(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6434151
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月5日
(54)【発明の名称】換気扇
(51)【国際特許分類】
F24F 7/013 20060101AFI20181126BHJP
【FI】
F24F7/013 101A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-532307(P2017-532307)
(86)(22)【出願日】2015年8月4日
(86)【国際出願番号】JP2015072132
(87)【国際公開番号】WO2017022087
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2017年7月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】中谷 馨
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−095523(JP,U)
【文献】
特開2005−016918(JP,A)
【文献】
実開昭57−203226(JP,U)
【文献】
実開昭55−149128(JP,U)
【文献】
米国特許第04779518(US,A)
【文献】
実開昭63−188430(JP,U)
【文献】
米国特許第06149698(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/013
F24F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角筒状の本体枠と、前記本体枠の一端側の開口を回動自在に支持したシャッター板で開閉するシャッターとを有する換気扇であって、
前記本体枠は、前記一端側の開口の左右の縁の内側面から前記一端側の開口の中央側に突出する前面部と、前記一端側の開口の下側の縁の端部から上方向に突出する下端部屈曲部とを有し、
前記シャッター板は、前記開口を塞ぐシャッター面を有し、前記本体枠の左右の縁同士の間隔よりも小さく、前記前面部同士の間隔よりも大きい幅を持っており、
前記シャッター板が前記開口を塞いだ状態において、前記シャッター板の下端部は、前記下端部屈曲部が前記本体枠の他端側に隣接するように前記下端部屈曲部と重なり、
前記下端部は、前記シャッター面が前記開口を塞いだ状態において、下端が前記本体枠の他端側に屈曲し、前記シャッター面との間で鈍角をなす傾斜面を備え、
前記下端部屈曲部は、前記本体枠の他端側と逆側に突出するリブを備えることを特徴とする換気扇。
【請求項2】
前記本体枠は、前記一端側の開口の上側の縁の端部から下方向に突出する上端部屈曲部を有し、
前記シャッター板は、前記シャッター面が前記開口を塞いだ状態において、上端が前記シャッター面よりも前記本体枠の他端側に位置するようにクランク状に屈曲した上端部を有し、
前記上端部は、前記上端部屈曲部よりも前記本体枠の他端側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の換気扇。
【請求項3】
前記シャッター面に、前記シャッター板が前記開口を塞いだ状態において、前記本体枠の開口の左右の縁の内側面に沿うリブを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の換気扇。
【請求項4】
前記シャッターは、上下方向に配列された複数のシャッター板を有し、
前記シャッター板が前記開口を塞いだ状態において、下側のシャッター板の上端部は、上側のシャッター板の下端部よりも前記本体枠の他端側に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の換気扇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁に設置される換気扇に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、換気扇のシャッターは、箱状枠体の室外側の開口端に複数の横長のシャッター板を上下に並べて備えたものが知られている。箱状枠体の室外側の開口端にシャッター板を設置したシャッターは、枠体の開口端の両側内面に長尺状のシャッター支持板を備え、各シャッター板の両端をシャッター支持部に開閉自在に固定している。
【0003】
特許文献1には、外気流入及び光の侵入を防止するために、各シャッター板同士又は各シャッター板と本体枠とに重なり部を設けた換気扇が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−139135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
換気扇は、住宅の台所に設置されて使用されることが多く、油煙又は埃の付着によって各シャッター板の動作が悪くならないように、各シャッター板と本体枠との間に若干の隙間を設けた構造となっている。したがって、隙間部分からの室外側の空気の流入及び光の侵入が問題となる。
【0006】
特許文献1に開示される換気扇は、本体枠と各シャッター板との重なりが無い上部に隙間が存在する。したがって、シャッター板と本体枠との隙間からの室外側空気の流入及び光の侵入を低減する余地がある。また、シャッター板が、回転軸の軸方向となる横方向に本体枠からはみ出てしまうことが容易に想定される。換気扇は、木枠を用いて住宅の壁の角穴に取り付けられることが多いため、本体枠からシャッター板がはみ出てしまうと、シャッター板と角穴内側面とが干渉し、シャッター板の動作不良でシャッターを開閉できなくなる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、シャッター板と本体枠との隙間からの室外側空気の流入及び光の侵入を低減しつつ、シャッター開閉時の動作不良の発生を抑制した換気扇を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、角筒状の本体枠と、本体枠の一端側の開口を回動自在に支持したシャッター板で開閉するシャッターとを有する換気扇であって、本体枠は、一端側の開口の上側の縁の端部から下方向に突出する上端部屈曲部と、一端側の開口の下側の縁の端部から上方向に突出する下端部屈曲部と、一端側の開口の左右の縁の内側面から一端側の開口の中央側に突出する前面部とを有する。シャッター板は、開口を塞ぐシャッター面と、シャッター面が開口を塞いだ状態において、上端がシャッター面よりも本体枠の他端側に位置するようにクランク状に屈曲した上端部とを有し、本体枠の左右の縁同士の間隔よりも小さく、前面部同士の間隔よりも大きい幅を持っている。シャッター板が開口を塞いだ状態において、上端部は、上端部屈曲部よりも本体枠の他端側に配置され、シャッター板の下端部は、下端部屈曲部が本体枠の他端側に隣接するように下端部屈曲部と重なる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる換気扇は、シャッター板と本体枠との隙間からの室外側空気の流入及び光の侵入を低減しつつ、シャッター開閉時の動作不良の発生を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る換気扇の部分断面図
【
図3】実施の形態1に係る換気扇のシャッターの構成を示す図
【
図4】実施の形態1に係る換気扇のシャッター板が開口を塞いだ状態を示す断面図
【
図5】実施の形態1に係る換気扇の本体枠の上部での断面図
【
図6】実施の形態1に係る換気扇の本体枠の上下方向の中央部での断面図
【
図7】実施の形態1に係る換気扇の本体枠の下部での断面図
【
図8】実施の形態1に係る換気扇の本体枠の一端側を示す斜視図
【
図9】実施の形態1に係る換気扇のシャッター板の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態に係る換気扇を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る換気扇の部分断面図である。
図2は、実施の形態1に係る換気扇の斜視図である。換気扇1は、電動機14を収容する角筒状の本体枠11と、ファン15を収容するオリフィス12と、オリフィス12に取り付けられた油受け13とを有する。ファン15は、電動機14の回転軸に取り付けられている。オリフィス12は、合成樹脂で構成され、風洞を形成する。オリフィス12は、本体枠11に対して着脱自在となっている。本体枠11の室外側には、本体枠11の一端側の開口111を開閉するシャッター16が設けられている。シャッター16は、本体枠11の一端側の開口111を回動自在に支持したシャッター板161で開閉する。なお、本体枠11の一端は
図1中の矢印Aが指す側の端であり、本体枠11の他端は
図1中の矢印Aが指す方とは逆側の端である。
【0013】
換気扇1は、壁30に形成された壁穴31に据え付けられ、ファン15を回転駆動させることにより、室内側の空気と室外側の空気との間に流れを形成し、室内を換気する。
【0014】
オリフィス12は、フィルタ及びメッシュガードといった集塵用の部品が取り付けられる構造であってもよい。また、オリフィス12は、油受け13と一体であってもよい。
【0015】
図3は、実施の形態1に係る換気扇のシャッターの構成を示す図である。シャッター16は、上下回動可能に本体枠11によって支持されたシャッター板161と、複数のシャッター板161同士を連結して上下回動を連動させるシャッター連結棒22とを備えている。シャッター板161は、開き位置と閉じ位置との間を回動軸21回りに回動する。シャッター板161は、ファン15が発生させる換気流の風圧により、回動軸21回りに上方に回動して横向きとなって風路を開く、また、シャッター板161は、ファン15が停止すると自重により回動軸21回りに下方へ回動して下向きとなり風路を閉じる。
【0016】
図4は、実施の形態1に係る換気扇のシャッター板が開口を塞いだ状態を示す断面図である。
図4は、シャッター板161が開口111を塞いだ状態を上下方向からみた断面を示している。シャッター板161は、本体枠11の左右の縁である側枠部11aの端
面11e同士の間隔W1よりも小さく、側枠部11aの内側面11gから開口111の中央側に突出した前面部11b同士の間隔W2よりも大きい幅W3を持っている。シャッター板161が開口111を塞いだ状態にあるときに、シャッター板161の側端部16aは、本体枠11の
側枠部11aの内側面11gから突出した前面部11bに平行になって重なるため、本体枠11とシャッター板161との隙間からの室外空気の流入及び光の侵入は生じにくくなっている
【0017】
図5は、実施の形態1に係る換気扇の本体枠の上部での断面図である。
図6は、実施の形態1に係る換気扇の本体枠の上下方向の中央部での断面図である。
図7は、実施の形態1に係る換気扇の本体枠の下部での断面図である。本体枠11は、開口111の上側の縁の端部から下方向に突出する上端部屈曲部11cと、開口111の下側の縁の端部から上方向に突出する下端部屈曲部11fと、開口111の左右の縁である側枠部11aの内側面11gから開口111の中央側に突出した前面部11bとを有する。シャッター板161は、開口111を塞ぐシャッター面161aと、シャッター面161aが開口111を塞いだ状態において、上端161bがシャッター面161aよりも本体枠11の他端側に位置するようにクランク状に屈曲した上端部16bと、シャッター面161aが開口を塞いだ状態において、下端161cが本体枠11の他端側に位置するように本体枠11の他端側に屈曲した下端部16cとを有する。
【0018】
図5に示すように、シャッター板161は、上端部16bがクランク状に曲げられており、シャッター16を閉じた時、シャッター板161の上端部16bが本体枠11の上端部屈曲部11cよりも本体枠11の他端側に入り込む。すなわち、シャッター板161が開口111を塞いだ状態において、上端部16bは、上端部屈曲部11cよりも本体枠11の他端側に配置される。したがって、本体枠11の上端部屈曲部11cとシャッター板161との隙間からの室外側空気の流入及び光の侵入は生じにくくなっている。
【0019】
また、
図6に示すように、シャッター板
161の上端部16bは、上方に位置する別のシャッター板161の下端部16cよりも室内側に入り込む。すなわち、上下方向に配列された複数のシャッター板161は、開口111を塞いだ状態において、下側のシャッター板161の上端部16bは、上側のシャッター板161の下端部16cよりも本体枠11の他端側に配置される。したがって、シャッター板161同士の隙間からの室外側空気の流入及び光の侵入は生じにくくなっている。
【0020】
図7に示すように、本体枠11は、下端部屈曲部11fにリブ11dが設けられている。シャッター板161の下端部16cは、リブ状になっており、シャッター板161が閉じると、下端部16cは、下端部屈曲部11fが本体枠11の他端側に隣接するように下端部屈曲部11fと重なる。換言すると、シャッター板161の下端部16cは、シャッター面161aが開口111を塞いだ状態において、下端161cが本体枠11の他端側に位置するように、本体枠11の他端側に屈曲し、シャッター面161aとの間で鈍角をなす傾斜面162を備えている。また、下端部屈曲部11fは、本体枠11の他端側と逆側に突出するリブ11dを備えている。したがって、本体枠11の下端部屈曲部11fとシャッター板161との隙間からの室外側空気の流入及び光の侵入は生じにくくなっている。シャッター板161の下端部16cは、シャッター板161に対して鈍角の角度αを有する傾斜面162を備えた形状となっているため、滞留が生じにくく風路の圧力損失となりにくい。
【0021】
図8は、実施の形態1に係る換気扇の本体枠の一端側を示す斜視図である。
図4及び
図8に示すように、換気扇1の本体枠11は、本体枠11の
側枠部11aの内側面11gから前面部11bが突出し、
側枠部11aの端面
11eと前面部11bとの間に段差が生じていることにより、シャッター板161が下向きの閉じ位置にあるときに、シャッター板161が本体枠11から横にはみ出さないようになっている。これにより、シャッター板161が本体枠11から横にはみ出し、シャッター板161と取り付け時の壁穴31の内側面との干渉により、シャッター16が開かない又はシャッター16が閉じないといった動作不良が発生することを防止できる。なお、前面部11bと端面11eとの段差を、シャッター板161の板厚よりも大きくすることで、シャッター16を下にして換気扇1を置いた際に、シャッター板161に荷重がかかって回動軸21が破損することを防止できる。
【0022】
図9は、実施の形態1に係る換気扇のシャッター板の斜視図である。
図9に示すように、シャッター板161の裏面両側端部には、リブ16dが設けられている。換言すると、シャッター面
161aには、シャッター板161が開口を塞いだ状態において、本体枠11の開口の左右の縁である側枠部11aに沿うリブ16dを設けられている。したがって、シャッター板161は換気流を受けやすい構造になっており、シャッター16は、換気流の風圧によって容易に開く。
【0023】
実施の形態1に係る換気扇1では、本体枠11は、開口111の上側の縁の端部から下方向に突出する上端部屈曲部11cと、開口111の下側の縁の端部から上方向に突出する下端部屈曲部11fと、開口111の左右の縁のである側枠部11aの内側面11gから開口111の中央側に突出する前面部11bとを有する。また、シャッター板161は、開口111を塞ぐシャッター面161aと、シャッター面161aが開口111を塞いだ状態において、上端161bが本体枠11の他端側に位置するようにクランク状に屈曲した上端部16bとを有し、本体枠11の左右の縁である側枠部11a同士の間隔よりも小さく、前面部11b同士の間隔よりも大きい幅を持っている。シャッター板161が開口111を塞いだ状態において、上端部16bは、上端部屈曲部11cよりも本体枠11の他端側に配置され、シャッター板161の下端部16cは、下端部屈曲部11fが本体枠11の他端側に隣接するように下端部屈曲部11fと重なる。したがって、シャッター板161と本体枠11との隙間からの室外側空気の流入及び
光の侵入を低減することができる。
【0024】
上記の実施の形態では、ファン15による換気流の風圧の有無によりシャッター板161を開閉する換気扇1について説明したが、連結棒により手動の開閉装置に接続され、該開閉装置によりシャッター16が開閉されることを特徴とする換気扇であってもよい。また、連結棒により電動の開閉装置に接続され、該開閉装置によりシャッター16が開閉される換気扇であってもよい。さらに、シャッター16が1枚のシャッター板で構成される換気扇にも同様に応用できる。
【0025】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 換気扇、11 本体枠、11a
側枠部、11b 前面部、11c 上端部屈曲部、11d
,16d リブ、11e 端面、11f 下端部屈曲部、11g 内側面、12 オリフィス、13 油受け、14 電動機、15 ファン、16 シャッター、16a 側端部、16b 上端部、16c 下端部、
21 回動軸、22 シャッター連結棒、30 壁、31 壁穴、111 開口、161 シャッター板、161a シャッター面、161b 上端、161c 下端、162 傾斜面。