(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の圧力室と、圧電体を含み、前記複数の圧力室をそれぞれ仕切る複数の隔壁と、前記複数の圧力室にそれぞれ形成された複数の電極とを有する圧電トランスデューサを有し、
前記複数の隔壁は、第1の側壁と、前記第1の側壁の背面側に位置する第2の側壁とをそれぞれ有し、
前記第1の側壁の上部に位置する第1の壁面は、前記第1の壁面の下方に位置する第2の壁面に対して、前記第1の壁面の法線方向に後退して位置しており、
前記複数の電極のうちの第1の電極は、前記第2の壁面に形成されており、
前記複数の電極のうちの第2の電極は、前記第2の側壁に形成されており、
前記第2の電極の上端の高さは、前記第1の電極の上端の高さより高く、
前記複数の圧力室のうちの前記第1の側壁に面している圧力室が、液体流路として用いられる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による液体吐出装置について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態による液体吐出装置の概略を示す斜視図である。
図2は、本実施形態による液体吐出装置の一部を示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態による液体吐出装置は、圧電プレート1と、圧電プレート1上に配されたカバープレート5と、オリフィスプレート7とを有する圧電トランスデューサ8を有している。
【0013】
圧電プレート(圧電板)1の材料としては、圧電体が用いられている。かかる圧電体としては、例えば、圧電セラミックス等が用いられている。圧電セラミックスとしては、例えば、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料が用いられている。圧電プレート1には、例えば、矢印Dの方向に分極処理が施されている。圧電プレート1の厚さは、例えば約1mm程度である。
【0014】
圧電プレート1には、互いに並行するように複数の溝(開口部)2a、2bが形成されている。かかる溝2a、2bは、圧力室(液体流路)を形成するためのものである。溝2a、2bは、例えばダイヤモンドホイール等を用いて形成されている。溝2a、2bの深さは、例えば230μm程度とする。
【0015】
図2に示すように、溝2aは、下部側の幅が狭くなっており、上部側の幅が広くなっている。換言すれば、溝2aは、幅狭の溝と、幅狭の溝上に形成された幅広の溝とにより形成されている。
【0016】
溝2bは、下部側も上部側も同等の幅になっている。
【0017】
溝2aと溝2bとは、交互に配されている。
【0018】
圧電プレート1のうち、溝2aと溝2bとの間の部分は、隔壁4となっている。各々の隔壁4は、溝2a、2bにより形成される圧力室(液体流路)をそれぞれ仕切るためのものである。
【0019】
隔壁4は、溝2aに面している側壁9と、溝2bに面している側壁10とをそれぞれ有している。
【0020】
一の隔壁4の側壁9と、当該一の隔壁4に隣接する他の隔壁4の側壁9とは、互いに対向している。
【0021】
また、一の隔壁4の側壁10と、当該一の隔壁4に隣接する他の隔壁4の側壁10とは、互いに対向している。
【0022】
溝2aに面している側壁9は、側壁9の上部に位置している壁面41と、壁面41の下方に位置している壁面43とを有している。即ち、側壁9は、側壁9の上端を含む部分に位置している壁面41と、側壁9の下端を含む部分に位置している壁面43とを有している。換言すれば、側壁9は、側壁9の上部側に位置している壁面41と、側壁9の下部側に位置している壁面43とを有している。側壁9の上部に位置している壁面41は、壁面41の下方に位置している壁面43に対して、壁面41の法線方向に後退して位置している。換言すれば、側壁9の上部に位置している壁面41は、壁面41の下方に位置している壁面43に対して、へこんでいる。
【0023】
壁面41が壁面43に対して後退しているため、壁面41と壁面43との間には段差が生じている。
【0024】
壁面43の高さは、後述するように、側壁9の高さの25%以上、65%以下とすることが好ましい。ここでは、壁面43の高さを、例えば115μm程度とする。
【0025】
また、側壁9の上部に位置している壁面41は、壁面41の下方に位置している壁面43に対して、壁面41の法線方向に例えば10μm以上後退して位置していることが好ましい。壁面43に対する壁面41の後退量が過度に小さい場合には、壁面41を形成する際の加工が困難なためである。
【0026】
溝2bに面している側壁10には、壁面44が存在している。溝2bに面している側壁10には、壁面44に対して後退した壁面は存在していない。壁面44に対して後退した壁面が側壁10に存在していないため、溝2bに面している側壁10の全面が壁面44となっている。壁面44の上端は、壁面43の上端より上方に位置している。
【0027】
壁面41が壁面43に対して後退しているため、隔壁4のうちの上部側の部分の厚さは、隔壁4のうちの下部側の部分の厚さより小さくなっている。隔壁4のうちの上部側の部分の厚さは、隔壁4の物理的な強度を十分に確保すべく、例えば30μm以上であることが好ましい。
【0028】
溝2a内には、電極(駆動電極)3aが形成されている。電極3aは、後述する電極3bと相俟って、隔壁(圧電体)4に対して分極方向Dと垂直方向の電場を印加し、シェアモードの変位を生じさせるためのものである。
【0029】
電極3aは、溝2aの底面及び壁面43に形成されている。即ち、電極3aは、側壁9の全面には形成されておらず、側壁9の下部側に位置する壁面43に形成されている。電極3aの上端の高さは、壁面43の上端の高さと同等となっている。
【0030】
溝2bには、電極(駆動電極)3bが形成されている。溝2bの一方の側に位置する部分電極3bと溝2bの他方の側に位置する部分電極3bとは、溝2bの底面に形成された分離溝222により互いに分離されている。分離溝222は、溝2bの長手方向に沿って、溝2bの一方の端部から他方の端部に達するように形成されている。また、電極3bは、溝2bの底面及び壁面44に形成されていてもよい。即ち、電極3bは、隔壁4の側壁10の全面に形成されていてもよい。電極3bの上端の高さは、隔壁4の側壁10の上端の高さと同等となっている。
【0031】
壁面44の上端が壁面43の上端より上方に位置しているため、電極3bの上端は電極3aの上端より上方に位置している。
【0032】
電極3a、3bの材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル等の金属材料が用いられている。電極3a、3bは、例えば、蒸着法、無電解めっき法等により形成されている。
【0033】
圧電プレート1上には、カバープレート5が取り付けられている。カバープレート5は、例えば、圧電プレート1と同等の線膨張係数を有する材料を用いることが好ましい。ここでは、カバープレート5の材料として、圧電プレート1と同じ材料が用いられている。カバープレート5には、液体導入口11が形成されている。また、カバープレート5には、マニホールド12が設けられている。圧電プレート1の上面とカバープレート5の下面とは、例えば、エポキシ系接着剤(図示せず)等により接着されている。
【0034】
溝2a、2bの上部にカバープレート5が位置しているため、溝2a、2bの長手方向に沿って圧力室が形成されている。圧力室(液体室)2aには、液体ボトル(図示せず)から液体導入口11及びマニホールド12を介して、液体が充填される。吐出する液体がインクである場合には、圧力室(インク室)2aにインクが充填される。圧力室2aは、液体流路(インク流路)となる。
【0035】
圧電プレート1の端面には、オリフィスプレート(ノズルプレート)7が設けられている。オリフィスプレート7は、例えばプラスチック等により形成されている。オリフィスプレート7には、圧力室2aの位置に対応した位置にノズル6が設けられている。オリフィスプレート7は、例えば、エポキシ系接着剤(図示せず)等により圧電プレート1の端面に接着されている。
【0036】
電極3aと電極3bとの間に電圧を印加すると、隔壁(圧電体)4に対して分極方向Dと垂直方向の電場が印加され、シェアモードの変位が生じる。隔壁(可動壁)4に変位が生じると、圧力室(液体室)2aの容積が変化する。圧力室2aの容積を適宜変化させることにより、ノズル6を介して液体(インク)を吐出させることができる。
【0037】
このように、圧電トランスデューサ8には、液体を吐出させ得る圧力室2aをそれぞれ有する複数の液体吐出部13がアレイ状に設けられている。
【0038】
本実施形態では、隔壁4のうちの上部側の厚さが隔壁4のうちの下部側の厚さよりも薄くなっている。即ち、隔壁4の一部に、厚さの薄い部分が存在している。このため、本実施形態では、隔壁4全体を厚く形成した場合と比較して、変位を生じさせやすくなっている。しかも、本実施形態では、電極3bの上端が電極3aの上端よりも上方に位置している。このため、電極3bの上端が電極3aの上端と同等の位置に存在している場合と比較して、本実施形態では、隔壁4(圧電体)に加わる電場を大きくすることができる。このため、本実施形態によれば、隔壁4をシェアモードで変位させやすくすることができ、隔壁4の変位効率を向上することができる。
【0039】
(評価結果)
次に、本実施形態による液体吐出装置の評価結果について説明する。
【0040】
本実施形態による液体吐出装置と参考例による液体吐出装置とを対比することにより評価を行った。本実施形態による液体吐出装置は、
図2に示すような構造とした。参考例による液体吐出装置は、
図3に示すような構造とした。
図3は、参考例による液体吐出装置を示す断面図である。
【0041】
本実施形態による液体吐出装置では、溝2a、2bの深さ、即ち、隔壁4の側壁9,10の高さを230μmとした。
【0042】
参考例による液体吐出装置においても、本実施形態による液体吐出装置と同様に、溝2の深さ、即ち、隔壁4の側壁9,10の高さを230μmとした。
【0043】
本実施形態による液体吐出装置では、隔壁4の側壁9の下部側に位置している壁面43の高さを115μmとした。即ち、壁面43の高さは、隔壁4の側壁9の高さの50%とした。
【0044】
一方、本実施形態による液体吐出装置では、隔壁4の側壁10の壁面44の高さは、隔壁4の側壁10の高さと同等の230μmとした。
【0045】
参考例による液体吐出装置では、隔壁4の側壁9の下部側に位置している壁面43の高さは、本実施形態による液体吐出装置と同様に、115μmとした。一方、参考例による液体吐出装置では、隔壁4の側壁10の下部側に位置している壁面44の高さについても、115μmとした。即ち、参考例による液体吐出装置では、壁面43の高さのみならず、壁面44の高さについても、隔壁4の側壁9,10の高さの50%とした。
【0046】
図4は、隔壁の変位量の測定結果を示すグラフである。
図4における横軸は、隔壁4の側壁9の高さbに対する、隔壁4の側壁9の下部側の壁面43の高さaの割合を示している。
図4における縦軸は、参考例による液体吐出装置における変位量を1とした場合の変位量の比率を示している。
【0047】
図4から分かるように、(a/b)の値が25%以上、65%以下の範囲においては、変位量の比率が1以上となる。
【0048】
従って、(a/b)の値が25%以上、65%以下となるようにaの値を設定すれば、隔壁4の変位量を向上させることが可能である。
【0049】
このように、本実施形態では、各々の隔壁4が、第1の側壁9と、第1の側壁の背面側に位置する第2の側壁10とをそれぞれ有している。そして、第1の側壁9の上部に位置する第1の壁面41が、第1の壁面41の下方に位置する第2の壁面43に対して、第1の壁面41の法線方向に後退して位置している。本実施形態によれば、隔壁4の一部に厚さの薄い部分が存在しているため、隔壁4の変位が生じやすくなっている。しかも、本実施形態によれば、第1の電極3aが第2の壁面43に形成されており、第2の電極3bが第2の側壁10に形成されており、第2の電極3bの上端の高さが第1の電極3aの上端の高さより高くなっている。このため、本実施形態によれば、隔壁4に加わる電場を大きくすることができる。このため、本実施形態によれば、隔壁4をシェアモードで変位させやすくすることができ、隔壁4の変位効率を向上することができる。
【0050】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による液体吐出装置について説明する。
図5は、本実施形態による液体吐出装置を示す断面図である。
図1乃至
図4に示す第1実施形態による液体吐出装置と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0051】
本実施形態による液体吐出装置は、側壁10の上部に位置している壁面42が、壁面42の下方に位置している壁面44に対して、壁面42の法線方向に後退して位置しているものである。
【0052】
図5に示すように、側壁10の上部に位置している壁面42は、壁面42の下方に位置している壁面44に対して、壁面42の法線方向に後退して位置している。即ち、側壁10の上端を含む部分に位置する壁面42は、側壁10の下端を含む部分に位置する壁面44に対して、壁面42の法線方向に後退して位置している。換言すれば、側壁10の上部に位置している壁面42は、壁面42の下方に位置している壁面44に対して、へこんでいる。壁面42が壁面44に対して後退しているため、壁面42と壁面44との間には段差が生じている。
【0053】
後述するように、側壁10の下部側に位置する壁面44の高さは、側壁10の背面側の側壁9の下部側に位置する壁面43の高さの1.4倍以上であることが好ましい。また、側壁10の下部側に位置する壁面44の高さは、側壁10の高さの50%を超えていることが好ましい。側壁10の下部側に位置する壁面44の高さを、側壁10の高さの50%を超えるように設定するのは、隔壁4に十分な電場を印加し、大きな変位量を得るためである。
【0054】
側壁9の上部側に位置している壁面41は、側壁9の下部側に位置している壁面43に対して、壁面41の法線方向に後退して位置している。
【0055】
本実施形態では、壁面41が、壁面43に対して、壁面41の法線方向に後退して位置しているのみならず、壁面42が、壁面44に対して、壁面42の法線方向に後退して位置している。このため、本実施形態では、隔壁4のうちの上部の厚さがより薄くなっている。このため、本実施形態では、隔壁4の変位をより生じさせやすくなっている。このため、本実施形態によれば、隔壁4をシェアモードでより変位させやすくすることができ、隔壁4の変位効率をより向上することができる。
【0056】
(評価結果)
次に、本実施形態による液体吐出装置の評価結果について説明する。
【0057】
本実施形態による液体吐出装置と参考例による液体吐出装置とを対比することにより評価を行った。本実施形態による液体吐出装置は、
図5に示すような構造とした。参考例による液体吐出装置は、
図3に示すような構造とした。
【0058】
本実施形態による液体吐出装置では、溝2a、2bの深さ、即ち、隔壁4の側壁9,10の高さを230μmとした。
【0059】
参考例による液体吐出装置においても、本実施形態による液体吐出装置と同様に、溝2の深さ、即ち、隔壁4の側壁9,10の高さを230μmとした。
【0060】
本実施形態による液体吐出装置では、隔壁4の側壁9の下部側に位置している壁面43の高さを115μmとした。即ち、壁面43の高さは、隔壁4の側壁9の高さの50%とした。
【0061】
本実施形態による液体吐出装置では、隔壁4の側壁10の下部側に位置している壁面44の高さを変化させた。
【0062】
参考例による液体吐出装置では、隔壁4の側壁9の下部側に位置している壁面43の高さは、本実施形態による液体吐出装置と同様に、115μmとした。一方、参考例による液体吐出装置では、隔壁4の側壁10の下部側に位置している壁面44の高さについても、115μmとした。即ち、参考例による液体吐出装置では、壁面43の高さのみならず、壁面44の高さについても、隔壁4の側壁9,10の高さの50%とした。
【0063】
図6は、隔壁の変位量の測定結果を示すグラフである。
図6における横軸は、隔壁4の側壁9の下部側の壁面43の高さaに対する、隔壁4の側壁10の下部側の壁面44の高さcの割合を示している。
図6における縦軸は、参考例による液体吐出装置における変位量を1とした場合の変位量の比率を示している。
【0064】
図6から分かるように、(c/a)の値が1.4以上の範囲においては、変位量の比率が1.04以上となる。
【0065】
従って、(c/a)の値が1.4以上となるように、壁面43の高さaと壁面44の高さcとを設定すれば、隔壁4の変位量を十分に向上させることが可能である。即ち、隔壁4の側壁10の下部側の壁面44の高さcを、隔壁4の側壁9の下部側の壁面43の高さaの1.4倍以上に設定すれば、隔壁4の変位量を十分に向上させることが可能である。
【0066】
(液体吐出装置の製造方法)
次に、本実施形態による液体吐出装置の製造方法について説明する。
図7乃至
図10は、本実施形態による液体吐出装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0067】
まず、圧電プレート1を用意する。圧電プレート1の材料としては、例えば、圧電セラミックス等の圧電材料を用いる。圧電セラミックスとしては、例えば、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料を用いる。圧電プレート1には、例えば、矢印Dの方向に分極処理が施されている。圧電プレート1の厚さは、例えば約1mm程度である。
【0068】
次に、
図7に示すように、圧電プレート1に、互いに並行するように複数の溝2を形成する。溝2の深さ方向は、例えば、圧電プレート1に施された分極処理の方向Dと同じとする。溝2は、例えばダイヤモンドホイール等を用いて形成することができる。溝2の深さは、例えば230μm程度とする。溝2と溝2との間の部分は、隔壁4となるものである。隔壁4の厚さが例えば70μmとなるように、溝2のピッチを設定する。
【0069】
次に、
図8に示すように、例えば、蒸着法、無電解めっき法等により、導電膜3を形成する。導電膜3は、電極3a、3bとなるものである。導電膜3の材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル等の金属材料を用いる。
【0070】
次に、
図9に示すように、既に形成されている溝2よりも幅広の溝を形成する。溝2aを形成する箇所においては、幅広の溝の深さを比較的深く設定する。溝2bを形成する箇所においては、幅広の溝の深さを比較的浅く設定する。こうして、溝2aと溝2bとが形成される。また、溝2bの底面に分離溝222を形成してもよい。これにより、溝2bの一方の側に位置する部分電極3bと溝2bの他方の側に位置する部分電極3bとは、互いに分離される。分離溝222は、溝2bの長手方向に沿って、溝2bの一方の端部から他方の端部に達するように形成する。
【0071】
次に、隔壁4の上面に残存している導電膜3をラッピング(粗研磨)等により除去する。
【0072】
次に、
図10に示すように、圧電プレート1上にカバープレート5を取り付ける。カバープレート5は、例えば、圧電プレート1と同等の線膨張係数を有する材料を用いることが好ましい。ここでは、カバープレート5の材料として、圧電プレート1と同じ材料を用いる。カバープレート5には、液体導入口11(
図1参照)が形成されている。また、カバープレート5には、マニホールド12(
図1参照)が設けられている。圧電プレート1の上面とカバープレート5の下面とは、例えば、エポキシ系接着剤(図示せず)等により接着される。
【0073】
次に、圧電プレート1の端面にオリフィスプレート(ノズルプレート)7(
図1参照)を取り付ける。オリフィスプレート7は、例えばプラスチック等により形成されている。オリフィスプレート7に形成されたノズル6の位置は、圧力室2aの位置に対応した位置とする。オリフィスプレート7は、例えば、エポキシ系接着剤(図示せず)等により圧電プレート1の端面に接着される。
【0074】
こうして、本実施形態による液体吐出装置が製造される。
【0075】
このように本実施形態では、壁面41が、壁面43に対して、壁面41の法線方向に後退して位置しているのみならず、壁面42が、壁面44に対して、壁面42の法線方向に後退して位置している。このため、本実施形態では、隔壁4のうちの上部側の厚さがより薄くなっている。このため、本実施形態では、隔壁4の変位をより生じさせやすくなっている。このため、本実施形態によれば、隔壁4をシェアモードでより変位させやすくすることができ、隔壁4の変位効率をより向上することができる。
【0076】
[評価結果]
次に、上記実施形態による液体吐出装置についての評価結果を以下に示す。
【0077】
(実施例1〜3)
実施例1〜3による液体吐出装置は、
図1に示すような構造とした。実施例1〜3のいずれにおいても、隔壁4の高さを230μmとした。実施例1では、壁面43の高さを側壁9の高さの25%とした。即ち、実施例1では、壁面43の高さを58μmとした。実施例2では、壁面43の高さを側壁9の高さの50%とした。即ち、実施例2では、壁面43の高さを115μmとした。実施例3では、壁面43高さを側壁9の高さの65%とした。即ち、実施例3では、壁面43の高さを150μmとした。実施例1〜3のいずれにおいても、壁面44の高さを230μmとした。また、実施例1〜3のいずれにおいても、壁面41を壁面43に対して壁面41の法線方向に10μm後退させた。隔壁4の下部側の部分の厚さ、即ち、壁面43と壁面44との間の寸法は、70μmとした。隔壁4の上面に残存する導電膜3をラッピングにより除去し、圧電プレート1と同じ材料からなるカバープレート5を圧電プレート1上に接合した。各々のインク流路2aに対応する複数のノズル6を有するオリフィスプレート7を、圧電プレート1の端面に接合した。こうして、実施例1〜3による液体吐出装置を作製した。
【0078】
(実施例4,5)
実施例4,5による液体吐出装置は、
図5に示すような構造とした。実施例4,5のいずれにおいても、隔壁4の高さを230μmとした。また、実施例4,5のいずれにおいても、壁面43の高さを115μmとした。実施例4では、壁面44の高さを壁面43の高さの1.4倍とした。即ち、実施例4では、壁面44の高さを161μmとした。実施例5では、壁面44の高さを壁面43の高さの1.7倍とした。即ち、実施例5では、壁面44の高さを196μmとした。また、実施例4,5のいずれにおいても、壁面41を壁面43に対して壁面41の法線方向に10μm後退させた。隔壁4の下部側の部分の厚さ、即ち、壁面43と壁面44との間の寸法は、70μmとした。隔壁4の上面に残存する導電膜3をラッピングにより除去し、圧電プレート1と同じ材料からなるカバープレート5を圧電プレート1上に接合した。各々のインク流路2aに対応する複数のノズル6を有するオリフィスプレート7を、圧電プレート1の端面に接合した。こうして、実施例4,5による液体吐出装置を作製した。
【0079】
(実施例6,7)
実施例6,7による液体吐出装置は、
図1に示すような構造とした。実施例6,7のいずれにおいても、隔壁4の高さを230μmとした。実施例6,7のいずれにおいても、壁面43の高さを側壁9の高さの50%とした。即ち、実施例6,7のいずれにおいても、壁面43の高さを115μmとした。実施例6,7のいずれにおいても、壁面44の高さを230μmとした。実施例6では、隔壁4のうちの上部側の厚さを45μmとした。実施例7では、隔壁4のうちの上部側の厚さを30μmとした。実施例6,7のいずれにおいても、隔壁4の下部側における厚さを70μmとした。隔壁4の上面に残存する導電膜3をラッピングにより除去し、圧電プレート1と同じ材料からなるカバープレート5を圧電プレート1上に接合した。各々のインク流路2aに対応する複数のノズル6を有するオリフィスプレート7を、圧電プレート1の端面に接合した。こうして、実施例6,7による液体吐出装置を作製した。
【0080】
(比較例1,2)
比較例1,2による液体吐出装置は、
図1に示すような構造とした。比較例1,2のいずれにおいても、隔壁4の高さを230μmとした。比較例1では、壁面43の高さを側壁9の高さの20%とした。即ち、比較例1では、壁面43の高さを46μmとした。比較例2では、壁面43の高さを側壁9の高さの70%とした。即ち、比較例2では、壁面43の高さを161μmとした。
【0081】
比較例1,2のいずれにおいても、壁面44の高さを230μmとした。また、比較例1,2のいずれにおいても、壁面41を壁面43に対して壁面41の法線方向に10μm後退させた。隔壁4の下部側の部分の厚さ、即ち、壁面43と壁面44との間の寸法は、70μmとした。隔壁4の上面に残存する導電膜3をラッピングにより除去し、圧電プレート1と同じ材料からなるカバープレート5を圧電プレート1上に接合した。各々のインク流路2aに対応する複数のノズル6を有するオリフィスプレート7を、圧電プレート1の端面に接合した。こうして、比較例1,2による液体吐出装置を作製した。
【0082】
(比較例3)
比較例3による液体吐出装置は、
図3に示すような構造とした。隔壁4の高さは、230μmとした。また、壁面43の高さは、115μmとした。壁面44の高さは、壁面43の高さと同等とした。即ち、壁面44の高さを115μmとした。壁面41を壁面43に対して壁面41の法線方向に10μm後退させた。隔壁4の下部側の部分の厚さ、即ち、壁面43と壁面44との間の寸法は、70μmとした。隔壁4の上面に残存する導電膜3をラッピングにより除去し、圧電プレート1と同じ材料からなるカバープレート5を圧電プレート1上に接合した。各々のインク流路2aに対応する複数のノズル6を有するオリフィスプレート7を、圧電プレート1の端面に接合した。こうして、比較例3による液体吐出装置を作製した。
【0083】
(比較例4,5)
比較例4,5による液体吐出装置は、
図1に示すような構造とした。比較例4,5のいずれにおいても、隔壁4の高さを230μmとした。また、比較例4,5のいずれにおいても、壁面43の高さは、115μmとした。比較例4,5のいずれにおいても、壁面44の高さを230μmとした。比較例4では、壁面41を壁面43に対して壁面41の法線方向に5μm後退させた。比較例5では、壁面41を壁面43に対して壁面41の法線方向に20μm後退させた。隔壁4の下部側の部分の厚さ、即ち、壁面43と壁面44との間の寸法は、70μmとした。隔壁4の上面に残存する導電膜3をラッピングにより除去し、圧電プレート1と同じ材料からなるカバープレート5を圧電プレート1上に接合した。各々のインク流路2aに対応する複数のノズル6を有するオリフィスプレート7を、圧電プレート1の端面に接合した。こうして、比較例1,2による液体吐出装置を作製した。
【0084】
表1は、上記のようにして作成された液体吐出装置についての評価結果を示すものである。比較例3の場合における変位量を基準とし、比較例3の場合における変位量に対する変位量の比率が示されている。評価を行う際には、電極3a,3b間に、1kHz、±5Vの正弦波を印加した。そして、レーザ変位計を用いて、隔壁4の最大変位を測定した。
【0086】
表1から分かるように、実施例1〜7のいずれの場合にも、変位量が比較例3より大きくなっている。
【0087】
このことから、上述した第1及び第2実施形態による液体吐出装置によれば、隔壁4の変位効率を確実に向上させ得ることが分かる。このため、第1及び第2実施形態による液体吐出装置によれば、誘電損失、発熱量及び隔壁4へのダメージを抑制しつつ、所望の変位量を得ることができる。このため、第1及び第2実施形態によれば、信頼性の高い良好な液体吐出装置を得ることができる。