ55と硬貨搬送方向の位置を合わせて、上記した識別部27を構成する材質センサ57が一体に設けられている。材質センサ57は検出方向を下方つまり搬送面40に向けており、下方を通過する硬貨Cの外周部の磁気的性質を検出する。
【0025】
ガイド壁45には、壁面45aの位置に、位置センサ55と硬貨搬送方向の位置を合わせて位置センサ60が検出方向をガイド壁47側に向けて一体に設けられている。この位置センサ60が硬貨搬送方向の位置が合う硬貨Cの外周面における対向部分の通路幅方向の位置を検出する。この位置センサ60は、例えば光学反射型のセンサであり、硬貨搬送方向の位置が合って対向する硬貨Cの外周面との距離を検出する。
【0026】
ガイド壁45には、壁面45aよりも上側の位置に、ガイド壁47側に突出する突出部61が設けられており、この突出部61には、位置センサ60と硬貨搬送方向の位置を合わせて、上記した識別部27を構成する材質センサ62が一体に設けられている。材質センサ62は検出方向を下方つまり搬送面40に向けており、下方を通過する硬貨の外周部の磁気的性質を検出する。
【0027】
位置センサ55および材質センサ57は硬貨搬送方向に見て左側に配置されており、位置センサ60および材質センサ62は硬貨搬送方向に見て右側に配置されている。材質センサ57,62が対をなしており、これら一対の材質センサ57,62は、通路幅方向に間隔をあけて設けられて搬送部22で搬送中の硬貨Cの材質を検出する。位置センサ55,60も対をなしており、これら一対の位置センサ55,60は、通路幅方向に間隔をあけて設けられて搬送部22で搬送中の硬貨Cの通路幅方向の位置を検出する。一対の材質センサ57,62と一対の位置センサ55,60とは、硬貨搬送方向の位置を合わせて設けられており、言い換えれば、上方から見て、硬貨搬送方向に直交する同一直線上に配置されている。
【0028】
硬貨処理装置1は、
図2に示すように、操作者の操作入力を受け付ける操作部70と、操作者に向けて表示を行う表示部71と、制御部(補正手段,識別手段)72と、記憶部73とを有している。この硬貨処理装置1は、複数金種の中から選択された一金種が計数対象金種に設定され、この計数対象金種に対応する通路幅に搬送部22の互いに対向するガイド壁45,47の間隔を調整し、これらガイド壁45,47の間で硬貨Cを搬送しつつこの計数対象金種の硬貨であるか否かを材質センサ57,62で識別しつつ計数を行って、この計数対象金種の硬貨を受入箱32に、計数対象金種以外の硬貨をリジェクト箱31に振り分けるものである。
【0029】
硬貨処理装置1が待機状態にあるとき、制御部72は、表示部71に計数対象金種の入力を促す表示を表示させており、これを見て、操作者が操作部70に計数対象金種を選択入力する。つまり、操作部70が計数対象金種の選択入力を受け付ける。具体的に、操作部70には、第1金種,第2金種,…の複数金種が選択可能となっており、操作部70が例えば第1金種の選択入力を受け付けると、制御部72は、一の識別計数処理(識別処理)を開始したと判断して、記憶部73から第1金種のガイド壁47の配置位置データを読み出す。以下、このように第1金種が選択された場合を例にとり説明する。
【0030】
制御部72は、現在のガイド壁47の配置位置データが、記憶部73から読み出した配置位置データと一致する場合は、そのままとし、現在のガイド壁47の配置位置データが、記憶部73から読み出した配置位置データと一致しない場合は、ガイド壁駆動部51のガイド壁モータ52を駆動して、配置位置データが位置検出センサ53で検出されるようにガイド壁47を移動させて停止させる。これにより、ガイド壁47が計数対象金種の外径に応じた位置に配置される。つまり、搬送部22は、操作部70への金種の選択入力に応じた通路幅に調整される互いに対向するガイド壁45,47を有している。ただし、ガイド壁45,47の通路幅は設定値に対し誤差を含んでいる。
【0031】
次に、制御部72は、表示部71に硬貨投入繰出部10への硬貨の投入および操作部70へのスタート操作の入力を促す表示を行う。これを見て操作者は、硬貨投入繰出部10へ硬貨を投入し、操作部70にスタート操作を行う。
【0032】
操作部70がスタート操作を受け付けると、制御部72は、回転円盤モータ15およびフィードモータ36を駆動する。すると、回転円盤12が回転し、その遠心力によって硬貨が筒状壁13の内周面に沿って運ばれ、回転円盤12と分別環14との隙間を介して一枚ずつ分離されて硬貨投入繰出部10から外に順次繰出される。硬貨投入繰出部10から順次繰出された硬貨は、搬送部22のガイド壁45とガイド壁46,47,48と搬送面40とで一列状に案内されながら、搬送部22のフィードユニット21の搬送ベルト35で下流側に搬送される。つまり、搬送部22は、搬送路20のガイド壁45とガイド壁46,47,48との間で硬貨Cを搬送する。
【0033】
制御部72は、一の識別計数処理の開始を判断した後、1枚目の硬貨を一対の位置センサ55,60および一対の材質センサ57,62が検出すると、一対の材質センサ57,62が検出した材質検出データに基づいてこの1枚目の硬貨を識別する。つまり、この1枚目の硬貨を一対の材質センサ57,62が検出した材質検出データを記憶部73に記憶された第1金種用のデータ許容範囲と比較する。この材質検出データが第1金種用のデータ許容範囲内にあれば、1枚目の硬貨が第1金種の硬貨であると判断して、計数値を1とするとともに、この1枚目の硬貨の一対の位置センサ55,60が検出した位置検出データをこの一の識別計数処理の基準データとして記憶部73に記憶し、この1枚目の硬貨についてはリジェクト口28から落下させずに搬送部22の末端位置から受入箱32に落下させる。
【0034】
他方、制御部72は、材質センサ57,62が検出した材質検出データが第1金種用のデータ許容範囲内になければ、表示部71にエラーを表示させて回転円盤モータ15を停止させて硬貨投入繰出部10の回転円盤12を停止させるとともに、硬貨投入繰出部10から搬送路20に繰り出されている硬貨をすべて、搬送ベルト35で搬送して、リジェクト部29でリジェクト口28からリジェクト箱31に落下させる。制御部72は、搬送路20に繰り出された硬貨をすべてリジェクト口28から落下させるのに必要な時間が経過すると、フィードモータ36を停止させて搬送ベルト35を停止させる。
【0035】
一の識別計数処理において、1枚目の硬貨が第1金種の硬貨であると判断した後、2枚目の硬貨を一対の位置センサ55,60および一対の材質センサ57,62が検出すると、制御部72は、一対の位置センサ55,60の位置検出データに基づいて一対の材質センサ57,62の材質検出データを補正する。つまり、上記のように1枚目の硬貨について一対の位置センサ55,60が検出した位置検出データであるこの一の識別計数処理の基準データと、2枚目の硬貨について一対の位置センサ55,60が検出した位置検出データとに基づいて2枚目の硬貨についての一対の材質センサ57,62の検出データを補正する。
【0036】
具体的には、材質センサ57,62は、いずれも硬貨が離れるほど材質検出データ(電圧値)が高くなり、位置センサ55,60は、いずれも硬貨が離れるほど位置検出データ(電圧値)が高くなるため、位置検出データが高ければ材質検出データを低くするように補正する。
【0037】
具体的には、1枚目の硬貨について、一方の位置センサ55が検出した位置検出データをx0とし他方の位置センサ60が検出した位置検出データをy0として、基準値b=y0+x0を求める。そして、2枚目の硬貨については、一方の位置センサ55が検出した検出データをxとし他方の位置センサ60が検出した検出データをyとして算出値a=y/xを算出する。
【0038】
この算出値aと基準値bとから、difx=x−b/(a+1)と、dify=y−a*b/(a+1)とを算出して、一方の位置センサ55と通路幅方向同側にある一方の材質センサ57の材質検出データDxからdifxを減算し、他方の位置センサ60と通路幅方向同側にある他方の材質センサ62の材質検出データDyからdifyを減算する補正を行う。
【0039】
つまり、
図4に示すように、1枚目の硬貨について、位置センサ55が検出した位置検出データx0と位置センサ60が検出した位置検出データy0とをXY座標系にプロットして、この点を通るy=−x+bを求め、2枚目の硬貨について、位置センサ55が検出した位置検出データx2と位置センサ60が検出した位置検出データy2とをプロットして、この点(x2,y2)を通るy=axを求め、これらの線が交わる点(x1,y1)を求めて、補正値であるdifx=x2−x1、dify=y2−y1を求め、一方の位置センサ55と同側にある一方の材質センサ57の材質検出データDxからdifxを減算し、他方の位置センサ60と同側にある他方の材質センサ62の材質検出データDyからdifyを減算する補正を行う。
【0040】
そして、補正された材質検出データに基づいてこの2枚目の硬貨を識別する。つまり、補正された材質検出データを記憶部73に記憶された第1金種用のデータ許容範囲と比較する。この補正後の材質検出データが第1金種用のデータ許容範囲内にあれば、2枚目の硬貨が第1金種の硬貨であると判断して、計数値を1加算して2とし、この2枚目の硬貨についてはリジェクト口28から落下させずに搬送部22の端末位置から受入箱32に落下させる。他方、制御部72は、補正後の材質検出データが第1金種用のデータ許容範囲内になければ、2枚目の硬貨については、計数することなくリジェクト部29でリジェクト口28からリジェクト箱31に落下させる。
【0041】
一の識別計数処理において、一対の位置センサ55,60および一対の材質センサ57,62が検出した3枚目以降の硬貨については、制御部72が、上記した2枚目の硬貨と同様に材質検出データを補正し補正後の材質検出データに基づいて識別する。制御部72は、一の識別計数処理において、一対の位置センサ55,60および一対の材質センサ57,62が硬貨を検出しない時間が所定時間経過すると、表示部71に計数値を表示させて回転円盤モータ15を停止させて硬貨投入繰出部10の回転円盤12を停止させるとともに、硬貨投入繰出部10から搬送路20に繰り出されている硬貨がすべてリジェクト口28または搬送部22の端末から落下するのに必要な時間が経過すると、フィードモータ36を停止させて搬送ベルト35を停止させて、一の識別計数処理が終了したと判断する。
【0042】
以上に述べた本実施形態の硬貨処理装置1によれば、通路幅方向に間隔をあけて設けられて搬送部22で搬送中の硬貨の材質を検出する一対の材質センサ57,62と、通路幅方向に間隔をあけて設けられて搬送部22で搬送中の硬貨の通路幅方向の位置を検出する一対の位置センサ55,60とが硬貨搬送方向の位置を合わせて設けられており、制御部72が一対の位置センサ55,60の検出データに基づいて一対の材質センサ57,62の検出データを補正し、この補正されたデータに基づいて硬貨を識別する。これにより、搬送部22の通路幅を調整可能であって調整精度が十分でない場合であっても識別精度の低下を抑制することが可能となる。
【0043】
また、制御部72は、一の識別計数処理において、1枚目の硬貨について一対の位置センサ55,60が検出した検出データを基準データとするため、搬送部22の調整後の通路幅で実際に搬送された硬貨の検出データを基準データとすることができる。よって、基準データが実際の通路幅に則したものとなり、識別精度の低下を一層抑制することが可能となる。
【0044】
また、1枚目の硬貨について、一方の位置センサ55が検出した位置検出データx0と他方の位置センサ60が検出した位置検出データy0とから、基準値b=y0+x0を求め、2枚目以降の硬貨については、それぞれ、一方の位置センサ55が検出した検出データxと他方の位置センサ60が検出した検出データyとから算出値a=y/xを算出するとともに、算出値aと基準値bとから、difx=x−b/(a+1)と、dify=y−a*b/(a+1)とを算出して、一方の材質センサ57の材質検出データDxからdifxを減算し、他方の材質センサ62の検出データDyからdifyを減算する補正を行う。よって、材質センサ57,62の検出データを比較的簡単かつ適正に補正することができる。
【0045】
なお、一対の位置センサ55,60の位置検出データに基づいて一対の材質センサ57,62の材質検出データを補正する方式は、以下の方式を採用することも可能である。
【0046】
1枚目の硬貨について、一方の位置センサ55が検出した位置検出データをx0とし他方の位置センサ60が検出した位置検出データをy0として、基準値b=y0+x0を求める。そして、2枚目の硬貨については、一方の位置センサ55が検出した検出データをxとし他方の位置センサ60が検出した検出データをyとして算出値c=y−xを算出する。
【0047】
この算出値cと基準値bとから、difx=x−(b−c)/2と、dify=y−(b+c)/2とを算出して、一方の位置センサ55と通路幅方向同側にある一方の材質センサ57の材質検出データDxからdifxを減算し、他方の位置センサ60と通路幅方向同側にある他方の材質センサ62の材質検出データDyからdifyを減算する補正を行う。
【0048】
つまり、
図5に示すように、1枚目の硬貨について、位置センサ55が検出した位置検出データx0と位置センサ60が検出した位置検出データy0とをXY座標系にプロットし、この点を通るy=−x+bを求め、2枚目の硬貨について、位置センサ55が検出した位置検出データx2と位置センサ60が検出した位置検出データy2とをプロットして、この点(x2,y2)を通るy=x+cを求め、これらの線が交わる点(x3,y3)を求めて、補正値であるdifx=x2−x3、dify=y2−y3を求め、一方の位置センサ55と通路幅方向同側にある一方の材質センサ57の材質検出データDxからdifxを減算し、他方の位置センサ60と通路幅方向同側にある他方の材質センサ62の材質検出データDyからdifyを減算する補正を行う。この方式によっても、材質センサ57,62の検出データを比較的簡単かつ適正に補正することができる。
【0049】
また、以上においては、一の識別計数処理において、1枚目の硬貨について一対の位置センサ55,60が検出した位置検出データを基準データとし、この基準データと2枚目以降の硬貨について一対の位置センサ55,60が検出する位置検出データとに基づいて2枚目以降の硬貨についての一対の材質センサ57,62の検出データを補正するようにした。これに対して、2枚目の硬貨の補正データを作成する基準データは、1枚目の一対の位置センサ55,60とし、計数対象金種の硬貨であると識別された硬貨が増えていくにしたがって、その全部あるいはサンプリングした複数の硬貨について一対の位置センサ55,60が検出した位置検出データの平均値を基準データとしても良い。
【0050】
以上の硬貨処理装置1は具体的には径方向内側と径方向外側とが材質の異なる硬貨を識別計数するのに用いて好適なものである。
ところで、計数対象金種に対応する通路幅に搬送部の対向するガイド壁の間隔を調整し、これらガイド壁の間で硬貨を搬送しつつ計数対象金種の硬貨であるか否かを材質センサで識別して計数を行う硬貨処理装置がある。このような硬貨処理装置では、対向するガイド壁の間隔の調整精度が十分でないと識別精度が低下してしまう可能性がある。実施形態の硬貨処理装置によれば、搬送部の通路幅を調整可能であっても識別精度の低下を抑制することが可能となる。
【0051】
実施形態の第1の態様は、金種の選択入力を受け付ける操作部と、該操作部への金種の選択入力に応じた通路幅に調整される互いに対向するガイド壁を有しこれらガイド壁間で硬貨を搬送する搬送部と、通路幅方向に間隔をあけて設けられて前記搬送部で搬送中の硬貨の材質を検出する一対の材質センサと、通路幅方向に間隔をあけて設けられて前記搬送部で搬送中の硬貨の通路幅方向の位置を検出する一対の位置センサと、を有し、前記一対の材質センサと前記一対の位置センサとが硬貨搬送方向の位置を合わせて設けられ、前記一対の位置センサの検出データに基づいて前記一対の材質センサの検出データを補正する補正手段と、該補正手段により補正されたデータに基づいて硬貨を識別する識別手段とを有することを特徴とする。
【0052】
実施形態の第2の態様は、上記第1の態様において、前記補正手段は、一の識別処理において、1枚目の硬貨について前記一対の位置センサが検出した検出データを基準データとし、当該基準データと2枚目以降の硬貨について前記一対の位置センサが検出する検出データとに基づいて2枚目以降の硬貨についての前記一対の材質センサの検出データを補正することを特徴とする。
【0053】
実施形態の第3の態様は、上記第2の態様において、前記補正手段は、前記1枚目の硬貨について一方の位置センサが検出した検出データをx0とし他方の位置センサが検出した検出データをy0として、基準値b=y0+x0を求め、前記2枚目以降の硬貨については、それぞれ、前記一方の位置センサが検出した検出データをxとし前記他方の位置センサが検出した検出データをyとして算出値a=y/xを算出するとともに、該算出値aと前記基準値bとから、difx=x−b/(a+1)と、dify=y−a*b/(a+1)とを算出し、前記一方の位置センサと同側にある一方の材質センサの検出データDxからdifxを減算し、前記他方の位置センサと同側にある他方の材質センサの検出データDyからdifyを減算する補正を行うことを特徴とする。
【0054】
実施形態の第4の態様は、上記第2の態様において、前記補正手段は、前記1枚目の硬貨について一方の位置センサが検出した検出データをx0とし他方の位置センサが検出した検出データをy0として、基準値b=y0+x0を求め、前記2枚目以降の硬貨については、それぞれ、前記一方の位置センサが検出した検出データをxとし前記他方の位置センサが検出した検出データをyとして算出値c=y−xを算出するとともに、該算出値cと前記基準値bとから、difx=x−(b−c)/2と、dify=y−(b+c)/2とを算出し、前記一方の位置センサと同側にある一方の材質センサの検出データDxからdifxを減算し、前記他方の位置センサと同側にある他方の材質センサの検出データDyからdifyを減算する補正を行うことを特徴とする。
【0055】
第1の態様によれば、通路幅方向に間隔をあけて設けられて搬送部で搬送中の硬貨の材質を検出する一対の材質センサと、通路幅方向に間隔をあけて設けられて搬送部で搬送中の硬貨の通路幅方向の位置を検出する一対の位置センサとが硬貨搬送方向の位置を合わせて設けられており、補正手段が一対の位置センサの検出データに基づいて一対の材質センサの検出データを補正し、この補正されたデータに基づいて識別手段が硬貨を識別する。これにより、搬送部の通路幅を調整可能であっても識別精度の低下を抑制することが可能となる。
【0056】
第2の態様によれば、補正手段は、一の識別処理において、1枚目の硬貨について一対の位置センサが検出した検出データを基準データとするため、搬送部の調整後の通路幅で実際に搬送された硬貨の検出データを基準データとすることができる。よって、基準データが実際の通路幅に則したものとなり、識別精度の低下を一層抑制することが可能となる。
【0057】
第3の態様によれば、1枚目の硬貨について一方の位置センサが検出した検出データx0と他方の位置センサが検出した検出データy0とから、基準値b=y0+x0を求め、2枚目以降の硬貨については、それぞれ、一方の位置センサが検出した検出データxと他方の位置センサが検出した検出データyとから算出値a=y/xを算出するとともに、算出値aと基準値bとから、difx=x−b/(a+1)と、dify=y−a*b/(a+1)とを算出して、一方の材質センサの検出データDxからdifxを減算し、他方の材質センサの検出データDyからdifyを減算する補正を行う。よって、材質センサの検出データを比較的簡単に補正することができる。
【0058】
第4の態様によれば、1枚目の硬貨について一方の位置センサが検出した検出データx0と他方の位置センサが検出した検出データy0とから、基準値b=y0+x0を求め、2枚目以降の硬貨については、それぞれ、一方の位置センサが検出した検出データxと他方の位置センサが検出した検出データyとから算出値c=y−xを算出するとともに、算出値cと基準値bとから、difx=x−(b−c)/2と、dify=y−(b+c)/2とを算出して、一方の材質センサの検出データDxからdifxを減算し、他方の材質センサの検出データDyからdifyを減算する補正を行う。よって、材質センサの検出データを比較的簡単に補正することができる。