(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6433760
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20181126BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C11/03 100C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-222863(P2014-222863)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-88198(P2016-88198A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】細見 和正
【審査官】
岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−122904(JP,A)
【文献】
特開2011−057141(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0061780(US,A1)
【文献】
特開2011−225106(JP,A)
【文献】
特開昭62−103205(JP,A)
【文献】
米国特許第04905748(US,A)
【文献】
国際公開第2014/129647(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0009141(US,A1)
【文献】
特開2005−263180(JP,A)
【文献】
特開2013−189121(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0240101(US,A1)
【文献】
特開2014−118123(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0166169(US,A1)
【文献】
特開2012−091735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00,11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる3つ以上の主溝と、タイヤ幅方向に隣接する前記主溝の間に区画された複数の陸部と、をトレッド部に備える空気入りタイヤにおいて、
複数の前記陸部は、接地面の幅方向断面が円弧状をなしており、タイヤ幅方向に隣接する前記主溝で挟まれた領域の接地面における面積Aに対する当該領域に位置する前記陸部に設けられた凹部の開口面積aにより定まるボイド比(a/A)が大きい前記陸部ほど、接地面の幅方向断面が曲率半径の小さい円弧形状をなし、基準輪郭線から接地面の頂点までの膨出量が大きく設定されている空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記主溝は、一対のセンター主溝と、一対の前記センター主溝のタイヤ幅方向外側に設けられた一対のショルダー主溝を備え、
前記陸部は、一対の前記センター主溝の間に区画された中央陸部と、前記ショルダー主溝と前記センター主溝との間に区画された一対の中間陸部とを備え、
前記中央陸部は、一対の前記中間陸部よりボイド比が小さく、接地面の幅方向断面が、前記中間陸部より曲率半径の大きい円弧形状をなしている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤでは、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数の主溝が設けられ、主溝により区画された複数の陸部に横溝やサイプが設けられたトレッドパターンを持つタイヤが知られている。このようなトレッドパターンを持つタイヤでは、通常、複数の陸部に横溝やサイプが一様に配置されていないため、複数ある陸部ごとに接地圧が不均一になって接地性が悪化したり偏摩耗が発生したりする。
【0003】
ところで、特許文献1には、接地形状を改良することによりコーナリング時の操縦安定性を向上するために、主溝間に形成されるリブの接地面を、ショルダーリブの接地面を通る外輪郭線に対してタイヤ径方向外方に膨出させ、各リブの膨出頂点を各リブの中心線に対して車両装着時内側にずらして配置することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、トレッド部のタイヤ幅方向全体での接地性を改善し操縦安定性を向上するために、中央陸部と中間陸部の接地面をトレッド部の基準輪郭線に対してそれぞれタイヤ径方向外方に所定量膨出させるとともに、中間陸部よりも中央陸部で膨出量が大きくなるように形成することが開示されている。
【0005】
このように特許文献1には、複数の陸部の接地面を膨出させた上で、その膨出頂点を陸部の幅方向中心からずらした位置に設定することが開示され、また、特許文献2には、トレッド部に設けた複数の陸部において、接地面を異なる膨出量で膨出させることが開示されている。しかしながら、これらの文献では、ブロックの接地面を膨出するにあたって陸部に設けられた横溝やサイプによって生じる接地圧の不均一化について考慮されておらず、接地性の悪化や偏摩耗の発生を抑制することができない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−263180号公報
【特許文献2】特開2013−189121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、タイヤ周方向に延びる主溝の間に区画された複数の陸部が設けられたトレッド部を備える空気入りタイヤにおいて、陸部に設けられた横溝やサイプにより生じる接地圧の不均一化を抑え、接地性を改善し偏摩耗の発生を抑制することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、タイヤ幅方向に隣接する前記主溝の間に区画された複数の陸部と、をトレッド部に備える空気入りタイヤにおいて、複数の前記陸部は、接地面の幅方向断面が円弧状をなしており、タイヤ幅方向に隣接する前記主溝で挟まれた領域の接地面における面積Aに対する当該領域に位置する陸部に設けられた凹部の開口面積aにより定まるボイド比(a/A)が大きい前記陸部ほど、接地面の幅方向断面が曲率半径の小さい円弧形状をなし
、基準輪郭線から接地面の頂点までの膨出量が大きく設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トレッド部に設けられた3つ以上の陸部が、タイヤ幅方向に隣接する主溝で挟まれた領域の接地面における面積Aに対する当該領域に位置する陸部の接地面の面積aにより定まるボイド比(a/A)が大きい陸部ほど、接地面の幅方向断面が曲率半径の小さい円弧形状をなしている。これにより、ボイド比が大きく剛性の低い陸部ほど接地面の曲率半径を小さく設定し接地面をトレッド部の基準輪郭線に対してタイヤ径方向外方に大きく膨出させて剛性を高めることができるため、複数の陸部の剛性バランスをとって接地圧の均一化を図り、偏摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る空気入りタイヤの半断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
【
図3】
図1の一部を拡大したトレッド部の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部10周りを示すタイヤ幅方向W(子午線方向)に沿った半断面図であり、
図2は、そのトレッド部10の平面図である。
【0013】
この空気入りタイヤは、左右一対のビード部1と、左右のビード部1の各々からタイヤ径方向外側Koへ延びる左右一対のサイドウォール部2と、左右のサイドウォール部2の各々の外周端に連なるトレッド部10と、一対のビード部1の間に架け渡されるように配設されたカーカス3とを備えたラジアルタイヤである。
【0014】
ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、ビードコア1aのタイヤ径方向外側Koに位置する断面三角形状のビードフィラー1bとが埋設されている。
【0015】
カーカス3は、ビードコア1a及びビードフィラー1bを挟み込むように巻き上げられ、その端部がビードコア1a及びビードフィラー1bに係止されている。カーカス3の内側には、空気圧を保持するためのインナーライナー4が配設されている。
【0016】
トレッド部10におけるカーカス3の外周側には、2層以上のゴム被覆スチールコード層からなるベルト5が設けられている。このベルト5はカーカス3の外周でトレッド部10を補強する。
【0017】
トレッド部10の表面には、
図2に示すように、タイヤ周方向Cに沿って延びる4本の主溝12が設けられている。具体的には、主溝12は、タイヤ赤道面CLを挟んで両側に配された一対のセンター主溝12Aと、一対のセンター主溝12Aのタイヤ幅方向外側Woに設けられた一対のショルダー主溝12Bとから構成されている。タイヤ幅方向外側Woとは、タイヤ幅方向Wにおいてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。Eはトレッド接地端を示す。
【0018】
上記の4本の主溝12により、トレッド部10には、2本のセンター主溝12Aの間に中央陸部14が形成され、センター主溝12Aとショルダー主溝12Bとの間に中間陸部16が形成され、2本のショルダー主溝12Bのタイヤ幅方向外側Woにショルダー陸部18が形成されている。
【0019】
図1に示すように、各陸部14,16,18には、横溝20がタイヤ周方向Cに間隔をおいて設けられている。横溝20は、タイヤ周方向Cに対して交差する方向に延びる溝である。
【0020】
この例では、中央陸部14のタイヤ幅方向両側には、センター主溝12Aに開口し、中央陸部14のタイヤ幅方向Wの中央部で終端する横溝20aが設けられ、中間陸部16には、ショルダー主溝12Bに開口し、中間陸部16内で終端する横溝20bが設けられている。中央陸部14に設けられた横溝20aと中間陸部16に設けられた横溝20bはタイヤ幅方向Wに対して略同一方向に傾斜し、互いに略平行に設けられている。ショルダー陸部18に設けられた横溝20cは、トレッド接地端Eよりもタイヤ幅方向内側Wiから当該接地端Eを越えて、タイヤ幅方向外側Woに延びる溝である。この横溝20cは、トレッド側縁に開口し、ショルダー主溝12Bに開口しないように、ショルダー陸部18内で終端している。
【0021】
なお、横溝20は、本実施形態のように陸部14、16、18の途中で終端する溝でなくてもよく、各陸部14、16、18を完全に分断してタイヤ周方向Cに並ぶブロック列を区画するものであってもよい。
【0022】
そして、タイヤ幅方向Wに隣接する主溝12の間に区画された陸部、この例では、一対のセンター主溝12Aに挟まれた中央陸部14と、センター主溝12A及びショルダー主溝12Bに挟まれた中間陸部16とでは、接地面において横溝20a、20bの開口部が占める割合を示すボイド比が異なっている。
【0023】
ここで、ボイド比とは、タイヤ幅方向に隣接する主溝12で挟まれた領域の接地面における面積Aに対する当該領域に位置する陸部14、16に設けられた凹部の開口面積aの比率をいい、陸部14,16に設けられた凹部には、横溝20a、20bだけでなく、サイプと呼ばれるタイヤの通常荷重での接地時に閉じる微小な溝幅(例えば1mm以下)の切り込みも含む。
【0024】
中央陸部14のボイド比Xaは、中央陸部14に設けられた全ての横溝20aの開口部分の面積を足し合わせた面積a1を、一対のセンター主溝12Aで挟まれた領域の接地面における面積(つまり、中央陸部14の接地面14Aの面積と、中央陸部14に設けられた横溝20aの開口部分の面積を足し合わせた面積a1とを合計した面積)A1で除した値(a1/A1)となる。
【0025】
また、中間陸部16のボイド比Xbは、中間陸部16に設けられた横溝20bの開口部分の面積を足し合わせた面積a2を、ショルダー主溝12Bとセンター主溝12Aとで挟まれた領域の接地面における面積(つまり、中間陸部16の接地面16Aの面積と、中間陸部16に設けられた横溝20bの開口部分を足し合わせた面積a2とを合計した面積)A2で除した値(a2/A2)となる。この例では、中央陸部14のボイド比Xaより中間陸部16のボイド比Xbが大きい(Xa<Xb)。
【0026】
なお、上記の各面積は、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態で測定した面積である。正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」である。正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の「最大値」、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」である。
【0027】
一対のセンター主溝12Aに挟まれた中央陸部14と、センター主溝12A及びショルダー主溝12Bに挟まれた中間陸部16は、接地面14A、16Aのタイヤ幅方向の断面形状が円弧状をなしており、接地面14A、16Aが、規定内圧を充填した状態でトレッド部10の基準輪郭線Lに対してタイヤ径方向外方Koへ膨出している。
【0028】
具体的には、
図3に示すように、中央陸部14及び中間陸部16の接地面14A、16Aのタイヤ幅方向断面は、陸部14,16のタイヤ幅方向両側のエッジ(陸部を区画する主溝の開口端)の2点を通る円弧状をなしており、ボイド比の大きい中間陸部16の接地面16Aが、ボイド比の小さい中央陸部14の接地面14Aより曲率半径の小さい円弧形状をなしている。
【0029】
これにより中央陸部14及び中間陸部16の接地面14A、16Aは、タイヤ幅方向Wの中央部に頂点が位置する外向きに凸の断面円弧状をなしており、中間陸部16の基準輪郭線Lからの膨出量H2(基準輪郭線Lから接地面16Aの頂点までの距離)が、中央陸部14の基準輪郭線Lからの膨出量H1(基準輪郭線Lから接地面14Aの頂点までの距離)より大きく(H1<H2)設定され、中間陸部16の剛性を中央陸部14より向上させている。
【0030】
本実施形態では、
図2に示すように、タイヤを180度回転させてトレッド部10のパターンが変わらない対称パターンをなしているため、中央陸部14の両側にある2つの中間陸部16でいずれも同一のボイド比となり、接地面16Aの曲率半径が同一に設定されている。
【0031】
一方、ショルダー陸部18,18については基準輪郭線Lから膨出しておらず、すなわち、ショルダー陸部18の接地面18Aは基準輪郭線L上にある。
【0032】
ここで、基準輪郭線Lは、タイヤ幅方向Wに沿った断面においてトレッド面を規定する基準となる曲線であり、一般に複数の円弧が共通の接線を持つ接点において接続された曲線からなるタイヤトレッドの設計プロファイルと同一視することもできる。具体的には、基準輪郭線Lは、各主溝12の開口端(各陸部14,16,18のエッジ)を通過して滑らかに連続する1又は複数の円弧からなる曲線であり、例えば、全ての主溝12の開口端が単一の円弧上にあるときには当該円弧が基準輪郭線Lとなる。但し、通常は全ての主溝12の開口端は単一の円弧上にはないので基準輪郭線Lは複数の円弧から形成され、次のように定められる。
図3に示すように、中央陸部14においては、当該陸部14の両エッジa,bとセンター主溝12Aを挟んで隣接する中間陸部16のエッジc,dを求めて、点a,b,cを通る円弧と点a,b,dを通る円弧のうち、曲率半径の大きな円弧を基準輪郭線Lとする。中央陸部14は基本的に曲率半径が大きいため、曲率半径の大きな円弧の方が一般に中央陸部14での設計プロファイルに近いからである。中間陸部16においては、当該陸部16の両エッジd,eとセンター主溝12Aを挟んで隣接する中央陸部14のエッジbとの3点b,d,eを通る円弧を基準輪郭線Lとする。設計プロファイルはタイヤ赤道面CLから離れるに従って曲率半径が小さい円弧で構成されるため、中間陸部16での基準輪郭線Lを外側に隣接するショルダー陸部18のエッジfを通る円弧で定義すると、設計プロファイルの円弧よりも小さくなりすぎることがある。そのため、内側に隣接する中央陸部14のエッジbを用いて定義する。
【0033】
以上のように本実施形態の空気入りタイヤでは、中央陸部14の接地面14A及び中間陸部16の接地面16Aが、陸部14、16、16のタイヤ幅方向両側のエッジの2点を通る円弧状で形成され、タイヤ幅方向Wの中央部に頂点が位置する外向きに凸の断面円弧状をなしているため、頂部を幅方向中心からずらした位置に設定する場合に比べて空気入りタイヤが荷重や横力を受けた際の接地安定性を高めることができる。
【0034】
また、タイヤ幅方向に隣接する主溝12で挟まれた領域の接地面における面積Aと当該領域に位置する陸部に設けられた横溝20の開口面積aとの比率(ボイド比:a/A)が大きい陸部ほど、横溝20により剛性が低下して偏摩耗しやすくなるが、本実施形態の空気入りタイヤでは、ボイド比が大きい陸部16ほど接地面16Aの幅方向断面を曲率半径の小さい円弧形状に形成し剛性を高めているため、各陸部14,16でボイド比が異なっていても剛性バランスを均一化することができ、タイヤ接地性の向上や偏摩耗の抑制を図ることができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、4本の主溝12により中央陸部14と一対の中間陸部16,16を主溝12の間に設けた場合について説明したが、主溝間に形成された陸部を複数有するものであれば、主溝の本数は4本に限定されるものではなく、例えば3本や5本でもよい。
【0036】
また、本実施形態では、中央陸部14の両側にある2つの中間陸部16のいずれも同一のボイド比となり、接地面16Aの曲率半径及び基準輪郭線Lからの膨出量が同一に設定されている場合について説明したが、一対の中間陸部16,16の間でボイド比が異なっていれば、ボイド比が大きい陸部ほど接地面の曲率半径が小さくなるように接地面の断面形状を設定するればよい。
【0037】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例及び比較例1、2の空気入りラジアルタイヤ(215/55R17)を試作した。これらの各試作タイヤは、基本的なトレッドパターンとタイヤ内部構造は同一とし、中央陸部14及び中間陸部16、16の接地面14A、16Aの断面形状を変更して作製したものである。
【0040】
具体的には、比較例1,2及び実施例は、
図2に示す4本主溝であり、中央陸部14のボイド比Xaが15%、中間陸部16、16のボイド比Xbが18%の場合である。比較例1は、中央陸部14及び中間陸部16、16の基準輪郭線Lからの膨出量が同一であって、中央陸部14及び中間陸部16、16の接地面14A、16Aの断面形状をタイヤ幅方向Wの中央部に頂点が位置する三角形状に形成した例である。比較例2は、ボイド比の小さい中央陸部14の接地面14Aよりボイド比の大きい中間陸部16の接地面16Aを、基準輪郭線Lからの膨出量を大きく設定し、中央陸部14及び中間陸部16、16の接地面14A、16Aの断面形状をタイヤ幅方向Wの中央部に頂点が位置する三角形状に形成した例である。
【0041】
実施例は、ボイド比の大きい中間陸部16の接地面16Aを曲率半径が175mmの円弧形状とし、ボイド比の小さい中央陸部14の接地面14Aを曲率半径が225mmの円弧形状とし、接地面14Aより接地面16Aを曲率半径の小さい円弧形状に形成し、基準輪郭線Lからの膨出量を大きく設定した例である。
【0042】
実施例及び比較例1、2の各空気入りタイヤについて、耐偏摩耗性と接地圧分散変化を評価した。評価方法は以下のとおりである。
【0043】
(1)耐偏摩耗性
乾燥路で15000Km走行後のタイヤの摩耗量を測定し、陸部毎の摩耗比(=最小摩耗量/最大摩耗量)を算出し、比較例1の値を100とする指数に換算した。指数が大きいほど耐偏摩耗性が良いことを示している。
【0044】
(2)接地圧分散変化
試験タイヤを正規リムに組み付け正規内圧を充填して、JATMA記載の最大荷重の70%にて感圧紙に押しつけて測定した接地圧と、キャンバー角(タイヤの前後軸(X軸)回りの角度)を1°として感圧紙に押し付けて測定した接地圧から接地面内の接地圧力の分散値を算出し、その変化量を指数に換算した。指数が大きいほど接地圧分散が変化しにくく、荷重や横力を受けた際の接地安定性に優れることを示す。
【0045】
【表1】
【0046】
結果は、表1に示すとおりであり、比較例2では、ボイド比の小さい中央陸部14の接地面14Aよりボイド比の大きい中間陸部16の接地面16Aを、基準輪郭線Lからの膨出量を大きく設定しており、耐偏摩耗性が比較例1よりも向上しているが、接地面14A、16Aの断面形状をタイヤ幅方向Wの中央部に頂点が位置する三角形状に形成したため、荷重や横力を受けた際の接地安定性が悪化している。これに対して、実施例では、荷重や横力を受けた際の接地安定性を悪化させることなく、比較例1より耐偏摩耗性が向上していた。
【符号の説明】
【0047】
1…ビード部
1a…フィラー
1b…コア
2…サイドウォール部
3…カーカス
4…インナーライナー
5…ベルト
10…トレッド部
12…主溝
12A…センター主溝
12B…ショルダー主溝
14…中央陸部
16…中間陸部
18…ショルダー陸部
20、20a、20b、20c…横溝