(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体にエネルギーを付与するエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子によって液体を吐出する吐出口と、を備えた素子基板と、前記素子基板を支持する第1の支持部材と、前記第1の支持部材を支持する第2の支持部材と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記素子基板と、前記第1の支持部材の第1の面と、を接合する第1の接合工程と、
前記素子基板が接合された前記第1の支持部材の前記第1の面の側に設けられた保持領域を保持部材によって保持し、前記第1の支持部材の前記第1の面の反対側である第2の面と前記第2の支持部材とを当接させ、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを接合する第2の接合工程と、を有し、
前記第2の接合工程では、前記保持部材としての吸着手段によって前記保持領域が吸着されて、前記第1の支持部材が保持されることを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
前記第2の接合工程では、前記保持部材により前記保持領域を保持し、接着剤を介して前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを当接させた状態で、前記第2の支持部材に対する前記素子基板の位置の調整を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドについて説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドとしての記録ヘッドが搭載されるインクジェット記録装置(液体吐出装置)1000についての斜視図である。
図1に示されるインクジェット記録装置1000は、内部に記録ヘッド1が収納されるキャリッジ211を備えている。本実施形態のインクジェット記録装置1000において、キャリッジ211は、ガイドシャフト206に沿って矢印Aの主走査方向に移動自在にガイドされている。ガイドシャフト206は、記録媒体の幅方向に沿って延びるように配置されている。従って、キャリッジ211に搭載されたインクジェットヘッドは、記録媒体の搬送される搬送方向と交差する方向に走査しながら記録を行う。このように、インクジェット記録装置1000は、記録ヘッド1の主走査方向の移動と、記録媒体の副走査方向の搬送と、を伴って画像を記録するいわゆるシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置である。
【0012】
キャリッジ211は、記録媒体の搬送方向に直交する方向に走査されるように、ガイドシャフト206によって貫通されて支持されている。キャリッジ211にはベルト204が取り付けられており、ベルト204にはキャリッジモータ212が取り付けられている。これにより、キャリッジモータ212による駆動力がベルト204を介してキャリッジ211に伝えられるので、キャリッジ211がガイドシャフト206によって案内されながら主走査方向に移動可能に構成されている。
【0013】
また、キャリッジ211には、後述する制御部からの電気信号をインクジェットヘッドユニットのインクジェットヘッドに転送するためのフレキシブルケーブル213が、インクジェットヘッドユニットに接続されるように取り付けられている。また、インクジェット記録装置1000は、インクジェットヘッドの回復処理を行うために用いられるキャップ241及びワイパブレード243が配置されている。また、インクジェット記録装置1000は、記録媒体を積層状態で蓄える給紙部215と、キャリッジ211の位置を光学的に読み取るエンコーダセンサ216を有している。
【0014】
キャリッジ211は、キャリッジモータ及びその駆動力を伝達するベルト等の駆動力伝達機構により、主走査方向に往復動される。記録媒体は、給紙部215に積載された後、搬送ローラによって矢印Bの副走査方向に搬送される。インクジェット記録装置1000は、インクジェットヘッドを主走査方向に移動させつつ、インクを吐出させる記録動作と、記録媒体を副走査方向に搬送する搬送動作と、を繰り返すことによって、記録媒体上に順次画像を記録する。
【0015】
図2に、記録装置1000のキャリッジ211に搭載される記録ヘッド1の斜視図を示す。
図2には、記録媒体に対向する面を上方に向けて配置した状態の記録ヘッド1について示している。記録ヘッド1が液体吐出装置1000に搭載される際には、記録ヘッド1における吐出口の形成された面が記録媒体に対向するようにキャリッジ211に搭載される。
【0016】
記録ヘッド1は、インクタンク4を収容するタンクホルダ3及び記録素子ユニット2を備えている。タンクホルダ3は、複数のインクタンク4を収容可能に構成されている。記録素子ユニット2は、記録素子基板(素子基板)8を備えている。
【0017】
図3(a)に、記録素子ユニット2についての構成を説明するために、記録素子ユニット2をそれぞれの要素に分解した斜視図を示す。また、
図3(b)に、
図3(a)のそれぞれの要素によって組み立てられた記録素子ユニット2についての斜視図を示す。
【0018】
記録素子ユニット2は、
図3(a)に示されるように、支持部材6に2つの第一の部材7が貼り付けられ、2つの第1の部材7のそれぞれに記録素子基板8が貼り付けられ、その上から電気配線板9が接着されて、形成されている。支持部材6には、インク供給口5が形成されている。また、第1の部材7には、第1の部材7を貫通するように、インク供給口11が形成されている。
【0019】
また、電気配線板9における配線に設けられた電極(不図示)と記録素子基板8における配線に設けられた電極(不図示)との間の電気的な接続部には、封止剤10が塗布されている。封止剤10によって、電気配線板9と記録素子基板8との間の電気的な接続部分が保護されている。
【0020】
次に、記録素子基板8について説明する。
図4(a)に、記録素子基板8についての斜視図を示し、
図4(b)に
図4(a)のIVB−IVB線に沿う断面図を示す。記録素子基板8は、シリコン基板20に流路形成部材25が貼り付けられて形成されている。記録素子基板8における表面側に、複数のインク流路と複数の吐出口24が形成された流路形成部材25が樹脂等により形成されている。
【0021】
記録素子基板8におけるシリコン基板20と流路形成部材25との間には、圧力室23が画成されている。圧力室23は、内部に液体としてのインクを貯留可能に形成されており、圧力室23の内部には、記録ヘッド1から吐出されるインクが一旦貯留される。流路形成部材25には、圧力室23に連通して、圧力室23に貯留されたインクを吐出する吐出口24が形成されている。また、圧力室23の内部には、圧力室23に貯留されているインクを吐出口24から吐出するためにインクにエネルギーを付与する素子として電気熱変換素子22が形成されている。本実施形態において、エネルギー発生素子として電気熱変換素子22の例を示すが、本発明はこれに限らず、例えば圧電素子等も適用可能である。
【0022】
シリコン基板20には、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口21が、シリコン基板20を貫通して形成されている。インク供給口21からそれぞれの圧力室23にインクを供給するために、インク供給口21と圧力室23との間には、流路26が形成されている。
【0023】
流路形成部材25における電気熱変換素子22に対応する位置に、インクを吐出するための吐出口24が形成されている。電気熱変換素子22が駆動することで熱エネルギーが与えられたインクは圧力室23の内部で膜沸騰を引き起こし、これにより吐出口24から記録媒体に向かってインクが吐出される。本実施形態では、記録素子基板8では、インクを吐出するためのエネルギーを発生させるエネルギー発生素子として、電気熱変換素子22が用いられている。それぞれの電気熱変換素子22に電力を供給することによって、圧力室23に貯留されているインク内で膜沸騰を生じさせている。また、記録素子基板8には、電流を電気熱変換素子22に伝送するための電気配線が配置されている。
【0024】
なお、本実施形態の記録ヘッド1は電気熱変換素子によりインク内で膜沸騰を発生させて発泡させインク滴を吐出する方式としたが、本発明はこれに限定されない。圧電素子を変形させ、これによって記録ヘッド内部の液体を吐出する形式の記録ヘッドが記録装置に適用されても良く、また、他の形式の記録ヘッドが本発明の記録装置に適用されても良い。
【0025】
記録素子基板8の端部には、記録素子基板8を支持部材6に接着する際の位置合わせに使用する指標部30、31が形成されている。本実施形態では、記録素子基板8の両端部に指標部30、31が設けられている。指標部30、31は、記録素子基板8を支持部材6へ取り付ける際の記録素子基板8の位置の調整に用いられる。記録素子基板8を支持部材6へ取り付ける際の記録素子基板8の位置の調整については後述する。
【0026】
次に、記録素子基板(以降チップ)8を第一の部材7に貼り合わせる装置(以下、マウンタとも称する)2000について
図5(a)〜(d)を用いて説明する。
図5(a)は、マウンタ2000の構成概略を示す平面図である。マウンタ2000は、第1の部材搬送部40、支持部材固定部50及び基板搬送部60を備えている。
【0027】
第1の部材搬送部40は、第1の部材トレイ41及び第1の部材搬送ロボット42を有している。第1の部材トレイ41には、記録素子基板8を貼り合わせる前の複数の第1の部材7が配置されている。本実施形態では、第1の部材トレイ41に載置されている際には、第1の部材7における記録素子基板8との間で貼り付けが行われる部分には、接着剤が塗布されている。第1の部材搬送ロボット42は、リンク機構を有しており、第1の部材トレイ41上の位置と支持部材固定部50との間で先端部分を移動可能に構成されている。第1の部材搬送ロボット42は、先端部によって第1の部材トレイ41上に配置された部材を保持することが可能である。
【0028】
支持部材固定部50は、支持部材固定治具51を備えている。支持部材固定治具51は、ステージとして、表面に部材を載置する。支持部材固定治具51には、ピン52が配置されており、ピン52を用いて、ステージ上での部材の位置決めを行うことが可能である。また、支持部材固定治具51は、支持部材固定治具51上の部材を
図5(b)に示される矢印の方向に沿って移動させることが可能なXYステージ53を備えている。XYステージ53を移動させることにより、支持部材固定治具51上の部材の位置の調整を行うことができる。
【0029】
また、支持部材固定治具51に対応する位置に、カメラ55が配置されている。カメラ55は、
図5(d)に示されるように、支持部材固定治具51上に配置された部材を撮影することができる。本実施形態では、記録素子基板8に形成された二つの指標部30、31に対応して、カメラ55a、55bと、二つのカメラ55が支持部材固定治具51上に対応した位置に配置されている。このカメラ55a、55bの設置位置は、両カメラ55a及び55bのそれぞれの中央に基準指標30、31が位置するように、正確に調整されている。
【0030】
基板搬送部60は、基板トレイ61と、基板搬送ロボット62とを備えている。基板トレイ61には、支持部材固定治具51上で第1の部材7に貼り付けられる前の記録素子基板8が複数並べられている。基板搬送ロボット62は、可動テーブル63を備えている。可動テーブル63は、レールに沿ってスライドすることにより移動することが可能に構成されている。
【0031】
図5(c)に示されるように、可動テーブル63は、上から順に、Zステージ64、Xステージ65、Yステージ66及びθzステージ67を備えている。さらにθzステージ67には、アーム68が取り付けられ、アーム68の先端にはフィンガー(吸着手段)69が付けられている。フィンガー69は、負圧を形成することが可能に構成されている。フィンガー69が負圧を形成すると共にフィンガー69を対象の部材に当接させることにより、フィンガー69が部材を吸着して保持することが可能である。このようなマウンタ2000によって、第1の部材7への記録素子基板8の貼り付けが行われる。
【0032】
記録素子基板8を第1の部材7に貼り合わせる際には、まず、第1の部材搬送ロボット42によって、第1の部材トレイ41上に並べられている第1の部材7を支持部材固定治具51上に載置する。本実施形態では、第1の部材搬送ロボット42が第1の部材7を一枚ずつピックアップし、第1の部材搬送ロボット42が第1の部材7を保持した状態で第1の部材7を移動させ、第1の部材7を支持部材固定治具51上に配置する。このとき、
図5(b)に示されるように、支持部材固定治具51上で、第一の部材7をピン52に突き当てて当接させる。XYステージ53によって支持部材固定治具51を移動させることによって、第1の部材7の位置を調節して、所定の位置に配置する。
【0033】
次に、記録素子基板8と、支持部材固定治具51上の第1の部材7とを接合する(素子基板接合工程)。記録素子基板8の第1の部材7への貼り付けの際には、基板搬送ロボット62を動作させて可動テーブル63を移動させ、フィンガー69が基板トレイ61に対応する位置に配置されるまでフィンガー69を移動させる。フィンガー69が基板トレイ61上の記録素子基板8に対応する位置に到達すると、フィンガー69が空気を吸引し、フィンガー69によって記録素子基板8を1枚ずつ吸着させて保持させる。フィンガー69が対象の記録素子基板8を保持すると、可動テーブル63を移動させ、記録素子基板8を、支持部材固定治具51上の第1の部材7に対応する位置まで移動させる。記録素子基板8が第1の部材7に対応する位置に配置されると、そこで記録素子基板8による第1の部材7への位置合わせが行われる。
【0034】
第1の部材7と記録素子基板8との間で位置合わせが行われると、そこでZステージ64を動作させることにより記録素子基板8を下降させて、記録素子基板8を第1の部材7に当接させて貼り合わせる。第1の部材7と記録素子基板8との間の貼り付けが行われると、第1の部材7と記録素子基板8との貼り付けの結果生成された接合体105が排出される。本実施形態では、支持部材搬送ロボット42によって接合体105の排出が行われる。
【0035】
図6に、第1の部材7と記録素子基板8とが貼り付けられた接合体105についての平面図を示す。記録素子基板8は、吐出口列の配列方向及び配列方向に交差する方向に、記録素子基板8よりも長く形成された第1の部材7に貼り付けられている。従って、記録素子基板8の外側に、支持部材6への貼り付けの際にフィンガー69によって吸着されるための吸着領域(保持領域)102が形成されている。
【0036】
次に、第1の部材7と記録素子基板8とが貼り付けられた接合体105を支持部材6に貼り付ける(第1の部材取付工程)。接合体105の支持部材6への貼り付けについては、記録素子基板8の第1の部材7への貼り付けと同様に行われる。接合体105の支持部材6への貼り付けは、マウンタ3000によって行われる。
図7に、接合体105と支持部材6との間の貼り付けを行うマウンタ3000についての平面図を示す。接合体105の支持部材6への貼り付けを行うマウンタ3000の構成は、記録素子基板8の第1の部材7への貼り付けを行うマウンタ2000と同様である。
【0037】
接合体105を支持部材6に貼り合わせる際には、まず、支持部材搬送ロボット242によって、支持部材トレイ241上に並べられている支持部材6を支持部材固定治具251上に載置する。このとき、支持部材搬送ロボット242が支持部材6をピックアップし、保持したまま支持部材固定治具251まで移動させる。次に、基板搬送ロボット262を動作させて可動テーブル263を移動させ、可動テーブル263の先端に取り付けられたフィンガーが基板トレイ261に対応する位置に配置されるまでフィンガーを移動させる。フィンガーが基板トレイ261上の接合体105に対応する位置に到達すると、フィンガーが接合体105を吸着する。フィンガーが対象の接合体105を吸着、保持したまま可動テーブル263を移動させ、接合体105を、支持部材固定治具251上の支持部材6に対応する位置まで移動させる。そこで支持部材6と接合体105との間で位置合わせが行われ、接合体105を支持部材6に当接させて貼り合わせる。
【0038】
また、記録素子基板8には、記録素子基板8の位置を認識するためのアライメントマークが形成されている。接合体105の支持部材6への貼り付けで位置合わせが行われる際には、カメラ55a、55bによって、記録素子基板8に形成されたアライメントマーク30、31の位置が検知されながら、位置合わせが行われる。接合体105の支持部材6への貼り付けにおいては、記録素子基板8の第1の部材7への貼り付けよりも高い精度が求められる。接合体105の支持部材6への貼り付けで、記録素子基板8が最終的な取り付け位置に配置される。
【0039】
このように、本実施形態では、記録素子基板8と支持部材6とが接合される際に、まず、記録素子基板8が第1の部材7に貼り付けられて接合体105が形成される。それから、接合体105が支持部材6に貼り付けられることで、記録素子基板8と支持部材6との間の取り付けが行われる。このとき、接合体105が、フィンガー69によって吸着されて支持部材6に取り付けられる。従って、接合体105における比較的広い吸着領域102でフィンガー69による吸着が行われるので、比較的強い吸着によって接合体105をフィンガー69に吸着することができる。接合体105を強い吸着力によって吸着することができるので、フィンガー69によって接合体105を吸着して保持している間に、フィンガー69と接合体105との間で位置ずれが生じることを抑えることができる。そのため、高い位置精度によって、正確に接合体105を支持部材6の所定位置に取り付けることができる。
【0040】
また、高い吸着力によって接合体105をフィンガー69に吸着することができるので、接合体105をフィンガー69によって吸着した状態で接合体105を支持部材6に塗布された接着剤上に着地させ、そこで接合体105の位置の修正を行うことができる。フィンガー69による接合体105への吸着力が比較的大きいので、支持部材6に塗布された接着剤上に設置されても、フィンガー69による接合体105を吸着して保持する力が、接着剤による接合体105を保持する力を上回る。そのため、フィンガー69と接合体105との間で位置ずれを生じさせずに、支持部材6に塗布された接着剤上で接合体105を移動させることができる。接合体105を一旦支持部材6上に塗布された接着剤上に配置し、そこで接合体105における支持部材6への取り付け位置の細かな修正を行うことができるので、取り付け位置の微調整を容易に行うことができる。これにより、接合体105における支持部材6への取り付けの際の位置精度をさらに向上させることができる。このように、本実施形態によれば、接着剤の塗布された支持部材6に一旦接合体105を当接させ、接着剤が固化する前の段階で、接合体105を支持部材6に接着剤を介して接触させたまま記録素子基板8の位置の細かい調整を行うことができる。
【0041】
また、比較的大きな部材である接合体105と支持部材6との貼り付けの際に、接合体105と支持部材6との間で接合される領域を広く取ることができる。そのため、接合体105を安定して支持部材6に取り付けることができ、結果的に、安定して記録素子基板8を支持部材6に取り付けることができる。
【0042】
比較例として、記録素子基板8が支持部材6に直接貼り付けられる場合について説明する。記録素子基板8を支持部材6に貼り付ける場合の記録素子基板8の周辺部分についての平面図を
図8に示す。
【0043】
記録素子基板8を支持部材6に直接貼り付ける場合には、記録素子基板8が比較的狭く、フィンガー69によって記録素子基板8を吸着させる際の吸着される領域の面積が比較的狭い。そのため、記録素子基板8をフィンガー69によって吸着する際の吸着力が不十分である可能性がある。記録素子基板8を吸着する吸着力が比較的小さいので、記録素子基板8における支持部材6への配置の際に、フィンガー69と記録素子基板8との間で位置ずれが生じる可能性がある。
【0044】
また、フィンガー69による記録素子基板8への吸着力が小さいので、記録素子基板8の配置の際に、記録素子基板8を支持部材6に設置したときに、支持部材6における接着剤上で記録素子基板8の位置の修正を行うことが難しい。記録素子基板8を吸着する吸着力が比較的小さいので、支持部材6に塗布された接着剤上に記録素子基板8を設置した状態で、支持部材6に対して記録素子基板8を移動させようとしても、フィンガー69が記録素子基板8を保持できない可能性がある。フィンガー69が記録素子基板8を吸着して保持する力が小さいと、その力が、接着剤により記録素子基板8を保持する力を下回り、記録素子基板8を移動させようとした際に、フィンガー69と記録素子基板8との間で位置ずれが生じる可能性がある。従って、記録素子基板8を支持部材6に配置させる際に、記録素子基板8の位置がずれ、記録素子基板8を精度良く配置できない可能性がある。
【0045】
これに対し、本実施形態では、記録素子基板8が第1の部材7に貼り付けられて接合体105が形成され、接合体105が支持部材6に貼り付けられるので、フィンガー69による接合体105への吸着部の面積を広く取ることができる。従って、フィンガー69による強い吸着力を確保することができるので、接着剤を介して接合体105を支持部材6に当接させた状態で接合体105を移動させることが可能となる。従って、接合体105を接着剤によって支持部材6に接着した状態で、記録素子基板8の位置の細かな修正を行うことができる。その結果、支持部材6に対する記録素子基板8の高い位置精度が確保されながら、記録素子基板8による支持部材6への取り付けを行うことができる。
【0046】
本実施形態では、記録素子基板8に形成されたアライメントマーク30、31の検知を行いながら記録素子基板8のX、Y、θzに関しての取り付け位置の修正を行うことにより、取り付け位置の精度が所望の精度に収まるように、取り付けが行われる。特に、本実施形態では、接着剤を介して接合体105を支持部材6に設置した状態で接合体105の位置を微調整することができるので、1μm以下の高い精度によって、記録素子基板8の支持部材6への最終的な取り付けを行うことができる。
【0047】
また、同様にもう一つの接合体105の支持部材6への貼り付けが行われることにより、
図3に示されるように、二つの接合体105が支持部材6に取り付けられる。これにより、支持部材6の基準(記録装置1000への搭載基準となる)に対して各記録素子基板8が高精度で実装することが可能となる。支持部材6と接合体105との間の貼り付けが行われ、その後に電気配線板9が接着されることで、記録素子ユニット2が製造される。
【0048】
なお、本実施形態では、記録素子基板8と第1の部材7との間の貼り付けにおいては、予め第1の部材7に接着剤が塗布され、第1の部材7における接着剤の塗布された領域に記録素子基板8を貼り付けている。また、接合体105と支持部材6との間の貼り付けにおいては、予め支持部材6に接着剤が塗布され、支持部材6における接着剤の塗布された領域に接合体105を貼り付けている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、記録素子基板8と第1の部材7との間の貼り付けにおいては、予め記録素子基板8に接着剤が塗布され、接着剤の塗布された記録素子基板8を第1の部材7に取り付けることとしてもよい。また、接合体105と支持部材6との間の貼り付けにおいては、予め接合体105に接着剤が塗布され、接着剤の塗布された接合体105を支持部材6に取り付けることとしてもよい。また、記録素子基板8と第1の部材7との両方に接着剤が予め塗布されることとしてもよいし、同様に、接合体105と支持部材6との両方に接着剤が予め塗布されることとしてもよい。その場合にも、接合体105に吸着領域102が十分に確保されているので、接合体105をフィンガー69によって確実に保持することができる。そのため、接着剤を塗布した後に、支持部材6に対して接合体105を移動させることができ、支持部材6に対する接合体105の位置の微調整を行うことができる。
【0049】
また、本実施形態では、記録素子基板8と第1の部材7との間の貼り付けで、第1の部材7に予め接着材が塗布された状態で支持部材トレイ41に整列されることとした。また、接合体105と支持部材6との間の貼り付けで、接合体105について予め接着材が塗布された状態で支持部材トレイ241に整列されることとした。しかしながら、本発明はこれに限定されず、接着剤は、第1の部材あるいは接合体105がマウンタ2000、3000内に配置された際に、マウンタ2000、3000内で塗布されるようにしても良い。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド2001について説明する。なお、上記第1実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
図9(a)に、第2実施形態に係る記録ヘッド2001についての斜視図を示し、
図9(b)に、第2実施形態に係る記録ヘッド2001の側面図を示す。
図9(a)、(b)に示されるように、第2実施形態では、複数の記録素子基板が一列に並べられ、記録ヘッド2001は、記録媒体の幅方向の全域に亘って延在するフルラインタイプの記録装置に適用されるラインヘッド形式のものである。
【0052】
図10に、
図9(a)、(b)に示される記録ヘッド2001における複数の記録素子基板及び第1の部材のうち、一つの記録素子基板208及び第1の部材103についての斜視図を示す。
図10に示されるように、記録素子基板208と第1の部材103とが貼り合わされて接合体105が形成されている。記録素子基板208では、吐出口が、記録素子基板208における一方向に沿って複数並べられて吐出口列が形成されている。本実施形態では、第1の部材103における吐出口列の配列方向に交差する方向に沿った長さが、記録素子基板208における吐出口列の配列方向に交差する方向に沿った長さよりも長くなるように、記録素子基板208、第1の部材103が形成されている。
【0053】
図9(a)、(b)に示されるように、第2実施形態の記録ヘッド2001では、支持部材108に、記録素子基板208の取り付けられた第1の部材103が複数配置されている。支持部材108には、吐出口列の配列された方向と同じ方向に沿って複数の記録素子基板208が接続されるように、複数の記録素子基板208が配置されている。また、複数の記録素子基板208のそれぞれに形成された吐出口列が、同一の直線に沿って配置されるように、複数の記録素子基板208が配置されている。
【0054】
図10に示されるように、第2実施形態の記録ヘッド2001では、一つの記録素子基板208に複数列の吐出口列が配列されている。特に、本実施形態では、一つの記録素子基板に4列の吐出口列が形成されている。
【0055】
また、それぞれの第1部材103における、吐出口列の配列された方向に交差する方向に沿う記録素子基板208の外側の領域には、フィンガー69によって吸着されるための吸着領域102が設けられている。また、それぞれの記録素子基板208には、図示してはいないが、アライメントマークが形成されている。
【0056】
記録素子基板の第1の部材への貼り付けの際には、記録素子基板と第1の部材との間で位置ずれが生じる可能性がある。記録素子基板と第1の部材と間の貼り付けでは、位置ずれを補正することなく貼り付けが行われる。
【0057】
次に、記録素子基板と第1の部材とが接合された接合体105が、支持部材108に貼り付けられる。接合体105を支持部材108に接合する際には、まず、支持部材108におけるX、Y、Z方向の基準となる部分を治具に当接させ、ステージ上に固定された支持部材108上に、この接合体105を貼り付ける。その際には、
図11に示されるように、接合体105における記録素子基板208よりも外側に突出した吸着領域102をフィンガー69によって吸着し、フィンガー69を移動させて接合体105を支持部材108に当接させて接合させる。このとき、接着剤を介して接合体105が支持部材108に設置された状態で接合体105の位置を修正することにより、記録素子基板208の位置の微調整を行うことができる。
【0058】
接合体105のアライメントは、記録素子基板208に形成されたアライメントマークをカメラにより検知し、アライメントマークの位置を確認しながら、接合体105の位置を微調整する。支持部材108に接合体105が接合されると、支持部材108と接合体105とが接着剤を介して接した状態で、X、Y、θz方向にそれぞれ位置を合わせ、接合体105を所定位置に精度良く配置した後に接着剤を硬化させる。支持部材108に対し、接合体105によるZ方向への反り、うねり及び第1の部材の寸法のバラツキなどは、接合体105と支持部材108の接着剤の厚みで吸収することができる。接合体105におけるZ方向への位置精度は、マウンタによる接合体105の貼り付けの際の位置精度で決まる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドとしての記録ヘッドについて説明する。なお、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
第3実施形態では、治具に取り付けられた複数の接合体105を一括して支持部材108に取り付ける点で第1の実施形態及び第2実施形態と異なる。
【0061】
図12(a)〜(d)に、第3実施形態における記録ヘッドの製造工程について説明するための説明図を示す。第3実施形態に係る記録ヘッドは、第2実施形態と同様に、記録媒体の幅方向の全域に亘って延在するフルラインタイプの記録装置に適用されるラインヘッド形式のものである。
【0062】
記録素子基板208と第1の部材103とが接合された接合体105は、第2実施形態と同様の方法によって製造される。次に、複数の接合体105を、
図12(a)に示されるように、着脱可能な状態で治具1001に取り付ける。治具1001には、空気を吸引可能な吸着部1002が設けられている。吸着部1002によって空気を吸引することにより、接合体105を吸着し、接合体105を治具1001に取り付けることができる。
【0063】
接合体105における記録素子基板208と第1の部材103との間のアライメントは、第2実施形態と同様に、記録素子基板208上に設けられたアライメントマークをカメラ55によって検知しながら行われる。接合体105における記録素子基板208と第1の部材103との間のアライメントでは、記録素子基板208のX、Y、θzの位置補正が行われ、正確に取り付けが行われる。このようにして記録素子基板208と第1の部材103とが取り付けられた接合体105が、治具1001上に順次吸着固定される。
【0064】
図12(b)に、複数の接合体105が治具1001に取り付けられた状態の、接合体105及び治具1001の側面図を示す。また、
図12(c)に、複数の接合体105が治具1001に取り付けられた状態の、接合体105及び治具1001の斜視図を示す。
図12(c)は、記録素子基板208における吐出口面を示すために、治具1001を透過させて示した斜視図である。複数の接合体105が治具1001上に精度良く配列された後に、Z方向の基準に対して精度が出るように別の治具(不図示)に固定された支持部材108に、接合体105を、接着剤を介して接合させる。本実施形態では、治具1001に複数設置された接合体105を、支持部材108に一括して取り付ける。
【0065】
図12(d)に、複数の接合体105が設置された治具1001に支持部材108を近接させ、支持部材108に接合体105を当接させる際の、治具1001、接合体105及び支持部材108の側面図を示す。このように支持部材108に対し、複数の接合体105を一括して取り付けることにより、支持部材108への複数の接合体105の取り付け、接着剤の塗布、硬化を一度に行うことができる。従って、生産性を向上させることができる。その際には、支持部材108における接合体105との接合位置の全てに接着剤を予め塗布し、その後に支持部材108に複数の接合体105を一括して当接させることで、接合体105と支持部材108との間の貼り付けを行う。このとき、接着剤を、ある程度厚さを持たせて支持部材108に塗布することにより、支持部材108の部材の反り、うねりを、接着剤層で吸収することができる。
【0066】
本実施形態では、複数の接合体105が治具1001に取り付けられ、これらに対して支持部材108が一括して接合されることになるので、複数の接合体105同士の間でZ方向に沿う面精度については、高い精度が求められる。従って、複数の接合体105の取り付けられる治具1001に対しては、高い精度が求められる。
【0067】
なお、上記実施形態では、接合体105を治具1001上に並べる際に、接合体105における記録素子基板208が取り付けられた面を下方に向けて治具1001上に吸着固定しているが、本発明はこれに限定されない。接合体105における記録素子基板208が取り付けられた面を上方に向けて接合体105を支持部材108に取り付けてもよい。
【0068】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドについて説明する。なお、上記第1実施形態ないし第3実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0069】
図13(a)、(b)に、第4実施形態に係る記録ヘッドの側面図及び平面図を示す。
図13(a)には、記録素子基板208と第1の部材103とが接合された第2の接合体105が、支持部材108に貼り付けられる際の、接合体105及び支持部材108について示した側面図である。また、
図13(b)は、第2の接合体105が貼り付けられた支持部材108について示した平面図である。
【0070】
第4実施形態では、記録素子基板208及び第1の部材103が貼り付けられた接合体105が、支持部材108上に、千鳥状に配列されている。接合体105における記録素子基板208と第1の部材との間の貼り付け及び接合体105の支持部材108への取り付けについては、上記第2実施形態及び第3実施形態と同様である。
【0071】
支持部材108への複数の接合体105の並びをこのように配置したとしても、実装については上記第2実施形態及び第3実施形態の方法によって実装することが可能である。
【0072】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、記録素子基板と支持部材とが接合された接合体は、接合体を吸着可能なフィンガーによって吸着され、吸着された接合体が支持部材に対応した位置まで移動されて支持部材に取り付けられている。しかしながら、本発明における接合体の支持部材への貼り付けでは、接合体を保持する保持手段は、接合体を吸着によって保持する形態に限定されない。接合体を支持部材に精度良く配置するために、確実に接合体を保持することができるのであれば、接合体を把持する等、接合体を保持する手段は、他の形態であってもよい。
【0073】
また、本明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わずに用いられる。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または記録媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0074】
また、「記録装置」とは、プリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置などのプリント機能を有する装置、ならびにインクジェット技術を用いて物品の製造を行なう製造装置を含む。
【0075】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものを表すものとする。
【0076】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。