特許第6433991号(P6433991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6433991向上したバリア性および衝撃特性を有する熱可塑性ポリエステル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6433991
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】向上したバリア性および衝撃特性を有する熱可塑性ポリエステル
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20181126BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20181126BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20181126BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20181126BHJP
   C08K 5/1539 20060101ALI20181126BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20181126BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20181126BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20181126BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20181126BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08L77/06
   C08K5/098
   C08K5/053
   C08K5/1539
   C08J3/22CFD
   C08J3/22CFG
   C08K3/04
   B29C49/06
   B29C49/22
   B65D65/40 D
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-515528(P2016-515528)
(86)(22)【出願日】2014年9月23日
(65)【公表番号】特表2016-533399(P2016-533399A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2014070179
(87)【国際公開番号】WO2015040232
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年9月20日
(31)【優先権主張番号】13185529.8
(32)【優先日】2013年9月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515347304
【氏名又は名称】アンハイザー−ブッシュ インベブ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Anheuser−Busch InBev SA
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】パースマン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレス,ヴァネッサ
(72)【発明者】
【氏名】ゴダラ,アジャイ
【審査官】 岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−529713(JP,A)
【文献】 特開平06−041422(JP,A)
【文献】 特開2007−002240(JP,A)
【文献】 特開2009−052041(JP,A)
【文献】 特開2000−319373(JP,A)
【文献】 特開2000−034357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00−67/08
C08L 77/00−77/12
C08K 5/00−5/59
C08J 3/00−3/40
B29C 49/00−49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品および飲料包装に適切なポリエステル組成物において、前記ポリエステル組成物が、
(a)ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレン、およびそれらの混合物から選択される熱可塑性ポリエステルを90〜97重量%、
(b)MXD6を2〜6重量%、
(c)コバルト塩を1〜5000ppm、
(d)エチレングリコール(EG)を0.1〜1000ppm、および
(e)ピロメリト酸二無水物(PMDA)を0.1〜1000ppm
をブレンドすることにより、得られることを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエステル組成物において、1〜50ppmとなる量でカーボンブラックをさらに含むことを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のポリエステル組成物において、5〜40ppmとなる量でカーボンブラックをさらに含むことを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のポリエステル組成物において、10〜30ppmとなる量でカーボンブラックをさらに含むことを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のポリエステル組成物において、ASTM D4603に準拠して測定した0.4〜0.7dL/gとなる固有粘度を有することを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のポリエステル組成物において、ASTM D4603に準拠して測定した0.5〜0.65dL/gとなる固有粘度を有することを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか1項に記載のポリエステル組成物において、265℃、2枚の回転平行プレート間でのずり速度1rad/sで測定した場合、100Pa.s未満の動的溶融粘度を有することを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項8】
請求項1乃至の何れか1項に記載のポリエステル組成物において、前記ブレンドに使用される1種または数種の化合物(a)〜(e)の量が、
(a)ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレン、およびそれらの混合物から選択される熱可塑性ポリエステルを91〜94重量%、
(b)MXD6を3.0〜5.5重量%、
(c)コバルト塩を1000〜3500ppm、
(d)エチレングリコール(EG)を50〜300ppm、および/または
(e)ピロメリト酸二無水物(PMDA)を50〜300ppm
の量となることを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項9】
請求項1乃至の何れか1項に記載のポリエステル組成物において、前記エチレングリコールとピロメリト酸二無水物との含有量の比率(EG/PMDA)が、0.05〜2.0となることを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のポリエステル組成物において、前記エチレングリコールとピロメリト酸二無水物との含有量の比率(EG/PMDA)が、0.08〜1.5となることを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項11】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のポリエステル組成物において、前記エチレングリコールとピロメリト酸二無水物との含有量の比率(EG/PMDA)が、0.2〜1.3となることを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項12】
容器をブロー成形するための単層または多層プリフォームにおいて、前記プリフォームが、内容積を定める長尺体と、前記長尺体の一端部に口を定める開口部とを含み、前記プリフォームの少なくとも1層が、請求項1乃至11の何れか1項に記載のポリエステル組成物から作製されることを特徴とするプリフォーム。
【請求項13】
ブロー成形された単層または多層の容器において、請求項1乃至11の何れか1項に記載のポリエステル組成物から作製される少なくとも1層を含み、請求項12に記載のプリフォームをブロー成形することにより取得されることを特徴とする容器。
【請求項14】
請求項13に記載の容器において、PET(a)100重量%から作製される容器の破裂圧力以上前記容器の重量および容積に対する破裂圧力を有することを特徴とする容器。
【請求項15】
請求項13に記載の容器において、0.15bar/g/Lより大きい、前記容器の重量および容積に対する破裂圧力を有することを特徴とする容器。
【請求項16】
請求項14または15に記載の容器において、PET(a)100重量%から作製される容器の酸素透過度の1%未満の酸素透過度を有することを特徴とする容器。
【請求項17】
請求項1乃至11の何れか1項に記載のポリエステル組成物を生産する方法において、以下の成分
(a)ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレン、およびそれらの混合物から選択される熱可塑性ポリエステルを90〜97重量%、
(b)ポリ−m−キシリデン(MXD6)を2〜6重量%、
(c)エチレングリコール(EG)を0.1〜1000ppm、
(d)コバルト塩を1〜5000ppm、および
(e)ピロメリト酸二無水物(PMDA)を0.1〜1000ppm
を押出機内でブレンドすることと、ペレットを形成することを含むことを特徴とし、
成分(c)、(d)、および(e)は、混合されてマスターバッチを形成し、成分(a)と別々に前記押出機に加えられることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、MXD6がまた、成分(c)〜(e)と混合されてマスターバッチを形成することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17または18に記載の方法において、このように取得される前記組成物が、射出成形されて請求項12に記載のプリフォームを生産することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、このように取得される前記プリフォームが、ブロー成形されて請求項13乃至16の何れか1項に記載の容器を生産することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装、具体的には食品包装、さらに具体的には飲料用のブロー成形容器に有用な熱可塑性ポリエステル材料に関する。本発明のポリエステル組成物は、良好なガスバリア性を有すると同時により軽量に対して向上した衝撃特性を有する容器のコスト効果の高い生産を可能にする。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレン(PEN)、およびそれらの混合物等の熱可塑性ポリエステルは、包装用途に、具体的には食品包装用に広範囲に使用されてきた。例えばPETは、プリフォームをその最終形状にブロー成形することにより、ボトルや他の容器を生産するために広く使用される。
【0003】
食品保存に関して、1層または数層の熱可塑性ポリエステル包装を介しての大気からの酸素の拡散を抑制し、完全に停止さえして、そこに容れられる食品の酸化を回避する必要がある。同様に、炭酸飲料または窒素化飲料を容れる容器に関して、容器壁を介しての容器の内側から外側への二酸化炭素または窒素の拡散を抑制する必要がある。ポリマーは、一般に、酸素、二酸化炭素、および窒素等の気体の拡散に対して不良なバリア性を有する。ポリエステルも例外でなく、ポリエステル組成物中に添加剤を組み込んでバリア性を向上させる必要がある。このような添加剤は、不活性で、単に気体の通過を遅らせるかまたは阻止することもあり、或いは添加剤が、活性捕捉剤となり、酸素等の気体と反応することができる。向上したバリア性を有する食品包装およびブロー成形容器に特に適切である数種のポリエステル組成物が、従来技術において提案されてきた。
【0004】
一般に使用される添加剤のひとつは、米国特許出願公開第20060052504号明細書、米国特許出願公開第20080161472号明細書、米国特許出願公開第20060105129号明細書、国際公開第200110947号パンフレット、米国特許出願公開第20060106192号明細書に開示されるように、ポリアミドである。特に適切なポリアミドは、メタ−キシリレンジアミン(MXDA)とアジピン酸との重縮合により生成されるポリアミド群を代表するMXD6であり、例えば米国特許出願公開第20070260002号明細書、国際公開第200662816号パンフレット、米国特許出願公開第20060226565号明細書、国際公開第2006125823号パンフレット、米国特許出願公開第20060199921号明細書に開示されるように、ガスバリア性を向上させるのに有利と説明されてきている。MXD6は、以下に示すように分子中にメタ−キシリレン基を含有する脂肪族ポリアミド樹脂である。
【0005】
コバルト塩等の遷移金属塩は、ポリアミド含有のPETに添加され、ポリアミドポリマーの酸化を触媒し積極的に促進し、それにより包装の酸素バリア性をさらに向上させ、従って活性の酸素捕捉剤として作用することが可能である。コバルト塩をポリアミドと一緒に使用することは、前述の特許文献に記載されている。
【0006】
欧州特許第1173508号明細書において、3〜約8個のヒドロキシル基を含む添加剤を添加して、ポリマー中のアセトアルデヒドの濃度を下げることが提案されている。このような添加剤は、しかしながら、ポリマーのガスバリア性に影響を及ぼすと記載されていない。無水トリメリト酸、トリメチロールプロパン、ピロメリト酸二無水物、ペンタエリトリトール、およびポリエステルを形成する他のポリ酸またはジオール等の三官能基または四官能基のコモノマーは、例えば、米国特許出願公開第20120199515号明細書、米国特許出願公開第20070066719号明細書、およびCA2694861号明細書に考察されるように、熱可塑性ポリエステル用の既知の分岐剤である。カーボンブラックは、プリフォームの加熱速度をブロー成形温度まで高める既知の添加剤である(例えば、国際公開第2008008813号パンフレットを参照)。
【0007】
ベースポリマー中に添加剤が存在することにより、最終組成物の加工特性および機械的特性に弊害を及ぼすことが多い。飲料を含有するのに適切なブロー成形容器にとって、取り扱い(充填、保管、輸送)中のこのようなボトルの落下は、不慮の取り扱いの誤りにより起こることがあるので、衝撃強さは、かなり重要である。機械的特性のこの低下に起因して多量のポリマーを使用して容器壁を厚くし、従って、比例して原料コストを増大させるだけでなく、射出成形と関連する技術的な生産問題を増大させる:壁が厚いプリフォームほど高度な結晶化度が形成されてプリフォームを凝固させるのに要する冷却時間が長くなることで、サイクル時間に悪い影響を与える。結果として、熱可塑性ポリエステルのガスバリア性を向上させることにより、容器の生産コストを著しく増大させる場合がある。
【0008】
選択される材料は、プリフォームを生産するための射出成形と容器を生産するためのブロー成形との両方の加工手法が課する相反することがある要件を満たす必要があるので、プリフォーム用の材料、最終的にはブロー成形容器用の材料の選択は、細心の注意を要する。溶融粘度、結晶化度、分子量、溶融温度、ブロー成形温度のような問題点は、熱可塑性容器をブロー成形するための材料を選択する際に、かなり注意深く取り組まれなければならない。図1に示すように、熱可塑性プリフォームからの容器のブロー成形は、プリフォームを射出成形する段階、前記プリフォームをブロー成形温度まで加熱する段階、そして加熱したプリフォームをツール内でブロー成形して容器またはボトルを形成する段階を備える多段階プロセスである。
【0009】
第一ステップとして、射出成形することにより、または場合により、押出により、プリフォームを生産する。プリフォームは、単層で形成されてもよく、またはそれどころか、数層を含んでもよい。様々な層は、互いに中に挿入されて多層プリフォーム集成体を形成する別々のプリフォーム素子により形成されることができる。代替的な方法は、互いの上への連続層の同時射出または順次射出からなり、一体型のプリフォームをもたらす。
【0010】
第二ステップとして、プリフォームを通例、赤外(IR)炉内でプリフォーム材料のTgから溶融温度Tmまでとなるブロー成形温度まで加熱する。プリフォームの形状寸法(厚さ)および炉内の滞留時間に応じて、プリフォームの温度が、局所的に不均質である可能性があるが、理論的には、ブロー成形温度は、TgからTmまでとなる。一方では、プリフォームの壁厚は、ブロー成形プロセスに影響を及ぼす。第一に、より高いエネルギーが厚い壁のプリフォームを加熱するのに必要である。第二に、プリフォームから容器をブローするのに必要な圧力は、プリフォームが厚いほど増大する。第三に、温度勾配は、プリフォームの壁が厚いほど起こりやすい。全てのこれらの結果は、量産されるブロー成形容器の生産コストに著しく影響を及ぼし得る。
【0011】
射出成形に関して、設備投資およびエネルギー消費の観点から、より低い射出圧力P射出成形と組み合わせて射出温度T射出成形を下げることは、財政的にも有利である。それに反して、このようなパラメータは、量産の容器において重大な経済的要因であるサイクル時間を犠牲にするほどまで最適化されるべきではない。さらに、射出成形ツールのキャビティの長さと厚さとの比率L/Tもまた、薄い部品、故により軽量のプリフォーム、最終的により軽量の容器の生産に重要である。厚い部品ほど、射出するのが容易である場合もあるが、部品の厚い断面で結晶化度が高くなる程度まで冷却するのに時間がかかり、それだけ長いサイクル時間が必要となる。過度の結晶化度を有するプリフォームを適切にブロー成形することは、もはや不可能である。前述の要件全てに対する明らかな解答は、例えば、熱可塑性ポリマーの分子量を小さくすることにより、溶融物の粘度を下げることである。これは、しかしながら、
(a)低分子量のポリマーは概して弱いので、最終容器の機械的特性に弊害をもたらし、
(b)短鎖はより移動しやすく、より素早く結晶化される傾向があるのでプリフォームの結晶化度に弊害をもたらす。ブロー成形温度が熱可塑性プリフォームの溶融温度よりも低く、また結晶が、ブロー成形が課する度合まで延伸しないことになるので、高結晶化度を有するプリフォームは、ブロー成形するのが困難である場合がある。
【0012】
ブロー成形に関して、プリフォームあたり供給される熱エネルギーを削減するためにブロー成形温度Tブロー成形を下げ、ブロー成形操作中に高速での高圧空気の供給に関連するコストがかなり必然的なので圧力Pブロー成形も両方とも下げることもまた、財政上望ましい。これは、加熱時間が短くかつ延伸エネルギーが小さいことを必要とする薄い断面で実現することが可能である。壁厚は、しかしながら、特定の添加剤の存在により、および射出成形の必要条件により、制限され、低い溶融粘度を特徴とするが、しかしながら不良な機械的特性をもたらすと知られている低分子量ポリマーの使用が含まれる。
【0013】
このような高性能の量産容器は、主に消費財用途であるので、そのコストは、低くなければならず、一方、ガスバリア性および破裂圧力等のそれらの特性は、最適化されなければならない。プリフォームの射出成形中のプロセス要件と容器のブロー成形中のプロセス要件とが相反することがあり、それがその円積問題をなおさらに複雑にする。従って、良好なバリア性そして同時に生産可能なコスト効率の良い良好な機械的特性を有するブロー成形容器をもたらす、食品包装に特に適切な熱可塑性ポリエステル組成物に対する当技術分野での必要性が存在する。本発明は、このような必要性への解決策を提案する。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、添付の独立特許請求項に定義される。好適な実施形態は、従属請求項に定義される。具体的には、本発明は、食品および飲料の包装に適切なポリエステル組成物に関し、前記ポリエステル組成物は、
(a)ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレン、およびそれらの混合物から選択される熱可塑性ポリエステルを90〜97重量%、好ましくは91〜94重量%、
(b)MXD6を2〜6重量%、好ましくは3.0〜5.5重量%、
(c)コバルト塩を1〜5000ppm、好ましくは1000〜3500ppm、
(d)エチレングリコールを0.1〜1000ppm、好ましくは20〜500ppm、さらに好ましくは50〜300ppm、および
(e)ピロメリト酸二無水物(PMDA)を0.1〜1000ppm、好ましくは20〜500ppm、さらに好ましくは50〜300ppm
をブレンドすることにより得られる。
【0015】
好適な一実施形態において、ポリエステル組成物は、1〜50ppm、好ましくは5〜40ppm、さらに好ましくは10〜30ppmとなる量でカーボンブラックをさらに含む。カーボンブラックは、ブロー成形の前に、赤外炉におけるプリフォームの加熱速度を増大するために使用される。
【0016】
本発明のポリエステル組成物は、概して低い粘度を特徴とする。例えば、固有粘度は、ASTM D4603に準拠して測定して0.4〜0.7dL/g、好ましくは0.5〜0.65dL/gとなってよい。動的溶融粘度は、265℃、2枚の回転平行プレート間でのずり速度1rad/sで測定した場合、100Pa.s未満であってよい。
【0017】
エチレングリコールとピロメリト酸二無水物との重量比(EG/PMDA)は、両方の成分の併用効果を最適化し自動制御するために、好ましくは0.05〜2.0、さらに好ましくは0.08〜1.5、最も好ましくは0.2〜1.3となる。
【0018】
本発明は、容器をブロー成形するための単層または多層プリフォームにも関し、前記プリフォームは、内容積を定める長尺体と、前記長尺体の一端部に口を定める開口部とを含み、前記プリフォームの少なくとも1層が、上に定義したポリエステル組成物から作製されることを特徴とする。前記プリフォームは、射出成形により生産されるのが好ましい。
【0019】
本発明は、上に定義したポリエステル組成物から作製した少なくとも1層を含み、前述のプリフォームをブロー成形することにより得られるブロー成形した単層または多層容器にも関する。このような容器は、良好な機械的特性を有する。例えば、本発明による容器の破裂圧力は、PET(a)100重量%から作製された同様の容器の破裂圧力と同じかまたはそれよりも高いことさえもある。比破裂圧力の点から、容器重量(g)および容量(L)に対して、比破裂圧力は、0.15bar/g/Lより大きいのが好ましい。同じくらいの破裂圧力抵抗で、本発明による容器は、PET(a)100重量%で作製された容器の酸素透過度の1%未満の酸素透過度を容易に有し得る。
【0020】
本発明は、上に定義したポリエステル組成物を生成する方法にも関し、以下の成分
(a)ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレン、およびそれらの混合物から選択される熱可塑性ポリエステルを90〜97重量%、好ましくは91〜94重量%、
(b)MXD6を2〜6重量%、好ましくは3.0〜5.5重量%、
(c)コバルト塩を1〜5000ppm、好ましくは1000〜3500ppm、
(d)エチレングリコールを0.1〜1000ppm、好ましくは20〜500ppm、さらに好ましくは50〜300ppm、および、
(e)ピロメリト酸二無水物(PMDA)を0.1〜1000ppm、好ましくは20〜500ppm、さらに好ましくは50〜300ppm
を押出機内でブレンドして、ペレットを形成することを備える。
成分(c)、(d)、および(e)は、混合されて、マスターバッチを形成し、成分(a)と別々に押出機に加えられることを特徴とする。MXD6は、同様に成分(c)〜(e)と共に前記マスターバッチに混合されるのが好ましい。このように生産されるペレットは、それ自体、射出成形されて上に考察したプリフォームを生産することが可能である。前記プリフォームは、その後続いて赤外炉内で加熱されて、ブロー成形され、本発明による容器を生産する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の性質を十分に理解するために、添付の図面と共になされる以下の詳細な説明を参照する。
【0022】
図1図1は、本発明による熱可塑性容器をブロー成形する様々なステップを図示する。
図2図2は、0.1〜1000rad/sとなるずり速度で回転する平行板により265℃の温度で測定した、従来技術のバリア組成物(=CEX1)および本発明による組成物(=INV)の動的粘度を示す。
図3図3(a)は、射出成形によるプリフォームの生産中に印加される圧力を示し、図3(b)は、ブロー成形によるボトルの生産中に印加される圧力を示す。
図4図4は、容積1.5L、重量40g(=白色の縦棒)および35g(=影付きの縦棒)のボトルに関する純PET(std PET)、酸素バリアを有する従来技術のPET(=CEX1)、および本発明によるPET組成物(=INV)の酸素に対する透過度を示す。
図5図5は、容積1.5L、重量40g(=白色の縦棒)および35g(=影付きの縦棒)のボトルに関する純PET(std PET)、酸素バリアを有する従来技術のPET(=CEX1)、および本発明によるPET組成物(=INV)の破裂圧力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、例えば、食品および飲料を含有するのに使用される容器をブロー成形するのに適切な熱可塑性ポリエステル組成物に関する。熱可塑性ポリエステル組成物は、(a)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレン(PEN)およびそれらの混合物等のポリエステルを主に含む。本発明の組成物は、90〜97重量%、好ましくは91〜94重量%のこのようなポリエステルを含む。このポリエステルは、様々な添加剤とブレンドされる。第一に、(b)MXD6が、2〜6重量%、好ましくは3.0〜5.5重量%、最も好ましくは4.5〜5.0重量%となる量で存在する。MXD6は、1.0〜3.0、好ましくは2.0〜2.8、さらに好ましくは2.5〜2.7となるISO307に準拠した相対粘度2.65を有するのが好ましい。適切なMXD6の例は、Mitsubishi Corporation(MGC)から入手可能なMXD6−S6007およびS6003である。MXD6は、ガスバリア性を大いに向上させるポリエステル内に島またはドメインを作り出す。気体に対するバリア性をさらに向上させるために、この組成物は、1〜5000ppm、好ましくは1000〜3500ppm、最も好ましくは2000〜3200ppmとなる量で(c)コバルト塩を含む。上で考察したように、コバルト塩は、酸素に活性捕捉剤として働く。適切なコバルト塩の例として、ステアリン酸コバルト、ネオデコン酸コバルト(cobalt neo−deconoate)、または他のポリマーのコバルト塩の、他のカルボン酸コバルト、酢酸コバルト、二酢酸コバルトが挙げられる。
【0024】
本発明の骨子は、前述の成分、エチレングリコール(EG)と無水ピロメリト酸(PMDA)の両方を併合することである。両方の成分は、0.1〜1000ppm、好ましくは50〜300ppmとなる量で個々に存在することができる。エチレングリコールとピロメリト酸二無水物との含有量の比率(EG/PMDA)は、0.05〜2.0、好ましくは0.08〜1.5、さらに好ましくは0.2〜1.3となることが可能である。エチレングリコールは、PETの重縮合に一般に使用されるが、本発明の組成物における場合のように十分に重合されたPETへの添加剤として使用されるのはまれな場合である。同様に、PMDAは、分岐剤として知られており、PETの重縮合中に便利に添加されるが、本発明の組成物における場合のように十分に重合されたPETへの添加剤として使用されるのはさらにまれな場合である。
【0025】
図2は、表1に列挙する本発明による組成物(=INV、実線を参照)と、そのガスバリア性を対象として販売されポリアミドおよびコバルト塩を含む市販のPETベースの組成物(=CEX1、破線を参照)との動的溶融粘度を比較する。動的粘度は、265℃の温度、1〜1000rad/sの異なるずり速度で平行板を用いて測定した。本発明による組成物(実線)は、1rad/sのずり速度で、ほぼ80〜90Pa.s程度の動的溶融粘度を有し、それは、ずり速度1rad/sでほぼ180〜200Pa.s程度の市販の比較例の動的溶融粘度よりもかなり小さいことがわかる。溶融粘度におけるこのような差異は、ほぼ0.78〜0.80程度のCEX1の固有粘度に対して、0.55〜0.65の範囲となる本発明の組成物の固有粘度により確かめられるので、本発明による組成物のPETの分子量が、比較例におけるPETの分子量よりも小さいことが自信を持って想定され得る。本発明による組成物の低粘度は、特に低い分子量を有するPETグレードの使用に帰するものではない。実際、表1に列挙する組成物に使用するPETグレードは、ほぼ0.82dL/g程度の固有粘度を有する、参照として使用される標準PET(表1の左の行を参照)であった。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、組成物を加熱する際に、エチレングリコールは、ポリエステルのアルコール分解に有利に働き、分子量を低減し、従って固有粘度と動的溶融粘度の両方を低減させると考えられている。
【0026】
表1は、本発明による組成物の成分を列挙し、標準PET(=std PET)、上に考察した市販のPETグレード(=CEX1)および標準PETのPETを含む本発明による組成物(=INV)間のいくつかのプロセスパラメータおよび材料特性を比較する。相当する重量の同じ1.5Lのブロー成形ボトル用に1つ目は重量35g、2つ目は重量40gの2種プリフォームを作った。L/T比率は、35gのプリフォームでは44.35、40gのプリフォームでは40.58であり、L/T比率が約10%増加で重量が約12.5%著しく減少することを示した。射出成形の圧力をねじの頭部で測定した。表1に示すブロー成形温度および圧力で、35gプリフォームと40gプリフォームの両方から1.5Lのボトルを同じ型中でブロー成形した。物理的特性として、ブロー成形ボトルで測定した酸素透過率が挙げられ、ほぼ100ppb/日程度のO透過率を有する標準PETを、酸素感受性飲料を保管するボトルとして使用することを真摯に企図することができず、その代わりとして特定のバリアグレードのPET組成物を是非とも使用する必要があることがわかる(図4参照)。但し、固有粘度を押出ペレットで測定した。最後に、破裂圧力をブロー成形ボトルで測定した。そのボトルは、加圧されて、付与の圧力に少なくとも60秒間耐える必要がある。60秒後にボトルが破裂する圧力が、破裂圧力である。
【0027】
図4は、MOCON Transmission Analysis Systemを用いて様々なPET組成物で測定した酸素透過率を図示する。ブロー成形ボトルをASTM F1307に準拠して試験した。標準PETは、ほぼ100ppb/日程度の許容できないO透過率をもたらす(但し、縦軸を対数目盛で明示する)。驚くことではないが、市販のバリアPET(=CEX1)と本発明による組成物(=INV)の両方とも、商業上許容可能な酸素に対する透過度を有し、それは、標準PETの酸素に対する透過度よりも2〜3桁小さい。
【0028】
本発明による組成物の溶融粘度は、従来技術のポリエステル組成物と比較すると相対的に低く、265℃、2枚の回転平行プレート間でのずり速度1rad/sで測定した場合、100Pa.s未満であるのが好ましい。固有粘度は、温度に依存しないが、0.4〜0.7dL/g、好ましくは0.5〜0.65dL/gとなるのが好ましい(ASTM D4603に準拠)]。導入部で考察したように、プリフォームを射出成形するのに低い圧力が必要とされるほど、高いL/T比率が実現できるので、低い溶融粘度は、プロセスの観点から有利である。高いL/T比率で、薄い部品は、射出されて他よりも素早く冷却されるので、サイクル時間ならびに使用される原料の量を減らすことができる。低分子量のプリフォームからブロー成形した容器(押出粒剤で測定した低い固有粘度が示唆するように)は、しかしながら、耐破裂性等の機械的特性が不十分となるので、それらは、本来ならば望ましくないとみなされることになるだろう。驚くべきことに、本発明のPET組成物を含むボトルは、図5において認識できるように、市販の従来技術の比較例、CEX1よりも良好な機械的特性をもたらす。本発明による40gのボトルが達成した10.2barの破裂圧力は、最も高い値であり、本発明による35gのボトルの破裂圧力8.1barは、市販の比較の組成物(CEX1)を用いて作製される40gのボトルが達成した8.2barの破裂圧力と同じくらいである。比破裂圧力は、容器の単位重量および単位容積当たりで明示され得る。表1は、試験した3種類の容器の比破裂圧力を報告し、標準PET容器で測定した0.14および0.17bar/g/Lの比破裂圧力よりもさらに僅かに高い本発明による容器が取得した0.15および0.17bar/g/Lに対して、市販のガスバリア性のポリエステル(=CEX1)で作製した容器が、幾分低い0.14bar/g/Lをもたらすことを示した。
【0029】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、これらの全く直観に反する破裂試験値は、ポリマー鎖長を低減するEGの作用と、濃密な分岐網を作り出す故にブロー成形後の容器の降伏強度を増大させるPMDAの作用との結果であると考えられている。射出成形中にアルコール分解を助長するエチレングリコールと、最終生成物においてポリマーの分岐を増大させるPMDAとの併用効果により、プロセスパラメータと機械的パラメータの両方の最適化が可能となる。このような併用効果は、しかしながら、EGおよびPMDAの各々の効果を単に組み合わせたのではない。実際、以下の想定される反応により、一緒に反応してエステルを形成することができる2種の成分間に自己制御が存在する。
【0030】
上の反応の平衡は、組成物中のPMDAおよびEGの含有量により、並びに温度による反応速度論により制御できる。EGに関係する効果とPMDAに関係する効果の良好なバランスが、0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.5、さらに好ましくは1.0〜1.3となるエチレングリコールとピロメリト酸二無水物との含有量の比率(EG/PMDA)で、得ることができることを観察した。これは、上に定義した自己制御反応を説明し、その反応において過剰のEGおよびPMDAがエステルを形成し、従ってアルコール分解と分岐反応の両方を制限し、プリフォームの射出成形中に最適の低い粘度をもたらし、かつブロー成形容器の高い機械的特性をもたらす。さらに、PMDAまたは、さらにおそらくPMDAとEGとの反応から得られるエステルのどちらかが、ブロー成形の前に射出成形ツール型でプリフォームを冷却する間および赤外炉内で加熱する間に、ポリエステルの結晶化率を低レベルに制御および維持すると考えられている。さらに、マトリックス全体にEGおよびPMDAを組み合わせることにより作り出される濃密な分岐網は、殊にナイロンの完全な結晶ドメインの形成を抑えると考えられている。これにより、ナイロンとPETポリマー間に多く拡散する界面を形成する結晶ラメラが散在する網目が、作り出されることとなるであろう。このような普通でない拡散網目は、おそらくナイロンとPET結晶ラメラとの相互浸透およびからみ合いにより非常に強い界面結合を付与する。このメカニズムは、本発明による容器に観察されるバリア性と組み合わせて、より高度な機械的特性を明白にし、一方で全体的な加工上の利点をもたらし得る。何れかの成分が、可塑剤として作用し、それが、射出成形操作とブロー成形操作の両方を促進するとまた考えられている。
【0031】
図1に図示するように、本発明のポリエステル組成物で作製されたペレット(10c)は、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレン、およびそれらの混合物から選択されるペレットの形態での90〜97重量%の熱可塑性ポリエステル(10a)とマスターバーチ(master barch)(10b)を押出機内に別々に加えて、ブレンドすることにより、生産でき、バッチは、
・0.1〜1000ppmのエチレングリコール、
・1〜5000ppmのコバルト塩、および
・0.1〜1000ppmのピロメリト酸二無水物(PMDA)を含み、
その重量%は、組成物の総重量によって表される。MXD6は、押出に先立ってポリエステルとブレンドされてもよく、またはマスターバッチに組み込まれてもよい。MXD6は、ポリエステルとマスターバッチの両方に分配されることも可能である。MXD6の全量が、マスターバッチ(10b)に組み込まれるのが好ましい。
【0032】
押出品を、チョッパー(11)内でペレット(10c)に細断して、回収する。前記ペレット(10c)をそれ自体、ツール(21)においてプリフォーム(1a)を射出成形するため射出成形機内に挿入することができる。本発明の組成物の低い粘度のため、薄壁および高いL/T値を有するプリフォームを生産できる。次に、プリフォーム(1a)を赤外炉(IR)内でブロー成形温度まで加熱した後、加熱したプリフォームの内部に射出する加圧気体中でツール(31)に移し、ツール内でそれらをブロー成形し、所望の形状寸法の中空容器(1b)を形成する。
【0033】
別の方法として、このように押出ステップとペレット形成ステップを経ることにより、ポリエステル(10a)およびマスターバッチ(10b)を射出成形機のスクリュー室で直接ブレンドすることが可能である。この解決策は、一見して興味をそそるが、押出機内でのブレンドは、特に二軸スクリューが備えられているならば、射出機のスクリュー室で成分を直接ブレンドするよりも効率が良く、十分でない均質性が得られることがあるので、かなり注意して取り扱う必要がある。さらに、押出段階をバイパスすることにより、アルコール分解反応、EGとPMDAとの反応(1)、およびポリエステルのいくつかの分岐等の反応が起こることがある間に組成物が経る第一熱サイクルが、省かれる。前記第一熱サイクルを省くならば、最適特性を有するボトルをもたらすために、様々な成分の濃度および射出成形およびブロー成形中の温度プロフィルを僅かに修正しなければならない場合がある。
【0034】
上述のように、マスターバッチ(10b)はまた、最終組成物に存在するMXD6の一部または全部を含んでもよい。カーボンブラックは、同様にマスターバッチに組み込まれることが可能である。カーボンブラックを用いて、ブロー成形の前に、赤外炉内でのプリフォームの加熱速度を増大する。カーボンブラックは、1〜50ppm、好ましくは5〜40ppm、さらに好ましくは10〜30ppmとなる量で存在してよく、ここで、ppm量は、PETを含む最終組成物の総重量によって表される。
【0035】
使用されるポリエステルの種類に応じて、押出室の温度は、有利にも、PETを使用する場合255〜300℃、好ましくは260〜280℃、PENを使用する場合270〜310℃となってよい。同様に、射出成形のスクリュー室は、押出と同じ温度範囲で加熱できる。ブロー成形温度は、それに反して、PETを使用する場合100〜120℃、好ましくは85〜100℃、またはさらに好ましくは90〜98℃、そしてPENを使用する場合90〜95℃となることが可能である(この場合も同様に、PET/PENブレンドに中間温度を使用してもよい)。
【0036】
射出成形により生産されるプリフォームは、単層であっても、逆に、複数層、通常2層を含んでもよい。同一のツールに直接に互いの上に各層を引き続き射出成形して、一体型のプリフォームをもたらすことにより、2層またはそれ以上のどちらかのプリフォームを生産できる。別の方法として、各層を個々に射出成形して、その後に、ある層を別の層に重ね合わせて集成することができる。多層プリフォームの場合、1層のみを本発明の組成物から作製してもよい。別の方法として、複数の層、そしておそらく全ての層を本発明による組成物から作製してもよい。本発明による組成物から作製する層の数は、所望の最終ガスバリア性に大きく左右されることになる。その容器は、バッグイン容器であり得、その容器中で、分配される液体は、外部容器内に含まれる折り畳み可能なインナーバッグに含有される。インナーバッグと外部容器の間の空間に加圧気体(通常は空気)を射出して、インナーバッグを圧縮して圧潰し、容器から液体を押し出す。外部容器は、容器内への空気の進入を回避するのにバリア性を要し得る。インナーバッグは、二酸化炭素が炭酸飲料から出て行くのを回避し、また内部容器と外部容器の間の空間に射出される加圧気体がバッグ中に入るのを回避し、そして液体と接触させるのにバリア性を要し得る。
【0037】
MXD6およびコバルト塩等の従来のバリア用添加剤を、エチレングリコール(EG)とピロメリト酸二無水物(PMDA)を含む自己制御デュアルシステムと組み合わせることにより、以下の有利な特性を有するポリエステル組成物を取得する:
(a)良好なガスバリア性(図4参照)、
(b)射出成形中の低い溶融粘度(図2参照)であって、以下の(i)および(ii)を可能にする低い溶融粘度、
(i)低い射出成形圧(図3(a)参照)、
(ii)低圧力で生産される高いL/T比率を有する部品であって、それにより使用される原料の重量ならびに冷却時間を低減し、かつプリフォームの結晶化も低減する部品(図3(a)参照)、
(c)破裂圧力等の良好な機械的特性であって、より低い温度および圧力でブロー成形される容器でさえも有する機械的特性(図3(b)および5参照)。
【0038】
このようなコスト効果の高い加工条件(低いP射出成形、高いL/T、低いPブロー成形およびTブロー成形)で生産される容器で得られる良好なガスバリア性および機械的特性は、食品および飲料の保存用容器の領域において技術的および経済的な飛躍を引き起こす。射出成形の際のポリマーの低い溶融粘度(本来ならば不十分な機械的特性をもたらすとみなされることになる)は、射出成形中に材料上でのずれを低減する点で有利である。これは、もちろん、高価なツールの摩耗量を減らすが、材料の観点から、アセトアルデヒドのような望ましくない副産物の形成を制限するとも考えられている。要約した本発明の全ての利点は、機械的特性やガスバリア性の高い値を維持しながら、容器の生産コストのかなり削減を実現するのを可能にすることである。
図1
図2
図3
図4
図5