(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組立部フレーム用搬送手段は、基端部が前記移動台車に固定されてトンネル径方向に伸縮自在な組立部フレーム用ジャッキと、前記組立部フレーム用ジャッキの先端部に設けられて前記覆工版ユニットに接触可能な組立部フレーム用覆工版ユニット搬送部とを備え、
前記覆工版組立部フレームにて前記覆工版ユニットが組み立てられている途中では、前記組立部フレーム用ジャッキが短縮して、前記組立部フレーム用覆工版ユニット搬送部が前記覆工版ユニットから離間する一方、
前記覆工版組立部フレームにて前記覆工版ユニットが組み立てられた後には、前記組立部フレーム用ジャッキが伸長して、前記組立部フレーム用覆工版ユニット搬送部が前記覆工版ユニットに接触して前記覆工版ユニットを支持する、請求項1に記載のトンネル覆工装置。
前記支保部フレーム用搬送手段は、基端部が前記移動台車に固定されてトンネル径方向に伸縮自在な支保部フレーム用ジャッキと、前記支保部フレーム用ジャッキの先端部に設けられて前記覆工版ユニットに接触可能な支保部フレーム用覆工版ユニット搬送部とを備え、
前記支保部フレーム用ジャッキは、前記覆工版ユニットがトンネル軸方向に移動されるときに伸長して、前記支保部フレーム用覆工版ユニット搬送部が前記覆工版ユニットに接触して前記覆工版ユニットを支持する一方、
前記支保部フレーム用ジャッキは、前記移動台車が走行するときに短縮して、前記支保部フレーム用覆工版ユニット搬送部が前記覆工版ユニットから離間する、請求項3に記載のトンネル覆工装置。
前記覆工版支保部フレームに支持された複数の前記覆工版ユニットとトンネルの内周面との間の空間内に充填材を注入する充填材注入装置を更に含んで構成される、請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載のトンネル覆工装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるトンネル覆工装置の概略構成を示す図である。
図2は、トンネル覆工装置を構成する覆工版組立部フレーム及び覆工版支保部フレームの展開図である。尚、
図1の左右半部は、それぞれ、トンネル覆工装置のトンネル軸方向における異なる位置での横断面を示す。詳しくは、
図1の右半分は、
図2のA−A断面における右半分に対応し、
図1の左半分は、
図2のB−B断面における左半分に対応する。また、
図1には、複数のプレキャスト覆工版(以下、単に「覆工版」と称する)10からなるアーチ状の覆工版リング11の設置予定位置が破線で示されている。ここで、覆工版リング11が本発明の「覆工版ユニット」に対応する。また、覆工版10は、工場にて予め製造されたプレキャストコンクリートからなり、円弧状断面をなす板状の部材である。覆工版10は、その厚さが例えば10cm程度であり、トンネル軸方向に所定幅(例えば2m幅)を有している。
【0011】
トンネル覆工装置1は、吹付コンクリート2により一次覆工された新設の山岳トンネルの坑内に配置され得る。
トンネル覆工装置1は、トンネルの床面3上をトンネル軸方向に走行可能な門型の移動台車(ガントリー)4と、この移動台車4をその上方より覆うように配置されるアーチ状の覆工版組立部フレーム5と、移動台車4をその上方より覆うように配置されるアーチ状の覆工版支保部フレーム6と、を含んで構成される。
【0012】
覆工版組立部フレーム5は、移動台車4のうちトンネル軸方向の切羽側端部(一端部)に設置されて、移動台車4によって支持されている。覆工版支保部フレーム6は、移動台車4のうち覆工版組立部フレーム5が設置されている部分にその坑口側で隣接する部分(換言すれば、移動台車4のうち覆工版組立部フレーム5が設置されている部分にトンネル軸方向で隣接する部分)に設置されて、移動台車4によって支持されている。
【0013】
覆工版組立部フレーム5と覆工版支保部フレーム6との間には間隙7が形成されている。この間隙7は、妻型枠8(後述する
図12(B)参照)を通すことが可能な大きさである。
トンネル床面3のうち、トンネル幅方向の両端部(左右両側部)には、支持コンクリート9が予め構築されている。
【0014】
移動台車4は、トンネル軸方向に所定の長さを有しており、その前後端(トンネル軸方向端)の脚部41の下端には、トンネル床面3上に敷設された左右一対のレール42L,42R上を移動する自走装置43が設けられている。ここで、レール42L,42Rは、各々がトンネル軸方向に所定の長さで延在している。尚、本実施形態では、移動台車4は、自走装置43により走行するが、走行形態はこれに限らず、例えば、移動台車4は、電動ウインチ等の牽引装置によって牽引されて走行するように構成されてもよい。
また、移動台車4のトンネル軸方向の中間に位置する複数の脚部41にはそれぞれ下端に補助ジャッキ(図示せず)が設けられている。この補助ジャッキは、移動台車4の停止時に移動台車4の移動を制限するものである。
【0015】
移動台車4の断面門型形状の内方には、トンネル軸方向に作業車両(例えばずり出しトラック)が容易に通過できるように、内部空間44が形成されている。
移動台車4には送風用の風管45と作業足場(図示せず)とが設けられている。この作業足場は覆工版10同士の連結作業時や後述する充填材の注入作業時等に使用される。
【0016】
トンネル覆工装置1は、図示しない充填材注入装置を更に含んで構成される。この充填材注入装置は、充填材を圧送するための圧送ポンプ(図示せず)及び複数の配管(図示せず)を含んで構成される。これら圧送ポンプ及び複数の配管は移動台車4に設けられている。各配管の先端部は、覆工版10に貫通形成された注入孔(図示せず)に取付可能に構成されている。この充填材注入装置は、覆工版支保部フレーム6に支持された複数の覆工版リング11とトンネルの内周面(吹付コンクリート2)との間の空間S内に充填材70(後述する
図12(A)及び(B)参照)を注入する機能を有する。ここで充填材としては、例えばセメント系のグラウト等が用いられ得る。
【0017】
覆工版組立部フレーム5は、トンネル軸方向に所定幅(例えば2m幅)を有するアーチ状の枠部材51と、複数(
図2では6つ)のパネル搬送装置52と、複数(
図2では7つ)のリング搬送装置53と、枠部材51に回転自在に設けられる複数のパネル搬送補助ローラ54と、ウインチワイヤーガイド55,56と含んで構成される。
【0018】
枠部材51は、複数の支柱等を介して、移動台車4によって支持されている。
枠部材51は、トンネル径方向外側から内側に向かって見て矩形状をなし、その矩形状内の開口にはトンネル周方向に沿ってパネル搬送装置52とリング搬送装置53とが交互に直列に配置されている。
【0019】
パネル搬送装置52は、矩形状の枠体52aと、この枠体52aに回転自在に取り付けられた複数(
図2では3つ)のローラ52bとを含んで構成されている。枠体52aは枠部材51に固定されている。この固定状態で、3つのローラ52bは、トンネル周方向に互いに間隔を空けて並んでおり、また、各ローラ52bの中心軸は、トンネル軸方向に沿う。それゆえ、各ローラ52bは、トンネル軸方向に沿う中心軸を回転中心として回転自在である。各ローラ52bは、その一部が、枠体52a及び枠部材51よりもトンネル径方向外側に張り出して露出している。
【0020】
リング搬送装置53は、矩形状の枠体53aと、この枠体53aに回転自在に取り付けられた複数(
図2では4つ)のローラ53bとを含んで構成されている。枠体53aは、移動台車4上に複数設けられたジャッキ57によって昇降可能に支持されている。従って、リング搬送装置53は、ジャッキ57を介して、移動台車4に連結されている。
ここで、ジャッキ57は、本発明の「組立部フレーム用ジャッキ」に対応するものであり、その基端部が移動台車4に固定されてトンネル径方向に伸縮自在である。また、ジャッキ57の先端部にはリング搬送装置53が設けられている。
【0021】
本実施形態では、リング搬送装置53を構成する4つのローラ53bが、トンネル軸方向に互いに間隔を空けて並んでおり、また、各ローラ53bの中心軸は、トンネル周方向(接線方向)に沿う。それゆえ、各ローラ53bは、トンネル周方向に沿う中心軸を回転中心として回転自在である。各ローラ53bは、その一部が、枠体53aよりもトンネル径方向外側に張り出して露出している。
ジャッキ57の伸長時には、リング搬送装置53が枠部材51よりトンネル径方向外側に突出する(
図1の符号α参照)。一方、ジャッキ57の短縮時には、リング搬送装置53の各ローラ53bが枠部材51よりもトンネル径方向外側に張り出して露出しない程度までリング搬送装置53がトンネル径方向内側に退入される(
図1の符号β参照)。
【0022】
ここで、リング搬送装置53及びジャッキ57は、本発明の「組立部フレーム用搬送手段」に対応するものであり、覆工版組立部フレーム5にて形成された覆工版リング11を覆工版支保部フレーム6に移動させる機能を実現し得る。また、リング搬送装置53は、本発明の「組立部フレーム用覆工版ユニット搬送部」に対応するものであり、そのローラ53bが覆工版リング11に接触可能である。
【0023】
複数のパネル搬送補助ローラ54は、枠部材51のトンネル径方向外側の表面のうち、リング搬送装置53に隣接する部分に、回転自在に設けられている。これらパネル搬送補助ローラ54は、トンネル周方向に互いに間隔を空けて並んでおり、また、各補助ローラ54の中心軸は、トンネル軸方向に沿う。それゆえ、各補助ローラ54は、トンネル軸方向に沿う中心軸を回転中心として回転自在である。各補助ローラ54は、その一部が、枠部材51よりもトンネル径方向外側に張り出して露出している。
【0024】
ウインチワイヤーガイド55は、枠部材51の切羽側端部と坑口側端部との両方に設けられており、溝形鋼からなり、枠部材51の右下端から枠部材51に沿って枠部材51の上部まで延びている。
ウインチ
ワイヤーガイド55は、移動台車4の上部に設けられたウインチ21(後述する
図3(A)参照)から繰り出されたワイヤーW(後述する
図3(A)及び(B)参照)がウインチ21によって巻き取られるときに、ワイヤーWの移動をガイドする役割を果たす。ここで、ウインチ21の回転駆動源は、電動モータ又は油圧モータであり得る。
【0025】
ウインチワイヤーガイド56は、枠部材51の切羽側端部と坑口側端部との両方に設けられており、溝形鋼からなり、枠部材51の左下端から枠部材51に沿って枠部材51の上部まで延びている。
ウインチ
ワイヤーガイド56は、移動台車4の上部に設けられたウインチ(図示せず)から繰り出されたワイヤー(図示せず)が当該ウインチによって巻き取られるときに、当該ワイヤーの移動をガイドする役割を果たす。ここにおけるウインチの構成は前述のウインチ21の構成と同様であるのでその説明を省略する。
【0026】
覆工版支保部フレーム6は、トンネル軸方向に所定幅(例えば2m幅)を有するアーチ状の枠部材61をトンネル軸方向に複数(
図2では6つ)互いに連結して1スパン(例えば12m)として構成されている。尚、枠部材61の幅はこれに限らない。また、覆工版支保部フレーム6の1スパン当たりの枠部材61の個数はこれに限らない。
【0027】
覆工版支保部フレーム6は、各枠部材61ごとに、複数(
図2では10個)のリング搬送装置63を備えている。
枠部材61は、複数の支柱等を介して、移動台車4によって支持されている。
本実施形態では、枠部材61は、トンネル径方向外側から内側に向かって見て矩形状をなし、その矩形状内の開口にはトンネル周方向に沿って10個のリング搬送装置63が互いに間隔を空けて直列に配置されている。
【0028】
リング搬送装置63は、矩形状の枠体63aと、この枠体63aに回転自在に取り付けられた複数(
図2では5つ)のローラ63bとを含んで構成されている。枠体63aは、移動台車4上に複数設けられたジャッキ67によって昇降可能に支持されている。従って、リング搬送装置63は、ジャッキ67を介して、移動台車4に連結されている。
ここで、ジャッキ67は、本発明の「支保部フレーム用ジャッキ」に対応するものであり、その基端部が移動台車4に固定されてトンネル径方向に伸縮自在である。また、ジャッキ67の先端部にはリング搬送装置63が設けられている。
【0029】
本実施形態では、リング搬送装置63を構成する5つのローラ63bが、トンネル軸方向に互いに間隔を空けて並んでおり、また、各ローラ63bの中心軸は、トンネル周方向(接線方向)に沿う。それゆえ、各ローラ63bは、トンネル周方向に沿う中心軸を回転中心として回転自在である。各ローラ63bは、その一部が、枠体63aよりもトンネル径方向外側に張り出して露出している。
ジャッキ67の伸長時には、リング搬送装置63が枠部材61よりトンネル径方向外側に突出する(
図1の符号γ参照)。一方、ジャッキ67の短縮時には、リング搬送装置63の各ローラ63bが枠部材61よりもトンネル径方向外側に張り出して露出しない程度までリング搬送装置63がトンネル径方向内側に退入される。
【0030】
ここで、リング搬送装置63及びジャッキ67は、本発明の「支保部フレーム用搬送手段」に対応するものであり、覆工版支保部フレーム6のトンネル径方向外側にて覆工版リング11をトンネル軸方向に移動させる機能を実現し得る。また、リング搬送装置63は、本発明の「支保部フレーム用覆工版ユニット搬送部」に対応するものであり、そのローラ63bが覆工版リング11に接触可能である。
【0031】
移動台車4の左右両側のトンネル床面3上には、それぞれ、1つ以上の覆工版10を仮置きするための覆工版仮置き部31L,31Rが設けられている(後述する
図6(A)参照)。
本実施形態では、坑口側から右側の覆工版仮置き部31Rまでトンネル軸方向に延びる左右一対のレール32L,32Rがトンネル床面3上に敷設されている。ここで、本実施形態では、前述のレール42Rがレール32Lとして機能している。
また、本実施形態では、坑口側から左側の覆工版仮置き部31Lまでトンネル軸方向に延びる左右一対のレール33L,33Rがトンネル床面3上に敷設されている(後述する
図6(A)参照)。ここで、本実施形態では、前述のレール42Lがレール33Rとして機能している。
【0032】
図6(A)に示す運搬台車35Lは、1つ以上の覆工版10を搭載可能であり、かつ、レール33L,33R上を走行可能である。この運搬台車35Lは、1つ以上の覆工版10を搭載した状態で、トンネルの坑口側から覆工版仮置き部31Lまで走行可能である。
同様に、
図3(A)に示す運搬台車35Rは、1つ以上の覆工版10を搭載可能であり、かつ、レール32L,32R上を走行可能である。この運搬台車35Rは、1つ以上の覆工版10を搭載した状態で、トンネルの坑口側から覆工版仮置き部31Rまで走行可能である。
ここで、運搬台車35L,35Rが本発明の「台車」に対応するものであり、トンネル覆工装置1は、運搬台車35L,35Rを備えている。
【0033】
次に、トンネル覆工装置1を用いるトンネルの覆工方法について、前述の
図1及び
図2に加えて
図3〜
図13を用いて説明する。ここで、
図3(A)及び
図4(A)〜
図8(A)は、それぞれ、前述の
図2のA−A断面に対応する。また、
図3(B)、
図8(B)〜
図10(B)、
図11(B)、及び
図12(B)は、主として、覆工版組立部フレーム5及び覆工版支保部フレーム6の右側面図に対応する。また、
図11(A)及び
図12(A)は、それぞれ、前述の
図2のB−B断面に対応する。また、
図13(A)及び(B)は、トンネル覆工装置1を用いて形成された覆工体15を示す。
【0034】
本実施形態におけるトンネルの覆工方法では、まず、
図3(A)及び(B)に示すように、ジャッキ57,67が短縮されたトンネル覆工装置1が山岳トンネルの坑内に配置される。また、複数の覆工版10を搭載した運搬台車35Rが、覆工版組立部フレーム5の右端の下方の覆工版仮置き部31Rに配置される。
次に、この覆工版
仮置き部31Rにて、トンネルの天端に配置される予定の覆工版10にワイヤーWの先端部を接続する(換言すれば覆工版10の玉掛けを行う)。
【0035】
次に、
図4(A)に示すように、ウインチ21によりワイヤーWを巻き上げることにより、覆工版10の吊り上げを行う。ここで、ウインチ21は、本発明の「覆工版引込装置」に対応するものであり、覆工版10を覆工版仮置き部31Rから覆工版組立部フレーム5のトンネル径方向外側に引き込む機能を実現する。
次に、
図4(B)〜
図5(A)に示すように、ウインチ21によりワイヤーWを更に巻き上げることにより、覆工版10を覆工版組立部フレーム5の上部まで移動させる。この移動時には、覆工版10が覆工版組立部フレーム5のパネル搬送補助ローラ54及びローラ52bに接触するので、これらローラ54,52bの回転により、覆工版10をトンネル周方向に沿って覆工版組立部フレーム5の上部までスムーズに搬送することができる。ここで、覆工版10を移動させるウインチ21も、本発明の「組立部フレーム用搬送手段」を構成し得る。
【0036】
覆工版10を覆工版組立部フレーム5の上部まで移動させた後に、覆工版10を覆工版組立部フレーム5の上部に仮固定する。尚、この仮固定される覆工版10については、図示しないピンを差し込むための孔が予め形成されている。また、覆工版組立部フレーム5の上部(例えば枠部材51の上部)にも、図示しないピンを差し込むための孔が予め形成されている。これら孔にピンを差し込むことで、覆工版10がピンを介して覆工版組立部フレーム5の上部に仮固定される。このときに、覆工版10は、覆工版組立部フレーム5の上部のパネル搬送補助ローラ54及びローラ52bに接触して、これらローラ54,52bを介して、トンネル覆工装置1により支持される。
【0037】
次に、
図5(B)〜
図7(B)に示すように、仮固定された覆工版10の左右両端部(すなわちトンネル周方向両端部)の各々に連結するように、トンネル周方向に沿って複数の覆工版10を直列に連結することで、アーチ型の覆工版リング11を形成する。この覆工版リング11の形成では、
図5(B)〜
図7(B)に示すように、トンネルの右側と左側とで交互に覆工版10を連結することで、トンネルの左右両側から効率良く覆工版リング11を形成することができる。または、覆工版リング11の形成において、まず、仮固定された覆工版10の左右いずれか一方の端部にトンネル周方向に沿って複数の覆工版10を直列に連結して、覆工版リング11の左右いずれか一方の側を形成し、その後に、仮固定された覆工版10の他方の端部にトンネル周方向に沿って複数の覆工版10を直列に連結して、覆工版リング11の他方の側を形成してもよい。尚、
図5(B)及び
図6(A)の白抜き矢印の近傍に示す覆工版10の吊り上げ及び搬送の手法は、覆工版組立部フレーム5の上部まで覆工版10を吊り上げ及び搬送する前述の手法と同様であるので、その説明を省略する。また、
図6(B)及び
図7(A)に示す、覆工版リング11の左右両下端を構成する覆工版10の吊り上げの手法についても同様であることは言うまでもない。
【0038】
形成された覆工版リング11は、覆工版組立部フレーム5のパネル搬送補助ローラ54及びローラ52bに接触して、これらローラ54,52bを介して、トンネル覆工装置1により支持される。
従って、覆工版組立部フレーム5では、そのトンネル径方向外側にて複数の覆工版10を支持しつつアーチ状に連結することにより、アーチ状の覆工版リング11を形成可能である。
尚、本実施形態において、覆工版組立部フレーム5にて覆工版リング11が組み立てられている途中では、ジャッキ57が短縮して、リング搬送装置53のローラ53bが覆工版リング11から離間している。
【0039】
ここで、覆工版リング11を構成する覆工版10同士の連結について、
図14を用いて説明する。
図14は、パネル連結金具の概略構成を示す図である。詳しくは、
図14(A)は、トンネル径方向外側から内側に向かって見たときのパネル連結金具を示す図であり、
図14(B)は
図14(A)のI−I断面図である。
【0040】
パネル連結金具80は、一対のL型金具81と、L型金具81を覆工版10に固定するための複数(
図14では4つ)のボルト82と、L型金具81同士を連結するためのボルト83及びナット84と、により構成される。
L型金具81は山形鋼からなり、互いに直交する2つの板状部分81a及び81bにより構成される。
【0041】
板状部分81aは覆工版10の外面(トンネル径方向外側の表面)に面接触する。板状部分81aには、ボルト82を挿入するための複数(
図14では2つ)の孔81cが貫通形成されている。
板状部分81bは、板状部分81aが覆工版10の外面に面接触しているときに、覆工版10の外面よりトンネル径方向外側に張り出す。板状部分81bには、ボルト83を挿入するための孔81dが貫通形成されている。
覆工版10のトンネル周方向両端部の外面(トンネル径方向外側の表面)には、それぞれ、ボルト82の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を備えるボルト取付孔82aが形成されている。
【0042】
トンネル周方向で互いに隣接して連結される覆工版10については、各々の連結される端部の外面にそれぞれL型金具81が取り付けられる。このL型金具81の取り付けには、前述のボルト82が用いられる。各覆工版10にL型金具81が取り付けられると、L型金具81の板状部分81b同士及び孔81d同士が、それぞれ、トンネル周方向で互いに対向する。この対向するL型金具81同士を、ボルト83及びナット84を用いて締め付けることにより、覆工版10同士がパネル連結金具80を介して固定される。
尚、本実施形態では、覆工版10同士の連結部分に2つのパネル連結金具80を用いているが、当該連結部分に用いられるパネル連結金具80の個数はこれに限らない。また、本実施形態では、覆工版10同士の連結にパネル連結金具80を用いているが、覆工版10同士の連結手法はこれに限らず、例えば、いわゆるワンパス形式の継手金物を用いて覆工版10同士の連結を行ってもよい。
【0043】
尚、覆工版組立部フレーム5での覆工版リング11の組立時には、トンネル内周面の天端(吹付コンクリート2の天端)と、
覆工版組立部フレーム5の上部に仮固定された覆工版10との間の距離は、作業員が、パネル連結金具80を用いる覆工版10同士の連結作業を行うことが可能な程度の距離であり、例えば50cm〜1m程度である。
【0044】
図7(B)に戻り、覆工版リング11の形成が完了すると、前述の仮固定用のピンを取り外して、
図8(A)及び(B)に示すように、ジャッキ57及び67を伸長させる。これにより、覆工版リング11が上昇する。このときに、トンネル内周面の天端(吹付コンクリート2の天端)と、覆工版リング11の上端部との間の距離は、例えば20cm程度である。従って、本実施形態では、覆工版組立部フレーム5にて覆工版リング11が組み立てられた後には、ジャッキ57が伸長して、リング搬送装置53のローラ53bが覆工版リング11に接触して覆工版リング11を支持する。
【0045】
次に、
図9(A)及び(B)に示すように、図示しないウインチ等により、覆工版リング11を覆工版組立部フレーム5から坑口側に引っ張ることで、リング搬送装置53,63を介して、覆工版リング11を覆工版支保部フレーム6の坑口側端部まで移動させる。この移動時には、覆工版リング11が、覆工版組立部フレーム5のローラ53bと、覆工版支保部フレーム6のローラ63bとに接触するので、これらローラ53b,63bの回転により、覆工版リング11をトンネル軸方向にスムーズに搬送することができる。ここで、覆工版リング11を坑口側に引っ張る前述のウインチ等も、本発明の「支保部フレーム用搬送手段」を構成し得る。尚、ジャッキ67は、覆工版リング11がトンネル軸方向に移動されるときに伸長しており、リング搬送装置63のローラ63bが覆工版リング11に接触して覆工版リング11を支持する。
【0046】
次に、覆工版支保部フレーム6の坑口側端部まで移動させた覆工版リング11を、リング連結金具90を用いて、既設の覆工版リング11sに連結固定する。この覆工版リング11,11s同士の連結について、
図15及び
図16を用いて説明する。
図15は、リング連結金具90の概略構成を示す図である。詳しくは、
図15(A)はリング連結金具90の平面図であり、
図15(B)はリング連結金具90の側面図である。
図16は、リング連結金具90の取付状態を示す図である。詳しくは、
図16(A)は、トンネル径方向外側から内側に向かって見たときのリング連結金具90の取付状態を示す図であり、
図16(B)は
図16(A)のII−II断面図である。
【0047】
図15に示すように、リング連結金具90は、棒状の本体部91と、その両端に設けられた板状部92とにより構成される。板状部92には前述のボルト83の雄ねじ部が係合可能な係合凹部93が形成されている。
前述の覆工版リング11,11s同士の連結時には、リング連結金具90の一方の端部の
係合凹部93を、既設の覆工版リング11sに取り付けられたパネル連結金具80のボルト83の雄ねじ部に引っ掛ける。この後、リング連結金具90の他方の端部の
係合凹部93を、覆工版リング11に取り付けられたパネル連結金具80のボルト83の雄ねじ部に引っ掛ける。これにより、切羽側に向かう外力が覆工版リング11に作用しても、覆工版リング11は、リング連結金具90によって、切羽側への移動が制限される。尚、坑口側に向かう外力が覆工版リング11に作用する場合には、覆工版リング11は、既設の覆工版リング11sに当接しているので、坑口側への移動が制限される。尚、本実施形態では、覆工版リング同士の連結にリング連結金具90を用いているが、覆工版リング同士の連結手法はこれに限らず、例えば、いわゆるワンパス形式の継手金物を用いて覆工版リング同士の連結を行ってもよい。
【0048】
尚、本実施形態では、リング連結金具90の取付手法が、前述のように、リング連結金具90の
係合凹部93を、パネル連結金具80のボルト83の雄ねじ部に引っ掛けるのみであるので、簡単にリング連結金具90を取り付けることができる。このリング連結金具90の取り付けは、覆工版支保部フレーム6におけるリング搬送装置63間の開口部69(
図9(B)参照)より作業員が身をのり出して手を伸ばすことで容易に実現することができる。
【0049】
覆工版支保部フレーム6の坑口側端部まで移動させた覆工版リング11を、リング連結金具90を用いて、既設の覆工版リング11sに連結固定した後には、
図10(A)及び(B)に示すように、覆工版組立部フレーム5での覆工版リング11の組み立てと、リング搬送装置53,63による覆工版リング11の坑口側への移動と、リング連結金具90を用いる覆工版リング11同士の連結とを繰り返す。これにより、覆工版支保部フレーム6では、複数(
図10(B)では6つ)の覆工版リング11(すなわち、1スパン分の覆工版リング11)がトンネル軸方向に直列に連結される。これら連結された1スパン分の覆工版リング11は、覆工版支保部フレーム6によって支持される。
【0050】
次に、
図11(A)及び(B)に示すように、脚部支持金具96を覆工版リング11の下端と既設の支持コンクリート9との間に複数設置して、脚部支持金具96を用いて、覆工版リング11の高さ調整を行う。
次に、
図12(A)及び(B)に示すように、覆工版リング11の下端と既設の支持コンクリート9との間の隙間を塞ぐように型枠99を設置すると共に、妻型枠8を設置する。ここで、妻型枠8は、トンネル覆工装置1内から前述の間隙7(
図2参照)を通じて空間S内に配置され得る。尚、本実施形態では、妻型枠8が、1スパン分の覆工版リング11のうち、最も切羽側に位置する覆工版リング11のトンネル軸方向中央部に設けられているが、妻型枠8の設置位置はこれに限らない。例えば、妻型枠8が、1スパン分の覆工版リング11のうち、最も切羽側に位置する覆工版リング11の切羽側端部に設けられてもよい。この場合には、前述のリング連結金具90を用いる代わりに、例えば、いわゆるワンパス形式の継手金物を用いて覆工版リング同士の連結が行われる。
【0051】
次に、前述の充填材注入装置を用いて、
図12(A)及び(B)に示すように、前述の空間Sのうち、覆工版支保部フレーム6に支持された1スパン分の覆工版リング11と、既設の覆工版リング11sと、トンネルの内周面(吹付コンクリート2)と、既設の充填材70sと、妻型枠8と、型枠99と、支持コンクリート9とによって区画される部分に充填材70を注入する。
【0052】
充填材70が硬化して、1スパン分の覆工版リング11及び充填材70を含むアーチ状の覆工体15が自立可能になると、ジャッキ57,67を短縮して、トンネル覆工装置1を切羽側の次の施工場所まで移動させる(
図13(A)及び(B)参照)。従って、ジャッキ57,67は、移動台車4が走行するときに短縮して、リング搬送装置63が覆工版リング11から離間する。
以上の工程を繰り返すことで覆工体15が切羽側に向かって順次構築される。尚、本実施形態では、覆工版10(
覆工版リング11)の厚さは10cm程度であり、硬化した充填材70の厚さは20cm程度であるので、覆工体15の厚さは30cm程度である。
このようにして、トンネル覆工装置1を用いて、トンネルの覆工がなされる。
【0053】
本実施形態によれば、トンネル覆工装置1は、トンネルの内周面の覆工に用いられる装置である。トンネル覆工装置1は、トンネル床面3上をトンネル軸方向に走行可能な門型の移動台車4と、移動台車4のうちトンネル軸方向の一端部に設置されて移動台車4によって支持されるアーチ状の覆工版組立部フレーム5と、移動台車4のうち覆工版組立部フレーム5が設置されている部分にトンネル軸方向で隣接する部分に設置されて移動台車4によって支持されるアーチ状の覆工版支保部フレーム6と、を含んで構成される。覆工版組立部フレーム5では、そのトンネル径方向外側にて複数の覆工版10を支持しつつアーチ状に連結することによりアーチ状の覆工版ユニット(覆工版リング11)を形成可能である。覆工版支保部フレーム6では、複数の覆工版ユニット(覆工版リング11)をトンネル軸方向に直列に連結した状態で複数の覆工版ユニット(覆工版リング11)を支持可能である。これにより、トンネル内の覆工部及びその近傍にて、覆工版ユニット(覆工版リング11)の形成と、複数の覆工版ユニット(覆工版リング11)の一体化とを行うことができるので、トンネルの覆工作業を効率良く行うことができる。
【0054】
また本実施形態によれば、覆工版組立部フレーム5は、覆工版組立部フレーム5にて形成された覆工版ユニット(覆工版リング11)を覆工版支保部フレーム6に移動させる組立部フレーム用搬送手段(リング搬送装置53及びジャッキ57)を備える。これにより、覆工版組立部フレーム5にて形成された覆工版ユニット(覆工版リング11)をスムーズに覆工版支保部フレーム6に移動させることができる。
【0055】
また本実施形態によれば、組立部フレーム用搬送手段(リング搬送装置53及びジャッキ57)は、基端部が移動台車4に固定されてトンネル径方向に伸縮自在な組立部フレーム用ジャッキ(ジャッキ57)と、組立部フレーム用ジャッキ(ジャッキ57)の先端部に設けられて覆工版ユニット(覆工版リング11)に接触可能な組立部フレーム用覆工版ユニット搬送部(リング搬送装置53)とを備える。覆工版組立部フレーム5にて覆工版ユニット(覆工版リング11)が組み立てられている途中では、組立部フレーム用ジャッキ(ジャッキ57)が短縮して、組立部フレーム用覆工版ユニット搬送部(リング搬送装置53)が覆工版ユニット(覆工版リング11)から離間する一方、覆工版組立部フレーム5にて覆工版ユニット(覆工版リング11)が組み立てられた後には、組立部フレーム用ジャッキ(ジャッキ57)が伸長して、組立部フレーム用覆工版ユニット搬送部(リング搬送装置53)が覆工版ユニット(覆工版リング11)に接触して覆工版ユニット(覆工版リング11)を支持する。これにより、組立部フレーム用ジャッキ(ジャッキ57)の短縮時に、覆工版組立部フレーム5にて覆工版10とリング搬送装置53とを接触させることなく、覆工版ユニット(覆工版リング11)の組み立てを円滑に行うことができる。また、組立部フレーム用ジャッキ(ジャッキ57)の伸長時に、覆工版組立部フレーム5にて覆工版ユニット(覆工版リング11)がリング搬送装置53に接触してリング搬送装置53により支持されるので、覆工版ユニット(覆工版リング11)をパネル搬送装置52、パネル搬送補助ローラ54及び枠部材51に接触させることなく、覆工版ユニット(覆工版リング11)をスムーズにトンネル軸方向に移動させることができる。
【0056】
また本実施形態によれば、覆工版支保部フレーム6は、そのトンネル径方向外側にて覆工版ユニット(覆工版リング11)をトンネル軸方向に移動させる支保部フレーム用搬送手段(リング搬送装置63及びジャッキ67)を備える。これにより、覆工版ユニット(覆工版リング11)をスムーズにトンネル軸方向に移動させることができる。
【0057】
また本実施形態によれば、支保部フレーム用搬送手段(リング搬送装置63及びジャッキ67)は、基端部が移動台車4に固定されてトンネル径方向に伸縮自在な支保部フレーム用ジャッキ(ジャッキ67)と、支保部フレーム用ジャッキ(ジャッキ67)の先端部に設けられて覆工版ユニット(覆工版リング11)に接触可能な支保部フレーム用覆工版ユニット搬送部(リング搬送装置63)とを備える。支保部フレーム用ジャッキ(ジャッキ67)は、覆工版ユニット(覆工版リング11)がトンネル軸方向に移動されるときに伸長して、支保部フレーム用覆工版ユニット搬送部(リング搬送装置63)が覆工版ユニット(覆工版リング11)に接触して覆工版ユニット(覆工版リング11)を支持する一方、支保部フレーム用ジャッキ(ジャッキ67)は、移動台車4が走行するときに短縮して、支保部フレーム用覆工版ユニット搬送部(リング搬送装置63)が覆工版ユニット(覆工版リング11)から離間する。これにより、支保部フレーム用ジャッキ(ジャッキ67)の伸長時に、覆工版支保部フレーム6にて覆工版ユニット(覆工版リング11)がリング搬送装置63に接触してリング搬送装置63により支持されるので、覆工版ユニット(覆工版リング11)を枠部材61に接触させることなく、覆工版ユニット(覆工版リング11)をスムーズにトンネル軸方向に移動させることができる。また、支保部フレーム用ジャッキ(ジャッキ67)の短縮時には、リング搬送装置63が覆工版ユニット(覆工版リング11)から離間するので、トンネル覆工装置1の移動時に、充填材70が硬化して自立可能になった覆工版ユニット(覆工版リング11)を含む覆工体15にトンネル覆工装置1が接触することを抑制することができる。
【0058】
また本実施形態によれば、移動台車4の側方のトンネル床面3上には、覆工版10を仮置きするための覆工版仮置き部31L,31Rが設けられる。これにより、覆工版10を前述の内部空間44内に仮置きする必要がないので、作業車両が走行する通路が、仮置きされる覆工版10によって塞がれることを抑制することができる。
【0059】
また本実施形態によれば、トンネル覆工装置1は、1つ以上の覆工版10を搭載可能であり、かつ、トンネル床面3上をトンネル軸方向に走行可能な台車(運搬台車35L,35R)を更に含んで構成される。台車(運搬台車35L,35R)は、1つ以上の覆工版10を搭載した状態で、トンネルの坑口側から覆工版仮置き部31L,31Rまで走行可能である。これにより、覆工版10の運搬を、内部空間44内の作業車両走行用通路を用いることなく、効率良く行うことができる。
【0060】
また本実施形態によれば、トンネル覆工装置1は、覆工版10を覆工版仮置き部31L、31Rから覆工版組立部フレーム5のトンネル径方向外側に引き込む覆工版引込装置(例えばウインチ21)を更に含んで構成される。これにより、比較的簡素な構成で、覆工版10を覆工版組立部フレーム5のパネル搬送装置52及びパネル搬送補助ローラ54まで引き込むことができる。
【0061】
また本実施形態によれば、トンネル覆工装置1は、覆工版支保部フレーム6に支持された複数の覆工版ユニット(覆工版リング11)とトンネルの内周面との間の空間S内に充填材70を注入する充填材注入装置を更に含んで構成される。これにより、覆工版ユニット(覆工版リング11)が覆工版支保部フレーム6によって支持された状態で、充填材注入装置を用いて空間S内に充填材70を注入することができる。
【0062】
また本実施形態によれば、覆工版組立部フレーム5と覆工版支保部フレーム6との間に間隙7が形成されている。充填材70の注入用の妻型枠8を、トンネル覆工装置1内から間隙7を通じて空間S内に配置可能である。これにより、妻型枠8を容易に設置することができる。
【0063】
また本実施形態によれば、覆工版組立部フレーム5における覆工版ユニット(覆工版リング11)の形成では、まず、覆工版ユニット(覆工版リング11)の天端部を構成する覆工版10を覆工版組立部フレーム5の上部に仮固定し、次に、仮固定された覆工版10のトンネル周方向両端部にそれぞれ連結するように、トンネル周方向に沿って複数の覆工版10を直列に連結することで、アーチ状の覆工版ユニット(覆工版リング11)を形成する(
図3(A)〜
図7(B)参照)。これにより、覆工版組立部フレーム5にて、例えば、トンネルの右側と左側とで交互に覆工版10を連結することで、トンネルの左右両側から効率良く覆工版ユニット(覆工版リング11)を形成することができる。
【0064】
また本実施形態によれば、移動台車4のうち、覆工版組立部フレーム5が設置させる前記一端部は、トンネルの切羽側端部である。これにより、トンネルの掘進に追従させて、トンネル覆工装置1により覆工体15の構築を進めることができる。
【0065】
また本実施形態によれば、パネル連結金具80及びリング連結金具90が覆工版ユニット(覆工版リング11)のトンネル径方向外側の表面上に設けられる。これにより、覆工版10同士を連結するための金具が覆工版ユニット(覆工版リング11)の内周面にて露出することを防ぐことができるので、トンネル内への当該金具等の落下を抑制することができると共に、覆工版ユニット(覆工版リング11)の内周面を滑らかな状態とすることができる。
【0066】
また本実施形態によれば、トンネル覆工装置1を用いるトンネルの覆工方法は、覆工版支保部フレーム6に支持された複数の覆工版ユニット(覆工版リング11)とトンネルの内周面との間の空間S内に注入される充填材70の注入用の妻型枠8を、トンネル覆工装置1内から間隙7を通じて空間S内に配置することを含む。これにより、妻型枠8を容易に設置することができる。
【0067】
また本実施形態によれば、トンネル覆工装置1を用いるトンネルの覆工方法は、覆工版ユニット(覆工版リング11)の天端部を構成する覆工版10を覆工版組立部フレーム5の上部に仮固定する工程と、仮固定された覆工版10のトンネル周方向両端部にそれぞれ連結するように、トンネル周方向に沿って複数の覆工版10を直列に連結することで、アーチ状の覆工版ユニット(覆工版リング11)を形成する工程と、を含む(
図3(A)〜
図7(B)参照)。これにより、覆工版組立部フレーム5にて、例えば、トンネルの右側と左側とで交互に覆工版10を連結することで、トンネルの左右両側から効率良く覆工版ユニット(覆工版リング11)を形成することができる。
【0068】
尚、本実施形態では、
図12(A)及び(B)に示すように、前述の充填材注入装置を用いて、前述の空間Sのうち、覆工版支保部フレーム6に支持された1スパン分の覆工版リング11と、既設の覆工版リング11sと、トンネルの内周面(吹付コンクリート2)と、既設の充填材70sと、妻型枠8と、型枠99と、支持コンクリート9とによって区画される部分に充填材70を注入しているが、充填材70の注入の手法はこれに限らない。例えば、妻型枠8を用いる代わりに、前述の空間Sのうち、充填材70が注入される予定の部分の妻側(切羽側)から、充填材70を当該注入予定部分内に吹き付けることで、当該注入予定部分内に充填材70を注入してもよい。この場合には、当該注入予定部分内に充填材70を吹き付ける吹付装置が、本発明の「充填材注入装置」に対応し得る。この場合には、覆工版10には、充填材70を注入するための前述の注入孔を形成する必要がないので、当該注入孔を塞ぐための部材等がトンネル内に落下するおそれをなくすことができると共に、覆工版リング11の内周面を滑らかな状態とすることができる。
【0069】
また、本実施形態では、トンネル覆工装置1の移動時及び覆工版リング11の組立時に、ジャッキ57,67を短縮させて最退入位置とすることで、リング搬送装置53,63を覆工版リング11から離間させる。また、覆工版リング11のトンネル軸方向の移動時及び充填材70の注入時にジャッキ57,67を伸長させて最突出位置とすることで、リング搬送装置53,63を覆工版リング11に接触可能とする。しかしながら、ジャッキ57,67の伸縮の形態はこれに限らない。例えば、トンネル覆工装置1の移動時及び覆工版リング11の組立時に、ジャッキ57,67を短縮させて最退入位置とすることで、リング搬送装置53,63を覆工版リング11から離間させ、覆工版リング11のトンネル軸方向の移動時にジャッキ57,67を伸長させて中間位置とすることで、リング搬送装置53,63を覆工版リング11に接触可能し、充填材70の注入時に、ジャッキ67のみを更に伸長させて最突出位置とすることで、リング搬送装置63により覆工版リング11を更に上昇させるようにしてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、トンネル覆工装置1を新設のトンネルの覆工に用いているが、トンネル覆工装置1を用いるトンネルの形態はこれに限らず、例えば、トンネル覆工装置1を既設のトンネルの覆工に用いてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、トンネル覆工装置1を山岳トンネルの覆工に用いているが、トンネル覆工装置1を用いるトンネルの形態はこれに限らず、例えば、シールドトンネルにおいても、セグメントによる一次覆工体の構築の後に、トンネル覆工装置1を用いて、トンネルの覆工を行うことが可能である。
【0072】
また、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。