(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6433510
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】車両用ディスクブレーキ
(51)【国際特許分類】
F16D 55/228 20060101AFI20181126BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20181126BHJP
F16D 65/02 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
F16D55/228
F16D65/092 D
F16D65/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-566126(P2016-566126)
(86)(22)【出願日】2015年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2015084933
(87)【国際公開番号】WO2016104219
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-261903(P2014-261903)
(32)【優先日】2014年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-211664(P2015-211664)
(32)【優先日】2015年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】青沼 亨
(72)【発明者】
【氏名】上原 和真
(72)【発明者】
【氏名】今井 良幸
(72)【発明者】
【氏名】飯田 千尋
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−077229(JP,A)
【文献】
特開昭53−109073(JP,A)
【文献】
特開2008−002572(JP,A)
【文献】
特表2009−524781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータ側に開口するシリンダ孔を有する作用部を備えたキャリパボディと、ディスクロータの両側に配置される一対の摩擦パッドとを備え、該摩擦パッドは、裏板の車両前進時におけるディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片を突設し、該耳片を前記キャリパボディに形成したパッドガイド溝にそれぞれ収容して前記摩擦パッドをディスク軸方向へ移動可能に支持した車両用ディスクブレーキにおいて、前記摩擦パッドを前記パッドガイド溝に組み付けるにあたり、組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記キャリパボディ又は前記耳片に干渉して誤組付けを防止する誤組防止部を設け、前記誤組防止部は、前記パッドガイド溝に形成されたキャリパ側凹部又はキャリパ側凸部と、前記耳片に形成され、前記キャリパ側凹部又は前記キャリパ側凸部に対応する形状の耳側凸部又は耳側凹部とで形成され、前記摩擦パッドの組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記キャリパ側凸部が前記耳片に干渉するか、或いは、前記耳側凸部が前記パッドガイド溝に干渉することを特徴とする車両用ディスクブレーキ。
【請求項2】
ディスクロータ側に開口するシリンダ孔を有する作用部を備えたキャリパボディと、ディスクロータの両側に配置される一対の摩擦パッドとを備え、該摩擦パッドは、裏板の車両前進時におけるディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片を突設し、該耳片を前記キャリパボディに形成したパッドガイド溝にそれぞれ収容して前記摩擦パッドをディスク軸方向へ移動可能に支持した車両用ディスクブレーキにおいて、前記摩擦パッドを前記パッドガイド溝に組み付けるにあたり、組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記キャリパボディ又は前記耳片に干渉して誤組付けを防止する誤組防止部を設け、前記誤組防止部は、前記摩擦パッドの、車両前進時におけるディスク回出側面又はディスク回入側面のディスク半径方向内側端部に設けられたディスクロータ周方向に突出する凸部で形成され、前記摩擦パッドの組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記凸部が前記キャリパボディに干渉することを特徴とする車両用ディスクブレーキ。
【請求項3】
ディスクロータ側に開口するシリンダ孔を有する作用部を備えたキャリパボディと、ディスクロータの両側に配置される一対の摩擦パッドとを備え、該摩擦パッドは、裏板の車両前進時におけるディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片を突設し、該耳片を前記キャリパボディに形成したパッドガイド溝にそれぞれ収容して前記摩擦パッドをディスク軸方向へ移動可能に支持した車両用ディスクブレーキにおいて、前記摩擦パッドを前記パッドガイド溝に組み付けるにあたり、組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記キャリパボディ又は前記耳片に干渉して誤組付けを防止する誤組防止部を設け、前記誤組防止部は、前記摩擦パッドの、車両前進時におけるディスク回出側面及びディスク回入側面のディスク半径方向内側端部に設けられたディスクロータ周方向に突出する一対の凸部で形成され、前記摩擦パッドの組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記凸部が前記キャリパボディに干渉することを特徴とする車両用ディスクブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ディスクブレーキに関し、詳しくは、摩擦パッドに設けた一対の耳片を、キャリパボディに形成したパッドガイド溝にそれぞれ収容して摩擦パッドをディスク軸方向へ移動可能に支持した車両用ディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ディスクブレーキとして、ディスクロータ側に開口するシリンダ孔を有する作用部を備えたキャリパボディと、ディスクロータの両側に配置される一対の摩擦パッドとを備え、摩擦パッドの裏板の車両前進時におけるディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片を突設し、該耳片をキャリパボディに形成したパッドガイド溝にそれぞれ収容して、摩擦パッドをディスク軸方向へ移動可能に支持したものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−74500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1の
図8では、キャリパボディ72に摩擦パッド(ブレーキパッド80)を取り付けている図が示されているが、この摩擦パッドを逆にした状態でも、摩擦パッドをキャリパボディに取り付けることが可能であり、いわゆる誤組付けが発生する虞があった。この誤組付けの問題をより分りやすくするために
図11を示す。
図11に示すディスクブレーキでは、破線で示すように、摩擦パッド61のディスク外周側とディスク内周側とを逆にした状態でも、摩擦パッド61の耳片62,62をキャリパボディ63に設けたパッドガイド溝64,64に挿入させることができてしまうことが把握できる。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構造で摩擦パッドの誤組付けを防止することができる車両用ディスクブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキは、ディスクロータ側に開口するシリンダ孔を有する作用部を備えたキャリパボディと、ディスクロータの両側に配置される一対の摩擦パッドとを備え、該摩擦パッドは、裏板の車両前進時におけるディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片を突設し、該耳片を前記キャリパボディに形成したパッドガイド溝にそれぞれ収容して前記摩擦パッドをディスク軸方向へ移動可能に支持した車両用ディスクブレーキにおいて、前記摩擦パッドを前記パッドガイド溝に組み付けるにあたり、組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記キャリパボディ又は前記耳片に干渉して誤組付けを防止する誤組防止部を設
け、前記誤組防止部は、前記パッドガイド溝に形成されたキャリパ側凹部又はキャリパ側凸部と、前記耳片に形成され、前記キャリパ側凹部又は前記キャリパ側凸部に対応する形状の耳側凸部又は耳側凹部とで形成され、前記摩擦パッドの組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記キャリパ側凸部が前記耳片に干渉するか、或いは、前記耳側凸部が前記パッドガイド溝に干渉することを特徴としている。
【0007】
さらに、
ディスクロータ側に開口するシリンダ孔を有する作用部を備えたキャリパボディと、ディスクロータの両側に配置される一対の摩擦パッドとを備え、該摩擦パッドは、裏板の車両前進時におけるディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片を突設し、該耳片を前記キャリパボディに形成したパッドガイド溝にそれぞれ収容して前記摩擦パッドをディスク軸方向へ移動可能に支持した車両用ディスクブレーキにおいて、前記摩擦パッドを前記パッドガイド溝に組み付けるにあたり、組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記キャリパボディ又は前記耳片に干渉して誤組付けを防止する誤組防止部を設け、前記誤組防止部は、前記摩擦パッドの、車両前進時におけるディスク回出側面又はディスク回入側面のディスク半径方向内側端部に設けられたディスクロータ周方向に突出する凸部で形成され、前記摩擦パッドの組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記凸部が前記キャリパボディに干渉すると好適である。
【0008】
また、
ディスクロータ側に開口するシリンダ孔を有する作用部を備えたキャリパボディと、ディスクロータの両側に配置される一対の摩擦パッドとを備え、該摩擦パッドは、裏板の車両前進時におけるディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片を突設し、該耳片を前記キャリパボディに形成したパッドガイド溝にそれぞれ収容して前記摩擦パッドをディスク軸方向へ移動可能に支持した車両用ディスクブレーキにおいて、前記摩擦パッドを前記パッドガイド溝に組み付けるにあたり、組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記キャリパボディ又は前記耳片に干渉して誤組付けを防止する誤組防止部を設け、前記誤組防止部は、前記摩擦パッドの、車両前進時におけるディスク回出側面及びディスク回入側面のディスク半径方向内側端部に設けられたディスクロータ周方向に突出する一対の凸部で形成され、前記摩擦パッドの組み付け方向を誤って組み付けた場合に、前記凸部が前記キャリパボディに干渉すると好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用ディスクブレーキによれば、
誤組防止部を、パッドガイド溝に形成されたキャリパ側凹部又はキャリパ側凸部と、耳片に形成され、キャリパ側凹部又は前記キャリパ側凸部に対応する形状の耳側凸部又は耳側凹部とで形成したことにより、正規の状態で摩擦パッドを組み付ける際には、キャリパ側凹部に耳側凸部が挿入されるか、或いは、キャリパ側凸部が耳側凹部に挿入され、摩擦パッドの耳片をパッドガイド溝に挿入し、摩擦パッドをキャリパボディに組み付けることができる。一方、誤って摩擦パッドのディスク外周側とディスク内周側とを逆にした状態で組み付けようとすると、キャリパ側凸部が耳片に干渉するか、或いは、耳側凸部がパッドガイド溝に干渉して、耳片をパッドガイド溝に挿入することができず、摩擦パッドの誤組付けを防止することができる。
【0010】
さらに、誤組防止部を、摩擦パッドの、車両前進時におけるディスク回出側面又はディスク回入側面のいずれか一方のディスク半径方向内側端部に設けられたディスクロータ周方向に突出する凸部で形成したことにより、正規の状態で摩擦パッドを組み付ける際には、摩擦パッドに形成した凸部は、キャリパボディよりもディスク回入側に配置され、キャリパボディに干渉することなく、摩擦パッドをキャリパボディに組み付けることができる。一方、誤って摩擦パッドのディスク外周側とディスク内周側とを逆にした状態で組み付けようとすると、凸部がキャリパボディに干渉し、摩擦パッドをキャリパボディに組み付けることができず、誤組付けを防止することができる。
【0011】
また、誤組防止部を、摩擦パッドの、車両前進時におけるディスク回出側面及びディスク回入側面のディスク半径方向内側端部に設けられたディスクロータ周方向に突出する一対の凸部で形成したことにより、正規の状態で摩擦パッドを組み付ける際には、摩擦パッドに形成した凸部は、キャリパボディよりもディスク回入側に配置され、キャリパボディに干渉することなく、摩擦パッドをキャリパボディに組み付けることができる。一方、誤って摩擦パッドのディスク外周側とディスク内周側とを逆にした状態で組み付けようとすると、一対の凸部がキャリパボディに干渉し、摩擦パッドをキャリパボディに組み付けることができず、誤組付けを防止することができる。さらに、凸部をディスク回出側面及びディスク回入側面の2箇所に設けたことから、摩擦パッドのディスク外周側とディスク内周側とを逆にした状態で、且つ、キャリパボディに対して斜めに傾けてパッドガイド溝に耳片を挿入しようとした場合でも、いずれかの凸部がキャリパボディと干渉し、誤組付けを確実に防止することができる。さらに、凸部の突出量を小さくすることができ、凸部がキャリパボディから露出する量を小さくできることから、凸部を目立たなくして外観を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1形態例を示す車両用ディスクブレーキの断面正面図である。
【
図2】摩擦パッドのディスク外周側とディスク内周側とを逆にした状態で組み付
けようとした際の説明図である。
【
図4】本発明の第2形態例を示す車両用ディスクブレーキの断面正面図である。
【
図5】第2形態例の摩擦パッドのディスク外周側とディスク内周側とを逆にした
状態で組み付けようとした際の説明図である。
【
図6】本発明の第3形態例を示す車両用ディスクブレーキの断面正面図である。
【
図7】第3形態例の摩擦パッドのディスク外周側とディスク内周側とを逆にした
状態で組み付けようとした際の説明図である。
【
図8】本発明の
第1参考例を示す車両用ディスクブレーキの断面正面図である。
【
図9】
第1参考例の摩擦パッドのディスク外周側とディスク内周側とを逆にした
状態で組み付けようとした際の説明図である。
【
図10】本発明の
第2参考例を示す車両用ディスクブレーキの断面正面図である。
【
図11】従来の車両用ディスクブレーキの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図3は本発明の車両用ディスクブレーキの第1形態例を示す断面図である。なお、矢印Aは車両前進時に車輪と一体に回転するディスクロータの回転方向とし、以下で述べるディスク回出側及びディスク回入側とは車両前進時におけるものとする。
【0014】
本形態例の車両用ディスクブレーキ1は、車輪と一体に回転する前記ディスクロータ2と、該ディスクロータ2の一側部で車体に取り付けられるキャリパボディ3と、ディスクロータ2の両側部に配設される摩擦パッド4,4とを備えている。
【0015】
キャリパボディ3は、摩擦パッド4,4を押動する一対の作用部3a,3aをディスクロータ2の外周側を跨ぐブリッジ部3bと共に一体形成したモノコック構造の6ポットピストン対向型に形成され、作用部3a,3aには、シリンダ孔3cが3個ずつ対向してそれぞれ形成されている。各シリンダ孔3cには、コップ状に形成されたピストン5が、開口部をディスクロータ2側に向けて、移動可能にそれぞれ内挿されている。各シリンダ孔3cには、開口側内周部にダストシール6aが、該ダストシール6aよりもシリンダ孔底部側にピストンシール6bがそれぞれ装着され、各ピストン5とシリンダ孔3cとの間には液圧室7がそれぞれ画成されている。さらに、各作用部3aのディスクロータ側面のディスク半径方向内側には、摩擦パッド4のディスク回出側面4aとディスク回入側面4bとが当接するトルク受部3dがそれぞれ形成されている。また、ブリッジ部3bは、ディスク回出側に配置されるディスク回出側ブリッジ部3eと、ディスク回入側に配置されるディスク回入側ブリッジ部3fと、ディスク回出側ブリッジ部3eとディスク回入側ブリッジ部3fの中間部に配置される中央ブリッジ部3gとを備え、該中央ブリッジ部3gに、摩擦パッド4,4をディスク内周側に押圧するパッドスプリング8が取り付けられている。
【0016】
トルク受部3dには、ディスクロータ2のそれぞれの側部で互いに向き合う4つのパッドガイド溝9が設けられている。各パッドガイド溝9は、ディスク半径方向外側面9aとディスク半径方向内側面9bとを結ぶ対向面9cとを有するコ字状に形成されている。さらに、ディスク回入側のパッドガイド溝9のディスク半径方向外側面9aのキャリパボディ中心側には、ディスク回入側及びディスク半径方向外側に向けて凹状となるキャリパ側凹部9d(本発明の誤組防止部)が、また、ディスク回出側のパッドガイド溝9のディスク半径方向外側面9aのキャリパボディ中心側には、ディスク回出側及びディスク半径方向外側に向けて凹状となるキャリパ側凹部9e(本発明の誤組防止部)がそれぞれ形成されている。
【0017】
摩擦パッド4,4は、各作用部3aとディスクロータ2との間に配置され、ディスクロータ2に摺接する4枚のライニング4cと、該ライニング4cを貼着する金属製の裏板4dとからなっている。裏板4dは、ディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片10,11が突設され、ディスク回入側の耳片10のディスク半径方向外側面のキャリパボディ中心側には、ディスク回入側及びディスク半径方向外側に向けて凸状となるとともに、前記キャリパ側凹部9dに対応する形状の耳側凸部10a(本発明の誤組防止部)が、また、ディスク回出側の耳片11のディスク半径方向外側面のキャリパボディ中心側には、ディスク回出側及びディスク半径方向外側に向けて凸状となるとともに、前記キャリパ側凹部
9eに対応する形状の耳側凸部11a(本発明の誤組防止部)がそれぞれ形成されている。各摩擦パッド4は、耳片10,11をキャリパボディ3に形成した前記パッドガイド溝9,9にそれぞれ収容することにより、ディスク軸方向へ移動可能に支持され、摩擦パッドを吊持するハンガーピンを省略した構造となっている。
【0018】
上述のように形成された本形態例の車両用ディスクブレーキ1では、
図1及び
図3に示されるように、正規の状態で摩擦パッド4を組み付けた際には、パッドガイド溝9,9に形成したキャリパ側凹部9d,9eに、摩擦パッド4,4に設けた耳側凸部10a,11aがそれぞれ挿入され、摩擦パッド4,4をキャリパボディ3に対してディスク軸方向に移動可能に組み付けることができる。一方、
図2に示されるように、誤って摩擦パッド4,4のディスク外周側とディスク内周側とを逆にした状態で組み付けようとすると、耳側凸部10a,11aがパッドガイド溝9,9のディスク半径方向内側面9b,9bと当接し、耳片10,11がディスク半径方向外側面9a,9aに干渉することから、耳片10,11をパッドガイド溝9,9に挿入することができず、摩擦パッド4,4の誤組付けを防止することができる。
【0019】
なお、上述の形態例では、誤組防止部として、パッドガイド溝にキャリパ側凹部を設け、耳片に耳側凸部を設けているが、これとは逆に、パッドガイド溝側にキャリパ側凸部を、耳片側に、前記キャリパ側凸部に対応する形状の耳側凹部を設けるものでもよい。また、ディスク回入側とディスク回出側のいずれか一方のパッドガイド溝と耳片とに、前記誤組防止部としての凸部と凹部とを形成したものでもよく、この場合、誤って、摩擦パッドの裏表を逆にしてパッドガイド溝に耳片を挿入しようとした際にも耳片をパッドガイド溝に挿入することができず、摩擦パッドの裏表の誤組付けも防止することができる。
【0020】
図4乃至図
7は、本発明の他の形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
図4及び
図5は、本発明の第2形態例を示すもので、本形態例のキャリパボディ3は、一対の作用部3a,3aをディスクロータ2の外周側を跨ぐブリッジ部3b(3e,3f,3gを総括してブリッジ部3bと
する。以下同様。)で付き合わせて連結ボルトで一体に連結したもので、4ポットピストン対向型に形成され、作用部3a,3aには、シリンダ孔3cが2個ずつ対向してそれぞれ形成されている。各シリンダ孔3cには、コップ状に形成されたピストン5が、開口部をディスクロータ2側に向けて移動可能にそれぞれ内挿されている。また、各作用部3aのディスクロータ側面のディスク半径方向内側には、摩擦パッド21のディスク回出側面21bとディスク回入側面21aとが当接するトルク受部3dがそれぞれ形成され、トルク受部3dには、ディスクロータ2のそれぞれの側部で互いに向き合う4つのパッドガイド溝22が設けられている。
【0021】
各摩擦パッド21,21は、ディスクロータ2に摺接するライニング21cと、該ライニング21cを貼着する金属製の裏板21dとからなっており、ディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片23,23が突設されている。また、裏板21dのディスク回入側面21aのディスク半径方向内側端部には、ディスクロータ周方向外側に突出する凸部24(本発明の誤組防止部)が形成されている。
【0022】
本形態例では、
図4に示されるように、正規の状態で摩擦パッド21を組み付けた際には、凸部24はキャリパボディ3のディスク回入側のトルク受部3dのディスク半径方向内端よりもディスク半径方向内側に配置され、摩擦パッド21の耳片23,23をキャリパボディ3のパッドガイド溝22,22に挿入して、摩擦パッド21,21をキャリパボディ3に対してディスク軸方向に移動可能に組み付けることができる。一方、
図5に示されるように、誤って摩擦パッド21,21のディスク外周側とディスク内周側とを逆にした状態で組み付けようとすると、凸部24がキャリパボディのディスク回出側のトルク受部3dに干渉し、耳片23,23をパッドガイド溝22,22に挿入することができず、摩擦パッド21,21の誤組付けを防止することができる。
【0023】
図6及び
図7は、本発明の第3形態例を示すもので、本形態例の摩擦パッド31は、ディスクロータ2に摺接するライニング31aと、該ライニング31aを貼着する金属製の裏板31bとからなっており、ディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片32,32が突設されている。また、裏板31bのディスク回出側面31cのディスク半径方向内側端部と、裏板31bのディスク回入側面31dのディスク半径方向内側端部とには、ディスクロータ周方向外側にそれぞれ突出する一対の凸部33,33(本発明の誤組防止部)が形成されている。
【0024】
本形態例では、
図6に示されるように、正規の状態で摩擦パッド31を組み付けた際には、凸部33,33は、キャリパボディ3の双方のトルク受部3d,3dのディスク半径方向内端よりもディスク半径方向内側に配置され、摩擦パッド31の耳片32,32をキャリパボディ3のパッドガイド溝34,34に挿入して、摩擦パッド31,31をキャリパボディ3に対してディスク軸方向に移動可能に組み付けることができる。一方、
図7に示されるように、誤って摩擦パッド31,31のディスク外周側とディスク内周側とを逆にした状態で組み付けようとすると、凸部33,33がキャリパボディ3の双方のトルク受部3d,3dにそれぞれ干渉し、耳片32,32をパッドガイド溝34,34に挿入することができず、摩擦パッド31,31の誤組付けを防止することができる。
【0025】
さらに、本形態例では、摩擦パッド31,31のディスク外周側とディスク内周側とを逆にした状態で、且つ、キャリパボディ3に対して斜めに傾けてパッドガイド溝34,34に耳片32,32を挿入しようとした場合でも、いずれかの凸部33,33がキャリパボディ3と干渉し、誤組付けを確実に防止することができる。また、摩擦パッド31に設ける一対の凸部33,33は、ディスクロータ周方向外側にそれぞれ突出していることから、前記第2形態例の凸部24に比べて、凸部33の突出量を抑えることができ、凸部33,33がキャリパボディ3から露出する量を小さくできることから、凸部33,33を目立たなくさせて外観を良好に保つことができる。
【0026】
図8及び
図9は、本発明の
第1参考例を示すもので、本形態例の摩擦パッド41は、ディスクロータ2に摺接するライニング41aと、該ライニング41aを貼着する金属製の裏板41bとからなっており、ディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片42,42が突設されている。また、裏板41bは、耳片42,42よりもディスク半径方向外側のディスク回出側面41cからディスク回入側面41dまでの幅寸法L1が、耳片42,42よりもディスク半径方向内側のディスク回出側面41eからディスク回入側面41fまでの幅寸法L2よりも狭く形成されている。
【0027】
キャリパボディ3の作用部3a,3aに設けられるトルク受部3h,3hは、ディスク半径方向中間部にパッドガイド溝43,43が設けられ、裏板41bの形状に応じて、パッドガイド溝43,43よりもディスク半径方向外側で摩擦パッド41を挟んで対向するトルク受部3h,3hの間の長さ寸法L3が、パッドガイド溝43,43よりもディスク半径方向内側で摩擦パッド41を挟んで対向するトルク受部3h,3hの間の長さ寸法L4よりも短い段状に形成されている。
【0028】
本
参考例では、
図8に示されるように、正規の状態で摩擦パッド41を組み付けた際には、裏板41bの耳片42,42よりもディスク半径方向外側の幅の狭い部分が、トルク受部3h,3hの間の長さ寸法が短い箇所に、耳片42,42よりもディスク半径方向内側の幅の広い部分が、トルク受部3h,3hの間の長さ寸法が長い箇所にそれぞれ配置され、耳片42,42をパッドガイド溝43,43に挿入して、摩擦パッド41,41をキャリパボディ3に対してディスク軸方向に移動可能に組み付けることができる。一方、
図9に示されるように、誤って摩擦パッド41,41のディスク外周側とディスク内周側とを逆にした状態で組み付けようとすると、裏板41bのディスク回出側面41eからディスク回入側面41fまでの幅寸法が広い部分が、トルク受部3h,3hの間の長さ寸法が短い箇所のキャリパボディ3に干渉し、耳片42,42をパッドガイド溝43,43に挿入することができず、摩擦パッド41,41の誤組付けを防止することができる。
【0029】
なお
、摩擦パッドの裏板の、耳片よりもディスク半径方向内側のディスク回出側面からディスク回入側面までの幅寸法を、耳片よりもディスク半径方向外側のディスク回出側面からディスク回入側面までの幅寸法よりも狭く形成し、この裏板の形状に応じて、パッドガイド溝よりもディスク半径方向内側で摩擦パッドを挟んで対向するトルク受部の間の長さ寸法を、パッドガイド溝よりもディスク半径方向外側で摩擦パッドを挟んで対向するトルク受部間の長さ寸法よりも短い段状に形成したものでもよい。
【0030】
図10は、本発明の
第2参考例を示すもので、本
参考例の摩擦パッド51は、ディスクロータ2に摺接するライニング51aと、該ライニング51aを貼着する金属製の裏板51bとからなっており、ディスク回入側とディスク回出側とに一対の耳片52,52が突設されている。
【0031】
耳片52,52を形成する位置と、トルク受部3d,3dに形成されるパッドガイド溝53,53の位置とは、摩擦パッド51のディスク内周側とディスク外周側とを逆方向に向けて誤って組み付けた際に、摩擦パッド51のディスク半径方向内側面51cがキャリパボディ3の中央ブリッジ部3gに干渉するように形成され、耳片52,52は、摩擦パッド51の裏板51bのディスク半径方向外側に、パッドガイド溝53,53は、トルク受部3d,3dのディスク半径方向外側にそれぞれ形成されている。
【0032】
また、耳片52,52とパッドガイド溝53,53とが形成される位置は、摩擦パッド51のディスク内周側とディスク外周側とを逆方向に向けて誤って組み付けた際に、摩擦パッド51のディスク半径方向外側面51dがキャリパボディ3のディスク内周側から突出する、ディスク半径方向内側に形成されていても良く、この場合、誤って組み付けた際に、キャリパボディ3のディスク内周側から摩擦パッドが視認されることから、誤組付けの防止を図ることができる。
【0033】
なお、本発明は上述の各形態例のように6ポット又は4ポットのピストン対向型に限らず、2ポットや8ポット以上のピストン対向型のものにも適用できる。また、摩擦パッドの耳片をキャリパボディのパッドガイド溝に挿入して、摩擦パッドをキャリパボディに対してディスク軸方向に移動可能に組み付けるものであれば、キャリパボディや摩擦パッドがどのような構造であっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…車両用ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパボディ、3a…作用部、3b…ブリッジ部、3c…シリンダ孔、3d,3h…トルク受部、3e…ディスク回出側ブリッジ部、3f…ディスク回入側ブリッジ部、3g…中央ブリッジ部、4…ピストン、4a…ディスク回出側面、4b…ディスク回入側面、4c…ライニング、4d…裏板、5…ピストン、6a…ダストシール、6b…ピストンシール、7…液圧室、8…パッドスプリング、9…パッドガイド溝、9a…ディスク半径方向外側面、9b…ディスク半径方向内側面、9c…対向面、9d,9e…キャリパ側凹部、10,11…耳片、10a,11a…耳側凸部、21…摩擦パッド、21a…ディスク回入側面、21b…ディスク回出側面、21c…ライニング、21d…裏板、22…パッドガイド溝、23…耳片、24…凸部、31…摩擦パッド、31a…ライニング、31b…裏板、31c…ディスク回出側面、31d…ディスク回入側面、32…耳片、33…凸部、34…パッドガイド溝、41…摩擦パッド、41a…ライニング、41b…裏板、41c,41e…ディスク回出側面、41d,41f…ディスク回入側面、42…耳片、43…パッドガイド溝、51…摩擦パッド、51a…ライニング、51b…裏板、51c…ディスク半径方向内側面、51d…ディスク半径方向外側面、52…耳片、53…パッドガイド溝