特許第6434025号(P6434025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6434025車両の駆動輪用のホイールハブ伝達ユニット、駆動輪および駆動補助付き車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434025
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】車両の駆動輪用のホイールハブ伝達ユニット、駆動輪および駆動補助付き車両
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/50 20100101AFI20181126BHJP
   B62M 6/65 20100101ALI20181126BHJP
   B60B 27/00 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
   B62M6/50
   B62M6/65
   B60B27/00 D
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-537226(P2016-537226)
(86)(22)【出願日】2014年8月19日
(65)【公表番号】特表2016-531798(P2016-531798A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】EP2014067617
(87)【国際公開番号】WO2015028345
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年5月2日
(31)【優先権主張番号】13181730.6
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517041361
【氏名又は名称】イノトアク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Innotorq GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】テオドア ピーレ
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−219387(JP,A)
【文献】 特開2011−5936(JP,A)
【文献】 特開2013−47078(JP,A)
【文献】 特開2012−201134(JP,A)
【文献】 実開昭53−86754(JP,U)
【文献】 特開2004−224335(JP,A)
【文献】 特開2002−193178(JP,A)
【文献】 特開昭48−99827(JP,A)
【文献】 特開平8−295998(JP,A)
【文献】 特開2001−83025(JP,A)
【文献】 特開2012−88185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/50
B60B 27/00
B62M 6/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪(1)用のホイールハブ伝達ユニットであって、
車軸(2)と、
前記車軸(2)に対して同心に配置されたピニオンハブ支持体(7)であって、前記ピニオンハブ支持体(7)に前記駆動輪(1)を駆動するために少なくとも1つのピニオンが相対回動不能に取付け可能である、ピニオンハブ支持体(7)と、
半径方向で前記ピニオンハブ支持体(7)と前記車軸(2)との間に配置されたトルク伝達装置(9)と、を備え、
前記トルク伝達装置(9)は、前記車軸(2)に対して同心に配置された、磁気コード化材料から製造された伝達スリーブ(10)を有し、前記伝達スリーブ(10)は、第1の長手方向端部(11)と第2の長手方向端部(12)とを有し、前記第1の長手方向端部(11)に、駆動連結部(13)が設けられており、前記駆動連結部(13)を介して、前記第1の長手方向端部(11)と前記ピニオンハブ支持体(7)とが互いに相対回動不能に連結されており、前記第2の長手方向端部(12)は、前記第1の長手方向端部(11)とは反対の側で前記第1の長手方向端部(11)に対して軸方向間隔を置いて配置されており、前記第2の長手方向端部(12)において、出力連結部(17)が設けられており、前記出力連結部(17)を介して、トルクが前記伝達スリーブ(10)から前記駆動輪に伝達可能であり、軸方向で前記駆動連結部(13)及び前記出力連結部(17)の間に、前記伝達スリーブ(10)の磁気コード化材料の、トルクの影響下で変化する磁気特性を用いてトルクを測定するための、前記伝達スリーブ(10)の測定領域(20)が形成されており、前記伝達スリーブ(10)は、その前記第1の長手方向端部(11)が、前記駆動連結部(13)の軸方向延在領域で、ラジアル軸受(21)により前記車軸(2)に片持ち式に軸支されていて、かつ前記車軸(2)に対して半径方向間隔を置いて支持されており、これにより、前記測定領域(20)において、半径方向で前記伝達スリーブ(10)と前記車軸(2)との間に、前記測定領域(20)に形成される磁気パターンを検出するためのセンサコイル(25)を収容する環状室(20)が設けられており、前記環状室(20)は、前記第2の長手方向端部(12)において、前記伝達スリーブ(10)の外側から軸方向にアクセス可能であり、
前記出力連結部(17)は、トルクの伝達時に、前記伝達スリーブ(10)の第2の長手方向端部(12)を、前記車軸(2)を中心にセンタリングすることを特徴とする、ホイールハブ伝達ユニット。
【請求項2】
前記出力連結部(17)は、フリーホイールである、請求項記載のホイールハブ伝達ユニット。
【請求項3】
前記出力連結部(17)は、周にわたって同一の間隔で配置された少なくとも3つのラチェット(19)を備えるラチェットフリーホイール(18)であるか、周にわたって同一の間隔で配置されかつ駆動回転方向でセルフロックする少なくとも3つのローラを備えるローラフリーホイールであるか、またはスターラチェットフリーホイールである、請求項1または2記載のホイールハブ伝達ユニット。
【請求項4】
前記ピニオンハブ支持体(7)は、前記伝達スリーブ(10)の前記測定領域(20)を半径方向外向きに覆うスリーブである、請求項1からまでのいずれか1項記載のホイールハブ伝達ユニット。
【請求項5】
前記駆動連結部(13)は、スラストブロック(14)を備え、前記スラストブロック(14)は、前記車軸(2)と軸方向で相対移動しないように連結されており、前記スラストブロック(14)に、前記ピニオンハブ支持体(7)および/または伝達スリーブ(10)が、軸方向の位置固定のために当接している、請求項1からまでのいずれか1項記載のホイールハブ伝達ユニット。
【請求項6】
前記スラストブロック(14)は、前記ピニオンハブ支持体(7)から半径方向内方へ突出しかつ前記ピニオンハブ支持体(7)に取り付けられた突出部であり、前記突出部に、前記伝達スリーブ(10)が軸方向で支持されている、請求項記載のホイールハブ伝達ユニット。
【請求項7】
前記駆動連結部(13)は、前記伝達スリーブ(10)の前記第1の長手方向端部(11)の外側と前記ピニオンハブ支持体(7)の内側とに、それぞれねじ山(15,16)を備え、前記ねじ山(15,16)は、互いに噛み合い、前記車軸(2)を中心にねじ山が切られており、前記伝達スリーブ(10)の前記第1の長手方向端部(11)の端面(26)が、前記スラストブロック(14)に当接している、請求項記載のホイールハブ伝達ユニット。
【請求項8】
前記ねじ山(15,16)のねじ巻き方向は、トルクの伝達時に前記伝達スリーブ(10)が軸方向で前記スラストブロック(14)に向かって駆動されるようになっている、請求項記載のホイールハブ伝達ユニット。
【請求項9】
前記駆動連結部(13)は、前記伝達スリーブ(10)の前記第1の長手方向端部(11)の外側と前記ピニオンハブ支持体(7)の内側との間に嵌合部を備え、前記伝達スリーブ(10)の前記第1の長手方向端部(11)の前記端面(26)は、前記スラストブロック(14)に当接している、請求項7記載のホイールハブ伝達ユニット。
【請求項10】
前記駆動連結部(13)は、前記ピニオンハブ支持体(7)と前記伝達スリーブ(10)との間の接着結合部を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載のホイールハブ伝達ユニット。
【請求項11】
前記ピニオンハブ支持体(7)は、アルミニウム合金から成っており、前記伝達スリーブ(10)は、高強度非磁性鋼から成っている、請求項1から10までのいずれか1項記載のホイールハブ伝達ユニット。
【請求項12】
駆動輪であって、ハブボディ(3)と、請求項1から11までのいずれか1項記載のホイールハブ伝達ユニット(6)と、ピニオンハブ支持体(7)に相対回動不能に取り付けられた少なくとも1つのピニオンと、を備え、前記ピニオンから前記ハブボディ(3)へトルクを伝達するために、前記ハブボディ(3)は、出力連結部(17)により、前記ピニオンと連結されていることを特徴とする、駆動輪。
【請求項13】
駆動補助付き車両であって、請求項12記載の駆動輪と、前記駆動輪に補助的に駆動を与えるための制御装置を有する駆動アセンブリと、伝達スリーブ(10)の測定領域(20)に形成される磁気パターンを検出するために環状室(24)に収容されたセンサコイル(25)と、を備え、前記センサコイル(25)により、前記制御装置は、前記駆動アセンブリの駆動モーメントがホイールハブ伝達ユニット(6)から伝達されるトルクに合わせて調整されるように、駆動制御可能であることを特徴とする、駆動補助付き車両。
【請求項14】
駆動補助付き車両は、電気自転車である、請求項13記載の駆動補助付き車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動輪用のホイールハブ伝達ユニット、ホイールハブ伝達ユニットを備える駆動輪、および駆動輪を備える駆動補助付き車両に関する。
【0002】
様々な個々の移動性要求を満たすために、電動式の車両がますます重要となっている。特に、電気モータにより駆動補助される自転車である電動自転車が広まっている。電気による走行アシストは、従来、ペダリングによって、相応に強く、自転車のペダルクランクに取り付けられたペダルを交互に下向きに押し付けることにより要求される。自転車の駆動輪、通常は後輪へトルクを伝達するために、ペダルクランクにチェーンリングが取り付けられており、チェーンリングは、チェーンを介してピニオンと連結されており、ピニオンは、駆動方向で相対回動不能に(つまり一緒に回動するように)後輪に取り付けられている。電気モータは、従来、後輪のハブに、ハブモータとして内蔵されており、その電気エネルギの供給は、蓄電池により実現されている。トルク測定装置により、ペダリングの強さが検出され、この場合、ペダリングの強さに応じて、制御装置により、蓄電池から電気エネルギが呼び出される。電気エネルギは、電動自転車を駆動補助するためにハブモータに供給される。
【0003】
トルク測定装置に関して、後輪のハブに取り付けられた測定スリーブを使用することが知られている。測定スリーブは、非磁性材料から製造されており、この非磁性材料は、相応の磁化パターンを有し、この磁化パターンは、測定スリーブへのトルクの作用下で変化する。電気的に作動させられるコイル対により、磁化パターンの変化を検出し、これにより、トルクの大きさを推測することができる。磁化パターンを検出するために、コイル対は、測定スリーブに直に隣接して配置されている。さらに、トルクを十分に正確に測定するために、測定スリーブは、相応に長い測定区間を有するので、測定スリーブは、その両長手方向端部で、半径方向および軸方向で安定して支持されている。したがって、コイル対の布線が困難であり、また測定スリーブは、ハブに、不都合に大きな構成スペースを必要としてしまうという問題が生じている。
【0004】
本発明の課題は、ホイールハブ伝達ユニットの構造が簡単でかつホイールハブ伝達ユニットが省スペースである、車両の駆動輪用のホイールハブ伝達ユニット、ホイールハブ伝達ユニットを備える駆動輪、および駆動輪を備える駆動補助付き車両を提供することである。
【0005】
この課題は、請求項1、13および14の特徴により解決される。好適な態様は、他の請求項に記載されている。
【0006】
本発明に係る、車両の駆動輪のためのホイールハブ伝達ユニットは、車軸と、車軸に対して同心に配置されたピニオンハブ支持体であって、ピニオンハブ支持体に駆動輪を駆動するために少なくとも1つのピニオンが相対回動不能に取付け可能である、ピニオンハブ支持体と、半径方向でピニオンハブ支持体と車軸との間に配置されたトルク伝達装置と、を備え、トルク伝達装置は、車軸に対して同心に配置された、磁気コード化材料から製造された伝達スリーブを有し、伝達スリーブは、第1の長手方向端部と第2の長手方向端部とを有し、第1の長手方向端部に、駆動連結部が設けられており、駆動連結部を介して、第1の長手方向端部とピニオンハブ支持体とが互いに相対回動不能に連結されており、第2の長手方向端部は、第1の長手方向端部とは反対の側で第1の長手方向端部に対して軸方向間隔を置いて配置されており、第2の長手方向端部に、出力連結部が設けられており、出力連結部を介して、トルクが伝達スリーブから駆動輪に伝達可能であり、軸方向で連結部の間に、伝達スリーブの磁気コード化材料の、トルクの影響下で変化する磁気特性を用いてトルクを測定するための、伝達スリーブの測定領域が形成されており、伝達スリーブは、その第1の長手方向端部が、駆動連結部の軸方向延在領域で、ラジアル軸受により車軸に片持ち式に軸支されていて、かつ車軸に対して半径方向間隔を置いて支持されており、これにより、測定領域において、半径方向で伝達スリーブと車軸との間に、測定領域を検出するためのセンサコイルを収容する環状室が設けられており、環状室は、第2の軸方向端部において、伝達スリーブの外側から軸方向にアクセス可能である。本発明に係る駆動輪は、ホイールハブと、ホイールハブ伝達ユニットと、ピニオンハブ支持体に相対回動不能に取り付けられた少なくとも1つのピニオンと、を備え、ピニオンからホイールハブへトルクを伝達するために、ホイールハブは、出力連結部により、ピニオンと連結されている。本発明に係る駆動補助付き車両は、駆動輪と、駆動輪を配量して駆動補助するための制御装置を有する駆動アセンブリと、伝達スリーブの測定領域を検出するために環状室に収容されたセンサコイルと、を備え、センサコイルにより、制御装置は、駆動アセンブリの駆動モーメントがホイールハブ伝達ユニットから伝達されるトルクに合わせて調整されるように、駆動制御可能である。
【0007】
ラジアル軸受による伝達スリーブの片持ち式の軸支に基づいて、環状室が、伝達スリーブの外側から軸方向でアクセス可能であることにより、内側に位置するセンサコイルのためのケーブルを、第2の長手方向端部において、伝達スリーブの外側へ導くことが有利であり、この場合、車軸に、ケーブルのためのたとえば追加的な貫通孔を設ける必要はない。したがって、ホイールハブ伝達ユニットの構造は、好適には簡単である。さらに、測定領域が要求される測定精度にとって十分に長く提供されているにもかかわらず、伝達スリーブは、好適には短く構成されている。したがって、ホイールハブ伝達ユニットの構成スペースが小さく有利であるので、ホイールハブ伝達ユニットは、簡単に、駆動輪に組み込み可能である。
【0008】
好適には、出力連結部は、トルクの伝達時に、伝達スリーブの第2の長手方向端部を、車軸を中心にセンタリングする。これにより、好適には、伝達スリーブがラジアル軸受により第1の長手方向端部において片持ち式に軸支されているにもかかわらず、伝達スリーブは、第2の長手方向端部においてトルクの伝達時に相応に機械的な荷重が掛けられている場合でもスムーズに回転することが達成される。したがって好適には、トルクの伝達時における伝達スリーブの機械的な曲げ交番荷重がわずかである。さらに、第2の長手方向端部における伝達スリーブの回転に相応のむらがあれば、センサコイルにより測定領域で測定されるトルク強さの歪曲がもたらされる。これに対して第2の長手方向端部における出力連結部のセンタリング作用が対抗するので、トルク伝達装置は、高い測定精度を有する。
【0009】
好適には、出力連結部は、フリーホイールである。この場合好適には、出力連結部は、周にわたって同一の間隔で配置された少なくとも3つのスプロケットを備えるスプロケットフリーホイールであるか、周にわたって同一の間隔で配置されかつ駆動回転方向でセルフロックする少なくとも3つのローラを備えるローラフリーホイールであるか、またはスターラチェットフリーホイールである。均一に配置された少なくとも3つのラチェットを備えるラチェットフリーホイール、および均一に配置された少なくとも3つのローラを備えるローラフリーホイールは、第2の長手方向端部において車軸を中心とする自己センタリング作用を有する。スターラチェットフリーホイールは、周にわたって均一に構成されているので、スターラチェットフリーホイールは、自己センタリング作用を有する。車軸を中心とするセンタリングとは、出力連結部によるトルクの伝達時に、伝達スリーブの第2の長手方向端部がホイールハブを中心に同心にセンタリングして保持されており、たとえば曲げモーメントが伝達スリーブにほとんど生じないことを意味している。
【0010】
好適には、ピニオンハブ支持体は、伝達スリーブの測定領域を半径方向外向きに覆うスリーブである。これにより、測定領域は、伝達スリーブにより、外向きに防護されており、これにより、測定領域は、たとえば、汚染または打撃などの有害な周囲環境の影響にさらされない。さらにこれにより、ピニオンハブ支持体に、複数のピニオンが良好に相並んで位置してピニオンハブ支持体に取付け可能であるような大きさの長さが与えられる。好適にはさらに、ピニオンハブ支持体の外側がスプラインシャフト成形部を有し、スプラインシャフト成形部は、交互に、車軸に対して平行に延在する溝とウェブとにより形成されている。ピニオンは、スプラインシャフト成形部に応じて反対に成形されたハブを有するので、ピニオンは、周方向で形状結合(形状結合とは、嵌め合いまたは噛み合いなどの部材相互の形状的関係による結合を意味する)式にピニオンハブ支持体に相対回不能に取付け可能である。
【0011】
好適には、駆動連結部は、スラストブロックを備え、スラストブロックは、ホイールハブと軸方向で固く連結されており、スラストブロックに、ピニオンハブ支持体および/または伝達スリーブが、軸方向の位置固定のために当接している。この場合好適には、スラストブロックは、ピニオンハブ支持体から半径方向内方へ突出しかつピニオンハブ支持体に取り付けられた突出部であり、突出部に、伝達スリーブが軸方向で支持されている。さらに好適には、駆動連結部は、伝達スリーブの第1の長手方向端部の外側とピニオンハブ支持体の内側とに、それぞれねじ山を備え、ねじ山は、互いに噛み合い、ホイールハブを中心にねじ山が切られており、伝達スリーブの第1の長手方向端部の端面が、スラストブロックに当接している。好適には、ねじ山のねじ巻き方向は、トルクの伝達時に伝達スリーブが軸方向でスラストブロックに向かって駆動されるようになっている。択一的に好適には、駆動連結部は、伝達スリーブの第1の長手方向端部の外側とピニオンハブ支持体の内側との間に嵌合部を備え、伝達スリーブの第1の長手方向端部の端面は、スラストブロックに当接している。好適には、駆動連結部は、ピニオンハブ支持体と伝達スリーブとの間の接着結合部を有する。
【0012】
駆動連結部の前述の好適な態様により、駆動連結部の安定したコンパクトな構造形態が得られ、この場合、ラジアル軸受は、駆動連結部の軸方向延在領域において伝達スリーブの内側面とホイールハブとの間に設けられている。ねじ山もしくは嵌合部とのラジアル軸受の整合により、駆動連結部から出力連結部へのトルクの伝達時に最適な力の流れが得られる。トルクは、ピニオンからピニオンハブ支持体へ、ねじ山または嵌合部と端面とスラストブロックとを介して、伝達スリーブへ伝達され、この場合、伝達スリーブの測定領域は、ラジアル軸受および駆動連結部から直接に軸方向に突出している。これにより、トルクの伝達時に、測定領域のねじれが可能になり、その際、伝達スリーブに、トルク測定を損なう曲げモーメントが及ぼされることはない。
【0013】
スラストブロックは、好適には、ピニオンハブ支持体と一体的に形成されている。スラストブロックがピニオンハブ支持体において半径方向内方へ突出しており、ねじ山が、伝達スリーブとピニオンハブ支持体とに形成されていることにより、ねじ山の螺合およびスラストブロックにおける第1の長手方向端部の端面の当接に基づいて、駆動連結部による、ピニオンハブ支持体と伝達スリーブとの間の、軸方向および半径方向で安定した結合が得られる。ピニオンハブ支持体から駆動連結部を介して伝達スリーブへのトルクの伝達時に、駆動連結部から測定領域へたとえば不都合な歪みやアンバランスな応力が伝達されない。したがって、測定領域は、直接に駆動連結部に、つまりラジアル軸受およびねじ山もしくは嵌合部に続いてよく、これにより、たとえば応力ピークを減衰するための移行部を測定領域に設ける必要がない。これにより、測定領域がその必要な軸方向長さで設けられているにもかかわらず、伝達スリーブの全長を小さく維持することができる。さらに、測定領域は、出力連結部まで通じていてよく、これにより、そこでも場合により生じる、出力連結部と測定領域との間の歪みおよびアンバランスな応力を低減するための移行部を設ける必要がない。
【0014】
出力連結部を設けることにより、ピニオンハブ支持体および伝達スリーブは、それぞれピニオンハブ支持体および伝達スリーブにとって適切な材料から製造することができ、好適には、材料は、ピニオンハブ支持体に対してはアルミニウム合金であり、伝達スリーブに対しては高強度非磁性鋼である。その他の点では、駆動補助付き車両は、好適には電気自転車である。
【0015】
以下に、添付の概略的な図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ホイールハブの斜視図である。
図2図1のホイールハブの長手断面図である。
【0017】
図面から看取されるように、ホイールハブ1は、車軸2とハブボディ3とを備える。ハブボディ3は、車軸2を中心に同心に、第1のホイールハブ軸受4と第2のホイールハブ軸受5とにより相対回動可能に車軸2に軸支されている。車軸2は、軸方向で完全にホイールハブボディ3を貫通して延在しており、この場合、第1のホイールハブ軸受4は、ホイールハブボディ3の一方の長手方向端部に配置されていて、第2のホイールハブ軸受5は、ホイールハブボディ3の他方の軸方向端部に配置されている。ホイールハブボディ3に、互いに軸方向間隔を置いて配置された2つのフランジが設けられており、フランジに、スポークが掛止可能である。
【0018】
ホイールハブ1は、さらにホイールハブ伝達ユニット6を備える。ホイールハブ伝達ユニット6は、第2のホイールハブ軸受5の側方でその横に、かつ第1のホイールハブ軸受4とは別の側に配置されている。ホイールハブ伝達ユニット6は、ピニオンハブ支持体7を備える。ピニオンハブ支持体7は、スリーブとして構成されていて、その外側で、ピニオンハブ支持体7に少なくとも1つのピニオンを取り付けるためのスプラインシャフト成形部を有する。ピニオンハブ支持体7は、ハブボディ3から側方に突出しており、この場合、車軸2は、ハブボディ3だけではなくピニオンハブ支持体7をも貫通して延在している。ピニオンハブ支持体7の、ハブボディ3に向いた側で、ピニオンハブ支持体7は、ピニオンハブ支持体軸受8により、ハブボディ3に半径方向で軸支されており、この場合、ピニオンハブ支持体軸受8は、その内輪が、ピニオンハブ支持体7に当接していて、その外輪が、ハブボディ3に当接している。
【0019】
ホイールハブ伝達ユニット6は、トルク伝達装置9を備える。トルク伝達装置9は、伝達スリーブ10を備える。伝達スリーブ10は、ピニオンハブ支持体7の内側で、ピニオンハブ支持体7と同様に、車軸2を中心に同心に配置されている。伝達スリーブ10は、第1の長手方向端部11と第2の長手方向端部12とを備える。この場合、第1の長手方向端部11は、ハブボディ3とは反対の側に配置されていて、第2の長手方向端部12は、ハブボディ3に向いた側に配置されている。第1の長手方向端部11において、伝達スリーブ10は、駆動連結部13により、ピニオンハブ支持体7と連結されている。駆動連結部13は、スラストブロック14を備える。スラストブロック14は、半径方向内方へピニオンハブ支持体7から突出している。スラストブロック14は、ピニオンハブ支持体7に一体的に形成されていて、ピニオンハブ支持体7の、ハブボディ3とは反対の側の長手方向端部に配置されている。さらに、駆動連結部13は、雌ねじ山15を備える。雌ねじ山15は、伝達スリーブ10の第1の長手方向端部11の外側に形成されている。雌ねじ山15に対応して、駆動連結部13は、雄ねじ山16を備える。雄ねじ山16は、ピニオンハブ支持体7の内側に形成されており、この場合、スラストブロック14は、ピニオンハブ支持体7の、ハブボディ3とは反対の側に配置されている。伝達スリーブ10は、その雄ねじ山16が、ピニオンハブ支持体7の雌ねじ山15と螺合しており、この場合、雄ねじ山16は、伝達スリーブ10の第1の長手方向端部11の端面26に続いており、これにより、端面26は、スラストブロック14に当接している。
【0020】
伝達スリーブ10の第2の長手方向端部12に、出力連結部17が形成されている。出力連結部17は、ラチェットフリーホイール18により形成されている。ラチェットフリーホイール18は、周にわたって均一に分配された少なくとも3つのラチェット19を備える。この場合、ラチェットフリーホイール18は、そのラチェット19が、トルクの伝達時に、センタリング作用を及ぼして伝達スリーブ10の第2の長手方向端部12に作用する。
【0021】
伝達スリーブ10は、磁気コード化材料から製造されており、この場合、駆動連結部13と出力連結部17との間の領域は、測定領域20として構成されている。駆動連結部13の軸方向領域に、つまりねじ山15,16およびスラストブロック14の軸方向延在長さの領域に、伝達スリーブ10用の片持ち式の支持部21が設けられている。片持ち式の支持部21は、第1の溝付き玉軸受22と第2の溝付き玉軸受23とから形成されている。第1の溝付き玉軸受22と第2の溝付き玉軸受23とは、相並んで車軸2に配置されていて、伝達スリーブ10を、第1の長手方向端部11において、車軸2から半径方向間隔を置いて軸支する。溝付き玉軸受22,23の直ぐ横で、測定領域20は、駆動連結部13の直ぐ傍まで延在している。測定領域20の下側に環状室24が形成されており、環状室24には、測定領域20を検出するための2つのコイルを備えるセンサコイル25が配置されている。センサコイル25のケーブルは、伝達スリーブ10の第2の長手方向端部12において布線されている。というのも、そこでは、片持ち式の支持部21に基づいて、伝達スリーブ10が外側からアクセス可能であるからである。ケーブルは、車軸2と伝達スリーブ10との間に配置されている。たとえば、伝達スリーブ10または車軸においてケーブルのための通路は、設けられていない。
【0022】
ハブボディ3を駆動するために、ピニオンに、駆動回転方向に応じて方向付けされたトルクが作用する。ラチェットフリーホイール18は、ラチェット19が駆動回転方向でロックするように、ホイールハブ1内に組み込まれている。トルクは、ピニオンから、ホイールハブ支持体7のスプラインシャフト成形部を介して、ホイールハブ支持体7に伝達される。ねじ山15,16の螺合と、スラストブロック14における端面26の当接とにより、トルクは、ホイールハブ支持体7から、伝達スリーブ10の第1の長手方向端部11に伝達される。伝達スリーブ10の半径方向の支持および軸支は、溝付き玉軸受22,23により実現される。伝達スリーブ10の第2の長手方向端部12において、ラチェットフリーホイール18により、トルクが、ハブボディ3に伝達される。長手方向端部11,12は、測定領域20を介して、相対的に回動不能に連結されており、これにより、測定領域20がねじられる。測定領域20に形成される磁気パターンは、ねじれの強さに応じて変化する。この変化が、センサコイル25により検出される。センサコイル25のケーブルにより、センサコイル25の電気信号がホイールハブ1の外側へ導かれる。
【符号の説明】
【0023】
1 ホイールハブ
2 車軸
3 ハブボディ
4 第1のホイールハブ軸受
5 第2のホイールハブ軸受
6 ホイールハブ伝達ユニット
7 ピニオンハブ支持体
8 ピニオンハブ支持体軸受
9 トルク伝達装置
10 伝達スリーブ
11 第1の長手方向端部
12 第2の長手方向端部
13 駆動連結部
14 スラストブロック
15 雌ねじ山
16 雄ねじ山
17 出力連結部
18 ラチェットフリーホイール
19 ラチェット
20 測定領域
21 片持ち式の支持部
22 第1の溝付き玉軸受
23 第2の溝付き玉軸受
24 環状室
25 センサコイル
26 端面
図1
図2