特許第6433890号(P6433890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6433890
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体溶液
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20181126BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20181126BHJP
   C08J 3/09 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   C08L79/08
   C08G73/10
   C08J3/09CFG
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-518234(P2015-518234)
(86)(22)【出願日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】JP2014063215
(87)【国際公開番号】WO2014189002
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-106450(P2013-106450)
(32)【優先日】2013年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】繁田 朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 猛
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐己
(72)【発明者】
【氏名】森北 達弥
(72)【発明者】
【氏名】細田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】越後 良彰
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−163800(JP,A)
【文献】 特開2014−031445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/00−79/08
C08G 73/10
C08J 3/09
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸と酸解離定数(pKa)が8.5以下、4.5以上の弱塩基性化合物との塩が、多価アルコールと水との混合溶媒に溶解してなるポリイミド前駆体溶液であって、混合溶媒の水含有量が40質量%以下である、ポリイミド前駆体溶液
【請求項2】
ポリアミック酸として、単離された固体状ポリアミック酸を用いた請求項に記載のポリイミド前駆体溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体溶液に関する。このポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミド成形体は、優れた機械的強度と高い耐熱性を有する。
【背景技術】
【0002】
芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンから得られる芳香族ポリイミドからなる成形体は、耐熱性、機械的強度、電気特性、耐溶剤性などの特性が優れるために、電子産業分野、複写機分野、航空機分野などで広く用いられている。この芳香族ポリイミドは溶解性が乏しいので、通常は、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)等のアミド系溶媒に溶解した溶液を、基材表面上に塗布し、次いで高温で硬化(イミド化)させて、フィルムやベルト等のポリイミド成形体を得ている。 このポリアミック酸溶液に溶媒として前記アミド系溶媒を使用した場合、このアミド系溶媒がポリイミド成形時に大気中に放出されるので、環境適合性の観点から改良すべき点があった。
【0003】
そこで、前記アミド系溶媒を使用しないポリイミド前駆体溶液が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1〜6にはポリアミック酸と塩基性化合物との塩を、実質的に有機溶媒を含まない水に溶解させて得られるポリイミド前駆体溶液が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜6で開示されたような、高濃度の水を含有するポリイミド前駆体溶液は、水固有の高い表面張力の為、基材表面に塗布して成形する際にレベリング性が充分ではなく、塗膜のはじき現象が発生したり、厚みムラが生じやすいという問題があった。 また保存安定性にも問題があった。
【0006】
また、特許文献7、8には、特定のアルコールを含む溶媒を反応溶媒とし、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の強塩基性化合物の存在下に、テトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体溶液が提案されている。しかしながら、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の強塩基性化合物が配合されたアルコールを重合溶媒として用いると、高重合度のポリイミド前駆体を得ることが困難である上、保存安定性にも問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−59832号公報
【特許文献2】特開2002−226582号公報
【特許文献3】国際公開2012/8543号
【特許文献4】国際公開2013/35806号
【特許文献5】国際公開2013/105610号
【特許文献6】特開2013−144750号公報
【特許文献7】特開2013−144751号公報
【特許文献8】特開2014−31445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、機械的強度に優れたポリイミド成形体を製造することができ、環境適合性に優れ、保存安定性やレベリング性が良好なポリイミド前駆体溶液の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリアミック酸と特定の塩基性化合物との塩が特定の溶媒に溶解し、均一なポリイミド前駆体溶液が得られ、その溶液から機械的強度に優れたポリイミド成形体を製造することができることを見出し本発明の完成に至った。
即ち、本発明は下記を趣旨とするものである。
1) ポリアミック酸と酸解離定数(pKa)が8.5以下、4.5以上の弱塩基性化合物との塩が、多価アルコールを含む溶媒に溶解してなるポリイミド前駆体溶液。
2) 多価アルコールを含む溶媒が多価アルコールと水との混合溶媒である前記ポリイミド前駆体溶液。
3) 混合溶媒が70質量%未満の水含有量を示す前記ポリイミド前駆体溶液。
4) ポリアミック酸として、単離された固体状ポリアミック酸を用いた前記ポリイミド前駆体溶液。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリイミド前駆体溶液は、アミド系溶媒を使用しないので環境適合性に優れ、保存安定性や塗膜のレベリング性が良好であり、さらに多価アルコールという比較的沸点の高い溶媒を使用するので成形の際のプロセス制御が容易となり、厚みの均一な塗膜が得られる。従い、本発明のポリイミド前駆体溶液は、ポリイミド前駆体溶液として好適に使用することができ、この溶液からは優れた特性を有するポリイミド成形体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明におけるポリイミド前駆体は芳香族ポリイミド前駆体であって、一般式(1)で表される構成ユニットを有するポリアミック酸のホモポリマーまたはコポリマーである。このポリイミド前駆体から得られるポリイミドは、非熱可塑性ポリイミドであることが好ましく、そのガラス転移温度は250℃以上であることが好ましい。
【0012】
【化1】
【0013】
ここで、Rは少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、4価のうちの2価ずつは対をなし、各一対の2価は炭素6員環内の隣接する炭素原子により提供される。
【0014】
また、R’は1〜4個の炭素6員環を持つ2価の芳香族残基を示す。
【0015】
前記ポリアミック酸はテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得ることができる。
【0016】
前記テトラカルボン酸成分は、芳香族環を有するテトラカルボン酸類(テトラカルボン酸、その二無水物或いはエステル化物など)であって、具体的には、例えば、ピロメリット酸類、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸類、4,4’−オキシジフタル酸類、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸類、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸類、p−ターフェニルテトラカルボン酸類、m−ターフェニルテトラカルボン酸類等、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0017】
これらの中で、ピロメリット酸類、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸類、4,4’−オキシジフタル酸類、及びそれらの混合物が好ましい。
【0018】
前記ジアミン成分は、芳香族ジアミンであって、具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−オキシジアニリン)、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4−トルエンジアミン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−ベンゼン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メタン、2,4−ジアミノトルエンなどを挙げることができる。
【0019】
これらの中で、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、及びそれらの混合物が好ましい。
【0020】
前記ポリアミック酸としては、単離された固体状ポリアミック酸を用いることが好ましい。 単離された固体状ポリアミック酸を用いる、とは、本発明のポリイミド前駆体溶液の製造に際し、予め別の系で重合された固体状ポリアミック酸を用いる、という意味である。 固体状ポリアミック酸としては、例えば、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを懸濁重合して得られるポリアミック酸粉体を好ましく用いることができる。 懸濁重合法によるポリアミック酸は、例えば、特許第2951484号公報や3386856号公報等に記載されている方法で得ることが出来る。即ち、前記テトラカルボン酸成分とジアミン成分の略等モルを、このポリアミック酸を溶解しない貧溶媒中で反応させて得ることができる。この反応温度は、−20〜60℃、特に0〜30℃が好ましい。このように貧溶媒中で反応させると、反応生成物であるポリアミック酸は、貧溶媒には溶解せずに、溶媒中に懸濁状態になっているので、濾過・乾燥などの通常の方法によって溶媒を除去して粉体状のポリアミック酸を得ることが出来る。ここで、貧溶媒とは、25℃でポリアミック酸の溶解度が溶媒100gに対し1g未満である溶媒を言い、具体的には、エーテル類、ケトン類等の溶媒を用いることができる。これらの中で、THF(テトラヒドロフラン)、アセトン及びそれらの混合物が好ましく用いられる。 このような懸濁重合法により高重合度の固体状ポリアミック酸を得ることができ、これを用い、高重合度のポリイミド前駆体溶液を得ることができる。 得られた粉体状のポリアミック酸中の貧溶媒の含有量は粉体全質量に対し、1質量%未満としておくことが好ましい。
【0021】
本発明のポリイミド前駆体溶液は、前記ポリアミック酸と酸解離定数(pKa)が8.5以下、4.5以上、好ましくは8.5以下、5.5以上、より好ましくは8.5以下、7.0以上の弱塩基性化合物からなる塩をポリイミド前駆体として使用する。 ここで、塩基性化合物のpKaとは、塩基の強さを定量的に表すための指標のひとつであり、その塩基の共役酸の酸解離定数の値である。すなわち、酸からプロトンが放出される解離反応の平衡定数(Ka)の負の常用対数で表され、測定温度25℃で酸塩基滴定を行って求められる。 pKaの値は大きいほど強い塩基であることを示す。pKaが8.5以下、4.5以上の弱塩基性化合物の代表的な例としては、含窒素複素環式化合物を挙げることができる。具体的には、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン等のピリジン誘導体、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−4−エチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、キノリン、イソキノリン等のキノリン誘導体等を挙げることが出来る。これらの中で、1,2−ジメチルイミダゾールおよび2ーエチル−4−メチルイミダゾールが好ましく用いられる。 なお、複数のpKa値を有する塩基性化合物については、最大値を、その塩基性化合物のpKa値とする。
【0022】
前記ポリアミック酸に対する弱塩基性化合物の配合量としては、ポリアミック酸の構成ユニット1モルに対し、1〜4モルが好ましく、1.5〜3モルがより好ましい。弱塩基性化合物は2種以上組み合わせて配合されてよく、その場合、それらの合計配合量が上記範囲内であればよい。
【0023】
本発明のポリイミド前駆体溶液は、前記ポリアミック酸に、弱塩基性化合物と多価アルコールとを含む溶媒を加えて溶解させ溶液とすることにより得られる。ここで、多価アルコールとは、一分子内に2個以上のアルコール性水酸基を有する有機化合物を言う。多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等を挙げることが出来る。これらの中でエチレングリコール、ジエチレングルコールが好ましく用いられる。
【0024】
前記多価アルコールを含む溶媒として、多価アルコールのみからなる溶媒を用いることができるし、または多価アルコールと水との混合溶媒を用いることができる。いずれの溶媒においても、多価アルコールは1種またはそれ以上組み合わせて使用してもよい。原料コスト低減の観点から、好ましくは多価アルコールと水との混合溶媒を用いる。 多価アルコールと水との混合溶媒中の水含有量は、保存安定性、塗膜レベリング性およびフィルム強度の観点から、溶媒全質量に対して70質量%未満であることが好ましく、60質量%未満であることがさらに好ましい。
【0025】
前記多価アルコールを含む溶媒は、多価アルコールおよび水以外の溶媒を含まないことが好ましく、特にアミド系溶媒の含有量は、環境適合性の観点から、溶媒全質量に対して2質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがさらに好ましい。アミド系溶媒とは、水素原子がアルキル基により置換されていてもよいアミド結合を有する有機溶媒のことであり、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0026】
溶液とする際、前記ポリイミド前駆体の濃度は、0.1〜60質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%が更に好ましい。ポリイミド前駆体の濃度は、ポリアミック酸と弱塩基性化合物との合計質量の、ポリイミド前駆体溶液全質量に対する割合として算出される。
【0027】
また、前記ポリイミド前駆体の固有粘度[η]は、0.7以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.2以上が更に好ましい。[η]の値が大きいほど、閉環させポリイミドとした時に強度や弾性率等の特性が良好なものが得られやすい。なお、[η]は重合体の分子量と直接関係する値であり、N,N−ジメチルアセトアミド溶媒中でポリイミド前駆体濃度0.5質量%、25℃で測定する。
【0028】
本発明のポリイミド前駆体溶液は、弱塩基性化合物が共存する多価アルコールを含む溶媒中で、テトラカルボン酸成分とジアミン成分を直接反応させることにより得ることもできる。 ただ、このようにすると、重合反応中にモノマである前記テトラカルボン酸成分の分解反応が進行し高重合度のポリアミック酸が得られにくいことがあるので、前記したように、単離された固体状ポリアミック酸と弱塩基性化合物とを多価アルコールを含む溶媒に溶解させることにより得ることが好ましい。 ポリイミド前駆体溶液は、多価アルコールや水を含有すると、長期間保存により、ポリアミック酸の分子量が低下することがある。 従い、ポリイミドの成形直前に、粉末状のポリアミック酸を溶液とすることが好ましい。 また、得られたポリアミック酸溶液は、保存温度としては、10℃以下とすることが好ましく、0℃以下がより好ましい。
【0029】
本発明のポリイミド前駆体溶液は、通常の方法でフィルムやベルトに加工したり、被膜を形成させたりすることができる。フィルムに加工するには、ポリイミド前駆体の溶液をフィルムアプリケーターによって所望の厚さにガラス板等の基材上にキャストし、溶媒を除去し、次いで加熱してイミド化すると、ポリイミドフィルムが得られる。同様にして目的の基材上に溶液を塗布して、乾燥、加熱すれば、基材をポリイミドで被覆することができる。
【0030】
さらに、本発明のポリイミド前駆体溶液は、必要に応じ、例えば、顔料、導電性のカーボンブラック及び金属粒子のような充填材、リチウム2次電池活物質、研磨材、誘電体、潤滑剤等公知のフィラーを配合することができる。また、他の重合体や例えばエーテル類、一価アルコール類、ケトン類、エステル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類等の溶媒を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0031】
本発明のポリイミド前駆体溶液から製造されたフィルム、および被膜は、例えば、各種電気絶縁フィルム(耐熱絶縁テープ、耐熱粘着テープ、高密度磁気記録ベース、コンデンサー、FPC等)、複写機用中間転写ベルト、複写機用定着ベルト、リチウム2次電池用電極、フッ素樹脂やグラファイト等を充填した摺動部材、ガラス繊維や炭素繊維で強化した構造部材、各種スペーサ(パワートランジスターの絶縁スペーサ、磁気ヘッドスペーサ、パワーリレーのスペーサ、トランスのスペーサ等)、電線・ケーブル絶縁被覆、エナメルコーティング材(太陽電池、低温貯蔵タンク、宇宙断熱材、集積回路、スロットライナー等)、限外濾過膜、ガス分離膜等の製造に好適に用いられる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
<ポリアミック酸粉体の調製>
実施例及び比較例で使用したポリアミック酸粉体を以下のようにして調製した。
【0034】
<ポリアミック酸粉体A>
特許第2951484号実施例1記載の方法により、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−オキシジアニリン(ODA)からポリアミック酸粉体を得た。すなわち、PMDA21.9gをTHF500mlに溶解し、0℃に保った。これにODA20.0gのTHF溶液500mlを徐々に加え、0℃で2時間反応させポリアミック酸を含有する懸濁液を得た。懸濁液からポリアミック酸を単離してポリアミック酸の粉体を得た。このときのポリアミック酸の[η]は、1.50であった。これをポリアミック酸粉体Aとする。
【0035】
<ポリアミック酸粉体B>
特許第2951484号実施例3記載の方法により、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と4,4’−オキシジアニリン(ODA)からポリアミック酸粉体を得た。すなわち、BPDA2.96gをTHF50mlに懸濁し、0℃に保った。これにODA2.00gをTHF50mlに溶解した溶液を徐々に加え、0℃で2時間反応させポリアミック酸の懸濁液を得た。懸濁液からポリアミック酸を単離してポリアミック酸の粉体を得た。このときのポリアミック酸の[η]は、2.19であった。これをポリアミック酸粉体Bとする。
【0036】
<ポリアミック酸粉体C>
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)からポリアミック酸粉体を得た。すなわち、BPDA8.06gをアセトン60mlに懸濁し、室温(20℃)に保った。これにPDA2.91gをアセトン129mlに溶解した溶液を徐々に加え、室温で1時間反応させポリアミック酸の懸濁液を得た。懸濁液からポリアミック酸を単離してポリアミック酸の粉体を得た。このときのポリアミック酸の[η]は、1.85であった。これをポリアミック酸粉体Cとする。
【0037】
下記の実施例及び比較例において得られたポリイミド前駆体溶液の特性等は、以下の方法で評価した。
【0038】
<保存安定性>
ポリイミド前駆体溶液を25℃で100時間放置した後のポリアミック酸の固有粘度を測定し、その変化率が10%未満である場合、保存安定性が「良好」、その変化率が10%以上である場合、保存安定性が「不良」と判定した。
【0039】
<レベリング性>
ポリイミド前駆体溶液を基材であるガラス板上にフィルムアプリケーターを用いて塗布し、その塗膜を、窒素ガス雰囲気下、50℃で10分間、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で20分間、300℃で20分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、厚みが約20μmのポリイミドフィルム塗膜を形成した。 その後、ポリイミドフィルムをガラス板から剥離して10平方cm角に切り出した後、任意の9か所の厚みを測定した。その厚みの変動幅が平均値に対し±10%未満である場合、レベリング性が「良好」、その変動幅が±10%以上である場合、レベリング性が「不良」と判定した。
【0040】
<フィルム強度特性>
前記ポリイミドフィルムの引張強度をASTM D882に基づいて測定し、ポリイミドフィルムの引張強度が12kg/mm以上である場合、機械的強度が「良好」、ポリイミドフィルムの引張強度が12kg/mm未満である場合、機械的強度が「不良」と判定した。
【0041】
[実施例1]
ポリアミック酸粉体Aと1,2−ジメチルイミダゾ−ル (pKa 7.7)との混合物(1,2−ジメチルイミダゾ−ルはポリアミック酸の構成ユニット1モルに対し2.5モル使用)を25℃でエチレングリコールに溶解し、ポリイミド前駆体として15質量%の濃度を有するポリイミド前駆体溶液A−1を得た。 この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
ポリアミック酸粉体Bと1,2−ジメチルイミダゾ−ル (pKa 7.7)との混合物(1,2−ジメチルイミダゾ−ルはポリアミック酸の構成ユニット1モルに対し2.5モル使用)を25℃でエチレングリコールに溶解し、ポリイミド前駆体として15質量%の濃度を有するポリイミド前駆体溶液B−1を得た。 この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0043】
[実施例3]
塩基性化合物として、2ーエチル−4−メチルイミダゾール(pKa 8.3)を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−2を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0044】
[実施例4]
溶媒として、ジエチレングリコールを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体溶液A−2を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0045】
[実施例5]
溶媒として、ジエチレングリコールを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−3を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0046】
[実施例6]
溶媒として、エチレングリコールと水の混合溶媒(混合質量比 エチレングリコール:水=80:20)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体溶液A−3を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0047】
[実施例7]
溶媒として、エチレングリコールと水の混合溶媒(混合質量比 エチレングリコール:水=80:20)を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−4を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0048】
[実施例8]
ポリアミック酸粉体Cと1,2−ジメチルイミダゾ−ル (pKa 7.7)との混合物(1,2−ジメチルイミダゾ−ルはポリアミック酸の構成ユニット1モルに対し2.5モル使用)を25℃でエチレングリコールと水の混合溶媒(混合質量比 エチレングリコール:水=80:20)に溶解し、ポリイミド前駆体として15質量%の濃度を有するポリイミド前駆体溶液C−1を得た。 この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0049】
[実施例9]
溶媒として、エチレングリコールと水の混合溶媒(混合質量比 エチレングリコール:水=50:50)を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−5を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0050】
[実施例10]
溶媒として、ジエチレングリコールと水の混合溶媒(混合質量比 ジエチレングリコール:水=60:40)を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてポリイミド前駆体溶液C−2を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0051】
[比較例1]
溶媒として、メタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体溶液A−4を得ようとしたが、ポリアミック酸粉体Aが完全に溶解せず均一な溶液を得ることができなかった。
【0052】
[比較例2]
溶媒として、エタノールを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−6を得ようとしたが、ポリアミック酸粉体Bが完全に溶解せず均一な溶液を得ることができなかった。
【0053】
[比較例3]
溶媒をn−ブタノールとしたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−7を得ようとしたが、ポリアミック酸粉体Bが完全に溶解せず均一な溶液を得ることができなかった。
【0054】
[比較例4]
塩基性化合物として、強塩基性化合物であるトリエチルアミン(pKa 11.8)としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体溶液A−5を得た。これらの前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0055】
[比較例5]
塩基性化合物として、強塩基性化合物であるトリエチレンジアミン(pKa 8.8)としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体溶液A−6を得た。これらの前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0056】
[比較例6]
溶媒を水としたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−8を得た。これらの前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0057】
[比較例7]
溶媒を水、塩基性化合物を強塩基性化合物であるトリエチルアミン(pKa 11.8)としたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−9を得た。これらの前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
前記結果から、本発明のポリイミド前駆体溶液は、保存安定性やレベリング性に優れることが判る。 さらに、このポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミドフィルムは優れた機械的強度を有していることが判る。また、アミド系溶媒を使用していないので、環境適合性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のポリイミド前駆体溶液は、FPC等の電気絶縁フィルム、複写機用ベルト、リチウム2次電池用電極、電線・ケーブル絶縁被覆、離膜等の製造に好適に用いることができる。