(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6433843
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】エレクトリック・トローリング・モーターにおけるロック解除用具
(51)【国際特許分類】
B63H 20/00 20060101AFI20181126BHJP
F16C 1/22 20060101ALI20181126BHJP
F16C 1/20 20060101ALI20181126BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20181126BHJP
G05G 7/10 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
B63H20/00 610
F16C1/22 A
F16C1/20 Z
G05G1/04 A
G05G7/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-79881(P2015-79881)
(22)【出願日】2015年4月9日
(65)【公開番号】特開2016-199126(P2016-199126A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年3月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515097384
【氏名又は名称】木村 英康
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】木村 英康
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0255761(US,A1)
【文献】
特開2005−104191(JP,A)
【文献】
特開平4−38294(JP,A)
【文献】
特開2007−170490(JP,A)
【文献】
特開平7−301225(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3120355(JP,U)
【文献】
米国特許第7722417(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 20/00
F16C 1/20
F16C 1/22
G05G 1/04
G05G 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターケーブルとアウターケーブル内に挿通されたインナーケーブルで構成される作動用ケーブルと、作動用ケーブルの一端に設けられ、前記インナーケーブルを引っ張り自在な操作手段と、インナーケーブルの張り具合を調整するアジャスター手段を備え、作動用ケーブルにおけるインナーケーブルの他端がエレクトリック・トローリング・モーターのロック部に接続されて、前記操作手段でインナーケーブルを引っ張ることにより、ロック部におけるロック状態が解除可能となされているエレクトリック・トローリング・モーターにおけるロック解除用具であって、前記操作手段が、作動用ケーブルにおけるインナーケーブルの一端が接続されたグリップ部材と、グリップ部材をインナーケーブルの引っ張り方向にスライド自在に保持するホルダー部材で構成されており、且つ前記グリップ部材およびホルダー部材がいずれも略方形枠状であり、グリップ部材は、インナーケーブルの引っ張り方向側部分が手で握るための把持部となされ、引っ張り方向と反対側部分にインナーケーブルの一端が接続され、ホルダー部材は、その内周部の全部または一部にグリップ部材をスライド自在に保持する凹溝を備えている、エレクトリック・トローリング・モーターにおけるロック解除用具。
【請求項2】
ホルダー部材が、グリップ部材のスライド方向に伸びる分離線を基準としてスライド方向と直交する方向に分割される二部材構成となされている、請求項1記載のエレクトリック・トローリング・モーターにおけるロック解除用具。
【請求項3】
アジャスター手段が、アウターケーブルにおけるホルダー部材側端部に取り付けられたスリーブと、スリーブ外周面におけるホルダー部材側端部に形成された雄ねじと、該雄ねじに嵌合するロックナットとで構成され、該ロックナットを回すことでインナーケーブルの張り具合が調整される、請求項1または請求項2記載のエレクトリック・トローリング・モーターにおけるロック解除用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスフィッシングボート等において、主力のガソリンエンジン船外機の補助として用いられるエレクトリック・トローリング・モーター(以下、「エレキモーター」という)の不使用時におけるロックを解除するためのロック解除用具に関する。
【背景技術】
【0002】
エレキモーターは、通常、比較的近距離のボード移動に使用され、フィッシングポイントまで低速で静かに接近することでバス等の魚に対するプレッシャーを軽減することができるものである。
【0003】
エレキモーターは、スピードや進行方向を、手でコントロールするハンドコントロールタイプと足でコントロールするフットコントロールタイプの2つがある。
【0004】
ハンドコントロールタイプは、フットコントロールタイプよりも構造が簡単でボートの船首と船尾のいずれにも取り付け可能であるが、左右いずれか一方の手でエレキモーターを操作している間、他方の手のみでロッドを持たなければならないため、ロッド操作が行い難く、突然のヒットにも対応し難い等の不都合がある。
【0005】
一方、フットコントロールタイプは、ハンドコントロールタイプよりも構造が複雑で船首にしか取り付けられないものの、足ですべてコントロールするため、両手でロッドを持つことができ、ロッド操作や突然のヒットの際のフッキングも容易に行えることから広く普及しているのが実情である。
【0006】
図1に示すように、一般的なフットコントロールタイプのエレキモーターの全体構成を説明すると、エレキモーター1は、プロペラ2を有するモータハウジング11が先端部に取り付けられたパイプシャフト3と、パイプシャフト3の基端部に設けられたヘッド4と、コントロールケーブル5を介してヘッド4に接続された操作ペダル6と、パイプシャフト3を支持するマウント7等を有する。
【0007】
マウント7はボートの船首部分に固定されるベース部8とベース部8後端のヒンジ9を介して回動自在なパイプシャフト支持部12を有し、パイプシャフト支持部12の先端部分から操作ロープ14が出ている。
【0008】
図2および
図3に示すように、当該エレキモーター1の収納状態において、パイプシャフト支持部12の先端部には、ロックのON/OFFを行うための操作杆15と該操作杆15をその軸方向と直交する方向に移動させるための長孔16と前記操作杆15に連結されたジョイント17とジョイント17に対して一体構成のロープ接続部材18が設けられており、該ロープ接続部材18に操作ロープ14の先端部が接続されている。
【0009】
そして、操作ロープ14を引くことで操作杆15も引き寄せられて最終的にロックピン(図示せず)が外れてロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−167187
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、前述したフットコントロールタイプのエレキモーターにおいて、前述したロック機能を解除してエレキモーターを使用する場合、前記操作ロープ14をパイプシャフト支持部12の軸方向に水平に引かないとロックが解除されないという不都合がある。そのため、エレキモーターの使用者は操作ロープ14の引き角度に注意して該操作ロープ14を引かなければならないのが実情である。
【0012】
本発明の目的は、操作ロープを水平に引かなくても容易にロックを解除することができる、ロック解除用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の本発明は、
アウターケーブルとアウターケーブル内に挿通されたインナーケーブルで構成される作動用ケーブルと、作動用ケーブルの一端に設けられ、前記インナーケーブルを引っ張り自在な操作手段と、インナーケーブルの張り具合を調整するアジャスター手段を備え、作動用ケーブルにおけるインナーケーブルの他端がエレクトリック・トローリング・モーターのロック部に接続されて、前記操作手段でインナーケーブルを引っ張ることにより、ロック部におけるロック状態が解除可能となされているエレクトリック・トローリング・モーターにおけるロック解除用具であって、前記操作手段が、作動用ケーブルにおけるインナーケーブルの一端が接続されたグリップ部材と、グリップ部材をインナーケーブルの引っ張り方向にスライド自在に保持するホルダー部材で構成されており、且つ前記グリップ部材およびホルダー部材がいずれも略方形枠状であり、グリップ部材は、インナーケーブルの引っ張り方向側部分が手で握るための把持部となされ、引っ張り方向と反対側部分にインナーケーブルの一端が接続され、ホルダー部材は、その内周部の全部または一部にグリップ部材をスライド自在に保持する凹溝を備えている、エレクトリック・トローリング・モーターにおけるロック解除用具。
【0014】
請求項2記載の本発明は、前記
請求項1記載のエレキモーターについて、ホルダー部材が、グリップ部材のスライド方向に伸びる分離線を基準としてスライド方向と直交する方向に分割される二部材構成となされていることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の本発明は、前記
請求項1または請求項2記載のエレキモーターについて、アジャスター手段が、アウターケーブルにおけるホルダー部材側端部に取り付けられたスリーブと、スリーブ外周面におけるホルダー部材側端部に形成された雄ねじと、該雄ねじに嵌合するロックナットとで構成され、該ロックナットを回すことでインナーケーブルの張り具合が調整されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエレキモーターにおけるロック解除用具は、アウターケーブルとアウターケーブル内に挿通されたインナーケーブルで構成される作動用ケーブルと、作動用ケーブルの一端に設けられ、前記インナーケーブルを引っ張り自在な操作手段と、インナーケーブルの張り具合を調整するアジャスター手段を備え、作動用ケーブルにおけるインナーケーブルの他端がエレキモーターのロック部に接続されて、前記操作手段でインナーケーブルを引っ張ることにより、ロック部におけるロック状態が解除可能となされているものであるため、従来のように、操作ロープをマウントの軸方向と平行に引かなくてもロックが解除される。
【0017】
すなわち、本発明のロック解除用具によれば、操作手段で作動用ケーブルにおけるインナーケーブルを引っ張るだけでロックを簡単に解除することができる。
【0018】
また、請求項2記載の本発明に係るロック解除用具は、操作手段が、作動用ケーブルにおけるインナーケーブルの一端が接続されたグリップ部材と、グリップ部材をインナーケーブルの引っ張り方向にスライド自在に保持するホルダー部材で構成されているため、グリップ部材を握るだけでロックを解除することができる。
【0019】
更に、請求項3記載の本発明に係るロック解除用具は、グリップ部材およびホルダー部材がいずれも略方形枠状であり、グリップ部材は、インナーケーブルの引っ張り方向側部分が手で握るための把持部となされ、引っ張り方向と反対側部分にインナーケーブルの一端が接続され、ホルダー部材は、その内周部にグリップ部材をスライド自在に保持する凹溝を備えているものであるため、グリップ部材を握ることによって該グリップ部材がホルダー部材内で引っ張り方向に移動するのに伴ってインナーケーブルが引っ張られる結果、ロックが解除され得る。
【0020】
また、請求項4記載の本発明に係るロック解除用具は、前記ホルダー部材が、グリップ部材のスライド方向に伸びる分離線を基準としてスライド方向と直交する方向に分割される二部材構成となされているため、これら部材を分離して解放状態とすることができ、組立および分解が容易に行えるという利点を有する。
【0021】
この他、請求項5記載の本発明に係るロック解除用具は、アジャスター手段が、アウターケーブルにおけるホルダー部材側端部に取り付けられたスリーブと、スリーブ外周面におけるホルダー部材側端部に形成された雄ねじと、該雄ねじに嵌合するロックナットとで構成され、該ロックナットを回すことでインナーケーブルの張り具合が調整されるものであるため、比較的簡素化された構造でインナーケーブルの張り具合を簡単に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】エレキモーターの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】エレキモーターのロック部に本発明の解除用具が取り付けられた状態の斜視図である。
【
図3】エレキモーターのロック部の拡大斜視図である。
【
図4】本発明に係るロック解除用具の全体を示す斜視図である。
【
図5】ホルダー部材を分解して内部のグリップ部材の収容状態を示した斜視図である。
【
図6】ホルダー部材内においてインナーケーブルによりグリップ部材がロック部側へ戻された状態を示す斜視図である。
【
図7】ロック解除用具によってロック部のロックを解除する際の斜視図である。
【
図8】ロック解除用具によってロック部のロックを解除された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0024】
前述したエレキモーター1において、本発明に係るロック解除用具は、従来の操作ロープ14に代えて使用するものである。
【0025】
すなわち、
図4に示すように、ロック解除用具21は、アウターケーブル23とアウターケーブル23内に挿通されたインナーケーブル24で構成される作動用ケーブル22と、作動用ケーブル22の一端に設けられ、前記インナーケーブル24を引っ張り自在な操作手段25と、インナーケーブル24の張り具合を調整するアジャスター手段26を備え、作動用ケーブル22におけるインナーケーブル24の他端が前記エレキモーター1のロープ接続部材18に接続されて、前記操作手段25でインナーケーブル24を引っ張ることにより、ロックピン(図示せず)が外れてロック状態が解除可能となされている。
【0026】
図5および
図6に示すように、操作手段25は、作動用ケーブル22におけるインナーケーブル24の一端24aが接続されたグリップ部材27と、グリップ部材27をインナーケーブル24の引っ張り方向にスライド自在に保持するホルダー部材28で構成されている。
【0027】
グリップ部材27およびホルダー部材28は、いずれも略方形枠状であり、グリップ部材27は、インナーケーブル24の引っ張り方向側部が手で握るための把持部31となされ、引っ張り方向と反対側部に前記インナーケーブル24の一端が接続される。ホルダー部材28は、その内周部にグリップ部材27をスライド自在に保持する凹溝32を備えている。本実施形態では、凹溝32はホルダー部材28の内周全体にわたって形成されているが、例えば
図5において、その両側部分32a・32bだけに形成するようにしても良い。
【0028】
また、
図4〜
図6に示すように、ホルダー部材28は、より詳細には、グリップ部材27のスライド方向に伸びる分離線DLを基準としてスライド方向と直交する方向に分割される二部材構成となされている。
【0029】
アジャスター手段26は、アウターケーブル23におけるホルダー部材側端部に取り付けられたスリーブ33と、スリーブ33の外周面におけるホルダー部材側端部に形成された雄ねじ33aと、雄ねじ33aに嵌合するロックナット34とで構成され、該ロックナット34を回すことでインナーケーブル24の張り具合が調整されるようになされている。
【0030】
なお、図中29はワッシャ、41はスリーブ33の端部に形成された係合フランジを示す。
【0031】
そして、本実施形態では、作動用ケーブル22の他端側にも前述したアジャスター手段26が設けられている。
【0032】
また、本実施形態におけるインナーケーブル24は、金属ワイヤーケーブルである。
【0033】
次に、
図7および
図8に示すように、本実施形態に係るロック解除用具21の使用方法について説明すると、従来の操作ロープ14に代えて、ロープ接続部材18に本発明のロック解除用具21におけるインナーケーブル24を接続した後、グリップ部材27の把持部31を握るだけでインナーケーブル24を介して前記ロープ接続部材18およびこれと一体のジョイント17並びに操作杆15が引き寄せられ、これに伴ってロックピンが外れる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のエレキモーターにおけるロック解除用具によれば、エレキモーターのロックをその角度に関係なく容易に解除することができるため、バスフィッシングボート等の分野において幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0035】
1 エレキモーター
21 ロック解除用具
22 作動ケーブル
23 アウターケーブル
24 インナーケーブル
25 操作手段
26 アジャスター手段
27 グリップ部材
28 ホルダー