特許第6433422号(P6433422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6433422
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20181126BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   F25B47/02 530K
   F25B1/00 101E
   F25B1/00 101H
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-519577(P2015-519577)
(86)(22)【出願日】2013年5月31日
(86)【国際出願番号】JP2013065207
(87)【国際公開番号】WO2014192138
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2015年10月27日
【審判番号】不服2017-7272(P2017-7272/J1)
【審判請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 航祐
(72)【発明者】
【氏名】松井 良輔
(72)【発明者】
【氏名】田村 直道
(72)【発明者】
【氏名】有山 正
【合議体】
【審判長】 山崎 勝司
【審判官】 宮崎 賢司
【審判官】 莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−14061(JP,A)
【文献】 特開平3−164668(JP,A)
【文献】 特開2009−287903(JP,A)
【文献】 特開2008−14576(JP,A)
【文献】 特開2002−147879(JP,A)
【文献】 実開昭61−119074(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
F25B 1/00
F25D 21/06
F24F 11/02
F25B 13/00
F24F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、1または複数の利用側熱交換器と、前記利用側熱交換器に対応した1または複数の利用側流量調整弁と、熱源側流量調整弁と、熱源側熱交換器と、を有し、
暖房運転時に前記圧縮機、前記利用側熱交換器、前記利用側流量調整弁、前記熱源側流量調整弁、前記熱源側熱交換器、の順で冷媒が循環する冷凍サイクル装置であって、
循環冷媒と熱交換して蓄熱する蓄熱装置が、前記利用側流量調整弁と前記熱源側流量調整弁との間に設けられ、
前記圧縮機の吐出側から前記熱源側熱交換器の冷媒入口側に接続される第1バイパス回路と、前記第1バイパス回路に設けられた第1バイパス流量調整弁と、前記利用側流量調整弁と前記蓄熱装置との間から分岐し前記蓄熱装置を通って前記圧縮機の冷媒吸入側に接続する第2バイパス回路と、前記第2バイパス回路に設けられた第2バイパス流量調整弁と、を設け
少なくとも暖房蓄熱運転モードと除霜暖房運転モードとを備え、
前記蓄熱装置は、
前記第2バイパス回路の冷媒と熱交換する放熱用熱交換器と、前記利用側流量調整弁と前記熱源側流量調整弁との間の冷媒と熱交換する蓄熱用熱交換器と、が内蔵され、
前記暖房蓄熱運転モードは、
前記第1バイパス流量調整弁及び前記第2バイパス流量調整弁が閉じられ、
前記圧縮機からの吐出冷媒を前記利用側熱交換器を介して前記蓄熱装置に導き、
前記蓄熱装置を通る冷媒が前記利用側熱交換器の凝縮圧力と前記熱源側熱交換器の蒸発圧力との間の中間圧力になるよう前記利用側流量調整弁と前記熱源側流量調整弁との開度が設定され、前記蓄熱装置の蓄熱が行われ、
前記除霜暖房運転モードは、
前記熱源側流量調整弁が閉じられ、
前記圧縮機から吐出した冷媒を前記第1バイパス回路、前記熱源側熱交換器、前記圧縮機の順に循環させるように前記第1バイパス流量調整弁の開度が制御されると共に、
前記圧縮機から吐出した冷媒を前記利用側熱交換器、前記第2バイパス回路、前記圧縮機の順に循環させるように前記第2バイパス流量調整弁の開度が制御されることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記蓄熱装置には、冷房運転時に前記蓄熱装置を冷媒が迂回する蓄熱装置バイパス回路を備えたことを特徴とする請求項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱装置を冷媒回路内に備えた冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、冷媒回路内に蓄熱装置を配置し、暖房の立ち上がり時や低外気温のときの室外熱交換器の除霜時に、蓄熱装置に蓄えた熱を利用して速やかな暖房運転の開始を行ったり、除霜運転時間の短縮化を行う冷凍サイクル装置が知られている。
【0003】
このような冷凍サイクル装置の蓄熱装置に蓄熱する際には、その熱源として例えば別途加熱部を蓄熱装置内に設け、蓄熱運転時は加熱部を駆動するシステムや、圧縮機のシェルからの排熱を蓄熱材に伝熱させ蓄熱運転を実施する構成、または圧縮機の吐出冷媒を熱源とするものなどがある(例えば特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−291985号公報
【特許文献2】特許第2503637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の蓄熱装置は、外部熱源である蓄熱装置用の加熱部を用意することで追加の設備や電力を必要としてしまう点や、圧縮機のシェルからの排熱を蓄熱装置に奪われるため暖房の立ち上がりが悪くなる点、また、圧縮機の吐出冷媒から蓄熱用の熱を奪うためやはり暖房の立ち上がりが悪くなってしまう点などの問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、外部熱源を必要とすることがなく、また、冷凍サイクル内から必要な熱を蓄熱用熱源として奪うことで暖房の立ち上がりなどに悪影響を与えないで蓄熱装置に蓄熱を行い、除霜運転の時間を短縮し室内の快適性を向上させる冷凍サイクル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機と、1または複数の利用側熱交換器と、前記利用側熱交換器に対応した1または複数の利用側流量調整弁と、熱源側流量調整弁と、熱源側熱交換器と、を有し、暖房運転時に前記圧縮機、前記利用側熱交換器、前記利用側流量調整弁、前記熱源側流量調整弁、前記熱源側熱交換器、の順で冷媒が循環する冷凍サイクル装置であって、循環冷媒と熱交換して蓄熱する蓄熱装置が、前記利用側流量調整弁と前記熱源側流量調整弁との間に設けられ、前記圧縮機の吐出側から前記熱源側熱交換器の冷媒入口側に接続される第1バイパス回路と、前記第1バイパス回路に設けられた第1バイパス流量調整弁と、前記利用側流量調整弁と前記蓄熱装置との間から分岐し前記蓄熱装置を通って前記圧縮機の冷媒吸入側に接続する第2バイパス回路と、前記第2バイパス回路に設けられた第2バイパス流量調整弁と、を設け、少なくとも暖房蓄熱運転モードと除霜運転モードとを備え、前記蓄熱装置は、前記第2バイパス回路の冷媒と熱交換する放熱用熱交換器と、前記利用側流量調整弁と前記熱源側流量調整弁との間の冷媒と熱交換する蓄熱用熱交換器と、が内蔵され、前記暖房蓄熱運転モードは、前記第1バイパス流量調整弁及び前記第2バイパス流量調整弁が閉じられ、前記圧縮機からの吐出冷媒を前記利用側熱交換器を介して前記蓄熱装置に導き、前記蓄熱装置を通る冷媒が前記利用側熱交換器の凝縮圧力と前記熱源側熱交換器の蒸発圧力との間の中間圧力になるよう前記利用側流量調整弁と前記熱源側流量調整弁との開度が設定され、前記蓄熱装置の蓄熱が行われ、前記除霜暖房運転モードは、前記熱源側流量調整弁が閉じられ、前記圧縮機から吐出した冷媒を前記第1バイパス回路、前記熱源側熱交換器、前記圧縮機の順に循環させるように前記第1バイパス流量調整弁の開度が制御されると共に、前記圧縮機から吐出した冷媒を前記利用側熱交換器、前記第2バイパス回路、前記圧縮機の順に循環させるように前記第2バイパス流量調整弁の開度が制御されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る冷凍サイクル装置によれば、蓄熱装置を加熱する際に利用側熱交換器で放熱し暖房運転を終えた液冷媒を熱源とすることで、蓄熱装置を加熱する別熱源を設けることなく蓄熱装置を暖めることができる。また、熱源として冷凍サイクル内の圧縮機のシェルの排熱や、吐出冷媒の熱を利用することもないので、暖房運転の立ち上がりが速やかな冷凍サイクル装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の構成図である。
図2】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の暖房蓄熱運転時のモリエル線図である。
図3】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の除霜運転時の暖房能力を示した図である。
図4】実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の構成図である。
図5】実施の形態2及び3に係る冷凍サイクル装置の暖房蓄熱運転時のモリエル線図である。
図6】実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の構成図である。
図7】実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の暖房除霜運転時のモリエル線図である。
図8】実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の暖房除霜運転時の暖房能力を示した図である。
図9】実施の形態4に係る冷凍サイクル装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の構成図である。圧縮機1、熱源側熱交換器2、熱源側流量調整弁3、四方弁4、利用側熱交換器5、蓄熱装置6、が冷媒配管7で接続され、冷凍サイクル装置を構成している。この冷凍サイクル装置の蓄熱装置6は、利用側熱交換器5と熱源側流量調整弁3の間に設けられている。
【0012】
次に本実施の形態1における暖房蓄熱運転と除霜運転について説明する。
[暖房蓄熱運転]
本実施の形態1に係る冷凍サイクル装置を暖房運転すると、圧縮機1を出たガス冷媒は利用側熱交換器5において凝縮し、液冷媒となる。利用側熱交換器5を出た高圧の液冷媒は蓄熱装置6内を通過する。このとき蓄熱装置6は、高圧の液冷媒により蓄熱される。高圧の液冷媒は蓄熱装置6に放熱して過冷却状態となり、熱源側流量調整弁3を介して熱源側熱交換器2で蒸発し、圧縮機1に吸引される。
【0013】
図2は暖房蓄熱運転時のモリエル線図である。図2に示すように利用側熱交換器5で凝縮した高圧の液冷媒は、引き続き蓄熱装置6を通り過冷却されている。また、熱源側流量調整弁3は、利用側熱交換器5の出口冷媒の過冷却度もしくは熱源側熱交換器2の出口冷媒の過熱度により開度が制御される。
【0014】
このように蓄熱装置6を加熱する際に利用側熱交換器5で放熱し暖房運転を終えた高圧の液冷媒を熱源とすることで、蓄熱装置6を加熱する別熱源を設けることなく蓄熱装置6を暖めることができる。また、冷凍サイクル内の圧縮機のシェルの排熱や、吐出冷媒の熱を利用することもないので、暖房運転の立ち上がりが悪くなることもない。
【0015】
[除霜運転]
次に、熱源側熱交換器2を除霜する際の運転を説明する。暖房蓄熱運転から四方弁4を切り替え、圧縮機1を出たガス冷媒を熱源側熱交換器2に送って凝縮させ除霜を行う。凝縮した液冷媒は熱源側流量調整弁3を介して蓄熱装置6に送られ暖房蓄熱運転時に蓄熱した熱により蒸発する。蒸発したガス冷媒は利用側熱交換器5を通って圧縮機1に吸引される。除霜運転時の熱源側流量調整弁3は、全開開度となっている。
【0016】
このように蓄熱装置6に蓄えた熱で熱源側熱交換器2の除霜運転を行った時と、蓄熱装置6がない冷凍サイクルで除霜運転を行った時とを比較した暖房能力の変化を図3に示す。
図3に示すように蓄熱装置6がない冷凍サイクルに比べて蓄熱装置6がある冷凍サイクルの除霜運転は、除霜時間が短くなり除霜運転の開始から短時間で暖房運転に復旧する。
このため、暖房運転時の室内の快適性が向上する。
【0017】
蓄熱装置6は、室外ユニットに内蔵される形式や、室外ユニットの外部で冷媒配管の途中に割り込ませて配置する形式がある。外部に設置する場合には、室外ユニットの下部に設置することで平面視の設置面積を増やすことなく除霜能力を増強することが可能となる。また、室外ユニット外部に蓄熱装置6を配置することで、既設の室外ユニットに蓄熱装置6を採用することも可能である。
【0018】
蓄熱装置6に内蔵される蓄熱材は、顕熱蓄熱材と潜熱蓄熱材のどちらでも採用することができる。熱容量の観点からは、潜熱蓄熱材が好ましく、例えばパラフィンやポリエチレングリコールなどで融点が0℃よりも大きいものが好適である。融点が0℃以上の潜熱蓄熱材を用いることで除霜運転時の熱量を十分に確保することができる。
【0019】
蓄熱装置6内の冷媒流路は、伝熱のため蓄熱材と大きい面積で接触することができればどのような形状でもよい。例えば螺旋形状の伝熱管や、プレート式熱交換器形状などが考えられる。
【0020】
実施の形態2.
本実施の形態2に係る冷凍サイクル装置は、複数の利用側熱交換器5とこの複数の利用側熱交換器5に対応した利用側流量調整弁8を備える点で実施の形態1に係る冷凍装置と異なる。
図4は、本実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の構成図である。圧縮機1、熱源側熱交換器2、熱源側流量調整弁3、四方弁4、利用側熱交換器5、利用側流量調整弁8、蓄熱装置6、が冷媒配管7で接続され、冷凍サイクル装置を構成している。この冷凍サイクル装置の蓄熱装置6は、利用側流量調整弁8と熱源側流量調整弁3の間に設けられている。
【0021】
次に本実施の形態2における暖房蓄熱運転と除霜運転について説明する。
[暖房蓄熱運転]
本実施の形態2に係る冷凍サイクル装置を暖房運転すると、圧縮機1を出たガス冷媒は利用側熱交換器5において凝縮し、液冷媒となる。利用側熱交換器5を出た高圧の液冷媒は、利用側流量調整弁8を介して蓄熱装置6内を通過する。このとき蓄熱装置6は、高圧の液冷媒により蓄熱される。高圧の液冷媒は蓄熱装置6に放熱して過冷却状態となり、熱源側流量調整弁3を介して熱源側熱交換器2で蒸発し、圧縮機1に吸引される。
【0022】
図5は、暖房蓄熱運転時のモリエル線図である。図5に示すように利用側熱交換器5で凝縮した高圧の液冷媒は、利用側流量調整弁8で1段目の減圧を行った後、凝縮圧力と蒸発圧力の間の中間圧力となって、蓄熱装置6を通り過冷却される。そして、熱源側流量調整弁3で2段目の減圧を行い熱源側熱交換器2で蒸発する。このとき、利用側流量調整弁8は、利用側熱交換器5の出口冷媒の過冷却度もしくは熱源側熱交換器2の出口冷媒の過熱度により開度を制御する。また、熱源側流量調整弁3は、上流側の蓄熱装置6で放熱する冷媒が凝縮圧力と蒸発圧力の間の中間圧力となるように開度を制御する。
【0023】
このように蓄熱装置6を加熱する際に、複数の利用側熱交換器5で放熱し暖房運転を終えた高圧の液冷媒を利用側流量調整弁8で中間圧力に減圧して熱源とすることで、蓄熱装置6を加熱する別熱源を設けることなく蓄熱装置6を暖めることができる。また、実施の形態1と同様に冷凍サイクル内の圧縮機のシェルの排熱や、吐出冷媒の熱を利用することもないので、暖房運転の立ち上がりが悪くなることもない。
【0024】
[除霜運転]
次に、熱源側熱交換器2を除霜する際の運転を説明する。
冷媒の流れは実施の形態1と同様である。ただし、実施の形態2では、熱源側流量調整弁3、及び利用側流量調整弁8の開度を共に全開開度として除霜運転を行う。
そして、蓄熱装置6に蓄えた熱で熱源側熱交換器2の除霜運転を行った時と、蓄熱装置6がない冷凍サイクルで除霜運転を行った時とを比較した暖房能力の変化は、実施の形態1と同様に図3に示すようになる。
【0025】
実施の形態3.
本実施の形態3は、実施の形態2に係る冷凍サイクル装置にバイパス冷媒回路を設けることで、暖房運転と除霜運転を同時に行うことを可能とするものである。
【0026】
図6は、本実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の構成図である。圧縮機1、熱源側熱交換器2、熱源側流量調整弁3、四方弁4、利用側熱交換器5、利用側流量調整弁8、蓄熱用熱交換器6a、放熱用熱交換器6bを内蔵した蓄熱装置6、が冷媒配管7で接続され、冷凍サイクル装置を構成している。さらに、この冷凍サイクルには、圧縮機1の吐出側から熱源側熱交換器2の冷媒入口側に接続される第1バイパス回路9と、この第1バイパス回路9に設けられた第1バイパス流量調整弁10と、利用側流量調整弁8と蓄熱装置6の間の冷媒配管7から分岐し放熱用熱交換器6bを通って圧縮機1の吸入冷媒配管に接続する第2バイパス回路11と、この第2バイパス回路11に設けられた第2バイパス流量調整弁12とが設けられている。
【0027】
次に本実施の形態3における暖房蓄熱運転と暖房除霜運転について説明する。
[暖房蓄熱運転]
本実施の形態3に係る冷凍サイクル装置を暖房運転する場合は、第1バイパス流量調整弁10と第2バイパス流量調整弁12を全閉して実施の形態2と同様に運転する。
圧縮機1を出たガス冷媒は利用側熱交換器5において凝縮し、液冷媒となる。利用側熱交換器5を出た高圧の液冷媒は、利用側流量調整弁8を介して蓄熱装置6内の蓄熱用熱交換器6aを通過する。このとき蓄熱装置6は、高圧の液冷媒により蓄熱される。高圧の液冷媒は蓄熱装置6に放熱して過冷却状態となり、熱源側流量調整弁3を介して熱源側熱交換器2で蒸発し、圧縮機1に吸引される。
【0028】
本実施の形態3における暖房蓄熱運転時のモリエル線図は実施の形態2と同様で図5に示す通りである。すなわち、利用側熱交換器5で凝縮した高圧の液冷媒は、利用側流量調整弁8で1段目の減圧を行った後、凝縮圧力と蒸発圧力の間の中間圧力となって、蓄熱装置6を通り過冷却される。そして、熱源側流量調整弁3で2段目の減圧を行い熱源側熱交換器2で蒸発する。このとき、利用側流量調整弁8は、利用側熱交換器5の出口冷媒の過冷却度もしくは熱源側熱交換器2の出口冷媒の過熱度により開度を制御する。また、熱源側流量調整弁3は、上流側の蓄熱装置6で放熱する冷媒が凝縮圧力と蒸発圧力の間の中間圧力となるように開度を制御する。
【0029】
[暖房除霜運転]
次に、熱源側熱交換器2を除霜しながら暖房運転を行う暖房除霜運転を説明する。
暖房除霜運転では、熱源側流量調整弁3を全閉にするとともに、第1バイパス流量調整弁10と第2バイパス流量調整弁12を開いて、圧縮機1から吐出したガス冷媒を、利用側熱交換器5、第2バイパス回路11、圧縮機1へと循環させる暖房回路と、圧縮機1から吐出したガス冷媒を、第1バイパス回路9、熱源側熱交換器2、圧縮機1へと循環させる除霜回路とに分岐して暖房運転と除霜運転を同時に行う。
【0030】
この暖房除霜運転時のモリエル線図を図7に示す。圧縮機1から吐出されたガス冷媒は2つに分岐し、一方は利用側熱交換器5で凝縮して利用側流量調整弁8及び第2バイパス流量調整弁12で減圧され蓄熱装置6の放熱用熱交換器6bで蒸発し、圧縮機1に吸引される。また、圧縮機1から吐出されたガス冷媒が分岐した他方は、第1バイパス流量調整弁10で減圧された後、熱源側熱交換器2で凝縮し、除霜を行う。
【0031】
このような暖房除霜運転用のバイパス回路と蓄熱装置6とを備えた冷凍サイクル装置で除霜運転を行った時と、蓄熱装置6がない冷凍サイクルで除霜運転を行った時とを比較した暖房能力の変化を図8に示す。
図8に示すように蓄熱装置6がない冷凍サイクルに比べて暖房除霜運転用のバイパス回路と蓄熱装置6とがある冷凍サイクルの除霜運転は、除霜運転中も暖房運転が可能となっており、除霜運転時の室内の快適性が向上する。
【0032】
実施の形態4.
実施の形態1〜3は、暖房運転もしくは除霜運転を想定した実施の形態であるが、冷房運転時に蓄熱装置6を機能させると、低温低圧冷媒が蓄熱装置6を通り蓄熱材に冷蓄熱することで冷房運転の立ち上がりを悪化させることとなる。
本実施の形態4は冷房運転起動時の能力低下を抑制するために、蓄熱装置6に低温低圧冷媒がバイパスする蓄熱装置バイパス回路13を設けた冷凍サイクル装置である。
【0033】
図9に本実施の形態4に係る冷凍サイクル装置を示す。この冷凍サイクル装置は、蓄熱装置6に熱源側熱交換器2から利用側熱交換器5への冷媒の流れを許容する蓄熱装置バイパス回路13を設けたものである。蓄熱装置バイパス回路13には、逆止弁14を設けることで冷媒の流れを規制している。また、冷凍サイクル装置の冷媒配管7には、熱源側熱交換器2から蓄熱装置6側への冷媒の流れを阻止する逆止弁15を設けることで冷媒の流れを規制している。
【0034】
この冷凍サイクル装置を冷房運転すると、熱源側熱交換器2から利用側熱交換器5に冷媒が流れる際に蓄熱装置6をバイパスして低温低圧冷媒が流れるため、冷房運転起動時の能力低下を抑制することができる。
なお、本実施の形態4の蓄熱装置バイパス回路13は、実施の形態1〜3の蓄熱装置6に適用することができる。
【0035】
冷凍サイクル装置に採用する冷媒は特に限定されることはなく、例えば二酸化炭素や炭化水素、ヘリウムのような自然冷媒から、R410A、R32、R407C、R404A、HFO1234yfなどの冷媒を使用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 圧縮機、2 熱源側熱交換器、3 熱源側流量調整弁、4 四方弁、5 利用側熱交換器、6 蓄熱装置、6a 蓄熱用熱交換器、6b 放熱用熱交換器、7 冷媒配管、8 利用側流量調整弁、9 第1バイパス回路、10 第1バイパス流量調整弁、11 第2バイパス回路、12 第2バイパス流量調整弁、13 蓄熱装置バイパス回路、14 逆止弁、15 逆止弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9