(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記添加剤パッケージが、低温流動性向上剤、分散剤、伝導性改良剤、解乳化剤、消泡剤、潤滑添加剤、酸化防止剤、セタン価向上剤、清浄剤、染料、マーカー、腐食防止剤、金属不活性化剤、金属不動態化剤、氷結防止剤、H2S捕集剤、殺生物剤、付臭剤からなる群から選ばれる1以上の添加剤を含有し、及び/又は、その他の相溶化剤が存在することを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト層だけでなくポリマー主鎖において、分散剤繰返し単位を有し、低硫黄含量であることを特徴とする、グラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレート(PAMAs)の製造方法、該方法によって得られる製品及び、該製品の、燃料、特に、中間留分及びその混合物への添加剤としての使用に関する。本発明は、さらに、本発明の製造方法により得られる、グラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレートを含む組成物、該組成物の、燃料、特に、中間留分及びその混合物への添加剤成分としての使用、及び、燃料油及び燃料油組成物、特に、中間留分燃料及びその混合物の低温流動特性を向上させるための使用に関する。
【0002】
ディーゼル油(例えば、暖房用の油)、ジェット燃料、燃料油、灯油等で代表される、中間留分燃料が、固体析出物を形成しやすい好ましくない条件下で長期間にわたって貯蔵されうることは当業者によく知られている。これらの析出物は、空気の存在下で室温で貯蔵される間に製造され、ストレーナー、フィルター、スクリーン等に蓄積し、それらと油が接触して、最終的には、穴がつまり、作業における問題の原因となる。不溶の沈降物の形成は、例えば、フィルター流量の減少、または、ノズル詰まりの増加をもたらす。
【0003】
老化された製品及び沈降物の形成を回避するために、鉱油の製油所において、燃料ターミナル又は燃料ブレンダーの時点で、ある種の添加剤がディーゼル燃料及び暖房用の油に添加される。通常、使用される添加剤パッケージには、低温流動性向上剤及び氷結防止剤と同様に、主要な成分として、酸化防止剤、清浄添加剤及び任意に、セタン価向上剤が含まれる。
【0004】
驚くべきことに、グラフト化された側鎖だけでなくポリマー主鎖の両方において、N−分散剤モノマーを有する、グラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーが、中間留分用の添加剤パッケージを安定化するために使用できることが発見された。このポリマーは、粒子、老化された成分、例えば、スラッジ及びガム及び/又はn−パラフィンワックス結晶を分散させることができる。
【0005】
現在の燃料の仕様は、硫黄含量を数ppmに制限している。それは、燃料を安定化させるために又は別に燃料のパフォーマンスを向上させるために添加される添加剤は、好ましくは、全く硫黄を含まないことを意味する。
【0006】
塩基性窒素置換基を含むポリマーが、油溶性界面活性剤として使用できることはよく知られている(C.B. Biswell et al,“New Polymeric Dispersants for Hydrocarbon Systems”, Industrial and Engineering Chemistry 1955, 47, 8, 1598−1601)。そのようなN−分散剤ポリマーは、N−含有モノマーを共重合させることにより製造できる。現在の分散剤製品は、約750ppmの硫黄を含有する。
【0007】
US特許No.5,035,719には、中間留分の貯蔵安定性を向上させるための分散剤ポリアルキル(メタ)アクリレートの使用が記載されている。この特許には、製造されたポリマーの硫黄含量についてクレームに記載されていないばかりか、該ポリマーを製造する方法も提案されていない。
【0008】
このため、本発明は、ほぼ硫黄フリーのN−分散剤ポリアルキル(メタ)アクリレートの製造方法を見出すことを目的とする。
【0009】
本発明の方法は、鍵となる工程として:
・低い硫黄含量を有する、重合油及び希釈油の使用;
・処方からのチオール連鎖移動剤の除去;及び
・チオール連鎖移動剤の除去の後の、分子量を制御するための方法条件の改良
を含むべきである。
【0010】
発明の要約
本発明の第1の態様において、ポリマー主鎖として、
(A1)式(I)
【化1】
[式中、
Rは、H又はCH
3であり、
R
1は、直鎖状又は分岐状で、飽和又は不飽和の、炭素原子数1〜5のアルキル基、又は、炭素原子数3〜5のシクロアルキル基を示し、
R
2及びR
3は、独立して、H又は式−COOR’基を示し、
R’は、H、又は、直鎖状又は分岐状で、飽和又は不飽和の、炭素原子数1〜5のアルキル基、又は、炭素原子数3〜5のシクロアルキル基である。]の1以上のエチレン性不飽和エステル化合物0〜40質量%、
(A2)式(II)
【化2】
[式中、
Rは、H又はCH
3であり、
R
4は、直鎖状又は分岐状で、飽和又は不飽和の、炭素原子数6〜15のアルキル基を示し、
R
5及びR
6は、独立して、H又は式−COOR’’基を示し、
R’’は、H、又は、直鎖状又は分岐状で、飽和又は不飽和の、炭素原子数6〜15のアルキル基である。]の1以上のエチレン性不飽和エステル化合物20〜93.5質量%、
(A3)式(III)
【化3】
[式中、
Rは、H又はCH
3であり、
R
7は、直鎖状又は分岐状で、飽和又は不飽和の、炭素原子数16〜30のアルキル基を示し、
R
8及びR
9は、独立して、H又は式−COOR’’’基を示し、
R’’’は、H、又は、直鎖状又は分岐状で、飽和又は不飽和の、炭素原子数16〜30のアルキル基である。]の1以上のエチレン性不飽和エステル化合物5〜60質量%、
及び
(A4)ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン(NVP)、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMAm)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びジメチルアミノエチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1つのN−分散剤モノマー1〜40質量%、
ただし、成分(A1)〜(A4)の合計が100質量%である、
を含有する、モノマー単位、及び、
(A5)ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン(NVP)、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMAm)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びジメチルアミノエチルアクリルアミドからなる群より選ばれ、前記ポリマー主鎖にグラフト化される、少なくとも1つのN−分散剤モノマー0.5〜10質量%、
ただし、成分(A1)〜(A5)の合計が100質量%である、
を含有する、グラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー(A)の製造方法であって、
前記方法が、以下の工程、
(a)鉱油を反応器に投入する工程、
(b)上述のモノマー単位(A1)〜(A4)及び第1の反応開始剤のモノマー混合物を製造する工程、
(c)工程(b)で製造された前記混合物を、好ましくは1〜5時間の間に、特に好ましくは2〜3時間の間に、工程(a)の鉱油に添加する工程、
(d)工程(c)で得られた前記混合物を、好ましくは、いかなる連鎖移動剤の不存在下で、重合する工程、
(e)任意に、工程(c)で得られたポリマーを単離する工程、
(f)上述のモノマー単位(A5)を添加する工程、
(g)第2の反応開始剤を添加する工程、
(h)工程(g)で得られた混合物を重合する工程、
(i)任意に、工程(h)で得られたポリマーを単離する工程、及び/又は、
(j)工程(h)で得られたポリマー混合物又は工程(i)で得られた単離されたポリマーを、鉱油で希釈して、所望の、油中のポリマー濃度を得る工程、
を含有する、グラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー(A)の製造方法を提供する。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明の文脈において、「アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートの両方又はその混合物を言う。アルキルメタクリレートが好ましい。
【0012】
成分(A1)の例は、制限されず、飽和アルコール由来の、アクリレート、メタクリレート、フマレート及びマレイン酸エステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、nーブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート及びペンチル(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート及びビニル(メタ)アクリレート等の不飽和アルコール由来の(メタ)アクリレート;及び相応のフマレート及びマレイン酸エステルを含む。
【0013】
モノマー(A1)は、成分(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)の全質量に基づいて、0〜40質量%、好ましくは1〜20質量%の量で存在する。
【0014】
本発明のさらなる実施態様において、成分(A1)は、モノマー単位として、
式(I)
【化4】
[式中、
Rは、H又はCH
3、好ましくはCH
3であり、
R
1は、直鎖状又は分岐状で、飽和又は不飽和の、炭素原子数1〜5のアルキル基、又は、炭素原子数3〜5のシクロアルキル基を示し、及び、
R
2及びR
3は、独立して、Hを示す。]の1以上のエチレン性不飽和エステル化合物を含む。
【0015】
成分(A2)の例は、制限されず、飽和アルコール由来の、(メタ)アクリレート、フマレート及びマレイン酸エステル、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート及びノニル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、2−n−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート及びペンタデシル(メタ)アクリレート;ボルニル(メタ)アクリレート、2,4,5−トリ−t−ブチル−3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5−テトラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;10,11−エポキシヘキサデシルメタクリレート等のオキシラニルメタクリレート;及び相応のフマレート及びマレイン酸エステルを含む。
【0016】
モノマー(A2)は、成分(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)の全質量に基づいて、20〜93.5質量%、好ましくは30〜60質量%の量で存在する。
【0017】
さらなる実施態様において、モノマー(A2)は、C
8〜15のアルキル(メタ)アクリレート、好ましくは、市販のラウリル(メタ)アクリレート、又はC
10〜15のアルキル(メタ)アクリレートフラクションである。さらに、好ましくは、主鎖となるモノマーは、C
8〜15のアルキルメタクリレート、好ましくは、市販のラウリルメタクリレート、又はC
10〜15のアルキルメタクリレートフラクションである。
【0018】
本発明のさらなる実施態様において、成分(A2)は、モノマー単位として、
式(II)
【化5】
[式中、
Rは、H又はCH
3、好ましくはCH
3であり、
R
4は、直鎖状又は分岐状で、飽和又は不飽和の、炭素原子数6〜15のアルキル基を示し、及び、
R
5及びR
6は、独立して、Hを示す。]の1以上のエチレン性不飽和エステル化合物を含む。
【0019】
成分(A3)の例は、制限されず、飽和アルコール由来の、(メタ)アクリレート、例えば、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート及びエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート;同様に、相応のフマレート及びマレイン酸エステル;及びオレイル(メタ)アクリレート等の不飽和アルコール由来の(メタ)アクリレートを含む。
【0020】
モノマー(A3)は、成分(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)の全質量に基づいて、5〜60質量%、好ましくは20〜50質量%の量で存在する。
【0021】
本発明のさらなる実施態様において、成分(A3)は、モノマー単位として、
式(III)
【化6】
[式中、
Rは、H又はCH
3、好ましくはCH
3であり、
R
7は、直鎖状又は分岐状で、飽和又は不飽和の、炭素原子数16〜30のアルキル基を示し、
R
8及びR
9は、独立して、Hを示す。]の1以上のエチレン性不飽和エステル化合物を含む。
【0022】
N−分散剤モノマー(A4)は、とりわけ、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン(NVP)、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMAm)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド及びt−ブチルアクリルアミド又はその混合物からなる群より選ばれる少なくとも1つのモノマーであってよい。
【0023】
さらなる実施態様において、N−分散剤モノマー(A4)は、N−ビニルピロリドン(NVP)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及びN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMAm)からなる群より選ばれ;特に好ましくは、N−ビニルピロリドンである。
【0024】
N−分散剤モノマー(A4)の量は、概して、成分(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)の全質量に基づいて、1〜40質量%、好ましくは2〜30質量%である。
【0025】
N−分散剤モノマー(A5)は、ポリマー主鎖にグラフト化され、とりわけ、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン(NVP)、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMAm)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びジメチルアミノエチルアクリルアミドからなる群より選ばれる、少なくとも1つのモノマーであってよい。
【0026】
さらなる実施態様において、N−分散剤モノマー(A5)は、N−ビニルピロリドン(NVP)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及びN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMAm)からなる群より選ばれ;特に好ましくは、N−ビニルピロリドンである。
【0027】
本発明では、好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチルプロピル、t−ブチル、ペンチル、2−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ノニル、1−デシル、2−デシル、ウンデシル、ドデシル、ペンタデシル及びエイコシル基を含む。
【0028】
好ましいシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基を含み、それらは、任意に、分岐又は非分岐のアルキル基により置換される。
【0029】
好ましいアルケニル基は、ビニル、アリル、2−メチル−2−プロペン、2−ブテニル、2−ペンテニル、2−デセニル及び2−エイコセニル基を含む。
【0030】
本発明による、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、概して、ポリスチレン標準でキャリブレートされた、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定されて、数平均分子量M
n3000〜150000、好ましくは10000〜100000を有する。
【0031】
ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの多分散性M
w/M
nは、好ましくは1〜8、特には1.5〜5.0の範囲である。重量平均分子量M
w、数平均分子量M
n及び多分散性M
w/M
nは、ポリスチレンを標準として使用したGPCにより決定することができる。
【0032】
分子量及び多分散性は、公知の方法により決定することができる。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−(GPC)が使用できる。同様に、浸透圧法、例えば、気相浸透圧法が分子量を決定するのに使用できる。上述の方法は、例えば、P.J. Flory, “Principles of Polymer Chemistry” Cornell University Press (1953), Chapter VII, 266−316 及び“Macromolecules, an Introduction to Polymer Science”,編集者 F.A. Bovey及びF.H. Winslow, Academic Press (1979), 296−312 及び W.W. Yau, J.J. Kirkland及びD.D. Bly, “Modern Size Exclusion Liquid Chromatography, John Wiley and Sons, New York, 1979に記載されている。ここで示されたポリマーの分子量を決定するためには、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−を使用することが優先される。測定は、好ましくは、ポリメタクリレート又はポリスチレン標準に対して行う。
【0033】
ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの主鎖の構造は、たくさんの用途及び特性に決定的ではない。したがって、これらのポリマーは、ランダムコポリマー、グラジエントコポリマー、ブロックコポリマー、星形ポリマー、超分岐ポリマー及び/又はグラフトコポリマーであってよい。ブロックコポリマー及びグラジエントコポリマーは、例えば、鎖が成長する間に、モノマー組成物を不連続的に変化させることにより得られる。本発明によると、ランダムコポリマーがポリマー主鎖として製造される。
【0034】
ポリマー主鎖は、1以上の工程で製造することができ、異なるモノマー組成物(A1)〜(A4)を使用することができ、これらは、異なってもよい。これにより、ポリマー主鎖の混合物を生成することができ、本発明において有利に使用できる。
【0035】
一般的に、少なくとも1つの主鎖ポリマーを含む工程1で得られた組成物よりグラフトポリマーを製造するには、少なくとも1つのモノマー組成物(A5)は、成分(A1)〜(A4)の混合物を重合させることにより得られるポリマー主鎖にグラフト化される。
【0036】
グラフト化が、ポリマー主鎖の側鎖を形成するため、グラフトの少なくとも一部分は、ポリマー主鎖に共有結合すると推定される。
【0037】
グラフト化は、1以上の工程で行うことができる。この文脈において、とりわけ、モノマー組成物(A5)の組成を変化させることは可能である。例えば、窒素含有基を有する異なるモノマーが使用できる。
【0038】
グラフト共重合の実施は、技術常識であり、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第6版及びRoempp Chemie−Lexikon CD版2.0があり、そこで、さらなる文献が参照される。
【0039】
慣習的に、グラフトコポリマーの製造に特に適しているフリーラジカル重合は、K. Matyjaszewski, T. P. Davis, Handbook of Radical Polymerization, Wiley Interscience, Hoboken 2002に詳細に記載されている。一般的に、重合開始剤及び連鎖移動剤は、その目的に使用される。
【0040】
重合は、溶媒として鉱油中で行われる。上述の製造方法の工程(a)に記載のとおり、反応器に投入される鉱油は、API(American Petroleum Institute) GroupII oils、API GroupIII oils及びAPI GroupIV oilsからなるグループより選ばれ、硫黄含量は50ppm未満、好ましくは10ppm未満で特徴付けられる。
【0041】
表1:APIベースストックのカテゴリー(API発行物1509)
【表1】
【0042】
好ましい実施態様において、鉱油は、Purity1017(Petro Canada;硫黄含量10ppm未満)、Nebase3043(Neste Oil)、Yubase3(硫黄含量10ppm未満)及びYubase4(硫黄含量10ppm未満)からなる群より選ばれる。
【0043】
硫黄含量は、一般に、ASTM D2622(波長分散型X線蛍光分析による石油製品中の硫黄の標準テスト方法)に従って、決定することができる。
【0044】
工程(b)では、モノマー単位(A1)〜(A4)が、もし、存在するのであれば、第1の反応開始剤とともに混合される。
【0045】
使用できる反応開始剤は、この技術分野において広く知られている、アゾ開始剤、例えば、AIBN及び1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、及び、ペルオキシ化合物、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、t−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチル−ペルオキシベンゾエート、t−ブチル−ペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5ジメチルヘキサン、t−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルアセテート、t−ブチル−ペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、2以上の互いに前述の化合物の混合物、及び前述の化合物と、言及されていないが、同様にフリーラジカルを形成できる化合物との混合物を含む。
【0046】
その他の有効な種類の開始剤は、2,2−ジ(t−アミルペルオキシ)プロパン、t−ブチルペルオキシアセテート、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド及び1,1−ジ(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサンからなる群より選ばれる。
【0047】
本発明によると、前述の方法の工程(b)で使用される第1の反応開始剤及び前述の方法の工程(g)で使用される第2の反応開始剤は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0048】
好ましくは、それらは、t−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート及びt−ブチルペルアセテートからなる群より選ばれる。
【0049】
工程(b)で使用される第1の反応開始剤は、成分(A1)〜(A4)の全量に基づいて、0.5〜1.5質量%、好ましくは0.8〜1.2質量%の量で添加される。
【0050】
工程(g)で使用される第2の反応開始剤は、成分(A5)の全量に基づいて、5〜15質量%、好ましくは8〜12質量%の量で添加される。
【0051】
工程(c)で言及された混合物の添加は、好ましくは、1〜5時間の間、さらに好ましくは、2〜3時間の間行われる。
【0052】
工程(c)で得られ、かつ、工程(d)で言及された混合物の重合は、連鎖移動剤の存在下又は不在下で実施することができる。
【0053】
適切な連鎖移動剤は、とりわけ、それ自体が知られている硫黄不含の化合物である。これらは、例えば、制限を課すべき意図はなく、α−メチルスチレンの2量体(2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン)、脂肪族及び/又は環状脂肪族のアルデヒドのエノールエーテル、テルペン、α−テルピネン、テルピノール、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−ジヒドロナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、2,5−ジヒドロフラン、2,5−ジメチルフラン及び/又は3,6−ジヒドロ−2H−ピランを含む。好ましくは、α−メチルスチレンの2量体である。
【0054】
これらの連鎖移動剤は、商業的に入手可能である。それらは、当業者に知られた方法で製造することができる。例えば、α−メチルスチレンの2量体の製造は、特許DE966375に記載されている。脂肪族及び/又は環状脂肪族のアルデヒドのエノールエーテルは、特許DE3030373に開示されている。テルペンの製造は、EP80405で説明されている。公開された明細書JP78/121891及びJP78/121890では、α−テルピネン、テルピノール、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−ジヒドロナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレンの製造が説明されている。2,5−ジヒドロフラン、2,5−ジメチルフラン及び3,6−ジヒドロ−2H−ピランの製造は、公開された明細書DE2502283で説明されている。
【0055】
本発明の好ましい態様において、工程(d)の重合は、いかなる連鎖移動剤の不在下で実施される。
【0056】
ポリマー主鎖の重合は、標準圧力、減圧又は加圧下で行うことができる。重合温度は、200℃を超えてはならない。しかし、一般に、−20〜200℃、好ましくは50〜150℃及びさらに好ましくは80〜130℃の範囲である。
【0057】
工程(d)で得られるポリマーは、単離されるか、又は、追加的な単離及び/又は純化工程なしで直接的にグラフト化することができる。
【0058】
同様に、工程(h)で得られるポリマーは、単離されるか、又は、追加的な単離及び/又は純化工程なしで直接的にグラフト化することができる。
【0059】
本発明の好ましい実施態様において、前記2段階法は、ワンポット反応により行われる。
【0060】
本発明の第2の態様は、上述の方法により製造される、硫黄含量が最大で100ppm(0〜100ppm)、好ましくは最大で50ppm(0〜50ppm)、及びさらに好ましくは最大で40ppm(0〜40ppm)であることを特徴とする、グラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーに関する。
【0061】
本発明の第3の態様は、添加剤パッケージ、特に、中間留分のための添加剤パッケージのための相溶化剤としての、上述のとおり定義されている、グラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの使用に関する。
【0062】
本発明の第4の態様は、中間留分を安定させるための添加剤パッケージ中の成分としての、上述のとおり定義されている、グラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの使用に関する。
【0063】
本発明の第5の態様は、中間留分の低温流動性を改良させるための、上述のとおり定義されている、グラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの使用に関する。
【0064】
本発明のさらなる目的は、以下の工程、
上述の少なくとも1つのグラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを、燃料、特に中間留分燃料及びそれらの混合物に添加する工程、及び、
得られた組成物を混合する工程、
を含む、燃料油組成物の低温流動性を改良させるための方法に関する。
【0065】
添加は、好ましくは、使用された燃料の曇り点より充分上の温度で、好ましくは、曇り点より少なくとも10℃上で行われる。
【0066】
本発明の第6の態様は、中間留分中での、好ましくはディーゼル燃料及びその混合物中でのn−パラフィンワックスの沈降を低減させるための、上述のとおり定義されているグラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの使用に関する。
【0067】
本発明を一般的に記載してきたが、さらなる理解は、特定の具体的な実施例を参照することにより得られるが、これらの例は説明のためのみに本明細書に提供され、他に指定されない限り限定することを意図するものではない。
【0068】
実験部分
以下の材料がポリマーの合成方法において使用された。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
記載されたポリマーの分子量は、以下の方法のいずれかで決定された。
(a)Model 2414 RI検出器を備えたWaters Alliance 2695システムからなるGPCシステム。2つのWaters Styragel 5Eカラムがフローレート1.0mL/min及び温度40℃でTHFを使って使用される。キャリブレーションは、ブロードなポリ(アルキルメタクリレート)を使用して行われる。
(b)PSS SECcurityインライン デガッサーを備えたAgilent1100シリーズのポンプ、Agilent1100シリーズのRI(検出温度40℃)及びUV検出器(波長239nm)からなるGPCシステム。5つのSDVカラム及び1つの溶媒分離カラムが、溶離液としてTHFを使って、フローレート1.0mL/minで使用される。キャリブレーションがPSS(マインツ)から得られるPMMA標準を使用して行われる。
【0072】
ポリマー1:高い硫黄含量の分散剤ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー(比較例)
57.5gの鉱油#1が、ガラススターラー、コンデンサー及び熱電対を備えた四つ首ガラス丸底フラスコに投入された。251.5gのエステル#1、190.5gのエステル#2、77.7gのエステル#3、32.8gのN−ビニルピロリドン(NVP)、0.86gのドデシルメルカプタン(DDM)及び2.01gのLUPEROX 26の混合物が製造された。336gの混合物が鉱油#1を有する丸底フラスコに加えられた。反応が115℃に加熱された。混合物の残りが、添加漏斗を通じて90分間かけて丸底フラスコに加えられた。反応混合物の温度は、添加の間、115℃に維持された。混合物の添加が完全に終わった後、反応は、さらに、30分の間115℃で維持された。その後、反応温度は、125℃に昇温され、23.0gのN−ビニルピロリドンが加えられ、続いて、2.3gのLUPEROX7M50が加えられた。反応混合物は、さらに、120分の間、125℃で維持された。最後に、望ましい濃度の油中のポリマーとなるように、鉱油#1が加えられた。
Mw:220000g/mol
Mn:81000g/mol
PDI:2.72
窒素含量:1.2%
硫黄含量:750ppm(ASTM D2622によるXRFで決定。)
【0073】
ポリマー2:主鎖及びグラフト層にN−分散剤モノマーを有するグラフト化されたポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー
374.1gの鉱油#2が、ガラススターラー、コンデンサー及び熱電対を備えた四つ首ガラス丸底フラスコに投入された。鉱油が115℃に加熱された。251.5gのエステル#1、190.5gのエステル#2、77.7gのエステル#3、32.8gのN−ビニルピロリドン及び5.76gのLUPEROX26の混合物が製造された。全ての混合物が、添加漏斗を通じて120分間かけて丸底フラスコに加えられた。反応混合物の温度は、添加の間、115℃に維持された。混合物の添加が完全に終わった後、反応は、さらに、30分の間115℃で維持された。その後、反応温度は、125℃に昇温され、23.0gのN−ビニルピロリドンが加えられ、続いて、2.3gのLUPEROX7M50が加えられた。反応混合物は、さらに、120分の間、125℃で維持された。最後に、望ましい濃度の油中のポリマーとなるように、鉱油#2が加えられた。
Mw:119000g/mol
Mn:47500g/mol
PDI:2.51
窒素含量:1.2%
硫黄含量:40ppm(ASTM D2622によるXRFで決定。)