(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベースリブは、少なくとも前記切欠き部の径方向内周側から径方向外周側に向けて設けられ、前記翼部の外周側の前記基部は平坦であることを特徴とする請求項2に記載の車両用交流発電機の回転子。
【背景技術】
【0002】
近年、車外騒音低減や車室内静粛化が進み、エンジン騒音は低下してきており、これに伴い比較的高速で回転する補機である車両用交流発電機の騒音が以前に増して問題視されてきている。
【0003】
対策の一つとして、車両用交流発電機の回転子に備わった冷却ファンが回転する際の、冷却ファンのベース部とブレード(羽根)部とに構成されるリブ部による乱流を、リブ部を無くすことで円滑な流れとしたものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、ブレードには回転により遠心力が作用する。この際の、外径方向の力を受けて倒れこむことの対策として、翼部の内周側に設ける切欠きを爪の径方向向きと直角に工夫したものが示される(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特に、ファン音の次数分散を考慮して不等ピッチを採用することでファンブレードの一部しか磁極爪に対応していない強度の低いブレードを設定せざるを得ない場合などでは、ファンブレード根元のR寸法の2.2倍以下の長さの切欠きとすることで対応可能とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の車両用交流発電機の回転子においては、リブを全て無くすことで、乱流を抑制したファンを得ようとすると、実際は、板金成形製品であるファンの強度が足りず、車両で継続的に回転されて用いられる車両用交流発電機の回転子としては、信頼性に問題があり実現できない。
【0008】
その信頼性向上のため、特許文献2の、遠心力による翼部の変形量を許容値以下に収めるとされる直角をなす切欠きを適応する場合、長さ設定の基となる曲げR寸法自体、一定に確保できるものでなく、現実的でない。
【0009】
また、切欠き自体は、シャフト周りに複数が略同一径の位置に設けられており、隣接する切欠き間で亀裂が生じて破損に至ることが容易に想定されている。つまりベース部の強度の確保が困難となるという問題があった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、信頼性及び静粛性の両立を実現できる車両用交流発電機の回転子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係わる車両用交流発電機の回転子は、磁極鉄心と、前記磁極鉄心に巻装される界磁コイルと、前記磁極鉄心に固定された冷却ファンとを備える車両用交流発電機の回転子であって、前記冷却ファンは、前記磁極鉄心の軸方向端面に固着された基部と、前記基部より軸方向
に切り起して立設されて内径側から外径側に延在し、回転子の回転方向に対し反回転方向
に湾曲した曲面形状を成して不等角度ピッチで配置される複数の翼部と、前記複数の翼部の根元部から離間した反回転方向位置の前記基部
にのみ設けられ、前記翼部の延在方向と平行に配置されるベースリブとから構成されたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る車両用交流発電機の回転子によれば、回転使用に耐える強度を確保できると共に大きな乱流を引き起こさなく、信頼性及び静粛性の向上を図ることができる車両用交流発電機の回転子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態1に係わる車両用交流発電機の回転子を示す断面図である。
【
図2】この発明の実施の形態1に係わる車両用交流発電機の回転子におけるリア側の冷却ファンを示す側面図である。
【
図3】この発明の実施の形態1に係わる車両用交流発電機の回転子における冷却ファンの要部を示す要部拡大図である。
【
図4】この発明の実施の形態1に係わる車両用交流発電機の回転子の
図3のIV−IV線における断面図である。
【
図5】この発明の実施の形態2に係わる車両用交流発電機の回転子における冷却ファンの要部を示す要部断面図である。
【
図6】この発明の実施の形態3に係わる車両用交流発電機の回転子におけるリア側の冷却ファンを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を
図1から
図4に基づいて説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係わる車両用交流発電機の回転子を示す断面図である。
図2はこの発明の実施の形態1に係わる車両用交流発電機の回転子におけるリア側の冷却ファンを示す側面図である。
図3はこの発明の実施の形態1に係わる車両用交流発電機の回転子における冷却ファンの要部を示す要部拡大図である。
図4はこの発明の実施の形態1に係わる車両用交流発電機の回転子の
図3のIV−IV線における断面図である。
【0015】
この実施の形態1における回転子100は、図示しない車両用交流発電機のフレームに回転可能に支持されており、車両に搭載されたエンジンによって回転駆動される。この回転子100は、回転軸1と、この回転軸1に嵌着されるランデル型の一対の磁極鉄心2,3と、これらの磁極鉄心2,3に樹脂ボビン5を介して巻装される界磁コイル4と、磁極鉄心2,3のそれぞれの軸方向端面に固着される冷却ファン9,10を含んで構成されている。
【0016】
リア側の磁極鉄心3は、回転軸1と一体になって回転する円柱形状のボス部31と、このボス部31と一体形成されてボス部31の一方の軸方向端面(リア側の冷却ファン10が固着された軸方向外端部)から径方向外側に延在するディスク部32と、このディスク部32と一体形成されてディスク部32の外周部分から個別に軸方向に延在する複数(例えば8個)の磁極爪33とを有している。なお、フロント側の磁極鉄心2もリア側の磁極鉄心3とほぼ同じ形状を有している。
【0017】
一対の磁極鉄心2,3は、複数の磁極爪33を交互に噛み合わせた状態で組み立てられている。また、磁極鉄心2,3のボス部31とディスク部32と磁極爪33とで囲まれた空間に、上述した樹脂ボビン5とこれに巻装された界磁コイル4とが収納されている。界磁コイル4には、スリップリング7,8を介して界磁電流が流される。これにより、磁極鉄心2,3は、一方がN極に、他方がS極に磁化される。
【0018】
次に、リア側の磁極鉄心3の軸方向端面に固着される冷却ファン10について詳細に説明する。
図2は、リア側の冷却ファン10の詳細形状を示す図であり、回転子100をスリップリング7,8側から見た形状が示されている。
【0019】
図2に示すように、冷却ファン10は、外径方向に向かうに従い回転子100の回転方向Rに対し反回転方向に湾曲した曲面形状を成して不等角度ピッチで配置されて軸方向に沿って立設された7個の翼部(以下、ファンブレードと称す)110と、これらのファンブレード110を保持するとともに磁極鉄心3の軸方向端面に固着された基部(以下、ファンベースと称す)120とを有している。この冷却ファン10は、回転子100と一体的に回転することで発熱部(例えば、図示しない整流装置や固定子の巻線等)を冷却する冷却風を発生させる。
【0020】
ファンベース120は、磁極鉄心3の軸方向端面に例えば7ヶ所の溶接部122で溶接されて固着される。また、ファンベース120の回転軸1周りには界磁コイル4の端部(図示せず)とスリップリング7,8との接続部41の逃がしとなる開口部123が形成されている。
【0021】
また、ファンベース120のファンブレード110の内径側(中心軸に近い側)には、ファンブレード110を切り起こす際の応力を緩和する目的で、ファンブレード110のそれぞれに対応して細溝形状の切欠き部124が設けられている。
【0022】
次に、本願発明の主要部であるベースリブ121について、
図3、
図4を用いて説明する。
ベースリブ121は、夫々ファンブレード110の根元に連続するファンベース120に、ファンブレード110から離間して単立で設けられる。ファンブレード110が立設する根元部はR形状を有しており(
図4)、そこから所定の距離離れて底部リブの形状としてドーム状のベースリブ121が形成される。通常、ファンブレード110付近は冷却空気の流れが速く、リブがその速い流れに平行に配されると流れを乱して大きな騒音を発生してしまうが、ファンブレード110から離れてファンベース120のみにベースリブ121を設けるので、このような問題が引き起こされる恐れがない。
【0023】
また、少なくとも、切欠き部124の最内周側位置の半径r1から最外周側位置の半径r2までの範囲(
図2参照)にわたるよう設けられる。この構成により、切欠き部位に集中発生する亀裂、変形を回避することが可能となる。すなわち、
図3の拡大図からもわかるように、ベースリブ121は、少なくとも切欠き部124の径方向内周側から径方向外周側に向けて設けられ、翼部であるファンブレード110の外周側の基部であるファンベース120は平坦に構成されている。
【0024】
さらに、開口部123が径方向に延びて設けられて強度が低下する恐れがある部位についても、ベースリブ121によって、強度を向上できる。
【0025】
また、ベースリブ121はファンブレード110が構成される方向と平行に設けられる。なお、ここでの平行とは、ほぼブレードに沿った方向に延びていればよく、ファンブレード110が曲面形状であっても必ずしも同一形状をなす必要はない。
【0026】
以上のように、この発明の実施の形態1の車両用交流発電機の回転子によれば、ファンブレード根元から離間して配されるベースリブ121がファンブレードと無関係にファンベースの強度を確保し、ファンベースに亀裂が生じることを抑制すると共に、翼と平行に延びることで乱流をごく小さくした回転子を実現でき、信頼性及び静粛性の向上を図ることができる。
【0027】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2を
図5に基づいて説明するが、図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
図5はこの発明の実施の形態2に係わる車両用交流発電機の回転子における冷却ファンの要部を示す要部断面図である。
【0028】
上述した実施の形態1においては、底部リブの形状としてドーム状のベースリブ121が形成された場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば
図5に示すように、ドーム状の一部に平坦面が構成されたベースリブ121としてもよく、上述した実施の形態1と同様の効果を奏する。また、ベースリブ121の大きさについても単一ではなく、それぞれ適したものとして実施してもよい。
【0029】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3を
図6に基づいて説明するが、図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
図6はこの発明の実施の形態3に係わる車両用交流発電機の回転子におけるリア側の冷却ファンを示す側面図である。
【0030】
この実施の形態3においては、他のファンブレードに適応した例で、例えば、回転方向に凹と凸がなめらかに連続するファンブレード210で構成される冷却ファン10の例を
図6に示している。ファンベース220に設けるベースリブ221が、細溝形状の切欠き部224が渡る範囲に設けられること等、上述した各実施の形態と同様である。
【0031】
図6に示すように、ファンブレード210が完全に磁極鉄心3の軸端面に乗っていない状態のファンブレード210であっても、その根元のファンベース220において強度が確保され、切欠き部224の相互間の亀裂によるファンブレード210の飛散を回避することができる。
【0032】
また、ベースリブ221はファンブレード210の外径側には設けられないので、より風速が速く風の流れが乱れやすい外径側における冷却効率を低下させない。
【0033】
また、上述した各実施の形態においては、リア側の冷却ファン10についてのみ説明したが、フロント側の冷却ファン9についても同様にこの発明を適用することができ、同様の効果を奏する。
【0034】
また、上述した各実施の形態においては、不等角度ピッチで配置されるファンブレードを有する冷却ファンについて説明したが、等角度ピッチで配置されるファンブレードを有する冷却ファンについても同様にこの発明を適用することができ、同様の効果を奏する。
【0035】
なお、この発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。