【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
<ポリアミック酸粉体の調製>
実施例及び比較例で使用したポリアミック酸粉体を以下のようにして調製した。
【0034】
<ポリアミック酸粉体A>
特許第2951484号実施例1記載の方法により、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−オキシジアニリン(ODA)からポリアミック酸粉体を得た。すなわち、PMDA21.9gをTHF500mlに溶解し、0℃に保った。これにODA20.0gのTHF溶液500mlを徐々に加え、0℃で2時間反応させポリアミック酸を含有する懸濁液を得た。懸濁液からポリアミック酸を単離してポリアミック酸の粉体を得た。このときのポリアミック酸の[η]は、1.50であった。これをポリアミック酸粉体Aとする。
【0035】
<ポリアミック酸粉体B>
特許第2951484号実施例3記載の方法により、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と4,4’−オキシジアニリン(ODA)からポリアミック酸粉体を得た。すなわち、BPDA2.96gをTHF50mlに懸濁し、0℃に保った。これにODA2.00gをTHF50mlに溶解した溶液を徐々に加え、0℃で2時間反応させポリアミック酸の懸濁液を得た。懸濁液からポリアミック酸を単離してポリアミック酸の粉体を得た。このときのポリアミック酸の[η]は、2.19であった。これをポリアミック酸粉体Bとする。
【0036】
<ポリアミック酸粉体C>
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)からポリアミック酸粉体を得た。すなわち、BPDA8.06gをアセトン60mlに懸濁し、室温(20℃)に保った。これにPDA2.91gをアセトン129mlに溶解した溶液を徐々に加え、室温で1時間反応させポリアミック酸の懸濁液を得た。懸濁液からポリアミック酸を単離してポリアミック酸の粉体を得た。このときのポリアミック酸の[η]は、1.85であった。これをポリアミック酸粉体Cとする。
【0037】
下記の実施例及び比較例において得られたポリイミド前駆体溶液の特性等は、以下の方法で評価した。
【0038】
<保存安定性>
ポリイミド前駆体溶液を25℃で100時間放置した後のポリアミック酸の固有粘度を測定し、その変化率が10%未満である場合、保存安定性が「良好」、その変化率が10%以上である場合、保存安定性が「不良」と判定した。
【0039】
<レベリング性>
ポリイミド前駆体溶液を基材であるガラス板上にフィルムアプリケーターを用いて塗布し、その塗膜を、窒素ガス雰囲気下、50℃で10分間、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で20分間、300℃で20分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、厚みが約20μmのポリイミドフィルム塗膜を形成した。 その後、ポリイミドフィルムをガラス板から剥離して10平方cm角に切り出した後、任意の9か所の厚みを測定した。その厚みの変動幅が平均値に対し±10%未満である場合、レベリング性が「良好」、その変動幅が±10%以上である場合、レベリング性が「不良」と判定した。
【0040】
<フィルム強度特性>
前記ポリイミドフィルムの引張強度をASTM D882に基づいて測定し、ポリイミドフィルムの引張強度が12kg/mm
2以上である場合、機械的強度が「良好」、ポリイミドフィルムの引張強度が12kg/mm
2未満である場合、機械的強度が「不良」と判定した。
【0041】
[実施例1]
ポリアミック酸粉体Aと1,2−ジメチルイミダゾ−ル (pKa 7.7)との混合物(1,2−ジメチルイミダゾ−ルはポリアミック酸の構成ユニット1モルに対し2.5モル使用)を25℃でエチレングリコールに溶解し、ポリイミド前駆体として15質量%の濃度を有するポリイミド前駆体溶液A−1を得た。 この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
ポリアミック酸粉体Bと1,2−ジメチルイミダゾ−ル (pKa 7.7)との混合物(1,2−ジメチルイミダゾ−ルはポリアミック酸の構成ユニット1モルに対し2.5モル使用)を25℃でエチレングリコールに溶解し、ポリイミド前駆体として15質量%の濃度を有するポリイミド前駆体溶液B−1を得た。 この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0043】
[実施例3]
塩基性化合物として、2ーエチル−4−メチルイミダゾール(pKa 8.3)を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−2を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0044】
[実施例4]
溶媒として、ジエチレングリコールを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体溶液A−2を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0045】
[実施例5]
溶媒として、ジエチレングリコールを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−3を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0046】
[実施例6]
溶媒として、エチレングリコールと水の混合溶媒(混合質量比 エチレングリコール:水=80:20)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体溶液A−3を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0047】
[実施例7]
溶媒として、エチレングリコールと水の混合溶媒(混合質量比 エチレングリコール:水=80:20)を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−4を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0048】
[実施例8]
ポリアミック酸粉体Cと1,2−ジメチルイミダゾ−ル (pKa 7.7)との混合物(1,2−ジメチルイミダゾ−ルはポリアミック酸の構成ユニット1モルに対し2.5モル使用)を25℃でエチレングリコールと水の混合溶媒(混合質量比 エチレングリコール:水=80:20)に溶解し、ポリイミド前駆体として15質量%の濃度を有するポリイミド前駆体溶液C−1を得た。 この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0049】
[実施例9]
溶媒として、エチレングリコールと水の混合溶媒(混合質量比 エチレングリコール:水=50:50)を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−5を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0050】
[実施例10]
溶媒として、ジエチレングリコールと水の混合溶媒(混合質量比 ジエチレングリコール:水=60:40)を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてポリイミド前駆体溶液C−2を得た。この前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0051】
[比較例1]
溶媒として、メタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体溶液A−4を得ようとしたが、ポリアミック酸粉体Aが完全に溶解せず均一な溶液を得ることができなかった。
【0052】
[比較例2]
溶媒として、エタノールを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−6を得ようとしたが、ポリアミック酸粉体Bが完全に溶解せず均一な溶液を得ることができなかった。
【0053】
[比較例3]
溶媒をn−ブタノールとしたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−7を得ようとしたが、ポリアミック酸粉体Bが完全に溶解せず均一な溶液を得ることができなかった。
【0054】
[比較例4]
塩基性化合物として、強塩基性化合物であるトリエチルアミン(pKa 11.8)としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体溶液A−5を得た。これらの前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0055】
[比較例5]
塩基性化合物として、強塩基性化合物であるトリエチレンジアミン(pKa 8.8)としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体溶液A−6を得た。これらの前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0056】
[比較例6]
溶媒を水としたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−8を得た。これらの前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0057】
[比較例7]
溶媒を水、塩基性化合物を強塩基性化合物であるトリエチルアミン(pKa 11.8)としたこと以外は、実施例2と同様にしてポリイミド前駆体溶液B−9を得た。これらの前駆体溶液の特性評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
前記結果から、本発明のポリイミド前駆体溶液は、保存安定性やレベリング性に優れることが判る。 さらに、このポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミドフィルムは優れた機械的強度を有していることが判る。また、アミド系溶媒を使用していないので、環境適合性に優れている。