(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選択部は、前記交流系統の周波数特性定数が第1閾値未満である場合、前記定電圧定周波数制御方式を前記電源の制御方式として選択する、請求項1に記載の制御装置。
前記選択部は、前記交流系統の周波数特性定数が前記第1閾値以上であって、かつ前記第1閾値よりも大きい第2閾値未満である場合に、周波数ドループ制御方式を前記電源の制御方式として選択する、請求項2に記載の制御装置。
前記選択部は、前記交流系統の周波数特性定数が前記第2閾値以上である場合に、有効電力一定制御方式を前記電源の制御方式として選択する、請求項3に記載の制御装置。
前記周波数制御部によって前記電源の周波数を変動させる制御が行なわれる毎に、前記演算部は、前記電源の周波数の変動値および前記電源から出力される有効電力の変動値に基づいて、前記交流系統の周波数特性定数を更新する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の制御装置。
前記演算部は、前記交流系統の周波数特性定数から、前記交流系統に接続される負荷の周波数特性定数を減算することにより、前記交流系統に接続される1以上の他の電源の周波数特性定数を算出する、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の制御装置。
前記周波数制御部は、前記交流系統に接続可能な1以上の発電機が出力を変化させる速度に基づいて、前記電源の周波数を変動した後の周波数を維持する時間を設定する、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0013】
<システムの概要>
(全体構成)
図1は、電力制御システムの概略構成を示す図である。
図1を参照して、電力制御システムは、直流送電系統の電力を制御するためのシステムである。直流系統である直流送電線14を介して、2つの交流系統101および交流系統102間で電力が送受される。典型的には、交流系統101および交流系統102は3相交流系統である。
【0014】
交流系統101には、電力変換器20と、交流電源としての発電機32,34と、負荷41が接続されている。電力変換器20は、交流系統101と直流送電線14との間に接続される。交流系統102には、電力変換器21と、発電機31とが接続されている。電力変換器21は、交流系統102と直流送電線14との間で電力変換を行なう。
【0015】
例えば、交流系統102から交流系統101に電力が送電される。この場合、電力変換器20は順変換器(REC:Rectifier)として動作し、電力変換器21は逆変換器(INV:Inverter)として動作する。具体的には、電力変換器21により交流電力が直流電力に変換され、この変換された直流電力が直流送電線14を介して直流送電される。そして、受電端において電力変換器20により直流電力が交流電力に変換され、変圧器(図示しない)を介して交流系統101に供給される。なお、電力変換器21が逆変換器として動作し、電力変換器20が順変換器として動作する場合には、上記と逆の変換動作が行われる。
【0016】
電力変換器20は、自励式の電圧型電力変換器で構成されている。例えば、電力変換器20は、互いに直列接続された複数のサブモジュールを含むモジュラーマルチレベル変換器によって構成されている。「サブモジュール」は、「変換器セル」とも呼ばれる。なお、電力変換器21も自励式の電圧型電力変換器で構成されている。
【0017】
制御装置10は、制御に使用される電気量(電流、電圧など)を複数の検出器から取得する。制御装置10は、複数の検出器から取得した電気量に基づいて、電力変換器20の動作を制御する。
【0018】
本実施の形態では、電力変換器20が自励式の電力変換器であるため、電力変換器20を交流系統101の電源(すなわち、電圧源)として動作させて、電力変換器20から電力を供給することにより交流系統101を停電状態から復旧させることができる。
【0019】
具体的には、電力変換器20は、交流系統101に接続された他の電源(例えば、発電機32,34)から電力を受電することなく、交流系統101を停電状態から復旧させるブラックスタート機能を有している。なお、交流系統101が停電状態であっても電力変換器20の運転が可能となるような各種の非常用電源(制御装置用電源、補機電源等)は、確保されているとする。あるいは、交流系統101の停電時において、直流送電線14を介して発電機31から電力の供給を受けて電力変換器20を運転する構成であってもよい。
【0020】
ここで、交流系統101が停電状態であって、交流系統101から発電機32,34および負荷41が切り離されている場合を想定する。なお、発電機32,34および負荷41の各々は、周波数特性を有するものとする。具体的には、発電機32,34の各々は、周波数ドループ制御機能を有しており、予め定められた傾き(すなわち、調定率)に従って、周波数が上がると発電機出力(すなわち、発電機の有効電力出力)を低減させ、周波数が下がると有効電力出力を増大させる。また、負荷41の負荷電力は、周波数が上がると増大し、周波数が下がると低減する。
【0021】
制御装置10は、交流系統101の周波数特性定数に基づいて電力変換器20の制御方式を切り替えて、交流系統101を停電状態から復旧させる。具体的には、まず、制御装置10は、定電圧定周波数(CVCF:Constant Voltage Constant Frequency)制御方式で電力変換器20を動作させることにより、電力変換器20を交流系統101の電圧源として機能させる。
【0022】
続いて、制御装置10は、電力変換器20の周波数Fを変動させ、その周波数変動に応じた電力変換器20の有効電力出力Pの変動量を計測する。周波数Fの変動分の値である周波数変動値をΔfとし、有効電力出力Pの変動分の値である有効電力変動値をΔPとすると、交流系統101の周波数特性定数Kは式(1)で表される。
【0023】
K=ΔP/Δf ・・・(1)
交流系統101から発電機32,34および負荷41が切り離された状態の場合、電力変換器20の周波数Fを変動させても有効電力出力Pは変動しない。なぜなら、この状態においては、電力変換器20の周波数Fを変動させても、周波数特性を有する電源および負荷が交流系統101に接続されていないためである。
【0024】
このように、交流系統101に発電機32,34および負荷41が接続されていない場合には、交流系統101の周波数特性定数Kは略ゼロになる。この場合、制御装置10は、CVCF制御方式で電力変換器20を動作させて、引き続き、電力変換器20を交流系統101の電圧源として機能させる。
【0025】
その後、交流系統101から切り離されていた発電機32,34および負荷41が順次接続されると、交流系統101の周波数特性が変化する(すなわち、周波数特性定数Kが変化する)。そのため、電力変換器20の周波数Fを変動させると、当該変動に伴って電力変換器20の有効電力出力Pが変動する。
【0026】
具体的には、CVCF制御方式で動作している電力変換器20は、交流系統101の周波数を一定する役割を担っている。例えば、発電機32が交流系統101に接続された場面を想定する。電力変換器20が、周波数Fを基準周波数Fs(例えば、50Hzまたは60Hz)からΔfだけ上げた場合(すなわち、F=Fs+Δf)、発電機32は周波数の増大分であるΔfに応じて有効電力出力を低減させる。このとき、電力変換器20は、発電機32の有効電力出力の低減分だけ自身の有効電力出力Pを増大させることで周波数Fを周波数(Fs+Δf)で維持するように動作する。
【0027】
また、電力変換器20が、周波数Fを基準周波数FsからΔfだけ下げた場合(すなわち、F=Fs−Δfの場合)、発電機32は周波数の低減分であるΔfに応じて有効電力出力を増大させる。電力変換器20は、発電機32の有効電力出力の増大分だけ自身の有効電力出力Pを低減させることで周波数Fを周波数(Fs−Δf)で維持するように動作する。
【0028】
そのため、制御装置10は、電力変換器20の周波数Fを変動させた場合における、電力変換器20の有効電力出力Pの変動値を確認する(すなわち、周波数特性定数Kを確認する)ことによって、交流系統101の周波数特性を把握することができる。そして、制御装置10は、周波数特性定数Kの値に応じて、CVCF制御方式とは異なる他の制御方式(例えば、周波数ドループ制御方式、有効電力一定制御方式等)に電力変換器20の制御方式を切り替える。
【0029】
上記のように、制御装置10は、定期的に電力変換器20の周波数Fを変動させて、周波数Fの変動値に対する有効電力出力Pの変動値である周波数特性定数Kを算出し、周波数特性定数Kに基づいて、現在の交流系統101の状態に適した制御方式で電力変換器20を動作させる。
【0030】
また、制御装置10は、電力変換器20に関する情報のみ(すなわち、電力変換器20の周波数Fおよび有効電力出力Pの変動値)を用いて、当該電力変換器20の制御方式を適切に選択できる。さらに、交流系統101全体を管理する集中制御装置等の上位装置から指令情報(例えば、制御方式の指令情報)を取得する必要が無いため、通信コストを軽減できるとともに停電状態からの復旧を迅速に進めることができる。
【0031】
<電力変換器の構成>
(全体構成)
図2は、電力変換器20の概略構成図である。
図2を参照して、電力変換器20は、正極直流端子(すなわち、高電位側直流端子)Npと、負極直流端子(すなわち、低電位側直流端子)Nnとの間に互いに並列に接続された複数のレグ回路4u,4v,4w(以下、「レグ回路4」とも総称する)を含む。レグ回路4は、交流を構成する複数相の各々に設けられる。レグ回路4は、交流系統101と直流送電線14との間で電力変換を行なう。
図2には、交流系統101のU相、V相、W相にそれぞれ対応して3個のレグ回路4u,4v,4wが設けられている。
【0032】
レグ回路4u,4v,4wにそれぞれ設けられた交流入力端子Nu,Nv,Nwは、連系変圧器13に接続される。
図1では、図解を容易にするために、交流入力端子Nv,Nwと連系変圧器13との接続は図示していない。各レグ回路4に共通に接続された高電位側直流端子Npおよび低電位側直流端子Nnは、直流送電線14に接続される。
【0033】
図1の連系変圧器13を用いる代わりに、連系リアクトルを用いた構成としてもよい。さらに、交流入力端子Nu,Nv,Nwに代えてレグ回路4u,4v,4wにそれぞれ一次巻線を設け、この一次巻線と磁気結合する二次巻線を介してレグ回路4u,4v,4wが連系変圧器13または連系リアクトルに交流的に接続するようにしてもよい。この場合、一次巻線を下記のリアクトル8A,8Bとしてもよい。すなわち、レグ回路4は、交流入力端子Nu,Nv,Nwまたは上記の一次巻線など、各レグ回路4u,4v,4wに設けられた接続部を介して電気的に(すなわち、直流的または交流的に)交流系統101と接続される。
【0034】
レグ回路4uは、高電位側直流端子Npから交流入力端子Nuまでの上アーム5と、低電位側直流端子Nnから交流入力端子Nuまでの下アーム6とを含む。上アーム5と下アーム6との接続点である交流入力端子Nuが連系変圧器13と接続される。高電位側直流端子Npおよび低電位側直流端子Nnが直流送電線14に接続される。レグ回路4v,4wについても同様の構成を有しているので、以下、レグ回路4uを代表として説明する。
【0035】
上アーム5は、カスケード接続された複数のサブモジュール7と、リアクトル8Aとを含む。当該複数のサブモジュール7およびリアクトル8Aは互いに直列接続されている。同様に、下アーム6は、カスケード接続された複数のサブモジュール7と、リアクトル8Bとを含む。当該複数のサブモジュール7およびリアクトル8Bは互いに直列接続されている。
【0036】
リアクトル8Aが挿入される位置は、レグ回路4uの上アーム5のいずれの位置であってもよく、リアクトル8Bが挿入される位置は、レグ回路4uの下アーム6のいずれの位置であってもよい。リアクトル8A,8Bはそれぞれ複数個あってもよい。各リアクトルのインダクタンス値は互いに異なっていてもよい。さらに、上アーム5のリアクトル8Aのみ、もしくは、下アーム6のリアクトル8Bのみを設けてもよい。
【0037】
リアクトル8A,8Bは、交流系統101または直流送電線14などの事故時に事故電流が急激に増大しないように設けられている。しかし、リアクトル8A,8Bのインダクタンス値を過大なものにすると電力変換器の効率が低下するという問題が生じる。したがって、事故時においては、各サブモジュール7の全てのスイッチング素子をできるだけ短時間で停止(オフ)することが好ましい。
【0038】
電力変換器20は、さらに、制御に使用される電気量(電流、電圧など)を計測する各検出器として、交流電圧検出器81と、交流電流検出器82と、直流電圧検出器11A,11Bと、各レグ回路4に設けられたアーム電流検出器9A,9Bとを含む。
【0039】
これらの検出器によって検出された信号は、制御装置10に入力される。制御装置10は、これらの検出信号に基づいて各サブモジュール7の運転状態を制御するための制御指令15pu,15nu,15pv,15nv,15pw,15nwを出力する。また、制御装置10は、各サブモジュール7から信号17を受信する。信号17は、キャパシタ電圧(後述の
図3中の直流コンデンサ24の電圧)の検出値を含む。
【0040】
制御指令15pu,15nu,15pv,15nv,15pw,15nw(以下、「制御指令15」とも総称する。)は、U相上アーム、U相下アーム、V相上アーム、V相下アーム、W相上アーム、およびW相下アームにそれぞれ対応して生成されている。
【0041】
なお、
図1では図解を容易にするために、各検出器から制御装置10に入力される信号の信号線と、制御装置10および各サブモジュール7間で入出力される信号の信号線とは、一部まとめて記載されているが、実際には検出器ごとおよびサブモジュール7ごとに設けられている。各サブモジュール7と制御装置10との間の信号線は、送信用と受信用とが別個に設けられていてもよい。また、本実施の形態の場合、これらの信号は耐ノイズ性の観点から光ファイバを介して伝送される。
【0042】
以下、各検出器について具体的に説明する。交流電圧検出器81は、交流系統101のU相の交流電圧値Vacu、V相の交流電圧値Vacv、およびW相の交流電圧値Vacwを検出する。交流電流検出器82は、交流系統101のU相の交流電流値Iacu、V相の交流電流値Iacv、およびW相の交流電流値Iacwを検出する。直流電圧検出器11Aは、直流送電線14に接続された高電位側直流端子Npの直流電圧値Vdcpを検出する。直流電圧検出器11Bは、直流送電線14に接続された低電位側直流端子Nnの直流電圧値Vdcnを検出する。
【0043】
U相用のレグ回路4uに設けられたアーム電流検出器9Aおよび9Bは、上アーム5に流れる上アーム電流Ipuおよび下アーム6に流れる下アーム電流Inuをそれぞれ検出する。同様に、V相用のレグ回路4vに設けられたアーム電流検出器9Aおよび9Bは、上アーム電流Ipvおよび下アーム電流Invをそれぞれ検出する。W相用のレグ回路4wに設けられたアーム電流検出器9Aおよび9Bは、上アーム電流Ipwおよび下アーム電流Inwをそれぞれ検出する。
【0044】
(サブモジュールの構成例)
図3は、
図2の各レグ回路を構成するサブモジュールの一例を示す回路図である。
図3に示すサブモジュール7は、ハーフブリッジ型の変換回路25と、エネルギー蓄積器としての直流コンデンサ24と、電圧検出部27と、送受信部28と、ゲート制御部29とを含む。
【0045】
ハーフブリッジ型の変換回路25は、互いに直列接続されたスイッチング素子22A,22Bと、ダイオード23A,23Bとを含む。ダイオード23A,23Bは、スイッチング素子22A,22Bとそれぞれ逆並列(すなわち、並列かつ逆バイアス方向)に接続される。直流コンデンサ24は、スイッチング素子22A,22Bの直列接続回路と並列に接続され、直流電圧を保持する。スイッチング素子22A,22Bの接続ノードは高電位側の入出力端子26Pと接続される。スイッチング素子22Bと直流コンデンサ24の接続ノードは低電位側の入出力端子26Nと接続される。
【0046】
ゲート制御部29は、制御装置10から受信した制御指令15に従って動作する。ゲート制御部29は、通常動作時(すなわち、入出力端子26P,26N間に零電圧または正電圧を出力する場合)には、スイッチング素子22A,22Bの一方をオン状態とし、他方をオフ状態となるように制御を行なう。スイッチング素子22Aがオン状態であり、スイッチング素子22Bがオフ状態のとき、入出力端子26P,26N間には直流コンデンサ24の両端間の電圧が印加される。逆に、スイッチング素子22Aがオフ状態であり、スイッチング素子22Bがオン状態のとき、入出力端子26P,26N間は0Vとなる。
【0047】
したがって、
図3に示すサブモジュール7は、スイッチング素子22A,22Bを交互にオン状態とすることによって、零電圧または直流コンデンサ24の電圧に依存した正電圧を出力することができる。ダイオード23A,23Bは、スイッチング素子22A,22Bに逆方向電圧が印加されたときの保護のために設けられている。
【0048】
一方、制御装置10は、アーム電流の過電流を検出した場合、ゲートブロック(スイッチング素子のオフ)指令を送受信部28に送信する。ゲート制御部29は、ゲートブロック指令を送受信部28を介して受け付けると、回路保護のためにスイッチング素子22A,22Bの両方をオフにする。この結果、例えば、交流系統101の地絡事故の場合に、スイッチング素子22A,22Bを保護することができる。
【0049】
電圧検出部27は、直流コンデンサ24の両端24P,24Nの間の電圧を検出する。以下の説明では、直流コンデンサ24の電圧をセルキャパシタ電圧とも称する。送受信部28は、制御装置10から受信した制御指令15をゲート制御部29に伝達するとともに、電圧検出部27によって検出されたセルキャパシタ電圧を表す信号17を制御装置10に送信する。
【0050】
上記の電圧検出部27、送受信部28およびゲート制御部29は、専用回路によって構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを利用して構成してもよい。各スイッチング素子22A,22Bには、オン動作とオフ動作の両方を制御可能な自己消弧型のスイッチング素子が用いられる。スイッチング素子22A,22Bは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはGCT(Gate Commutated Turn-off thyristor)である。
【0051】
上記で説明したサブモジュール7の構成は一例であって、他の構成のサブモジュール7を本実施の形態に適用してもよい。例えば、サブモジュール7は、フルブリッジ型の変換回路、またはスリークオーターブリッジ型の変換回路を用いて構成されていてもよい。
【0052】
<制御装置のハードウェア構成>
図4は、制御装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4を参照して、出制御装置10は、補助変成器51と、AD(Analog to Digital)変換部52と、演算処理部70とを含む。例えば、制御装置10は、ディジタル保護制御装置として構成されている。
【0053】
補助変成器51は、各検出器からの電気量を取り込み、より小さな電気量に変換して出力する。AD変換部52は、補助変成器51から出力される電気量(アナログ量)を取り込んでディジタルデータに変換する。具体的には、AD変換部52は、アナログフィルタと、サンプルホールド回路と、マルチプレクサと、AD変換器とを含む。
【0054】
アナログフィルタは、補助変成器51から出力される電流および電圧の波形信号から高周波のノイズ成分を除去する。サンプルホールド回路は、アナログフィルタから出力される電流および電圧の波形信号を予め定められたサンプリング周期でサンプリングする。マルチプレクサは、演算処理部70から入力されるタイミング信号に基づいて、サンプルホールド回路から入力される波形信号を時系列で順次切り替えてAD変換器に入力する。AD変換器は、マルチプレクサから入力される波形信号をアナログデータからディジタルデータに変換する。AD変換器は、ディジタル変換した波形信号(ディジタルデータ)を演算処理部70へ出力する。
【0055】
演算処理部70は、CPU(Central Processing Unit)72と、ROM73と、RAM74と、DI(digital input)回路75と、DO(digital output)回路76と、入力インターフェイス(I/F)77と、通信インターフェイス(I/F)78とを含む。これらは、バス71で結合されている。
【0056】
CPU72は、予めROM73に格納されたプログラムを読み出して実行することによって、制御装置10の動作を制御する。なお、ROM73には、CPU72によって用いられる各種情報が格納されている。CPU72は、たとえば、マイクロプロセッサである。なお、当該ハードウェアは、CPU以外のFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびその他の演算機能を有する回路などであってもよい。
【0057】
CPU72は、バス71を介して、AD変換部52からディジタルデータを取り込む。CPU72は、ROM73に格納されているプログラムに従って、取り込んだディジタルデータを用いて制御演算を実行する。
【0058】
CPU72は、制御演算結果に基づいて、DO回路76を介して、外部の装置に制御指令を出力する。また、CPU72は、DI回路75を介して、その制御指令に対する応答を受け取る。入力インターフェイス77は、典型的には、各種ボタン等であり、系統運用者からの各種設定操作を受け付ける。また、CPU72は、通信インターフェイス78を介して、他の装置と各種情報を送受信する。
【0059】
<機能構成>
図5は、制御装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5を参照して、制御装置10は、主たる機能構成として、周波数制御部201と、電力算出部203と、演算部205と、選択部207と、指令部209とを含む。これらの各機能は、例えば、演算処理部70のCPU72がROM73に格納されたプログラムを実行することによって実現される。なお、これらの機能の一部または全部はハードウェアで実現されるように構成されていてもよい。
【0060】
周波数制御部201は、周波数指令を電力変換器20に与えることにより電力変換器20の周波数を制御する。ある局面では、周波数制御部201は、CVCF制御方式で動作する電力変換器20の周波数FをΔfだけ変動させる。典型的には、周波数制御部201は、周波数Fを基準周波数FsからΔfだけ変動させる。
【0061】
より詳細には、周波数制御部201は、交流系統101に接続される発電機32,34が出力を変化させる速度(具体的には、調速機の応答速度)に基づいて、周波数Fを変動した後の周波数(例えば、F=Fs±Δf)を維持する時間Tを設定する。
【0062】
図6は、発電機32の応答速度を説明するための図である。
図6を参照して、発電機32は、基準周波数Fsのときには有効電力出力がP1であり、周波数(Fs−Δf)のときには有効電力出力がP2である。
【0063】
図6に示すように、電力変換器20の周波数Fが基準周波数FsからΔfだけ下がったときに、発電機32の有効電力出力がP1からP2に変化する所要時間はΔt(=t2−t1)である。すなわち、発電機32の応答速度は“(P2−P1)/Δt”となる。そのため、周波数制御部201は、周波数FをΔfだけ変動させる場合には、変動後の周波数を維持する時間Tを、Δtよりも長い時間に設定する。
【0064】
なお、制御装置10は、交流系統101に接続可能な各発電機の応答速度に関する情報をROM73あるいはRAM74に予め記憶しているものとする。典型的には、周波数制御部201は、最も応答速度が遅い発電機の応答速度に基づいて、変動後の周波数を維持する時間Tを設定する。
【0065】
再び、
図5を参照して、電力算出部203は、電力変換器20から出力される有効電力を算出する。具体的には、電力算出部203は、交流電圧検出器81により検出された交流電圧と、交流電流検出器82により検出された交流電流とに基づいて、電力変換器20の有効電力出力Pを算出する。
【0066】
ある局面では、電力算出部203は、周波数制御部201が電力変換器20の周波数Fを変動させた場合に、電力変換器20の有効電力出力Pの変動値を算出する。上記のように、周波数制御部201は、交流系統101に接続可能な各発電機の応答速度に基づいて、変動後の周波数を維持する時間Tを設定する。そのため、電力算出部203は、周波数Fを変動させたときの交流系統101の有効電力出力(すなわち、電力変換器20の有効電力出力P)の変動値を精度よく算出できる。
【0067】
他の局面では、電力算出部203は、周波数Fの変動に応じて電力変換器20の有効電力出力Pが最大出力または最小出力に到達したか否かを判断し、当該判断結果を周波数制御部201に送信する。周波数制御部201は、有効電力出力Pが最大出力または最小出力に到達していないとの判断結果を受信した場合、周波数Fを周波数(Fs−Δf)に設定して時間Tだけ維持する。
【0068】
一方、周波数制御部201は、有効電力出力Pが最大出力または最小出力に到達したとの判断結果を受信した場合、周波数Fを基準周波数Fsに戻して、周波数変動値Δfを前回の値よりも小さくし、周波数Fを再度変動させる。この理由は、以下のとおりである。
【0069】
具体的には、CVCF制御方式で動作している電力変換器20は、周波数Fを上げた場合には他の電源(例えば、発電機32,34)の有効電力出力の低減分だけ自身の有効電力出力Pを増大させることで周波数Fを一定に維持する。この場合、他の電源の有効電力出力の低減分によっては、有効電力出力Pは最大出力に到達する可能性がある。有効電力出力Pの最大出力への到達は、電力変換器20の周波数調整能力を超えている(すなわち、周波数Fを一定に保つことができない)ことを意味している。結果として、交流系統101の周波数特性定数Kも精度よく算出できない。
【0070】
また、電力変換器20は、周波数Fを下げた場合には他の電源の有効電力出力の増大分だけ自身の有効電力出力Pを低減させることで周波数Fを一定に維持する。この場合、有効電力出力Pが最小出力に到達する可能性があり、この到達は、電力変換器20の周波数調整能力を超えており、交流系統101の周波数特性定数Kを精度よく算出できないことを意味する。
【0071】
したがって、有効電力出力Pが最大出力または最小出力に到達した場合には、周波数制御部201は、周波数Fを基準周波数Fsに戻して、変動値Δfを前回の値よりも小さくし、周波数Fを再度変動させる。
【0072】
演算部205は、電力変換器20の周波数Fの変動値Δfと、電力変換器20の有効電力出力の変動値ΔPとに基づいて、交流系統101の周波数特性定数Kを算出する。具体的には、演算部205は、上述した式(1)を用いて、周波数特性定数Kを算出する。
【0073】
ある局面では、演算部205は、周波数制御部201によって電力変換器20の周波数Fを変動させる制御が行なわれる毎に、電力変換器20の周波数Fの変動値Δfおよび有効電力出力Pの変動値ΔPに基づいて、交流系統101の周波数特性定数Kを算出および更新する。
【0074】
他の局面では、演算部205は、算出した周波数特性定数Kから、交流系統101に接続される負荷41の周波数特性定数を減算することにより、交流系統101に接続される発電機32および34の周波数特性定数を算出する。
【0075】
選択部207は、交流系統101の周波数特性定数Kに基づいて、電力変換器20の制御方式を選択する。ある局面では、選択部207は、交流系統101の周波数特性定数Kが閾値Th1未満である場合、CVCF制御方式を電力変換器20の制御方式として選択する。具体的には、周波数特性定数Kが閾値Th1未満である場合、交流系統101は、周波数を一定に維持するための能力を有していないと考えられる。そこで、電力変換器20を交流系統101の周波数を一定に維持するための電源として機能させるために、CVCF制御方式が選択される。
【0076】
他の局面では、選択部207は、周波数特性定数Kが閾値Th1以上であって、かつ閾値Th2(ただし、Th2>Th1)未満である場合に、周波数ドループ制御方式を電力変換器20の制御方式として選択する。具体的には、周波数特性定数Kが閾値Th1以上かつ閾値Th2未満である場合、交流系統101は、周波数を一定に維持するための能力をある程度有していると考えられる。そこで、電力変換器20と、交流系統101に接続された他の電源(例えば、発電機32,34)とにより交流系統101の周波数を一定に維持させるために、周波数ドループ制御方式が選択される。なお、この場合の電力変換器20のドループ特性の傾きを示す係数は、演算部205によって算出された周波数特性定数Kの逆数である。
【0077】
さらに他の局面では、選択部207は、周波数特性定数Kが閾値Th2以上である場合に、有効電力一定制御方式を電力変換器20の制御方式として選択する。具体的には、周波数特性定数Kが閾値Th2以上である場合、交流系統101は周波数を一定に維持するための十分な能力を有していると考えられる。そこで、選択部207は、周波数維持能力に寄与しない有効電力一定制御方式を電力変換器20の制御方式として選択する。
【0078】
指令部209は、選択部207により選択された制御方式で電力変換器20を動作させる動作指令を電力変換器20に送信する。
【0079】
<処理手順>
図7〜
図9を用いて制御装置10の処理手順について説明する。
図7は、制御装置10の処理手順の一例を示すフローチャートである。具体的には、
図7では、交流系統101を停電状態から復旧させる場合に制御装置10により実行される処理手順が示されている。ここでは、電力変換器20を電源として動作させることにより交流系統101を停電状態から復旧させる場面を想定する。典型的には、以下の各ステップは、制御装置10の演算処理部70によって実行される。
【0080】
図7を参照して、制御装置10は、電力変換器20を起動して、CVCF制御方式で動作させる(ステップS10)。具体的には、制御装置10は、交流系統101の基準周波数Fsおよび基準電圧Vsを有する電圧波形を出力するように電力変換器20を動作させる。続いて、制御装置10は、
図8に示す周波数変動処理を実行する(ステップS12)。
【0081】
図8は、周波数変動処理の一例を示すフローチャートである。
図8を参照して、制御装置10は、電力変換器20の周波数F(ここでは、基準周波数Fs)からΔf(>0)だけ変動させる(ステップS30)。具体的には、制御装置10は、電力変換器20の周波数Fを“Fs−Δf”または“Fs+Δf”に設定し、当該設定に従う周波数指令を電力変換器20に送信する。
【0082】
制御装置10は、電力変換器20の有効電力出力Pが最大出力または最小出力に到達したか否かを判断する(ステップS32)。有効電力出力Pが最大出力または最小出力に到達していない場合には(ステップS32においてNO)、制御装置10は周波数変動処理を終了して、
図7中のステップS12の処理に進む。
【0083】
一方、有効電力出力Pが最大出力または最小出力に到達した場合には(ステップS32においてYES)、制御装置10は周波数Fを基準周波数Fsに戻す(ステップS34)。続いて、制御装置10は、Δfの値を小さくして(ステップS36)、ステップS30を再度実行する。すなわち、制御装置10は、周波数Fを前回よりも小さいΔfだけ変動させる。
【0084】
再び、
図7を参照して、制御装置10は、有効電力出力の変動値ΔPを算出する(ステップS12)。制御装置10は、式(1)を用いて周波数特性定数Kを算出する(ステップS14)。続いて、制御装置10は、
図9に示す電力変換器20の制御方式の選択処理を実行し(ステップS16)、選択された制御方式で電力変換器20を動作させる(ステップS18)。
【0085】
図9は、電力変換器20の制御方式の選択処理を示すフローチャートである。
図9を参照して、制御装置10は、周波数特性定数Kが閾値Th1未満であるか否かを判断する(ステップS50)。周波数特性定数Kが閾値Th1未満である場合には(ステップS50においてYES)、制御装置10は、CVCF制御方式を電力変換器20の制御方式として選択する(ステップS52)。
【0086】
周波数特性定数Kが閾値Th1以上である場合には(ステップS50においてNO)、制御装置10は、周波数特性定数Kが閾値Th1以上であって、かつ閾値Th2未満であるか否かを判断する(ステップS54)。
【0087】
周波数特性定数Kが閾値Th1以上であって、かつ閾値Th2未満である場合には(ステップS54においてYES)、制御装置10は、周波数ドループ制御方式を電力変換器20の制御方式として選択する(ステップS56)。
【0088】
一方、周波数特性定数Kが閾値Th2以上である場合には(ステップS54においてNO)、制御装置10は、有効電力一定制御方式を電力変換器20の制御方式として選択する(ステップS58)。
【0089】
<利点>
本実施の形態によると、制御装置10は、定期的に電力変換器20の周波数Fを変動させることで、周波数特性定数Kを算出し、当該周波数特性定数Kに基づいて現在の交流系統101の状態に適した電力変換器20の制御方式を選択できる。これにより、交流系統101に接続された電力変換器20を安定して運用することができる。
【0090】
また、制御装置10は、電力変換器20に関する情報のみを用いて、当該電力変換器20の制御方式を適切に選択できるため、上位装置から指令情報を取得する必要が無いため、通信コストを軽減できる。さらに、交流系統101に他の電源および負荷が接続されていない状態でも適用することができる。
【0091】
[その他の実施の形態]
上述した実施の形態では、電力変換器20,21がモジュラーマルチレベル変換器である構成について説明したが、当該構成に限られない。電力変換器20,21は、自励式の電圧型交直変換器であり、交流電力を2レベルの直流電力に変換する2レベル変換器で構成されていてもよいし、交流電力を3レベルの直流電力に変換する3レベル変換器で構成されていてもよい。なお、電力変換器21は、自励式の電圧型交直変換器である電力変換器20に直流電力を供給可能な他励式の交直変換器で構成されていてもよい。
【0092】
上述した実施の形態では、交流系統101が停電状態のときに、ブラックスタート機能を有する電力変換器20を交流系統101の電源として動作させる構成について説明したが当該構成に限られない。例えば、
図1のような直流送電系統ではなく、直流送電線14および交流系統102が存在しない独立した交流系統101において、電力変換器20の代わりに発電機を交流系統101の電源として用いる構成であってもよい。この場合、制御装置10は、上記と同様に周波数特性定数に基づいて発電機を適切な制御方式(例えば、CVCF制御方式、周波数ドループ制御方式、有効電力一定制御方式)で動作させる。このように、制御装置10は、交流系統101に接続された電源(例えば、電力変換器20、発電機)を制御するための装置として機能する。
【0093】
上述した実施の形態では、電力変換器21が、直流送電線14を介して電力変換器20に接続されている構成について説明したが、当該構成に限られない。具体的には、発電機31、交流系統102および電力変換器21の代わりに、直流電力を供給可能な直流電源が直流送電線14を介して電力変換器20に接続されていてもよい。例えば、蓄電池、太陽光発電装置、燃料電池等の直流電源が、直流送電線14を介して電力変換器20に接続される。
【0094】
上述の実施の形態として例示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。
【0095】
また、上述した実施の形態において、その他の実施の形態で説明した処理や構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
交流系統に接続された電源(20)を制御するための制御装置(10)は、定電圧定周波数制御方式で動作する電源の周波数を制御する周波数制御部(201)と、周波数制御部が電源の周波数を変動させた場合に、電源から出力される有効電力の変動値を算出する電力算出部(203)と、電源の周波数の変動値と、電源から出力される有効電力の変動値とに基づいて、交流系統の周波数特性定数を算出する演算部(205)と、交流系統の周波数特性定数に基づいて、電源の制御方式を選択する選択部(207)とを備える。