(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蓄電残量確認部は、前記2つの電流センサのいずれかで検出された電流値を基にSOC(State Of Charge)を推定することにより前記蓄電装置が架線レス区間走行に必要な蓄電残量を有しているか確認する、請求項3に記載の車両システム。
前記接点動作確認部は、前記開閉指令部が、前記充電用断路器を開放状態、前記2つのコンタクタを開放状態、前記放電用断路器を投入状態とする開閉指令を順に行った後、前記複数の接点が、前記充電用断路器および前記放電用断路器および前記2つのコンタクタの開閉状態に対応する状態になっていることを確認することにより、前記充電用断路器および前記放電用断路器および前記2つのコンタクタの健全性を確認する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両システム。
架線レス区間での電力源となる蓄電装置と、蓄電装置の充放電状態を切換えるための充電用断路器および放電用断路器および前記蓄電装置のプラス側およびマイナス側に設けられる2つのコンタクタと、前記充電用断路器および前記放電用断路器および前記2つのコンタクタのそれぞれの開閉に連動する複数の接点と、開閉指令部、診断開始判定部、蓄電残量確認部、接点動作確認部、伝送確認部、および、異常判定部を有する制御部と、を備える車両システムの制御方法であって、
前記開閉指令部が、前記充電用断路器および前記放電用断路器および前記2つのコンタクタの開閉指令を行い、
前記診断開始判定部が、架線レス区間に進入する前に診断開始時を判定し、
前記診断開始判定部により診断開始時であると判定された場合、
前記蓄電残量確認部が、前記蓄電装置が架線レス区間走行に必要な蓄電残量を有しているか確認し、
前記接点動作確認部が、前記開閉指令部による開閉指令に応じた前記複数の接点の所定の開閉状態から前記充電用断路器および前記放電用断路器および2つのコンタクタの健全性を確認し、
前記伝送確認部が、前記診断開始判定部により診断開始時であると判定された場合に動作し、前記蓄電装置に伝送試験用信号を伝送して正常な応答を受けることにより前記蓄電装置との間の伝送路の健全性を確認し、
前記異常判定部が、前記健全性のいずれかまたは前記必要な蓄電残量が確認できない場合に架線レス区間走行不可と判断する、
車両システムの制御方法。
架線レス区間での電力源となる蓄電装置と、蓄電装置の充放電状態を切換えるための充電用断路器および放電用断路器および前記蓄電装置のプラス側およびマイナス側に設けられる2つのコンタクタと、前記充電用断路器および前記放電用断路器および前記2つのコンタクタのそれぞれの開閉に連動する複数の接点と、開閉指令部、診断開始判定部、蓄電残量確認部、接点動作確認部、および、異常判定部を有する制御部と、を備える車両システムの制御方法であって、
前記開閉指令部が、前記充電用断路器および前記放電用断路器および前記2つのコンタクタの開閉指令を行い、
前記診断開始判定部が、架線レス区間に進入する前に診断開始時を判定し、車両に搭載された車上子が診断開始時を示す地上子からの信号を受信したときに、診断開始時であると判定し、
前記診断開始判定部により診断開始時であると判定された場合、
前記蓄電残量確認部が、前記蓄電装置が架線レス区間走行に必要な蓄電残量を有しているか確認し、
前記接点動作確認部が、前記開閉指令部による開閉指令に応じた前記複数の接点の所定の開閉状態から前記充電用断路器および前記放電用断路器および2つのコンタクタの健全性を確認し、
前記異常判定部が、前記健全性または前記必要な蓄電残量が確認できない場合に架線レス区間走行不可と判断し、架線レス区間走行不可と判断した場合、車両に搭載された車上子が、該異常判定部の判定結果を反映させるタイミングを指示する地上子からの信号を受信したときにブレーキ指令を出力することにより、当該車両が架線レス区間に進入する前に停止できるようにした、
車両システムの制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の車両システムの概要を説明する図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態における電気的推進車両の架線区間走行時の回路を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態における電気的推進車両の架線レス区間走行時の回路を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の車両システムにおける診断用回路の動作を説明する動作フローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4の動作フローチャートに沿った回路動作を示す図である。
【
図6】
図6は、
図4の動作フローチャートに沿った回路動作を示す図である。
【
図7】
図7は、
図4の動作フローチャートに沿った回路動作を示す図である。
【
図8】
図8は、
図4の動作フローチャートに沿った回路動作を示す図である。
【
図9】
図9は、
図4の動作フローチャートに沿った回路動作を示す図である。
【
図19】
図19は、第2の実施形態に特有の回路動作を示す図である。
【
図20】
図20は、第3の実施形態の車両システムの概要を説明する図である。
【
図21】
図21は、第3の実施形態の車両システムにおける診断用回路の動作を説明する動作フローチャートである。
【
図22】
図22は、第3の実施形態に特有の回路動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の車両システムについて
図1〜17を参照し、詳細を説明する。
【0009】
まず、構成について、
図1〜3を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態の車両システムの概要を説明する図である。
図2は、同実施形態における電気的推進車両の架線区間走行時の回路を示す図である。
図3は、同電気的推進車両の架線レス区間走行時の回路を示す図である。
【0010】
図1に示す本実施形態の車両システムは、電気的推進車両(以下、車両と称す)100が、架線1から取り込んだ電力で架線区間を走行し、車両100に搭載された蓄電装置からの電力で架線レス区間を走行する車両システムである。架線区間において、車両100が診断開始地上子40の上を通過すると、車両100の診断用回路が、架線レス区間の走行に必要な機器の健全性の診断を開始する(架線レス走行健全性診断開始)。この診断により、架線レス区間の走行に必要な機器の正常または異常が判定される。その後車両100が診断結果反映地上子41の上を通過すると、診断用回路は、診断結果を反映させる。診断結果が正常の場合(
図1の上側)、架線レス区間にそのまま進入し、運行を続行することとなる。一方、診断結果が異常の場合(
図1の下側)、診断用回路は、車両100が架線レス区間に進入する前に車両100を停止させる。なお、本実施形態は、鉄道の他、路面電車、トロリーバス等の各種車両システムに適用し得るものである。
【0011】
図2および
図3に示すように、車両100側の主回路は、架線1から集電する集電装置2、接地のためのアース部3、集電装置2で集電した高圧の直流電力を低圧の三相交流電力に変換するSIV(Static InVerter)4、変換後の交流電力の負荷となる主制御装置や照明等のSIV負荷5、SIV4からの電力で蓄電装置7を充電するための充電装置6、蓄電池およびバッテリーマネージメントシステム(BMS)(いずれも図示せず)を有する蓄電装置7、充電装置6の+側から蓄電装置7の+側への経路の開閉を行うための充電用断路器8、蓄電装置7の+側からSIV4の+側入力への経路の開閉を行うための放電用断路器9、充電用断路器8および放電用断路器9と蓄電装置7の+側との間に設けられその間の開閉を行う+側コンタクタ10、蓄電装置7の−(マイナス)側とSIV4の−側および充電装置6の−側との間に設けられその間の開閉を行う−側コンタクタ11、蓄電装置7の+側に設けられる+側電流センサ12、蓄電装置7の−側に設けられる−側電流センサ13、充電用断路器8と+側コンタクタ10との間の経路に設けられる充電用逆流防止ダイオード14、放電用断路器9と+側コンタクタ10との間の経路に設けられる放電用逆流防止ダイオード15、および、充電用断路器8と放電用断路器9と+側コンタクタ10と−側コンタクタ11の開閉を制御する制御部30からなる。なお、
図2,3において、+側コンタクタ10と−側コンタクタ11は投入状態を表している(他図における同じ表示も同様に投入状態を表す)。
【0012】
車両100における診断用回路は、各連動接点(16〜19)と、蓄電装置7、充電用断路器8および充電用断路器連動接点16、放電用断路器9および放電用断路器連動接点17、+側コンタクタ10および+側コンタクタ連動接点18、−側コンタクタ11および−側コンタクタ連動接点19、+側電流センサ12、−側電流センサ13、車上子20、外部表示器21、およびブレーキ制御部22に接続している制御部30とで構成される。
【0013】
なお、上記充電用断路器連動接点16は充電用断路器8と連動し、放電用断路器連動接点17は放電用断路器9と連動し、+側コンタクタ連動接点18は+側コンタクタ10と連動し、−側コンタクタ連動接点19は−側コンタクタ11と連動して、それぞれ開閉するようにした接点である。各連動接点(16〜19)の一端は、一定の電圧が印加されており、それぞれの他端が接続される制御部30において、下記の接点動作確認部36が、各連動接点(16〜19)の開閉を示す電圧の状態(OFF状態/ON状態)を確認できるようになっている。これにより、接点動作確認部36は、充電用断路器8、放電用断路器9、+側コンタクタ10、および−側コンタクタ11の開閉状態を確認できる。
【0014】
上記診断用回路の一部としての制御部30は、診断用機能構成として、診断開始判定部31、電流値比較部32、伝送確認部33、SOC(State Of Charge)判定部34、開閉指令部35、接点動作確認部36、異常判定部37を有する。これらの機能の詳細は、後述する。なお、制御部30は、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)、制御プログラムを記憶している不揮発性記憶媒体、および主記憶装置を備える。制御プログラムは、上記各部(診断開始判定部31、電流値比較部32、伝送確認部33、SOC判定部34、開閉指令部35、接点動作確認部36、異常判定部37)を含むモジュール構成となっており、CPUが上記記憶媒体から制御プログラムを読み出し主記憶装置上にロードすることにより、診断開始判定部31、電流値比較部32、伝送確認部33、SOC判定部34、開閉指令部35、接点動作確認部36、異常判定部37が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0015】
また、車両100は、通信用車上設備として車上子20と、診断用回路による診断結果を表示する機器として外部表示器21と、診断用回路による制御により車両100を停止させるブレーキ制御部22を有する。
【0016】
また、本実施形態の車両システムは、車上子20との通信用地上設備として、診断開始地上子40、診断結果反映地上子41を有する。
【0017】
次に、本実施形態の車両システムの動作について、
図2〜17を参照して説明する。なお、各ブロック図において、接続線上の太線矢印は電流(電力)の流れを表し、構成要素から他の構成要素への太線矢印は信号または情報の流れを表している。
【0018】
まず、架線区間走行時と架線レス区間走行時のそれぞれにおける主回路の動作について説明する。
【0019】
(架線区間走行時:
図2)
架線区間走行時(このとき蓄電装置7は充電状態)、車両100は、架線1から集電装置2を通して電力を取得し、SIV4により取得した高圧直流電力を低圧交流電力に変換する。SIV4からの低圧交流電力の一部は、SIV負荷5で消費され、残りは、充電装置6に供給される。充電装置6に供給された電力は、投入状態の充電用断路器8、充電用逆流防止ダイオード14、投入状態の+側コンタクタ10、および−側コンタクタ11を介して蓄電装置7に供給され、蓄電装置7が充電される。このとき、+側電流センサ12および−側電流センサ13はそれぞれ、蓄電装置7の+側および−側の電流を検出する。
【0020】
(架線レス区間走行時:
図3)
架線レス区間走行時(このとき蓄電装置7は放電状態)、車両100は、蓄電装置7から放電を行い、SIV負荷5で消費する電力を供給する。このとき蓄電装置7から放電される直流電力は、投入状態の+側コンタクタ10、放電用逆流防止ダイオード15、投入状態の放電用断路器9、および投入状態の−側コンタクタ11、を介して、SIV4に供給され、SIV4で直流電力から交流電力に変換されて、SIV負荷5で消費される。
【0021】
次に、
図4のフローチャートで示す本実施形態の車両システムにおける診断用回路の動作について、主回路の動作とともに説明する。
【0022】
ここでは、車両100は、はじめ、架線区間を走行しているものとする(このとき
図2の状態)。
【0023】
車両100が架線区間を走行中、診断開始判定部31は、車上子20が診断開始地上子40の上を通過するまで待機状態となる(S1でNoとなってS1に戻る)。その後、車上子20からの通知により車上子20が診断開始地上子40の上を通過したことを検出すると(S1でYes;
図5)、さらに、充電用断路器8、放電用断路器9、+側コンタクタ10、−側コンタクタ11のそれぞれの連動接点(16〜19)の開閉状態が初期状態である充電状態(放電用断路器9以外すべて投入状態)であることを確認する(S2;
図6)。
【0024】
このとき充電状態であることが確認されると(S2でYes)、電流値比較部32が、+側電流センサ12および−側電流センサ13で検出された電流値の差が既定の誤差内であるか比較し、各電流センサ(12,13)の健全性を確認する(S3;
図7)。ここでは、上記電流値の差が既定の誤差内のとき、電流値比較部32は、+側電流センサ12および−側電流センサ13のいずれも健全(正常)である、と判断し、そうでない場合異常であると判断する。
【0025】
各電流センサ(12,13)の健全性が確認されると(S3でYes)、伝送確認部33が、蓄電装置7へ試験用信号を伝送し、蓄電装置7から正常に応答が返ってくるか確認する(S4;
図8)。ここで蓄電装置7から正常な応答があると、伝送確認部33は、蓄電装置7は健全である、と判断し、そうでない場合異常であると判断する。
【0026】
蓄電装置7の健全性が確認されると(S4でYes)、SOC判定部34が、蓄電装置7のSOCを測定し、架線レス区間を走行するのに必要な既定SOC以上であるか判定する(S5)。このときSOC判定部34は、制御部30が取得する+側電流センサ12または−側電流センサ13で検出される充放電時の電流値から、電流積算法等の周知の手法によりSOCを推定することにより、蓄電装置7のSOCを測定する。なお、蓄電装置7自身でSOCを測定し、SOC判定部34が、その測定結果を取得するようにしてもよい(
図9)。また、本実施形態では、車両100に搭載される蓄電装置7の蓄電容量が予めわかっているので、蓄電装置7の蓄電残量を示す物理量として、SOCを利用している。つまり、本実施形態では、SOC判定部34が、現在のSOCが既定SOC以上であるか判定することにより、車両100が架線レス区間を走行するのに必要な蓄電残量が蓄電装置7にあるか確認している。
【0027】
SOC判定部34により、蓄電装置7のSOCが、架線レス区間を走行するのに必要な既定SOC以上であると判定されると(S5でYes)、充電装置6からの電流がSIV4側に流れないように、開閉指令部35が、以下の順序で開閉指令を出し、各断路器およびコンタクタ(8〜11)の切換えを行う(S6;
図10)。切換えの順序は、(1)充電用断路器8を開放、(2)+側コンタクタ10と−側コンタクタ11を開放、(3)放電用断路器9を投入、の順となる。これにより、蓄電装置7への充電も蓄電装置7からの放電もない状態となる。なお、
図10中、+側コンタクタ10と−側コンタクタ11は開放状態を表している(他図における同じ表示も同様に投入状態を表す)。
【0028】
次に、接点動作確認部36が、充電用断路器連動接点16が切(S7;
図11)、+側コンタクタ10に連動する+側コンタクタ連動接点18および−側コンタクタ11に連動する−側コンタクタ連動接点19が切(S8;
図12)、放電用断路器連動接点17が入(S9;
図13)であることを確認する。いずれの条件も満たしている場合(S7〜S9でYes)、すなわち正常に切換えができている場合、S10へ移行する。なお、S2〜S5、S7〜S9のいずれかにて、Noと判定された場合、S11へ移行する。
【0029】
異常判定部37は、上記の診断項目(S2〜S5、S7〜S9)の診断結果から、「架線レス区間走行可」(S10)または「架線レス区間走行不可」(S11)と判定する(
図14)。なお、
図4に示すように、上記の全ての診断項目を満足した場合のみ、架線レス区間走行可となり、そうでない場合、架線レス区間走行不可となる。
【0030】
次いで、開閉指令部35が、充電装置6および蓄電装置7からSIV4側に電流が流れないように以下の順序で開閉指令を出し、各断路器およびコンタクタ(8〜11)の切換えを行う(S12;
図15)。このときの切換えの順序は、(1)放電用断路器9を開放、(2)+側コンタクタ10と−側コンタクタ11を投入、(3)充電用断路器8を投入の順となる。これにより、蓄電装置7は、通常走行時の充電状態となる。
【0031】
その後、車上子20が、架線レス区間の手前に設置された診断結果反映地上子41からの信号を受信すると(S13でYes;
図16)、異常判定部37により上記の診断結果(S10、S11)が反映される(S14)。すなわち、診断結果が「架線レス区間走行不可」の場合(S11)、異常判定部37から外部表示器21へ警告を表示させる信号が出され、ブレーキ制御部22へ非常ブレーキ指令が出されて、車両100は、架線区間内で停止する(
図17)。一方、診断結果が「架線レス区間走行可」の場合(S10)、「架線レス区間走行不可」の場合のように異常判定部37から外部表示器21への信号やブレーキ制御部22への非常ブレーキ指令は出されず、架線レス区間に進入し運行を続行することとなる(S14)。なお、診断結果反映地上子41は、車両100が架線レス区間に進入する前に停止可能な位置に設置される。また、車上子20が診断結果反映地上子41からの信号を受信するまでは、S13でNoとなり、車両100は、診断結果反映地上子41からの信号待ちの状態となって、その間架線区間での通常の運行を続行することとなる。
【0032】
以上で述べた第1の実施形態の車両システムによれば、架線レス区間走行時に使用する機器の健全性を架線区間走行中に診断することができるので、架線レス区間に入って初めて架線レス区間走行時に使用する機器の不具合に気付き、車両100が立ち往生してダイヤに大幅な遅れが生じる可能性を回避することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、
図18A、
図18B、
図19を参照し、その詳細を説明する。
図18Aおよび
図18Bは、第2の実施形態の車両システムの概要を示す図である。
図19は、第2の実施形態特有の回路動作を示す図である。なお、
図1〜17と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0034】
本実施形態は、異なる区間距離を有する複数の架線レス区間(例えば、
図18Aに示す架線レス区間Aおよび
図18Bに示す架線レス区間B)に対応できるようにしている点が第1の実施形態と異なっている。もちろん、異なる区間距離を有する架線レス区間の数は、図で例示する2つに限るものではない。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0035】
本実施形態では、上記のように、車両100の走行路が、異なる区間距離を有する複数の架線レス区間を有しているものとしている。そのため、本実施形態では、
図18Aおよび
図18Bに示すように、異なる区間距離を有する架線レス区間A,B用にそれぞれ、架線レス区間A用診断開始地上子42および架線レス区間A用診断結果反映地上子44と、架線レス区間B用診断開始地上子43および架線レス区間B用診断結果反映地上子45を設けている。また、車上子20への架線レス区間A用診断開始地上子42および架線レス区間B用診断開始地上子43が出力する信号は、各診断開始地上子(42,43)を識別できるようになっている。また、制御部30は、SOC判定部34が判定を行う際の基準となるSOCのデータ(SOC基準値)を、例えばテーブルとして、架線レス区間毎に有している。
【0036】
本実施形態では、車上子20は、架線レス区間A用診断開始地上子42および架線レス区間B用診断開始地上子43からの信号により、診断開始判定部31への診断開始の通知のみならず、どの架線レス区間を走行予定なのかをSOC判定部34に伝達する(
図19)。
【0037】
そして、SOC判定部34が、車上子20からの情報に基づき、次に走行予定の架線レス区間を走行可能なSOCを基準としたSOC判定を行う。
【0038】
その他の動作は、第1の実施形態の場合と同じである。
【0039】
以上で述べた本実施形態の車両システムによれば、車両100の走行路が区間距離の異なる複数の架線レス区間を有する走行路であっても、架線レス区間走行時の機器の健全性を架線区間走行中に診断することができ、架線レス区間に入って初めて架線レス区間走行時に使用する機器の不具合に気付き、車両100が立ち往生してダイヤに大幅な遅れが生じる可能性を回避することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について、
図20から
図22を参照し、その詳細を説明する。
図20は、第3の実施形態の車両システムの概要を示す図である。
図21は、本実施形態の車両システムにおける診断用回路の動作を説明するフローチャートである。
図22は、第3の実施形態に特有の回路動作を示す図である。なお、
図1〜17と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0041】
本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、診断の開始を車両100側で任意に行えるようにした点と、診断結果を反映するタイミングを示す機構が異なる点のみである。以下、その点について詳細を説明する。
【0042】
本実施形態では、診断開始のタイミングを示す診断開始地上子40、診断結果を反映するタイミングを指示する診断結果反映地上子41、地上子からの信号を受信する車上子20を省いている。その代わりに、任意のタイミングで診断を開始できるように診断開始スイッチ50を設けている(
図22)。
【0043】
本実施形態では、診断開始スイッチ50の投入状態が診断開始判定部31に伝達される(
図22)。診断開始判定部31は、診断開始スイッチ50が投入されるまで待機状態となる(S31でNoとなってS31に戻る)。その後、診断開始スイッチ50が投入されると(
図21のS31でYes)、第1の実施形態で前述した診断が開始される。診断結果は診断完了次第即座に反映される。なお、本実施形態では、診断開始地上子40、診断結果反映地上子41、および車上子20を省いているので、
図21に示すように、
図4に示したS1およびS13の処理が省かれている。
【0044】
以上で述べた本実施形態の車両システムによれば、走行時のみならず、待機中や停止中など走行時以外でも任意のタイミングで架線レス区間走行時に使用する機器の健全性を診断することができ、架線レス区間に入って初めて架線レス区間走行時に使用する機器の不具合に気付き、車両100が立ち往生してダイヤに大幅な遅れが生じる可能性を回避することができる。なお、車両100の架線区間走行時においては、診断結果が架線レス区間に進入する前に反映されるように診断を開始させるため、診断開始のタイミングを示す標識等を設置しておいて、操作者(運転者)がその標識に従って診断開始スイッチ50を投入するようにするとよい。
【0045】
以上説明したとおり、第1から第3の実施形態によれば、架線区間走行中に(架線レス区間に進入する前に)、架線レス区間走行時に使用する機器の健全性を診断し、その健全性が確認できない場合は架線レス区間を走行不可とすることで、架線レス区間で使用する機器が故障した場合のダイヤの乱れを最小限に抑えることができる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。