(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得手段は、前記色再現特性として、凹凸の特性を示す値と、前記凹凸の表面に前記出力機器が表現可能な色域とを関連付けた色域テーブルを取得することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
前記重要性を示す評価値は、前記取得した凹凸信号から算出した、隣接画素間の差分値の統計量、振幅及び周波数、あるいは周波数特性と視覚伝達関数の畳み込み演算により算出した値のいずれか一つを含むことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照して、本発明を好適な実施例に基づいて詳細に説明する。なお以下の実施例において示す構成は一例にすぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0009】
以下で説明する実施例では、無彩色の凹凸形状の上層に着色層を印字するプリンタにおいて、凹凸形状による色再現の違いによる画質劣化を防ぐ例を説明する。ここでは、各実施例の説明に先立って、凹凸形状による色再現範囲(例えば色域)の変動が生じることを
図1を用いて説明する。
【0010】
図1(a)は、横軸を彩度、縦軸を明度とした色域を表す。また、
図1(b)及び
図1(c)は、異なる形状の凹凸層に等量の色材を印字した結果を機材断面方向から観察した模式図であり、黒塗りの領域は着色層を表している。
図1(b)及び
図1(c)に示すように、凹凸層の形状によって色材の被覆率が異なる。そして
図1(c)に示すように、凹凸層の周波数及び振幅が大きい程、着色後の凹凸層の露出面積が大きくなる。したがって、
図1(b)に示す平滑面にて
図1(a)の長鎖線で示す色域が得られていたプリンタを用いる場合であっても、
図1(c)に示す形状では凹凸層である白色の露出により低明度部にて色域が縮小する。その結果、
図1(c)で示す凹凸形状で再現できる色域は、
図1(a)の実線で示す色域となる。例えば
図1(a)中の点pの色は、
図1(b)に示す凹凸層上では再現可能であるが、
図1(c)に示す凹凸層では再現することができない。このように、凹凸形状によっては所望の色が再現できないことがある。
【0011】
本実施例では、対象物の凹凸形状及び色に応じて、色再現を優先し、狭色域化の原因となる高周波及び高振幅な凹凸を平滑化する。これにより平滑化された領域についての色域を拡大すること可能となり、適切な色再現結果を得ることができる。
【0012】
[実施例1]
本実施例に関わる再現対象の構成要素は、少なくとも色及び凹凸形状を含むものとし、本実施例において凹凸形状を有する着色プリント物を再現対象の例として説明する。ここで、色の数値表現には、例えばJISZ8729で計算されるCIELAB値あるいはCIELAB値からsRGB変換式にて計算されるRGB値が利用できる。また、凹凸形状の数値表現には、例えば基準面に対する高さが利用できる。
【0013】
(画像処理装置の概略構成)
図2は、実施例1の画像処理装置21の構成例を示す図である。画像形成装置は、CPU201、ROM202、RAM203、汎用I/F204、シリアルATA(SATA) I/F205、ビデオカード(VC)206を有する。また、画像処理装置21は、入力デバイス23、プリンタ24、ディスプレイ25、HDD27、汎用ドライブ28と接続されている。これらの入力デバイス23、プリンタ24、ディスプレイ25、HDD27、汎用ドライブ28を含めた構成を画像処理装置と呼んでもよい。
【0014】
CPU201は、RAM203をワークメモリとして、ROM202、ハードディスクドライブ(HDD)27、または各種記録メディアに格納されたオペレーティングシステム(OS)や各種プログラムを実行する。またCPU201は、システムバス207を介して各構成を制御する。なお、CPU201が実行するプログラムには、後述する画像処理などのプログラムが含まれる。
【0015】
汎用インタフェイス(I/F)204は、例えばUSBなどシリアルバスインタフェイスであり、シリアルバス22を介して、マウスやキーボードなどの入力デバイス23やプリンタ24などが接続される。
【0016】
シリアルATA(SATA) I/F205には、HDD27や各種記録メディアの読み書きを行う汎用ドライブ28が接続される。CPU201は、HDD27や汎用ドライブ28にマウントされた各種記録メディアをデータの格納場所として読み書きに利用する。
【0017】
ビデオカード(VC)206は、ビデオインタフェイスあり、ディスプレイ25が接続される。CPU201は、プログラムが提供するユーザインタフェイス(UI)をディスプレイ25に表示し、入力デバイス23を介してユーザ指示を含むユーザ入力を受信する。
【0018】
(画像処理システムの機能構成)
図3に示す図は、実施例1の画像処理装置を含む画像処理システムの機能構成を示すブロック図である。なお、前述のように
図3に示す構成を全てを含む装置を画像処理装置と呼んでもよい。画像処理装置21は、凹凸信号取得部301、色信号取得部302、色再現特性取得部303、補正領域算出部304、凹凸信号補正部305、信号出力部306を有する。また、HDD27は、外部記憶部308を有し、プリンタ24は出力部309を有する。
【0019】
本画像処理システムは、補正領域算出部304及び凹凸信号補正部305によって凹凸信号の補正処理を実行する。また、補正処理に必要なデータを凹凸信号取得部301、色信号取得部302及び色再現特性取得部303が外部記憶部308から取得し、補正処理を施した凹凸信号及び色信号を信号出力部306によって出力部309に出力する。
【0020】
(画像処理方法‐画像処理装置21における動作)
図4に示す図は、本画像処理のフローチャート図である。以下、
図4を用いて画像処理装置21における動作の詳細を説明する。尚、下記動作は、入力デバイス23を介してユーザによる所定の指示の入力を受け付けることにより実行される。また、下記の動作は前述のように、CPU201が、RAM203をワークメモリとして、ROM202、ハードディスクドライブ(HDD)27に格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0021】
先ず、ステップS401において凹凸信号取得部301は、外部記憶部308から再現する対象物の凹凸データを取得する。凹凸データは、対象物の各位置の凹凸信号から構成されている。すなわち、凹凸信号取得部301は、凹凸信号を対象物の位置毎に取得する。対象物の各位置をxy軸、高さをz軸とし、xyzの3軸上で対象物の凹凸信号を表した例を
図5(a)に示す。また、あるyにおけるxz平面の断面を
図5(b)示す。本実施例において、取得する対象物の凹凸信号は、対象物の各座標xyの高さz値を画素値に変換した2次元画像とし、この2次元画像のことを以下、凹凸画像と呼ぶ。すなわち、ステップS401では凹凸信号取得部301は、対象物の位置毎の高さを規定した凹凸画像を示す凹凸データを取得する。尚、
図5(c)は、
図5(a)に示す凹凸信号を凹凸画像上にて表した一例である。
【0022】
次に、ステップS402において色再現特性取得部303は、外部記憶部308から出力機器の色再現特性を取得する。出力機器とはプリンタ24を指し、色再現特性とは例えば形状に応じたプリンタ24の色域テーブルを表す。ここで、色域に影響を及ぼす形状パラメータを基準面に対する法線角度nとすると、色再現特性のデータは例えば
図6に示す形式で保持することができる。
図6におけるnは法線角度、また、L、a、b、はCIELAB値を指し、法線角度nごとに、例えばRGBを均等に9スライスした計729色(9^3)のCIELAB値(色域)を対応付けた色域テーブルが外部記憶部308に保持されている。尚、法線角度は凹凸信号すなわち高さから算出することができる。色域に影響を及ぼす形状パラメータの例として法線角度を用いたが、凹凸信号の2次元画像データを周波数画像に変換して得た振幅及び周波数であっても構わないし、隣接画素間の高さの差分値の総和などを用いてもよい。すなわち、ここで形状パラメータとして法線角度と色域とが対応付けられた色域テーブルを色再現特性として取得する例を説明したが、凹凸信号の振幅及び周波数と色域とを対応付けたテーブルでもよい。また、凹凸信号の隣接画素間の高さの差分値の総和と色域とを対応付けたテーブルを色再現特性としてもよい。形状パラメータは凹凸の特性を示す値ともいえる。色域テーブルは、この凹凸の特性を示す値と、凹凸の表面に出力機器で再現可能な色域とを関連付けたテーブルである。
【0023】
次に、ステップS403において色信号取得部302は、外部記憶部308から再現する対象物の色データを取得する。色データは、対象物の位置毎の色信号から構成される。すなわち、色信号取得部302は色信号を対象物の位置毎に取得する。本実施例において、取得する対象物の色信号は、対象物の各座標xyのCIELAB値を3チャネルの画素値に変換した2次元画像とし、以下、色画像と呼ぶ。すなわち、ステップS403で色信号取得部302は、対象物の位置毎の色を規定した色画像を示す色データを取得する。
【0024】
次に、ステップS404において補正領域算出部304は、ステップS401で取得した対象物の凹凸データと、ステップS402で取得したプリンタ24の色再現範囲と、ステップS403にて取得した対象物の色データとに基づいて、補正領域を算出する。具体的には、補正領域算出部304はステップS401で取得した凹凸データが示す凹凸画像中の補正領域を算出する。当該処理の詳細については後述する。
【0025】
次に、ステップS405において凹凸信号補正部305は、凹凸画像の補正処理を実行する。補正処理とは、凹凸画像中においてステップS404にて補正領域と判定した画素値を平滑化する処理を指す。本実施例において平滑化には、近傍画素の重み付けの無い単純な平均値に置換する単純移動平均フィルタを用いるが、εフィルタやバイラテラルフィルタなど、データ依存型フィルタを用いても構わない。
【0026】
最後に、ステップS406において信号出力部306は、ステップS405にて補正した凹凸画像を示す凹凸データ及びステップS403にて取得した色データをプリンタ24の出力部309に出力する。
図5(c)に示す凹凸画像を補正した補正後の凹凸画像の例を
図5(f)に示す。
図5(d)、(e)はそれぞれ、
図5(a)、(b)に対応する、補正後の凹凸信号を示している。尚、
図5に示す凹凸画像の例では、ステップS404にて、全領域を補正領域と判定し、ステップS407にて全領域に平滑化処理を施した結果である。もちろん、一部の領域が補正対象の領域と判定される場合には、その一部の領域に平滑化処理が施されることになる。
【0027】
(補正領域算出処理の詳細)
以下、ステップS404において補正領域算出部304で実行される補正領域算出処理の詳細を、
図7を用いて説明する。
【0028】
先ず、ステップS701において補正領域算出部304は、凹凸画像及び色画像をN個の所定の単位領域に分割して、番号付けを行う。以下のステップS703乃至S710に記す処理は、当該領域ごとに処理されるものである。尚、当該領域は画像の1画素以上から成る領域であればよい。本実施例では、凹凸画像と色画像とは同じ画素数の画像であり、それぞれの領域は互いに対応しているものとする。本実施例では、1画素を1領域として扱う。この領域のことをパッチと称する。また、番号付けは、画像右上を0としてラスタースキャン順に番号を割り当てが、これに限定する必要は無い。
【0029】
次に、ステップS702において補正領域算出部304は、以下のステップS703乃至S709に記す処理を施す初期パッチ、すなわちステップS701において0と番号付けた画素を処理対象パッチに指定する。
【0030】
次に、ステップS703において補正領域算出部304は処理対象パッチのCIELAB値を色画像から取得する。またステップS704において補正領域算出部304は、処理対象パッチの法線角度を凹凸画像から取得する。補正領域算出部304は、法線角度を凹凸画像の処理対象パッチ(画素)及びその隣接パッチ(画素)の値、すなわち高さから算出する。具体的には、先ず、凹凸画像上の座標をxy、高さをzとしたxyz座標において、処理対象パッチ(a,b,c)および隣接パッチ(a+1,b,d)、(a,b+1,e)から成る2つのベクトルA=(1,0,d−c)、B=(0,1,e−c)を算出する。次にA及びBの外積によって法線ベクトルCを求め、法線ベクトルの角度を算出することで法線角度を取得する。尚、法線角度については、算出時に他の隣接パッチを利用して求めても構わない。ここで取得した法線角度をnとする。ステップS402において取得する色再現特性が、前述のように凹凸の周波数及び振幅といった異なるパラメータに応じて色域を保持している場合は、凹凸画像からこれらのパラメータを算出する。
【0031】
次に、ステップS705において補正領域算出部304は、ステップS704で取得した法線角度nに応じた出力機器の色域を取得する。具体的には、ステップS402にて取得した法線角度ごとのプリンタ色域を格納した、
図6に示すような色域テーブルを参照し、法線角度nに対応した色域を抽出する。ここで、対応する色域が得られない場合は、法線角度nと色域テーブルに格納されている各法線角度との差分を算出し、差分が最も小さい法線角度に対応する色域を抽出してもよい。あるいは、2つの色域を法線角度の差分に基づいた比率によって補間した色域を用いても構わない。補間演算は、法線角度n1、n2における輝度値をL1、L2、法線角度nにおける輝度値をLとした場合、例えば次式によって算出することができる。
L=(L1×(n2−n) + L2×(n−n1))/(n2−n1) 式(1)
ここで、n2>n、n>n1とし、各色、a及びbについて同様に算出する。
【0032】
次に、ステップS706において補正領域算出部304は、ステップS703にて取得した処理対象パッチのCIELAB値が、ステップS705にて取得した色域の範囲内か否かを判定する。色域内である場合は、ステップS710へ処理を移行する。色域外である場合は、ステップS707へ処理を移行する。
【0033】
次に、ステップS707において補正領域算出部304は、処理対象パッチの凹凸評価値を算出する。凹凸評価値とは、対象物の凹凸信号の重要性を現した数値であり、色の再現精度より凹凸信号の再現精度を優先するか否かの判定に用いる。本実施例においては、処理対象パッチを2次元フーリエ変換によって周波数データに変換し、周波数特性と視覚伝達関数(VTF)の畳み込み演算した値を用いる。ただし、対象パッチが2次元画像領域のデータではなく1画素である場合、当該処理においてのみ対象パッチを拡張した領域を処理対象領域として扱う。尚、評価値は例えば周波数、または振幅を直接用いてもよいし、これらを個々に評価値として保持し、2つの値を独立に扱ってもよい。あるいは、周波数データに変換せず、凹凸の隣接画素間の差の総和あるいは分散といった統計量を用いてもよい。
【0034】
次に、ステップS708において補正領域算出部304は、所定の閾値を用いて、ステップS707にて算出した評価値が閾値以上か否か判定する。当該判定によって閾値以上と判定した場合、すなわち、凹凸部分の視認性が高い場合には、対象物の凹凸再現の精度を優先し、当該領域の凹凸信号を補正対象とせず、ステップS710へ処理を移行する。閾値未満と判定した場合、すなわち、凹凸部分の視認性が低い場合には、色再現の精度を優先し、当該領域の凹凸信号を補正対象とするため、ステップS709へ処理を移行する。
【0035】
次に、ステップS709において補正領域算出部304は、対象パッチを補正領域として記憶する。記憶方法として、例えば、凹凸画像と同画素数であり初期値を全て0とした画像を予め作成し、補正領域と判定した対象領域内の画素値を1に置換する手法を用いる。
【0036】
次に、ステップS710において補正領域算出部304は、番号付けした全パッチに対して補正領域か否かの判定、すなわちステップS703乃至ステップS709に記載の処理が実行されたか確認を行う。本実施例では、番号に従って昇順に処理を施すものとし、対象パッチの番号がN−1である場合、全パッチに対する処理が為されたものとし、補正領域算出部304における処理を終了する。対象パッチの番号がN−1より小さい場合、ステップS711において、対象パッチを次の番号のパッチに変更する。なお、対象パッチの数はNであるものとする。
【0037】
以上、本実施例によれば、所望の色再現が得られない領域を判別し、当該領域の凹凸再現の重要性に応じて凹凸信号の平滑化処理を実施する。このような平滑化処理を実施することで、処理領域の色再現範囲を拡大し、所望の色再現結果を得ることが可能となる。一方で、所望の色再現が得られない領域であっても凹凸再現の重要性が高い領域については凹凸信号の平滑化を行わずに凹凸再現を優先することができる。なお、凹凸再現の重要性が低い領域については凹凸形状を補正したとしても視認性に与える影響は少なくて済む。
【0038】
(変形例1)
本実施例では、ステップS707において凹凸画像のみから凹凸評価値を算出し、凹凸を補正するか否かを決定するための指標に用いたが、光源あるいは観察位置情報を加えて算出した値を凹凸評価値として定義してもよい。例えば、観察位置を対象の正対位置に予め設定し、光源を平行光源として対象物への入射角度θに予め設定する。そして、当該情報と凹凸画像とから、各領域における凹凸によって生じる遮蔽領域すなわち陰影となる領域を算出し、当該領域面積を評価値としても構わない。この具体例を
図8に示すフローチャートを用いて説明する。尚、当該処理はステップS707にて補正領域算出部304が処理する。
【0039】
ステップS801において補正領域算出部304は、光源入射角度を取得する。本変形例において、当該角度は予め画像処理装置21にプリセットした値を用いるが、凹凸信号取得部301のように、画像処理装置21中に光源入射角度取得部を設け、外部記憶部308などから取得してもよい。以下、ステップS801で取得した平行光源は、xyzの3軸において、y軸に平行であり、x軸と成す角がθ度であるものとして説明する。
【0040】
ステップS802において補正領域算出部304は、対象パッチの凹凸による遮蔽領域を算出する。平行光源下における遮蔽領域の算出方法を
図9を用いて説明する。
図9は対象パッチを通るxz平面の凹凸信号を表す。先ず、xz平面において、対象パッチpからx軸方向に、x軸と成す角θの直線lを引く。次に、各x値における直線lの高さ(z値)と対象物の凹凸信号の高さ(z値)との比較を行い、直線lの高さが対象物の凹凸信号の高さ以下、かつ、点pからの距離が最小の点qを探索する。以上、導出した点q及び点p間の凹凸信号を遮蔽領域とする。
【0041】
ステップS803において補正領域算出部304は、対象パッチの凹凸による遮蔽領域の面積を凹凸評価値として保持する。遮蔽領域の面積を凹凸評価値とするということは例えば遮蔽領域の面積が大きい場合には凹凸評価値も高くなる。つまり、遮蔽領域の面積が大きいということは凹凸の重要性が高いということであるので、対象パッチの影響により生じる遮蔽領域の面積が大きい場合には凹凸再現性を優先する処理が行われることになる。
【0042】
本実施例において観察位置を対象の正対位置と定義したため、遮蔽領域の面積とは遮蔽領域のxy平面上の距離を指す。さらに、上記の入射角度の例では、遮蔽領域はx軸に平行な線となるため、
図9中のaで示す長さに相当する。当該観察位置は正対位置に限定せず、凹凸信号取得部301のように、画像処理装置21中に観察角度取得部を設け、外部記憶部308などから取得し、視点位置に応じた面積計算を行ってもよい。
【0043】
(他の変形例)
実施例1では、プリンタ24によって凹凸再現を行うため、画像処理装置21は補正した対象物の凹凸信号をプリンタ24に出力する例を説明したが、出力先はこれに限定するものではない。例えば、HDD27または汎用ドライブ28に接続した記憶装置に出力する構成でもよい。また、
図3に示す画像処理装置21に示す各部301乃至306は、プリンタ24に含まれる構成であってもよし、HDD27における外部記憶部308は画像処理装置21またはプリンタ24に含まれる構成であってもよい。
【0044】
実施例1では、対象の色が色域内か否かを判定した後は色に関わらず一様な処理を行っていた。しかしながら、当該色域で対象の色を再現した場合の再現誤差を算出し、この誤差を補正領域と指定するための条件として加えてもよい。色の再現誤差とは、LAB空間における最短距離、すなわち色差を用いることができる。例えば、色域外であっても色差が小さい場合は凹凸補正による色再現精度の改善効果が小さいため、色差が所定の閾値以下である場合は色域内として扱ってもよい。また、ステップS708にて、凹凸評価値と比較する閾値に当該色差を反映してもよい。
【0045】
[実施例2]
実施例1では、所定の条件に基づいて凹凸信号の補正を実行する例を示したが、当該補正条件について、ユーザが任意に設定してもよい。本実施例では、補正条件をユーザが任意に選択する場合について、
図10に示すフローチャートを用いて画像処理装置の一連動作を説明する。尚、実施例1と同じ処理については同じ番号を付与し、詳細な説明を省略する。
【0046】
(画像処理装置における動作)
先ず、ステップS1001においてCPU201は、プログラムが提供するユーザインタフェイス(UI)をディスプレイ25に表示し、入力デバイス23を介してユーザ指示を含むユーザ入力を受信する。
図11に表示するUIの一例を示す。ボタン1101、1102、1103は、それぞれ、対象の凹凸画像、対象の色画像、出力機器の色再現特性を記録したファイルを指定するためのボタンである。スライダーバー1104は、凹凸データの補正条件を選択するためのものであり、当該スライダーを調整することで、凹凸形状または色の優先度合を選択することができる。本実施例において、当該スライダーバーによって補正処理の反復回数を決めるものとし、色を優先する場合は反復回数を多く、凹凸を優先する場合は反復回数を少なく設定する。ボタン1105は、以下の処理を開始するためのボタンであり、ボタン1101乃至1104にて各種情報を入力した後、ボタン1105を押下することで
図10のステップS401へと処理を移行する。また、ボタン1105を押下した後、ステップS1004において補正処理が終了すると判定されるまで、当UI1100はユーザの入力の受信を停止する。
【0047】
ステップS1001に続くステップS401からS403は実施例1と同様の処理であるので説明は省略する。
【0048】
次に、ステップS1002において、凹凸信号補正部305は、処理回数を表すカウンタを0に初期化する。次に、ステップS404において補正領域算出部304は凹凸信号の補正を行う領域か否かを判定し、補正を行なう領域である場合、ステップS405にて凹凸信号補正部305が、補正領域と判定された領域の凹凸信号の補正を行う。
【0049】
次に、ステップS1003において、処理回数を表すカウンタを更新する。具体的には、カウンタ値に1加算する。
【0050】
次に、ステップS1004において、凹凸信号補正部305は、補正処理が終了したか否かを判定する。具体的には、ステップS1001にてユーザが指定した反復回数に、カウンタ値が達したか否かの判定を行う。カウンタ値が指定した回数に達していた場合はステップS1005へと処理を移行し、達していない場合はステップS404へと処理を移行する。尚、再度ステップS404にて補正処理を行う凹凸画像は、前記ステップS405にて補正処理を施したデータを用いる。
【0051】
次に、ステップS1005において凹凸信号補正部305は、
図8に示すUI1100中の表示領域1106に、補正前の凹凸画像、及び、補正後の凹凸画像を表示する。また、UI1100はユーザ入力の受信停止を解除する。
【0052】
ステップS1006においてCPU201はユーザからの凹凸信号の出力指示の入力を受け付ける。例えばユーザは、ステップS1005で表示された凹凸画像を確認して補正処理を施した凹凸信号を出力するか判断し、出力する場合は出力指示を行う。具体的には、
図8に示すUI1100中のボタン1107を押下し、出力場所及び出力ファイル名を指示した後、ボタン1108を押下する。
【0053】
最後に、ステップS406において、信号出力部306は、補正した凹凸画像を示す凹凸データ及び色データを出力部309に出力する。
【0054】
以上、本実施例によれば、ユーザによる凹凸または色の優先度合を反映した再現結果を得るための、凹凸信号の補正を行うことが可能となる。
【0055】
(他の変形例)
上記実施例では、補正処理の反復回数によって色または凹凸の優先度合を反映したが、異なるパラメータによって優先度合を反映してもよい。例えば、補正処理である平滑化には、近傍画素の重み付けの無い単純な平均値に置換する単純移動平均フィルタを用いると説明したが、当該フィルタサイズをユーザが選択することで優先度合を調整する形態でも構わない。また、反復処理の条件として、本実施例の様に設定した回数ではなく、画像中の色域外の面積率等を用いてもよく、例えば、色域外の面積率を0以下と条件設定した場合、画像内の全色が色域内となるまで反復処理を行う。他に、各色の色差の総和など、画像の色再現の精度に基づく条件であれば構わない。さらに、上記色差および凹凸評価値から成る目的関数を定義し、当該目的関数の最適化を条件としてもよい。さらに、ステップS708に用いる閾値をユーザが指定する形態であってもよい。あるいは、色を優先する場合に、ステップS707及びステップS708における処理を省略した形態でもよい。
【0056】
上記実施例では、色画像上の各色が色域内か否かを示す2値画像を表示したが、これに他の情報を加えて表示してもよい。例えば、補正処理前後の、凹凸画像を表示してもよい。
【0057】
さらに、ユーザが指定する条件は、凹凸画像全域に一様に指定せず、領域に応じて指定し、条件を切り替える形態であっても構わない。
【0058】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。