(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガスタービン設備が前記補助燃料を燃焼させる場合に形成される前記個別の熱交換系統は、前記第1熱交換器に前記冷却水を循環させる第1熱交換系統と、前記第2熱交換器に前記冷却水を循環させる第2熱交換系統とを含み、
前記第1熱交換系統は、前記第1熱交換器により熱交換された前記冷却水が導かれるとともに該冷却水から分離した蒸気を前記蒸気タービン設備へ供給する汽水分離器を有し、
前記循環系統部は、前記汽水分離器から前記蒸気タービン設備への蒸気の供給量に応じて、前記第2熱交換系統から前記第1熱交換系統への前記冷却水の流入量を調節する調節弁を有する請求項1または請求項2に記載のガス化複合発電設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるガス化複合発電設備においては、ガス化炉の異常やメンテナンス等の理由によりガス化炉を長期的に停止させる場合に、ガスタービン設備で補助燃料を用いた燃焼を行って複合発電を継続する。この場合、ガス化炉により可燃性ガスが生成されず、ガス冷却器により蒸気が生成されないため、排熱回収ボイラを通過する蒸気量が設計流量よりも大幅に少なくなって蒸気温度が過度に上昇してしまう。
そこで、特許文献1では、ガスタービン設備で補助燃料を用いた燃焼を行って複合発電を継続する場合に、蒸気温度が過度に上昇しないように、排熱回収ボイラを通過する蒸気が、複数の過熱器の少なくとも一つを迂回するようにしている。
【0008】
しかしながら、特許文献1では、補助燃料を用いた複合発電を行う際に、排熱回収ボイラを通過する蒸気量が設計流量よりも大幅に少なくなって燃焼排ガスからの熱回収効率が大幅に低下する。また、特許文献1では、排熱回収ボイラを通過する蒸気が過度に上昇しないように、複数の過熱器の少なくとも一つを迂回するようにしている。そのため、排熱回収ボイラによる燃焼排ガスからの熱回収効率が更に低下する。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、ガス化炉やガス精製設備が不調、又はその他の要因で長期的に停止する場合でも、ガス化炉が生成する可燃性ガスの代替となる他の補助燃料をガスタービン設備にて燃焼させて燃焼排ガスを生成し、排熱回収ボイラによる燃焼排ガスからの熱回収効率を維持することが可能なガス化複合発電設備およびその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の一態様に係るガス化複合発電設備は、酸素含有気体を用いて固体炭素質燃料をガス化反応させて可燃性ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉により生成された前記可燃性ガスと冷却水との熱交換により該冷却水から蒸気を生成するガス冷却器と、前記ガス冷却器により冷却された前記可燃性ガス、または
補助燃料供給部から供給される補助燃料を燃焼させ回転動力を得るガスタービン設備と、前記ガスタービン設備から排出される燃焼排ガスの熱量を回収して蒸気を発生させる排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラから供給される蒸気により回転動力を得る蒸気タービン設備と、前記ガスタービン設備および前記蒸気タービン設備が供給する前記回転動力により駆動される発電機と、前記排熱回収ボイラにおいて前記冷却水の熱交換をさせる循環系統部とを備え、前記排熱回収ボイラが、前記燃焼排ガスと前記冷却水との熱交換を行う第1熱交換器および第2熱交換器とを有し、前記ガスタービン設備が前記可燃性ガスを燃焼させる場合と、前記補助燃料を燃焼させる場合とに応じて、前記循環系統部は、前記冷却水が前記第1熱交換器と前記第2熱交換器と前記ガス冷却器のいずれを経由するかを切り換える。
【0011】
本発明の一態様に係るガス化複合発電設備において、ガス化炉により可燃性ガスが生成される場合、ガス冷却器により冷却された可燃性ガスは、ガスタービン設備により燃焼されて燃焼排ガスとなって排熱回収ボイラに導かれる。この場合、ガス冷却器が可燃性ガスから熱回収するとともに蒸気を発生し、発生した蒸気量に見合う給水が、排熱回収ボイラが有する第1熱交換器(第1中圧節炭器)と第2熱交換器(第2中圧節炭器)を通じてガス冷却器に供給される。燃焼排ガスと第1熱交換器(第1中圧節炭器)と第2熱交換器(第2中圧節炭器)が十分に熱交換するため、排熱回収ボイラ出口における燃焼排ガスの温度が下がり、燃焼排ガスの熱量が十分に回収される。
【0012】
一方、ガス化炉により可燃性ガスが生成されない場合、補助燃料が
補助燃料供給部からガスタービン設備に供給され、燃焼排ガスとなって排熱回収ボイラに導かれる。この場合、ガス冷却器による熱回収が無いため給水が行われず、排熱回収ボイラが有する第2熱交換器(第2中圧節炭器)を通過する給水量が少なくなり、燃焼排ガスの温度を十分に下げることができない。
【0013】
そこで、本発明の一態様に係るガス化複合発電設備において、循環系統部は、ガスタービン設備が可燃性ガスを燃焼させる場合と、補助燃料を燃焼させる場合とに応じて、冷却水が第1熱交換器と第2熱交換器とガス冷却器のいずれを経由するかを切り換えるようにした。
このようにすることで、ガスタービン設備が可燃性ガスを燃焼させる場合と、補助燃料を燃焼させる場合とに応じて、冷却水が経由する熱交換器を適切に切り換え、燃焼排ガスの温度を十分に低下させることができる。
【0014】
本発明の一態様に係るガス化複合発電設備においては、前記循環系統部が、前記ガスタービン設備が前記可燃性ガスを燃焼させる場合は前記冷却水が前記第1熱交換器と前記第2熱交換器と前記ガス冷却器とを直列に経由する直列の熱交換系統を形成し、前記ガスタービン設備が前記補助燃料を燃焼させる場合は、前記冷却水が前記ガス冷却器を経由せずに前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とをそれぞれ個別に経由する個別の熱交換系統を形成し、前記燃焼排ガスが前記排熱回収ボイラから所定の排気温度範囲で排出される構成にしてもよい。
【0015】
本構成によれば、ガスタービン設備が補助燃料を燃焼させる場合は、冷却水がガス冷却器を経由せずに第1熱交換器と第2熱交換器とをそれぞれ個別に経由する個別の熱交換系統が形成される。
このようにすることで、第1熱交換器と第2熱交換器とにより直列の熱交換系統を形成する場合に比べ、排熱回収ボイラによる燃焼排ガスからの熱回収効率を増加させることができる。
したがって、ガス化炉が生成する可燃性ガスの代替となる補助燃料をガスタービン設備にて燃焼させて燃焼排ガスを生成する場合であっても、排熱回収ボイラによる燃焼排ガスからの熱回収効率を維持することが可能なガス化複合発電設備を提供することができる。
【0016】
上記構成のガス化複合発電設備においては、前記ガスタービン設備が前記補助燃料を燃焼させる場合に形成される前記個別の熱交換系統は、前記第1熱交換器に前記冷却水を循環させる第1熱交換系統と、前記第2熱交換器に前記冷却水を循環させる第2熱交換系統とを含み、前記第1熱交換系統は、前記第1熱交換器により熱交換された前記冷却水が導かれるとともに該冷却水から分離した蒸気を前記蒸気タービン設備へ供給する汽水分離器を有し、前記循環系統部は、前記汽水分離器から前記蒸気タービン設備への蒸気の供給量に応じて、前記第2熱交換系統から前記第1熱交換系統への前記冷却水の流入量を調節する調節弁を有していてもよい。
【0017】
このようなガス化複合発電設備によれば、ガスタービン設備が補助燃料を燃焼させる場合に形成される第1熱交換系統が有する汽水分離器は、第1熱交換器により熱交換された冷却水から蒸気を分離して蒸気タービン設備へ供給する。そして、汽水分離器から蒸気タービン設備への蒸気の供給量に応じて第2熱交換系統から第1熱交換系統への冷却水の流入量が調節弁により調節される。そのため、第1熱交換系統を流通する冷却水の流量が適切に維持される。
【0018】
本発明の一態様に係るガス化複合発電設備の運転方法は、前記ガス化複合発電設備が、酸素含有気体を用いて固体炭素質燃料をガス化反応させて可燃性ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉により生成された前記可燃性ガスと冷却水との熱交換により該冷却水から蒸気を生成するガス冷却器と、前記ガス冷却器により冷却された前記可燃性ガス、または
補助燃料供給部から供給される補助燃料を燃焼させ回転動力を得るガスタービン設備と、前記ガスタービン設備から排出される燃焼排ガスの熱量を回収して蒸気を発生させる排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラから供給される蒸気により回転動力を得る蒸気タービン設備と、前記ガスタービン設備および前記蒸気タービン設備が供給する前記回転動力により駆動される発電機とを備え、前記排熱回収ボイラが、前記燃焼排ガスと前記冷却水との熱交換を行う第1熱交換器と、前記燃焼排ガスと前記冷却水との熱交換を行う第2熱交換器とを有し、前記ガスタービン設備が前記可燃性ガスを燃焼させる場合と、前記補助燃料を燃焼させる場合とに応じて、前記冷却水が前記第1熱交換器と前記第2熱交換器と前記ガス冷却器のいずれを経由するかを切り換える工程とを備える。
【0019】
本発明の一態様に係るガス化複合発電設備の運転方法において、ガス化炉により可燃性ガスが生成される場合、ガス冷却器により冷却された可燃性ガスは、ガスタービン設備により燃焼されて燃焼排ガスとなって排熱回収ボイラに導かれる。この場合、ガス冷却器が可燃性ガスから熱回収するとともに蒸気を発生し、発生した蒸気量に見合う給水が、排熱回収ボイラが有する第1熱交換器(第1中圧節炭器)と第2熱交換器(第2中圧節炭器)を通じてガス冷却器に供給される。燃焼ガスと第1熱交換器(第1中圧節炭器)と第2熱交換器(第2中圧節炭器)が十分に熱交換するため、排熱回収ボイラ出口における燃焼排ガスの温度が下がり、燃焼排ガスの熱量が十分に回収される。
【0020】
一方、ガス化炉により可燃性ガスが生成されない場合、補助燃料が
補助燃料供給部からガスタービン設備に供給され、燃焼排ガスとなって排熱回収ボイラに導かれる。この場合、ガス冷却器による熱回収が無いため給水が行われず、排熱回収ボイラが有する第2熱交換器(第2中圧節炭器)を通過する給水量が少なくなり、燃焼排ガスの温度を十分に下げることができない。
【0021】
そこで、本発明の一態様に係るガス化複合発電設備の運転方法においては、ガスタービン設備が可燃性ガスを燃焼させる場合と、補助燃料を燃焼させる場合とに応じて、冷却水が第1熱交換器と第2熱交換器とガス冷却器のいずれを経由するかを切り換えるようにした。
このようにすることで、ガスタービン設備が可燃性ガスを燃焼させる場合と、補助燃料を燃焼させる場合とに応じて、冷却水が経由する熱交換器を適切に切り換え、燃焼排ガスの温度を十分に低下させることができる。
【0022】
本発明の一態様に係るガス化複合発電設備の運転方法においては、前記切り換える工程は、前記ガスタービン設備が前記可燃性ガスを燃焼させる場合に前記冷却水が前記第1熱交換器と前記第2熱交換器と前記ガス冷却器とを直列に経由する直列の熱交換系統を形成し、前記ガスタービン設備が前記補助燃料を燃焼させる場合に、前記冷却水が前記ガス冷却器を経由せずに前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とをそれぞれ個別に経由する個別の熱交換系統を形成し、前記燃焼排ガスが前記排熱回収ボイラから所定の排気温度範囲で排出される構成にしてもよい。
【0023】
本構成によれば、ガスタービン設備が補助燃料を燃焼させる場合は、冷却水がガス冷却器を経由せずに第1熱交換器と第2熱交換器とをそれぞれ個別に経由する個別の熱交換系統が形成される。
このようにすることで、第1の熱交換器と第2の熱交換器とにより直列の熱交換系統を形成する場合に比べ、排熱回収ボイラによる燃焼排ガスからの熱回収効率を増加させることができる。
したがって、ガス化炉が生成する可燃性ガスの代替となる補助燃料をガスタービン設備にて燃焼させて燃焼排ガスを生成する場合であっても、排熱回収ボイラによる燃焼排ガスからの熱回収効率を維持することが可能なガス化複合発電設備の運転方法を提供することができる。
【0024】
上記構成のガス化複合発電設備の運転方法においては、前記個別の熱交換系統が、前記第1熱交換器に前記冷却水を循環させる第1熱交換系統と、前記第2熱交換器に前記冷却水を循環させる第2熱交換系統とを含み、前記第1熱交換系統が、前記第1熱交換器により熱交換された前記冷却水が導かれるとともに該冷却水から分離した蒸気を前記蒸気タービン設備へ供給する汽水分離器を有し、前記汽水分離器から前記蒸気タービン設備への蒸気の供給量に応じて、前記第2熱交換系統から前記第1熱交換系統への前記冷却水の流入量を調節する調節工程を有していてもよい。
【0025】
このようなガス化複合発電設備の運転方法によれば、ガスタービン設備が補助燃料を燃焼させる場合に形成される第1熱交換系統が有する汽水分離器は、第1熱交換器により熱交換された冷却水から蒸気を分離して蒸気タービン設備へ供給する。そして、汽水分離器から蒸気タービン設備への蒸気の供給量に応じて第2熱交換系統から第1熱交換系統への冷却水の流入量が調節弁により調節される。そのため、第1熱交換系統を流通する冷却水の流量が適切に維持される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ガス化炉やガス精製設備が不調、又はその他の要因で長期的に停止する場合でも、ガス化炉が生成する可燃性ガスの代替となる補助燃料をガスタービン設備にて燃焼させて燃焼排ガスを生成し、排熱回収ボイラによる燃焼排ガスからの熱回収効率を維持することが可能なガス化複合発電設備およびその運転方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態の石炭ガス化複合発電設備について、図面を用いて説明する。
図1,
図2に示すように、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備(Integrated Gasification Combined Cycle:IGCC)1は、主燃料供給部10と、ガス化炉20と、ガス冷却器30と、ガス精製設備40と、ガスタービン設備50と、補助燃料供給部(ガス供給部)60と、排熱回収ボイラ70と、蒸気タービン設備80と、発電機90と、循環系統部100と、制御装置CUとを備える。
【0029】
主燃料供給部10は、固体炭素質燃料である石炭を、石炭ミル(図示略)を用いて粉砕して微粉炭を生成し、ガス化炉20へ供給する装置である。主燃料供給部10により、生成された微粉炭は、空気分離装置(図示略)から供給される窒素ガスによって搬送されることにより、ガス化炉20へ供給される。
【0030】
ガス化炉20は、主燃料供給部10から供給される微粉炭を酸素含有気体であるガス化剤によりガス化反応させてガス化し、可燃性ガスを生成する装置である。ガス化炉20には、例えば空気吹き二段噴流床ガス化炉と呼ばれる方式の炉が採用されている。ガス化炉20は、生成した可燃性ガスをガス冷却器30に供給する。ガス化炉20は、ガス冷却器30とともにガス化炉設備を構成している。
酸素含有気体としては、酸素を含む空気や、空気分離装置(図示略)にて生成される酸素ガスが用いられる。
【0031】
ガス冷却器30は、ガス化炉20から供給される可燃性ガスと冷却水との熱交換により冷却水から蒸気を生成する熱交換器である。ガス冷却器30は、排熱回収ボイラ70の第2中圧節炭器70bから供給される冷却水と可燃性ガスとの熱交換により蒸気を生成し、生成した蒸気を高圧蒸気タービン80aへ供給する。
ガス冷却器30にて熱回収された可燃性ガスは、チャー回収装置(図示略)によりチャーが回収された後にガス精製設備40へと導かれる。
【0032】
ガス精製設備40は、チャー回収装置でチャーが分離除去された可燃性ガスを精製して硫黄分等の不純物を取り除き、ガスタービン設備50の燃料ガスとして適した性状のガスを精製する設備である。ガス精製設備40により精製された可燃性ガスは、ガスタービン設備50の燃焼器(図示略)に供給される。
【0033】
ガスタービン設備50は、燃焼器(図示略)と、圧縮機(図示略)と、ガスタービン(図示略)を備える。燃焼器は、ガス精製設備40から供給される可燃性ガスを、圧縮機により圧縮された圧縮空気を用いて燃焼させる。こうして可燃性ガスが燃焼すると、高温高圧の燃焼ガスが生成されて燃焼器からガスタービンへ供給される。この結果、高温高圧の燃焼ガスが仕事をしてガスタービンを駆動し、高温の燃焼排ガスが排出される。ガスタービンの回転軸出力は、発電機90aや圧縮機の駆動源として使用される。
【0034】
補助燃料供給部(ガス供給部)60は、主燃料供給部10から微粉炭がガス化炉20に供給されず、ガス化炉20により可燃性ガスが生成されない場合に、ガスタービン設備50に可燃性ガスである補助燃料を供給する装置である。制御装置CUは、主燃料供給部10から微粉炭がガス化炉20に供給されない場合、補助燃料供給部60から補助燃料を供給するよう補助燃料供給部60を制御する。
補助燃料としては、例えば、天然ガス等の炭化水素系ガスを用いることができる。その他、炭化水素系ガス以外にも、種々の可燃性ガスを用いることができる。
【0035】
排熱回収ボイラ70は、ガスタービン設備50から排出される高温の燃焼排ガスが保有する熱を回収して蒸気を生成する設備である。排熱回収ボイラ70は、燃焼排ガスと水との熱交換により蒸気を生成し、生成した蒸気を蒸気タービン設備80へ供給する。排熱回収ボイラ70は、水との熱交換により温度低下した燃焼排ガスを、必要な処理を施した後に煙突95から大気へ放出する。
【0036】
排熱回収ボイラ70は、ガスタービン設備50から排出される高温の燃焼排ガスと冷却水または蒸気との熱交換をするための複数の熱交換器を備えている。複数の熱交換器は、燃焼排ガスの流通方向の下流側から上流側に向かって、第1中圧節炭器70a,第2中圧節炭器70b,中圧蒸発器70c,高圧蒸発器70dの順に配置されている。
【0037】
蒸気タービン設備80は、排熱回収ボイラ70から供給される蒸気を駆動源として運転され、発電機90bが連結される回転軸を回転させる設備である。発電機90bは、回転軸の回転による回転動力を用いて発電を行う。
蒸気タービン設備80は、高圧蒸気タービン80aと、中圧蒸気タービン80bと、低圧蒸気タービン80cを備えている。
【0038】
循環系統部100は、ガス冷却器30と、排熱回収ボイラ70と、蒸気タービン設備80との間で、冷却水および冷却水が蒸発した蒸気とを循環させる各種の装置とそれら装置を接続する流路からなる系統である。
循環系統部100は、中圧給水ポンプ100aと、高圧給水ポンプ100bと、循環ポンプ100cと、調節弁100dと、切換弁100e,100f,100g,100h,100i,100jを備える。また、循環系統部100は、汽水分離器100kと逆止弁100lとを備える。
【0039】
中圧給水ポンプ100aは、低圧蒸気タービン80cで仕事をした低圧蒸気を冷却する復水器96に貯留した冷却水を給水するポンプである。
高圧給水ポンプ100bは、第2中圧節炭器70bから排出される冷却水を、中圧蒸発器70c,高圧蒸発器70d,およびガス冷却器30へ給水するポンプである。
循環ポンプ100cは、汽水分離器100kにて蒸気が分離された冷却水を第1中圧節炭器70aへ給水するポンプである。
【0040】
汽水分離器100kは、第1中圧節炭器70aにて加熱されて切換弁100gにより減圧された冷却水を、蒸気とドレン水とに分離する装置である。汽水分離器100kにより分離された蒸気は、低圧蒸気タービン80cに供給される。一方、汽水分離器100kにより分離されたドレン水は、第1中圧節炭器70aに供給される。
調節弁100dは、汽水分離器100kにより分離された蒸気に相当する量の冷却水を、第1中圧節炭器70aを循環する循環系統に供給するための弁である。
逆止弁100lは、調節弁100dの下流側に設けられており、調節弁100dに冷却水が逆流することを防止する弁である。
【0041】
切換弁100e,100f,100g,100h,100i,100jは、循環系統部100を構成する流路上に設けられ、開閉状態を切り換えることで循環系統部100に第1中圧節炭器70aと、第2中圧節炭器70bとガス冷却器30とが関連する複数の熱交換系統を形成することができる切換弁である。
【0042】
制御装置(制御部)CUは、石炭ガス化複合発電設備1の各部を制御する装置である。制御装置CUは、制御動作を実行するための制御プログラムが記憶された記憶部(図示略)から制御プログラムを読み出して実行することにより、各種の制御動作を実行する。
【0043】
以下、制御装置CUにより実行される処理について
図3のフローチャートを用いて説明する。
制御装置CUは、
図3のフローチャートに示す動作を実行することにより、ガス化炉20による可燃性ガスの生成が行われているか否かに応じて冷却水の熱交換系統を形成し、燃焼排ガスからの熱回収効率を維持する。
【0044】
ステップS301で、制御装置CUは、ガス化炉20が可燃性ガスを生成しているかどうかを判断し、YESであればステップS302に処理を進め、NOであればステップS303に処理を進める。
制御装置CUは、主燃料供給部10からガス化炉20へ主燃料である微粉炭が供給されている場合は、YESと判断する。一方、制御装置CUは、異常等により主燃料供給部10からガス化炉20への微粉炭の供給が停止している場合は、NOと判断する。
【0045】
ステップS302(第1熱交換工程)で、制御装置CUは、第1中圧節炭器70aと、第2中圧節炭器70bとガス冷却器30とにより直列の熱交換系統を形成するように、切換弁100e,100f,100g,100h,100iおよび調節弁100dの開閉状態を制御する。
制御装置CUは、切換弁100e,100g,100h,100iを閉状態(
図1中の黒色の弁)とし、切換弁100fおよび調節弁100dを開状態(
図1中の白色の弁)とするよう制御する。
【0046】
ここで、切換弁100jの開閉状態の切換は、ガス冷却器30内に設置されたドラム(図示略)の水位レベルにより制御される。ガス化炉20からガス冷却器30に供給される可燃性ガスとの熱交換によりドラム内の冷却水が蒸発して水位レベルが低下すると、水位レベルを維持するために、切換弁100jが開状態となる。ガス化炉20から供給される可燃性ガスが減少すると、水位レベルが低下しないため、切換弁100jは平状態を維持する。
【0047】
ここでは、切換弁100jの開閉状態の切換について説明したが、他の切換弁100e,100f,100g,100h,100iについては、例えば、制御装置CUが、他の切換弁に内蔵された駆動機構を制御して弁体を駆動することにより行われる。また例えば、他の切換弁に駆動機構が内蔵されていない場合、他の切換弁の開閉状態の切換は、制御装置CUが表示装置(図示略)に他の切換弁を開状態とするべきか閉状態とするべきかの指示を表示することにより行われる。後者の場合、他の切換弁の開閉状態は、表示装置の指示に応じて作業者が手動で切り換える。
【0048】
ここで、ステップS302の動作によって形成される直列の熱交換系統について
図1を用いて説明する。
図1において、中圧給水ポンプ100aにより圧送される冷却水は、調節弁100dと逆止弁100lを経由して第1中圧節炭器70aに導かれる。第1中圧節炭器70aに導かれた冷却水は、燃焼排ガスとの熱交換により加熱された後、切換弁100fを経由して第2中圧節炭器70bに導かれる。
【0049】
第2中圧節炭器70bに導かれた冷却水は、燃焼排ガスとの熱交換により加熱された後、一部が高圧給水ポンプ100bに導かれ、他の一部が中圧蒸発器70cに導かれる。中圧蒸発器70cに導かれた冷却水は、燃焼排ガスとの熱交換により加熱されて蒸気となり、中圧蒸気タービン80bへ導かれる。
【0050】
高圧給水ポンプ100bに導かれた冷却水は、一部が切換弁100jを経由してガス冷却器30へ導かれ、他の一部が高圧蒸発器70dに導かれる。高圧蒸発器70dに導かれた冷却水は、燃焼排ガスとの熱交換により加熱されて蒸気となり、高圧蒸気タービン80aへ導かれる。ガス冷却器30へ導かれた冷却水は、ガス化炉20により生成された可燃性ガスとの熱交換により加熱されて蒸気となり、その蒸気が排熱回収ボイラ70に導かれ熱交換器(図示略)により加熱された後に高圧蒸気タービン80aへ導かれる。
【0051】
高圧蒸気タービン80aへと導かれた蒸気は、高圧蒸気タービン80aで回転動力として利用される。高圧蒸気タービン80aで仕事をして温度が低下した蒸気は、排熱回収ボイラ70内で再熱された後に中圧蒸気タービン80bに導かれ、中圧蒸気タービン80bで回転動力として利用される。
【0052】
中圧蒸気タービン80bで仕事をして温度が低下した蒸気は、低圧蒸気タービン80cへ導かれて回転動力として利用される。低圧蒸気タービン80cで仕事をして温度が低下した蒸気は、復水器96により冷却されて液化し、復水器96の貯留部(図示略)に貯留する。復水器96の貯留部に貯留した水は冷却水として再び高圧給水ポンプ100bに導かれる。
【0053】
以上のように、ガス化炉20が可燃性ガスを生成している場合、制御装置CUは、第1中圧節炭器70aと、第2中圧節炭器70bとガス冷却器30とにより直列の熱交換系統を形成する。この直列の熱交換系統においては、第1中圧節炭器70aと、第2中圧節炭器70bと、ガス冷却器30とによる熱交換が行われるため、ガス冷却器30に単位時間あたりに流通する冷却水の流量は、第1中圧節炭器70aと、第2中圧節炭器70bと、ガス冷却器30とにより回収される熱量に応じた流量となる。
【0054】
一方、
図3のステップS303で制御装置CUは、ガス化炉20が可燃性ガスを生成していないことから、ガスタービン設備50に供給する燃料をガス化炉20が生成する可燃性ガスから補助燃料供給部60が供給する補助燃料に切り換える。制御部CUは、補助燃料供給部60へ制御信号を送信することにより、補助燃料供給部60からガスタービン設備50へ補助燃料が供給されるようにする。
【0055】
ステップS304(第2熱交換工程)で、制御装置CUは、第1中圧節炭器70aと、第2中圧節炭器70bとガス冷却器30とのそれぞれにより個別の熱交換系統(第1熱交換系統,第2熱交換系統)を形成するように、切換弁100e,100f,100g,100h,100iおよび調節弁100dの開閉状態を制御する。
制御装置CUは、切換弁100fを閉状態(
図2中の黒色の弁)とし、切換弁100e,100g,100h,100iを開状態(
図2中の白色の弁)とするよう制御する。なお、後述するように調整弁100dの開閉状態は、汽水分離器100kにより分離される蒸気の量に応じて、適宜に調整される。
【0056】
ここで、ステップS304の動作によって形成される個別の熱交換系統について
図2を用いて説明する。
ステップS304の動作によって形成される個別の熱交換系統の一方は、第1中圧節炭器70aに冷却水を循環させる第1熱交換系統である。個別の熱交換系統の他方は、第2中圧節炭器70bに冷却水を循環させる第2熱交換系統である。第1熱交換系統と第2熱交換系統は、それぞれ独立して冷却水を循環させる熱交換系統となっている。
【0057】
まず始めに、第1中圧節炭器70aに冷却水を循環させる第1熱交換系統について説明する。
第1熱交換系統は、循環ポンプ100cが圧送する冷却水を、切換弁100hを経由して第1中圧節炭器70aに導く。第1中圧節炭器70aに導かれた冷却水は、燃焼排ガスとの熱交換により加熱された後、切換弁100gを経由して汽水分離器100kに導かれる。切換弁100gにて減圧された冷却水は、水と蒸気とが混合した状態の冷却媒体として汽水分離器100kに導かれる。汽水分離器100kは、切換弁100gから導かれた冷却媒体から蒸気を分離し、切換弁100iを経由して低圧蒸気タービン80cへ供給する。
【0058】
一方、汽水分離器100kは、切換弁100gから導かれた冷却媒体からドレン水を分離し、循環ポンプ100cへ供給する。循環ポンプ100cは、汽水分離器100kが分離したドレン水(冷却水)を、切換弁100hを経由して第1中圧節炭器70aに再び導く。このように、冷却水は、循環ポンプ100cと切換弁100hと第1中圧節炭器70aと切換弁100gと汽水分離器100kとにより構成される第1熱交換系統を循環する。
【0059】
ここで、汽水分離器100kにより分離された蒸気は第1熱交換系統の外部である低圧蒸気タービン80cに導かれる。そのため、第1熱交換系統を流通する冷却水の流量は、分離された蒸気の量に応じた分だけ減少してしまう。そこで、本実施形態では、制御装置CUが、汽水分離器100kにより分離された蒸気の量に応じた冷却水を、第2熱交換系統から第1熱交換系統へ流入させるよう調節弁100dの開度を調節する。
【0060】
制御装置CUは、汽水分離器100kが有する液面センサが一定の液面高さを示すように、調節弁100dの開度を調節する。制御装置CUは、液面センサが検出する液面高さが目標高さより低くなった場合は調節弁100dの開度を大きくして第2熱交換系統から第1熱交換系統へ冷却水を流入させる。また、制御装置CUは、液面センサが検出する液面高さが目標高さより高くなった場合は調節弁100dを閉状態にして第2熱交換系統から第1熱交換系統へ冷却水が流入しないようにする。
【0061】
次に、第2中圧節炭器70bに冷却水を循環させる第2熱交換系統について説明する。
図2において、中圧給水ポンプ100aにより圧送される冷却水は、切換弁100eを経由して第2中圧節炭器70bに導かれる。第2中圧節炭器70bに導かれた冷却水は、燃焼排ガスとの熱交換により加熱された後、一部が高圧給水ポンプ100bに導かれ、他の一部が中圧蒸発器70cに導かれる。中圧蒸発器70cに導かれた冷却水は、燃焼排ガスとの熱交換により加熱されて蒸気となり、中圧蒸気タービン80bへ導かれる。
【0062】
高圧給水ポンプ100bに導かれた冷却水は、その全部が高圧蒸発器70dに導かれる。高圧蒸発器70dに導かれた冷却水は、燃焼排ガスとの熱交換により加熱されて蒸気となり、高圧蒸気タービン80aへ導かれる。
高圧蒸気タービン80aへと導かれた蒸気は、高圧蒸気タービン80aの回転動力として利用される。高圧蒸気タービン80aで仕事をして温度が低下した蒸気は、排熱回収ボイラ70内で再熱された後に中圧蒸気タービン80bに導かれ、中圧蒸気タービン80bで回転動力として利用される。
【0063】
このように、ステップS304の動作によって第1熱交換系統と第2熱交換系統からなる個別の熱交換系統を形成する場合、それぞれの熱交換系統において独立して冷却水が循環することとなる。特に、第1熱交換系統は、汽水分離器100kで蒸気として分離されない分の冷却水が第1中圧節炭器70aを循環して熱交換を行うこととなる。そのため、単位時間あたりに第1中圧節炭器70aを循環する冷却水の流量を増加させ、燃焼排ガスからの熱回収効率を高めることができる。
【0064】
以上説明したように、制御装置CUは、
図3のフローチャートに示す動作を実行することにより、ガス化炉20による可燃性ガスの生成が行われているか否かに応じて、冷却水の熱交換系統として、直列あるいは個別の循環系統のいずれかを形成し、排熱回収ボイラ70の熱回収効率を維持することができる。
【0065】
ここで、
図4および
図5を用いて、本実施形態の比較例の石炭ガス化複合発電設備1’について説明する。
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1は、排熱回収ボイラ70が第1中圧節炭器70aと第2中圧節炭器70bとを備える。
それに対して、比較例の石炭ガス化複合発電設備1’は、排熱回収ボイラ70’が単一の中圧節炭器70eを備える。
なお、
図4および
図5において、
図1および
図2と同一の符号を付したものは、
図1および
図2と同一のものであるため、説明を省略する。
【0066】
図4に示すように、ガス化炉20が可燃性ガスを生成しガスタービン設備50が可燃性ガスを燃焼させる場合、高圧給水ポンプ100bに導かれた冷却水は、一部が切換弁100jを介してガス冷却器30へ導かれ、他の一部が高圧蒸発器70dに導かれる。
【0067】
図4に示す状態では、ガス冷却器30で可燃性ガスと冷却水との熱交換により蒸気が発生する。そのため、ガス冷却器30には、高圧給水ポンプ100bを介して十分な給水量で冷却水が継続的に流入する。よって、中圧節炭器70e,中圧蒸発器70c,高圧蒸発器70dを流通する冷却水の給水量が十分な量となり、排熱回収ボイラ70’による熱回収効率は、高い状態に維持される。
【0068】
一方、
図5に示すように、
ガスタービン設備50が補助燃料を燃焼させる場合、高圧給水ポンプ100bに導かれた冷却水は、その全部が高圧蒸発器70dに導かれる。この場合、高圧給水ポンプ100bに導かれた冷却水は、切換弁100jを介してガス冷却器30へ導かれることがない。これは、ガス冷却器30で可燃性ガスと冷却水との熱交換が行われず、蒸気が発生しないからである。そのため、ガス冷却器30には、高圧給水ポンプ100bを介して冷却却水が殆ど流入しない。よって、中圧節炭器70e,中圧蒸発器70c,高圧蒸発器70dを流通する冷却水の給水量が十分な量とならず、排熱回収ボイラ70’による熱回収効率は、低い状態となってしまう。
【0069】
このように比較例の石炭ガス化複合発電設備1’では、
ガスタービン設備50が補助燃料を燃焼させる場合、ガス冷却器30に冷却水が殆ど流入せず、それに伴って、排熱回収ボイラ70’による熱回収効率は、低い状態となってしまう。
例えば、比較例の石炭ガス化複合発電設備1’において、ガスタービン設備50が可燃性ガスを燃焼させる場合に排熱回収ボイラ70’から排出される燃焼排ガスの温度が約120℃である場合、ガスタービン設備50が補助燃料を燃焼させる場合に排熱回収ボイラ70’から排出される燃焼排ガスの温度が約200℃となる。
【0070】
一方、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1では、
ガスタービン設備50が補助燃料を燃焼させる場合であっても、第1熱交換系統と第2熱交換系統からなる個別の熱交換系統が形成されるため、排熱回収ボイラ70による熱回収効率は、高い状態に維持される。
例えば、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1において、ガスタービン設備50が可燃性ガスを燃焼させる場合に排熱回収ボイラ70から排出される燃焼排ガスの温度が約120℃である場合、ガスタービン設備50が補助燃料を燃焼させる場合に排熱回収ボイラ70から排出される燃焼排ガスの温度も約120℃となる。
【0071】
なお、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1において、排熱回収ボイラ70から排出される燃焼排ガスの所定の排気温度範囲は、約120℃となるのが望ましい。所定の排気温度範囲は、例えば、110℃以上かつ130℃以下の範囲であってよい。より好ましくは、115℃以上かつ125℃以下の範囲である。
【0072】
このように、
ガスタービン設備50が補助燃料を燃焼させる場合について、比較例の石炭ガス化複合発電設備1’と本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1を対比すると、比較例よりも本実施形態の方が、熱回収効率が高くなる。
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1は、
ガスタービン設備50が補助燃料を燃焼させる場合に第1中圧節炭器70aにより熱回収される熱量は、汽水分離器100kにより分離される蒸気として低圧蒸気タービン80cへ供給される。
一例として、汽水分離器100kにより分離される冷却水(ドレン水)の質量流量に対する蒸気の質量流量の比が約10%となるようにした場合、
ガスタービン設備50が補助燃料を燃焼させる際の本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1の発電効率が、比較例の石炭ガス化複合発電設備1’の発電効率よりも約2%高くなる。
【0073】
次に、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1において、ガス化炉20により可燃性ガスが生成される場合、ガス冷却器30により冷却された可燃性ガスは、ガスタービン設備50により燃焼されて燃焼排ガスとなって排熱回収ボイラ70に導かれる。この場合、排熱回収ボイラ70が有する第1中圧節炭器70a(第1熱交換器)と第2中圧節炭器70b(第2熱交換器)とが燃焼排ガスから熱回収するとともに、ガス冷却器30が可燃性ガスから熱回収する。この場合、第1中圧節炭器70aと第2中圧節炭器70bとガス冷却器30とにより直列の熱交換系統が形成されるため、第1中圧節炭器70aと第2中圧節炭器70bとガス冷却器30とにより回収される熱量に応じた流量の冷却水が循環系統部100を単位時間あたりに流通することとなる。
【0074】
一方、ガス化炉20により可燃性ガスが生成されない場合、補助燃料が補助燃料供給部(ガス供給部)60からガスタービン設備50に供給され、燃焼排ガスとなって排熱回収ボイラ70に導かれる。この場合、排熱回収ボイラ70が有する第1中圧節炭器70aと第2中圧節炭器70bとが燃焼排ガスから熱回収する一方で、ガス冷却器30による熱回収は行われない。この場合、第1中圧節炭器70aと第2中圧節炭器70bとのそれぞれにより個別の熱交換系統が形成される。そのため、循環系統部100を単位時間あたりに流通する冷却水の流量は、第1中圧節炭器70aを形成する第1熱交換系統を単位時間あたりに流通する冷却水の流量と第2中圧節炭器70bを形成する第2熱交換系統を単位時間あたりに流通する冷却水の流量とを合算した流量となる。
【0075】
そのため、第1中圧節炭器70aと第2中圧節炭器70bとにより直列の熱交換系統を形成する場合に比べ、循環系統部100を単位時間あたりに流通する冷却水の流量が増加する。これにより、直列の熱交換系統を形成する場合に比べ、排熱回収ボイラ70による燃焼排ガスからの熱回収効率を増加させることができる。
したがって、ガス化炉20が生成する可燃性ガスの代替となる補助燃料をガスタービン設備50にて燃焼させて燃焼排ガスを生成する場合であっても、排熱回収ボイラ70による燃焼排ガスからの熱回収効率を維持することが可能な石炭ガス化複合発電設備1を提供することができる。
【0076】
また、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1によれば、ガスタービン設備50が補助燃料を燃焼させる場合に循環系統部100が形成する第1熱交換系統が有する汽水分離器100kは、第1中圧節炭器70aにより熱交換された冷却水から蒸気を分離して蒸気タービン設備80へ供給する。そして、汽水分離器100kから蒸気タービン設備80への蒸気の供給量に応じて第2熱交換系統から第1熱交換系統への冷却水の流入量が調節弁100dにより調節される。そのため、第1熱交換系統を流通する冷却水の流量が適切に維持される。
【0077】
〔他の実施形態〕
以上の説明においては、可燃性ガスを生成するための設備として、粉砕された石炭(微粉炭)をガス化するガス化炉20を用いる例を示したが、他の態様であってもよい。
例えば、可燃性ガスを生成するための設備として、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ等のバイオマス燃料など、他の固体炭素質燃料をガス化するガス化炉設備を用いるようにしてもよい。
【0078】
以上の説明においては、ガスタービン設備50と蒸気タービン設備80とが、それぞれに専用に設けられた発電機90a,90bに駆動力を与えるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、ガスタービン設備50と蒸気タービン設備80とが、単一の発電機90に駆動力を与える態様であってもよい。