(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記棒状部材内に水を圧送するための圧送手段と、前記圧送手段を前記棒状部材の末端に接続するための接続部材とを備え、圧送される前記水により前記嵌合部材を前記固定部材に押し込み嵌合させる、請求項1に記載の試料採取システム。
削孔対象物を削孔し、削孔により発生した削孔物が流入する第1の流入穴と第2の流入穴とを有する削孔部材と、前記削孔部材の径に比較して小さい径を有し、削孔方向に延びる中空の棒状部材と、削孔時の回転方向に回転させることにより前記削孔部材と接続し、該回転方向とは反対方向に回転させることにより接続を解除することが可能な先端部と、前記棒状部材と接続する末端部と、前記第2の流入穴から流入した前記削孔物を前記棒状部材の外周側へ排出させる排出溝と、前記第1の流入穴と前記棒状部材の内部とを繋ぐ流通穴とを有する接続部材とを用いて、前記削孔対象物を削孔する段階と、
前記棒状部材内に設置される中空の円筒部材内に、前記削孔部材の第1の流入穴と接続部材の流通穴を通して該棒状部材内に流入する削孔物を試料として取り込む段階と、
先端から前記試料を取り込む前記円筒部材の末端に接続され、前記棒状部材の末端側へ向けて放射状に延びる2以上の突出部と、前記2以上の突出部を橋渡すように連結する弾性部とを備え、前記棒状部材内の所定位置に設けられた突起に前記2以上の突出部が当接して該棒状部材の末端側への移動を抑止する固定部材に、該2以上の突出部を挿入し嵌合させることが可能な嵌合部材を押し付け、該弾性部を収縮させることにより、該2以上の突出部が当接する前記突起から離間し、互いに近接して、該嵌合部材内に挿入し嵌合する段階と、
前記嵌合部材に取り付けられた紐状物を巻き取り、該嵌合部材と嵌合する前記固定部材が接続された前記試料が取り込まれた前記円筒部材を引き抜く段階とを含む、試料採取方法。
圧送手段により前記棒状部材内に水を圧送する段階をさらに含み、前記嵌合する段階は、圧送される前記水により前記嵌合部材を前記固定部材に押し付ける、請求項6に記載の試料採取方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の試料採取システムは、山岳トンネルの施工で通常に用いられるドリルジャンボのドリフターを利用し、切羽前方の地質性状を調査するためのコアボーリングに用いられるシステムである。コアボーリングに、専用のボーリングマシンを使用しないため、機械の入れ替えが不要になり、工事コストを下げることができ、工期への影響を小さくすることができる。
【0016】
山岳トンネルは、地山の硬い岩盤を破砕するため、火薬を使用して発破を行い、破砕された岩盤のかけらや土砂等を、ずり積機やずり搬送車等によりトンネル坑外へ搬出することにより構築される。この火薬をセットするために、硬い岩盤に孔を形成するが、その孔を形成する機械として、ドリルジャンボが使用される。
【0017】
ドリルジャンボは、岩盤を削孔するための削孔部材としてのビットと、そのビットが先端に取り付けられる中空の棒状部材であるロッドと、ロッドを支持するとともに水平方向へ移動可能にするガイドセルと、ロッドの末端と連結され、ロッドを一定方向に回転させ、ビットにロッドを介して打撃を加える装置(ドリフター)とを備えている。以下、削孔方向を先端側とし、その反対方向を末端側として説明する。
【0018】
ドリルジャンボで火薬をセットするための孔を形成する場合、その孔は、トンネルを掘削する際の掘削面(切羽)の所定位置にガイドセルを固定し、ドリフターにより先端にビットを取り付けたロッドを一定方向に回転させ、ガイドセル上においてロッドを切羽に向けて前進させることにより形成することができる。
【0019】
トンネルの施工において発破してトンネルを構築する前に、その地質性状の調査が行われる。これは、例えば火薬を仕掛ける位置や数、量を決定する等、安全に施工や設計を行うために必要な作業である。その1つの手法として、コアボーリングがある。コアボーリングでは、切羽前方の地質性状を調査するために、調査対象の地山(削孔対象物)を削孔し、削孔により発生した削孔物(岩石等)を、試料(コア)として回収する。この回収したコアの性状の確認やその成分の評価等を行うことで、地質性状を調査する。
【0020】
本発明では、このコアを回収するために、ドリルジャンボを使用し、ドリルジャンボのロッド内に試料回収装置を取り付ける。通常、ビットで削孔していくと、削孔により発生した岩石等は、ロッドの外側を通して外部へ排出されるが、ビットの中央に流入孔を設けることで、中空のロッド内に流入し、そのロッド内に試料回収装置を取り付けておくことで、試料回収装置にそのコアを取り込み、採取することができる。
【0021】
図1は、試料回収装置を含む試料採取システムの構成例を示した図である。試料採取システムは、先端側から見た中央部分に流入穴が形成され、その縁部に複数の先鋭なチップを有するビット10と、所定の径、長さを有する中空のロッド11と、ビット10とロッド11とを接続する接続部材であるアダプター12とを備える。ビット10に設けられた中央部分の流入穴(センターホール)は、コア採取用の穴である。なお、コア採取が不要な区間では、このセンターホールがないビットを用いることで、全断面の削孔が可能である。
【0022】
このようなセンターホールを備えるビット10には、フラットタイプと、凸型のノーズタイプとがある。ビット10は、アダプター12を介してロッド11の先端に接続され、ドリフターからの回転力および打撃力が加えられることにより削孔対象物を削孔する。
【0023】
ロッド11の両端は、ねじ切りされていて、複数のロッド11の継ぎ足しが可能となっている。また、アダプター12もねじ切りされていて、ねじ込み式でロッド11を螺合し、接続することができる。ロッド11は、シャンクスリーブと呼ばれる連結部材を使用して他のロッドやドリフターと接続することができる。なお、ロッド11は、内部にセットされ、コアを取り込む中空の円筒部材であるコアチューブ20の外径より大きい内径を有し、コアチューブ20が挿入可能なものとされる。複数のロッド11を接続して使用する場合、先端のロッドに連続する中間のロッドや末端のロッドは、コアチューブ20を先端のロッドへ挿入するために、容易に通過させることが可能な内面に凹凸のない構造とされる。
【0024】
先端のロッド11は、
図2に示すように、所定の位置に挿入されたコアチューブ20の中心軸を、ロッド11の中心軸と一致させるべく、ロッド11内に円弧状あるいはリング状のセントライザー13を備える。なお、セントライザー13には、コアチューブ20をスムーズにセンタリングするため、ドリフター側(末端側)の面にテーパを形成している。また、先端のロッド11は、セントライザー13より末端側の所定位置に、コアチューブ20の末端側へ移動を抑止する固定用の突起14を備える。この固定用の突起14も、末端側へ向けてテーパを形成している。
【0025】
再び
図1を参照して、試料採取システムは、試料回収装置を備え、その試料回収装置は、ロッド11内に挿入され、セットされる中空の円筒部材であるコアチューブ20と、コアチューブ20の末端に接続され、上記の固定用の突起14に当接してコアチューブ20をロッド11内に固定する固定部材としてのコアチューブセッター21とを備える。
【0026】
また、試料回収装置は、コアチューブセッター21が接続されたコアチューブ20を、ロッド11内から引き抜き回収するためにコアチューブセッター21と嵌合する嵌合部材としてのオーバーショット22と、オーバーショット22に取り付けられた紐状物23とを備える。さらに、試料回収装置は、図示しない水を圧送する圧送手段としての給水ポンプと、ロッド11の末端に連結され、給水ポンプからの水を、ロッド11内に挿入されたコアチューブセッター21が接続されたコアチューブ20やオーバーショット22に向けて噴射させる接続部材としてのウォータースイベル24とを備える。
【0027】
試料回収装置のコアチューブ20は、中空の筒状のケースで、先端がアダプター12により、末端が上記の固定用の突起14とコアチューブセッター21とによりロッド11内に固定される。そして、コアチューブ20は、ロッド11の回転、ビット10による打撃により、ビット10の中央部分の穴を通してコアを取り込む。コアチューブ20の末端は、コアチューブセッター21により閉鎖されるため、先端から取り込まれたコアは、コアチューブ20の内部に回収される。コアチューブ20は、削孔時に供給する削孔水が流入した場合に、その削孔水を排出するための水抜き孔を備えることができ、その水抜き孔には、削孔水が逆流しないように逆流防止弁が設けられる。なお、水抜き孔は、コアチューブ20の末端側に設けることができる。
【0028】
コアチューブセッター21は、ロッド11の末端側へ向けて放射状に延びる2以上の突出部と、2以上の突出部を橋渡すように連結する弾性部とを備える。このため、コアチューブ20を先端のロッド11内に挿入していくと、コアチューブ20の末端に接続されたコアチューブセッター21の放射状に延びる2以上の突出部が、固定用の突起14に当接して弾性部を収縮させ、2以上の突出部が接近する。
【0029】
コアチューブ20をさらに挿入していくと、2以上の突出部が固定用の突起14を通過し、弾性部が復元して、
図2に示すように、2以上の突出部が離間し、固定用の突起14に当接して、ロッド11の末端側へは移動しないように固定される。
【0030】
本発明では、上記のコアチューブセッター21、オーバーショット22、紐状物23、ウォータースイベル24、図示しない給水ポンプを採用することにより、ロッド11を取り出すことなく、コアチューブ20を回収することができる。このため、深度が深くても、短時間で、効率良く、コア採取を行うことができる。
【0031】
図3を参照して、試料採取システムを用いたコア採取の手順について説明する。第1段階では、
図3(a)に示すように、ロッド11の先端にアダプター12を介してビット10を取り付ける。ロッド11内に、コアチューブセッター21を接続したコアチューブ20を挿入する。そして、ロッド11の末端にウォータースイベル24を取り付け、そのウォータースイベル24に給水ポンプを接続する。給水ポンプを起動させ、ウォータースイベル24を介してロッド11内に水を圧送し、コアチューブセッター21を接続したコアチューブ20を所定位置にセットするため、その水によりロッド11内を搬送する。コアチューブ20を所定位置にセットした後、ウォータースイベル24を取り外し、ロッド11の末端を、シャンクスリーブ15を介してドリフター16と接続する。このようにして、コア採取の準備を行う。
【0032】
第2段階では、
図3(b)に示すように、ドリフター16によりロッド11を一定方向に回転させ、ビット10に打撃を与えて、削孔対象の地山1を削孔する。ロッド11およびドリフター16は、ガイドセル17上を一定方向に移動可能に支持されており、矢線で示す削孔方向へそれらを移動させることにより、地山1を所定の深度まで削孔する。目的の深度が深い場合、ロッド11の末端に他のロッドを複数接続することにより、目的の深度まで削孔する。その際、目的の深度近辺まで、センターホールがないビット10で削孔し、そこから目的の深度までセンターホールを有するビット10で削孔することにより、目的の深度のコアを採取することができる。
【0033】
第3段階では、
図3(c)に示すように、ドリフター16をシャンクスリーブ15毎取り外し、ロッド11内に紐状物23が取り付けられたオーバーショット22を挿入する。コアチューブ20の場合と同様に、ロッド11の末端にウォータースイベル24を取り付け、そのウォータースイベル24に給水ポンプを接続する。給水ポンプを起動させ、ウォータースイベル24を介してロッド11内に水を圧送し、その水によりオーバーショット22をコアチューブセッター21へ向けて搬送する。オーバーショット22は、コアチューブセッター21に押し付けられると、コアチューブセッター21の2以上の突出部がオーバーショット22の嵌合溝に押し込まれて嵌合する。
【0034】
第4段階では、
図3(d)に示すように、オーバーショット22に取り付けられた紐状物23を、ウインチ等の巻き取り手段を使用して巻き取り、コアチューブ20をロッド11内から抜き出し、回収する。これにより、ロッド11を取り出すことなく、コアチューブ20を回収することができる。
【0035】
このコア採取の作業をまとめると、
図4に示すフローチャートのようになる。すなわち、ステップ400から開始し、ステップ410では、先頭のロッド11内へコアチューブ20を挿入し、セットする。コアチューブ20のセットは、コアチューブセッター21を用いて行う。ステップ420では、削孔対象の地山1を削孔し、コアを採取する。すなわち、コアボーリングを行う。
【0036】
目的の深度まで削孔し、コアチューブ20内にコアを取り込み、採取した後、ステップ430へ進み、オーバーショット22をロッド11内に挿入し、コアチューブセッター21と嵌合させる。そして、ステップ440で、紐状物23を引っ張り、コアチューブ20をロッド11内から引き抜き、引き抜いたコアチューブ20内のコアを回収し、ステップ450でこの作業を終了する。
【0037】
試料採取システムおよび試料回収装置の構成、コア採取の全体の流れは、以上の通りである。ここからは、ビット10、ロッド11、アダプター12の詳細な構成、それらの詳細な接続の様子、コアチューブセッター21およびオーバーショット22の詳細な構成について説明する。
図5は、ロッド11にアダプター12を使用してビット10を接続し、ロッド11内にコアチューブ20をセットしたところを示した断面図およびビット10の正面図である。
図5(a)は、ビット10の正面図で、
図5(b)は、切断線A−Aで切断した断面図で、
図5(c)は、切断線B−Bで切断した断面図で、
図5(d)は、切断線C−Cで切断した断面図である。
【0038】
図5(a)を参照すると、ビット10は、中央部分に、コアを取り込むための第1の流入穴である円形の穴30を有している。また、ビット10は、その縁部に、岩盤等を削り採るための、ダイヤモンドや超硬合金等で作製された複数の先鋭なチップ31を備えている。さらに、ビット10は、削孔時に、ビット10を冷却し、スムーズな削孔を実現するための削孔水を供給し、削孔することにより発生した岩石等をくり粉として、また、供給した削孔水を排水として排出するための第2の流入穴である給排水用長穴32を備えている。
【0039】
アダプター12は、給排水用長穴32に連続し、くり粉および排水を排出するための排出溝であるくり粉排出用溝40と、給排水用長穴32に連続し、削孔水を供給するための削孔水供給用貫通孔41とを備えている。
図5(a)では、給排水用長穴32内に、それに連続して奥に延びるくり粉排出用溝40と削孔水供給用貫通孔41とが示されている。なお、アダプター12は、その中央部分にビット10の穴30から流入したコアを、ロッド11内のコアチューブ20へ流通させる流通穴を有している。
【0040】
図5(b)を参照すると、ビット10は、アダプター12の一端を収容するためのアダプター収容溝33を有し、アダプター収容溝33に、ロッド11およびアダプター12を介して伝達される打撃伝達部34と回転伝達部35とを有している。打撃伝達部34は、アダプター12の先端が当接する面とされ、回転伝達部35は、くり粉排出用溝40を通して挿入される突起とされる。回転伝達部35は、アダプター12を削孔時の回転方向に回転させることにより、アダプター12が備えるくり粉排出用溝40に連続する回転伝達部ロック用溝42へ嵌め込まれ、ビット10とアダプター12とを接続する。
【0041】
ちなみに、アダプター12をその反対方向へ回転させることにより、ビット10とアダプター12の接続を解除することができる。このため、アダプター12を反対方向へ回転し、ロッド11を引き抜くことで、ビット10のみを地山1に残置することが可能である。これにより、何らかのトラブルが発生した場合に、ロッド11、アダプター12およびコアチューブ20等の主要部材の損失を回避することができる。
【0042】
アダプター12は、その長手方向の中央部分にテーパが形成され、先端より末端の外径が大きくなるように形成されている。アダプター12の末端には、ロッド11のねじ切りされた先端を螺合することができるように、ねじ部43を備えるロッド収容溝44を備えている。
【0043】
図5(b)には図示されていないが、ロッド11内に設けられたセントライザー13によりコアチューブ20は支持されるため、ロッド11の内壁とコアチューブ20とが離間しているのが示されている。
【0044】
くり粉が、削孔径の最大となるビット側部を通過すると、その間に挟まったりして、ビット10が回転しない等のトラブルの原因になる。そのトラブルを回避するため、
図5(c)に示すように、くり粉を、ビット10内を通し、アダプター12においてロッド11の外周側に排出させ、孔とロッド11との隙間を通して外部に排出させる構成とする。具体的には、くり粉は、ビット10の給排水用長穴32を通り、その給排水用長穴32に連続するくり粉排出用溝40を通り、そのくり粉排出用溝40の末端においてロッド11の外側に排出させる。ロッド11の外径は、ビット10の径より小さいため、形成された孔の孔壁2とロッド11との間に隙間が生じ、その隙間を通してくり粉は外部へ排出される。また、形成された孔の径よりロッド11、アダプター12の径が小さいため、何らのトラブルが発生した場合にロッド11、アダプター12を容易に引き抜くことができる。
【0045】
削孔水の供給は、ロッド11内に水を供給することにより行われる。コアチューブ20の末端にはコアチューブセッター21が取り付けられ、コアチューブセッター21によりその末端の開口が閉鎖されるので、
図5(d)に示すように、ロッド11とコアチューブ20との間を通して削孔水が供給される。この削孔水は、ロッド11とコアチューブ20との間の隙間に連続する削孔水供給用貫通孔41を通り、さらに、その削孔水供給用貫通孔41に連続する給排水用長穴32を通して削孔方向へ吐出される。
【0046】
図5に示す例では、ビット10として凸型のノーズタイプのビットを用いたが、ノーズタイプのビットに限定されるものではなく、
図6に示すフラットタイプのビットを用いてもよい。ノーズタイプのビットは、先端が凸型とされているが、フラットタイプのビットは、先端が平坦になっている。
【0047】
図7を参照して、アダプター12の詳細な構造について説明する。アダプター12は、
図7(a)に示すように、中央部分が流通穴である穴45とされ、コアをコアチューブ20内に取り込むことができるようになっている。また、先端部は、上下2箇所に削孔水供給用貫通孔41が設けられ、対向する2箇所にくり粉排出用溝40が形成されている。
【0048】
アダプター12は、
図7(b)に示すように、その長手方向の中央部分にテーパが形成され、末端部は、ロッド11の先端を収容するためのロッド収容溝44を備えている。ロッド収容溝44には、ねじ切りされたロッド11の先端を螺合させるためのねじ部43が形成されている。ロッド収容溝44は、削孔水供給用貫通孔41に連続していて、ロッド11内に供給された削孔水を、その削孔水供給用貫通孔41へ供給することができるようになっている。
【0049】
アダプター12の先端部の外側面には、くり粉排出用溝40が所定幅、深さでその長手方向に延びるように形成され、そのくり粉排出用溝40が、テーパが形成された部分にまで延びている。また、くり粉排出用溝40が延びる方向に対して垂直な方向に延びる回転伝達部ロック用溝42が形成されている。
【0050】
ビット10のアダプター収容溝33に設けられた回転伝達部35が、くり粉排出用溝40を通して挿入されることにより、アダプター収容溝33内にアダプター12の先端が収容される。そして、ビット10を固定し、アダプター12を削孔時の回転方向に回転させることにより、回転伝達部35が回転伝達部ロック用溝42に嵌め込まれ、ビット10とアダプター12とが接続される。
【0051】
図8を参照して、試料回収装置によりコアを回収する方法、コアチューブセッター21およびオーバーショット22の構成について詳細に説明する。
図8(a)に示すように、コアチューブセッター21は、コアチューブ20と接続するための接続部50と、2つの突出部51、52と、突出部51、52を橋渡すように連結する弾性部53とを備える。各突出部51、52は、拡張された端部54、55を有している。
図8では、突出部51、52を、円錐部材を2分割した半円錐状のものとし、その間に弾性部53としてのばねやゴム等を配し、それらを連結したものとしている。これは一例であるので、突出部は、円錐部材を3以上の分割したものであってもよいし、2以上の平板状の部材を用いて構成してもよい。
【0052】
コアチューブ20は、先端のロッド11内に挿入され、セントライザー13によりセンタリングされる。コアチューブ20の末端には、コアチューブセッター21が接続部50により接続される。接続部50は、例えば雌ねじとされ、コアチューブ20に形成された雄ねじと螺合することにより接続することができる。これは一例であるため、これに限定されるものではない。コアチューブセッター21を接続したコアチューブ20の挿入は、棒状物で押し込むことにより行うことも可能であるが、給水ポンプによりロッド11内に水を圧送し、圧送される水でコアチューブ20を推し進めることにより行うことができる。
【0053】
コアチューブ20をロッド11内に挿入する際、2つの突出部51、52は、その長手方向のほぼ中央に連結された弾性部53により離れた状態となっている。ロッド11内に設けられた固定用の突起14を通過する際、2つの突出部51、52は、突起14により弾性部53が収縮して押し込まれ、通過した後、弾性部53が復元して元の開いた状態に戻る。これにより、2つの突出部51、52が固定用の突起14に当接した状態になる。コアチューブ20の先端は、ロッド11に接続されたアダプター12に当接し、その末端も、2つの突出部51、52が固定用の突起14に当接して両端が固定されるため、コアチューブ20がロッド11内に固定される。
【0054】
図8(b)に示すように、削孔を行うと、ビット10の中央部分の開口を通してコアチューブ20内にコア3を取り込む。このとき、取り込まれるコア3によりコアチューブ20が末端側へ押し込まれるが、コアチューブセッター21の2つの突出部51、52が固定用の突起14に引っ掛かってそれ以上の移動を抑止する。
【0055】
コアを採取した後、
図8(c)に示すように、オーバーショット22を挿入し、コアチューブセッター21と接続する。オーバーショット22は、2つの突出部51、52を挿入し、嵌合する嵌合溝60を備え、また、拡張された端部54、55と係合する係合部61、62を備える。拡張された端部54、55は、ロッド11の内壁に向けて突出するように拡張されていて、係合部61、62は、ロッド11の中心に向けて突出している。
【0056】
オーバーショット22の嵌合溝60は、突出部51、52をスムーズに挿入させるため、突出部51、52に対向する先端側へ向けてテーパが形成されている。突出部51、52は、ロッド11の中心軸に対して斜めに延びているため、固定用の突起14に当接している端部54、55の面は、その中心軸に対して垂直ではなく、斜めになっている。このため、テーパが形成されたオーバーショット22の先端が、突出部51、52とロッド11の内壁との間へ入り込みやすく、その結果、弾性部53が収縮して突出部51、52がオーバーショット22の嵌合溝60に挿入されやすくなっている。
【0057】
端部54、55は、オーバーショット22の係合部61、62を超えて挿入される。このため、引き抜く際、係合部61、62が端部54、55に引っ掛かり、それによって、コアチューブ20をより確実に回収することができる。
【0058】
オーバーショット22の挿入も、コアチューブ20と同様、棒状物で押し込むことにより行うこともできるし、給水ポンプによりロッド11内に水を圧送し、圧送される水でオーバーショット22を推し進めることにより行うこともできる。オーバーショット22が端部54、55に当たると、弾性部53が収縮して端部54、55が近接し、オーバーショット22の係合部61、62が端部54、55を超えて挿入される。なお、係合部61、62が端部54、55を超えたところで、弾性部53は復元し、端部54、55が離間することで、係合部61、62が端部54、55に引っ掛かった状態になる。
【0059】
図8(d)に示すように、オーバーショット22の末端側には、紐状物23が取り付けられている。紐状物23は、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。紐状物23は、ウインチ等の巻き取り手段を使用して巻き取られ、それによって、コアチューブ20がロッド11内から回収される。このとき、コアチューブセッター21の2つの突出部51、52が固定用の突起14に引っ掛かった状態であるが、紐状物23を所定の力で引っ張ることで、弾性部53が変形し、コアチューブ20を引き抜くことができる。
【0060】
以上のような、コアチューブセッター21、オーバーショット22、紐状物23を用いる構成を採用することで、ドリルジャンボを用い、短時間で、効率良くコアを採取することが可能となる。また、この構成は、簡単で、信頼性の高い構成であるため、安価で提供することができ、取り扱いが簡単で、確実にコアを回収することができる。
【0061】
これまで本発明の試料採取システムおよび試料採取方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。