(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6433810
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】ボンディングワイヤの検出方法及びボンディングワイヤの検出装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20181126BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20181126BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
H01L21/60 321Y
G01B11/24 K
G01B11/00 B
G01B11/00 H
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-32768(P2015-32768)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-157720(P2016-157720A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕行
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 和文
(72)【発明者】
【氏名】光藤 淳
【審査官】
小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−102024(JP,A)
【文献】
特開2002−026085(JP,A)
【文献】
特開平06−174438(JP,A)
【文献】
特開2006−337033(JP,A)
【文献】
特開平8−83829(JP,A)
【文献】
特開平5−160233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
G01B 11/00
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続面にボンディングされたワイヤを3次元的に検出するボンディングワイヤの検出方法であって、
ボンディングされたワイヤ及び接続面の焦点の異なる画像を複数撮像し、
焦点の異なる複数の画像から、局所領域ごとにフォーカスを評価し、フォーカスの合っている局所画像の組み合わせで再構成されて全てのピクセルにおいてフォーカスが合っている前記ワイヤ及び接続面の全焦点画像と、この全焦点画像に対応し、撮像と同時に各画素ごとにフォーカス度合が最大となった時点における相対距離情報であって、撮像手段からの距離に応じて輝度により表現された前記ワイヤ及び接続面の距離画像を作成し、
前記全焦点画像から、ワイヤが接続されている接続面領域を特定し、
前記距離画像の高さ情報から、ワイヤ領域と、ワイヤ以外の領域とを分離して、
前記距離画像におけるワイヤ領域を前記全焦点画像に対応させて、全焦点画像におけるワイヤ領域を特定し、
前記全焦点画像のワイヤ領域のうち、検出対象となるワイヤの、一方の接続面領域と他方の接続面領域とを繋ぐワイヤ領域を抽出し、このワイヤ領域を検出対象のワイヤとして特定することを特徴とするボンディングワイヤの検出方法。
【請求項2】
全焦点画像において、接続面領域の特定を自動的に行うことを特徴とする請求項1に記載のボンディングワイヤの検出方法。
【請求項3】
接続面と離れた位置に存在する目印を設定し、接続面領域と目印との相対位置情報を記憶し、前記目印を全焦点画像又は距離画像内で見つけることにより、記憶されている相対位置情報から接続面領域を特定する請求項2に記載のボンディングワイヤの検出方法。
【請求項4】
前記距離画像において、前記接続面領域が水平方向に対して傾斜している場合は、接続面領域が水平になるように距離画像を補正することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のボンディングワイヤの検出方法。
【請求項5】
接続面にボンディングされたワイヤを3次元的に検出するボンディングワイヤの検出装置であって、
ボンディングされたワイヤ及び接続面の焦点の異なる画像を複数撮像する撮像手段と、
焦点の異なる複数の画像から、局所領域ごとにフォーカスを評価し、フォーカスの合っている局所画像の組み合わせで再構成されて全てのピクセルにおいてフォーカスが合っている前記ワイヤ及び接続面の全焦点画像を作成する全焦点画像作成手段と、前記全焦点画像に対応し、撮像と同時に各画素ごとにフォーカス度合が最大となった時点における相対距離情報であって、撮像手段からの距離に応じて輝度により表現された前記ワイヤ及び接続面の距離画像を作成する距離画像作成手段と、
前記全焦点画像から、ワイヤが接続されている接続面領域を特定する接続面領域特定手段と、
前記距離画像の高さ情報から、ワイヤ領域と、ワイヤ以外の領域とを分離する分離手段と、
前記全焦点画像のワイヤ領域のうち、検出対象となるワイヤの、一方の接続面領域と他方の接続面領域とを繋ぐワイヤ領域を抽出し、このワイヤ領域を検出対象のワイヤとして特定するワイヤ抽出手段とを備えたことを特徴とするボンディングワイヤの検出装置。
【請求項6】
全焦点画像において、接続面領域の特定を自動的に行うことを特徴とする請求項5に記載のボンディングワイヤの検出装置。
【請求項7】
接続面と離れた位置に存在する目印を設定し、接続面領域と目印との相対位置情報を記憶し、前記目印を全焦点画像又は距離画像内で見つけることにより、記憶されている相対位置情報から接続面領域を特定する請求項6に記載のボンディングワイヤの検出装置。
【請求項8】
前記距離画像において、前記接続面領域が水平方向に対して傾斜している場合は、接続面領域が水平になるように距離画像を補正する傾き補正手段を備えたことを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のボンディングワイヤの検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディングされたワイヤを3次元的に検出するボンディングワイヤの検出方法及びボンディングワイヤの検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造工程におけるワイヤボンディング後の検査では、種々のワイヤループ検査(例えば、ワイヤの高さや曲がり等の計測)が行われる(特許文献1)。これらの計測を安定して行うためには、ワイヤの軌跡を正しく認識することが必要である。例えば、ワイヤの最高点の高さを数値で得たい場合に、ワイヤの最高点を得るための手順は、まず、検査対象となるワイヤがどのワイヤであるかを特定し、その次に、特定したワイヤの中で一番高い箇所を認識する。
【0003】
前記特許文献1に記載されているワイヤの特定方法は、検査対象であるワイヤに対する照明の照射方向を切り替えることにより、ワイヤのみが明るくなるように撮影して、その反射光の明暗によって画像を生成する。この画像から、明るい線を追跡して、ワイヤ特有の特徴(例えば細い)を有するものをワイヤと特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−160233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ボンディングされたワイヤは、曲がり等により、特定すべきワイヤの領域に隣のワイヤが入ることがある。また、ワイヤを上下に立体交差させる場合があり、この場合は、ワイヤの高さの閾値は、夫々のワイヤ毎に別々に設定する必要がある。このため、特定すべきワイヤの軌跡を1本ずつ正確に認識する必要がある。しかしながら、1本ずつのワイヤの軌跡を認識する方法を備えていない場合は、その後のワイヤ検査(例えばワイヤの高さ検査)を正確に行うことができないという問題がある。
【0006】
また、ワイヤの背景(ワイヤ以外のもの)には、チップやチップ上の配線パターン、ペースト、異物など光学的に様々な反射特性を持った構造物が存在しており、その位置関係も個体差があり、ばらつきがある。従って、特許文献1の方法は、ワイヤのみを明るく撮影することは困難であることが多い上、照明の照射方向や明るさなど、照明設定を厳密に行う必要があり、設定に手間がかかる。また、例えば、撮影領域の中で最も高い位置をワイヤの最高点の高さであると設定する方法を採用すると、ワイヤよりも高位置に異物が存在すると、異物の高さがワイヤの最高点の高さであると誤認識し、検査が不安定となるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、簡単な方法で、検出対象となるワイヤを正確に特定することができるボンディングワイヤの検出方法およびボンディングワイヤの検出装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のボンディングワイヤの検出方法は、接続面にボンディングされたワイヤを3次元的に検出するボンディングワイヤの検出方法であって、ボンディングされたワイヤ及び接続面の焦点の異なる画像を複数撮像し、焦点の異なる複数の画像から、
局所領域ごとにフォーカスを評価し、フォーカスの合っている局所画像の組み合わせで再構成されて全てのピクセルにおいてフォーカスが合っている前記ワイヤ及び接続面の全焦点画像と、この全焦点画像に対応
し、撮像と同時に各画素ごとにフォーカス度合が最大となった時点における相対距離情報であって、撮像手段からの距離に応じて輝度により表現された前記ワイヤ及び接続面の距離画像を作成し、前記全焦点画像から、ワイヤが接続されている接続面領域を特定し、前記距離画像の高さ情報から、ワイヤ領域と、ワイヤ以外の領域とを分離して、前記距離画像におけるワイヤ領域を前記全焦点画像に対応させて、全焦点画像におけるワイヤ領域を特定し、前記全焦点画像のワイヤ領域のうち、検出対象となるワイヤの、一方の接続面領域と他方の接続面領域とを繋ぐワイヤ領域を抽出し、このワイヤ領域を検出対象のワイヤとして特定するものである。
【0009】
本発明のボンディングワイヤの検出方法によれば、距離画像から、高さ情報を面として取得することができるため、ワイヤ領域を面として認識でき、ワイヤ領域と、ワイヤ以外の領域とを安定して分離することができ、簡単にワイヤの軌跡を抽出することができる。また、ワイヤが接続されている接続面領域を特定して、ボンディングされるべき領域を指定するため、ワイヤの先端部を認識する必要がない。このため、チップ等の接続面に対して、ワイヤのボンディング位置がずれていても(ワイヤ毎で異なっていても)、その影響を受けることなく、簡単にワイヤの軌跡を抽出することができる。検出対象となるワイヤを抽出する際は、検出対象となるワイヤの一方の接続面領域と他方の接続面領域とを繋ぐものを検出対象のワイヤとするため、検出対象のワイヤ以外のもの(例えば、検出対象のワイヤとは異なる他のワイヤや異物等)を、検出対象のワイヤ認識から排除することができる。これにより、検出対象となるワイヤを正確に特定することができる。
【0010】
前記構成において、検出対象のワイヤを特定した後、特定したワイヤの検査を行ってもよい。これにより、検出対象のワイヤとは異なる他のワイヤや異物等を、検査対象から除外することができ、検査対象となっているワイヤの検査を正確に行うことができる。
【0011】
前記距離画像において、他の領域よりも高位を示す領域がワイヤ領域であるとして、ワイヤ領域とワイヤ以外の領域とを分離してもよい。
【0012】
前記距離画像において、前記接続面領域が水平方向に対して傾斜している場合は、接続面領域が水平になるように距離画像を補正するようにしてもよい。これにより、距離画像において接続面領域が傾きを示している場合でも、その傾斜の影響を受けることなく、正確にワイヤ領域と、ワイヤ以外の領域とを分離することができる。
【0013】
本発明のボンディングワイヤの検出装置は、接続面にボンディングされたワイヤを3次元的に検出するボンディングワイヤの検出装置であって、ボンディングされたワイヤ及び接続面の焦点の異なる画像を複数撮像する撮像手段と、焦点の異なる複数の画像から、
局所領域ごとにフォーカスを評価し、フォーカスの合っている局所画像の組み合わせで再構成されて全てのピクセルにおいてフォーカスが合っている前記ワイヤ
及び接続面の全焦点画像を作成する全焦点画像作成手段と、前記全焦点画像に対応
し、撮像と同時に各画素ごとにフォーカス度合が最大となった時点における相対距離情報であって、撮像手段からの距離に応じて輝度により表現された前記ワイヤ及び接続面の距離画像を作成する距離画像作成手段と、前記全焦点画像から、ワイヤが接続されている接続面領域を特定する接続面領域特定手段と、前記距離画像の高さ情報から、ワイヤ領域と、ワイヤ以外の領域とを分離する分離手段と、前記全焦点画像のワイヤ領域のうち、検出対象となるワイヤの、一方の接続面領域と他方の接続面領域とを繋ぐワイヤ領域を抽出し、このワイヤ領域を検出対象のワイヤとして特定するワイヤ抽出手段とを備えたものである。
【0014】
前記構成において、検出対象のワイヤを特定した後、特定したワイヤの検査を行う検査手段を備えてもよい。
【0015】
前記分離手段は、前記距離画像において、他の領域よりも高位を示す領域がワイヤ領域であるとして、ワイヤ領域とワイヤ以外の領域とを分離するものとしてもよい。
【0016】
前記距離画像において、前記接続面領域が水平方向に対して傾斜している場合は、接続面領域が水平になるように距離画像を補正する傾き補正手段を備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、簡単な方法で、検出対象となるワイヤを正確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のボンディングワイヤの検出装置を示すブロック図である。
【
図2】本発明のボンディングワイヤの検出方法により全焦点画像及び距離画像に基づいてボンディングワイヤを検出する方法を示す図である。
【
図3】本発明のボンディングワイヤの検出方法の手順を示すフローチャート図である。
【
図4】
図2に示す全焦点画像及び距離画像の撮影対象であるワイヤ及び接続面の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を
図1〜
図4に基づいて説明する。
【0020】
本発明のボンディングワイヤの検出装置は、電子部品や回路基板の端子などのパターン部分にワイヤ先端部が接合(ボンディング)されている場合に、ボンディングされたワイヤを3次元的に検出するものである。以下、「ワイヤ」は、
図4に示すような実際のワイヤをいい、「接続面」は、
図4に示すような実際の接続面をいう。また、「ワイヤ領域」は、
図2に示すような全焦点画像又は距離画像において示されたワイヤの領域をいい、「接続面領域」は、
図2に示すような全焦点画像又は距離画像において示された接続面の領域をいう。
【0021】
本発明のボンディングワイヤの検出装置は、
図1に示すように撮像手段1と、図示省略のコンピュータに設けられる、メモリ10と、全焦点画像作成手段2と、距離画像作成手段3と、接続面領域特定手段4と、分離手段5と、傾き補正手段6と、ワイヤ領域対応手段7と、抽出手段8と、検査手段9とを備えている。また、コンピュータには図示省略の表示手段(モニタ)が接続されている。
【0022】
撮像手段1はCCDカメラ等からなり、撮像物体であるワイヤ20及び接続面(ボンディング面)21(
図4参照)を含む画像を取得する。撮像手段1はz方向に(上下方向に)移動することができ、撮像物体との距離を変化させて、上下方向に焦点が異なる画像を複数枚取得する。
【0023】
全焦点画像作成手段2は、焦点の異なる複数の画像データに基づいて、
図2(a)に示すような全焦点画像22を作成するものである。全焦点画像とは、撮像系と物体との距離を連続的に変化させて(カメラをz方向にスキャンさせて)、焦点の異なる画像を複数枚撮影し、局所領域ごとにフォーカスを評価し、フォーカスの合っている局所画像の組み合わせで再構成したものである。これにより、全焦点画像は、全てのピクセルにおいてフォーカスが合っている。
【0024】
距離画像作成手段3は、例えば、撮像と同時に各画素ごとにフォーカス度合が最大となった時点における相対距離情報を記憶し、
図2(b)に示すような、撮像手段1から撮像物体までの距離画像25を作成するものである。すなわち、距離画像は、撮像手段からの距離に応じて輝度(グレースケール)により表現された画像であり、距離画像により撮像した物体の高さ情報を得ることができ、例えば、高位のものは淡色で表現され、低位のものは濃色で表現される。その場合、撮像手段1からの距離が近いものは白色に近くなり、撮像手段1からの距離が遠いものは黒色に近くなる。
【0025】
接続面領域特定手段4は、全焦点画像22において、ワイヤが接続される接続面領域を特定するものである。具体的には、表示手段に
図2(a)に示すような全焦点画像22が表示されており、ユーザが例えばマウスのドラッグ等により、
図2(c)に示すように全焦点画像22において接続面領域31の範囲を指定して特定したときに、接続面領域特定手段4は、その指定された範囲を記憶する。複数のワイヤが撮影されている場合、ユーザは、第1のワイヤの一方の接続面領域31a1、第1のワイヤの他方の接続面領域31a2、第2のワイヤの一方の接続面領域31b1、第2のワイヤの他方の接続面領域31b2・・・として、ワイヤを1本ずつ、接続面毎に指定する。このため、接続面領域特定手段4は、指定された接続面領域31が、どのワイヤの接続面であるかについても記憶する。
【0026】
分離手段5は、距離画像25において、ワイヤ領域30と、ワイヤ以外の領域とを分離するものである。すなわち、分離手段5は、距離画像25において、より淡色(白に近い)の部分がワイヤ領域30であるとして、距離画像25のワイヤ領域30とワイヤ以外の領域とを分離する。
【0027】
傾き補正手段6は、後述する方法で、距離画像25において、接続面領域31が水平方向に対して傾斜している場合は、接続面領域31が水平になるように距離画像25を補正するものである。距離画像25において接続面領域31が傾きを示している場合、高さの閾値によりワイヤ領域30とワイヤ以外の領域とを分離すると、接続面に沿った分離ができなくなり(つまり、接続面が傾斜しているにもかかわらず、水平方向に分離することになり)、正確にワイヤ領域30とワイヤ以外の領域とを分離することができない。このため、傾き補正手段6は、距離画像25において接続面領域が傾きを示している場合でも、その傾斜の影響を受けることなく、正確にワイヤ領域30と、ワイヤ以外の領域とを分離することができる。
【0028】
ワイヤ領域対応手段7は、距離画像25におけるワイヤ領域30を全焦点画像22に対応させるものであり、全焦点画像22のうち、ワイヤ領域30に相当する部分を囲む等して、全焦点画像22においてワイヤ領域30がどの範囲であるのかをユーザに示す。
【0029】
抽出手段8は、全焦点画像22のワイヤ領域30のうち、検出対象となるワイヤの、一方の接続面領域31と他方の接続面領域31とを繋ぐワイヤ領域30を抽出し、このワイヤ領域30を検出対象のワイヤとして特定するものである。つまり、抽出手段8は、検出対象となる1本のワイヤの軌跡を抽出する。
【0030】
検査手段9は、抽出手段8により抽出した検査対象のワイヤの軌跡に基づいて、種々のワイヤループ検査(例えば、ワイヤの高さや曲がり等の計測)を行うものである。
【0031】
本発明のボンディングワイヤの検出装置を使用したボンディングワイヤの検出方法を
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0032】
撮像手段1は、ワイヤ20及び接続面21が撮影範囲となるようにして、上下方向に焦点の異なる実画像を複数枚取得する(ステップS1)。これにより、焦点の異なる複数の画像データがメモリ10に格納される。全焦点画像作成手段2は、メモリ10に格納されている画像データから、
図2(a)に示すような全焦点画像22を作成し、距離画像作成手段3は、
図2(b)に示すような距離画像25を作成する(ステップS2)。
図2(a)(b)では、3本のワイヤ及び夫々のワイヤが接続される接続面が撮影されており、左から順に、第1のワイヤ領域30a及び接続面領域31a1、31a2、第2のワイヤ領域30b及び接続面領域31b1、31b2、第3のワイヤ領域30c及び接続面領域31c1、31c2を示している。また、他のワイヤ領域30dも撮影されている。
【0033】
次に、接続面領域特定手段4は、全焦点画像22において接続面領域31a1〜31c2を特定する(ステップS3)。第1の方法は、ユーザが例えばマウスのドラッグ等により、全焦点画像22において、
図2(c)の点線で示すようにワイヤを1本ずつ接続面毎に、接続面領域31a1〜31c2の範囲を囲んで指定すると、接続面領域特定手段4は、その指定された範囲を記憶する。このとき、接続面領域特定手段4は、夫々の接続面領域31a1〜31c2が、どのワイヤに対応するものであるかについても記憶する。第2の方法は、第1の方法により予め記憶した情報に基づいて、接続面領域の特定を自動的に行う。接続面領域の特定を自動的に行うには、例えば次のような方法がある。全焦点画像22内で、接続面と離れた位置に存在する模様や物体等を目印として設定し、接続面領域と目印との相対位置を予めコンピュータに記憶させておく。それ以降の撮影で、目印を全焦点画像22内で見つけることにより、記憶している相対位置情報から接続面領域を自動的に特定することができる。なお、目印の設定には、全焦点画像22の代わりに、距離画像25を使用することも可能である。
【0034】
次に、分離手段5は、距離画像25から、ワイヤ領域30と、ワイヤ以外の領域とを分離する。具体的には、分離手段5は、
図2(b)に示すように、距離画像25のワイヤ領域30及び接続面領域31の範囲を、一方の接続面領域31a1、31b1、31c1の範囲(a)、他方の接続面領域31a2、31b2、31c2の範囲(c)、範囲(a)と範囲(c)との間の領域を範囲(b)として、3つの範囲に分割する。範囲(a)及び範囲(c)は、
図2(b)に示すように、濃色(黒色)の範囲(接続面領域31)の中に淡色(ドット)の範囲(ワイヤ領域30)があり、かつ、淡色(ドット)の範囲が濃色の範囲の一端部に達している領域であり、
図4に示すように、接続面21からワイヤ20が立ち上がる範囲である。範囲(b)の領域は、最も淡色(白色)のライン(ワイヤ領域30)を示す領域であり、
図4に示すように、高位のワイヤ20の範囲である。
【0035】
このとき、距離画像25において、範囲(a)(c)の濃色の部分が、濃淡のグラデーションを有する場合には、接続面領域31の面が水平方向に対して傾斜していることを示している。この場合、傾き補正手段6は、範囲(a)(c)の濃色の部分の色が一律になるように調整して(つまり、距離画像25において、接続面領域31が水平方向となるように全体を傾斜させて仮想的な接続面領域を生成して)、補正した距離画像を生成する(ステップS4)。
【0036】
この補正を行った後、分離手段5は、距離画像25において、ワイヤ領域30と、ワイヤ以外の領域とを分離する(ステップS5)。すなわち、距離画像25の範囲(a)〜範囲(c)の夫々の範囲において、より淡色(白に近い)の部分がワイヤ領域30であるとする。範囲(a)では、円形部とここから突出する部分がより淡色となっており、この部分がワイヤ領域30である。範囲(b)では、白色の部分がワイヤ領域30である。範囲(c)では、ライン状の部分がより淡色となっており、この部分がワイヤ領域30である。これにより、距離画像25において、ワイヤ領域30と、ワイヤ以外の領域とを分離することができる。
【0037】
その後、ワイヤ領域対応手段7は、距離画像25におけるワイヤ領域30を全焦点画像22に対応させる(ステップS6)。これにより、全焦点画像22の中で、ワイヤ領域30のみを特定することができる。ワイヤ領域対応手段7は、全焦点画像22においてワイヤ領域30が特定できると、
図2(d)の点線で示すように、全焦点画像22のうち、ワイヤ領域30に相当する部分を囲む。これにより、全焦点画像22においてワイヤ領域30がどの範囲であるのかをユーザに示すことができる。
【0038】
その後、抽出手段8は、全焦点画像22のワイヤ領域30のうち、検出対象となるワイヤの一方の接続面領域31と、他方の接続面領域31とを繋ぐワイヤ領域31を抽出し、このワイヤ領域31を検出対象のワイヤとして特定する(ステップS7)。例えば第1のワイヤを検出する場合、このワイヤの一方の接続面領域31a1と他方の接続面領域30a2とが接続面領域特定手段4に記憶されているため、抽出手段8は、第1のワイヤの接続面領域31a1、31a2の情報を読み出し、これらの領域の間にあるワイヤ領域30aのみを抽出する。これにより、抽出手段8は、
図2(e)に示す検査画面(
図2(a)の拡大画面)に別のワイヤ領域30dが入っていても、
図2(f)に示すように、検出対象となる第1のワイヤ領域30a以外のものを除外して、検出対象となる第1のワイヤの軌跡を抽出することができる。
【0039】
検査手段9は、抽出手段8により抽出したワイヤの軌跡に基づいて、種々のワイヤループ検査(例えば、ワイヤの高さや曲がり等の計測)を行う(ステップS8)。
【0040】
本発明のボンディングワイヤの検出装置及びボンディングワイヤの検出方法は、距離画像25から、高さ情報を面として取得することができるため、ワイヤ領域30を面として認識でき、ワイヤ領域30と、ワイヤ以外の領域とを安定して分離することができ、簡単にワイヤの軌跡を抽出することができる。また、ワイヤが接続されている接続面領域31を特定して、ボンディングされるべき領域を指定するため、ワイヤの先端部を認識する必要がない。このため、チップ等の接続面に対して、ワイヤのボンディング位置がずれていても(ワイヤ毎で異なっていても)、その影響を受けることなく、簡単にワイヤの軌跡を抽出することができる。検出対象となるワイヤを抽出する際は、検出対象となるワイヤの一方の接続面領域31と他方の接続面領域31とを繋ぐものを検出対象のワイヤとするため、検出対象のワイヤ以外のもの(例えば、検出対象のワイヤとは異なる他のワイヤや異物等)を、検出対象のワイヤ認識から排除することができる。これにより、簡単な方法で、検出対象となるワイヤを正確に特定することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、撮像手段1は、CCDカメラに限られず、CMOSカメラ等種々のものを採用することができる。傾き補正手段6は省略してもよい。また、ワイヤ領域対応手段7を省略してもよい。この場合、ユーザが画像を参照しながら距離画像25のワイヤ領域31を全焦点画像22に対応させる。また、ワイヤ領域対応手段7にて、ワイヤ領域30をユーザに示す手段は、ワイヤ領域30を囲む以外に、ワイヤ領域30を色づけしたり、ワイヤ領域30のみを表示する等、全焦点画像22においてワイヤ領域30がどの領域であるかをユーザが認識できれば種々の方法とすることができる。ワイヤループ検査は、ワイヤの有無、ワイヤ切れ、ダブルループ等、ワイヤに関する種々の検査とすることができる。
図2(c)の画面を省略してもよい。距離画像25は、グレースケール以外に他の色で濃淡が表現されたものであってもよいし、複数色にて表現されたものであってもよい。撮影するワイヤの本数も、1本以上であれば何本でもよい。接続面間を繋ぐワイヤの本数は、複数であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 撮像手段
2 全焦点画像作成手段
3 距離画像作成手段
4 接続面領域特定手段
5 分離手段
6 傾き補正手段
8 抽出手段
9 検査手段
20 ワイヤ
21 接続面
22 全焦点画像
25 距離画像
30 ワイヤ領域
31 接続面領域