(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1に係る換気制御装置と換気制御方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
本実施の形態に係る換気システム1は、加熱調理機器がオンにされたときに、加熱調理機器の直上に配置されているレンジフードだけでなく、室内(換気対象空間)に設置されている複数の設備機器を総合的に制御することにより、室内の空気を効率的に換気し、ユーザが感じる不快感を抑制するシステムである。
【0012】
本実施の形態に係る換気システム1は、
図1に示すように、複数の設備機器200を制御する換気制御装置100を備える。設備機器200は、空気を換気する換気口210と、食品を加熱する加熱調理機器220と、加熱調理機器220の使用により生じた煙等の排ガスを換気するレンジフード230と、外の空気を室内に供給する給排気ファン240と、室内の空気調和をする空調機器250と、を含む。これらは、換気口210を除いて、有線または無線のLAN(Local Area Network)等からなるネットワークNによって接続されている。
【0013】
換気制御装置100は、加熱調理機器220から換気の原因となった排気対象の発生状況を示す換気指標を受信し、この換気指標に基づいて設備機器200を制御することによって、室内の空気を換気する。
【0014】
換気制御装置100は、換気制御装置100の全体動作を制御する制御部11と、制御部11の作業領域として用いられる主記憶部12と、種々のデータを記憶する補助記憶部13と、ユーザの操作を受け付ける入力部14と、ユーザに情報を提供する出力部15と、ネットワークNで接続された設備機器200と通信する通信部16と、を備えている。これら各部は、バス17を介して接続されている。
実施の形態1では換気制御装置100は個別の装置を想定しているが、これに限らない。例えば、パソコンや携帯電話等の同機能を保有する汎用計算機器等にソフトウエアをインストールし、同機能を持たせても良い。これにより、ユーザは換気システム1に対応する機器を揃えるのみで、専用端末を用意せずにシステムを実現する事が出来、導入が容易になるメリットが有る。
また、設備機器200の何れかに換気制御装置100の機能を内蔵しても良い。これにより、機器を設置するスペースを無くし、省スペース化を実現する事が出来る。
【0015】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等から構成される。制御部11は、主記憶部12を作業領域として補助記憶部13に記憶されている設定プログラムおよび換気制御プログラムを実行することにより、後述の
図5に示す設定処理および
図7に示す換気制御処理を実行する。
【0016】
主記憶部12は、RAM(Random Access Memory)等から構成される。主記憶部12は、補助記憶部13から設定プログラムおよび換気制御プログラムをロードし、制御部11の作業領域として用いられる。
【0017】
補助記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含んで構成される。補助記憶部13は、設定プログラムおよび換気制御プログラムを記憶し、さらに制御部11の処理に用いられる種々のデータ(例えば、
図3を参照して後述する機能情報、
図4を参照して後述する制御テーブル)を記憶する。補助記憶部13は、制御部11の指示に従って、制御部11によって利用されるデータを制御部11に供給し、制御部11から供給されたデータを記憶する。
【0018】
入力部14は、入力キー、ポインティングデバイス等から構成され、ユーザによって入力された情報を取得して、制御部11に通知する。
【0019】
出力部15は、LCD(Liquid Crystal Display)、スピーカ等から構成される。出力部15は、制御部11の指示に従って、ユーザに対して種々の情報を提示する。
【0020】
通信部16は、設備機器200と通信するための通信インタフェース回路等から構成される。通信部16は、加熱調理機器220から火力を示す火力データを受信して、制御部11に出力する。また、通信部16は、制御部11から出力された指示データを、レンジフード230、給排気ファン240、空調機器250に送信する。
【0021】
換気口210は、壁に設けられた開口である。室内の気圧が外部の気圧よりも低い場合には、換気口210から室内に空気が給気され、室内の気圧が外部の気圧よりも高い場合には、室内の空気が換気口210を介して外部に排気される。
【0022】
加熱調理機器220は、IH(Induction Heating)クッキングヒーター等から構成される調理機器である。加熱調理機器220は、換気の原因となった排気対象の発生状況を示す換気指標を作成し、換気制御装置100に送信する。ここで、火力が大きくなれば、調理により発生する排ガスの量も多くなる。そこで、本実施形態では、排ガスに含まれる煙(水蒸気を含む)や熱気、臭気、CO
2(二酸化炭素)の量に応じて、排気機能を有する複数の設備機器200の動作を制御するため、加熱調理機器220の火力を示す火力データを換気の原因となった排気対象の発生状況を示す換気指標として扱う。加熱調理機器220は、鍋やフライパンなどを加熱する加熱装置である。
【0023】
臭気、煙、水蒸気、二酸化炭素(以下、適宜「臭気等」という。)の量は、例えば、臭気等の量を臭気等の濃度として計測する手段により計測される。このような手段としては、臭気等の濃度に比例する電圧値を出力するセンサがある。設計者は、臭気等の量とセンサが出力する電圧値との対応関係を示す情報を記憶手段に記憶させる。この場合、制御部11は、記憶手段に記憶された情報に基づいて、センサが出力した電圧値に対応する臭気等の量を算出し、算出した臭気等の量を換気指標として用いることができる。なお、臭気の量は、臭気の強さともいえる。また、熱気の量は、熱気の量を温度として計測する手段により計測される。このような手段としては、温度に比例する電圧値を出力する温度センサがある。設計者は、熱気の量と温度センサが出力する電圧値との対応関係を示す情報を記憶手段に記憶させる。この場合、制御部11は、記憶手段に記憶された情報に基づいて、温度センサが出力した電圧値に対応する熱気の量を算出し、算出した熱気の量を換気指標として用いることができる。
【0024】
レンジフード230は、加熱調理機器220の直上に配置され、換気ダクトや換気扇(調理時用換気扇)を備えた換気装置である。レンジフード230は、主に調理で発生した煙や水蒸気を吸引し、外部へ排出する。レンジフード230は、換気制御装置100からの指示データに従って作動する。
【0025】
給排気ファン240は、壁に設けられたファンであり、給排気ファン240が例えば正回転することにより、外部の空気を室内に給気し、逆回転することにより、内部の空気を室外に排気する。給排気ファン240は、換気制御装置100からの指示データに従って作動する。
【0026】
空調機器250は、いわゆるエアコンの室内機であり、吸込口から空気を吸い込み、加熱、冷却、除湿などの処理を施して、吹き出し口から送風することにより、空気調和を行う。空調機器250は、換気制御装置100からの指示データに従って作動し、吹き出す風の風向と風量を変更することができる。
【0027】
換気制御装置100は、上述の構成を有することで種々の機能を発揮する。
図2を参照して、換気制御装置100の機能的な構成を説明する。
換気制御装置100は、ユーザからの指示を受け付けたりユーザに情報を提示したりするユーザインタフェース110と、設備機器200と通信する通信インタフェース120と、ユーザインタフェース110が受け付けた指示に応じて設備機器200の換気動作を設定する設定処理部130と、設定処理部130が設定した換気動作に従って設備機器200を制御する換気制御処理部140と、を有している。
【0028】
ユーザインタフェース110は、主として入力部14と出力部15とによって実現される。ユーザインタフェース110は、ユーザが入力した室内(換気対象空間)の構成とその中の設備機器200の配置を示す情報、その設備機器200の機能を示す情報等を、設定処理部130に出力する。
【0029】
通信インタフェース120は、主として通信部16によって実現される。通信インタフェース120は、加熱調理機器220の火力の程度を示す火力データを受信し換気制御処理部140に出力する。
また、通信インタフェース120は、制御対象のレンジフード230、給排気ファン240、空調機器250に対する指示データを換気制御処理部140から取得し、取得した指示データを制御対象の機器に送信する。
【0030】
設定処理部130は、主として制御部11と、主記憶部12と、補助記憶部13と、が協働することにより実現されるもので、制御内容を決定する。設定処理部130は、部屋(換気対象空間)の構成と部屋内に設置されている設備機器200の配置とを示す配置情報を取得する配置情報取得部131と、部屋内に設置されている設備機器200の機能を示す情報を取得する設備情報取得部132と、制御対象の設備機器200の動作を決定する決定部133と、制御対象の設備機器200の動作を設定する換気動作設定部134と、を有している。
【0031】
配置情報取得部131は、ユーザインタフェース110が受け付けた、部屋(換気対象空間)の構成(間取り)、部屋内の各設備機器200の位置、等を示す配置情報を取得する。部屋の構成を示す情報は、例えば、部屋のサイズ・形状などの情報を含む。各設備機器200の位置等を示す情報は、部屋内の各配置位置を示す情報を含む。
配置情報取得部131は、取得した配置情報を設備情報取得部132に出力する。
【0032】
設備情報取得部132は、配置情報取得部131が出力した配置情報、および、ユーザインタフェース110が受け付けた設備機器200の機能を示す機能情報を取得する。設備機器200の機能とは、
図3に示すように、その設備機器200の動作、火力、風量、風向等を示す。
図3の例では、加熱調理機器220は、その火力を強、中、弱の3段階に変更でき、「強」、「中」、「弱」の時の消費エネルギーは、例えば、それぞれ3kW、2kW、1kWである。また、レンジフード230は、その排気能力を強、中、弱の3段階に変更でき、「強」、「中」、「弱」の時の排気能力は、例えば、それぞれ600m
3/h、370m
3/h、170m
3/h、である。換気口210は能動的な換気動作を行わず、受動的な換気動作を行うため、換気口の実効開口サイズで表している。
設備情報取得部132は、各設備機器200の機能情報を、配置情報が示す設備機器200にマッピングし、マッピングした情報を決定部133に出力する。
【0033】
決定部133は、予め、シーン(部屋の構成と、設備機器200の配置と、設備機器200の機能と、の組み合わせ)に対応する複数の動作アルゴリズムを記憶している。
決定部133は、予め設定したシーンの中から、設備情報取得部132から得た情報が示すシーンに類似したシーンを選択し、選択したシーンに対応する動作アルゴリズムにより、加熱調理機器220の火力に応じた制御対象の設備機器200の総合的な換気動作を決定する。
なお、決定部133が、予め設定したシーンの中から、設備情報取得部132から得た情報が示すシーンに類似したシーンを選択する方法としては、例えば、設備情報取得部132から得た情報が示すシーンの評価値と、決定部133に予め記憶されているシーンの基準値と、の差分の平方和が最も小さいものを選択する方法がある。
また、決定部133の動作について、パラメータの組み合わせを変更しつつ、室内の空気の流れをシミュレートし、好成績の組合せを選定する機能を設けても良い。シミュレートをする事で、よりシーンに合わせた不快感の改善効果を引き出す最適な動作を見つけ出す事が出来る。但し、バックデータ無しにシミュレートを行うと、実際に動作を開始するまでに時間がかかり過ぎる課題が有る。従って、前述する保存された動作アルゴリズムで先に動作しながらシミュレーションを進め、最適化を行い、動作の微修正を行いながら動作するのが最も効率が良く、効果が高い。
【0034】
換気動作設定部134は、選択した動作アルゴリズムに基づき
図4に示すように、加熱調理機器220の火力を示す火力データと、決定部133が決定した換気動作を示す制御情報と、を紐付けて制御テーブルに設定する。
【0035】
換気制御処理部140は、主として制御部11と、主記憶部12と、補助記憶部13と、が協働することにより実現されるものであり、制御テーブルの情報に従って、加熱調理機器220の火力に応じて制御対象の設備機器200を制御するものである。換気制御処理部140は、加熱調理機器220の火力を示す火力データを取得する換気指標取得部141と、火力データに対応する制御情報を制御テーブルから取得する制御情報取得部142と、取得した制御情報に従って、制御対象の設備機器200を制御する換気制御部143と、を有している。
【0036】
換気指標取得部141は、通信インタフェース120が加熱調理機器220から受信した火力データを取得する。
制御情報取得部142は、換気指標取得部141が取得した火力データに対応する制御情報を制御テーブルから取得する。
換気制御部143は、換気動作設定部134が取得した制御情報に基づいて、制御対象の設備機器200を制御する。つまり、換気制御部143は、換気指標取得部141が取得した換気指標(火力データ)に対応する、調理時用換気扇(レンジフード230)と設備機器200との動作が実行されるように、調理時用換気扇と設備機器200とを制御して換気させる。
【0037】
次に、上記構成を有する換気システム1の動作を、
図5−7を参照して説明する。
【0038】
換気システム1は、加熱調理機器220の火力とレンジフード230の動作とを連動させるだけではなく、室内に設定されている複数の設備機器200を総合的に制御する。ユーザは、換気システム1を作動させて室内の換気を行う前に、加熱調理機器220の火力に応じて、どの設備機器200をどのように動作させて換気するかを設定する。なお、設定は、換気システム1の設置時等に1回行えばよい。
【0039】
以下、場面を分けて、設定処理と換気制御処理とを説明する。
(設定処理)
設備の設置時等に、ユーザは、換気制御装置100の入力部14を操作して、
図5に示す設定処理を起動し、換気対象の個々の部屋を定義する情報(例えば、換気対象となる部屋の形状とサイズ等を示す情報)、部屋内の設備機器200の配置を示す情報等を含む配置情報を入力部14から入力する。配置情報取得部131は、ユーザインタフェース110を介して、ユーザによって入力された配置情報を取得する(ステップS101)。
【0040】
続いて、ユーザは、部屋内に配置されている各設備機器200の機能情報を入力する。さらに、ユーザは、換気対象空間内のどの位置の空気を清浄に維持することを優先するかを示す優先位置情報を入力する。
設備情報取得部132は、入力された機能情報と優先位置情報とを、ユーザインタフェース110を介して取得する(ステップS102)。
【0041】
なお、前述のようにユーザがユーザインタフェース110を操作し、配置情報等を入力しても良いが、ユーザに不要な手間を掛ける可能性が有る。従って、入力は、室内の設備機器200の設置業者が実施する事とし、ユーザが容易に設定変更出来ないように設定しても良い。
特に、機器情報については住宅メーカーやリフォームメーカ等を含む、住宅を施工する業者の方が知識を有しており、ユーザが詳細を設定出来る事によって誤作動を起こしたりするリスクが有る。即ち、機器の設置状況は家の形態等に依存し、容易には変更が困難である事から、手間の面でも、動作効率化の面でも、ユーザが設定出来る項目は、風量の強、中、弱、電源のON、OFF、空気清浄機や扇風機等の可搬型送風機器を設置した際に入力する簡単なセッティングのみとし、詳細設定は、自動で行うか予め設定された物を用いるのが良い。
【0042】
続いて、決定部133は、配置情報と機能情報とに基づいて、動作アルゴリズム選定を行う。
図4の制御テーブルに示すように、加熱調理機器220の火力が強・中・弱のそれぞれの場合について、優先位置での煙や熱気の侵入量が最も小さかった設備機器220の風量・風向の組み合わせを、制御対象の設備機器200の換気動作として決定する(ステップS103)。
【0043】
リビングへの臭気拡散の抑制を達成するための基本的な制御の方向性と考え方について説明する。下記に記載する方向性、考え方で制御を行う。
図3に記載の機器の動作毎に条件分けをし、これをベースに動作アルゴリズムの基盤を作成する。
【0044】
<「加熱」について>
加熱については、機器への入力量やタイミング、温度センサ、臭気センサ、煙センサにて検知を行う。食材に含まれる水分等によって誤差は生じるが、加熱温度が高くなるにつれて排ガス量は増加する傾向に有り、「排気」や「給気」を加熱温度に合わせ増加させる。「排気」や「給気」を加熱温度に合わせて増加させることは、より多くの排ガスを処理するのに必要であり、一般的にはレンジフード230の風量を増加して「排気」する。しかし、レンジフード230にて処理しきれず漏れたり、換気率が高まるため冷暖房効果が薄れたり、ファン回転数を増加するため騒音が大きくなったりする等の不具合が生じる為、レンジフード230による排気を設備機器200によりサポートし、拡散を抑え、レンジフード230の風量を極力増加させないようにするのが良い。
【0045】
<「排気」について>
排気は基本的にはレンジフード230のみにて実施するのが良い。排気が増加するとその分給気が増加するため、外気を必要以上に取り込んでしまう上、室内の空気を乱す結果になる。
レンジフード230以外の排気はあくまでも、物が焦げたりして、想定以上に排ガスが増加した場合のサポートを行うのが主目的である。また、焼き肉等の調理の場合、リビングで調理を行うケースも有り得る。例えば、
図6A−6Cに示すように、設備機器200が設置されている部屋においては、給排気ファン240を排気ファンとして機能させ、リビングLで調理を行う際に、レンジフード230と同様に機能出来るよう、動作アルゴリズムを持たせても良い。
【0046】
<「給気」について>
リビングL側からの給気が主となるように、給排気ファン240の風量をレンジフード230に近い風量まで引き上げても良い。リビングLからの給気量を増加させる事で、リビングLからキッチンKの方向へ向かう気流を形成し、リビングL側に排ガスが向かわないようにするディフェンシブな気流を形成する事が目的である。但し、キッチンKからリビングLに向かう気流も必要である。リビングLからの給気が強すぎると、レンジフード230の排気の力を超えて、キッチンKに向かって排ガスを押し出してしまい、キッチンK側の壁を伝って排ガスがリビングLに流れ出る可能性が有るためである。従って、キッチンK側への排気ガスの押し出しを防ぐために十分な給気を換気口210から得る必要がある。給排気ファン240と換気口210の給気風量のバランシングは換気システム1の役割の一つとなる。換気制御装置100は、給排気ファン240の給排気量を制御することで、レンジフード230の吸引口付近について、リビングL側からの風量とキッチンK側からの風量とを均衡させ、レンジフード230の排気量と略同量にする。これにより、排ガスの漏れを極微小に抑える事が出来、リビングLへの排ガスの拡散を防ぐ事が出来る。
【0047】
<「空気の循環」について>
基本的には空気の循環は無い方が良い。空調機器250が本実施の形態において空気の循環を行うが、空調機器250はリビングLに設置される場合が多い。空調機器250は空気の吸引と排出とを同時に行うため、動作風量を大きくすると、排ガスをリビングL側に強力に引き込んでしまう場合が有る。このため、風量は極力小さくし、状況によっては停止するのが良い。
一方で、レンジフード230が大風量で動作する場合、外気と内気の空気の入れ替わりによる温度変化が顕著となるため、室内の温度状態を快適にするには空調機器250を動作させる事が望まれる。従って、空調機器250は、給排気ファン240と換気口210の給気動作を損なわない程度の風量で動作する必要がある。
ところで、空調機器250の吸引による風を、給排気ファン240の給気風速を下回る風速にまで分散させなければ、給排気ファン240の給気風を乱し、排ガスを拡散させてしまうことが有る。空調機器250による風量が大きくても気流を乱さないようにするためには、排気を分散させる事で風速を下げると良い。風速が高いとコアンダ効果等の誘引が発生し、気流を乱しやすくなるが、風速量が下がれば気流の乱れを極小で抑える事が出来る。空調機器250の風向幅を変化させる事が出来るのであれば、排出口から出る風をブロードにしても(排出口から排出される風の風向幅を広くしても)良い。空調機器250の吸引口においても、空気の吸引幅を変化させることが出来るのであれば、吸引面積を広くし、吸引による風を分散させても良い。
なお、給排気ファン240の給気風量が大きい場合、リビングLの空気風を巻き込み、排ガスを拡散する場合がある。ここで、空調機器250からの風向幅の広い風で、給排気ファン240の給気風を包み込むようにキッチンK側へ送ると、給排気ファン240の給気による巻き込み風を抑制し、拡散を抑える事が出来る。特に、給排気ファン240の大きさは限られており、レンジフード230で吸引する範囲の全てをサポートするような気流は起こせないため、空調機器250の風向をレンジフード230ないし、その下の調理器具Cに向ける事によって、より広範囲からの漏れをサポートする事が出来る。
【0048】
決定部133の決定の例を、
図6A−
図6Cに示す室内を例に説明する。この室内には対面式キッチンであるキッチンKとリビングLが併設されており、換気口210がキッチンKの天井に、レンジフード230が加熱調理機器220の上部に、給排気ファン240がリビングLの天井部に、空調機器250がリビングLの上方に、それぞれ設置されている。この例では、優先位置AをリビングLの中空部とする。
この例の室内のように、換気口210がキッチンKに設けられている場合、レンジフード230を作動させると、換気口210からキッチンKに向けて空気の流れができる。
【0049】
例えば、加熱調理機器220の火力が「強」である場合に、決定部133が、
図4に示すように、レンジフード230の換気風量が「強」、給排気ファン240が「止(停止)」、空調機器250の風量が「弱」、風向が「下」の組み合わせのときに、優先位置AであるリビングLの中空部への煙の侵入量が最も小さいと判断したとする。決定部133は、その組み合わせを換気動作として決定する。
この場合、例えば、
図6Aに示すように、加熱調理機器220に設置された調理器具Cから発生した煙や熱気は、優先位置Aを通らないように、室内の辺縁部を巡回し、レンジフード230の吸気口に誘導される。なお、加熱調理機器220の火力が「強」である場合、空調機器250の風量は「弱」でなく「中」でもよい。
【0050】
また、例えば、加熱調理機器220の火力が「中」である場合に、決定部133が、
図4に示すように、レンジフードの換気風量が「中」、給排気ファン240の給気風量が「強」の組み合わせのときに、優先位置AであるリビングLの中空部への侵入量が最も小さいと判断したとする。決定部133は、その組み合わせを換気動作として決定する。
この場合、例えば、
図6Bに示すように、加熱調理機器220に設置された調理器具Cから発生した排ガスは、給排気ファン240からの給気により、直接レンジフード230の吸気口に誘導される。
【0051】
さらに、例えば、加熱調理機器220の火力が「弱」である場合に、決定部133が、
図4に示すように、レンジフードの換気風量が「弱」である場合に、優先位置AであるリビングLの中空部への侵入量が最も小さいと判断したとする。決定部133は、その組み合わせを換気動作として決定する。
この場合、例えば、
図6Cに示すように、加熱調理機器220に設置された調理器具Cから発生した排ガスは、直接レンジフード230に吸引される。
【0052】
なお、優先位置Aでの清浄度(評価値)が時間の経過と共に変化する場合がある。この場合は、例えば、評価値の時間平均を評価値とすればよい。
【0053】
図5に戻り、ステップS103で決定部133が制御対象の設備機器200の換気動作を決定し、その換気動作を示す情報を出力すると、換気動作設定部134は、これらを制御テーブルに設定し(ステップS104)、設定処理を終了する。
【0054】
なお、上述した動作アルゴリズムには、任意の制約条件を設定してもよい。例えば、空調機器250が稼働している際には、空調機器250の稼働を優先させるように制限を課してもよい。このような制限は、ユーザが後からカスタマイズできるようにしてもよい。
【0055】
(換気制御処理)
制御テーブルの設定後、ユーザによって加熱調理機器220がオンされると、制御部11は、
図7に示す換気制御処理をスタートする。ここでは、
図7を参照して、制御テーブル設定後の換気動作を説明する。
【0056】
換気制御処理がスタートすると、まず、換気指標取得部141は、加熱調理機器220から火力を示す火力データ(換気指標)を取得したか否かを判断する(ステップS201)。
換気指標取得部141が火力データを取得すると(ステップS201)、制御情報取得部142は、制御テーブルを参照して、取得した火力データに紐付けて設定されている制御情報を取得する(ステップS202)。例えば、
図4の例であれば、加熱調理装置220から送信された火力データが、火力が「中」であることを示す場合には、制御情報取得部142が取得する制御情報が示す動作は、レンジフード230の換気風量が「中」、給排気ファン240の給気風量が「強」となる。
【0057】
制御情報取得部142が制御情報を取得すると、換気制御部143は、取得した制御情報に従って、設備機器200の制御を指示する指示データを各設備機器200に送信する(ステップS203)。例えば、取得した制御情報がレンジフード230の換気風量が「中」、給排気ファン240の給気風量が「強」であることを示す場合には、換気制御部143は、通信インタフェース120を介して、レンジフード230には換気風量を「中」にする指示を示す指示データを送信し、給排気ファン240には給気風量を「強」にする指示を示す指示データを送信する。
【0058】
換気制御部143が制御対象の設備機器200に指示データを送信すると、換気制御処理はステップS201に戻る。
なお、ステップS201で換気指標取得部141が新たな火力データを取得したと判断するまでは、換気指標取得部141は待機状態となる。
レンジフード230、給排気ファン240、空調機器250は、換気制御装置100からの指示データに従って、換気動作を実行する。
なお、加熱調理機器220がオフされた場合には、任意の時間、例えば、3分間、レンジフード230のみを運転する。或いは、加熱調理機器220をオフした後の気流の流れをシミュレートしておき、シミュレート結果に応じて、設備機器を動作させてもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によれば、換気制御装置100は、室内の構成とその中の各設備機器200の配置とに応じて、制御対象の設備機器200の動作を設定し、設定された動作に従って制御対象の設備機器200を制御する構成とした。これにより、室内に設置された設備機器200の位置に応じて、その室内の空気を効率的に換気することにより、ユーザが感じる不快感を抑えることが可能となる。なお、本実施の形態では、全設備機器200の機能に応じて、全設備機器200の動作が一括して設定される。例えば、換気指標により換気の必要性が高いと判別される場合、複数の設備機器200が連携して室内の空気が効率的に換気されるように、全設備機器200の動作が一括して設定される。このため、本実施の形態によれば、ユーザが感じる不快感を更に抑えることが可能となる。
【0060】
(実施の形態2)
実施の形態1に係る換気システム1では、決定部133は、優先位置(例えば、リビングの中空部)への煙や熱気の侵入量が最も小さかった設備機器200の風量・風向の組み合わせを、換気時に使用する動作の組み合わせとして決定した。従って、換気システム1では、優先位置に人がいる場合もいない場合も同様に制御をしている。
実施の形態2では、
図8に示すように、システムに人センサ300を設け、リビングに人がいる場合といない場合とで、換気制御の内容が異なるようにする。以下、実施の形態2に係る換気システム2と方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態1と同一または同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略または簡略化する。
【0061】
人センサ300は、例えばPIR(Passive Infrared)センサや、ドップラーモジュール式センサ、CMOS(Complementary MOSFET)イメージセンサから構成される。人センサ300は、例えば室内のリビング側に設置され、リビングに人の存在を検知する。
なお、人センサ300は設備機器200として換気システム2内に組み込まれる機器に搭載される物で代用する事も可能である。特に空調機器250には予め実装されているものも多い。空調機器250は室内上方に設置される事が多いため、この場合、上方から人を検知する事になる。なお、机の上等、室内の中間程度の高さに人センサ300を搭載したモジュールを設置した場合は、リビングLの固定された空間を検知しやすくなるメリットや、持ち運びが容易であるメリットが有る一方で、そのモジュールを置きっぱなしにした際に家具等が障害物となり、誤検知が発生する場合が有る。例えば、リビングL以外での人の動作に対する検知が困難となる。従って、汎用性という観点では人センサ300は室内上方に設置されている方がより効果的である。
また、空調機器250等に搭載されている人センサ300を用いる事で、別途準備した人センサ300が占有するスペースを省略できる上、別途人センサ300を搭載したモジュールを用意する必要が無いため、ユーザの手間が省ける。
【0062】
また、携帯電話等のGPS(Global Positioning System)を利用して、人の位置を特定しても良い。例えば携帯電話はリビングに居る際でも持って移動したり、在室する室内に置いておく事が多かったりするため、人の位置を把握する上で有用である。但し、GPSは単体では非常に大まかな位置情報しか得る事が出来ないと共に、屋内だとGPSの電波が阻害されるケースも有り得る。従って、設備機器200が保有するGPSや、他の家電機器、OA機器等が保有するGPSをも利用し、これらを固定局として動作させる事で、高精度化を図っても良い。
【0063】
決定部133は、予め、シーンに対応する複数の動作アルゴリズムを記憶している。
決定部133は、予め設定したシーンの中から、設備情報取得部132から得た情報が示すシーンに類似したシーンを選択し、選択したシーンに対応する動作アルゴリズムにより、制御対象の設備機器200の総合的な換気動作を決定する。
【0064】
決定部133は、優先位置Aへの煙や熱気の侵入量が最も小さい設備機器200の風量・風向の組み合わせを、人センサ300がリビングLに人がいると検知した場合の換気動作として決定する。また、決定部133は、発生した熱量或いは気流の基準値(例えば、80%)以上を排気し且つ制御対象の設備機器200の消費電力量の和が最も小さい設備機器200の風量・風向の組み合わせを人センサ300がリビングLに人の存在を検知しなかった場合の換気動作として決定する。
【0065】
例えば、加熱調理機器220の火力が「強」である場合に、決定部133が、最適な動作アルゴリズムを選定したとする。その結果、
図9に示すように、レンジフード230の換気風量が「強」、給排気ファン240が「止(停止)」、空調機器250の風量が「弱」、風向が「下」の組み合わせのときに、リビングの中空部への煙の侵入量が最も小さかった場合、決定部133は、その組み合わせを、人センサ300が人の存在を検知したときの換気動作として決定する。
この場合、
図10Aに示すように、加熱調理機器220に設置された調理器具Cから発生した煙や熱気は、優先位置Aを通らないように、室内の辺縁部を巡回し、レンジフード230の吸気口に誘導される。なお、加熱調理機器220の火力が「強」であり、人の存在が検知された場合、空調機器250の風量が「強」であってもよい。
【0066】
また例えば、動作アルゴリズム選定の結果、
図9に示すように、レンジフード230の換気風量が「中」、給排気ファン240が「強」、空調機器250の風量が「中」、風向が「中」の組み合わせのときに、発生した熱量(或いは気流)を基準値以上排気できて、かつ、設備機器200の電力消費量の和が最も小さかった場合、決定部133は、その組み合わせを、人センサ300が人の存在を検知しなかったときの換気動作として決定する。
この場合、
図10Bに示すように、加熱調理機器220に設置された調理器具Cから発生した煙や熱気は、給排気ファン240および空調機器250から送られた空気により、直接レンジフード230の吸気口に誘導される。なお、加熱調理機器220の火力が「強」であり、人の存在が検知されなかった場合、空調機器250の風量が「強」であってもよい。
【0067】
空調機器250において、リビングLに人が居る場合は、直接的に空調機器250の風向をレンジフード230方向に向けると、気流感を人に与えてしまう可能性がある。従って、リビングLに人が居る可能性が有る場合は風向を下向きに変更し、下から壁伝いに気流を回し、リビングLの中央の人が居る位置を介さず気流を流すのが良い。人の居る位置が分からない場合は、一先ず下方向に風を回すことで、人に気流感を感じさせない。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態によれば、換気制御装置100は室内の構成と、その中の各設備機器200の配置と、人センサ300の検知結果と、に応じて、制御対象の設備機器200の動作を設定し、設定された動作に従って制御対象の設備機器200を制御する構成とした。これにより、人センサ300が人の存在を検知した場合には、ユーザの快適性を優先し、人の存在を検知しなかった場合には、いわゆる省エネを優先して換気をすることが可能となる。
【0069】
(実施の形態3)
実施の形態1では、換気制御装置100により制御される設備機器200に、排気補助ファン263が含まれない例について説明した。実施の形態3では、設備機器200に排気補助ファン263が含まれ、換気制御装置100が更に排気補助ファン263を制御する例について説明する。なお、実施の形態1と同一または同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略または簡略化する。なお、本実施の形態では、調理者からみて加熱調理機器220の遠い方の壁面に、部屋を仕切る壁がないオープンキッチンを想定している。
【0070】
本実施の形態に係る換気システム3は、
図11に示すように、複数の設備機器200を制御する換気制御装置100を備える。設備機器200は、換気口210と、加熱調理機器220と、レンジフード230と、給排気ファン240と、空調機器250と、排気補助ファン263と、を含む。これらは、換気口210を除いて、有線または無線のLANからなるネットワークNによって接続されている。
【0071】
排気補助ファン263は、気体に圧力をかけてこの気体にエネルギーを与え、気体の風速を高める機械である。排気補助ファン263は、加熱調理機器220の使用により生じた排気対象の排気を補助するのに用いられる。排気補助ファン263は、レンジフード230や給排気ファン240と同様に、換気制御装置100による制御に従って動作する。具体的には、排気補助ファン263は、換気制御装置100により風量が制御される。換気制御装置100による排気補助ファン263の制御は、換気制御装置100が排気補助ファン263に指示データを送信することにより実現する。従って、排気補助ファン263は、通信部(図示せず)を備える。排気補助ファン263は、例えば、シロッコファン、ラインフローファン、ターボファン、軸流ファンなどにより構成される。
【0072】
ここで、加熱調理機器220がIHクッキングヒーターである場合、加熱調理機器220には、加熱庫の誘導加熱コイルを冷却するためのターボファンや、電源回路基板を冷却するためのファンが含まれていることが一般的である。そこで、これらの冷却用のファンを、排気補助ファン263として流用することが好適である。このため、本実施の形態では、排気補助機構260を加熱調理機器220に組み込み、冷却用のファンを排気補助ファン263として流用するものとする。かかる構成によれば、IHクッキングヒーターの構成空間を有効活用することが可能となり、IHクッキングヒーターをコンパクトな構成にすることができる。
【0073】
排気補助機構260は、加熱調理機器220の使用により生じた排気対象を、レンジフード230に誘導する機構である。排気補助機構260は、外部空間の空気を排気補助通風路内に吸い込むための吸込口261と、排気補助通風路内の空気を外部空間に排出するための排出口262と、外部空間の空気を吸込口261から排気補助通風路内に取り込むとともに取り込んだ空気を排出口262から外部空間に向けて放出する排気補助ファン263と、吸込口261から吸い込まれ排出口262に排出される空気が流れるI字型の排気補助通風路(図示せず)と、を備える。排気補助機構260は、排気対象の誘導に適した形状であり、排気対象の誘導に適した位置及び向きに配置される。なお、排気対象の誘導に適したとは、加熱調理機器220による調理で発生した排気対象を効果的にレンジフード230の吸込口まで誘導することが可能なことを意味する。
【0074】
調理で発生した排気対象は、室内に拡散させずに室外に排気することが望ましい。このため、換気制御装置100は、調理で発生した排気対象が室内で発生する様々な気流に妨害されずにレンジフード230に誘導されるように、各設備機器200を動作させることが好適である。通常、調理で発生した排気対象は、加熱調理機器220の熱源の熱エネルギーを得ることで上昇気流を生成する。排気対象の多くは、レンジフード230の動作によって回収されて室外に排出されるが、排気対象の一部は、回収されずに室内に拡散する。回収量や拡散量は、レンジフード230の風量やレンジフード230と加熱調理機器220との位置関係のみに依存するわけではない。つまり、回収量や拡散量は、各設備機器200の動作状態や配置関係、部屋の形状、天候などにも依存する。そこで、本実施形態では、換気制御装置100が、レンジフード230と排気補助ファン263とを連動制御することにより、排気対象をレンジフード230の吸込口まで効果的に誘導する手法について説明する。
【0075】
排気補助機構260を用いて排気対象をレンジフード230の吸込口まで効果的に誘導する手法として、主に、2つの手法がある。1つ目の手法は、排気補助機構260が、誘導用の空気を吸込口261から吸い込んで排出口262からレンジフード230の吸込口に向けて排出する手法である。1つ目の手法によれば、室内に放出された直後の排気対象は、誘導用の空気が作り出す気流に乗ってレンジフード230の吸込口まで誘導される。なお、誘導用の空気は、排気対象でない空気であってもよいし、室内に放出された後にリビング内を循環した排気対象であってもよい。2つ目の手法は、排気補助機構260が、室内に放出された直後の排気対象を、直接、吸込口261から吸い込んで排出口262からレンジフード230の吸込口に向けて排出する手法である。以下、
図12から
図14を参照して、1つ目の手法を採用した例について説明する。
【0076】
まず、
図12を参照して、本実施の形態における機能情報について説明する。
図12に示すように、本実施の形態における機能情報は、実施の形態1における機能情報に、排気補助ファン263の機能情報を追加した情報である。
図12には、排気補助ファン263の風量が、強(1.7m
3)、中(1.2m
3)、弱(0.7m
3)の3段階で制御可能であることが示されている。
【0077】
次に、
図13を参照して、本実施の形態における制御テーブルについて説明する。
図13に示すように、本実施の形態における制御テーブルは、換気指標と、排気補助ファン263に関する情報を含む制御情報と、を対応付けるテーブルである。
図13には、加熱調理機器220を「強」で動作させる場合、レンジフード230を「強」で動作させ、給排気ファン240を「止」めさせ(「停止」させ)、空調機器250を「下向き」に「弱」で動作させた上、更に、排気補助ファン263を「弱」で動作させる例が示されている。
【0078】
図14は、加熱調理機器220を「強」で動作させる場合における室内の換気による空気の流れを模式的に示す図である。
図14には、レンジフード230と空調機器250との連携動作によりリビングL内に気流を発生させた上、排気補助機構260がこの気流を誘導用の空気として取り込んで排気対象の誘導に用いる様子を示している。以下、排気補助機構260の構成や配置について詳細に説明する。
【0079】
図14には、吸込口261が、加熱調理機器220のリビングL側の壁面に配置され、リビングL側に向けて開口し、排出口262が、加熱調理機器220の上面に配置され、レンジフード230の吸込口に向けて開口した様子が示されている。このように、吸込口261は、誘導用の空気(例えば、リビングLを循環した空気)を効果的に吸い込むことが可能な位置及び角度で設置される。一方、排出口262は、誘導用の空気をレンジフード230の吸込口に効果的に供給することが可能な位置及び角度で設置される。典型的には、排出口262は、加熱調理機器220の上面であって、レンジフード230の吸込口に対向する位置に設けられる。つまり、排出口262は、レンジフード230の吸込口の下方(例えば、真下)に配置され、レンジフード230の吸込口がある方向(例えば、上方)に開口する。
【0080】
排気補助ファン263は、排気補助通風路内において吸込口261と排出口262との間に配置される。排気補助ファン263は、「弱」で動作し、排気補助通風路内において吸込口261から排出口262に向かう弱い気流を生成する。かかる構成によれば、誘導用の空気は、吸込口261から排気補助通風路に取り込まれ、排出口262からレンジフード230に向けて放出される。その結果、熱源から発生した排気対象は、レンジフード230に向けて誘導される。ここで、排出口262は、吸込口261よりも面積が小さいことが望ましい。かかる構成によれば、レンジフード230に向けて流れる誘導用の空気や排気対象の風速が増すことになる。その結果、熱源から発生した排気対象を速やかにレンジフード230まで誘導することができ、排気対象が部屋に拡散することを更に抑制することが可能となる。
【0081】
また、
図13には明示していないが、空調機器250は、暖房運転や送風運転で動作するよりも、冷房運転で動作することが好適である。つまり、誘導用の空気が空調機器250の冷房運転により冷やされた空気である場合、熱源から発生した排気対象は、冷えた誘導用の空気によってレンジフード230に向けて誘導されるとともに冷却される。一般的に、物質は、温度が高いほど拡散速度が速く、温度が低いほど拡散速度が遅い。このため、熱源から発生した排気対象は、冷却されることにより拡散速度が遅くなり、室内への拡散が抑制される。なお、空調機器250は、冷房運転でなく、暖房運転や送風運転で動作する場合でも、誘導用の空気による排気対象の誘導は可能である。
【0082】
本実施の形態では、誘導用の空気により熱源から発生した排気対象がレンジフード230の吸込口に誘導される。このため、室内に設置された設備機器200の位置に応じて、その室内の空気を更に効率的に換気することが可能となる。また、本実施の形態では、排気補助通風路に油煙や臭気などを含む排気対象が流れない。従って、排気補助通風路の内部に油や臭気が付着することによる汚れの定着や臭気の発生を抑制することができる。
【0083】
また、本実施の形態では、加熱調理機器220に排気補助機構260が組み込まれ、加熱調理機器220が備える冷却用のファンが排気補助ファン263として用いられる。このため、本実施の形態によれば、ユーザにとって限られたキッチン空間を有効に活用することができ、特に、リフォームなどで導入設備の大きさに制約がある場合の製品の選択幅を広げることができる。
【0084】
(実施の形態4)
実施の形態2では、換気制御装置100により制御される設備機器200に、排気補助ファン273が含まれない例について説明した。実施の形態4では、設備機器200に排気補助ファン273が含まれ、換気制御装置100が更に排気補助ファン273を制御する例について説明する。なお、実施の形態2と同一または同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略または簡略化する。また、本実施の形態に係る換気システムの構成は、設備機器200として排気補助ファン273を備える点を除き、実施の形態2に係る換気システム2の構成と同様である。
【0085】
実施の形態4では、排気対象をレンジフード230の吸込口まで誘導する手法として、2つ目の手法を採用する例について説明する。つまり、本実施の形態では、排気補助ファン273を備える排気補助機構270が、室内に放出された直後の排気対象を、吸込口271から吸い込んで排出口272から排出する手法について説明する。
【0086】
排気補助ファン273は、排気補助ファン263と同様に、気体に圧力をかけてこの気体にエネルギーを与え、気体の風速を高める機械である。排気補助ファン273は、加熱調理機器220の使用により生じた排気対象の排気を補助するのに用いられる。排気補助ファン273は、排気補助ファン263と同様に、換気制御装置100による制御に従って動作する。具体的には、排気補助ファン273は、換気制御装置100により風量が制御される。換気制御装置100による排気補助ファン273の制御は、換気制御装置100が排気補助ファン273に指示データを送信することにより実現する。従って、排気補助ファン273は、通信部(図示せず)を備える。排気補助ファン273は、例えば、シロッコファン、ラインフローファン、ターボファン、軸流ファンなどにより構成される。
【0087】
排気補助機構270は、排気補助機構260と同様に、加熱調理機器220の使用により生じた排気対象を、レンジフード230の吸込口に誘導する機構である。排気補助機構270は、外部空間の空気を排気補助通風路内に吸い込むための吸込口271と、排気補助通風路内の空気を外部空間に排出するための排出口272と、外部空間の空気を吸込口271から排気補助通風路内に取り込むとともに取り込んだ空気を排出口272から外部空間に向けて放出する排気補助ファン273と、吸込口271から吸い込まれ排出口272に排出される空気が流れる排気補助通風路(図示せず)と、を備える。排気補助機構270は、排気対象の誘導に適した形状であり、排気対象の誘導に適した位置及び向きに配置される。本実施の形態では、排気補助機構270は、加熱調理機器220に組み込まれず、加熱調理機器220とは別体として設けられる。従って、ユーザは、住宅の事情に合わせて、排気補助機構270を設置することができる。
【0088】
以下、
図15を参照して、本実施の形態における制御テーブルについて説明する。
図15に示すように、本実施の形態における制御テーブルは、加熱調理機器220の状態と人センサ300の検出結果とを含む換気指標と、排気補助ファン273に関する情報を含む制御情報と、を対応付けるテーブルである。
図15には、加熱調理機器220を「強」で動作させ、人センサ300が人を検知した場合、レンジフード230を「強」で動作させ、給排気ファン240を「止」めさせ(「停止」させ)、空調機器250を「下向き」に「弱」で動作させた上、更に、排気補助ファン273を「中」で動作させる例が示されている。また、
図15には、加熱調理機器220を「中」で動作させ、人センサ300が人を検知した場合、レンジフード230を「中」で動作させ、給排気ファン240を「止」めさせ(「停止」させ)、空調機器250を「下向き」に「弱」で動作させた上、更に、排気補助ファン273を「中」で動作させる例が示されている。なお、排気補助ファン273を動作させる場合、少なくともレンジフード230が動作していれば、空調機器250を動作させなくとも、排気対象の十分な排気を実現可能である。
【0089】
なお、本実施形態における機能情報は、例えば、
図12に示す実施の形態3における機能情報において、排気補助ファン263を排気補助ファン273に置換したものであるため、説明を省略する。
【0090】
図16は、加熱調理機器220を「強」で動作させ、リビングL側に人が存在する場合における室内の換気による空気の流れを模式的に示す図である。
図16には、レンジフード230と空調機器250との連携動作によりリビングL内に気流を発生させるとともに、排気補助機構270が排気対象を吸い込んでレンジフード230の吸込口に向けて排出する様子を示している。以下、排気補助機構270の構成や配置について詳細に説明する。
【0091】
本実施の形態では、排気補助機構270が、室内に放出された直後の排気対象を、直接、吸込口271から吸い込んで排出口272から排出する手法を採用している。このため、
図16に示すように、吸込口271は、排気補助機構270の熱源と対向する壁面に配置され、排出口272は、排気補助機構270の上面に配置される。より詳細には、吸込口271は、例えば、熱源から発生した排気対象を効果的に吸い込むことが可能な位置及び角度で設置される。つまり、吸込口271は、熱源の近傍且つ上部に配置される。より詳細には、吸込口271は、加熱調理機器220の上面から加熱調理機器220の熱源の上部に張り出した排気補助機構270の熱源側の壁面に配置される。また、吸込口271は、排気対象が発生する方向に向けて開口する。なお、吸込口271には、油や臭気を吸着除去できる部材が設けられることが望ましい。また、吸込口271の幅は、熱源の幅よりも広いことが望ましい。かかる構成によれば、加熱調理により発生した排気対象を回収する面積が広くなり、排気対象が部屋に拡散することを更に抑制することが可能となる。
【0092】
一方、排出口272は、排気対象をレンジフード230の吸込口に効果的に供給することが可能な位置及び角度で設置される。つまり、排出口272は、排気補助機構270の上部に配置される。より詳細には、排出口272は、熱源からみて吸込口271よりもレンジフード230寄りの位置に、レンジフード230の吸込口に対向して配置される。つまり、排出口272は、レンジフード230の吸込口の下方(例えば、真下)に配置され、レンジフード230の吸込口がある方向(例えば、上方)に開口する。排出口272は、吸込口271よりも面積が小さいことが望ましい。かかる構成によれば、レンジフード230に向けて流れる誘導用の空気や排気対象の風速が増すため、排気対象が部屋に拡散することを更に抑制することが可能となる。
【0093】
なお、吸込口271の幅が熱源の幅よりも広い場合において、排出口272の幅をあまり広くしたくない場合は、排出口272の厚みを吸込口271の厚みよりも狭くすることにより、排出口272の面積を吸込口271の面積よりも小さくすることができる。このように、吸込口271や排出口272の大きさや形状は、設計上の制約に適合するように調整されることが好適である。
【0094】
本実施の形態では、熱源から発生した排気対象は、排気補助機構270により風速が増すとともに、気流方向がレンジフード230の吸込口に向かうように修正される。このため、本実施の形態によれば、排気対象の室内への拡散が低減し、排気対象の効率的な排出が実現される。
【0095】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【0096】
(変形例1)
以上の実施の形態では、換気が必要となった原因を示す指標として、加熱調理機器220の火力を示す指標を使用した。加熱調理機器220の火力とレンジフード230の動作が連動しているような場合には、
図17の例に示すように、火力データの代わりにレンジフード230の稼働状態を示す情報を、換気の原因を示す指標として採用してもよい。
(変形例2)
以上の実施の形態では、換気が必要となった原因を示す指標として、加熱調理機器220の火力を示す指標を使用した。加熱調理機器220の火力により発生する臭気を指標とすることも可能である。
設備機器200として、キッチンKとリビングLのそれぞれに臭気の強度を測定することができる臭気センサを設置し、臭気センサの出力を、換気を必要とした原因を示す指標としてもよい。この場合、例えば、
図18の例に示すように、換気動作設定部134において、火力データとしてキッチンKおよびリビングLの臭気の強度の組み合わせを設定し、制御情報としてレンジフード230の換気風量と、給排気ファン240の給気風量と、を設定してもよい。
【0097】
(変形例3)
制御の対象とする設備機器200は、レンジフード230、給排気ファン240、空調機器250に限定されない。これより多くても少なくてもかまわない。
例えば、空調機器250が配置されておらず、レンジフード230と給排気ファン240のみが設置されている場合には、制御情報は、例えば、
図19に示すようにすればよい。
また、加熱調理機器220は、IHヒータに限定されない。ガスコンロ、電子レンジ等、他の熱源や調理器具でもかまわない。
【0098】
(変形例4)
実施の形態3では、I字型である排気補助機構260が加熱調理機器220に組み込まれる例について説明した。本発明において、種々の形状の排気補助機構を加熱調理機器220に組み込むことが可能である。例えば、
図20Aに示すように、U字型である排気補助機構280を加熱調理機器220に組み込むことが可能である。
【0099】
排気補助機構280の形状は、排気補助機構260の形状とは異なるが、排気補助機構280の機能は、基本的に、排気補助機構260の機能と同様である。つまり、排気補助機構280は、加熱調理機器220の使用により生じた煙等の排ガスを、レンジフード230に誘導する機構である。排気補助機構280は、外部空間の空気を排気補助通風路内に吸い込むための吸込口281と、排気補助通風路内の空気を外部空間に排出するための排出口282と、外部空間の空気を吸込口281から排気補助通風路内に取り込むとともに取り込んだ空気を排出口282から外部空間に向けて放出する排気補助ファン283と、吸込口281から吸い込まれ排出口282に排出される空気が流れる排気補助通風路(図示せず)と、を備える。
【0100】
吸込口281は、熱源から発生した排気対象を排気補助通風路内に吸い込むための孔である。吸込口281は、加熱調理機器220の上面に配置され、上方(つまり、レンジフード230の吸込口がある方向)に向けて開口する。吸込口281は、排出口282よりも熱源に近い位置に配置される。排出口282は、吸込口281から排気補助通風路内に吸い込まれた排気対象を排気補助通風路外に放出するための孔である。排出口282は、加熱調理機器220の上面に配置され、上方に向けて開口する。排出口282は、吸込口281よりも熱源から遠い位置に配置される。排気補助ファン283は、排気補助ファン263と同様に、換気制御装置100による制御に従って動作する。
【0101】
変形例4によれば、熱源から発生した排気対象は、吸込口281から排気補助通風路内に吸い込まれ、風速が高められた上で排出口282からレンジフード230の吸込口に向けて放出される。従って、変形例4によれば、排気対象の室内への拡散が低減し、排気対象の効率的な排出が実現される。
【0102】
(変形例5)
変形例4では、U字型である排気補助機構280を加熱調理機器220に組み込む際に、吸込口281が排出口282よりも熱源に近い位置に配置される例について説明した。変形例5では、
図20Bを参照して、U字型である排気補助機構280を加熱調理機器220に組み込む際に、吸込口281が排出口282よりも熱源から遠い位置に配置される例について説明する。
【0103】
吸込口281は、排気対象をレンジフード230の吸込口まで誘導する誘導用の空気を排気補助通風路内に吸い込むための孔である。吸込口281は、加熱調理機器220の上面に配置され、上方に向けて開口する。吸込口281は、排出口282よりも熱源から遠い位置に配置される。排出口282は、吸込口281から排気補助通風路内に吸い込まれた誘導用の空気を排気補助通風路外に放出するための孔である。排出口282は、加熱調理機器220の上面に配置され、上方に向けて開口する。排出口282は、吸込口281よりも熱源に近い位置に配置される。排気補助ファン283は、排気補助ファン263と同様に、換気制御装置100による制御に従って動作する。
【0104】
変形例5によれば、誘導用の空気は、吸込口281から排気補助通風路内に吸い込まれ、風速が高められた上で排出口282からレンジフード230の吸込口に向けて放出される。そして、熱源から発生した排気対象は、排出口282からレンジフード230の吸込口に向けて流れる誘導用の空気により、レンジフード230の吸込口がある方向に誘導される。従って、変形例5によれば、排気対象の室内への拡散が低減し、排気対象の効率的な排出が実現される。また、変形例5では、排気補助通風路に油煙や臭気などを含む排気対象が流れない。従って、変形例5によれば、排気補助通風路の内部に油や臭気が付着することによる汚れの定着や臭気の発生を抑制することができる。
【0105】
(変形例6)
実施の形態4では、排気補助ファン273が排気補助通風路内において吸込口271と排出口272との間に配置される例について説明した。変形例6では、
図21を参照して、排気補助ファン293が排気補助通風路内において吸込口291と排出口272との間に配置されない例について説明する。
【0106】
排気補助機構290は、外部空間の空気を排気補助通風路内に吸い込むための吸込口291と、排気補助通風路内の空気を外部空間に排出するための排出口292と、外部空間の空気を吸込口291から排気補助通風路内に取り込むとともに取り込んだ空気を排出口292から外部空間に向けて放出する排気補助ファン293と、吸込口291から吸い込まれ排出口292に排出される空気が流れる排気補助通風路(図示せず)と、を備える。
【0107】
吸込口291は、排気対象をレンジフード230の吸込口まで誘導する誘導用の空気を排気補助通風路内に吸い込むための孔である。吸込口291は、熱源の近傍且つ上部に配置される。より詳細には、吸込口291は、加熱調理機器220の上面から加熱調理機器220の熱源の上部に張り出した排気補助機構290の熱源側の壁面に配置される。また、吸込口291は、排気対象が発生する方向に向けて開口する。排出口292は、吸込口291から排気補助通風路内に吸い込まれた排気対象を排気補助通風路外に放出するための孔である。排出口292は、排気補助機構290の上部に配置される。より詳細には、排出口292は、熱源からみて吸込口291よりもレンジフード230寄りの位置に、レンジフード230の吸込口に対向して配置される。つまり、排出口292は、レンジフード230の吸込口の下方に配置され、レンジフード230の吸込口がある方向に開口する。
【0108】
排気補助ファン293は、排気補助ファン273と同様に、換気制御装置100による制御に従って動作する。排気補助ファン293は、加熱調理機器220に組み込まれた冷却用のファンである。排気補助ファン293は、排気補助機構290の下方に配置され、排気補助機構290の底面上において熱源から遠ざかる方向に流れる気流を発生させる。その結果、吸込口291から排気補助通風路内に吸い込まれた排気対象は、排気補助機構290内において下方に進み、排気補助機構290の底面近傍において熱源から遠ざかる方向に進み、その後、排気補助機構290内において上方に進み、排出口282から排出される。
【0109】
変形例6に係る排気補助機構290によれば、排気対象は、吸込口291から排気補助通風路内に吸い込まれ、風速が高められた上で排出口292からレンジフード230の吸込口に向けて放出される。従って、変形例6に係る排気補助機構290によれば、排気対象の室内への拡散が低減し、排気対象の効率的な排出が実現される。
【0110】
(その他の変形例)
各設備機器200のそれぞれに供給される電力量を測定し、その測定結果を参照していわゆる省エネを図ってもよい。更に、供給される電力量の測定を設備機器200ごとに行う事で、電力量の変化から各設備機器200のON/OFFを判別することができ、各機器の使用状況に応じた最適動作を選定する事が可能であるため、臭気拡散を抑制するためにより効果的である。また、加熱調理機器220の消費電力量はそのまま加熱状態とも結び付けられ、特別なセンサを用いずに加熱調理機器220の状態を取得する事が出来るメリットが有る。また、換気制御装置100が、時間帯に応じた各設備機器200の電力消費量を学習し、記憶しておくことで、使用中の設備機器200を推定することが可能となる。
【0111】
上記実施の形態についてはいずれもレンジフード230を用いているが、これはレンジフード230と同等の排気性能を有し、調理時の排ガスを排気する機能を有する換気扇(調理時用換気扇)等で代用しても構わない。これは、上述した給排気ファン240等も含む。これは、リビングLにて調理を行う際はレンジフード230と同等の動作を行うからである。但し、この場合、レンジフード230とは設置位置が異なる事から、別途専用動作アルゴリズムを用意し、用意された動作アルゴリズムの中からユーザが最適な動作アルゴリズムを選択する必要が有る。
【0112】
設備機器200としては、例えば、空気清浄機、除湿機、加湿機、扇風機等の床置きの送風機器や空調機器があり、換気制御装置100は、全ての送風機能を有する機器の動作を把握すると良い。または、これらの設置位置をユーザインタフェース110にて入力するようにし、設定処理に、影響度合を判断して動作アルゴリズムを選定し直す工程を設けても良い。送風機器や空調機器が設備機器200以外に存在する場合、設備機器200以外による風の撹拌が外乱となり、かえってリビングLへの排ガス拡散を助長する結果になり得る。従って、換気制御装置100は、これらの外乱を可能な限り把握しておく必要が有る。
換気制御装置100が上述した外乱を把握しておく事で、上述する床置き機器の動作の停止を、ユーザインタフェース110を介してユーザに指示する事が可能であるし、設備機器200として組み込まれていれば、停止指示を出し、外乱要因を減らして、安定的に排ガス拡散を抑制する事が出来る。特に調理時の排ガスは臭気が強く、空気清浄機の脱臭性能を劣化させる場合があるため、臭気の原因となる物質が機器の中に付着し、調理時以外での動作時に排出口から臭気を放出するような不具合の要因を生じさせることを回避することに効果がある。
同様に、窓や扉の開けっ放しについても検知したり、入力したりする機能が有っても良い。これについても上述する床置き機器同様に外乱要因を抑制する効果がある。
一方で、上述する床置きの機器を、設備機器200として動作アルゴリズムに組み込めば、更に効率的に排ガスの拡散を抑制する事が可能となる。例えば空気清浄機はそれそのものに脱臭性能を有している場合が有り、空気清浄機の吸引口の位置まで、リビングを介さずに壁や床に沿って排ガスを送る事が出来れば、より排ガスの拡散を抑制する事が出来る。また、このように構成することで、不必要に排ガスを床置き機器に取り込んで、調理時以外に床置き機器を動作させた際に臭気が再放出される事を抑制する効果にも繋がる。
【0113】
通信部16に外部端末を使用して、外部端末からデータを入力したり、通知を受けたりするように構成してもよい。
【0114】
レンジフード230に煙センサを設置して、加熱調理機器220の火力の程度の代わりに、測定した煙の量を示すデータを換気制御装置100に送信するように構成してもよい。
【0115】
また、レンジフード230等に、加熱調理機器220で調理中の食品の温度を測定するセンサを設置し、火力の程度の代わりに、測定した温度の程度を換気制御装置100に送信するように構成してもよい。
【0116】
ネットワークNにおいて、PAN(Personal Area Network)を用いても良い。
図1や
図8はLANを介した構成を想定しているが、近年、設備機器200は個別にセンサ等を保有し、最適化して、個別制御が可能な製品が増加している。データの処理を設備機器200内にて統一化した規格として処理し、個々で双方向通信が可能な形態とする事で、加熱調理機器220やレンジフード230の制御情報を得ずとも上述した実施の形態に記載の動作を実行しうる。
例えば実施の形態2にて開示される人センサ300で人がキッチンKに居る事を検知し、調理動作を予測した場合、人センサ300が導入されている箇所、例えば空調機器250等を主体として動作を行っても良い。即ち、設備機器200内に風の流れをコントロールする機能を有する機器と調理の有無を判別する手段を有する機器とが有れば、設備機器200の種類や数に限定される事無く換気システム1を構成することが可能となり、換気システム1の汎用性が高まる。また、このような構成をとることで、一部の情報を、換気制御装置100を介さずにやり取り出来る事から、動作高速化の効果も見込める。
【0117】
また、上述した実施の形態では、換気制御装置100がユーザから取得した配置情報をもとに、換気動作を設定すると説明したが、この換気動作は、入力部14を介して、ユーザが手動で設定してもよい。特に、煙や臭気の感じ方は人によって異なる上、口、鼻の位置も異なる事から、想定した動作アルゴリズムが最良とは限らない。また、季節や温湿度条件等によっての誤差変動も生じ得る為、ユーザが自ら微調整を行う事で、ユーザが感じる不快感を低減する事が可能となる。更に、換気制御装置100が、この微調整をタイムスケジュールと合わせ、記録し、学習、解析を行う事で、より動作を高精度化する事が出来る。
また、特に入力部14を介さずとも、ユーザが設備機器200を個別に操作し、動作設定をしても良い。即ち、換気システム1を導入する事で設備機器200の単体制御は損なわないように、ユーザが適宜選択出来る仕様とすることが望ましい。このような本機能により、ユーザがリビングLへの排ガスの拡散よりも、温湿度による快適性等を優先したい場合にユーザが選択的に選ぶ事が出来、汎用性を確保する事が出来る。
【0118】
実施の形態3では、換気制御装置100が、排気補助ファン263が吹き出す風の量を制御する例について説明した。本発明において、換気制御装置100は、排気補助ファン263が吹き出す風の量に加え、吹き出す風の向き(つまり、ファンの回転方向)を更に制御してもよい。更に、換気制御装置100は、排気補助ファン263が吹き出す風の方向を制御してもよい。この場合、排気補助機構260がルーバーを備え、換気制御装置100がこのルーバーに指示データを送信して、吹き出す風の方向を制御してもよい。
【0119】
実施の形態4では、調理するユーザの正面にリビングLがあるオープンキッチンである場合(調理するユーザからみて加熱調理機器220の前面に壁がない場合)、加熱調理機器220の前面に排気補助機構270(排気排気通風路)を設ける例について説明した。本発明において、調理するユーザの側面にリビングLがある半オープンキッチンである場合(調理するユーザからみて、加熱調理機器220の前面に壁があり、加熱調理機器220の側面に壁がない場合)、加熱調理機器220の側面に排気補助機構270(排気補助通風路)を設けてもよい。この場合、加熱調理機器220の側面にある設備(例えば、流し台や電子レンジ。)に高温の油煙や水蒸気が拡散することを抑制することが可能となる。
【0120】
また、基本的に、加熱方法によって、排気対象の温度や拡散方向が異なる。そこで、本発明において、加熱方法を検出する機器を備え、検出した加熱方法に応じて、排気補助通風路から放出される空気の量や方向を調整してもよい。加熱方法を検出する機器は、例えば、温度センサ、臭気センサ、煙センサである。或いは、加熱方法を検出する機器は、ユーザによる加熱方法の指定を受け付ける機器であってもよい。または、加熱調理機器220から加熱方法を示す情報を受け付ける機器であってもよい。または、加熱時間や温度推移から加熱方法を検出する機能を、レンジフード230や他の設備機器200が備えていてもよい。なお、放出される空気の量は、ファンの回転速度を制御することにより調整可能であり、放出される空気の方向は、排出口に設けられたルーバーの角度を制御することにより調整可能である。なお、加熱方法としては、ガスにより加熱する方法(ガス調理機器により加熱する方法)や、IHにより加熱する方法(IHクッキングヒーターにより加熱する方法)がある。
【0121】
本発明において、換気制御装置100は、動作させる設備機器200を指定するための操作を受け付ける操作受付部や、各設備機器200の運転状況を表示する表示部を、備えていてもよい。操作受付部は、例えば、入力部14に対応し、表示部は、例えば、出力部15に対応する。かかる構成によれば、ユーザは、表示部に表示された各設備機器200の運転状況を確認しながら、操作受付部に対する操作により動作させる設備機器200を選択することができる。なお、ユーザは、快適性と排気の効率化とを考慮して、動作させる設備機器200の組合せを決定することができる。
【0122】
また、本発明において、換気制御装置100は、設備機器200の選択状況や設備機器200の動作履歴を示す情報を記憶する記憶部を備え、表示部が記憶部に記憶された情報を表示してもよい。記憶部は、例えば、補助記憶部13に対応する。かかる構成によれば、ユーザは、表示部に表示された情報を参照して、連携動作させる設備機器200として最適な設備機器200の組合せを検証することができる。例えば、ユーザは、表示部に表示された情報に基づいて、レンジフード230と連携させる設備機器200として排気補助ファン263を選択したときが、熱源から発生した排気対象の室内への拡散抑制効果が最も高かったと判断したものとする。この場合、ユーザは、操作受付部を操作して、レンジフード230と連携させる設備機器200として排気補助ファン263を選択し、動作させる。これにより、排気対象の室内への拡散抑制効果が相対的に低い設備機器200を、連携動作の対象から除外することができる。その結果、動作する設備機器200を減らすことができるため、消費エネルギーを抑制することが可能となる。
【0123】
また、上述した操作受付部、表示部、記憶部は、換気制御装置100ではなく、設備機器200(例えば、加熱調理機器220、レンジフード230、給排気ファン240、空調機器250)が備えていてもよい。この場合、操作受付部により受け付けられた操作により示される情報、表示部に表示される情報、記憶部に記憶される情報などは、この設備機器200と換気制御装置100との間で送受信される。かかる構成によれば、ユーザは、設備機器200に設けられた表示部を参照して、設備機器200に設けられた操作受付部を操作することができる。つまり、かかる構成によれば、設備機器200が備えるリソースを利用して、情報の入出力が可能となる。
【0124】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【0125】
本出願は、2014年11月4日に出願された、日本国特許出願特願2014−224763号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2014−224763号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。