特許第6434037号(P6434037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434037
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】関節インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/40 20060101AFI20181126BHJP
【FI】
   A61F2/40
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-547204(P2016-547204)
(86)(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公表番号】特表2016-532533(P2016-532533A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】CH2014000114
(87)【国際公開番号】WO2015051471
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年6月5日
(31)【優先権主張番号】1746/13
(32)【優先日】2013年10月13日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】517027457
【氏名又は名称】41ヘミヴァース アーゲー
【氏名又は名称原語表記】41Hemiverse AG
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100198960
【弁理士】
【氏名又は名称】奥住 忍
(72)【発明者】
【氏名】オヴェール・トム
(72)【発明者】
【氏名】フリッグ・ロベール
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0193282(US,A1)
【文献】 特開昭53−047194(JP,A)
【文献】 特開平05−168656(JP,A)
【文献】 特開昭48−035697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/30− 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケット付きの第1部材およびボールヘッド付きの第2部材を含み、前記ソケットが少なくとも半球形であり、前記第1部材と前記第2部材との間のボール−アンド−ソケット連結部を形成するように、前記ボールヘッドが前記ソケットに挿入される、人工関節インプラントにおいて、
前記ソケット内の前記ボールヘッドの動きは、少なくとも1つの溝に結合された少なくとも1つの突出部によって少なくとも1つの自由度に制限され、前記少なくとも1つの突出部が、前記ソケット上に設けられ、前記少なくとも1つの溝が、前記ボールヘッド上に設けられ、またはその逆に設けられ、
前記第1部材は、第4回転軸を中心としてベース部に回転可能に結合されたインレーをさらに含み、前記少なくとも1つの突出部と前記少なくとも1つの溝とは、前記第4回転軸に本質的に平行な第1回転軸を中心とする前記ボール−アンド−ソケット連結部の少なくとも1つの自由度を遮断するように配列される人工関節インプラント。
【請求項2】
前記少なくとも1つの溝は、前記ボールヘッドまたは前記ソケットの大円に沿って位置する請求項1に記載の人工関節インプラント。
【請求項3】
前記少なくとも1つの溝は、前記少なくとも1つの突出部の幅以上の幅を有する請求項1または2に記載の人工関節インプラント。
【請求項4】
前記少なくとも1つの突出部は、円筒形状または半球形状である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の人工関節インプラント。
【請求項5】
前記少なくとも1つの溝は、前記ソケット上に設けられ、前記少なくとも1つの溝は、前記ソケットの頂点と円周方向エッジとの間の距離の一部のみに伸びる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の人工関節インプラント。
【請求項6】
前記ボールヘッドは、ドーム形状または球形セグメント形状よりなる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の人工関節インプラント。
【請求項7】
前記少なくとも1つの溝は、前記ボールヘッド上に設けられ、前記少なくとも1つの溝は、前記ドームの頂点と円周方向エッジとの間の距離の一部のみに伸びるか、または前記球形セグメントの2つの円周方向エッジの間の一部のみに伸びる請求項6に記載の人工関節インプラント。
【請求項8】
前記少なくとも1つの突出部は、前記ソケットまたは前記ボールヘッドの中心と交差するように配向される中心軸を有する請求項1乃至のいずれか1項に記載の人工関節インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール−アンド−ソケット(ball−and−socket)連結部によって連結される2つの要素を含む人工関節の関節インプラントに関し、ボール−アンド−ソケット連結部は、少なくとも1つの遮断された自由度を有する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工関節のための異なる様々な類型のインプラントが知られている。具体的に、ボール−アンド−ソケット型を有する関節インプラントが、股関節および肩のインプラントに用いられる。しかし、ボール−アンド−ソケット型のインプラントは、手首の橈骨手根関節、手の中手指節関節、および足の中足指節関節などの顆状関節に用いられることができる。
【0003】
一部類型のインプラントにおいて、特に、橈骨手根関節、中手指節関節、中足指節関節において、ボール−アンド−ソケット関節の動きの少なくとも1つの自由度が、例えば自然関節の機能を模倣するように制限されなければならない。また、一部の状況では、人工股関節または肩のインプラントにおいてボール−アンド−ソケット関節の動きの自由度を限定することが有益なことがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、少なくとも1つの自由度においてボール−アンド−ソケット連結部の動きを制限できる関節インプラントを製造することにある。
【0005】
本発明の解決手段は、請求項1に記載の特徴部によって特定される。本発明によれば、関節インプラントは、ソケット付きの第1部材およびボールヘッド付きの第2部材を含む。ソケットは、少なくとも半球形であり、ボールヘッドは、第1素子と第2素子との間のボール−アンド−ソケット連結部を形成するように、前記ソケットに挿入される。ソケット内におけるボールヘッドの動きは、少なくとも1つの溝に嵌る少なくとも1つの突出部によって少なくとも1つの自由度に制限される。これにより、少なくとも1つの突出部がソケット側に設けられ、少なくとも1つの溝がボールヘッド側に設けられ、またはその逆に設けられる。前記第1部材は、第4回転軸を中心としてベース部に回転可能に結合されたインレーをさらに含み、前記少なくとも1つの突出部と前記少なくとも1つの溝とは、前記第4回転軸に本質的に平行な第1回転軸を中心とする前記ボール−アンド−ソケット連結部の少なくとも1つの自由度を遮断するように配列される。
【0006】
突出部と溝とを設けることによって、ボール−アンド−ソケット連結部の動きの自由度を非常に簡単ながらも効果的に制限する。また、本発明の関節インプラントは、非常に簡単に組み立てることができ、患者の骨に固定すべき追加部品を備える必要がなく、したがって、患者に対して迅速かつ簡単に移植できる。また、ボール−アンド−ソケット連結部は、高い一致性(congruency)を有し、優れた摩耗特性を示す。したがって、より少ない部品とより優れた摩耗特性との2つのヒンジ軸を含む関節と同じ動きの自由を達成する。
【0007】
第1部材と第2部材とは、関節インプラントの用途に応じる形状とサイズとを有する。例えば、本発明の関節インプラントは、股関節の代替に用いることができる。この場合、第1部材は、半球寛骨臼カップとして形成される。したがって、ボールヘッドを備える第2部材は、患者の大腿骨に挿入される大腿骨の構成要素として形成される。人工寛骨臼カップと大腿骨の構成要素との多様な実施例は、当業者に知られている。
【0008】
また、非制限的な第2例として、本発明による関節インプラントは、肩の代替に用いることができる。この場合、第1部材は、患者の関節窩に挿入される関節ディスクの形状を有する。したがって、第2部材は、患者の上腕骨に挿入される上腕骨シャフトの形態で設けられる。
【0009】
本発明は、第1部材および第2部材の特定の形状、サイズ、または類型に制限されず、むしろ異なる多様な類型の人工関節に対して使用される。例えば、本発明に係る関節インプラントは、また、肘、膝、橈骨手根関節、中手指節関節、または中足指節関節を代替するように使用され得る。このような例示的な使用の各々において、第1部材および第2部材は、患者の対応する解剖学的位置に移植されるための形状とサイズとを有する。
【0010】
ボール−アンド−ソケット型連結部は、当業者に知られている。基本的に、ボールヘッド形状部分は、対応するソケットに挿入される。一般的に、ボール−アンド−ソケット型連結部は、ボールヘッドがソケット内で3個の異なる軸を中心として回転する。すなわち、ボールヘッドは、3個の回転自由度を有し、ソケットに対して移動する。好ましくは、ソケットは、ボールヘッドがソケット内にぴったりとフィットするサイズを有し、よって、ボールヘッドの回転運動がソケット内だけで行われるように許容し得る。しかし、一部の状況では、ソケットは、ソケット内におけるボールヘッドの限定された並進運動を許容するような形状である。このような状況では、もちろん、ボールヘッドがさらに多くの自由度を有する。例えば、並進運動が限定された距離にわたって一方向に許容されれば、ボールヘッドは、1個の並進運動自由度および3個の回転自由度を有し、総計4個の自由度を有する。
【0011】
本出願で使用される「自由度」という用語は、移動ラインに沿う並進運動のみならず、回転軸を中心とする回転運動をも含むものと理解し得る。
【0012】
少なくとも1つの溝に少なくとも1つの突出部が結合することによって、突出部が溝を脱する方向へのボールヘッドの動きが制限される。したがって、突出部が溝を移動する動きだけが可能である。したがって、溝は、ソケット内におけるボールヘッドの動きのための一種の案内路(guideway)と見なすことができる。
【0013】
突出部は、ボールヘッドに設けることができる。したがって、溝は、ソケットに設けられる。代案として、突出部をソケットに設けてもよい。この場合、溝は、ボールヘッドに設けられる。少なくとも1つの溝に係合された少なくとも1つの突出部が設けられる限り、少なくとも1つの溝または少なくとも1つの突出部がソケットに設けられるか、またはボールヘッドに設けられるかは問わない。
【0014】
好ましくは、第1部材および/または第2部材は、例えばコーティング塗布によって骨の内方成長のために強化された表面を含む一体鋳造(monobloc)構造として設けられる。
【0015】
好ましくは、少なくとも1つの溝は、ボールヘッドまたはソケットの大円に沿って位置する。溝を大円に沿って設けることによって、ソケットの中心と交差する第1回転軸に沿うソケット内におけるボールヘッドの動きを制限できる。しかし、少なくとも1つの突出部が少なくとも1つの溝に沿って滑らかに移動し、当該溝内で回転するので、ボール−アンド−ソケット連結部は、第1回転軸に対して直交する残りの2つの回転軸を中心として回転可能である。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つの溝は、少なくとも1つの突出部の幅以上の幅を有する。これにより、少なくとも1つの突出部は、少なくとも1つの溝内で回転およびスライド移動できる。
【0017】
好ましい一実施例において、少なくとも1つの溝の幅は、少なくとも1つの突出部の幅より大きい。したがって、少なくとも1つの制限された自由度においてボールヘッドの動きは、限定された方式ではあるが、相変らず可能である。これにより、限定された範囲の運動だけが可能な制限された自由度を除いた全ての自由度において完全な運動能力を有する関節インプラントが提供できる。例えば、これにより、限定された「揺動(wobbling)型」運動、すなわち制限された自由度での揺動が可能となり、制限された自由度の方向に外力が加えられる場合、関節または周辺組織に対する損傷発生の度合いが減少する。
【0018】
例えば、制限される自由度における運動をさらに制限するように、少なくとも1つの溝の幅は、少なくとも1つの突出部の幅よりも大きくはない。通常、少なくとも1つの溝の幅は、少なくとも1つの突出部の幅の100%から125%の間である。少なくとも1つの突出部が円形または楕円形である場合、その幅は、突出部の直径または最大直径に対応するものと理解し得る。
【0019】
好ましくは、少なくとも1つの突出部の形状は、円筒形または半球形である。このような形状とすることにより、少なくとも1つの溝内における少なくとも1つの突出部の動きが妨げられない。
【0020】
代案として、少なくとも1つの突出部は、直方体形状であってもよい。しかし、直方体形状の場合、少なくとも1つの溝内における少なくとも1つの突出部の回転が、少なくとも1つの突出部の端部(エッジ:edges)または先端(チップ:tips)と少なくとも1つの溝の側壁とのジャミング(jamming)によって妨げられることがある。したがって、少なくとも1つの突出部を直方体形状とすることによって、直方体突出部の側壁が溝の側壁と係合し、これによって、少なくとも1つの溝内における少なくとも1つの突出部の回転を妨げるので、追加自由度におけるボール−アンド−ソケット連結部の動きを制限し得る。
【0021】
好ましくは、少なくとも1つの溝は、ソケット上に設けられ、ソケットの頂点とエッジとの間の距離の一部のみに伸びる。したがって、少なくとも1つの突出部の動きが、第2自由度に部分的に制限され得る。これにより、第1部材と第2部材との間のボール−アンド−ソケット連結部の運動が、任意の動き制約を含む自然関節を模倣する関節インプラントが提供される。例えば、1つの軸を中心とするソケット内におけるボールヘッドの回転が、回転方向によって異なる最大回転角度に制限され得るように、関節インプラントを提供し得る。
【0022】
好ましくは、ボールヘッドは、ドーム形状または球形セグメント形状である。このような形態は、少なくとも1つの実質的フラット部を提示するので、第2部材は、多様な形状とすることができる。また、実質的フラット部は、追加インプラント構成要素のためのアンカリング地点を含むことができる。これは、例えば、第2部材に取付け可能な異なるサイズの構成要素を設けることによって、例えば、異なる長さや直径のステムを設けることによって、インプラントの特定患者適応が可能となるモジュール型システムにおいて本発明の関節インプラントを使用できるようにする。
【0023】
好ましくは、少なくとも1つの溝は、ボールヘッドに設けられ、少なくとも1つの溝は、ドームの頂点と円周方向エッジとの間の距離の一部のみに伸びるか、または球形セグメントの2つの円周方向エッジの間の一部のみに伸びる。
【0024】
このような方法で、少なくとも1つの突出部の動きは、少なくとも1つの溝がボールヘッド上に配置される場合、第2自由度に部分的に制限され得る。
【0025】
好ましくは、第1部材は、第1回転軸を中心としてベース部分に回転可能に結合されたインレー(inlay)をさらに含み、少なくとも1つの突出部と少なくとも1つの溝とは、第1回転軸に本質的に平行な第2回転軸において少なくともボール−アンド−ソケット連結部の回転運動を遮断するように配列される。
【0026】
このような構成により、第1回転軸を中心とする回転中心がオフセットする。好ましくは、ソケットは、インレー上の偏心位置に位置する。また、ソケットは、シャフトまたはステムによってインレーから離隔されてもよい。したがって、回転中心のオフセットの異なる変動が実現される。
【0027】
好ましくは、少なくとも1つの突出部は、例えば、ソケットまたはボールヘッドの中心と交差するように配向される中心軸を有する。すなわち、少なくとも1つの突出部は、中心を向く。代案として、中心軸は、例えば中心と交差しないように配向されてもよく、これにより、関節インプラントは、回転の偏心中心を有することが可能となる。
【0028】
また、ボールヘッドは、好ましくは、例えば、ボール−アンド−ソケット関節が分解されるのを避けるために、ソケット内に固定される。このような固定は、好ましくは、ソケット内のボールヘッドのフォームフィット(form−fit)結合によって、例えば、ボールヘッドの寸法より小さい開口をソケットに設け、一旦ボールヘッドが正確な方向に挿入および配向されることによって可能になる。例えば、ボールヘッドは、定義された最大円周および定義された高さを有するドームとして構成され得る。通常、最大円周は、ボールヘッドの大円の円周に対応する。ソケットは、ボールヘッドの高さよりは大きいが、最大円周よりは小さい寸法を有する開口を備えるように構成される。したがって、ボールヘッドは、ソケット内に横断方向だけに挿入され得る。ボールヘッドの再配向後には、ボールヘッドの最大円周がソケットの開口を通じて嵌合されないので、ボール−アンド−ソケット連結部の分解が防止される。
【0029】
他の有利な実施例および特徴の組合は、以下の詳細な説明および請求範囲から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面は、実施例を説明するためのものである。
図1】本発明に係る関節インプラントの一例を示す図である。
図2図1に示した関節インプラントの第2部材の詳細図である。
図3】、図1に示した関節インプラントの第1部材の詳細図である。
図4】本発明に係る関節インプラントの代替実施例を示す図である。
図5】肩補綴として構成された図4に示した関節インプラントを示す図である。
図6】人工肘として構成された本発明に係る関節インプラントを示す図である。
図7図6に示した完全な人工肘を示す図である。
図8図7に示した人工肘の第1部材を示す図である。
図9図7に示した人工肘の第2部材を示す図である。 図面において、同一の構成要素には、同一の参照符号を付与している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明に係る関節インプラント1の一例を示す。関節インプラント1は、半球形ソケット4付きの第1部材2を含む。また、関節インプラント1は、ボールヘッド5を含む第2部材3を含む。ボールヘッド5は、ソケット4内に配置され、ボール−アンド−ソケット連結部を形成する。
【0032】
図示した例示的な実施例で、第2部材3は、例えば、スレッド(thread)を含む孔の形態よりなる連結部20のみならず、ボールヘッド5をも含む。代案として、連結部20は、モールステーパー(morse taper)として構成され得る。シャフトまたはステムなどの追加構成要素は、連結部20によって第2部材3と連結される。図示した実施例で、ボールヘッド5は、ドーム形状である。
【0033】
半球形ソケット4は、ボールヘッド5に設けられた2つの突出部6.1,6.2が結合される溝7を含む。突出部6.1,6.2と溝7とは、マッチングされる半球形状を有する。溝7と突出部6.1,6.2とを設けない場合、ボールヘッド5がソケット内で3個の回転軸A1,A2,A3を中心として自由に回転する。なお、第1軸A1が、図面を見るときの観察方向に平行に配向される。しかし、2個の突出部6.1,6.2を溝7内に結合することによって、2個の突出部6.1,6.2が溝7にフォームフィット結合されるので、第1軸A1を中心とするボールヘッド5の回転運動を制限する。したがって、2個の突出部6.1,6.2が溝7に結合することによって、1つの自由度に関節インプラント1の動きを制限する。図示した実施例で、溝7は、2個の突出部6.1,6.2と同一の形状および幅を有している。よって、第1回転軸A1を中心とする任意の動きが防止される。代案として、溝7は、2個の突出部6.1,6.2の幅より少し大きい幅を有してもよい。このような代替実施例では、ボールヘッド5が第1回転軸A1を中心として僅かに動くので、よって、 第1回転軸A1を中心とするソケット4内におけるボールヘッド5の限定された「揺動」が可能になる。
【0034】
第3回転軸A3を中心とするボールヘッド5の回転運動は、溝7内における2個の突出部6.1,6.2のスライド運動と、溝7内における2個の突出部6.1,6.2の回転による第2回転軸A2を中心とする回転運動によって可能になる。
【0035】
図2は、図1に示した関節インプラント1の第2部材3の詳細図である。ボールヘッドの形状のみならず、2個の突出部6.1,6.2の形状も同図から明確に認識し得る。図示したように、ボールヘッド5は、ドーム形状、すなわち、平面によって切断された球の形状よりなっているが、2個の突出部6.1,6.2は、半球の形態よりなっている。
【0036】
図3は、図1に示した関節インプラント1の第1部材2の詳細図である。図示したように、溝7は、半球形状であり、大円に沿って半球形ソケット4上に配置されている。したがって、溝7は、エッジからエッジまでソケット4に伸びる。半球形ソケット4の頂点周囲には、開口8が配置される。
【0037】
図4は、図1に示した関節インプラント1の代替実施例を示す。本実施例は、例えば、肩補綴として使用され得る。第1部材2は、半球形ソケット4が偏心位置にある円形インレー9を含む。インレー9は、ベース部材10に回転可能に連結され、第4軸A4を中心として回転する。ソケット4の溝7は、2個の突出部6.1,6.2と溝7との結合によって回転運動が禁止される第3軸A3が、インレー9の第4回転軸A4に略平行に配置されるように配置される。したがって、図4に示した実施例の特定の構成によれば、第3回転軸A3のオフセットが達成される。また、第2部材3は、ボールヘッド5と結合された略Z形状のアダプター11を含む。アダプター11によって、シャフトまたはステムを第2部材にオフセットした状態で取付けられる。このようなオフセットは、肩補綴に関して特に有利である。
【0038】
図5は、肩補綴として構成された図4に示した関節インプラント1を示す。シャフト12は、アダプター11に固定されている。シャフト12は、患者の上腕骨に挿入されるためのサイズおよび形状を有する。ベース部材10は、好ましくは、関節窩に位置するためのサイズおよび形状を有し、その外縁は、烏口突起および肩峰突起と結合される。構成が異なるアダプター11のセットを設けることによって、肩補綴インプラントを簡単な方式で異なる患者の解剖学的構造にあわせてカスタマイズできる。
【0039】
図6は、人工肘として構成された本発明に係る関節インプラント1を示す。第1部材2は、患者の遠位上腕骨に移植されるためのサイズおよび形状を有するステム13およびソケット4を含む一般的に半球形のヘッド部分14を含む。前方支持部材15は、ステム13に平行にヘッド部分14から延長する。前方支持部材15は、ステム13の短い部分のみに沿って伸び、上腕骨の前方皮質と結合されるものである。ヘッド部分14は、ソケット4と交差する凹部16を含む。関節インプラント1の第2部材3のボールヘッド5は、ソケット4内に挿入され、これにより、第2部材3の連結部20に挿入された尺骨ステム(図7に示す)とステム13とが、ステム13の長さ方向の軸に平行な平面を脱して、相互に対して移動できないように、溝7および2個の突出部6.1,6.2がソケット4内におけるボールヘッド5の動きを制限する。この構成によれば、肘関節の自然な動き自由度を模倣する関節インプラントを提供できる。
【0040】
完全な人工肘が図7に示されている。図6に示した部材に加えて、尺骨ステム17がボールヘッド5に取付けられている。凹部16の機能は、他の方向とは対照的に、肘の屈曲運動に対応する一方向に尺骨ステム17に対する向上した運動範囲を許容することによって明らかになる。ステム17を尺骨内に挿入する深さを限定するように機能する追加深さ停止部18は、尺骨ステム17上に配置される。
【0041】
図8は、人工肘の第1部材2をさらに詳しく示す。図示したように、溝7は、ソケット4のエッジから頂点まで伸びていないが、エッジと頂点との間の距離の略半分で終結される。これにより、第1軸A1を中心とするソケット4内におけるボールヘッド5の回転運動が追加的に限定される。
【0042】
人工肘の第2部材3が、図9に示されている。前実施例のように、ボールヘッド5は、ドーム形状である。しかし、本実施例で、ボールヘッド5は、半球形状の他の面から突出するノーズ(nose)19を含む。ノーズ19は、連結部20によってボールヘッド5に取付けられ、尺骨ステム17のための追加支持部として機能する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9