(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434145
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】軸方向先端冷却回路を備えたタービンブレード
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20181126BHJP
F01D 5/20 20060101ALI20181126BHJP
【FI】
F01D5/18
F01D5/20
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-525580(P2017-525580)
(86)(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公表番号】特表2018-500491(P2018-500491A)
(43)【公表日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】US2014064944
(87)【国際公開番号】WO2016076834
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】チン−パン リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェ ワイ. アム
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド エル. ヒリアー
(72)【発明者】
【氏名】エリック シュロウダー
(72)【発明者】
【氏名】エリック ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ダスティン ミュラー
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−023202(JP,A)
【文献】
特開2011−163123(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0093387(US,A1)
【文献】
特開平06−137102(JP,A)
【文献】
特開平11−247608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
F01D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンブレードであって、該タービンブレードは、
前縁と、後縁と、正圧面壁と、負圧面壁とを画定する外壁と、先端を有する半径方向外側端部と、根元部に連結された半径方向内側端部とを有しており、前記前縁は、該前縁を貫通して延在するフィルム冷却孔を有しておらず、
前記外壁と共に前縁冷却回路を画定する構造体を有しており、前記前縁冷却回路は、前記前縁に隣接し、前記根元部から前記先端に向かって半径方向で延在し、かつ少なくとも1つの前縁冷却通路を有しており、
前記外壁と共に後縁冷却回路を画定する構造体を有しており、前記後縁冷却回路は、前記後縁に隣接し、前記根元部から前記先端に向かって半径方向で延在しており、
前記外壁と共に中間区分冷却回路を画定する構造体を有しており、前記中間区分冷却回路は、前記前縁冷却回路と前記後縁冷却回路との間に位置し、第1の通路と、中間通路と、最終通路とを含む前進流蛇行状冷却回路を画定し、かつ半径方向で前記根元部から前記先端に向かって延在しており、
前記外壁はさらに、軸方向先端冷却回路を画定しており、該軸方向先端冷却回路は、前記先端に隣接し、翼弦方向でほぼ連続的に延在しており、前記翼弦方向は、前記前縁から前記後縁へと延在しており、
前記前縁冷却回路と、前記中間区分冷却回路と、前記後縁冷却回路とはそれぞれ、前記根元部における冷却空気供給部から冷却空気を受け取り、前記前縁冷却回路と前記中間区分冷却回路はそれぞれ半径方向外側部分でさらに、少なくとも1つの出口を有しており、該出口は前記軸方向先端冷却回路に流体連通しており、これにより、前記前縁冷却回路から出る実質的に全ての前縁冷却空気流と、前記中間区分冷却回路から出る実質的に全ての中間区分冷却空気流とが、前記軸方向先端冷却回路へと方向付けられ、
前記前縁冷却回路と前記中間区分冷却回路とは、前記軸方向先端冷却回路の前方端に連通しており、これにより、前記前縁冷却回路から出る前記前縁冷却空気流と、前記中間区分冷却回路から出る前記中間区分冷却空気流とが、前記軸方向先端冷却回路内において該軸方向先端冷却回路の翼弦長さの少なくとも一部にわたって軸方向で実質的に平行である、
タービンブレード。
【請求項2】
前記前進流蛇行状冷却回路の前記中間通路及び前記最終通路のうちの少なくとも1つは、前記軸方向先端冷却回路に流体連通している、請求項1記載のタービンブレード。
【請求項3】
前記前縁冷却回路を画定する前記構造体は第1の壁と第2の壁とを含み、該第1の壁と第2の壁とは、前記外壁と共に、主前縁冷却通路とインピンジメント通路とを画定しており、前記第2の壁は、半径方向で互いに間を空けて位置する複数のインピンジメント冷却孔を有しており、これにより前記前縁冷却通路と前記インピンジメント通路とが流体連通される、請求項1記載のタービンブレード。
【請求項4】
前記先端は複数の先端冷却孔を有しており、前記外壁はさらに、前記先端から半径方向外側に向かって延在するスクィーラ先端レールを有しており、該スクィーラ先端レールは複数のスクィーラ先端孔を画定している、請求項1記載のタービンブレード。
【請求項5】
タービンブレードであって、該タービンブレードは、
前縁と、後縁と、正圧面壁と、負圧面壁とを画定する外壁と、先端を有する半径方向外側端部と、根元部に連結された半径方向内側端部とを有しており、前記前縁は、該前縁を貫通して延在するフィルム冷却孔を有しておらず、
前記外壁は、軸方向先端冷却回路を画定しており、該軸方向先端冷却回路は、前記先端に隣接し、翼弦方向で連続的に延在しており、前記翼弦方向は、前記前縁から前記後縁へと延在しており、
前記外壁と共に、前縁冷却空気流を供給するための前縁冷却回路を画定する構造体を有しており、前記前縁冷却回路は前記前縁に隣接し、半径方向で前記根元部から前記先端に向かって延在しており、前記前縁冷却回路はさらに第1の出口を有しており、該出口は前記軸方向先端冷却回路に流体連通しており、これにより、前記前縁冷却回路から出る実質的に全ての前縁冷却空気流は、前記軸方向先端冷却回路へと方向付けられ、
前記外壁と共に、後縁冷却回路を画定する構造体を有しており、前記後縁冷却回路は、前記後縁に隣接し、前記根元部から前記先端に向かって半径方向で延在しており、
前記外壁と共に、中間区分冷却空気流を供給するための中間区分冷却回路を画定する構造体を有しており、前記中間区分冷却回路は前記前縁冷却回路と前記後縁冷却回路との間に位置しており、前記中間区分冷却回路は第2の出口を有しており、該出口は前記軸方向先端冷却回路に流体連通しており、これにより、前記中間区分冷却回路から出る実質的に全ての中間区分冷却空気流は、前記軸方向先端冷却回路へと方向付けられ、
前記中間区分冷却回路と前記前縁冷却回路とにほぼ隣接する隔壁を有しており、該隔壁は前記翼弦方向に延在しており、前記隔壁は、隔壁下方面が、前記中間区分冷却回路から出る前記中間区分冷却空気流に対して実質的に横方向であるように配置されており、
前記隔壁は、前記前縁冷却回路から出る前記前縁冷却空気流と、前記中間区分冷却回路から出る前記中間区分冷却空気流とが、前記軸方向先端冷却回路内において該軸方向先端冷却回路の翼弦長さの少なくとも一部にわたって軸方向で実質的に平行であるように配置されている、
タービンブレード。
【請求項6】
前記前縁冷却空気流と前記中間区分冷却空気流とは、前記軸方向先端冷却回路の前記翼弦長さの約40%にわたって実質的に平行である、請求項5記載のタービンブレード。
【請求項7】
前記中間区分冷却回路はさらに、第1の通路と、中間通路と、最終通路とを有しており、該最終通路は、前記軸方向先端冷却回路に流体連通する第2の出口を有している、請求項5記載のタービンブレード。
【請求項8】
前記中間区分冷却回路はさらに、前記軸方向先端冷却回路に流体連通する少なくとも1つの付加的な出口を有している、請求項7記載のタービンブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にガスタービンブレードに関し、より詳細にはタービンブレードのブレード先端区分の冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンのようなターボ機械では、圧縮機セクションから排出される圧縮空気が燃料と混合され、燃焼セクションで燃焼されて、高温燃焼ガスが発生する。燃焼ガスは、タービンセクション内の高温ガス路を通って方向付けられ、そこで、ガスは、通常、一列の固定ベーンと、それに続く一列の回転タービンブレードとを含む一連のタービン段を通って移動する。タービンブレードは、高温燃焼ガスからエネルギを抽出し、タービンロータを回転させて、圧縮機に動力を供給しかつ出力を提供する。
【0003】
1つの形式のタービンブレードは、燃焼ガスのための半径方向内側の流路を画定するブレードプラットフォームにおける根元部から、半径方向外側のキャップ又はブレード先端区分まで延在する翼を有しており、この翼は、翼の前縁から後縁まで軸方向に延在する対向する正圧面と負圧面とを有している。タービンブレードは、高温燃焼ガスに直接さらされるので、通常、タービンブレードには内部冷却回路が設けられており、この内部冷却回路は、圧縮機抽気のようなクーラントを、ブレードの翼、翼の表面のまわりに設けられた様々なフィルム冷却孔を通して流通させる。特に、タービンブレードの前縁及び先端の冷却は、フィルム冷却により広く達成されている。しかしながら、原油やその他の重油を燃焼させるエンジンのような用途では、これらのフィルム冷却孔が詰まって、過熱してタービンブレードに損傷を与える可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの態様によれば、本開示は、前縁と、後縁と、正圧面壁と、負圧面壁とを画定する外壁と、先端を有する半径方向外側端部と、根元部に連結された半径方向内側端部とを有しており、前縁は、前縁を貫通して延在するフィルム冷却孔を有していない、タービンブレードを提供する。タービンブレードはさらに、外壁と共に、前縁冷却回路を画定する構造体を有しており、前縁冷却回路は、前縁に隣接しており、根元部から先端に向かって半径方向で延在している。前縁冷却回路は、少なくとも1つの前縁冷却通路を有している。このタービンブレードはさらに、外壁と共に、後縁冷却回路を画定する構造体を有しており、後縁冷却回路は、後縁に隣接し、根元部から先端に向かって半径方向で延在しており、かつ、このタービンブレードは、外壁と共に中間区分冷却回路を画定する構造体を有しており、中間区分冷却回路は、前縁冷却回路と後縁冷却回路との間に位置し、前進流蛇行状冷却回路を画定している。前進流蛇行状冷却回路は、第1の通路と、中間通路と、最終通路とを含んでいて、かつ中間区分冷却回路は、半径方向で根元部から先端に向かって延在している。タービンブレードの外壁はさらに、軸方向先端冷却回路を画定しており、軸方向先端冷却回路は、先端に隣接し、翼弦方向でほぼ連続的に延在しており、翼弦方向は、前縁から後縁へと延在している。前縁冷却回路、中間区分冷却回路、後縁冷却回路はそれぞれ、根元部における冷却空気供給部から冷却空気流を受け取る。前縁冷却回路と中間区分冷却回路はそれぞれ半径方向外側部分でさらに、少なくとも1つの出口を有しており、出口は軸方向先端冷却回路に流体連通しており、これにより、前縁冷却回路から出る実質的に全ての前縁冷却空気流と、中間区分冷却回路から出る実質的に全ての中間区分冷却空気流とが、軸方向先端冷却回路へと方向付けられる。
【0005】
いくつかの態様によれば、前縁冷却回路と中間区分冷却回路とは、軸方向先端冷却回路の前方端に連通しており、これにより、前縁冷却回路から出る前縁冷却空気流と、中間区分冷却回路から出る中間区分冷却空気流とは、軸方向先端冷却回路内において軸方向先端冷却回路の翼弦長さの少なくとも一部にわたって軸方向で実質的に平行である。別の態様によれば、前進流蛇行状冷却回路の中間通路及び最終通路のうちの少なくとも1つは、軸方向先端冷却回路に流体連通している。本発明の別の態様によれば、前縁冷却回路を画定する構造体は第1の壁と第2の壁とを含み、第1の壁と第2の壁とは外壁と共に、主前縁冷却通路とインピンジメント通路とを画定しており、第2の壁は、半径方向で互いに間を空けて位置する複数のインピンジメント冷却孔を有しており、これにより、前縁冷却通路とインピンジメント通路とが流体連通される。本発明の別の態様によれば、先端は複数の先端冷却孔を有しており、外壁はさらに、先端から半径方向外側に向かって延在するスクィーラ先端レールを有しており、スクィーラ先端レールは複数のスクィーラ先端孔を画定している。
【0006】
本発明の別の態様によれば、本開示は、前縁と、後縁と、正圧面壁と、負圧面壁とを画定する外壁と、先端を有する半径方向外側端部と、根元部に連結された半径方向内側端部とを有しており、前縁は、前縁を貫通して延在するフィルム冷却孔を有していない、タービンブレードを提供する。タービンブレードの外壁は、軸方向先端冷却回路を画定しており、軸方向先端冷却回路は、先端に隣接し、翼弦方向で連続的に延在しており、翼弦方向は、前縁から後縁へと延在している。タービンブレードはさらに、外壁と共に、前縁冷却空気流を供給するための前縁冷却回路を画定する構造体を有しており、前縁冷却回路は、前縁に隣接し、根元部から先端に向かって半径方向で延在している。前縁冷却回路はさらに第1の出口を有しており、出口は軸方向先端冷却回路に流体連通しており、これにより、前縁冷却回路から出る実質的に全ての前縁冷却空気流は、軸方向先端冷却回路へと方向付けられる。このタービンブレードはさらに、外壁と共に、後縁冷却回路を画定する構造体を有しており、後縁冷却回路は、後縁に隣接し、根元部から先端に向かって半径方向で延在している。タービンブレードはさらに、外壁と共に、中間区分冷却空気流を供給するための中間区分冷却回路を画定する構造体を有しており、中間区分冷却回路は、前縁冷却回路と後縁冷却回路との間に位置している。中間区分冷却回路は第2の出口を有しており、出口は軸方向先端冷却回路に流体連通しており、これにより、中間区分冷却回路から出る実質的に全ての中間区分冷却空気流が、軸方向先端冷却回路へと方向付けられる。このタービンはさらに、中間区分冷却回路と前縁冷却回路とにほぼ隣接する隔壁を有している。隔壁は、翼弦方向で延在し、隔壁下方面が、中間区分冷却回路から出る中間区分冷却空気流に対して実質的に横方向であるように配置されている。
【0007】
いくつかの態様によれば、隔壁は、前縁冷却回路から出る前縁冷却空気流と、中間区分冷却回路から出る中間区分冷却空気流とが、軸方向先端冷却回路内において軸方向先端冷却回路の翼弦長さの少なくとも一部にわたって軸方向で実質的に平行であるように配置されている。特定の態様によれば、前縁冷却空気流と中間区分冷却空気流とは、軸方向先端冷却回路の翼弦長さの約40%にわたって実質的に平行である。
【0008】
別の態様によれば、中間区分冷却回路はさらに、第1の通路と、中間通路と、最終通路とを有しており、最終通路は、軸方向先端冷却回路に流体連通する第2の出口を有している。特定の態様によれば、中間区分冷却回路はさらに、軸方向先端冷却回路に流体連通する少なくとも1つの付加的な出口を有している。
【0009】
別の態様によれば、先端は複数の先端冷却孔を有しており、外壁はさらに、先端から半径方向外側に向かって延在するスクィーラ先端レールを有しており、スクィーラ先端レールは複数のスクィーラ先端孔を画定している。
【0010】
本発明の別の態様によれば、本開示は、ガスタービンエンジンで使用されるタービンブレードを冷却する方法を提供する。このタービンブレードは、前縁と、複数の後縁出口通路を備えた後縁と、正圧面壁と、負圧面壁とを画定する外壁と、先端を有する半径方向外側端部と、根元部に連結された半径方向内側端部とを有しており、前縁は、前縁を貫通するフィルム冷却孔を有していない。1つの態様によれば、この方法は、根元部を介してタービンブレードに冷却空気流を供給するステップと、タービンブレードの前縁を冷却するために、冷却空気流の一部に前縁冷却回路を通過させるステップと、冷却空気流の一部にタービンブレードの前縁と後縁との間の中間区分冷却回路を通過させるステップと、後縁を冷却し、外壁における複数の後縁出口通路からタービンブレードを出るために、冷却空気流の一部に後縁冷却回路を通過させるステップと、前縁冷却回路を出る実質的に全ての前縁冷却空気流と、中間区分冷却回路を出る実質的に全ての中間区分冷却空気流とを軸方向先端冷却回路へと方向付けて、軸方向先端冷却空気流を発生させるステップと、先端に冷却を提供するために、軸方向先端冷却空気流に翼弦方向で軸方向先端冷却回路内を軸方向で通過させるステップと、を含む。軸方向先端冷却回路は、先端に隣接し、翼弦方向で連続的に延在しており、翼弦方向は、前縁から後縁へと延在している。
【0011】
方法のいくつかの態様によれば、タービンブレードはさらに、中間区分冷却回路と前縁冷却回路とにほぼ隣接する隔壁を有している。この隔壁は翼弦方向に延在しており、隔壁は、隔壁下方面が、中間区分冷却回路から出る中間区分冷却空気流に対して実質的に横方向であるように配置されている。特定の態様では、この方法は、前縁冷却空気流と中間区分冷却空気流とを、軸方向先端冷却回路内において方向付けるステップをさらに含み、これにより、前縁冷却空気流と中間区分冷却空気流とは、軸方向先端冷却回路の翼弦長さの少なくとも一部にわたって、軸方向先端冷却回路内内で軸方向で実質的に平行となる。
【0012】
方法の別の態様によれば、前縁冷却回路はさらに、主前縁冷却通路とインピンジメント通路とを画定する壁を有している。壁は、半径方向で互いに間を空けて位置する複数のインピンジメント冷却孔を有しており、これにより、前縁冷却通路とインピンジメント通路とは流体連通されている。特定の態様では、冷却空気流の一部に前縁冷却回路を通過させるステップは、前縁のインピンジメント冷却作用を提供するために、冷却空気流の一部に、半径方向で互いに間を空けて位置する複数のインピンジメント冷却孔を流過させるステップをさらに含む。
【0013】
方法のさらなる態様によれば、先端は複数の先端冷却孔を有しており、外壁はさらに、先端から半径方向外側に向かって延在するスクィーラ先端レールを有しており、スクィーラ先端レールは複数のスクィーラ先端孔を画定している。特定の態様では、この方法は、先端及びスクィーラ先端レールの対流冷却作用を提供するために、軸方向先端冷却空気流の一部に、複数の先端冷却孔とスクィーラ先端孔とを流過させるステップをさらに含む。
【0014】
本明細書は、本発明を特に指摘しかつ本発明を明瞭に請求する請求項によって完結するが、本発明は、同じ参照符号が同じ要素を表している添付の図面に関連した以下の説明からよりよく理解されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の態様を示すタービンブレードの斜視図である。
【
図2】
図1のタービンブレードの2−2線に沿った断面図である。
【
図3】
図2のタービンブレードの翼弦中央線3−3に沿った断面図である。
【
図4】
図3の半径方向外側のブレード先端の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適な実施の形態の以下の詳細な説明では、その一部を形成する添付の図面が参照され、図面には、例として、限定としてではなく、本発明を実施することができる特定の好適な実施形態が示されている。本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、その他の実施形態が使用されてもよく、変更がなされてもよいことが理解されるべきである。
【0017】
図1を参照すると、本発明の1つの態様において、翼アッセンブリ10が図示されている。本明細書で開示される冷却の概念は、固定ベーンと組み合わせて使用することができると理解されるが、翼アッセンブリ10は、翼、即ち回転可能なタービンブレード12を含むブレードアッセンブリであってよい。翼アッセンブリ10はガスタービンエンジンで使用するためのものである。当業者には公知であるように、ガスタービンエンジンは、圧縮機セクションと、燃焼器セクションと、タービンセクションとを有する(図示せず)。圧縮機セクションは圧縮機を含み、圧縮機は周囲の空気を圧縮し、少なくともその一部を燃焼器セクションへと搬送する。燃焼器セクションは1つ以上の燃焼器を含み、この燃焼器は、圧縮機セクションからの圧縮空気を燃料と混合し、混合物に点火して、このとき高温の作動ガスを形成する燃焼生成物が生じる。高温の作動ガスは、タービンセクションへと移動し、タービンセクションで作動ガスは1つ以上のタービン段を通過する。各タービン段は、1列の固定ベーンと、1列のタービンブレード12のような回転ブレードとを有している。
【0018】
図1及び
図2に示すように、タービンブレード12は、タービンロータ(図示せず)に連結された根元部14と、根元部14に固定されたプラットフォームアッセンブリ15とを有している。ブレード12は、プラットフォームアッセンブリ15に固定され、プラットフォームアッセンブリ15から半径方向外側に向かって延在している。ブレード12は、ほぼ凹面状の正圧面壁18と、ほぼ凸面状の負圧面壁20と、前縁22と、後縁24とを有している。前縁22は、(
図2に3−3線で示す)翼弦方向で、後縁24から間を空けて位置している。正圧面壁18及び負圧面壁20は、翼幅方向又は半径方向R
Dで、プラットフォームアッセンブリ15から半径方向外側ブレード先端26まで半径方向外側に向かって延在しており、翼弦方向で前縁22と後縁24との間に延在している。
【0019】
図2及び
図3を参照すると、外壁16によりブレード12内にキャビティが画定されており、複数の翼幅方向構造体28は、外壁16と共に、プラットフォームアッセンブリ15から半径方向外側ブレード先端26まで半径方向に延在し、前縁22と後縁24との間に翼弦方向で延在する複数の冷却回路を画定している。特にこの冷却回路は、前縁冷却回路30と、中間区分冷却回路32と、後縁冷却回路34と、軸方向先端冷却回路56とを有している。
【0020】
前縁冷却回路30は、前縁22に隣接して延在しており、部分的に外壁16と、図示した実施形態では実質的に中実の第1の壁を有する第1の翼幅方向構造体28aとによって画定されており、正圧面壁18と負圧面壁20との間、かつ前縁22と第1の翼幅方向構造体28aとの間に位置している。前縁冷却回路30は、プラットフォームアッセンブリ15から軸方向先端冷却回路56まで半径方向に延在している。前縁冷却回路30は、第1の翼幅方向構造体28aと第2の翼幅方向構造体28bとの間に画定された主前縁冷却通路30aを有している。第2の翼幅方向構造体28bは、第2の壁とインピンジメント通路30bとを有しており、インピンジメント通路30bは、主前縁冷却通路30aの上流に位置しており、前縁22を有する外壁16の一部と第2の翼幅方向構造体28bとの間に画定されている。第2の翼幅方向構造体28bを画定している第2の壁は、半径方向で間を空けて位置している複数のインピンジメント孔38を含んでおり、これらインピンジメント孔38により、主前縁冷却通路30aとインピンジメント通路30bとの間で流体連通が可能である。
【0021】
主前縁冷却通路30aは、前縁プラットフォーム通路36と連通しており、前縁プラットフォーム通路36からの冷却空気流C
Fを受け取る。前縁プラットフォーム通路36は、根元部14とプラットフォームアッセンブリ15とを貫通して延在している。冷却空気流C
Fは、エンジンの圧縮機から抽気された冷却空気として供給されてよく、従来の形式でロータディスクへと通されてよい。冷却空気流C
Fは、主前縁冷却通路30aへと進入し、インピンジメント孔38内へ流れ込み、前縁22の内面にインピンジメント冷却を提供する。
図3に示すように、第2の翼幅方向構造体28bは上流方向で僅かに傾いていてよく、これにより、第1及び第2の翼幅方向構造体28a,28bは、前縁冷却回路30の半径方向外側端部で接続され、全ての冷却空気流C
Fがインピンジメント通路30bに入るようにされる。より詳しく後述するように、前縁冷却回路30を画定する外壁16の一部は連続的であって、通常はブレード12の前縁22にフィルム冷却を提供するために使用されるフィルム冷却孔を含んでいない(
図1参照)。
【0022】
引き続き
図2及び
図3を参照すると、後縁冷却回路34は、後縁24に隣接して延在し、部分的に外壁16と、第3の壁を有する第3の翼幅方向構造体28cとによって画定されており、正圧面壁18と負圧面壁20との間、かつ後縁24と第3の翼幅方向構造体28cとの間に位置している。後縁冷却回路34は、プラットフォームアッセンブリ15と、正圧面壁18と負圧面壁20との間に延在するキャビティフロア54との間で半径方向に延在している。
図3に示すように、後縁冷却回路34は主後縁冷却通路42を有している。後縁冷却回路34はさらに、第1のリブ43及び第2のリブ45によって画定されており、部分的にキャビティフロア54によって画定されている。各リブ43,45はそれぞれ、インピンジメント孔43a又は調量孔45aを含んでいる。リブ43とリブ45との間には、第1及び第2の後縁インピンジメントキャビティ47,49が位置している。これらインピンジメントキャビティ47,49は主冷却通路42とインピンジメント孔43a,45aとに連通している。後縁放出スロット46は、後縁24を画定する外壁16の一部に位置している。第1及び第2のリブ43,45とその対応するインピンジメント孔43a,45aとは、後縁冷却回路34内でインピンジメント冷却を提供する。主後縁冷却通路42は、後縁プラットフォーム通路40と連通し、後縁プラットフォーム通路40からの冷却空気流C
Fを受け取る。後縁プラットフォーム通路40は、根元部14とプラットフォームアッセンブリ15とを貫通して延在している。第2の後縁インピンジメントキャビティ49を通る冷却空気流C
Fは、複数の後縁放出スロット46を通って放出され、後縁24にフィルム冷却を提供する。
【0023】
中間区分冷却回路32は、外壁16と、第1及び第3の翼幅方向構造体28a,28cと、第4及び第5の翼幅方向構造体28d,28eとによって画定されている。第4及び第5の翼幅方向構造体28d,28eは、第4及び第5の壁を有しており、正圧面壁18と負圧面壁20との間かつ第1及び第3の翼幅方向構造体28a,28cとの間に位置している。中間区分冷却回路32は、プラットフォームアッセンブリ15と軸方向先端冷却回路56との間で半径方向に延在し、部分的にキャビティフロア54によって画定されている。中間区分冷却回路32は、第1の通路32aと、中間通路32bと、最終通路32cとを含む前進流蛇行状冷却回路である。第3の翼幅方向構造体28cと第4の翼幅方向構造体28dとの間に画定された第1の通路32aは、中間区分プラットフォーム通路48と連通し、中間区分プラットフォーム通路48からの冷却空気流C
Fを受け取る。中間区分プラットフォーム通路48は、根元部14とプラットフォームアッセンブリ15とを貫通して延在している。第1の通路32aは、半径方向外側端部で、外側軸方向通路50を介して中間通路32bに接続されている。中間通路32bは、第4の翼幅方向構造体28dと第5の翼幅方向構造体28eとの間に画定されていて、半径方向内側端部で、内側軸方向通路52を介して最終通路32cに接続されている。最終通路32cは、第5の翼幅方向構造体28eと第1の翼幅方向構造体28aの間に画定されている。
【0024】
軸方向先端冷却回路56は、外壁16によって正圧面壁18と負圧面壁20との間に画定されており、前縁22から後縁24へと連続的に延在している。軸方向先端冷却回路56は、半径方向外側端部で先端キャップ58によって画定されていて、半径方向内側端部で前縁冷却回路30と、中間区分冷却回路32と、キャビティフロア54とによって画定されている。インピンジメント通路30bの半径方向外側端部は前縁出口62を有しており、この前縁出口62は、軸方向先端冷却回路56の前方端に連通している。中間区分冷却回路32の第1の通路32aと中間通路32bの半径方向外側端部は、キャビティフロア54によって画定されており、最終通路32cの半径方向外側端部は、中間区分出口64を有しており、中間部分出口64は、軸方向先端冷却回路56の前方端に連通している。中間区分出口64は、前縁出口62に対して下流に位置している。
【0025】
図3に示すように、冷却空気流C
Fは、前縁プラットフォーム通路36、中間区分プラットフォーム通路48、後縁プラットフォーム通路40に入り、前縁冷却回路30、中間区分冷却回路32、後縁冷却回路34内へそれぞれ流れる。後縁冷却空気流TE
Fは、主後縁冷却通路42へ進入し、インピンジメント孔43a,45aとリブ43,45の上方及び下方の開口とを介して第1及び第2の後縁インピンジメントキャビティ47,49内へと流れてから、後縁放出スロット46を通して放出されて、後縁24に冷却を提供する。前縁冷却空気流LE
Fは、主前縁冷却通路30aへと進入し、インピンジメント孔38を通ってインピンジメント通路30b内へと流れる。次いで、実質的に全ての前縁冷却空気流LE
Fが、前縁出口62を介して軸方向先端冷却回路56へと進入する。中間区分冷却空気流MS
Fは、第1の通路32aへと進入し、外側軸方向通路50を通って中間通路32b内へと流れる。次いで、実質的に全ての中間区分冷却空気流MS
Fが、内側軸方向通路52を介して最終通路32c内へと流れ込んだ後、中間区分出口64を通って軸方向先端冷却回路56へと進入する。インピンジメント通路30bから出た前縁冷却空気流LE
Fと中間区分冷却回路32の最終通路32cから出た中間区分冷却空気流MS
Fとは、軸方向先端冷却回路56で混合され、軸方向先端冷却空気流A
Fを形成する。軸方向先端冷却空気流A
Fは、翼弦方向で、前縁22から後縁24へと流れ、後縁24で軸方向先端放出スロット66を介してブレード12から放出される。
【0026】
図3に示すように、キャビティフロア54はさらに、1つ以上の開口68を有していてよく、この開口は、中間区分冷却回路32及び/又は後縁冷却回路34を軸方向先端冷却回路56へと接続する。例えば図示したように、中間区分冷却回路32の第1の通路32aの半径方向外側端部近くのキャビティフロア54の部分は、第1の通路32aを軸方向先端冷却回路56に接続する開口68を有している。さらに、主後縁冷却通路42の半径方向外側端部近くのキャビティフロア54の部分は、主後縁冷却通路42を軸方向先端冷却回路56に接続する開口68を有している。
【0027】
図1及び
図4を参照すると、タービンブレード12の半径方向外側ブレード先端26はさらに、外側スクィーラ先端キャビティ72を画定するように、先端キャップ58から半径方向外側に向かって延在し、タービンブレード12のほぼ全周にわたって延在するスクィーラ先端レール70を有していてよい。軸方向先端冷却回路56からスクィーラ先端キャビティ72内へと先端キャップ58を貫通して延在する複数の先端冷却孔74が設けられていてよい。軸方向先端冷却空気流A
Fの一部は、先端冷却孔74を通って流れてよく、先端キャップ58とスクィーラ先端レール70とに付加的な対流冷却を供給する。スクィーラ先端レール70は、軸方向先端冷却回路56からスクィーラ先端レール70を貫通して延在する複数のスクィーラ先端孔76を有していてよい。スクィーラ先端孔76は、図示した実施形態では、前縁22及び/又は正圧面壁18に隣接するスクィーラ先端レール70の部分を貫通して延在してよい。軸方向先端冷却空気流A
Fの一部は、スクィーラ先端レール70及び/又は正圧面壁18に冷却を供給するためにスクィーラ先端孔76を通って流れてよい。本発明のいくつかの態様では、
図1及び
図4に示すように、スクィーラ先端孔76を含むスクィーラ先端レール70の部分は、付加的に、スクィーラ先端レール70の外面に対して鋭角を成して位置する面取りされた面71を有していてよい。
【0028】
図3に示した実施形態では、
図4でより詳しく示したように、中間区分出口64はさらに、概して前縁冷却回路30と中間区分冷却回路32とに隣接して位置しており、軸方向先端冷却回路56内で翼弦方向に延在する隔壁60によって画定されてよい。隔壁60は例えば、第1及び第2の翼幅方向構造体28a,28bに連結されていてよく、かつ/又は第1及び第2の翼幅方向構造体28a,28bの延長部を有していてよい。隔壁60は、キャビティフロア54に対して半径方向外側に向かって間を空けて位置しており、先端キャップ58に対して半径方向内側に間を空けて位置している。隔壁60は、隔壁下方面61が、中間区分冷却回路32の最終通路32cを出る中間区分冷却空気流MS
Fに対してほぼ垂直又は横方向であるように、翼弦方向で延在している。
【0029】
隔壁60は、前縁冷却空気流LE
Fと、それより高温の中間区分冷却空気流MS
Fとの間の相互作用による流れの閉塞を阻止している。隔壁60は、前縁冷却空気流LE
Fが隔壁60の上方を流れるように、前縁出口62に対して下流に位置している。先端キャップ58と共に、隔壁60は、前縁冷却空気流LE
Fを、軸方向先端冷却回路56を通って後縁24に向かうように軸方向に方向付ける。隔壁60は、中間区分出口64に対して上流に位置している。中間区分冷却空気流MS
Fは、軸方向先端冷却回路56を通って後縁24に向かうように、隔壁下方面61によって軸方向で再び方向付けられる。前縁冷却空気流LE
Fと中間区分冷却空気流MS
Fとは、ほぼ平行に軸方向先端冷却回路56の少なくとも一部を通って前縁22から後縁24へと流れて軸方向先端冷却空気流A
Fを形成し、この軸方向先端冷却空気流A
Fは、半径方向外側ブレード先端26とスクィーラ先端レール70とに付加的な冷却を提供する。本発明のいくつかの態様では、隔壁60は、軸方向先端冷却回路56の翼弦方向長さの40%まで、前縁冷却空気流LE
Fの分離した軸方向空気流を延長してよい。隔壁60が、軸方向先端冷却回路56の翼弦方向長さの約15%〜約25%の長さを有していてよいことが考えられる。
【0030】
多くの従来のタービンブレードとは異なり、本発明によるタービンブレードは、タービンブレードの前縁における、又はタービンブレードの本体に沿ったシャワーヘッド状の配置(
図1参照)における、フィルム冷却孔を含んでいない。特に原油のような重油を燃焼するタービンエンジンでは、運転中に、堆積物がこれらのフィルム冷却孔を詰まらせる恐れがある。十分な冷却の欠如により、前縁及び先端の焼損を含む、ブレードの深刻な損傷が生じる恐れがある。本明細書に開示されたような内部冷却が改良されたタービンブレードにより、フィルム冷却を伴わないか又は殆ど伴わずに、利用可能な冷却空気流をより効率的に利用することができる。
【0031】
本発明の特定の実施の形態について例示及び説明してきたが、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく様々なその他の変更及び改変をなし得ることは当業者に明らかであろう。従って、本発明の範囲内にある全てのこのような変更及び改変を、添付の請求項に網羅することが意図されている。