(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6433721
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】洗濯機及び乾燥機用の蓋ロック装置
(51)【国際特許分類】
D06F 37/42 20060101AFI20181126BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20181126BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20181126BHJP
E05B 65/00 20060101ALN20181126BHJP
【FI】
D06F37/42 Z
E05B47/00 J
F16H25/20 B
!E05B65/00 N
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-169833(P2014-169833)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-43070(P2016-43070A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 勝彦
【審査官】
大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0288346(US,A1)
【文献】
特開平09−217532(JP,A)
【文献】
特開平07−113410(JP,A)
【文献】
特開2009−144448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/42
E05B 47/00
F16H 25/20
E05B 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体の開口部を開閉する蓋が設けられた洗濯機及び乾燥機において前記蓋の開閉を規制する蓋ロック装置であって、
前記機器本体および前記蓋のうちの一方側には、他方側に先端部が係合可能なロック軸と、該ロック軸を係合位置と係合の解除位置との間で進退させる駆動部と、が設けられ、
前記駆動部は、モータと、該モータの回転を前記ロック軸の直動に変換する送りねじ機構と、を備え、
前記送りねじ機構において、ねじ軸に係合するナット部材は、少なくとも、第1部材と、前記ねじ軸の軸線に対して交差する方向で当該ねじ軸を前記第1部材との間に挟む第2部材と、を有していることを特徴とする洗濯機及び乾燥機用の蓋ロック装置。
【請求項2】
前記ねじ軸および前記ナット部材のうち、前記ねじ軸に前記モータの回転が伝達されることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機及び乾燥機用の蓋ロック装置。
【請求項3】
前記ねじ軸は、前記モータのロータに直結されていることを特徴とする請求項2に記載の洗濯機及び乾燥機用の蓋ロック装置。
【請求項4】
前記モータの本体部の出力側端面に固定された第1板部、前記第1板部に対して前記モータの出力側で対向する第2板部、および前記第1板部と前記第2板部とを繋ぐ第3板部を備えたフレームを備え、
前記ねじ軸の先端は、前記第2板部に回転可能に支持されていることを特徴とする請求項2または3に記載の洗濯機及び乾燥機用の蓋ロック装置。
【請求項5】
前記第1部材は、前記ロック軸が一体に形成されたロック部材として構成されていることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の洗濯機及び乾燥機用の蓋ロック装置。
【請求項6】
前記第1部材と前記第2部材とは、フック機構によって結合されていることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載の洗濯機及び乾燥機用の蓋ロック装置。
【請求項7】
前記ロック軸の前記先端部は、前記蓋が閉方向に移動した際、前記他方側が接近してく
る側に向く面が傾斜面になっており、
前記傾斜面と前記他方側が当接した際、前記ロック軸は、前記他方側に押圧されて当該他方側と係合する位置から後退することを特徴とする請求項2乃至6の何れか一項に記載の洗濯機及び乾燥機用の蓋ロック装置。
【請求項8】
前記ねじ軸のリード角は、前記ねじ軸と前記ナット部材との摩擦角より大であることを特徴とする請求項7に記載の洗濯機及び乾燥機用の蓋ロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体を閉状態でロックするための蓋ロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯機や乾燥機の開口部等を開閉する蓋を備えた装置では、運転中に蓋が開いてしまうのを防止するために、閉状態の蓋をロックする蓋ロック装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のロック装置では、モータによって偏芯ピンを駆動し、偏芯ピンとバネによってスライダを進退させることによって、係合穴との係合や係合の解除を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−144448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、偏芯ピンを設けたカムギアやスライダが占有するスペースが大きいため、蓋ロック装置を小型化しにくいという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、小型化に適した蓋ロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、機器本体の開口部を開閉する蓋が設けられた
洗濯機及び乾燥機において前記蓋の開閉を規制する蓋ロック装置であって、前記機器本体および前記蓋のうちの一方側には、他方側に先端部が係合可能なロック軸と、該ロック軸を係合位置と係合の解除位置との間で進退させる駆動部と、が設けられ、前記駆動部は、モータと、該モータの回転を前記ロック軸の直動に変換する送りねじ機構と、を備え、前記送りねじ機構において、ねじ軸に係合するナット部材は、少なくとも、第1部材と、前記ねじ軸の軸線に対して交差する方向で当該ねじ軸を前記第1部材との間に挟む第2部材と、を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明では、モータの回転をロック軸の進退動作に変換するのに送りねじ機構が用いられており、送りねじ機構は占有するスペースが狭い。それ故、蓋ロック装置の小型化を図ることができる。また、ねじ軸に係合するナット部材は、複数の部材(第1部材および第2部材)によって構成されているので、ねじ軸を設置し終えてから、ねじ軸の周りに第1部材および第2部材を配置してナット部材を構成することができる。このため、組み立てが容易である。しかも、ねじ軸を設置し終えてからねじ軸の一方端からナット部材を嵌める必要がないので、ねじ軸の一方端にナット部材をねじ軸に嵌めるためのスペース等を確保する必要がない。それ故、蓋ロック装置の小型化を図ることができる。
【0008】
本発明において、前記ねじ軸および前記ナット部材のうち、前記ねじ軸に前記モータの回転が伝達される構成を採用することができる。
【0009】
本発明において、前記ねじ軸は、前記モータのロータに直結されている構成を採用することができる。本発明において「ねじ軸がロータに直結されている」とは、ロータから延在するモータ軸自身がねじ軸になっている構成を含む他、ロータから延在するモータ軸に
ねじ軸が連結されている構成のいずれをも含む意味である。かかる構成よれば、ロータの回転を直接、ねじ軸に出力するため、モータからの出力をねじ軸に伝達する伝達部材を配置する必要がない。
【0010】
本発明は、前記モータの本体部に出力側端面に固定された第1板部、前記第1板部に対して前記モータの出力側で対向する第2板部、および前記第1板部と前記第2板部とを繋ぐ第3板部を備えたフレームを備え、前記ねじ軸の先端は、前記第2板部に回転可能に支持されている場合に適用すると特に効果的である。フレームの第2板部にねじ軸の先端が回転可能に支持されている構成であれば、モータ、ねじ軸およびフレームを一体に搭載することができ、組み立ての際の作業性がよい。この場合、モータ、ねじ軸およびフレームを配置した後、ねじ軸にナット部材を通すことができないが、ねじ軸が複数の部材(第1部材および第2部材)で構成されているので、モータ、ねじ軸およびフレームを配置した後、ねじ軸の周りに第1部材および第2部材を配置すれば、ねじ軸にナット部材を通した構成を実現することができる。
【0011】
本発明において、前記第1部材は、前記ロック軸が一体に形成されたロック部材として構成されていることが好ましい。かかる構成によれば、ロック軸と第1部材とを別体とした場合に比して部材の数を減らすことができる。従って、蓋ロック装置の小型化を図ることができる。
【0012】
本発明において、前記第1部材と前記第2部材とは、フック機構によって結合されていることが好ましい。かかる構成によれば、ねじ軸の周りに第1部材および第2部材を配置した後、第1部材と第2部材とを結合させるのが容易である。
【0013】
本発明において、前記ロック軸の前記先端部は、前記蓋が閉方向に移動した際、前記他方側が接近してくる側に向く面が傾斜面になっており、前記傾斜面と前記他方側が当接した際、前記ロック軸は、前記他方側に押圧されて当該他方側と係合する位置から後退することが好ましい。かかる構成によれば、蓋がない状態でロック軸が係合位置まで前進し、この状態で、蓋が閉方向に移動してきても、蓋が傾斜面に当接した際、ロック軸が後退する。従って、ロック軸と蓋との干渉によって、ロック軸や蓋が損傷することを防止することができる。
【0014】
本発明において、前記ねじ軸のリード角は、前記ねじ軸と前記ナット部材との摩擦角より大である構成を採用することができる。かかる構成によれば、蓋が傾斜面に当接した際、ロック軸が後退するという形態を簡素な構成で実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、モータの回転をロック軸の進退動作に変換するのに送りねじ機構が用いられており、送りねじ機構は占有するスペースが狭い。それ故、蓋ロック装置の小型化を図ることができる。また、ねじ軸に係合するナット部材は、複数の部材(第1部材および第2部材)によって構成されているので、ねじ軸を設置し終えてから、ねじ軸の周りに第1部材および第2部材を配置してナット部材を構成することができるため、組み立てが容易である。しかも、ねじ軸を設置し終えてからねじ軸の一方端からナット部材を嵌める必要がないので、ねじ軸の一方端にナット部材をねじ軸に嵌めるためのスペース等を確保する必要がない。それ故、蓋ロック装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用した蓋ロック装置の斜視図である。
【
図2】本発明を適用した蓋ロック装置の内部構成を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明を適用した蓋ロック装置の駆動部等の説明図である。
【
図4】本発明を適用した蓋ロック装置の送りねじ機構の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した蓋ロック装置の一実施形態について説明する。なお、以下の説明では、ロック軸21が開口部70に係合する際にロック軸21が移動する側を前側とし、ロック軸21が開口部70との係合を解除する際にロック軸21が移動する側を後側として説明する。
【0018】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した蓋ロック装置10の斜視図であり、
図1(a)、(b)は、ロック軸21が後退している様子を示す斜視図、およびロック軸21が前進している様子を示す斜視図である。
【0019】
図1に示す蓋ロック装置10は、例えば、洗濯機1において、運転中に蓋7が開いてしまうのを防止するための装置である。かかる蓋ロック装置10は、機器本体2(洗濯機本体)および蓋7の一方側に設けられ、他方側に形成された開口部にロック軸21が進入してロック状態となる。本形態では、蓋ロック装置10が機器本体2に設けられており、蓋7の係合板71に形成された開口部70にロック軸21の先端部24が進入してロック状態となる。
【0020】
本形態において、蓋ロック装置10は、概ね、ケース90と、ケース90から一部が突出したロック軸21と、ロック軸21を係合位置と係合の解除位置との間で進退させる駆動部30と、ロック軸21の位置を検出する検出部80とから構成されている。ケース90は、上方に開口する矩形箱状の第1ケース部材91と、第1ケース部材91の上方に重なる第2ケース部材92とからなり、ケース90の前面には、ロック軸21を前方に突出させる窓(図示せず)が形成されている。
【0021】
(駆動部30の構成)
図2は、本発明を適用した蓋ロック装置10の内部構成を示す分解斜視図である。
図3は、本発明を適用した蓋ロック装置10の駆動部30等の説明図であり、
図3(a)、(b)は、駆動部30等の斜視図、および駆動部30等の分解斜視図である。
【0022】
図2および
図3に示すように、駆動部30は、ステッピングモータからなるモータ31と、モータ31の回転をロック軸21の直動に変換する送りねじ機構40とを備えており、モータ31は、出力側を前側に向けている。送りねじ機構40は、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸41と、ねじ軸41に係合するナット部材50とを有している。本形態においては、モータ31の回転がねじ軸41に伝達される結果、ナット部材50がねじ軸41に従動する構成になっている。ねじ軸41は、モータ31のロータ(図示せず)に直結されており、ロータの回転が直接、ねじ軸41に伝達される。より具体的には、モータ31においてロータから延在するモータ軸自身がねじ軸41になっている。なお、モータ31においてロータから延在するモータ軸にねじ軸41が連結されている構成を採用してもよい。
【0023】
モータ31において、モータ本体部32の側面の上側には端子台34が形成されている。一方、第1ケース部材91の後板部914にはコネクタ38が保持されている。端子台34の端子34aとコネクタ38とは配線基板39によって電気的に接続されている。
【0024】
モータ31には金属製のフレーム60が固定されている。フレーム60は、モータ31のモータ本体部32の出力側端面33に固定された第1板部61と、第1板部61に対してモータ31の出力側(前側)で対向する第2板部62と、第1板部61の下端部と第2
板部62の下端部とを繋ぐ第3板部63とを備えている。第3板部63は、第1ケース部材91の底板部910に固定され、第2板部62は、第1ケース部材91の前板部911に固定されている。第2板部62には、円筒状の軸受66が固定されており、軸受66は、球体67を介してねじ軸41の先端部を回転可能に支持している。
【0025】
(ナット部材50およびロック部材20の構成)
図4は、本発明を適用した蓋ロック装置10の送りねじ機構40の分解斜視図であり、
図4(a)、(b)は、送りねじ機構40を下方の斜め後方からみた分解斜視図、および送りねじ機構40を上方の斜め後方からみた分解斜視図である。
【0026】
図2、
図3および
図4に示すように、ナット部材50は、ねじ軸41に対して一方側から被さる第1部材51と、ねじ軸41を第1部材51との間に挟む第2部材52とを有しており、第1部材51と第2部材52とは結合されている。本形態において、第1部材51は、ねじ軸41の軸線Lに対して上下方向の一方側(上側)から被さっており、第2部材52は、ねじ軸41の軸線Lに対して交差する上下方向の他方側(下側)からねじ軸41に被さっている。従って、ねじ軸41を配置した後、ねじ軸41とフレーム60の第3板部63との間に第2部材52を差し込んだ後、ねじ軸41を介して第2部材52に第1部材51を重ねて、第1部材51と第2部材52とを結合させれば、ナット部材50を構成することができる。本形態において、第1部材51および第2部材52はいずれも、樹脂製である。
【0027】
本形態において、第1部材51は、ロック軸21が一体に形成されたロック部材20として構成されている。より具体的には、第1部材51(ロック部材20)は、第2部材52と結合されたときに第2部材52と重なる基部510と、基部510から前方に延在してロック軸21に到る延在部513とを有しており、ロック軸21は、延在部513から下方に突出するように構成されている。基部510の下面には、ねじ軸41の軸線L方向の全体にわたって断面半円形の溝状の第1凹部511が形成されており、第1凹部511の内周面には、ねじ軸41の螺旋溝(図示せず)に係合する螺旋状あるいはピン状の凸部(図示せず)が形成されている。本形態において、ねじ軸41のリード角(ねじ面の傾斜角)は、ねじ軸41とナット部材50との摩擦角より大に設定されている。摩擦角とは、斜面上の物体が摩擦による静止を振り切って滑り出す時の最小化角度である。なお、第1部材51において、基部510の上面には、軸線L方向に延在する溝59が形成されている。
【0028】
第2部材52は、第1部材51の基部510と重なるサイズであり、上面には、ねじ軸41の軸線L方向の全体にわたって断面半円形の溝状の第2凹部521が形成されている。第2凹部521の内周面には、ねじ軸41の螺旋溝(図示せず)に係合する螺旋状あるいはピン状の凸部(図示せず)が形成されている。従って、第1部材51と第2部材52とを重ねて結合させると、第1凹部511と第2凹部521とが重なって、ねじ軸41が貫通する貫通穴55が形成され、貫通穴55の凸部(第1凹部511の凸部および第2凹部521の凸部)は、ねじ軸41の螺旋溝(図示せず)に係合する。ここで、ねじ軸41に係合する凸部は、第1凹部511および第2凹部521の一方のみに形成されていてもよい。
【0029】
第1部材51と第2部材52とを結合させるにあたっては、フック機構を利用している。より具体的には、第1部材51には、第2部材52に向けて突出した第1フック516が形成されており、第2部材52の側面には、第1フック516の先端部が引っ掛かる第1段部526が形成されている。また、第2部材52において、第1段部526が形成されている側とは反対側には、第1部材51に向けて突出した第2フック527が形成されており、第1部材51の側面には、第2フック527の先端部が引っ掛かる第2段部51
7が形成されている。
【0030】
また、第1部材51には、第2部材52に向けて突出した第1突起518が形成されており、第2部材52には、第1突起518が嵌る第1穴529が形成されている。また、第2部材52には、第1部材51に向けて突出した第2突起528が形成されており、第1部材51には、第2突起528が嵌る第2穴519が形成されている。
【0031】
従って、ねじ軸41を上下から挟むように第1部材51と第2部材52とを重ねると、第1突起518が第1穴529に嵌り、第2突起528が第2穴519に嵌ることによって、第1部材51と第2部材52との位置決めが行われる。また、第1フック516が第1段部526に係合し、第2フック527が第2段部517に係合することにより、第1部材51と第2部材52とが結合される。この状態で、第2部材52の下面525は、フレーム60の第3板部63に重なって、ナット部材50を送り駆動する際、ナット部材50の供回りを防止する。
【0032】
このように構成したロック部材20において、ロック軸21の先端部24は、蓋7が閉方向に移動した際、蓋7が接近してくる側に向く上面が傾斜面25になっている。このため、傾斜面25に蓋7の係合板71が当接した際、ロック軸21は、蓋7の係合板71に押圧されて蓋7と係合する位置から後退する。
【0033】
(検出部80の構成)
図1および
図2に示すように、駆動部30の側方には、板状の2枚のスイッチ片(第1スイッチ片81および第2スイッチ片82)を備えた検出部80が構成されている。本形態において、第1スイッチ片81は固定片であり、第2スイッチ片82は、ナット部材50の移動に連動して先端側が変位する可動片である。より具体的には、ナット部材50(ロック部材20)の第1部材51において、第2スイッチ片82に対向する側面には、第2スイッチ片82に向けて突出した凸部515が形成されており、第2スイッチ片82には、第1部材51に向けて突出するように折り曲げられた凸部825が形成されている。
【0034】
従って、
図1(a)に示すように、ロック部材20が後退した状態では、第1部材51の凸部515と第2スイッチ片82の凸部825とがずれているため、第2スイッチ片82は、第1スイッチ片81から離間している。これに対して、
図1(b)に示すように、ロック部材20が前進すると、第1部材51の凸部515が第2スイッチ片82の凸部825を押圧するので、第2スイッチ片82が第1スイッチ片81の側に変位する。その結果、第2スイッチ片82の接点820が第1スイッチ片81に接する。それ故、検出部80では、ロック部材20が前進して、ロック軸21が蓋7の開口部70と係合する位置に移動したことを検出することができる。
【0035】
第1スイッチ片81の基端部には、幅広の接続部816が形成されており、かかる接続部816は、配線基板39に接続されている。また、第2スイッチ片82の基端部には、幅広の接続部826が形成されており、かかる接続部826は、配線基板39に接続されている。従って、検出部80での検出結果は、配線基板39およびコネクタ38を介して外部から監視することができる。
【0036】
(動作)
本形態では、
図1(a)に示す状態から
図1(b)に示すように、蓋7が閉位置に到達すると、モータ31に給電され、ねじ軸41が一方方向に回転する。このため、ロック部材20が前進し、ロック軸21の先端部24が蓋7の係合板71の開口部70に進入する。従って、蓋7を手動で開けようとしても、蓋7は開かない。かかるロック部材20の前進は、モータ31に供給される駆動パルスの数によって制御される。また、ロック部材2
0の前進に伴って、第1スイッチ片81と第2スイッチ片82とが接触するため、ロック部材20が前進したこと(ロック軸21が蓋7と係合したこと)を検出することができる。従って、洗濯機1では、検出部80での検出結果に基づいて、洗濯槽や乾燥機の回転が開始する。
【0037】
この状態で洗濯や乾燥が終了すると、再びモータ31に給電され、ねじ軸41が他方方向に回転する。このため、ロック部材20が後退し、ロック軸21と蓋7との係合が解除される。従って、蓋7を手動で開けて、洗濯物を取り出すことができる。かかるロック部材20の後退も、前進時と同様、モータ31に供給される駆動パルスの数によって制御される。従って、ねじ軸41に形成された螺旋溝の端部でのナット部材50の食い込みを防止することができる。
【0038】
また、誤操作が行われて、蓋7が閉状態にないにもかかわらず、ロック部材20が前進した状態になったときに蓋7を閉めようとすると、ロック軸21の傾斜面25に蓋7の係合板71が当接する。その結果、ロック軸21には後退しようとする力が加わり、ロック部材20は、ねじ軸41を回転させながら後退する。このため、ロック軸21に過大な力が加わらないので、ロック軸21や係合板71の破損を防止することができる。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の蓋ロック装置10では、モータ31の回転をロック軸21の進退動作に変換するのに送りねじ機構40が用いられており、送りねじ機構40であれば、占有するスペースが狭い。それ故、蓋ロック装置10の小型化を図ることができる。
【0040】
また、送りねじ機構40において、ねじ軸41に係合するナット部材50は、複数の部材(第1部材51および第2部材52)によって構成されているので、ねじ軸41を設置し終えてから、ねじ軸41の周りに第1部材51および第2部材52を配置してナット部材50を構成することができる。このため、送りねじ機構40の組み立てが容易である。しかも、ねじ軸41を設置し終えてからねじ軸41の一方端からナット部材50を嵌める必要がないので、ねじ軸41の一方端にナット部材50をねじ軸41に嵌めるためのスペース等を確保する必要がない。それ故、蓋ロック装置10の小型化を図ることができる。
【0041】
特に本形態では、フレーム60の第2板部62にねじ軸41の先端が回転可能に支持されているため、モータ31、ねじ軸41およびフレーム60を一体に搭載することができ、組み立ての際の作業性がよい。この場合、モータ31、ねじ軸41およびフレーム60を配置した後、ねじ軸41にナット部材50を通すことができないが、ねじ軸41が複数の部材(第1部材51および第2部材52)で構成されているので、モータ31、ねじ軸41およびフレーム60を配置した後、ねじ軸41の周りに第1部材51および第2部材52を配置することにより、ねじ軸41にナット部材50を通した構成とすることができる。
【0042】
また、モータ31の回転がねじ軸41に伝達される構成を採用するにあたって、ねじ軸41は、モータ31のロータに直結されている。このため、ロータの回転を直接、ねじ軸41に出力するため、モータ31からの出力をねじ軸41に伝達する伝達部材を配置する必要がない。それ故、蓋ロック装置10の小型化を図ることができる。
【0043】
また、ナット部材50を構成する第1部材51は、ロック軸21が一体に形成されたロック部材20として構成されている。このため、ロック軸21と第1部材51とを別体とした場合に比して部材の数を減らすことができる。従って、蓋ロック装置10の小型化を図ることができる。
【0044】
また、ナット部材50において、第1部材51と第2部材52とは、第1フック516および第2フック527を用いたフック機構によって結合されている。このため、ねじ軸41の周りに第1部材51および第2部材52を配置した後、第1部材51と第2部材52とを結合させるのが容易である。
【0045】
また、ロック軸21の先端部24が傾斜面25になっているため、蓋7がない状態でロック軸21が係合位置まで前進し、この状態で、蓋7が閉方向に移動してきても、蓋7が傾斜面25に当接した際、ロック軸21が後退する。従って、ロック軸21と蓋7との干渉によって、ロック軸21や蓋7が損傷することを防止することができる。また、ねじ軸41のリード角は、ねじ軸41とナット部材50との摩擦角より大であるため、蓋7が傾斜面25に当接した際、ロック軸21が後退するという形態を簡素な構成で実現することができる。
【0046】
(他の実施形態)
上記実施の形態では、ねじ軸41がモータ31のロータに直結されている構成であったが、モータ31からの出力が伝達部材を介してねじ軸41に伝達される構成を採用してもよい。
【0047】
上記実施の形態では、ナット部材50を構成する第1部材51が、ロック軸21が一体に形成されたロック部材20として構成されていたが、第1部材51とロック軸21とが別体になっている構成を採用してもよい。
【0048】
上記実施の形態では、ナット部材50の供回りをフレーム60の第3板部63で阻止していたが、ケース90によって、ナット部材50の供回りを防止してもよい。
【0049】
上記実施の形態では、ナット部材50がねじ軸41に対する従動部材として構成されていたが、ねじ軸がナット部材に対する従動部材として構成されていてもよい。この場合、モータ31の回転は、ナット部材50に伝達され、ねじ軸は、ナット部材50に従動してロック軸21を進退させることになる。
【0050】
上記実施の形態では、ナット部材50が2つの部材(第1部材51および第2部材52)によって構成されていたが、3つ以上の部材によって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1・・洗濯機、2・・機器本体、7・・蓋、10・・蓋ロック装置、20・・ロック部材、21・・ロック軸、24・・ロック軸の先端部、25・・傾斜面、30・・駆動部、31・・モータ、32・・モータ本体部、40・・送りねじ機構、41・・ねじ軸、50・・ナット部材、51・・第1部材、52・・第2部材、60・・フレーム、61・・第1板部、62・・第2板部、63・・第3板部、70・・開口部、80・・検出部、90・・ケース、516・・第1フック、527・・第2フック