(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組成物中に含まれる前記連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物の質量をMa、前記式(1)で示される化合物の質量をMbとしたとき、0.02≦Mb/(Ma+Mb)≦0.20である請求項1から5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
前記組成物中に含まれる前記連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物の質量をMa、前記式(1)で示される化合物の質量をMbとしたとき、0.02≦Mb/(Ma+Mb)≦0.20である請求項8から12のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
請求項1から7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電子写真感光体は、支持体、および支持体上に設けられた感光層を有する。この電子写真感光体が、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物と、下記式(1)で示される化合物とを含む組成物の硬化物を含有する表面層を有することを特徴とする。
【化5】
(R
1は水素原子またはメチル基である。M
1は下記式(2)で示される1価の官能基である。)
【化6】
(R
2は炭素数が9以上の直鎖あるいは分岐した無置換のアルキル基である。R
3はエチレン基、1,2−プロピレン基または1,3−プロピレン基である。nは1以上4以下の整数である。)
【0017】
本発明者らは、上記特徴を有することにより、耐傷性が高く高耐久で、かつ潤滑性不足や電位変動による画像不良を抑制する作用機序について、以下のように推測している。
【0018】
連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物の硬化物を含有する表面層は、耐摩耗性が高い一方で、その耐摩耗性の高さから、スジ状の画像不良が発生しやすい。スジ状の画像不良の発生は、トナー成分が電子写真感光体表面に融着することにより、ブレード挙動が不安定になることによると推測されている。そこで、フッ素原子含有化合物やシロキサン化合物といった潤滑材を用いることにより、これら潤滑材の表面移行性の高さから表面層の表面に存在しやすいことで、ブレード挙動を安定させ、スジ状の画像不良を抑制している。
【0019】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、フッ素原子含有化合物やシロキサン化合物のような表面移行性が高いという特徴を有する潤滑材を用いると、画像不良改善効果が早期になくなる場合があることがわかった。これは、電子写真感光体の表面層のごく表面にのみ存在する潤滑材が繰り返し使用を通じてクリーニング手段によって削り取られることで、表面層中の表面付近の潤滑材の含有量が少なくなっていることが原因であると考えられる。
【0020】
本発明では、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物と式(1)で示される化合物を含む組成物の硬化物を表面層に含むことにより、繰り返し使用を通じて、適度な潤滑性を維持することができていると考えられる。そして、正孔輸送性化合物の連鎖重合性官能基と、式(1)で示される化合物のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基の重合反応により、表面層の深さ方向の内部にもこの式(1)で示される化合物の重合物が存在することになる。さらに、式(1)で示される化合物は、アルキレンオキサイド基を含有しており、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物との親和性が高く、表面移行性を抑制することができる。そのため、表面層の表面がクリーニング手段等によって削り取られたとしても長期にわたって潤滑性が維持され、繰り返し使用時のスジ状の画像不良を抑制していると考えられる。また、両者の重合反応の結果、表面層において正孔輸送性化合物における二重結合等の連鎖重合性官能基残基が減少し、膜強度(表面層の強度)の向上、耐傷性の向上につながっていると考えられる。なお、本発明において連鎖重合性官能基とは連鎖重合が可能な官能基を意味し、連鎖重合とは高分子物の生成反応を大きく連鎖重合と逐次重合に分けた場合の前者の重合反応形態を指す。ビニル基を有する構造等が連鎖重合性官能基である。
【0021】
組成物が含む連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物や式(1)で示される化合物は、それぞれ、1種でもよく、また、2種以上でもよい。
【0022】
式(2)で示される1価の官能基のR
2は炭素数が9以上の直鎖あるいは分岐した無置換のアルキル基である。炭素数が8以下であると、潤滑効果が減少し、前述のとおりブレード挙動が不安定となったスジ状の画像不良が発生する場合がある。また、式(2)で示される1価の官能基のR
2にビニル基が含まれると、正孔輸送性化合物の重合反応が阻害され、膜強度が低下する。
【0023】
特に好ましくは、式(2)で示される1価の官能基のR
2は炭素数9以上14以下の直鎖あるいは分岐した無置換のアルキル基である。
【0024】
式(2)で示される1価の官能基を構成する原子のうち、酸素原子の比率は2原子%以上5原子%以下の範囲内であることが好ましい。すなわち、式(2)で示される1価の官能基を構成する炭素原子、酸素原子及び水素原子の合計量に対し、酸素原子の比率が2原子%以上5原子%以下であることが好ましい。この範囲内であると、最適な潤滑性が維持され、スジ状の画像不良が長期にわたって抑制される。
【0025】
式(2)で示される1価の官能基のR
3はエチレン基、1,2−プロピレン基または1,3−プロピレン基である。特に好ましくは、R
3はエチレン基である。
【0026】
式(2)で示される1価の官能基のnは1以上4以下である。特に好ましくは、nは2である。
【0027】
以下に、式(1)で示される化合物の具体例(例示化合物)を示す。
例示化合物中のアクリロイルオキシ基を、メタクリロイルオキシ基に変更したものを用いてもよい。
【0031】
組成物中に含有される連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物の質量をMa、式(1)で示される化合物の質量をMbとしたとき、0.02≦Mb/(Ma+Mb)≦0.20であることが好ましい。この範囲内であると、適度な潤滑性が維持されるため、より高レベルでスジ状の画像不良が抑制され、かつ電位変動が抑制される。
【0032】
電子写真感光体の表面層が、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物と、式(1)で示される化合物と、シロキサン変性アクリル化合物とを含む組成物の硬化物を含有することが好ましい。それにより、更に潤滑性とその維持性が向上し、スジ状の画像不良が抑制される。シロキサン変性アクリル化合物とは、アクリル重合体に側鎖としてシロキサンが導入された化合物であり、例えばアクリル系単量体とアクリル基を有するシロキサンとを共重合させることにより得られる。
【0033】
シロキサン変性アクリル化合物の含有量は、上記連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物と式(1)で示される化合物の合計質量100質量部に対して1質量部以上6質量部以下であることが好ましい。
【0034】
連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物が有する正孔輸送性基としては、例えば、アルキル基を有してもよいトリアリールアミン化合物のベンゼン環やアルキル基の水素原子を除いて導き出される基、ヒドラゾン化合物のベンゼン環の水素原子を除いて導き出される基、または、スチルベン化合物のベンゼン環の水素原子を除いて導き出される基が挙げられる。
【0035】
上記連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物としては、下記式(3)で示される化合物であることが好ましい。
【化7】
(式(3)中、P
1は、下記式(4)または下記式(5)で示される基である。
aは2以上4以下の整数であり、a個のP
1は同一であっても異なっていてもよい。
Zは正孔輸送性基を示し、該ZのP
1との結合部位を水素原子に置き換えた水素付加物は、下記式(6)、または下記式(7)で示される化合物である。
【化8】
【化9】
【化10】
(式(6)中、R
4、R
5及びR
6は置換基として炭素数1以上6以下のアルキル基を有してもよいフェニル基を示す。また、R
4、R
5及びR
6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化11】
(式(7)中、R
7、R
8、R
9及びR
10は置換基として炭素数1以上6以下のアルキル基を有してもよいフェニル基を示す。また、R
7、R
8、R
9及びR
10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0036】
表面層は、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物と、上記式(1)で示される化合物とを含む組成物を含有する表面層用塗布液を調製し、表面層用塗布液の塗膜を形成して、この塗膜を硬化させることによって形成することができる。表面層形成用塗布液は、各種添加剤を含有してもよい。中でも、酸化性ガスによる劣化防止を目的にウレア化合物を添加することが好ましい。
【0037】
表面層が保護層である場合、その膜厚は0.1μm以上15μm以下であることが好ましい。さらには0.5μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0038】
表面層用塗布液の調製に用いる溶剤としては、表面層の下に設けられる層を溶解しない溶剤を使用することが好ましい。より好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール系溶剤である。
【0039】
表面層用塗布液の塗膜を硬化させる手段としては、熱、紫外線、または電子線によって硬化させる方法が挙げられる。表面層の強度、電子写真感光体の耐久性を維持するためには、紫外線または電子線を用いて硬化させることが好ましい。
【0040】
電子線を用いて連鎖重合性官能基を有する正孔輸送物質および上記式(1)で示される化合物を重合させると、非常に緻密(高密度)な硬化物(3次元架橋構造)が得られ、より高い耐久性を有する表面層が得られるため、好ましい。電子線を照射する場合、加速器としては、例えば、スキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型、ラミナー型などが挙げられる。
【0041】
電子線を用いる場合、電子線の加速電圧は、重合効率を損なわずに電子線による材料特性劣化を抑制できる観点から、120kV以下であることが好ましい。また、表面層用塗布液の塗膜の表面での電子線吸収線量は、5kGy以上50kGy以下であることが好ましく、1kGy以上10kGy以下であることがより好ましい。
【0042】
また、電子線を用いて上記組成物を硬化(重合)させる場合、酸素による重合阻害作用を抑制する目的で、不活性ガス雰囲気で電子線を照射した後、不活性ガス雰囲気で加熱することが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムが挙げられる。
【0043】
また、紫外線または電子線の照射後に、電子写真感光体を100℃以上150℃以下に加熱することが好ましい。こうすることで、更に高い耐久性を有し、画像不良を抑制する表面層が得られる。
【0044】
次に本発明の電子写真感光体の全体的な構成について説明する。
【0045】
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、支持体、支持体上に形成された感光層を有する。感光層としては、電荷発生物質および電荷輸送物質をともに含有する単層型感光層、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型感光層が挙げられる。本発明においては、積層型感光層が好ましい。
【0046】
図2は、電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
図2中、電子写真感光体は、支持体21、下引き層22、電荷発生層23、電荷輸送層24、及び、保護層25を有する。この場合、電荷発生層23及び電荷輸送層24が感光層を構成し、保護層25が表面層である。また、保護層を設けない場合は、電荷輸送層24が表面層である。本発明においては、電荷輸送層上に設けられた保護層を表面層とすることが好ましい。
【0047】
そして、表面層は、上述したように、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物と上記式(1)で示される化合物とを含む組成物の硬化物を含有する。以下、保護層を有し該保護層が表面層である電子写真感光体を例に、本発明の電子写真感光体をさらに説明する。
【0048】
〔支持体〕
電子写真感光体に用いられる支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましい。例えば、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、チタン、鉛、ニッケル、スズ、アンチモン、インジウム、クロム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属または合金製の支持体が挙げられる。また、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム−酸化スズ合金などを真空蒸着によって形成した被膜を有する金属製支持体や樹脂製支持体を用いることもできる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子などの導電性粒子を樹脂に含浸させて形成された支持体、導電性樹脂を含有する支持体を用いることもできる。支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状または板状等が挙げられるが、本発明においては円筒状が好ましい。
【0049】
支持体の表面は、レーザー光の散乱による干渉縞の抑制を目的として、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理などを施してもよい。
【0050】
支持体と、感光層または下引き層との間には、レーザー等の散乱による干渉縞の抑制や、支持体の傷の被覆を目的として、導電層を設けてもよい。
【0051】
導電層は、導電性粒子を結着樹脂および溶剤とともに分散処理して得られる導電層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
【0052】
導電層に用いられる導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属の粒子や、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、ITOなどの金属酸化物の粒子などが挙げられる。また、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズを用いてもよい。
【0053】
導電層用塗布液の溶剤としては、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素溶剤等が挙げられる。導電層の膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、さらには0.5μm以上40μm以下であることがより好ましく、さらには1μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0054】
導電層に用いられる結着樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂が挙げられる。
【0055】
支持体または導電層と、電荷発生層との間には、下引き層(中間層)を設けてもよい。
【0056】
下引き層は、結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる下引き層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
【0057】
下引き層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド樹脂、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド樹脂、N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂、共重合ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0058】
下引き層には、さらに、金属酸化物粒子を含有させてもよい。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムを含有する粒子が挙げられる。また、金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子の表面がシランカップリング剤などの表面処理剤で処理されている金属酸化物粒子であってもよい。
【0059】
下引き層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素系溶剤、芳香族化合物などの有機溶剤が挙げられる。下引き層の膜厚は、0.05μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上25μm以下であることがより好ましい。下引き層には、さらに、有機樹脂微粒子、レベリング剤を含有させてもよい。
【0060】
〔感光層〕
支持体、導電層または下引き層上には、感光層が設けられる。
【0061】
積層型感光層である場合、電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂を溶剤と混合し、分散処理して得られた電荷発生層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させることによって形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。
【0062】
電荷発生層に用いられる電荷発生物質としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、トリフェニルメタン色素、キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、シアニン染料、アントアントロン顔料、ピラントロン顔料、キサンテン色素、キノンイミン色素、スチリル色素などが挙げられる。電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。電荷発生物質の中でも、感度の観点から、フタロシアニン顔料やアゾ顔料が好ましく、特にはフタロシアニン顔料がより好ましい。
【0063】
フタロシアニン顔料の中でも、特にオキシチタニウムフタロシアニンあるいはクロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが優れた電荷発生効率を示す。さらに、ヒドロキシガリウムフタロシアニンの中でも、感度の観点から、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θの7.4°±0.3°および28.2°±0.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶がより好ましい。
【0064】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等のビニル化合物の重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0065】
電荷発生物質と結着樹脂との質量比(電荷発生物質:結着樹脂)は、1:0.3〜1:4の範囲であることが好ましい。
【0066】
分散処理方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルを用いる方法が挙げられる。
【0067】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、例えば、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素系溶剤、芳香族化合物が挙げられる。
【0068】
電荷発生層の膜厚は、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下であることがより好ましい。また、電荷発生層には、必要に応じて、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤を添加することもできる。
【0069】
次に、電荷輸送層について説明する。電荷輸送層は、電荷発生層上に形成される。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる電荷輸送層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
【0070】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂である。
【0071】
電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質としては、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、トリアリールメタン化合物、チアゾール化合物が挙げられる。電荷輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0072】
電荷輸送層における電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、結着樹脂1質量部に対して電荷輸送物質が0.3質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0073】
また、電荷輸送層のクラックを抑制する観点から、乾燥温度は60℃以上150℃以下が好ましく、80℃以上120℃以下がより好ましい。また、乾燥時間は10分以上60分以下が好ましい。
【0074】
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール溶剤、スルホキシド溶剤、ケトン溶剤、エーテル溶剤、エステル溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
【0075】
電荷輸送層の膜厚は5μm〜40μmであることが好ましく、特には10μm〜35μmであることがより好ましい。
【0076】
また、電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、金属酸化物粒子、無機粒子を必要に応じて添加することもできる。また、フッ素原子含有樹脂粒子やシリコーン含有樹脂粒子などを含有させても良い。
【0077】
そして、表面層である保護層は、上述したように、連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物と上記式(1)で示される化合物とを含有する表面層用塗布液を調製し、電荷輸送層上に表面層用塗布液の塗膜を形成して、この塗膜を硬化させることによって形成することができる。
【0078】
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、リング塗布法、スピン塗布法、ローラー塗布法、マイヤーバー塗布法、ブレード塗布といった塗布方法を用いることができる。
【0079】
〔電子写真感光体の表面に凹形状部を形成する方法〕
電子写真感光体に接触させるクリーニングブレードの挙動をより安定化させる目的で、電子写真感光体の表面層に凹形状部または凸形状部を設けることがより好ましい。
【0080】
上記凹形状部または凸形状部は、電子写真感光体の表面の全域に形成されていてもよいし、電子写真感光体の表面の一部分に形成されていてもよい。凹形状部または凸形状部が電子写真感光体の表面の一部分に形成されている場合は、少なくともクリーニングブレードとの接触領域の全域には凹形状部または凸形状部が形成されていることが好ましい。
【0081】
凹形状部を形成する場合は、形成するべき凹形状部に対応した凸部を有するモールドを圧接し、形状転写を行うことにより、凹形状部を形成することができる。
図3に、電子写真感光体の表面に凹形状部を形成するための圧接形状転写加工装置の例を示す。
【0082】
図3に示す圧接形状転写加工装置によれば、被加工物である電子写真感光体51を回転させながら、その表面(周面)に連続的にモールド52を接触させ、加圧することにより、電子写真感光体51の表面に凹形状部や平坦部を形成することができる。
【0083】
加圧部材53の材質としては、例えば、金属、金属酸化物、プラスチック、ガラスなどが挙げられる。これらの中でも、機械的強度、寸法精度、耐久性の観点から、ステンレス鋼(SUS)が好ましい。加圧部材53は、その上面にモールド52が設置される。また、下面側に設置される支持部材(不図示)および加圧システム(不図示)により、支持部材54に支持された電子写真感光体51の表面に、モールド52を所定の圧力で接触させることができる。また、支持部材54を加圧部材53に対して所定の圧力で押し付けてもよいし、支持部材54および加圧部材53を互いに押し付けてもよい。
【0084】
図3に示す例は、加圧部材53を電子写真感光体51の軸方向と垂直な方向に移動させることにより、電子写真感光体51が従動または駆動回転しながら、その表面を連続的に加工する例である。さらに、加圧部材53を固定し、支持部材54を電子写真感光体51の軸方向と垂直な方向に移動させることにより、または、支持部材54および加圧部材53の両者を移動させることにより、電子写真感光体51の表面を連続的に加工することもできる。
【0085】
なお、形状転写を効率的に行う観点から、モールド52や電子写真感光体51を加熱することが好ましい。
【0086】
モールド52としては、例えば、微細な表面加工された金属や樹脂フィルム、シリコンウエハーなどの表面にレジストによりパターニングをしたもの、微粒子が分散された樹脂フィルムや、微細な表面形状を有する樹脂フィルムに金属コーティングを施したものなどが挙げられる。
【0087】
また、電子写真感光体51に押し付けられる圧力を均一にする観点から、モールド52と加圧部材53との間に弾性体を設置することが好ましい。
【0088】
〔プロセスカートリッジおよび電子写真装置の構成〕
次に、
図1に電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0089】
図1において、円筒状の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度をもって回転駆動される。電子写真感光体1は、回転過程において、帯電手段(一次帯電手段)3により、その表面(周面)が正または負に帯電される。次いで、電子写真感光体1の表面には、露光手段(像露光手段)(不図示)から出力される露光光(像露光光)4が照射される。露光光4は、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調される。露光手段としては、スリット露光やレーザービーム走査露光などが挙げられる。こうして電子写真感光体1の表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0090】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、次いで、現像手段5内に収容されたトナーで現像(正規現像または反転現像)され、トナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により転写材7に転写される。ここで、転写材7が紙である場合、給紙部(不図示)から電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて、電子写真感光体1と転写手段6との間に給送される。また、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。また、転写手段は、一次転写部材、中間転写体および二次転写部材を有する中間転写方式の転写手段であってもよい。
【0091】
トナー像が転写された転写材7は、電子写真感光体1の表面から分離され、定着手段8へ搬送されて、トナー像の定着処理を受けることにより、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置外へプリントアウトされる。
【0092】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によってクリーニングされ、転写残トナーなどの付着物が除去される。転写残トナーは、現像手段などで回収することもできる。さらに、必要に応じて、電子写真感光体1の表面は、前露光手段(不図示)からの前露光光10の照射により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光手段は必ずしも必要ではない。
【0093】
上記の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数の要素を選択して容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に支持して構成する。このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。
図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9とを一体に支持してカートリッジ化する。そして、電子写真装置本体のレールのなどの案内手段12を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11としている。
【実施例】
【0094】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0095】
(実施例1)
直径30mm、長さ357.5mm、肉厚1mmのアルミニウムシリンダーを支持体(導電性支持体)とした。
【0096】
次に、酸化亜鉛粒子(比表面積:19m
2/g、粉体抵抗:4.7×10
6Ω・cm)100部をトルエン500部と撹拌混合し、これにシランカップリング剤0.8部を添加し、6時間攪拌した。その後、トルエンを減圧留去して、130℃で6時間加熱乾燥し、表面処理された酸化亜鉛粒子を得た。シランカップリング剤としては、信越化学工業(株)製のKBM602(化合物名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)を用いた。
次に、ポリオール樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量:40000、商品名:BM−1、積水化学工業(株)製)15部およびブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住化バイエルウレタン(株)製)15部をメチルエチルケトン73.5部と1−ブタノール73.5部の混合溶液に溶解させた。この溶液に上記表面処理された酸化亜鉛粒子80.8部、および2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン(東京化成工業(株)製)0.8部を加え、これを直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下で3時間分散した。分散後、シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レダウコーニング(株)製)0.01部、および架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(商品名:TECHPOLYMER SSX−103、積水化成品工業(株)製、平均一次粒径3μm)を5.6部加えて攪拌し、下引き層用塗布液を調製した。
この下引き層用塗布液を上記アルミニウムシリンダー上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を40分間160℃で乾燥させて、膜厚が18μmの下引き層を形成した。
【0097】
次にCuKα特性X線回折のブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.2°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を用意した。このヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶20部、下記式(A)で示される化合物0.2部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)10部およびシクロヘキサノン600部を、直径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した。その後、酢酸エチル700部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を温度80℃のオーブンで15分間加熱乾燥することにより、膜厚が0.17μmの電荷発生層を形成した。
【化12】
【0098】
次に、下記式(B)で示される化合物(電荷輸送物質)30部、下記式(C)で示される化合物(電荷輸送物質)60部、下記式(D)で示される化合物10部、ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ビスフェノールZ型)100部、下記式(E)で示される構造単位を有するポリカーボネート(粘度平均分子量Mv:20000)0.02部を、混合キシレン600部およびジメトキシメタン200部の溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を30分間100℃で乾燥させることによって、膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。
【化13】
(式(E)中、0.95および0.05は2つの構造単位のモル比(共重合比)である。)
【0099】
次に、上記例示化合物(I−6)10部、下記式(F)で示される正孔輸送性化合物90部、シロキサン変性アクリル化合物3.5部(BYK−3550、ビックケミー・ジャパン(株)製)、下記式(G)で示されるウレア化合物2部、1−プロパノール200部、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)100部を混合し、撹拌した。その後ポリフロンフィルター(商品名:PF−020、アドバンテック東洋(株)製)でこの溶液を濾過することによって、表面層用塗布液(保護層用塗布液)を調製した。
【化14】
【化15】
【0100】
この表面層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を10分間50℃で乾燥させた。その後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、ビーム電流5.0mAの条件で支持体(被照射体)を200rpmの速度で回転させながら、1.6秒間電子線を塗膜に照射した。なお、このときの電子線の吸収線量を測定したところ、15kGyであった。その後、窒素雰囲気下にて、塗膜の温度が25℃から117℃になるまで30秒かけて昇温させ、塗膜の加熱を行った。電子線照射から、その後の加熱処理までの酸素濃度は15ppm以下であった。次に、大気中において、塗膜の温度が25℃になるまで自然冷却し、塗膜の温度が105℃になる条件で30分間加熱処理を行い、膜厚5μmの保護層(表面層)を形成した。
【0101】
このようにして、保護層を有する凹部形成前の電子写真感光体を作製した。
【0102】
次に、圧接形状転写加工装置に型部材(モールド)を設置し、作製した凹部形成前の電子写真感光体に対して表面加工を行った。
具体的には、概ね
図3に示す構成の圧接形状転写加工装置に、
図4に示すモールドを設置し、作製した凹形状部形成前の電子写真感光体に対して表面加工を行った。
図4は、実施例及び比較例で用いたモールドを示す図であり、
図4(a)はモールドの概略を示す上面図、
図4(b)はモールドの凸部の電子写真感光体の軸方向の概略断面図(
図4(a)のS−S’断面の断面図)、
図4(c)はモールドの凸部の電子写真感光体の周方向の断面図(
図4(a)のT−T’断面の断面図)である。
図4に示されるモールドは、最大幅(モールド上の凸部を上から見たときの電子写真感光体の軸方向の最大幅のこと)X:50μm、最大長さ(モールド上の凸部を上から見たときの電子写真感光体の周方向の最大長さのこと)Y:75μm、面積率56%、高さH:4μmの凸形状)である。なお、面積率とは、モールドを上から見たときに表面全体に占める凸部の面積の比率である。加工時には、電子写真感光体の表面の温度が120℃になるように電子写真感光体およびモールドの温度を制御し、7.0MPaの圧力で電子写真感光体と加圧部材をモールドに押し付けながら、電子写真感光体を周方向に回転させて、電子写真感光体の表面層(周面)の全面に凹形状部を形成した。このようにして、電子写真感光体を製造した。
【0103】
得られた電子写真感光体の表面を、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、商品名:X−100)で50倍レンズにより拡大観察し、電子写真感光体の表面に設けられた凹形状部の観察を行った。観察時には、電子写真感光体の長手方向に傾きが無いように、また、周方向については、電子写真感光体の円弧の頂点にピントが合うように、調整を行った。拡大観察を行った画像を画像連結アプリケーションによって連結して一辺500μmの正方形領域を得た。そして、得られた結果については、付属の画像解析ソフトにより、画像処理高さデータを選択し、フィルタタイプメディアンでフィルタ処理を行った。
【0104】
上記観察の結果、凹形状部の深さは2μm、開口部の軸方向の幅は50μm、開口部の周方向の長さは75μm、面積は140000μm
2であった。なお、面積とは、電子写真感光体の表面を上から見たときの凹形状部の面積であり、凹形状部の開口部の面積を意味する。
【0105】
得られた電子写真感光体を、評価装置であるキヤノン(株)製の電子写真装置(複写機)(商品名:iR−ADV C5051)の改造機のシアンステーションに装着し、30℃80%RHにおける画像評価を行った。
【0106】
画像評価は、まず帯電工程の総放電電流量を100μAに設定し、装置内のカセットヒーター(ドラムヒーター)をOFFにした。その後、画像比率5%のテストチャートを用いて2000枚連続の画像形成を行ない、次にA4横、出力解像度600dpiの17階調の画像形成を行い、得られたA4全面の画像を以下のように評価した。
A:縦スジや画像流れが無く、画像再現性が良好である。
B:わずかに縦スジもしくは画像流れが見られるが、その他の部分については画像再現性が良好である。
C:拡大観察した際にやや不良が見られるが、画像再現性が良好である。
D:明確な縦スジもしくは画像流れが発生しており、画像再現性が低い。
引き続き、画像比率5%のテストチャートを用いて70000枚の連続画像形成を行なった。画像形成終了後、3日間放置し、その後上記と同様に、A4横、出力解像度600dpiの17階調の画像形成を行い、得られたA4全面の画像を評価した。
【0107】
また、小坂研究所製表面サーフコーダーSE3500を用い、カットオフを0.8mm、測定長さを8mm、測定スピード0.5mm/sの条件で、70000枚の連続画像形成後の電子写真感光体表面の粗さ(最大高さRmax)を求め、このRmax値を「傷深さ」とした。
【0108】
別途、同条件で1000枚連続の画像形成を行ない、電子写真感光体の電位の変動を調べた。値は、像露光部VLと非露光部VDの、1000枚後の電位と初期の電位との差を算出した。
【0109】
結果を表4に示す。なお、像露光部VLの「1000枚後の電位−初期の電位」をΔVL、非露光部VDの「1000枚後の電位−初期の電位」をΔVDと記載する。
【0110】
(実施例2)
例示化合物(I−6)を下記式(8)で示される化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価を行った。
【化16】
【0111】
(実施例3)
例示化合物(I−6)を例示化合物(I−8)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価を行った。
【0112】
(実施例4)
例示化合物(I−6)を例示化合物(I−9)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価を行った。
【0113】
(実施例5)
例示化合物(I−6)を例示化合物(I−2)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価を行った。
【0114】
(実施例6)
例示化合物(I−6)を例示化合物(I−4)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価を行った。
【0115】
(実施例7)
例示化合物(I−6)を例示化合物(I−5)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価を行った。
【0116】
(実施例8)
例示化合物(I−6)を1部、上記式(F)で示される正孔輸送性化合物を99部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価を行った。
【0117】
(実施例9)
例示化合物(I−6)を30部、上記式(F)で示される正孔輸送性化合物を70部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価を行った。
【0118】
(実施例10)
上記式(F)で示される正孔輸送性化合物を下記式(H)で示される正孔輸送性化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価を行った。
【化17】
【0119】
(実施例11)
実施例1の表面層塗布液において、上記式(F)で示される正孔輸送性化合物を下記式(I)で示される正孔輸送性化合物45部に変更し、トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:TMPTA、ダイセル・サイテック(株)製)45部を加えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価を行った。
【化18】
【0120】
(実施例12)
上記式(F)で示される正孔輸送性化合物を下記式(J)で示される正孔輸送性化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価を行った。
【化19】
【0121】
(比較例1)
例示化合物(I−6)を下記式(9)で示される化合物に変更した以外は、実施例12と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行なった。
【化20】
この場合、実施例12と比較し、特に70000枚画像形成後のスジ画像レベルが悪化した。
【0122】
(比較例2)
例示化合物(I−6)を表面層塗布液に添加しなかった以外は、実施例12と同様に感光体を作製し、評価を行なった。
この場合、実施例12と比較し、初期と70000枚画像形成後のスジ画像レベルが悪化した。
【0123】
(比較例3)
例示化合物(I−6)を、フッ素原子を有するアクリルモノマーを重合した構造を含む界面活性剤(商品名KL−600、共栄社化学製)に変更した以外は、実施例12と同様に感光体を作製し、評価を行なった。
この場合、実施例12と比較し、特に70000枚画像形成後のスジ画像レベルが悪化した。
【0124】
(比較例4)
例示化合物(I−6)を下記式(10)で示される化合物に変更した以外は、実施例12と同様に感光体を作製し、評価を行なった。
【化21】
この場合、実施例12と比較し、特に70000枚画像形成後のスジ画像レベルが悪化した。
【0125】
(比較例5)
例示化合物(I−6)を下記式(11)で示される化合物に変更した以外は、実施例12と同様に感光体を作製し、評価を行なった。
【化22】
この場合、実施例12と比較し、特に70000枚画像形成後のスジ画像レベルが悪化した。
【0126】
(比較例6)
例示化合物(I−6)を下記式(12)で示される化合物に変更した以外は、実施例12と同様に感光体を作製し、評価を行なった。
【化23】
この場合、実施例12と比較し、特に70000枚画像形成後の傷深さが悪化した。
【0127】
【表4】
【0128】
評価の結果、実施例においては初期、繰り返し使用におけるスジ状の画像不良が十分に抑制され、濃度変動等の他の画像上の問題も無かったが、比較例においてはスジ状の画像不良、もしくは耐傷性の悪化が発生した。